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【発明の名称】 インクジェット記録装置
【発明者】 【氏名】門松 哲三

【氏名】前野 裕

【氏名】幕田 俊之

【氏名】梅林 励

【氏名】紺野 雅章

【要約】 【課題】処理液とインク液の2液を記録媒体や中間転写体に付与する場合においても、ドット列の乱れが生じることなく良好な画像を得ることができるインクジェット記録装置を提供することである。

【構成】色材と輻射線重合性化合物とを含有し複数の色について存在する第1液体と、輻射線重合開始剤と輻射線重合性化合物を含有する第2液体と、前記第1液体を記録媒体に付与するものであって前記第1液体の色毎に分かれる吐出部を備える第1液体付与手段と、前記第1液体付与手段により前記第1液体を付与する前に前記第2液体を記録媒体に付与する第2液体付与手段と、を有するインクジェット記録装置において、前記第1液体の粘度η1は25℃の条件下でη1<18mPa・secの条件を満たし、前記第2液体の粘度η2は25℃の条件下で25mPa・sec<η2<50mPa・secの条件を満たすこと、を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と輻射線重合性化合物とを含有し複数の色について存在する第1液体と、輻射線重合開始剤と輻射線重合性化合物を含有する第2液体と、前記第1液体を記録媒体に付与するものであって前記第1液体の色毎に分かれる吐出部を備える第1液体付与手段と、前記第1液体付与手段により前記第1液体を付与する前に前記第2液体を記録媒体に付与する第2液体付与手段と、を有するインクジェット記録装置において、
前記第1液体の粘度η1は25℃の条件下でη1<18mPa・secの条件を満たし、
前記第2液体の粘度η2は25℃の条件下で25mPa・sec<η2<50mPa・secの条件を満たすこと、
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
色材と輻射線重合性化合物とを含有し複数の色について存在する第1液体と、輻射線重合開始剤と輻射線重合性化合物を含有する第2液体と、前記第1液体を中間転写体に付与するものであって前記第1液体の色毎に分かれる吐出部を備える第1液体付与手段と、前記第1液体付与手段により前記第1液体を付与する前に前記第2液体を中間転写体に付与する第2液体付与手段と、を有するインクジェット記録装置において、
前記第1液体の粘度η1は25℃の条件下でη1<18mPa・secの条件を満たし、
前記第2液体の粘度η2は25℃の条件下で25mPa・sec<η2<50mPa・secの条件を満たすこと、
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1液体付与手段は加温手段を有さず、前記第2液体付与手段は加温手段を有すること、
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1液体付与手段はベンドモード型のインクジェットヘッドを備え、
前記第2液体付与手段はシェアモード型またはプッシュロッドモード型のインクジェットヘッドを備えること、
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1液体の表面張力をγ1とし前記第2液体の表面張力をγ2としたときに、γ1>γ2の条件を満たすこと、
を特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特に、2液を用いて画像を形成するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性化合物を含むインクを吐出するインクジェット記録装置において、処理液とインク液の2液を記録媒体に付与することで、滲みを抑制する従来技術が存在する。
【0003】
まず、特許文献1には、光重合開始剤を含む反応液(処理液)と、アクリレートモノマーおよびオリゴマーを含むインク液を記録媒体に付与して色材の凝集物を生成することにより、画像を形成するインクジェット記録装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、特殊な加工が施されていない普通紙に第1のインク(処理液)と第2のインク(インク液)との2液を付与し、精製して硬化させることにより、画像を形成するインクジェット記録装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、重合性化合物と重合開始剤を含有する反応液(処理液)と、色材と重合性化合物を含有するインク組成物(インク液)との2液を記録媒体に付与して画像を形成するインクジェット記録方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、4色以上の水を含まない光硬化型インク(処理液)を付与した後、色材入りのインク液を付与して2液を生成することにより印刷を行う画像形成方法が開示されている。
【0007】
特許文献5には、重合性モノマーと溶剤を含むインクA(処理液)と、顔料と溶剤を含むインクB(インク液)とを記録媒体に付与した後、インク中のモノマーを固化して画像を形成するインクジェット記録方法が開示されている。
【0008】
特許文献6には、ゴム製中間転写体上に、あらかじめUV硬化性粘着性液体(処理液)を塗布した上にUVインク(インク液)を打滴後、硬化させて曲面印刷媒体へ転写し画像を形成するインクジェット記録方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3642152号公報
【特許文献2】特開2000−135781号公報
【特許文献3】特開2003−12971号公報
【特許文献4】特開2005−96254号公報
【特許文献5】特開平8−218018号公報
【特許文献6】特開2005−153368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、処理液とインク液の2液を記録媒体や中間転写体に付与するインクジェット記録装置においては、記録媒体や中間転写体に処理液による膜が形成された後にインク液を打滴してドットを形成する際に、先に打滴をして形成されたドットの重心位置がその後の打滴により移動してしまうおそれがある。そのため、ドット列の配列に乱れが生じて良好な色調の画像を得ることができない問題が生じるおそれがある。
