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【発明の名称】 装飾用シート、成形品および輸送機器
【発明者】 【氏名】両角 直洋

【氏名】鈴木 康男

【要約】 【課題】被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられる装飾用シートの耐候性を十分に向上させ、さらに、貼り付けの際の割れの発生を防止する。

【構成】本発明による装飾用シートは、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられる装飾用シートであって、互いに対向する2つの主面1aおよび1bを有する基材1と、基材1の一方の主面1a側に設けられた保護層2と、基材1の他方の主面1b側または基材1と保護層2との間に設けられ、顔料を含む着色層3とを備えている。保護層2は、30μm以上60μm以下の厚さを有し、且つ、1.4重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含んでいる。着色層3は、15μm以上80μm以下の厚さを有し、且つ、1.0重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられる装飾用シートであって、
互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、
前記基材の前記第1の主面側に設けられた保護層と、
前記基材の前記第2の主面側または前記基材と前記保護層との間に設けられ、顔料を含む着色層と、
を備え、
前記保護層は、30μm以上60μm以下の厚さを有し、且つ、1.4重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含み、
前記着色層は、15μm以上80μm以下の厚さを有し、且つ、1.0重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含む装飾用シート。
【請求項2】
前記基材は300μm以上800μm以下の厚さを有する請求項1に記載の装飾用シート。
【請求項3】
前記保護層は、室温における鉛筆硬度が前記基材よりも大きい請求項1または2に記載の装飾用シート。
【請求項4】
成形品本体と、前記成形品本体の表面に貼り付けられた請求項1から3のいずれかに記載の装飾用シートと、を備えた成形品。
【請求項5】
前記装飾用シートは、前記成形品本体の端部において巻き込まれるように前記成形品本体の裏面にまで貼り付けられている請求項4に記載の成形品。
【請求項6】
前記装飾用シートは、最も厚い部分の厚さに対して30%以上50%以下の厚さを有する部分を含む請求項4または5に記載の成形品。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の成形品を備えた輸送機器。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられる装飾用シートに関する。また、本発明は、そのような装飾用シートによって装飾が施された成形品や輸送機器にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の輸送機器の外装部品には、種々の成形品が用いられている。成形品を装飾するための技術としては、従来、塗装技術が用いられてきた。塗装が施された外装部品には、屋外での長期間の使用に耐え得るように優れた耐候性や耐傷性が要求される。
【0003】
十分な耐候性や耐傷性を外装部品に付与する技術として、自動車塗装の分野ではトップコート技術が知られている。塗装が施された外装部品の最表面にアクリル樹脂やフッ素樹脂などをコーティングすることにより、耐候性や耐傷性が向上する。
【0004】
一方、近年では、成形品を装飾するための技術として、特許文献1に開示されているように装飾用シートを成形品の表面に貼り付ける手法も提案されている。
【0005】
装飾用シートの一例を図9に示す。図9に示す装飾用シート110は、樹脂材料から形成された基材1と、基材1の主面1a上にインク等を印刷することによって形成された装飾層2とを有している。装飾層2上に接着剤8を付与された装飾用シート110を、図10(a)〜(c)に順に示すように、成形品本体121の表面に貼り付けることにより、表面に装飾が施された成形品120が得られる。
【0006】
図10(a)に示す成形品121は、半球状(椀状)の凸部121aを有しており、表面に起伏を有している。そのため、装飾用シート110は、貼り付けられる際にこの起伏に追従するように引き伸ばされる。装飾用シート110を好適に引き伸ばすことができるように、装飾用シート110を加熱して軟化させてから貼り付けが行われる。
【0007】
