トップ :: B 処理操作 運輸 :: B32 積層体

【発明の名称】 電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム、及びそれを用いた電子ペーパー、及びそれを用いた電子ペーパーの製造方法
【発明者】 【氏名】山岸 正幸

【氏名】上田 隆司

【要約】 【課題】

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペーパー用のポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムは少なくとも片面に厚さ10〜350nmの積層膜を有し、該積層膜表面における中心面平均粗さが1.0〜12.0nmであり、全光線透過率が90.5%以上であることを特徴とする電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
積層膜表面における濡れ張力が25〜70mN/mである請求項1に記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ヘイズが2.0%以下である請求項1または2に記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
積層膜が電子ペーパーの、人が触れる側(A側)の最外層として用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
150℃で30分加熱後の熱収縮率が長手方向、幅方向いずれも2.0%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムを用いた電子ペーパー。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの片面に透明電極を設け、その反対面の積層膜の上にハードコートを設けず電子ペーパーの部材として使用する電子ペーパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は電子ペーパー用部材に関し、詳しくは、積層膜表面の濡れ性、滑り性、耐擦過性に優れ、その表面にハードコート加工を用いなくても電子ペーパーの表面部材として利用できる積層ポリエステルフィルムに関する。また、ハードコート加工を用いない積層ポリエステルフィルムを利用した電子ペーパーとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムはその汎用性とコストメリット故様々な用途に用いられるが、中でも透明で接着性を付与する積層膜を有する積層ポリエステルフィルムは、光学フィルムとして特に好適に用いられる。例としては薄型テレビの代表格である、液晶ディスプレイにおけるバックライト拡散板、プリズムシート、プラズマディスプレイにおける反射防止フィルム、電磁波カットフィルム、赤外線吸収フィルムなどの部材フィルムとして好適に用いられ、ガラスなどの代わりに用いることで軽量化できる。その他携帯式端末などで使用されるタッチパネルにも透明な積層ポリエステルフィルムは使用され、透明電極を設置して使用する例も見られる。
【0003】
一方、昨今のディスプレイ技術は薄型テレビや携帯式端末のみでなく、電子ペーパーと呼ばれる紙の代わりをなすものまで生み出している。電子ペーパーの基本構成は代表的な例としては米国イーインク(E Ink)社の電気泳動方式と呼ばれるものが挙げられる。例えば、透明な電極の間に電子インク粒子がサンドイッチされた構造をもち、当該電極に電圧をかけた際に、電極間に存在する、帯電させてある色素のついたインク粒子が電気的に引き寄せられることで、各種表示が可能となる(非特許文献1)。画像信号を送るための透明電極を受容する部材として、紙の様に自由に持ち運べる軽量性と曲げたりできる取り扱い性を求めて、ガラスからフィルムへと変わりつつある。
電子ペーパーの形態としてはブック型とペーパー型があり、ブック型としての利用法として電子書籍、電子辞書、ペーパー型の利用法として電子新聞、掲示板などが提案されている。但し、現時点ではディスプレイの延長線上の使用法しか提案されておらず、紙の代わりとして使用するためには、持ち運びがしやすく、多少の変形が可能で、アダプターに接続すれば自在に電子的に静止画像を表示し、その画像を保持できる機能の他に、紙の様に書き込める機能が必要になる。電子ペーパーの最大の目的は紙の代わりに使用する事で、紙の消費量を抑え、地球規模での資源の浪費をなくすことにある。
【0004】
電子ペーパーの透明電極を受容する部材フィルムとしては、例えば特許文献1の様にポリエステルフィルム上にハードコートを設置して表面の耐擦傷性を向上させたハードコートフィルムに透明電極を設置して使用する例が報告されている。しかしこの場合には下記の5つの不具合が発生する。1つ目にハードコートを設置することにより製造工程が増えることによりコストがかかる点が挙げられる。紙のように手軽に入手する事は難しくなり、どうしてもハードコート面に直接書き込むことをためらうことになる。2つ目にハードコートにより剛性が増すため、紙のように気軽に曲げたりする事が難しくなる点がある。3つ目にハードコート面に三波長蛍光灯などを近づけると見られる干渉ムラの問題がある。ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)とハードコートの屈折率に差が生じるため、界面の反射光の干渉により、色ムラが発生するが、完全になくすことは原理的に難しい。4つ目にハードコート膜厚が厚いため、表面粗さを制御する事とハードコートフィルム全体の透明性を両立させることが困難な点が挙げられる。5つ目にハードコートとポリエステルは組成が異なるが、ハードコートとポリエステルフィルムは極めて強固に密着し、かつハードコートはある程度の厚みを有するため、再生回収が難しくなる点がある。
