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【発明の名称】 被印刷体と接触する部材を製造する方法
【発明者】 【氏名】ラルス クリスト ヘルツバッハ

【氏名】シュテファン ジーゲムント

【要約】 【課題】被印刷体と接触する部材を、時間と費用の点で有利に製造可能にする。

【構成】ステップ10で、被印刷体と接触する部材の支持体を準備し、ステップ14で、アルミニウムの電解酸化、すなわちアルマイト処理(すなわちアルマイト処理)によって支持体上に、ミクロ構造化された表面を形成し、ステップ15で、ミクロ構造化された表面を、ゾル・ゲルプロセスによってコーティングする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体と接触する部材を製造する方法において、
アルミニウムの電解酸化(14)によって支持体(2)上にミクロ構造化された表面を形成するステップと、
ミクロ構造化された前記表面をゾル・ゲルプロセス(15)によってコーティングするステップと、
を有している、被印刷体と接触する部材を製造する方法。
【請求項2】
前記アルミニウムの電解酸化(14)の前に予備構造化(12)が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予備構造化(12)は、ブラスト、特にボールブラスト、ガラスビーズブラスト、またはサンドブラストによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予備構造化(12)はレーザ加工によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記支持体(2)は最初に清掃(11)される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記清掃(11)は、ブラスト、特にボールブラスト、ガラスビーズブラスト、またはサンドブラストによって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
支持体(2)と、構造化された層と、インキをはじくコーティングと、を備える、被印刷体と接触する部材において、
前記被印刷体と接触する部材の表面が、アルマイト層(3)と、ゾル・ゲル層(4)と、を有していることを特徴とする、被印刷体と接触する部材。
【請求項8】
前記支持体(2)は主としてアルミニウムからできている、請求項7に記載の、被印刷体と接触する部材。
【請求項9】
前記支持体(2)は、予備構造化された表面を有している、請求項7に記載の、被印刷体と接触する部材。
【請求項10】
被印刷体処理機械、特に印刷機、または平版オフセット印刷用の、枚葉紙を処理する輪転印刷機において、
請求項1から9のいずれか1項に記載の、被印刷体と接触する部材(1)を有していることを特徴とする被印刷体処理機械。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載された、被印刷体と接触する部材を製造する方法に関する。さらに、本発明は、請求項7の前提項に記載する構成を備える、被印刷体と接触する部材に関する。当該種類の部材は、特に、被印刷体枚葉紙を、印刷機を通して搬送する時に搬送胴の表面上で案内するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
枚葉紙を処理する印刷機においては、被印刷体枚葉紙と接触する搬送胴(圧胴、搬送胴(Umfuhrzylinder)、渡し胴、または反転胴)に、構造化された表面を形成することが知られており、このような表面によって、その構造隆起部により枚葉紙が確実に案内され、同時に、支持部の面積割合が低いことによってインキが落ちたり(Farbablegen)、再付着したり(Ruckspalten)するのが十分に防止される。このような表面に、インキをはじくコーティングを形成することも知られている。市場では、例えば球冠構造を有するクロムめっきされた表面(ハイデルベルガー・ドルツクマシーネン・アクチエンゲゼルシャフト社によって胴張り「Mark3」として販売されている)や、溶射によって形成された非常に細かい構造を有し、シリコンでコーティングされた、特殊鋼板の表面(同様にハイデルベルガー・ドルツクマシーネン・アクチエンゲゼルシャフト社によって胴張り「PerfectJacket」として販売されている)を入手できる。
【0003】