【0010】
しかしながら、前記の特許文献1〜6には、記録媒体や中間転写体上でのドットの重心移動に対する課題や解決手段については何ら示唆されておらず、前記のドット列の配列に乱れが生じて良好な色調の画像を得ることができない問題を解決することができない。
【0011】
また、特許文献1では、色材の凝集反応を利用して画像を形成している。そのため、色相の変化、透明度の低下等が発生して良好な色調の画像を得ることができないおそれがある。特許文献2では、普通紙に対する画像形成について開示されているが、普通紙以外の記録媒体への対応については示唆がなく、対象となる記録媒体が限定されてしまうおそれがある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、処理液とインク液の2液を記録媒体や中間転写体に付与する場合においても、ドット列の乱れが生じることなく良好な画像を得ることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、色材と輻射線重合性化合物とを含有し複数の色について存在する第1液体と、輻射線重合開始剤と輻射線重合性化合物を含有する第2液体と、前記第1液体を記録媒体に付与するものであって前記第1液体の色毎に分かれる吐出部を備える第1液体付与手段と、前記第1液体付与手段により前記第1液体を付与する前に前記第2液体を記録媒体に付与する第2液体付与手段と、を有するインクジェット記録装置において、前記第1液体の粘度η1は25℃の条件下でη1<18mPa・secの条件を満たし、前記第2液体の粘度η2は25℃の条件下で25mPa・sec<η2<50mPa・secの条件を満たすこと、を特徴とする。
【0014】
本発明によれば、第1液体と第2液体が前記の粘度範囲にあることにより記録媒体に対して打滴された第1液体のドットの定着度が増すので、先に打滴された第1液体のドットが後から打滴される第1液体の打滴の衝撃により重心移動を起こす現象を抑制することができ、画像の品質が向上する。
【0015】
第1液体に含有する輻射線重合性化合物としては、輻射線重合性単官能モノマー、輻射線重合性2官能モノマーなどが考えられる。第2液体に含有する輻射線重合性化合物としては、輻射線重合性多官能モノマー、輻射線重合性オリゴマーなどが考えられる。また、第1液体および第2液体は水またはその他の溶剤を含んでおらず、たとえ含んでいる場合であってもその含有量は0.5wt%以下である。
【0016】
本発明は、記録媒体に直接印刷する直接印刷型インクジェット記録装置に対応するものである。また、記録媒体については普通紙に限らず光沢紙などにも対応でき汎用性がある。
【0017】
前記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、色材と輻射線重合性化合物とを含有し複数の色について存在する第1液体と、輻射線重合開始剤と輻射線重合性化合物を含有する第2液体と、前記第1液体を中間転写体に付与するものであって前記第1液体の色毎に分かれる吐出部を備える第1液体付与手段と、前記第1液体付与手段により前記第1液体を付与する前に前記第2液体を中間転写体に付与する第2液体付与手段と、を有するインクジェット記録装置において、前記第1液体の粘度η1は25℃の条件下でη1<18mPa・secの条件を満たし、前記第2液体の粘度η2は25℃の条件下で25mPa・sec<η2<50mPa・secの条件を満たすこと、を特徴とする。
【0018】
本発明によれば、第1液体と第2液体が前記の粘度範囲にあることにより中間転写体に対して打滴された第1液体のドットの定着度が増すので、先に打滴された第1液体のドットが後から打滴される第1液体の打滴の衝撃により重心移動を起こす現象を抑制することができ、画像の品質が向上する。
【0019】
第1液体に含有する輻射線重合性化合物としては、輻射線重合性単官能モノマー、輻射線重合性2官能モノマーなどが考えられる。第2液体に含有する輻射線重合性化合物としては、輻射線重合性多官能モノマー、輻射線重合性オリゴマーなどが考えられる。また、第1液体および第2液体は水またはその他の溶剤を含んでおらず、たとえ含んでいる場合であってもその含有量は0.5wt%以下である。
【0020】
本発明は、中間転写体を介して記録媒体に印刷する中間転写型インクジェット記録装置に対応するものである。
【0021】
前記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記第1液体付与手段は加温手段を有さず、前記第2液体付与手段は加温手段を有すること、を特徴とする。
【0022】
本発明によれば、複数のヘッドを有する第1液体付与手段に加温手段を設けないので、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。また、第1液体の加温を繰り返すことによる第1液体内の顔料の分散の不安定化を防ぐことができる。
【0023】
なお、粘度上昇の要因となりうる化合物(重合開始剤、多官能モノマー、オリゴマー)は、第1液体には含有させずに第2液体に含有させておく。これにより、加温手段を有さない第1液体付与手段においても常温下で第1液体の低粘度化を図ることができる。
【0024】
加温手段は、第2液体付与手段を構成するインクジェットヘッド、供給路、タンクのいずれかに設けることとする。
【0025】
前記目的を達成するために請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記第1液体付与手段はベンドモード型のインクジェットヘッドを備え、前記第2液体付与手段はシェアモード型またはプッシュロッドモード型のインクジェットヘッドを備えること、を特徴とする。
【0026】
本発明によれば、第1液体付与手段のインクジェットヘッドはベンドモード型なので、比較的安価で高密度の実装が可能なことから、装置のコストを抑えつつ、ノズル密度の高密度化を図ることができる。一方、第2液体付与手段のインクジェットヘッドは付与圧力の高いシェアモード型またはプッシュロッドモード型を用いるので、比較的高粘度である第2液体を付与させることができる。
【0027】
前記目的を達成するために請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記第1液体の表面張力をγ1とし、前記第2液体の表面張力をγ2としたときに、γ1>γ2の条件を満たすこと、を特徴とする。
