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【発明の名称】 繊維強化プラスチック部材
【発明者】 【氏名】田中 剛

【氏名】友竹 洋太郎

【氏名】本田 史郎

【要約】 【課題】軽量であり、強度や弾性率などの機械特性が優れ、なおかつ表面平滑性や長期信頼性に優れた繊維強化プラスチック部材を提供する。

【構成】次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[A]の少なくとも片面に構成要素[B]を介して、構成要素[C]が配設され、かつ構成要素[B]の溶解性パラメーターをδ、構成要素[C]の溶解性パラメーターをδとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする繊維強化プラスチック部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[A]の少なくとも片面に構成要素[B]を介して、構成要素[C]が配設され、かつ構成要素[B]の溶解性パラメーターをδ、構成要素[C]の溶解性パラメーターをδとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする繊維強化プラスチック部材。
構成要素[A]:繊維強化プラスチック
構成要素[B]:引張弾性率が0.1〜500MPaである低弾性率表面層
構成要素[C]:引張弾性率が1000〜30000MPaである高弾性率表面層
−δ|≦2 ・・・(1)
【請求項2】
構成要素[B]がエチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴムから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の繊維強化プラスチック部材。
【請求項3】
構成要素[B]の厚みが0.05〜0.5mmである請求項1または2に記載の繊維強化プラスチック部材。
【請求項4】
構成要素[C]が熱可塑性樹脂フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【請求項5】
構成要素[C]の厚みが0.05〜0.5mmである請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【請求項6】
JIS K 5600−5−7法により求められる構成要素[B]と構成要素[C]の付着性が1MPa以上である請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【請求項7】
表面粗さが0.5μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【請求項8】
強化繊維が炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量であり、かつ強度や弾性率などの機械特性が優れ、なおかつ、平滑な表面を有する繊維強化プラスチック部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維およびボロン繊維などの強化繊維と、マトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチックは、軽量であり、強度や弾性率などの機械特性が優れるため、航空宇宙用途、スポーツ用品用途および自動車用途などに広く用いられている。
【0003】
中でも、繊維強化プラスチック部材を用いることにより軽量化でき、この結果、燃費向上、ひいては排出CO を削減できることから、繊維強化プラスチック部材を自動車用途に用いようとする動きが高まってきている。
【0004】
繊維強化プラスチック部材を自動車用途、なかでも、フード、ルーフ、トランクリッド、ドアなどの外板に用いようとする場合、軽量性や強度や弾性率などの機械特性が優れるといった機能面だけでなく、意匠面においても、写像が鮮明に映し出される様な、平滑な表面を有することが求められる。
【0005】
ところが、従来の繊維強化プラスチック部材には、平滑な表面が得られにくいという問題があった。具体的には、繊維強化プラスチック部材の表面に、織物、編み物などの織目・編目を反映した凹凸が生じる現象であり、「プリントスルー」と呼ばれる。これは、繊維強化プラスチック部材においては、成形中にマトリックス樹脂が硬化収縮、および成形温度から室温にまで冷却する際に熱収縮が生じるが、強化繊維の織物、編み物などの凹凸を有する強化繊維基材を用いる場合、織物、編み物などの凹部におけるマトリックス樹脂の表層厚みは、他の部分におけるマトリックス樹脂の表層厚みより大きくなり、このとき、厚み方向のマトリックス樹脂の収縮量は、厚み方向の収縮率と樹脂の表層厚みとの積に比例することから、マトリックス樹脂の表層厚みの大きな織物、編み物などの凹部における厚み方向の収縮量が、他の部分における厚み方向の収縮量より大きくなる結果、繊維強化プラスチック部材の表面に凹凸が生じるものである。