装飾用シートを用いると、塗料を用いた塗装に比べ、成形品のリサイクルが容易になる。また、塗装とは異なる美観を醸し出すこともできるので、装飾性の向上を図ることもできる。このように、装飾用シートを用いる方式は、非常に有用である。
【0008】
装飾用シートを外装部品の装飾に用いた場合、日光に含まれる紫外線によって装飾層のインクが劣化する恐れがある。そのため、装飾用シートの耐候性を向上させる必要がある。
【0009】
特許文献2には、耐候性に優れた樹脂積層体が開示されている。図11に、この樹脂積層体210を模式的に示す。
【0010】
樹脂積層体210は、図11に示すように、ポリカーボネートから形成された基材211と、紫外線吸収剤を含むアクリル樹脂層212と、複数の成分が特定の組成比で配合されたコーティング剤を硬化させて形成された硬化層213とが積層されて構成されている。
【0011】
この樹脂積層体210では、アクリル樹脂層212に含まれている紫外線吸収剤によって紫外線が吸収されるので、高い耐候性が得られる。
【特許文献1】特開2005−153351号公報
【特許文献2】特開2004−250581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、本願発明者の検討によれば、特許文献2に開示されているような樹脂積層体210を装飾用シートとして用い、特許文献1に開示されているような手法で成形品に貼り付けても、実際には十分な耐候性を得ることは難しいことがわかった。これは、貼り付けの際、装飾用シートが引き伸ばされて薄くなることに起因している。アクリル樹脂層212が薄くなると、装飾用シートの単位面積当たりに含まれる紫外線吸収剤の量が減少してしまうので、紫外線を十分に吸収することができず、耐候性が低下してしまう。
【0013】
なお、装飾用シートが引き伸ばされることを見越して、あらかじめシート全体を厚く形成することも考えられる。ところが、装飾用シートは、成形品に貼り付けられる際には必ずしも均一に引き伸ばされるわけではない。どの程度引き伸ばされるかは装飾用シートの部分ごとに異なる。そのため、シート全体を厚く形成すると、もともと十分な厚さが確保されていた部分については、過度に厚くすることとなり、大幅なコスト増の原因となる。
【0014】
また、紫外線吸収剤を含むアクリル樹脂層212のみを厚く形成することも考えられるが、アクリル樹脂層212はポリカーボネートから形成される基材211に比べて伸びにくいので、厚く形成されたアクリル樹脂層212は引き伸ばされたときに割れてしまうことがある。
【0015】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられる装飾用シートの耐候性を十分に向上させ、さらに、貼り付けの際の割れの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による装飾用シートは、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられる装飾用シートであって、互いに対向する第1および第2の主面を有する基材と、前記基材の前記第1の主面側に設けられた保護層と、前記基材の前記第2の主面側または前記基材と前記保護層との間に設けられ、顔料を含む着色層とを備え、前記保護層は、30μm以上60μm以下の厚さを有し、且つ、1.4重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含み、前記着色層は、15μm以上80μm以下の厚さを有し、且つ、1.0重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含む。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記基材は300μm以上800μm以下の厚さを有する。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記保護層は、室温における鉛筆硬度が前記基材よりも大きい。
【0019】
本発明による成形品は、成形品本体と、前記成形品本体の表面に貼り付けられた上記構成を有する装飾用シートとを備える。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記装飾用シートは、前記成形品本体の端部において巻き込まれるように前記成形品本体の裏面にまで貼り付けられている。
【0021】
ある好適な実施形態において、前記装飾用シートは、最も厚い部分の厚さに対して30%以上50%以下の厚さを有する部分を含む。
【0022】
本発明による輸送機器は、上記構成を有する成形品を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明による装飾用シートでは、保護層および着色層の両方に(つまり保護層だけでなく着色層にも)紫外線吸収剤が含まれているので、高い耐候性が得られやすい。