【0028】
本発明によれば、より効果的にドットの重心移動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、処理液とインク液の2液を記録媒体や中間転写体に付与する場合においても、ドット列の乱れが生じることなく良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0031】
〔インクジェット記録装置の構成の概要〕
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す直接印刷型インクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10Aは、色材を含まない処理液(第2液体)に対応して設けられたインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)11と、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色材を含む各インク(第1液体)に対応して設けられた複数のヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送するベルト搬送部22と、を備えている。
【0032】
そして、ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド11、12K、12C、12M、12Yからそれぞれ処理液および異色のインク液の2液を吐出して記録紙16上に画像を形成し得る。
【0033】
また、図2は、本発明に係るインクジェット記録装置の他の実施形態を示す中間転写型インクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10Bは、ヘッド11、印字部12は、前記の直接印刷型インクジェット記録装置と共通するが、中間転写体15が設けられている点で異なる。
【0034】
そして、各ヘッド11、12K、12C、12M、12Yからそれぞれ処理液および異色のインク液の2液を吐出して中間転写体15の上に画像を形成し、その後、中間転写体15から記録紙16に転写して画像を形成し得る。
【0035】
なお、インクジェット記録装置の全体構成の詳細な説明は改めて後述する。
【0036】
〔処理液とインク液の説明〕
次に、本発明の特徴点である処理液とインク液についての説明を行う。本発明では、記録紙16上におけるインク液のドットの滲みを抑制するために、インク液の打滴の前にヘッド11(第2液体付与手段)により予め処理液を記録紙16上にベタ状に打滴し処理液膜を形成しておく。ここで、処理液は色材を包含せず、輻射線重合開始剤や輻射線重合性多官能モノマーや輻射線重合性オリゴマーを包含する。
【0037】
その後、ヘッド12K、12C、12M、12Y(第1液体付与手段)により、前記の処理液膜に重ねてインク液を打滴する。インク液は、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色が存在し、順番に打滴がなされる。ここで、インク液は各色ごとの顔料(色材)、輻射線重合性単官能モノマー、輻射線重合性2官能モノマーを包含する。
【0038】
〔処理液とインク液の液体物性の規定の説明〕
本実施形態では、前記の処理液とインク液についてその液体物性を規定することにより良好な画像を得ることを特徴とする。具体的には、液体物性として粘度範囲を規定する。これにより、先に打滴をして形成されたある色のインク液によるドットの重心位置が、その後に打滴をして形成された別の色のインク液によるドットの打滴の衝撃により移動してしまうことを抑制する。そのため、ドット列の配列に乱れが生じず良好な色調の画像を得ることができる。
【0039】
そこで、出願人は、処理液とインク液の粘度範囲を規定するために、ドットの位置ずれ評価実験を行ったので、以下に説明する。
【0040】
実験にあたり、第1液体として、ほぼ同一組成からなる4種類の粘度値(25℃にて14、17、20、60[mPa・sec])のインク液A1〜A4を用意する。そして、インク液A1〜A4について、それぞれ顔料としてシアン色が包含されたものとマゼンタ色が包含されたものの2種類を用意する。同様に、第2液体として、ほぼ同一組成からなる4種類の粘度値(25℃にて20、26、35、60[mPa・sec])の処理液B1〜B4を用意する。
【0041】
なお、粘度上昇の要因となりうる化合物(重合開始剤、多官能モノマー、オリゴマー)は、インク液A1〜A4ではなく処理液B1〜B4に含有させることで粘度を調整する。そして、細かい粘度調整は、重合性化合物(モノマー、少量のオリゴマー)の含有比率により調整する。インク液A1〜A4では、低粘度液の重合化合物は単官能または2官能モノマーから成るのに対して、高粘度になるに従い多官能モノマーまたはオリゴマーの含有比率を上昇させる。
【0042】
そこでまず、記録媒体としてのPETフィルム上に処理液B1をベタ状に打滴して約5μmの厚みの処理液膜を形成する。具体的には、処理液用のインクジェットヘッドとして、処理液加温用のヒーターを備えるウォールベンドモード型のヘッドを使用する。そして、吐出時に処理液B1の粘度を10[mPa・sec]となるように温度調整を行って処理液B1を吐出させ、ヘッドを固定した状態でPETフィルムを副走査方向に搬送させることにより、PETフィルム上に処理液膜を形成する。
【0043】
次に、図3(a)に示すように、前記の処理液膜の上にシアン顔料を含むインク液A1を打滴して、シアンドットDcの列を作成する。具体的には、インク液用のインクジェットヘッドとして、インク液加温用のヒーターを備えるウォールベンドモード型のヘッドを使用する。そして、吐出時にインク液A1の粘度を10[mPa・sec]となるように温度調整を行いながら液滴量を約6plにしてインク液A1を吐出し、500μm間隔のシアンドットDcの列を形成する。
【0044】
次に、図3(b)に示すように、シアンドットDcの列が作成されるPETフィルム上にマゼンタ顔料を含むインク液A1を打滴して、マゼンタドットDmの列を作成する。具体的には、吐出時にインク液A1の粘度を10[mPa・sec]となるように温度調整を行いながら液滴量を約6plにしてインク液A1を吐出し、1000μm間隔のマゼンタドットDmの列を形成する。