特許文献1には、印刷機の構成部材、例えば紙案内ローラのための、インキを容易に清掃することができる表面が記載されており、この表面は親水性の特性を有している。この表面を、例えば電気めっき法によって、または電気分解や自己触媒反応による析出によって生成されるコーティングである、親水性の特性を有する金属によって構成することができる。あるいは、この表面を、ゾル・ゲルプロセスによって生成されるコーティングである、親水性の特徴を有する酸化物の組織によって構成することができる。この表面は、層の形成後に、例えばレーザ放射によって形成されるミクロレベルまたはナノレベルの特別な構造と、特別な表面粗さとを有することができる。
【特許文献1】独国特許出願公開第10202991号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被印刷体を搬送する公知のどの表面にも、被印刷体によって、すなわちいわゆる紙の擦れによって、たえず磨耗が生じる。したがって、このような表面を、場合によっては、ある回数の印刷ジョブの後に交換しなくてはならない。そのため、できるだけ耐磨耗性が高く、すなわち耐久性があり、稀にしか交換をしなくて済む表面が求められている。さらに、できるだけ低コストで製造することができる表面が、すなわち、できるだけ時間とコストがかからない製造方法が求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、被印刷体と接触する部材を、時間と費用の点で有利に製造可能にする、従来技術に比べて改良された方法を提供することにある。
【0006】
本発明の、付加的な、または代わりの目的は、耐用期間が長い、被印刷体と接触する部材の製造を可能にする、従来技術に比べて改良された方法を提供することにある。
【0007】
時間と費用の点で有利に製造することができる、従来技術に比べて改良された、被印刷体と接触する部材を提供することも本発明の目的の1つである。
【0008】
本発明の、付加的な、または代わりの目的は、長い耐用期間を有する、従来技術に比べて改良された、被印刷体と接触する部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、本発明により、請求項1の特徴を備える方法、および、請求項7の特徴を備える、被印刷体と接触する部材によって達成される。
【0010】
本発明の有利な他の態様が、従属請求項と、以下の説明および添付の図面から得られる。
【0011】
被印刷体と接触する部材を製造する本発明の方法は、
−アルミニウムの電解酸化によって支持体にミクロ構造化された表面を形成するステップと、
−ミクロ構造化された表面をゾル・ゲルプロセスによってコーティングするステップと、
を有している。
【0012】
本発明によれば、支持体が電解酸化され、すなわちアルマイト処理され、それによって、ミクロ構造化された表面が形成される。アルマイト処理によって、支持体と堅固に結合された構造化層を、低コストなやり方で形成することができる。したがって、アルマイト層と支持体との間の付着を改善する他のステップ、または付着促進剤の使用は必要なく、被印刷体と接触する部材を製造するための時間と費用を削減できるという利点が得られる。
【0013】
本発明による方法の、所望の表面構造の形成という点で好ましく、したがって有利な他の態様は、アルミニウムの電解酸化の前に予備構造化を行うことを特徴とすることができる。
【0014】
本発明による方法の、所望の表面構造の形成という点で好ましく、したがって有利な他の態様は、予備構造化がブラスト、特にボールブラスト、ガラスビーズブラスト、またはサンドブラストによって行われることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明による方法の、所定の外形構造を有する所望の表面構造の形成という点で好ましく、したがって有利な他の態様は、予備構造化がレーザ加工によって行われることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明による方法の、好ましい、したがって有利な他の態様は、支持体が最初に清掃されることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明による方法の、好ましい、したがって有利な他の態様は、清掃がブラスト、特にボールブラスト、ガラスビーズブラスト、またはサンドブラストによって行われることを特徴とすることができる。
【0018】
支持体と、構造化された層と、インキをはじくコーティングと、を備える、本発明の、被印刷体と接触する部材は、被印刷体と接触する部材の表面が、アルマイト層と、ゾル・ゲル層と、を有していることを特徴としている。
【0019】
本発明の、被印刷体と接触する部材の製造にあたっては、本発明の方法に関して既に上に説明したのと同じ利点が得られる。
【0020】