【0024】
本発明による装飾用シートでは、さらに、保護層は、30μm以上60μm以下の厚さを有し、且つ、1.4重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含んでおり、着色層は、15μm以上80μm以下の厚さを有し、且つ、1.0重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含んでいる。このように、保護層および着色層の両方について、厚さおよび紫外線吸収剤の含有量が特定の範囲内に設定されているため、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられても、十分な耐候性を確保でき、且つ、割れの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1に、本実施形態における装飾用シート10を模式的に示す。装飾用シート10は、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられるシートである。
【0027】
装飾用シート10は、図1に示すように、互いに対向する2つの主面1aおよび1bを有する基材1と、基材1の一方の主面1a側に設けられた保護層2と、基材1の他方の主面1b側に設けられた着色層3とを備えている。
【0028】
基材1は、樹脂材料から形成されており、典型的には、ポリカーボネートや塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂から形成されている。基材1には、シート基材としての剛性が要求されるので、その点を考慮して材料を選択することが好ましい。基材1の厚さは、300μm以上800μm以下であることが好ましい。基材1の厚さが300μm未満であると、シートとして取り扱いにくかったり、強度が不足して貼り付けの際に破れたりするおそれがある。また、基材1の厚さが800μmを超えると、被装飾品の表面に対する追従性が悪くなることがある。
【0029】
保護層2は、樹脂材料から形成されている。装飾用シート10の耐傷性を十分に高くする観点からは、保護層2は、室温における鉛筆硬度が基材1よりも大きいことが好ましい。保護層2を形成する樹脂材料としては、具体的には、アクリル樹脂や塩化ビニル樹脂を用いることができる。例えば、メチルメタクリレートモノマー由来の繰り返し単位を80mol%以上含み、重量平均分子量が70000〜150000程度のアクリル樹脂を好適に用いることができる。このような保護層2が設けられた基材1としては、例えば、三菱瓦斯化学社製のアクリル共押し出しポリカーボネートDO−2を用いることができる。
【0030】
着色層3は、顔料を含んでおり、そのことによって着色されている。着色層3は、例えば、バインダ樹脂に顔料が添加されたインクを印刷することによって形成することができる。バインダ樹脂としては、例えば、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系の樹脂を用いることができる。
【0031】
保護層2および着色層3は、それぞれ紫外線吸収剤を含んでいる。紫外線吸収剤としては、公知のものを用いることができる。保護層2に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビン1577FFを用いることができる。また、着色層3に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビン328やチヌビン571を用いることができる。
【0032】
着色層3に含まれる紫外線吸収剤としては、常温で固体であるもの(例えば上記のチヌビン328)を用いてもよいし、常温では液体であるもの(例えば上記のチヌビン571)を用いてもよい。液体の紫外線吸収剤を用いると、固体の紫外線吸収剤を用いる場合よりも着色層3が伸びやすくなるので、着色層3の割れが発生しにくい。ただし、後述するように、液体の紫外線吸収剤を用いると、着色層3の厚さによっては紫外線吸収剤が着色層3から滲み出すことがある。
【0033】
装飾用シート10を成形品に貼り付ける際には、図1に破線で示しているように、着色層3上に接着剤8が付与される。接着剤としては、ウレタン系やアクリル系の接着剤を好適に用いることができる。
【0034】
上述した構成を有する装飾用シート10は、特許文献1に開示されているような成形方法に用いることができ、表面に大きな起伏を有する成形品の装飾に好適に用いられる。
【0035】
本実施形態における装飾用シート10では、保護層2と着色層3の両方に(つまり保護層2だけでなく着色層3にも)紫外線吸収剤が含まれているので、高い耐候性が得られやすい。以下、この理由をより具体的に説明する。
【0036】