【0006】
かかる問題に対し、従来、次に示すような熱硬化性樹脂からなる表面層を設ける方法が用いられていた。
【0007】
まず、ゲルコートと呼ばれる液状の熱硬化性樹脂組成物を用いる方法である。この方法では、噴霧器などを用いて液状の熱硬化性樹脂組成物を型に吹き付け、硬化させ、意匠面となる側に予め表面層を形成した後、繊維強化プラスチック部材を成形する(特許文献1、2)。
【0008】
また、サーフェスフィルム、あるいはサーフェスマテリアルと呼ばれる熱硬化性樹脂組成物からなるフィルムを用いる方法がある。この方法では、サーフェスフィルム、あるいはサーフェスマテリアルを意匠面となる側に配置し、硬化させ、表面層を形成する方法である。この方法では、表面層を、繊維強化プラスチック部材の成形に先立って形成しても良いし、成形と同時に形成しても良いとされている(特許文献3)。
【0009】
ところが、これらの従来法では、表面の凹凸を低減する効果は十分とは言えず、「プリントスルー」を解消するためには、表面層の厚みを十分に取ることが必要であった。しかしながら、表面層の厚みを十分に取ることは、表面層の重量増加、ひいては繊維強化プラスチック部材の重量増加を意味し、軽量であるという繊維強化プラスチック部材の特徴が損なう結果となる。
【0010】
このように、軽量であるという繊維強化プラスチック部材の特徴を損なうことなく、平滑な表面を有する繊維強化プラスチック部材を得ることができる技術は、これまで見出されていなかった。
【0011】
一方、繊維強化プラスチック部材の表面平滑性と軽量性とを両立するため、繊維強化プラスチックの表面に、引張弾性率が0.1〜500MPaである低弾性率表面層と引張弾性率が1000〜30000MPaである高弾性率表面層とを配設した繊維強化プラスチック部材が提案されている(特許文献4)。該特許文献では繊維強化プラスチックと高弾性率表面層との間に、収縮により生じる応力を緩和する特定の性質を有する低弾性率表面層を用いることにより、織物や編み物に起因する表面凹凸が劇的に低減され、高弾性率層の厚みをそれほど取らなくとも、平滑な表面が得られることが示されている。
【0012】
ここで該特許文献において、具体的に用いられる低弾性率表面層と高弾性率表面層との組合せとしては以下の2通りの方法が例示されている。
【0013】
第1の方法は低弾性率表面層としてエラストマーと、高弾性率表面層として強化繊維からなる層とを組み合わせる方法である。しかしながら、第1の方法では高弾性率表面層として用いる強化繊維単糸自体の微細な凹凸が表面に生じるため、表面平滑性の点で未だ十分ではなかった。
【0014】
また第2の方法は低弾性率表面層として第1の方法と同様にエラストマーと、高弾性率表面層として熱硬化性樹脂組成物フィルムまたは熱可塑性樹脂フィルムとを組み合わせる方法である。しかしながら該特許文献においては、前記熱硬化性樹脂組成物フィルムまたは熱可塑性樹脂フィルムは、一般的な例示しかされておらず、好ましい熱硬化性樹脂組成物フィルムまたは熱可塑性樹脂フィルムとエラストマーとの組合せは何ら例示されていない。このため、用いる組合せによっては、エラストマーとフィルムとの界面で成形中や長期使用後に剥離が生じ、意匠性が悪化する問題があった。
【特許文献1】特開平8−207149号公報
【特許文献2】特開2003−48263号公報
【特許文献3】英国特許第2379633号明細書
【特許文献4】特開2006−51813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、軽量であるという繊維強化プラスチックの特徴を損なうことなく、平滑な表面を有し、さらには長期使用後にも剥離が生じないため信頼性の高い繊維強化プラスチック部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、繊維強化プラスチック部材の表面平滑性の向上と長期の信頼性との両立を目的とし、繊維強化プラスチックの表面に配設する低弾性率表面層と高弾性率表面層との組合せについて鋭意検討を行った結果、上記課題を解決する本発明に至った。
【0017】
すなわち上記課題を解決する本発明は、以下に記載するものである。
【0018】
[1]次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[A]の少なくとも片面に構成要素[B]を介して、構成要素[C]が配設され、かつ構成要素[B]の溶解性パラメーターをδ、構成要素[C]の溶解性パラメーターをδとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする繊維強化プラスチック部材。