【0045】
すると、PETフィルム上には、シアンドットDcが単独で打滴された部分と、シアンドットDcとマゼンタドットDmの一部が重なるように打滴された部分が、交互に形成される。
【0046】
そこで、顕微鏡にて本来のシアンドットDcの重心位置g0(シアンドットDcが単独で打滴されている部分の重心位置)と、シアンドットDcとマゼンタドットDmの一部が重なるように打滴されたシアンドットDcの重心位置g1との位置ずれを計測し、10箇所の位置ずれ(δ1〜δ10)の平均値をドット重心移動量とした。そして、以上のような手法による評価を、インク液A1〜A4および処理液B1〜B4の全16通りの組み合わせについて行った。このときの評価結果を図4に示す。図4では、「○」判定が好ましいとする判定、「×」判定が好ましくないとする判定としている。
【0047】
図4に示す評価結果より、インク液の粘度η1が25℃の条件下で18[mPa・sec]以下である14および17[mPa・sec]の場合(インク液A1、A2)であって、かつ、処理液の粘度η2が25℃の条件下で25[mPa・sec]以上の26、35、60[mPa・sec]の場合(処理液B2、B3、B4)に、位置ずれが20μm未満となり非常に小さくなることがわかる。
【0048】
ここで、処理液の粘度η2が25℃の条件下で60[mPa・sec]の場合(処理液B4)は、前記のように位置ずれが非常に小さくなり好ましい判定結果となっている。しかし、処理液の粘度が比較的高いことから吐出の効率を高めるために、吐出時のヘッド温度を非常に高温に保たなければならない。そのため、装置への負担が大きいと考えられる。したがって、実際に装置にて吐出させるときには装置への負担を十分に考慮して、処理液の粘度を25℃の条件下で50[mPa・sec]未満とすることが望ましい。
【0049】
以上の結果より、25℃の条件下でインク液の粘度を18[mPa・sec]以下とし、かつ、処理液の粘度を25〜50[mPa・sec]の範囲内にすれば、装置への負担を抑制しつつドットの位置ずれを抑制できることが分かる。
【0050】
そこで、本実施形態のインクジェット記録装置では、液体物性を規定するために、インク液の粘度η1は25℃の条件下でη1<18[mPa・sec]の条件を満たし、かつ、処理液の粘度η2は25℃の条件下で25[mPa・sec]<η2<50[mPa・sec]の条件を満たすように、インク液の粘度η1と処理液の粘度η2を調整する。
【0051】
また、その他の液体物性として、表面張力を規定することも考えられる。具体的には、インク液の表面張力をγ1とし処理液の表面張力をγ2としたときに、γ1>γ2の条件を満たすように規定する。このように規定することによって、より確実にドットの位置ずれを抑制でき、ドット列の配列に乱れが生じず良好な色調の画像を得ることができる。
【0052】
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。本実施形態では、ヘッドの方式として、色別の各ヘッド12K、12C、12M、12Yではベンドモード型(図6)を採用し、一方、処理液のヘッド11ではシェアモード型(図8)またはプッシュロッドモード型(図9)を採用する。
【0053】
そこでまず、色別の各ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造について説明する。色別の各ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
【0054】
図5(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図5(b) はその一部の拡大図であり、図5(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。図6は、1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図5(a) 中のA−A線に沿う断面図)であり、圧力室52に対する加圧方式としてベンドモード型を表す断面図である。
【0055】
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図5(a)、(b) に示したように、インク吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0056】
記録紙16の送り方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図5(a) の構成に代えて、図5(c) に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0057】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図5(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル51への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0058】
図6に示したように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0059】
そして、圧力室52に対する加圧方式としてベンドモード型を採用し、圧力室52の一部の面(図6において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)56に個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ58の変位が元に戻る際に、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
【0060】
上述した構造を有するインク室ユニット53を図7に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0061】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0062】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0063】
特に、図7に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