【0005】
また他の公知例では、特許文献2ではポリブチレンテレフタレートを使用する例が報告されているが、こちらもハードコートを設置して電子ペーパーに使用するものである。また特許文献3では、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを使用する例が報告されているが、こちらもハードコートを設置して電子ペーパーに使用するものである。
【非特許文献1】「図解入門 よくわかる 最新ディスプレイ技術の基本と仕組み」株式会社 秀和システム発行
【特許文献1】特開2003−182009号公報
【特許文献2】特開2005−162768号公報
【特許文献3】特開2004−9362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハードコートフィルムを電子ペーパーの表面部材として用いた場合の不具合を解決するため、ハードコートを用いずに電子ペーパーの表面部材に使用できる積層ポリエステルフィルムを提供する事に有り、その結果要求される、電子ペーパーに水性インクで字を書き込んだ時に、はじかずに字を保持できること、及び電子ペーパー上の水性インクの字を布や指で消した時や書類として他の紙と重ね合わせた時にも傷がつかない、安価な積層ポリエステルフィルムを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は
(1)電子ペーパー用のポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムは少なくとも片面に厚さ10〜350nmの積層膜を有し、該積層膜表面における中心面平均粗さが1.0〜12.0nmであり、全光線透過率が90.5%以上であることを特徴とする電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
(2)積層膜表面における濡れ張力が25〜70mN/mである(1)に記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
(3)ヘイズが2.0%以下である(1)または(2)に記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
(4)積層膜が電子ペーパーの、人が触れる側(A側)の最外層として用いられる(1)〜(3)のいずれかに記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
(5)ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムである(1)〜(4)のいずれかに記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
(6)150℃で30分加熱後の熱収縮率が長手方向、幅方向いずれも2.0%以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の電子ペーパー用積層ポリエステルフィルム。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムを用いた電子ペーパー。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの片面に透明電極を設け、その反対面の積層膜の上にハードコートを設けず電子ペーパーの部材として使用する電子ペーパーの製造方法、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、ハードコートを使用せずに電子ペーパーの表面部材に用いることができ、電子ペーパーに水性インクで字を書き込んだ時も字をはじかずに保存でき、布や指で水性インクを除去した後や他の書類と重ね合わせて持ち運んだ後も傷が発生しない、積層ポリエステルフィルムを提供する事ができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における積層ポリエステルフィルムとは、基材ポリエステルフィルムの上に積層膜が片面、もしくは両面に設けられたものである。本発明で電子ペーパーの表層部材として用いる場合は、人が触れる側(A側)には必ず積層膜が設けられていなければならない。電子ペーパーのA側の反対側(B側)については、透明電極が設置できれば特に限定するものではなく、積層膜上に電極を設けてもよいし、基材ポリエステルフィルムの裸面に電極を設けてもよい。またB側の積層膜はA側と違う種類のものであってもかまわない。あらかじめ透明電極を設けておいた薄いフィルムを、B側に粘着剤などで貼り付けてもよい。
【0010】
A側の積層膜の厚さは10〜350nmであることが必要であり、好ましくは20〜250nm、さらに好ましくは30〜200nmである。10nm未満の場合は後述で示す易滑粒子の径が大きくできない理由から好ましくない。350nm以上の場合は積層ポリエステルフィルムを巻き取る際にフィルム1枚1枚がくっつくブロッキングと呼ばれる現象が起こる可能性が高く、また後述する易滑粒子の径が大きくなりすぎる理由からも好ましくない。