【0019】
構成要素[A]:繊維強化プラスチック
構成要素[B]:引張弾性率が0.1〜500MPaである低弾性率表面層
構成要素[C]:引張弾性率が1000〜30000MPaである高弾性率表面層
−δ|≦2 ・・・(1)
[2]構成要素[B]がエチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴムから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記[1]に記載の繊維強化プラスチック部材。
【0020】
[3]構成要素[B]の厚みが0.05〜0.5mmであることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の繊維強化プラスチック部材。
【0021】
[4]構成要素[C]が熱可塑性樹脂フィルムであることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【0022】
[5]構成要素[C]の厚みが0.05〜0.5mmであることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【0023】
[6]JIS K 5600−5−7法により求められる構成要素[B]と構成要素[C]の付着性が1MPa以上であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【0024】
[7]表面粗さが0.5μm以下であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【0025】
[8]強化繊維が炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック部材。
【発明の効果】
【0026】
本発明の繊維強化プラスチック部材は、軽量であり、強度や弾性率などの機械特性が優れ、表面平滑性や長期信頼性に優れるため、自動車の外板などに有用に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、軽量であるという繊維強化プラスチック部材の特徴を損なうことなく、表面平滑性と長期信頼性に優れる繊維強化プラスチック部材を得るために、次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[A]の少なくとも片面に構成要素[B]を介して、構成要素[C]が配設され、かつ構成要素[B]の溶解性パラメーターをδ1、構成要素[C]の溶解性パラメーターをδ2としたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0028】
構成要素[A]:繊維強化プラスチック
構成要素[B]:引張弾性率が0.1〜500MPaである低弾性率表面層
構成要素[C]:引張弾性率が1000〜30000MPaである高弾性率表面層
−δ|≦2 ・・・(1)
本発明において、構成要素[A]は強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチックである。
【0029】
構成要素[A]に用いる強化繊維の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維およびボロン繊維などが挙げられる。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特性を有するため、炭素繊維が好ましく用いられる。
【0030】
構成要素[A]に用いる強化繊維の配列構造の具体例としては、単一方向、2方向およびランダム方向などが挙げられる。また、強化繊維の形態の具体例としては、マット、織物および編み物などが挙げられる。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特性を有する繊維強化プラスチック部材が得られることから、単一方向の配列構造のものを用いることが好ましい。また、取り扱い性に優れることから、織物、編み物の形態のものを用いることが好ましい。
【0031】
構成要素[A]に用いるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。ただし、耐熱性、機械特性とのバランスが優れることから、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