【0064】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0065】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
【0066】
次に、処理液のヘッド11について説明する。ヘッド11は、図5(a)に示すようなヘッド50の構造例を示す平面透視図、図5(b) に示すようなその一部の拡大図、図5(c) に示すようなヘッド50の他の構造例を示す平面透視図において、インク液のヘッド50と共通する。しかし、インク液の粘度と比較して処理液の粘度は高いため、圧力室52に対する加圧方式が異なる。
【0067】
そこで、図8に、シェアモード型インクジェットヘッドの断面図として、ヘッド11の1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図5(a) 中のA−A線に沿う断面図)を示す。各圧力室52は、処理液供給源たる処理液タンク(不図示)と連通している。図8に示すように、アクチュエータの役割を果たす加圧板(振動板)59は、圧力室52の側面を構成し圧電材料にて形成され、個別電極60を備えている。そして、加圧板59と個別電極60の間に駆動電圧を印加することによって、加圧板59内にせん断応力τを発生させる。すると、加圧板59が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。
【0068】
また、図9に、プッシュロードモード型インクジェットヘッドの断面図として、ヘッド11の1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図5(a) 中のA−A線に沿う断面図)を示す。図9に示すように、アクチュエータの役割を果たすピストン61は、圧力室52の天面側に配置されている。そして、ピストン61を駆動させることにより 圧力室52内の圧力が上がり処理液をノズル51から吐出させる。
【0069】
以上のようなシェアモード型インクジェットヘッドまたはプッシュロードモード型インクジェットヘッドを採用することにより、インク液の粘度と比較して粘度は高い処理液の吐出にも対応することができる。
【0070】
その他の構造はヘッド50と共通するため、以下の説明は省略する。
【0071】
なお、処理液のヘッド11には処理液の加温手段を設けているのに対して、色別の各ヘッド12K、12C、12M、12Yにはインク液の加温手段を設けていない。これにより、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。また、インク液の加温を繰り返すことによるインク液内の顔料の分散の不安定化を防ぐことができる。なお、粘度上昇の要因となりうる化合物(重合開始剤、多官能モノマー、オリゴマー)は、インク液には含有させずに処理液に含有させておく。これにより、加温手段を有さない色別の各ヘッド12K、12C、12M、12Yにおいても常温下でインク液の低粘度化を図ることができ、インク液の吐出において問題はない。
【0072】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
続いて、本発明のインクジェット記録装置についての詳細な説明を行う。図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を示す直接印刷型インクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10Aは、色材を含まない処理液に対応して設けられたヘッド11と、ヘッド11に供給する処理液を貯蔵しておく処理液貯蔵/装填部13と、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色材を含む各インクに対応して設けられた複数のヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、被記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送するベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
【0073】
処理液貯蔵/装填部13は、ヘッド11に供給する処理液を貯蔵するタンクを有し、タンクは所要の管路を介してヘッド11と連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。処理液貯蔵/装填部13とインク貯蔵/装填部14は、処理液やインク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、処理液貯蔵/装填部13は色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0074】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0075】
複数種類の被記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される被記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0076】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0077】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1ように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0078】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、ベルト搬送部22へと送られる。ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0079】
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
【0080】
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図10中符号88)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