着色層3への紫外線の到達を防止するためには、単純に保護層2のみに多量の紫外線吸収剤を加えればよいとも考えられる。しかしながら、装飾用シート10に照射される紫外線(太陽光に含まれている。)を保護層2のみで全て吸収することは実際には非常に困難である。そのため、被装飾品に貼り付けられた装飾用シート10に照射される紫外線の一部は、保護層2を透過して基材1や着色層3にも到達し、その後、装飾用シート10と被装飾品との界面や、基材1と着色層3との界面、基材1と保護層2との界面等で反射を繰り返す。そのため、一度着色層3を透過した紫外線の一部が、再び着色層3に到達し得る。
【0037】
保護層2のみに紫外線吸収剤が含まれている場合、保護層2を一旦透過した紫外線は、上述した界面で反射を繰り返す限り、紫外線吸収剤に吸収されることがない。そのため、紫外線によって着色層3が劣化してしまう。
【0038】
これに対し、本実施形態のように、保護層2と着色層3の両方に紫外線吸収剤が含まれている場合、保護層2を透過した紫外線を、着色層3の紫外線吸収剤で吸収することができるので、紫外線による着色層3の劣化を抑制することができ、その結果、耐候性が大きく向上する。
【0039】
また、装飾用シート10が被装飾品に引き延ばされながら貼り付けられる場合、装飾用シート10の厚さにばらつきが生じ、保護層2の一部が薄くなることがある。このように保護層2が局所的に薄かったり、あるいは、保護層2に含まれる紫外線吸収剤が少なかったりすると、少なからぬ紫外線が保護層2を透過し得る。しかしながら、本実施形態のように保護層2だけでなく着色層3にも紫外線吸収剤が含まれていることにより、少なからぬ紫外線が保護層2を透過し得る場合でも十分な耐候性を確保することができる。
【0040】
本実施形態における装飾用シート10では、さらに、保護層2および着色層3の両方について、厚さと、紫外線吸収剤の含有量とが特定の範囲内に設定されており、そのことによって、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられても割れが発生することがなく、また、十分な耐候性を確保できる。
【0041】
保護層2は、具体的には、30μm以上60μm以下の厚さを有し、且つ、1.4重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含んでいることが好ましい。また、着色層3は、15μm以上80μm以下の厚さを有し、且つ、1.0重量%以上4.0重量%以下の紫外線吸収剤を含んでいることが好ましい。以下、上記数値範囲が好ましい理由を説明する。
【0042】
まず、表1に、保護層2および着色層3の厚さが異なる複数の装飾用シート10を用意し、それらを所定の薄さになるまで引き伸ばした後に、耐候性、保護層2の割れ、着色層3の割れおよび着色層3に含まれる紫外線吸収剤の滲みを評価した結果を示す。なお、基材1、保護層2および着色層3の厚さについては、引き伸ばし前後の数値を両方示しており、評価結果は、一部の例外を除いて「○」、「△」、「×」の三段階で示している。耐候性の評価は、JIS B7753に準拠してサンシャインウェザオメータを用いて行い、3以下のΔE(色差)および初期の50%以上の光沢度を保持できる時間が600時間以上である場合を「○」、400時間以上600時間未満である場合を「△」、400時間未満である場合を「×」で示している。また、紫外線吸収剤の滲みの評価は、引き伸ばした後の装飾用シート10を80℃まで加熱したとき(装飾用シート10を自動二輪車の外装の装飾に用いた場合日光の照射により80℃程度まで加熱されることが想定されるため)の外観を観察することにより行った。
【0043】
【表1】


【0044】
保護層2の厚さが80μmの場合(♯5)についての結果からもわかるように、保護層2の厚さが60μmを超えると、保護層2の割れが発生した。また、保護層2の厚さが20μmの場合(♯1)については、耐候性や割れ、滲みは問題なかったが、総合的な評価結果を「○」ではなく「▲」で示している。これは、保護層2が薄いと(具体的には厚さ30μm未満であると)、装飾用シート10の作成時に保護層2の厚さに大きなばらつきが生じやすく、均一なシートの作成が困難だからである。保護層2の厚さのばらつきは、耐候性のばらつきの原因となる。
【0045】
さらに、着色層3の厚さが90μmの場合(♯9)や100μmの場合(♯10)についての結果からもわかるように、着色層3の厚さが80μmを超えると、着色層3の割れが発生した。また、着色層3の厚さが10μmの場合(♯6)については、耐候性や割れ、滲みは問題なかったが、総合的な評価結果を「○」ではなく「▲」で示している。これは、着色層3が薄いと(具体的には厚さ15μm未満であると)、装飾用シート10の作成時に着色層3の厚さに大きなばらつきが生じやすく、色むらが発生するためである。
【0046】