構成要素[A]に用いる熱硬化性樹脂の具体例としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。なかでも、耐熱性、機械特性とのバランスが特に優れ、硬化収縮が小さいという特徴を有することから、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
構成要素[A]に用いる熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリエーテルケトンなどが挙げられる。
【0034】
構成要素[A]の繊維体積含有率は、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特性を有する繊維強化プラスチックが得られることから、10〜85%であることが好ましく、30〜85%であればより好ましく、40〜85%であればさらに好ましい。10%よりも小さいと、得られる繊維強化プラスチック部材の強度、弾性率が不十分である場合がある。85%よりも大きいと、強化繊維同士が接触、擦過し、強度が低下する場合がある。なお、ここでの繊維体積含有率は、ASTM D 3171に従って求める。
【0035】
本発明において、構成要素[B]は引張弾性率が0.1〜500MPaである低弾性率表面層であり、構成要素[C]は引張弾性率が1000〜30000MPaである高弾性率表面層であり、かつ構成要素[B]の溶解性パラメーターをδ1、構成要素[C]の溶解性パラメーターをδ2としたとき、下記式(1)を満たすよう構成要素[B]と構成要素[C]との組合せを適宜選択する必要がある。
【0036】
−δ|≦2 ・・・(1)
上記(3)を満たす構成要素[B]と構成要素[C]との組合せを選択することによって構成要素[B]と構成要素[C]の接着性が向上し、繊維強化プラスチック部材の成形時や長期使用時に構成要素[B]と構成要素[C]との界面で剥離が生じることを防ぐことができる。
【0037】
構成要素[B]は、引張弾性率が0.1〜500MPaである低弾性率表面層であり、0.1〜100MPaであることがより好ましく、0.1〜50MPaであればさらに好ましい。0.1MPaより小さいと、[B]層が容易に変形するため、[C]層が剥離しやすくなる。一方、500MPaより大きいと、応力を緩和する効果が不十分となり、平滑な表面が得られない。
【0038】
なお、ここでの引張弾性率は、ASTM D 638−02に従って測定する。ただし、測定温度は23℃とし、測定スピードは10mm/minとする。また、歪み−応力曲線における歪みが0.1%から0.3%の間での傾きから引張弾性率を求める。
【0039】
また、引張弾性率が測定困難なサンプルの場合、硬度で代用することもできる。この場合、JIS K 6253に従って測定した、ショアA硬度が、1〜100の範囲内であることが好ましく、1〜80の範囲内であればより好ましく、1〜50の範囲内であればさらに好ましい。
【0040】
構成要素[B]の厚みは、0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.05〜0.4mmであればより好ましく、0.05〜0.3mmであればさらに好ましい。0.05mmより小さいと、収縮により生じる応力を緩和する効果が不十分となり、平滑な表面が得られない場合がある。一方、0.5mmより大きいと、表面層の重量が増加し、ひいては繊維強化プラスチック部材の重量が増加し、軽量であるという繊維強化プラスチック部材の特徴が損なわれてしまう場合がある。
【0041】
構成要素[B]としては、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂、エラストマーのいずれも用いることができる。
【0042】
なかでも、構成要素[B]としては、適度に低弾性率であることから、エラストマーを用いることが好ましい。本発明においてエラストマーとは、25℃でゴム弾性を示す高分子のことを指す。
【0043】
エラストマーの具体例としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なかでも、エラストマーとしては、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴムから選ばれる少なくとも1種類を用いると、0℃付近から100℃付近の比較的広い温度範囲で安定して使用できることから、好ましい。
【0044】
エラストマーは、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であればより好ましく、−20℃以下であればさらに好ましい。ガラス転移温度が0℃より高いと、繊維強化プラスチック部材の使用中に雰囲気温度が0℃以下になると、エラストマーがガラス状態になり、脆くなってしまう場合がある。