【0081】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0082】
なお、ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0083】
ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン41が設けられている。加熱ファン41は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0084】
ヘッド11および印字部12の各ヘッド12K、12C、12M、12Yは、当該インクジェット記録装置10Aが対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの被記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
【0085】
ヘッド11、12K、12C、12M、12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から処理液、および黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色のインクの順に配置され、それぞれのヘッド11、12K、12C、12M、12Yが記録紙16の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0086】
ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド11、12K、12C、12M、12Yからそれぞれ処理液および異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0087】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K、12C、12M、12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0088】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0089】
図1に示した印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。
【0090】
本例の印字検出部24には、受光面に複数の受光素子(光電変換素子)が2次元配列されてなるCCDエリアセンサを好適に用いることができる。エリアセンサは、少なくとも各ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)の全域を撮像できる撮像範囲を有しているものとする。1つのエリアセンサで所要の撮像範囲を実現してもよいし、複数のエリアセンサを組み合わせて(繋ぎ合わせて)所要の撮像範囲を確保してもよい。或いはまた、エリアセンサを移動機構(不図示)によって支持し、エリアセンサを移動(走査)させることによって所要の撮像範囲を撮像する構成も可能である。
【0091】
また、エリアセンサに代えてラインセンサを用いることも可能である。この場合、ラインセンサは、少なくとも各ヘッド11、12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列(光電変換素子列)を有する構成が好ましい。各色のヘッド11、12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部24により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
【0092】
印字検出部24の後段には紫外線照射部25が設けられている。紫外線照射部25は、インク液の打滴の後に記録紙16に紫外線を照射させて処理液とインク液を硬化状態にすることにより、記録紙16に定着させる手段である。紫外線照射部25としては、例えば、UVランプ、UV電源、UV照射器具およびこれらを接続するケーブルから構成される小形のUV照射装置などが用いられる。
【0093】
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10Aでは、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)49によってテスト印字の部分を切り離す。また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0094】
また、図2はのインクジェット記録装置の他の実施形態を示す中間転写型インクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10Bは、処理液に対応して設けられたヘッド11と、ヘッド11に供給する処理液を貯蔵しておく処理液貯蔵/装填部13と、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色材を含む各インクに対応して設けられた複数のヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12とを備えている。また、無端状であって複数のローラ(37〜40)により張架されている中間転写体15、中間転写体15のクリーニングを行う転写体クリーニング部19、中間転写体15に対向して配置され記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送するベルト搬送部43、記録紙16に対して加圧することにより中間転写体15に形成される画像を転写するローラ39、40、46、48を備える転写機構も備えている。
【0095】
中間転写体15は、その材質としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂等の通常の無端ベルト形状の転写体に用いられる公知の材質が好適に挙げられる。これらの材料からなる無端ベルトの表面に、適当な導電性材料を分散させた抵抗調整層を設けてもよく、その構成も、通常の中間転写体における構成が好適に挙げられる。また、電鋳ニッケルで形成された無端状ベルトで、表面にはシリコンまたはフッソ系の薄膜を有し、剥離特性を付与したものも、中間転写体15として好適に用いられる。本実施形態においては無端ベルト形状のものを用いたが、本発明においてはこれに限定されず、例えば、ドラム形状のものであってもよい。
