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【発明の名称】 サーマルプリントヘッド
【発明者】 【氏名】佐古 照久

【氏名】兼井 直史

【要約】 【課題】スティッキングの発生を抑制することが可能なサーマルプリントヘッドを提供すること。

【構成】基板1と、基板1に形成された発熱抵抗体3と、発熱抵抗体3に通電するための電極2A,2Bと、発熱抵抗体3および電極2A,2Bを覆う保護膜4と、を備えたサーマルプリントヘッドAであって、保護膜4は、発熱抵抗体3および電極2A,2Bを直接覆う第1層41と、第1層41上に形成された第2層42とを含んでおり、第2層42は、離散的に配置された複数の凸状要素42aからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板に形成された発熱抵抗体と、
上記発熱抵抗体に通電するための電極と、
上記発熱抵抗体および上記電極を覆う保護膜と、
を備えたサーマルプリントヘッドであって、
上記保護膜は、上記発熱抵抗体および電極を直接覆う第1層と、上記第1層上に形成された第2層とを含んでおり、
上記第2層は、離散的に配置された複数の凸状要素からなることを特徴とする、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
上記凸状要素は、断面矩形状であり、かつその対角線のいずれかが副走査方向を向いている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
上記保護膜は、上記第2層を覆い、かつ撥水性を有する第3層をさらに備えている、請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
上記第2層は、SiC、またはCとSiCとの複合材料からなり、
上記第3層は、ポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば感熱紙に対して印刷するために用いられるサーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のサーマルプリントヘッドの一例を示している。同図に示されたサーマルプリントヘッドXは、基板91上に帯状の発熱抵抗体93が主走査方向に延びるように形成されている。発熱抵抗体93は、電極92に跨っている。サーマルプリントヘッドXは、電極92と電気的に逆極性の電極(図示略)を備えている。この電極と電極92との間に電圧が印加されると、これらの電極に挟まれた発熱抵抗体93が発熱する。この熱が、発熱抵抗体93を覆う保護膜94を介して印刷対象である感熱紙に伝えられる。この感熱紙の感熱発色物質が発色することにより、所望の画像または文字を印刷することができる。
【0003】
しかしながら、ほとんどの場合、上記感熱紙は、明瞭な印字を実現するために、その表面が平滑に仕上げられている。平滑な感熱紙がサーマルプリントヘッドXの保護膜94に押し付けられると、保護膜94に感熱紙が張り付いてしまいやすい。この張り付きによって、感熱紙を保護膜94に対してスムーズに摺動できなくなる、いわゆるスティッキングが発生する。スティッキングが生じると、印字が乱れるという問題があった。また、スティッキングを抑制するには、感熱紙の送り速度を遅くすることが強いられていた。
【0004】
【特許文献1】特開平7−186429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、スティッキングの発生を抑制することが可能なサーマルプリントヘッドを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、上記基板に形成された発熱抵抗体と、上記発熱抵抗体に通電するための電極と、上記発熱抵抗体および上記電極を覆う保護膜と、を備えたサーマルプリントヘッドであって、上記保護膜は、上記発熱抵抗体および電極を直接覆う第1層と、上記第1層上に形成された第2層とを含んでおり、上記第2層は、離散的に配置された複数の凸状要素からなることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記保護膜と印刷対象である感熱紙などとの接触面積を縮小することができる。したがって、上記保護膜と感熱紙とが広い領域において密着してしまうことを防止することが可能であり、スティッキングの発生を抑制することができる。また、感熱紙などから発生した塵埃を、上記複数の凸状要素どうしの間に堆積させることができる。これは、塵埃によって印字が乱されることを回避するのに適している。さらに、いずれかの上記凸状要素が剥離したとしても、その他の上記複数の凸状要素が剥離してしまうことが無い。したがって、上記第2層のすべてが一斉に剥離してしまうことを防止することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記凸状要素は、断面矩形状であり、かつその対角線のいずれかが副走査方向を向いている。