【0045】
構成要素[B]として融点を有するエラストマーを用いる場合、エラストマーの融点が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であればより好ましく、140℃以上であればさらに好ましい。融点が100℃より低いと、繊維強化プラスチック部材の使用中に雰囲気温度が100℃以上になると、エラストマーが融解してしまう場合がある。
【0046】
構成要素[B]の形態の具体例としては、エラストマーなどの低弾性率の材料の粒子を平面状に並べたものが挙げられる。また、エラストマーなどの低弾性率の材料の繊維を、単一方向、2方向およびランダム方向などの配列構造、また、マット、織物および編み物などの形態にしたものが挙げられる。また、エラストマーなどの低弾性率の材料のシートが挙げられる。シートを用いる場合、成形時のマトリックス樹脂の流動性を高めるために、穴をあける、スリットを入れるなどして用いることができる。ここで、「低弾性率の材料の粒子」、「低弾性率の材料の繊維」、「低弾性率の材料のシート」とは、低弾性率の材料を主成分とする、粒子、繊維、シートであり、内部に高弾性率の成分を含有していても、配合物全体として、低弾性率性を有しているものをいうものとする。なお、主成分とは通常60重量%以上の配合量を有する場合をいう。また、マトリックス樹脂との接着性を高めるために、表面に微細な凹凸をつけるなどして用いることができる。
【0047】
構成要素[C]は、引張弾性率が1000〜30000MPaであることが、表面のへこみを防止する上で必要である。また、5000〜30000MPaであればより好ましい。1000MPaより小さいと、構成要素[C]の剛性が不十分であり、収縮により生じる応力によりへこみが生じるか、あるいは、収縮により生じる応力により凹部が生じないようにするために、構成要素[C]が十分な厚みを有する必要がある。しかしながら、[C]層の厚みを十分に取ることは、表面層の重量増加、ひいては繊維強化プラスチック部材の重量増加を意味し、軽量であるという繊維強化プラスチック部材の特徴が損なわれてしまう。一方、30000MPaより大きいと、仕上げ工程において、構成要素[C]をサンディングなどの処理をする際に、作業性が悪くなる。
【0048】
なお、ここでの引張弾性率は、ASTM D 638−02に従って測定する。ただし、測定温度は23℃とし、測定スピードは1mm/minとする。また、歪み−応力曲線における歪みが0.1%から0.3%の間での傾きから引張弾性率を求める。
【0049】
構成要素[C]層の厚みは、0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.05〜0.4mmであればより好ましく、0.05〜0.3mmであればさらに好ましい。0.05mmより小さいと、剛性が不十分となり、収縮により生じる応力により凹部が生じる場合がある。0.5mmより大きいと、表面層の重量が増加し、ひいては繊維強化プラスチック部材の重量が増加し、軽量であるという繊維強化プラスチック部材の特徴が損なわれてしまう場合がある。
【0050】
構成要素[C]としては、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができるが、樹脂硬化の時間が不要なため、短時間での成形に対応しやすいことから、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0051】
熱可塑性樹脂フィルムの具体例としては、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂フィルム、ポリカーボネート/PBTアロイ樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等が挙げられる。
【0052】
本発明において、JIS K5600−5−7により求められる構成要素[B]と構成要素[C]の付着性は1MPa以上であることが好ましい。付着性が1MPa以上であると繊維強化プラスチック部材の成形時や長期使用時に構成要素[B]と構成要素[C]との界面で剥離することがなく、信頼性の高い繊維強化プラスチック部材が得られる。
【0053】
本発明の繊維強化プラスチック部材は、少なくとも片面の表面粗さが、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、さらには0.2μm以下であることが好ましい。
【0054】