【0096】
ベルト搬送部43は、ローラ46、47、48間に無端状のベルト29が巻き掛けられた構造を有し、記録紙16はこのベルト搬送部43へと送られる。
【0097】
ベルト29が巻かれているローラ46、47、48の少なくとも一つにモータ(図10中符号88)の動力が伝達されることにより、ベルト29は図2の時計回り方向に駆動され、ベルト29上に保持された記録紙16は図2の左から右へと搬送される。
【0098】
なお、ベルト搬送部43に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0099】
ヘッド11および印字部12の各ヘッド12K、12C、12M、12Yは、当該インクジェット記録装置10Bが対象とする中間転写体15の最大幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
【0100】
ヘッド11、12K、12C、12M、12Yは、中間転写体15の送り方向に沿って上流側から処理液、および黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色のインクの順に配置され、それぞれのヘッド11、12K、12C、12M、12Yが中間転写体15の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0101】
まず、中間転写体15を搬送しつつ、ヘッド11で処理液を吐出した上に、各ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより中間転写体15上に色材凝集体によるカラー画像を形成する。その後、処理液、及び、インクの混合液の液体分は溶媒除去機構23により取り除き、中間転写体15上の色材凝集体をベルト搬送部43により搬送される記録紙16に対して転写し、記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0102】
このように、最終的に転写により画像形成される記録媒体の幅全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K、12C、12M、12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0103】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0104】
また、転写時の転写率を向上させたり画像表面の光沢度を制御するために、転写時に加熱しながら転写を行っても良い。
【0105】
また、転写機構の後段には輻射線照射部27が設けられている。輻射線照射部27は、転写の後に記録紙16に輻射線を照射させて処理液とインク液を硬化状態にすることにより、記録紙16に定着させる手段である。
【0106】
なお、その他、印字検出部24などは前記の直接印刷型インクジェット記録装置10Aと共通するため、説明は省略する。
【0107】
〔制御系の説明〕
図10は、インクジェット記録装置10A、10Bのシステム構成を示すブロック図である。同図に示したように、インクジェット記録装置10A、10Bは、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、ROM75、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0108】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信する画像入力手段として機能するインターフェース部(画像入力部)である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0109】
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10A、10Bに取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0110】
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10A、10Bの全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74及びROM75の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0111】
ROM75には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(着弾位置誤差等の測定用テストパターンのデータを含む)などが格納されている。ROM75は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。
【0112】
画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0113】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従って搬送系のモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って加熱ファン41等のヒータ89を駆動するドライバである。
【0114】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ84に供給してヘッド50の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0115】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図10において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0116】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ74に記憶される。
【0117】
インクジェット記録装置10A、10Bでは、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ74に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、インク色ごとのドットデータに変換される。
【0118】