本発明による装置の、支持体の調達と準備に要する費用に関して好ましい、したがって有利な他の態様は、支持体が主としてアルミニウムからできていることを特徴とすることができる。
【0021】
本発明による装置の、所望の表面構造の形成に関して好ましい、したがって有利な他の態様は、支持体が、予備構造化された表面を有していることを特徴とすることができる。
【0022】
本発明に関して上に説明した、被印刷体と接触する部材を少なくとも1つ有していることを特徴とする被印刷体処理機械、特に印刷機、または平版オフセット印刷用の、枚葉紙を処理する輪転印刷機も本発明の枠内にあることが分かる。
【0023】
被印刷体処理機械は、平版オフセット印刷用の、特にウェットオフセット印刷用の、枚葉紙を処理する輪転印刷機であるのが好ましい。被印刷体を、厚紙、フォイル、または特に紙とすることができる。印刷機を、表刷り、または特に両面刷りで作動させることができる。印刷機は、単色または特に多色の印刷画像を被印刷体に形成することができる。印刷機は、被印刷体の搬送方向に見て、給紙装置、供給台、複数の印刷ユニット、反転装置、他の印刷ユニット、ニス引きユニット、乾燥機、粉かけ装置、および/または排紙装置を有することができる。印刷機は操作卓と制御ユニットとを含むことができる。
【0024】
記載する本発明、および記載する、本発明の有利な態様は、任意に相互に組み合わせても、本発明の有利な態様となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。各図において、互いに対応する部材にはそれぞれ同じ符号が付されている。
【0026】
図1には、有利な一実施形態に基づく、本発明による、被印刷体と接触する部材1、すなわち、被印刷体と接触する表面の模式的な断面図が示されている。図1の左側には、構造化13(図2も参照)のステップの前における、厚さ2’の支持体2、特にアルミニウム面、すなわちアルミニウム薄板が示されている。図1の右側には、構造化13のステップの後の支持体2が示されている。
【0027】
(構造化13のステップおよびこれに伴う材料塗布の結果の、)被印刷体と接触する部材1の厚さ1’は、構造化13のステップの前の支持体2の厚さ2’よりも大きい。本発明に基づいて支持体2上に形成され、その外面を構造化され、特にミクロ構造化された、すなわちマイクロメートルのスケールの隆起構造を有するアルマイト層3が、その厚さ3’のある割合だけ、特に約3分の1だけ、支持体2内へ成長し、その厚さ3’の、他のある割合だけ、特に約3分の2だけ、支持体2外へ成長している。内方への成長によって、ミクロ構造を与えられたアルマイト層3が支持体2上に特に良好に付着させられるという利点が得られ、したがって、時間とコストがかかる、付着を改善するための追加のステップを省くことができる。
【0028】
アルマイト層3の厚さ3’は、約10から約50マイクロメートルの間であるのが好ましい。アルマイト層3の硬度は、最大で約500HV0.025(ビッカース硬度試験)であるのが好ましい。
【0029】
アルマイト層3上には、インキをはじく層4、すなわちコーティングが塗布され、または配置されている。インキをはじく層4は、ゾル・ゲルコーティングのステップ15によって生成され、本願ではゾル・ゲル層4と呼ぶ。ゾル・ゲル層4は、被印刷体と接触する部材1の表面の構造化に、ささいな影響しか及ぼさず、すなわち、場合により、この構造化がいくらか平滑化される。
【0030】
図2は、有利な一実施形態に基づく、本発明の方法の工程図を示している。任意選択の、すなわち選択的に実行可能なステップが図2では破線で示されている。
【0031】
ステップ10では、支持体2が後続の処理のために準備される。ステップ11では、付着している汚れや自然酸化層を取り除くために、支持体2、特にその構造化すべき外面が清掃される。この清掃11は、例えばブラスト、特にボールブラスト、ガラスビーズブラスト、またはサンドブラストによって行うことができる。
【0032】
ステップ13では、アルマイト処理14によって、特にミクロ構造化された、すなわちミクロの粗さのアルマイト層3、すなわち電解酸化アルミニウム層(A123)を支持体2の表面に形成することによって、支持体2が構造化され、すなわち粗面化される。そのために、主としてアルミニウムからなるのが好ましい支持体2が、電解浴槽内で処理される。例えば、支持体2を、アルマイト処理するために硫酸浴槽または蓚酸浴槽に浸け、陽極として結線することができる。さらに、アルマイト層13によって支持体2の外面が腐食から保護される。
【0033】