このような構成によれば、副走査方向上流から向かってくる感熱紙に対しては、断面矩形状とされた上記凸状要素の頂角が接触することとなる。このため、上記凸状要素の辺が上記感熱紙に対して垂直に接触することが無い。これは、スティッキングの防止に好ましい。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保護膜は、上記第2層を覆い、かつ撥水性を有する第3層をさらに備えている。このような構成によれば、たとえば感熱紙の表面を覆う親水性のコーティング剤と上記保護膜とが密着することをさらに回避することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2層は、SiC、またはCとSiCとの複合材料(以下、C−SiC)からなり、上記第3層は、ポリテトラフルオロエチレンからなる。このような構成によれば、上記第2層と上記第3層とを強固に接着することが可能である。また、SiCまたはC−SiCは、ガラスなどと比べて熱伝導率が高い。したがって、上記発熱抵抗体からの熱を印刷対象である感熱紙などに効率よく伝達することができる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1および図2は、本発明に係るサーマルプリントヘッドの一例を示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドAは、基板1、電極2A,2B、発熱抵抗体3、および保護膜4を備えている。サーマルプリントヘッドAは、副走査方向yに相対動される感熱紙などの印刷対象に対して、主走査方向xに沿って配列された複数のドットを選択的に順次印刷するためのものである。なお、図1においては、保護膜4の第3層43を省略している。
【0014】
基板1は、絶縁性を有しており、たとえばセラミック製である。基板1には、表面を平滑な状態とするためのグレーズ層(図示略)が形成されている。このグレーズ層は、発熱抵抗体3からの熱が基板1に逃げてしまうことを抑制する機能を有する。
【0015】
電極2A,2Bは、電気的に異なる極性とされており、たとえばAuなどの金属からなる。電極2A,2Bは、副走査方向yに延びる複数の帯状部21,22を有している。複数の帯状部21と、複数の帯状部22とは、それぞれ櫛歯状とされており、主走査方向xに沿って交互に配置されている。電極2A,2Bは、図外の駆動ICに接続されている。電極2A,2Bは、たとえばレジネートAuペーストを所定の形状に印刷した後に、このペーストを焼成することによって形成できる。
【0016】
発熱抵抗体3は、感熱印刷の熱源であり、たとえば酸化ルテニウムからなる。発熱抵抗体3は、主走査方向xに延びる帯状であり、複数の帯状部21,22に跨っている。隣り合う帯状部21,22間に対して上記駆動ICによって選択的に通電されると、発熱抵抗体3のうちこれらの帯状部21,22に挟まれた部分が発熱する。この熱によって、感熱紙の1ドット分の領域が発色し、印刷がなされる。発熱抵抗体3は、たとえば酸化ルテニウムを含むペーストを所定の形状に印刷した後に、このペーストを焼成することによって形成できる。
【0017】
保護膜4は、電極2A,2Bおよび発熱抵抗体3を保護するためのものであり、第1層41、第2層42、および第3層43が積層された構造とされている。第1層41は、電極2A,2Bおよび発熱抵抗体3を直接覆う部分であり、たとえばガラス製である。本実施形態においては、第1層41の厚さは、4μm程度とされる。第1層41は、たとえば電極2A,2Bおよび発熱抵抗体3を覆うようにガラスペーストを印刷した後に、このペーストを焼成することによって形成できる。
【0018】
第2層42は、第1層41上に積層されており、SiC、またはCとSiCとの複合材料によって形成されている。第2層42は、複数の凸状要素42aからなる。複数の凸状要素42aは、主走査方向xおよび副走査方向yを含む平面において離散的に配置されている。各凸状要素42aは、断面矩形状とされている。また、図3に示すように、各凸状要素42aの対角線42dは、副走査方向yを向いている。なお、図3は、説明の便宜上複数の凸状要素42aのみを示している。本実施形態においては、各凸状要素42aの高さは、4から6μm程度とされている。第2層42は、たとえばスパッタリングによってSiCまたはC−SiCからなる一様な膜を形成した後に、たとえばエッチングを用いたパターニングをこの膜に対して施すことによって形成できる。あるいは、感光性レジストに対してパターニングを行うことにより、第1層41のうち複数の帯状要素42aを形成しない部分を覆う。そして、この感光性レジストおよび第1層41を覆うようにSiCまたはC−SiCからなる膜をスパッタリングによって形成する。そして、上記感光性レジストを剥離することによって、複数の凸状要素42aからなる第2層42を形成できる。
【0019】