すなわち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをK、C、M、Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド50のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0119】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド50の各ノズル51に対応するアクチュエータ58を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0120】
こうして、ヘッドドライバ84から出力された駆動信号がヘッド50に加えられることによって、該当するノズル51からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
【0121】
上記のように、プリント制御部80における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ84を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0122】
印字検出部24は、図1で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部80及びシステムコントローラ72に提供する。
【0123】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0124】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態は、色材と輻射線重合性化合物とを含有し複数の色について存在するインク液と、輻射線重合開始剤と輻射線重合性化合物を含有する処理液と、インク液を記録紙16に付与するものであってインク液の色毎に分かれるヘッド12K、12C、12M、12Yを備える印字部12と、印字部12によりインク液を付与する前に処理液を記録紙16に付与するヘッド11と、を有するインクジェット記録装置において、インク液の粘度η1は25℃の条件下でη1<18[mPa・sec]の条件を満たし、処理液の粘度η2は25℃の条件下で25[mPa・sec]<η2<50[mPa・sec]の条件を満たすこと、を特徴とする。
【0125】
そのため、インク液と処理液が前記の粘度範囲にあることにより記録紙16に対して打滴されたインク液のドットの定着度が増すので、先に打滴されたインク液のドットが後から打滴されるインク液の打滴の衝撃により重心移動を起こす現象を抑制することができ、画像の品質が向上する。なお、インク液と処理液を中間転写体15に付与する場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0126】
また、インクジェット記録装置10A、10Bにおいて、印字部12は加温手段を有さず、ヘッド11は加温手段を有すること、を特徴とする。
【0127】
そのため、印字部12にインク加温手段を設けないので、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。また、インク液の加温を繰り返すことによるインク液内の顔料の分散の不安定化を防ぐことができる。
【0128】
また、インクジェット記録装置10A、10Bにおいて、ヘッド12K、12C、12M、12Yはベンドモード型のインクジェットヘッドを備え、ヘッド11はシェアモード型またはプッシュロッドモード型のインクジェットヘッドを備えること、を特徴とする。
【0129】
そのため、ヘッド12K、12C、12M、12Yはベンドモード型なので、比較的安価で高密度の実装が可能なことから、装置の価格上昇を抑えつつ、ノズル密度の高密度化を図ることができる。一方、ヘッド11は吐出圧力の高いシェアモード型またはプッシュロッドモード型を用いるので、比較的高粘度である処理液を吐出させることができる。
【0130】
また、インクジェット記録装置10A、10Bにおいて、インク液の表面張力をγ1とし、処理液の表面張力をγ2としたときに、γ1>γ2の条件を満たすこと、を特徴とする。
【0131】
そのため、より効果的にドットの重心移動を抑えることができる。
【0132】
以上、本発明のインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】直接印刷型インクジェット記録装置の全体構成図である。
【図2】中間転写型インクジェット記録装置の全体構成図である。
【図3】ドットの位置ずれ評価実験の概要図である。
【図4】ドットの位置ずれ評価実験の結果を示す表である。
【図5(a)】ヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図5(b)】図5(a)の一部の拡大図である。
【図5(c)】ヘッドの他の構造例を示す平面透視図である。
【図6】ベンドモード型インクジェットヘッドを表す断面図である。
【図7】図5(a) に示したヘッドのノズル配列を示す拡大図である。
【図8】シェアモード型インクジェットヘッドを表す断面図である。
【図9】プッシュロッドモード型インクジェットヘッドを表す断面図である。
【図10】インクジェット記録装置のシステム構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0134】
10A…(直接印刷型)インクジェット記録装置、10B…(中間転写型)インクジェット記録装置、11…ヘッド(処理液用)、12…印字部、12K…ヘッド(インク液用、黒)、12C…ヘッド(インク液用、シアン)、12M…ヘッド(インク液用、マゼンタ)、12Y…ヘッド(インク液用、イエロー)、13…処理液貯蔵/装填部、14…インク貯蔵/装填部、15…中間転写体、16…記録紙、22…ベルト搬送部、29…ベルト、50…ヘッド、η1…インク液の粘度、η2…処理液の粘度、Dc…シアンドット、Dm…マゼンタドット、g0…重心位置、g1…重心位置
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三


【公開番号】 特開2008−6645(P2008−6645A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−178171(P2006−178171)