一方、保護層2の厚さが30μm以上60μm以下で着色層3の厚さが15μm以上80μm以下である場合(♯2、♯3、♯4、♯7および♯8)には、耐候性や割れ、滲みの問題は発生せず、また、シート作成時の保護層2や着色層3の厚さのばらつきも小さかった。このように、保護層2の厚さは30μm以上60μm以下であることが好ましく、着色層3の厚さは15μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0047】
続いて、表2、表3および表4に、それぞれ基材1の厚さを300μm、500μmおよび800μmとした上で、保護層2の厚さおよび紫外線吸収剤含有量と、着色層3の厚さおよび紫外線吸収剤含有量とを変化させたときの評価結果を示す。
【0048】
【表2】


【0049】
【表3】


【0050】
【表4】


【0051】
表2、表3および表4において、基材1の厚さのみが異なる場合同士の比較(例えば♯11と♯24と♯33との比較や、♯19と♯28と♯37との比較)からわかるように、基材1の厚さが異なっていても、保護層2の厚さおよび紫外線吸収剤含有量、着色層3の厚さおよび紫外線吸収剤含有量が同じであれば、同じ評価結果が得られた。これは、例示した基材1の厚さの範囲では、耐候性や割れの発生しにくさ(つまり成形性)が、基材1の厚さには依存せず、保護層2の厚さおよび紫外線吸収剤含有量と着色層3の厚さおよび紫外線吸収剤含有量とに依存していることを意味している。
【0052】
保護層2の厚さ、着色層3の厚さをそれぞれ好ましい下限値である30μm、15μmとし、保護層2の紫外線吸収剤含有量を1.4重量%、着色層3の紫外線吸収剤含有量を1.0重量%とした場合(表2中の♯18)には、十分な耐候性が得られた。これに対し、保護層2の厚さ、着色層3の厚さをそれぞれ30μm、15μmとし、保護層2および着色層3の紫外線吸収剤含有量をそれぞれ1.0重量%とした場合(表中には示していない)には、耐候性は不十分であった。また、保護層2および着色層3の一方が紫外線吸収剤を含んでいない場合(♯14、♯15、♯16および♯17)にも、耐候性は不十分であった。
【0053】
また、保護層2の厚さ、着色層3の厚さをそれぞれ好ましい上限値である60μm、80μmとし、保護層2の紫外線吸収剤含有量を4.0重量%、着色層3の紫外線吸収剤含有量を4.0重量%とした場合(表2中の♯19)には、保護層2や着色層3の割れは発生せず、良好な成形性が得られた。これに対し、保護層2の厚さを60μmとし、保護層2の紫外線吸収剤含有量を5.0重量%とした場合(♯15)には、保護層2の割れが発生した。また、着色層3の厚さを80μmとし、着色層3の紫外線吸収剤含有量を5.0重量%とした場合(♯17)には、着色層3の割れが発生した。
【0054】
上述した結果からもわかるように、保護層2の紫外線吸収剤含有量は1.4重量%以上4.0重量%以下であることが好ましく、着色層3の紫外線吸収剤含有量は1.0重量%以上4.0重量%以下であることが好ましい。
【0055】
このことを裏付けるように、保護層2および着色層3の厚さがそれぞれ30μm以上60μm以下、15μm以上80μm以下で、保護層2および着色層3の紫外線吸収剤含有量が上記数値範囲内にある場合(♯12、♯18、♯19、♯20、♯21)には、良好な評価結果が得られている。
【0056】
また、着色層3に含まれる紫外線吸収剤として固体のものを用いた場合と液体のものを用いた場合との比較(♯22と♯23との比較、♯31と♯32との比較、♯38と♯39との比較)からは、液体の紫外線吸収剤を用いると、着色層3の割れが発生しにくい一方で、着色層3が厚い場合(例えば厚さ90μmの場合)には滲みが発生しやすいことがわかる。
【0057】
上述したように、保護層2の厚さおよび紫外線吸収剤含有量をそれぞれ30μm以上60μm以下、1.4重量%以上4.0重量%以下とし、着色層3の厚さおよび紫外線吸収剤含有量をそれぞれ15μm以上80μm以下、1.0重量%以上4.0重量%以下とすることにより、装飾用シート10の割れの発生を防止し、且つ、十分な耐候性を確保できる。
【0058】
なお、図1には、着色層3が基材1に対して保護層2とは反対側に設けられた構成を例示したが、着色層3の配置はこれに限定されるものではない。図2(a)および(b)に示す装飾用シート10Aおよび10Bのように、着色層3が基材1と保護層2との間に設けられていてもよい。
【0059】
図2(a)に示した装飾用シート10Aでは、基材1の主面1a上に、接着剤層4、着色層3および保護層2がこの順に設けられている。また、図2(b)に示した装飾用シート10Bでは、基材1の主面1a上に、着色層3、接着剤層4および保護層2がこの順に設けられている。装飾用シート10Aおよび10Bのいずれについても、図1に示した装飾用シート10と同様に、保護層2と着色層3の両方が紫外線吸収剤を含んでいるので、優れた耐候性が実現される。