第3層43は、第2層42と第1層41のうち複数の帯状要素42aによって覆われていない部分とを覆っている。図2に示すように、複数の凸状要素42aは、第3層43によってコーティングされた格好とされている。また、複数の凸状要素42aどうしの間は、第3層43によって完全には、埋められていない。第3層43は、撥水性を有しており、たとえばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)からなる。本実施形態においては、第3層43の厚さは、2〜3μm程度とされる。第3層43は、たとえば印刷、転写またはスパッタを用いて形成することができる。
【0020】
次に、サーマルプリントヘッドAの作用について説明する。
【0021】
本実施形態によれば、保護膜4と感熱紙とが接する部分は、複数の凸状要素42aの断面積程度となる。このため、保護膜4と感熱紙とが発熱抵抗体3の面積と同程度の広い領域において密着することを防止可能である。したがって、スティッキングの発生を抑制することが可能であり、印字が乱れることを防止したり、感熱紙の送り速度を速めたりすることができる。
【0022】
複数の凸状要素42aどうしの間は、明瞭な溝となっている。保護膜4と感熱紙とが擦れ合うことによって発生する塵埃は、この溝に選択的に溜まっていく。このため、保護膜4と感熱紙との接触部どうしの間には、塵埃が挟まりにくい。したがって、塵埃によって印字が乱されることを抑制することができる。
【0023】
凸状要素42aの対角線42dが副走査方向yを向いていることにより、副走査方向y上流から向かってきた感熱紙に対しては、凸状要素42aの頂角から接触することとなる。このため、矩形状とされた凸状要素42aの辺が垂直に感熱紙に接触することを回避することが可能である。これは、スティッキングを防止するのに好適である。
【0024】
第2層42が離散的に配置された複数の凸状要素42aからなることにより、仮にいずれかの凸状要素42aが第1層41から剥離したとしても、その他の凸状要素42aまでもが剥離するおそれがない。したがって、第2層42の全体が一斉に剥離してしまうことを防止することができる。
【0025】
第3層43が撥水性であるのに対し、たとえば感熱紙の表面に施されたコーティング剤は親水性である場合が多い。親水性のコーティング剤と、撥水性の第3層43とは、比較的良好に摺動する。したがって、スティッキングの防止をさらに図ることができる。
【0026】
第2層42は、SiCまたはC−SiCからなるため、炭素の含有量が比較的多い。第3層43の材質であるPTFEは、炭素の含有量が多いほど、その物質に付着しやすい。したがって、第3層43の第2層42に対する接着力を高めることが可能であり、第3層43がめくれるなどの不具合を抑制することができる。また、SiCまたはC−SiCは、ガラスからなる第1層41などと比べて熱伝導率が大きい。したがって、発熱抵抗体3からの熱を感熱紙へと効率よく伝達することができる。
【0027】
本発明に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0028】
凸状要素42aは、断面矩形状のものに限定されず、たとえばその他の断面多角形状や断面円形状のものであってもよい。第2層42および第3層43の材質は、上述した実施形態のものに限定されず、たとえば、第2層42をシランカップリング剤によって形成し、第3層43をポリイミド樹脂によって形成してもよい。ポリイミド樹脂を用いれば、第3層43を撥水性を有するものとするとともに、感熱紙との摺動が良好なものとすることができる。また、ポリイミド樹脂とシランカップリング剤とは互いに強固に接合可能である。したがって、第2層42と第3層43との剥離防止に適している。ポリイミド樹脂からなる第3層43は、たとえば印刷または転写を用いて形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るサーマルプリントヘッドの一例を示す要部斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う要部断面図である。
【図3】本発明に係るサーマルプリントヘッドの凸状要素を示す要部平面図である。
【図4】従来のサーマルプリントヘッドの一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0030】
A サーマルプリントヘッド
x 主走査方向
y 副走査方向
1 基板
3 発熱抵抗体
4 保護膜
2A,2B 電極
21,22 帯状部
41 第1層
42 第2層
42a 凸状要素
42d 対角線
43 第3層
【出願人】 【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔

【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也

【識別番号】100117178
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 寛


【公開番号】 特開2008−947(P2008−947A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171267(P2006−171267)