選択的に、支持体2を、アルマイト処理14の前に、予備構造化12のステップで付加的に機械的に粗面化し、それによって予備構造化することができ、これはブラストによって、特にボールブラスト、ガラスビーズブラスト、またはサンドブラストによって行うのが好ましい。したがって、ステップ11と12を、清掃・予備構造化ステップとして1つにまとめるのも好都合である。あるいは、予備構造化をレーザ加工によって行うこともでき、この場合、所定の(予備)構造、すなわち所定の(予備)断面形状を的確に形成することができる。
【0034】
支持体2の表面にアルマイト層3が形成された後、インキをはじく表面特性を向上させるために、および表面の孔を閉じるために、ステップ15で、好ましくは吹付けとこれに続く乾燥によって、ゾル・ゲル層4が形成される。ゾル・ゲル層4を、二重のゾル・ゲルコーティングによる二重層として形成することもできる。ナノゾル、例えばポリシロキサン、ポリシラン、またはポリシラザンを用いるのが好ましい。
【0035】
被印刷体と接触する部材1の厚さを所定の寸法に調節するために、支持体2の裏面を、ステップ16で選択的に研磨することができる。
【0036】
本発明による、被印刷体と接触する部材1は、薄板として、例えば圧胴、搬送胴、渡し胴、または反転胴上に張り渡すことができる。あるいは、アルミニウム胴の表面を前述の方法で構造化することもできる。また、被印刷体くわえづめの作用面を、前述の方法で構造化することもできる。
【0037】
図3には、平版オフセット印刷用の、本発明による枚葉紙輪転印刷機100が示されている。枚葉紙輪転印刷機100は、枚葉紙搬送方向に見て、給紙装置110と、供給台120と、複数の、例えば2つ(あるいは、例えば4つ、6つ、または8つ)の印刷ユニット130aおよび130bと、ニス引きユニット140と、排紙装置150と、を有している。被印刷体枚葉紙111は、給紙装置110において給紙パイル112から取り出され、ずれ重なった流れとして供給台120を経由して、最初の印刷ユニット130aへ1枚ずつ供給される。印刷ユニット130aおよび130bは、版胴131と、ブランケット胴132と、圧胴133と、インキ装置135と、湿し装置136と、をそれぞれ含んでいる。印刷ユニット130aと130bとの間には、反転胴として構成することもできる渡し胴134が配置されている。被印刷体枚葉紙111は、最後の印刷ユニット130bから排紙装置150の搬送装置151へ渡される。被印刷体枚葉紙111は、乾燥のために乾燥機152の所を、粉かけのために粉かけ装置153の所を通って搬送されて、排紙装置150の排紙パイル154上に載せられる。枚葉紙輪転印刷機100は制御ユニット160によって制御される。渡し胴134、または枚葉紙搬送のための他の胴に、被印刷体と接触する部材1、例えば胴張りを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】好ましい一実施形態に基づく、本発明による、被印刷体と接触する部材を示す模式的な断面図である。
【図2】好ましい一実施形態に基づく、本発明の方法の工程図である。
【図3】枚葉紙輪転印刷機を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 被印刷体と接触する部材
1’ 被印刷体と接触する部材の厚さ
2 支持体
2’ 支持体の厚さ
3 アルマイト層
3’ アルマイト層の厚さ
4 インキをはじくゾル・ゲル層
10 支持体の準備のステップ
11 清掃のステップ
12 予備構造化のステップ
13 構造化のステップ
14 アルマイト処理のステップ
15 ゾル・ゲルコーティングのステップ
16 裏面の研磨のステップ
100 枚葉紙輪転印刷機
110 給紙装置
111 被印刷体枚葉紙
112 給紙パイル
120 供給台
130a,130b 印刷ユニット
131 版胴
132 ブランケット胴
133 圧胴
134 渡し胴
135 インキ装置
136 湿し装置
140 ニス引きユニット
150 排紙装置
151 搬送装置
152 乾燥機
153 粉かけ装置
154 排紙パイル
160 制御ユニット
【出願人】 【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【出願日】 平成19年7月6日(2007.7.6)
【代理人】 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫

【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸

【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭


【公開番号】 特開2008−18721(P2008−18721A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2007−177837(P2007−177837)