表面粗さは次の方法で測定する。サンプルには、構成要素[B]の厚みを測定したものと同じ試験片を用いる。まず、サンプルの任意の5ヶ所で、(株)小坂研究所製のサーフコーダーSE3400、または、同等機能を有する接触式の表面粗さ計を用い、図1に示すような表面凹凸のプロファイルを得る。この際、測定距離は10mm、測定速度は2mm/秒とする。測定結果に異方性がある場合は、各測定箇所で、方向を変えながら測定を行い、もっとも凹凸が大きくなる方向の表面凹凸のプロファイルを得るものとする。表面凹凸のプロファイルは、凹凸の高さが十分に認識できるように拡大して出力する。次に、図1に示すように、凹凸の隣り合う凹部を結ぶ線と凸部頂点から垂直に下ろした線の交点と、凸部頂点までの高さRを、各プロファイルにつき3ヶ所、合計15カ所計測し、平均値を算出し、表面粗さとする。各プロファイルにつき3ヶ所未満しか計測できない場合は、合計15ヶ所計測できるように、測定回数を増やす。
【0055】
本発明の繊維強化プラスチック部材は、構成要素[A]、[B]、[C]以外の構成要素を含んでも構わない。構成要素[A]、[B]、[C]以外の構成要素として、構成要素[C]の表面に塗膜が存在しても良い。
【0056】
次に、本発明の繊維強化プラスチック部材の製造法について説明する。
【0057】
本発明の繊維強化プラスチック部材の製造には、従来知られている繊維強化プラスチック部材のいずれの製造法を用いることができる。
【0058】
本発明の繊維強化プラスチック部材の製造法としては、プリプレグを用いる方法、シート・モールド・コンパウンド(SMC)を用いる方法、型内に配置した強化繊維基材に、液状の熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、加熱して硬化させることを特徴とするレジン・トランスファー・モールディング(RTM)法、プルトルージョン法などが挙げられる。なかでも、複雑形状を有する繊維強化プラスチック部材を容易に製造することができることから、RTM法を用いることが好ましい。
【0059】
本発明の繊維強化プラスチック部材は、軽量であり、強度や弾性率などの機械特性が優れ、なおかつ、平滑な表面を有しており、単車や自動車の外板、空力部材などとして好ましく利用することができる。具体例としては、フロントエプロン、フード、ルーフ、ハードトップ(オープンカーの脱着式ルーフ)、ピラー、トランクリッド、ドア、フェンダー、サイドミラーカバーなどの自動車外板、フロントエアダム、リアスポイラー、サイドエアダム、エンジンアンダーカバーなどの空力部材などが挙げられる。
【0060】
また、本発明の繊維強化プラスチック部材は、上述した以外の用途でも好ましく利用することができる。具体例としては、インストルメントパネルなどの自動車内装材などが挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0062】
実施例、比較例の主要データは表1、表2にまとめた。実施例および比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0063】
1.炭素繊維織物
本発明の構成要素[A]に用いる強化繊維の織物には、炭素繊維織物であるCO6343B(品番、“トレカ(登録商標)”T300−3K使用、炭素繊維目付け:198g/m、東レ(株)製)を用いた。
【0064】
2.RTM用樹脂組成物
本発明の構成要素[A]に用いるRTM用樹脂組成物としては、“エピコート(登録商標)”828(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)100wt%に、“キュアゾール(登録商標)”2E4MZ(品番、四国化成工業(株)製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)3wt%を配合した、液状のエポキシ樹脂組成物を用いた。
【0065】
3.エラストマー
本発明の構成要素[B]として、以下の3つのものを用いた。
(1)エチレンプロピレンゴム:EPMシート
タイガースポリマー(株)製、引張弾性率:3MPa、溶解性パラメーターδ1:8.75、厚み:0.1mm。
(2)アクリロニトリルブタジエンゴム:NBRシート
クレハエラストマー(株)製、引張弾性率:3MPa、溶解性パラメーターδ1:8.71、厚み:0.1mm。
(3)クロロプレンゴム:CRシート
タイガースポリマー(株)製、引張弾性率:3MPa、溶解性パラメーターδ1:8.71、厚み:0.1mm。
【0066】
また、本発明の構成要素[B]以外の低弾性率層として、以下のものを用いた。
(4)シリコーンゴム:Siシート
タイガースポリマー(株)製、引張弾性率:3MPa、溶解性パラメーターδ1:7.45、厚み:0.1mm。
【0067】
4.熱可塑性樹脂フィルム
本発明の構成要素[C]として、以下の3つのものを用いた。
(1)ポリカーボネートフィルム:PCフィルム