【0011】
A側の積層膜表面の中心面平均粗さは1.0〜12.0nmである必要があり、好ましくは2.0〜10.0nm、さらに好ましくは3.0〜8.0nmである。1.0nm以下である場合は、積層膜表層に書かれた水性ペンの字を布や指で拭き消す際や、書類として他の紙や樹脂シートと重ね合わせて持ち運びする際に、電子ペーパー最表層の積層ポリエステルフィルム自体に傷がつくので好ましくない。また12.0nm以上である場合は積層ポリエステルフィルムのヘイズが上昇する要因となるので好ましくない。中心面平均粗さの達成方法は後述する。
【0012】
積層ポリエステルフィルムの全光線透過率は90.5%以上が必要であり、好ましくは91.0%以上、さらに好ましくは91.5%以上である。電子ペーパーで使用する際に表面の部材フィルムが透明性でないと、外光もしくは内蔵光の利用効率が下がり、電子インク粒子などによって印字された画像が見えにくくなる。全光線透過率は積層膜の有無に大きく依存し、積層膜なしよりは片面、片面積層膜よりは両面の方が全光線透過率は増加する。空気層の屈折率1.0とポリエステルフィルム基材部分(ポリエチレンテレフタレートの場合)の屈折率1.65との界面での反射を低く抑えることが必要である。空気層と積層膜、及び積層膜とポリエステル基材部分の屈折率差を低く抑えることを考えると、積層膜の屈折率は1.45〜1.63の範囲が好ましい。またこの屈折率範囲内では、350nm以下であれば、積層膜の厚さは厚い方が全光線透過率を高くできる。
【0013】
またヘイズは2.0%以下が必要であり、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。ヘイズが2.0%以上では、拡散光によって電子ペーパーの画像が白く濁ってしまうからである。ヘイズの達成方法は後述する。
【0014】
積層膜表面の中心面平均粗さ、積層膜の厚さ、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率とヘイズは、大きく絡み合う因子である。電子ペーパーを含めた光学用途に使用される積層ポリエステルフィルムは、全光線透過率やヘイズから決まる高透明性が要求されるため、基材ポリエステルフィルムには易滑性のための粒子を添加しない方が好ましく、積層膜中に粒子を添加する事が好ましい。さて積層膜に粒子を添加した場合、その粒子径と積層膜の厚さには密接な関係がある。粒子径が積層膜厚さに対して大きすぎた場合は、積層膜が粒子を保持できなくなる。粒子径が積層膜厚さに対して小さすぎた場合は、積層膜の内部に粒子が埋もれてしまうため、易滑性の向上に寄与しなくなる。添加粒子の径は積層膜厚さの1.1倍以上3.0倍未満が好ましい。この制限下では、積層膜の厚みは上述で示した10nm以上350nm以下の範囲内でなければ、添加粒子の径を好ましく選択できない。添加粒子の径は30nm以上385nm以下が好ましく、30nm未満ではA側に要求される積層膜表面の中心線平均粗さを1.0nm以上にする事が困難であり、385nm以上では中心面平均粗さが12.0nm以上となりやすく積層ポリエステルフィルムのヘイズが2.0%以上に増加する可能性がある。この制限下でA側に要求される積層膜表面の中心面平均粗さを上げるために、添加粒子の径を大きくするだけでなく添加量を増やすことも、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率とヘイズを損なわない範囲で実施してよい。積層膜に添加する易滑粒子は、無機粒子で、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
【0015】
A側の積層膜表面の濡れ指数は25〜70mN/mであることが必要であり、好ましくは30〜65mN/m、さらに好ましくは35〜60mN/mである。25mN/m 以下の場合は、水性インクをはじくことにより水性ペンで書いた字が保持できなくなってしまうからである。また70mN/m 以上の場合は、水性インクが濡れすぎて、にじんでしまうため逆に好ましくない。
この濡れ指数を制御するための最も大きな因子は主成分の樹脂の選択である。樹脂を変えることで濡れ指数が変わることは自明であるが、基材ポリエステルフィルムの表面に配される積層膜の主成分としては、水系コーティングが可能であるための水溶もしくは水分散可能な樹脂、かつ基材ポリエステルフィルムと水性インク両方に接着性を有するものが好ましい。また全光線透過率を90.5%以上にするために、屈折率は1.45〜1.63の範囲の樹脂を選択することが好ましい。かかる状況に好ましい樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂などが好ましく、場合によっては異なる2種の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂とアクリル樹脂を組み合わせて用いてもよい。またこの濡れ指数を制御するために、帯電防止剤や界面活性剤などの添加剤を付与することも、積層ポリエステルフィルムの透明性や水性インクとの接着性を妨げない程度であれば好ましい。また積層膜の基材ポリエステルフィルムと水性インク両方の接着性を向上させるために架橋剤を添加してもよく、中でもメラミン系架橋剤やオキサゾリン系架橋剤が上記樹脂との親和性の点で好ましい。
【0016】
B側の積層膜を設置する場合は、B側の積層膜は濡れ指数、中心面平均粗さについては特に限定するものではなく、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率が90.5%以上、ヘイズが2.0%以下であることを妨げなければよい。