【0060】
図2(a)に示した装飾用シート10Aは、例えば以下のようにして製造される。まず、保護層2を押出し成形により形成する。次に、この保護層2上に着色層3を印刷法によって形成する。続いて、着色層3上、または、別途に押出し成形により形成された基材1上に接着剤層4を形成する。その後、保護層2および着色層3の積層体と、基材1とを接着剤層4を介して貼り合わせることにより、装飾用シート10Aが得られる。
【0061】
図2(b)に示した装飾用シート10Bは、例えば以下のようにして製造される。まず、基材1を押出し成形により形成する。次に、この基材1上に着色層3を印刷法によって形成する。続いて、着色層3上、または、別途に押出し成形により形成された保護層2上に接着剤層4を形成する。その後、基材1および着色層3の積層体と、保護層2とを接着剤層4を介して貼り合わせることにより、装飾用シート10Bが得られる。
【0062】
なお、いずれの場合についても、接着剤層4の形成は、公知の接着剤を用いて公知の種々の方法で行うことができる。接着剤層4の厚さは、例えば10μm〜60μmである。
【0063】
続いて、図3から図6を参照しながら、装飾用シート10を用いて成形品の装飾を行う方法を説明する。図3は、装飾用シート10を用いて成形品の装飾を行うための真空成形装置100を模式的に示す図であり、図4から図6は、真空成形装置100を用いた成形工程を模式的に示す工程断面図である。
【0064】
図3に示す真空成形装置100は、装飾用シート10を把持する把持枠30と、成形品を支持する支持台31と、装飾用シート10を加熱するためのヒーター(例えば遠赤外線ヒーター)33と、これらを収容する真空容器34とを備えている。
【0065】
真空容器34は、把持枠30や支持台31を収容する主容器34aと、ヒーター33を収容する副容器34bとを有している。ヒーター33は、装飾用シート10を加熱する際に主容器34a内に導入される。
【0066】
支持台31には、複数の開口部31aが形成されている。開口部31aを通じて、主容器34a内の空気を外部に排出することができる。また、ここでは図示していないが、主容器34aには、外部から主容器34a内に気体を導入するための機構(例えば外部に接続されたホース)が設けられている。
【0067】
装飾用シート10を用いた成形品の装飾は、上述した真空成形装置100を用いて例えば以下のようにして行われる。
【0068】
まず、図4(a)に示すように、成形品本体21を用意し、この成形品本体21を支持台31上に載置する。成形品本体21は、樹脂材料から形成されたものであってもよいし、金属材料から形成されたものであってもよく、他の材料から形成されたものであってもよい。成形品本体21は、公知の手法を用いて作製することができ、例えば、樹脂材料を用いて射出成形により作製することができる。
【0069】
次に、図4(b)に示すように、装飾用シート10を用意し、この装飾用シート10を把持枠30に固定する。装飾用シート10は、図4(b)中に一部を拡大して示すように、基材1と、それぞれが紫外線吸収剤を含む保護層2および着色層3とを備えている。
【0070】
続いて、図5(a)に示すように、装飾用シート10をヒーター33を用いて加熱し、それによって装飾用シート10を軟化させる。このとき、装飾用シート10は、接着剤8の良好な接着性を確保するために、接着剤8の最低接着温度よりも20℃〜30℃高い温度に加熱されることが好ましい。
【0071】
その後、図5(b)に示すように、装飾用シート10を成形品本体21に近接させた後に、装飾用シート10と成形品本体21との間に形成される空間35を減圧し、それによって図6(a)に示すように装飾用シート10を成形品本体21に接合する。装飾用シート10と成形品本体21との間の空間35を減圧すると、装飾用シート10が均一な圧力で成形品本体21に押し付けられるので、接合が好適に行われる。
【0072】
本実施形態では、さらに、装飾用シート10の上方に広がる空間36を加圧することによって、より大きな圧力差を生じさせる。これにより、装飾用シート10の接合をいっそう速やかに行うことができる。空間35の減圧は、例えば、真空ポンプを用い、支持台31の開口部31aを通じて空間35の空気を排出することによって行われる。また、空間36の加圧は、例えば圧縮機(コンプレッサ)を用いて圧縮空気を供給することによって行われる。この接合工程において、装飾用シート10は、成形品本体21の表面に沿うように展延・成形される。
【0073】
続いて、図6(b)に示すように、装飾用シート10の不要な部分10’を回転刃などの切断手段を用いて切断(トリミング)し、その後、成形品本体21を支持台31から取り外すことによって、図6(c)に示すように、表面に装飾が施された成形品20が完成する。
【0074】