“ユーピロン(登録商標)”NF2000(三菱エンジニアプラスチック社製)、引張弾性率2000MPa、厚み0.3mm、溶解性パラメーターδ2:9.8。
(2)アクリルフィルム:ACフィルム
“テクノロイ(登録商標)”S001(住友化学工業社製)、引張弾性率2000MPa、厚み0.5mm、溶解性パラメーターδ2:10.6。
【0068】
次に、実施例および比較例における測定法を以下に示す。
【0069】
1.構成要素[B]の弾性率
引張弾性率は、“インストロン(登録商標)”5565(インストロン社製)を用い、
ASTM D 638−02に従って測定した。ただし、測定温度は23℃とし、測定スピードは10mm/minとした。また、歪み−応力曲線における歪みが0.1%から0.3%の間での傾きから引張弾性率を求めた。
【0070】
2.構成要素[C]の弾性率
引張弾性率は、“インストロン5565(登録商標)”(インストロン社製)を用い、
ASTM D 638−02に従って測定した。ただし、測定温度は23℃とし、測定スピードは10mm/minとした。また、歪み−応力曲線における歪みが0.1%から0.3%の間での傾きから引張弾性率を求めた。
【0071】
3.構成要素[B]と構成要素[C]の付着性
付着性はアドヒージョンテスターMODEL106(エルコメーター製)を用いてJIS K 5600−5−7法に従って測定した。
【0072】
4.繊維強化プラスチック部材の表面粗さ
サンプルの任意の5箇所で、接触式の表面粗さ計、(株)小坂研究所製のサーフコーダーSE3400を用い、表面凹凸のプロファイルを得た。この際、測定の方向を変えながら測定を行った。この際、測定距離は10mm、測定速度は2mm/秒とした。また、表面凹凸のプロファイルは、凹凸の高さが十分に認識できるように5000〜20000倍に拡大して出力した。次に、図1に示すように、凹凸の隣り合う凹部を結ぶ線と凸部頂点から垂直に下ろした線の交点と、凸部頂点までの高さRを、各プロファイルにつき3ヶ所、合計15カ所計測し、平均値を算出し、表面粗さとした。
(実施例1〜実施例5)
構成要素[A]、構成要素[B]、構成要素[C]として、それぞれ表1に示す材料を用いた。
【0073】
構成要素[A]として用いる炭素繊維織物、構成要素[B]、構成要素[C]をそれぞれ縦横が300mmの正方形となるようカットし、アルミツール板状に構成要素[C]、構成要素[B]、炭素繊維織物4plyを順に積層した。その上にピールプライと樹脂配分媒体を積層し、ナイロン製フィルムを用いてバギングし、真空ポンプを用いて減圧した後、型を90℃に保持し、RTM用樹脂組成物を注入した。RTM用樹脂組成物が型内に流入してから5分後に注入を終了し、RTM用樹脂組成物が型内に流入してから40分後に脱型を開始し、繊維強化プラスチック部材を得た。
【0074】
繊維強化プラスチック部材の表面粗さを測定した結果、表1に示す通り表面の平滑性が優れ、また構成要素[B]と構成要素[C]の剥離もなかった。
(比較例1)
構成要素[A]のみからなる繊維強化プラスチック部材を成形し、各種測定を行った。
【0075】
繊維強化プラスチック部材の表面粗さを測定したところ、1.60μmであり、表面の平滑性が不十分であることがわかった。
(比較例2)
構成要素[A]と構成要素[C]として、表2に示す材料を用い繊維強化プラスチック部材を成形し、各種測定を行った。
【0076】
繊維強化プラスチック部材の表面粗さを測定したところ、1.00μmであり、表面の平滑性が不十分であることがわかった。
(比較例3〜4)
構成要素[A]と構成要素[B]以外の低弾性率層と構成要素[C]を用い、表2に示す材料を用い繊維強化プラスチック部材を成形し、各種測定を行った。
【0077】
繊維強化プラスチック部材の表面粗さを測定したところ、表面の平滑性は優れているものの、構成要素[B]以外の低弾性率層と構成要素[C]の間で一部剥離が生じていた。また、付着性を測定した結果、低いものであった。
【0078】
【表1】


【0079】
【表2】



【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、単車や自動車の外板用途ばかりでなく、リアスポイラーやエンジンアンダーカバー等の空力部材用途などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】表面粗さを算出する際に用いる接触式の表面粗さ計による表面凹凸のプロファイルである。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−6746(P2008−6746A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180989(P2006−180989)