本実施形態における装飾用シート10を用いると、十分な耐候性および耐磨耗性を確保しつつ、保護層2や着色層3の割れを防止できるので、屋外での使用に適し、且つ、美観に優れた成形品を得ることができる。
【0075】
装飾用シート10によって装飾された成形品20の一例を図7に示す。図7に例示している成形品20では、装飾用シート10は、成形品本体21の端部において巻き込まれるように成形品本体21の裏面21aにまで貼り付けられている。このように、装飾用シート10はその一部が成形品本体21の端部において巻き込まれていてもよい。
【0076】
また、図7中には、引き伸ばされて貼り付けられた装飾用シート10の部分ごとの厚さを、最も厚い部分を100%として示している。図7に示すように、成形品20の中央部から端部に向かうにつれて装飾用シート10は薄くなっており、装飾用シート10は巻き込まれた部分において最も薄い。
【0077】
装飾用シート10の耐候性は、最も薄い部分において最も低くなるので、最も薄い部分においても十分な耐候性が確保されていることが好ましい。そのため、本発明は、図7に例示したように、装飾用シート10の一部が成形品本体21の端部において巻き込まれるような場合にその効果が高い。
【0078】
また、本発明は、装飾用シート10が貼り付けの際の成形によってある程度以上薄く引延ばされる場合に効果が高い。具体的には、本発明は、貼り付けられた後の装飾用シート10が最も厚い部分の厚さに対して30%以上50%以下の厚さを有する部分(例えば上述したように巻き込まれる部分)を含むような場合に効果が高い。
【0079】
本実施形態における装飾用シート10により装飾された成形品は、優れた耐候性を備え、美しい外観を有しているので、種々の輸送機器の外装部材として好適に用いられる。例えば、図8に示す自動二輪車50のタンクカバー51やフロントフェンダー52、テールカウル53として好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によると、被装飾品の表面に引き伸ばされながら貼り付けられる装飾用シートの耐候性を十分に向上させ、且つ、貼り付けの際の割れの発生を防止することができる。
【0081】
本発明による装飾用シートを用いて装飾された成形品は、優れた耐候性を備え、美しい外観を有しているので、乗用車、バス、トラック、オートバイ、トラクター、飛行機、モーターボート、土木車両などの種々の輸送機器の外装部材に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の好適な実施形態における装飾用シート10を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の好適な実施形態における他の装飾用シート10Aおよび10Bを模式的に示す断面図である。
【図3】装飾用シート10を用いた成形品の装飾に用いられる真空成形装置を模式的に示す図である。
【図4】(a)および(b)は、図3に示す真空成形装置を用いた成形工程を模式的に示す工程断面図である。
【図5】(a)および(b)は、図3に示す真空成形装置を用いた成形工程を模式的に示す工程断面図である。
【図6】(a)、(b)および(c)は、図3に示す真空成形装置を用いた成形工程を模式的に示す工程断面図である。
【図7】装飾用シート10によって装飾された成形品の一例を示す断面図である。
【図8】自動二輪車を模式的に示す側面図である。
【図9】成形品の装飾に用いられる従来の装飾用シート110を模式的に示す斜視図である。
【図10】(a)〜(c)は、装飾用シートを用いて成形品を装飾する工程を模式的に示す図である。
【図11】紫外線吸収剤を含むアクリル樹脂層を有する樹脂積層体210を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 基材
1a、1b 基材の主面
2 保護層
3 着色層
4 接着剤層
8 接着剤
10 装飾用シート
20 成形品
21 成形品本体
30 把持枠
31 支持台
31a 開口部
33 ヒーター
34 真空容器
34a 主容器
34b 副容器
50 自動二輪車
51 タンクカバー
52 フロントフェンダー
53 テールカウル
100 真空成形装置
【出願人】 【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
【出願日】 平成19年5月15日(2007.5.15)
【代理人】 【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司

【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司


【公開番号】 特開2008−1093(P2008−1093A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2007−128803(P2007−128803)