【0017】
次に、積層ポリエステルフィルムの製造方法について述べる。
【0018】
基材フィルム部分に用いられるポリエステル樹脂はジカルボン酸類とグリコール類を重合して得られる。そこで用いられるジカルボン酸類としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸や、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などが使用できる。また、ポリエステル樹脂に用いられるグリコール類としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールや、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどが使用できる。また、これらのジカルボン酸類、グリコール類は、それぞれ2種以上を併用してもよい。但し本発明においては、機械的強度、耐候性や耐化学薬品性、透明性などを考慮すると、前者にテレフタル酸もしくはナフタレンジカルボン酸を、後者にエチレングリコールを用いることが好ましいが、紙の代わりの安価な材料と考えるなら、前者にテレフタル酸を用いたポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましい。
【0019】
また、フィルムに走行性(易滑性)や耐候性、耐熱性などの機能を持たせるため、フィルム原料に粒子を添加してもよいが、フィルムの高透明性を損なわないように添加量や材質に十分な注意が必要である。上述したように、添加量については好ましくはきわめて少量、さらに好ましくは無添加である。フィルムの走行性(易滑性)に関しては、上述したように、積層膜の添加粒子で補助するのが好ましい。
【0020】
ポリエステルフィルムとは、ジカルボン酸類とグリコール類を重合して得られるポリエステルを、必要に応じて乾燥し、公知の溶融押出し機に供給し、スリット状のダイから単層または複合層のシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着、冷却固化して未延伸シートとした後、延伸、熱処理したフィルムのことである。熱的および機械的安定性の問題から、二軸方向の延伸であることが好ましい。延伸方法としては、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法や、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸する同時二軸延伸方法などの公知技術が用いられる。ここで長手方向とはフィルム製造ラインのフィルム走行方向であり、幅方向とはそれと直交する方向のことである。
【0021】
電子ペーパーに使用する積層ポリエステルフィルムとしては、透明電極設置の際の加熱による寸法変化は少ない方が、透明電極を欠陥なく定着させるために有利であり、150℃で30分加熱後の熱収縮率が長手方向、幅方向いずれも2.0%以下であることが必要である。長手方向、幅方向いずれも1.2%以下が好ましく、0.5%以下の場合はさらに好ましい。達成手段としてはポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、延伸時のフィルム温度は80℃〜130℃の範囲で高い方が好ましく、製造ラインの中で予備加熱をしておくことが好ましい。延伸倍率は2.5〜4.0倍の範囲で低い方が好ましい。延伸後の熱処理の温度は200〜240℃の範囲で高くすることが好ましく、逐次二軸延伸の場合も長手方向と幅方向の延伸が両方終了してから一度に行う。この熱処理の際には、ステンターの速度や幅を制御してフィルムへの張力をカットする弛緩処理を行うことが好ましい。
【0022】
本発明の積層ポリエステルフィルムを製造工程の中で、前述の積層膜を設けるのに好ましい方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程中に設け、フィルムと共に延伸する方法が好適であり、中でも生産性を考慮すると、上述で紹介するように、製膜工程中に塗布方法で設ける方法が最も好適である。また環境や人体への影響を考慮した場合、溶剤を主とする塗料ではなく、水を主として水分散性の固形分を含んだ水系塗料を用いるのが好ましい。フィルム基材上への塗布の方法は各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。またコーティング膜の塗布の均一性や接着性を考慮して、表面にコロナ放電を施しても構わない。
【0023】
本発明におけるポリエステル製の基材部分については、フィルムの厚みは、30μm以下であると熱的および機械的安定性に不足が生じ、また、350μm以上であると、剛性が高すぎて取り扱い性が低下すること、ロール長尺化が物理的に困難になること、そして透明性などに問題が生じやすいため、30〜350μmが好ましく、より好ましくは50〜300μmである。
【実施例】
【0024】
本発明における評価基準は次の通りである。
(1)積層膜の厚み
積層ポリエステルフィルムの断面を凍結超薄切片法にて切り出し、RuO染色による染色超薄切片法により、日立製作所製透過型電子顕微鏡H−7100FA型を用い、加速電圧100kVにて積層膜部の観察、写真撮影を行った。その断面写真から任意の5箇所の積層膜の厚みを拡大倍率から計算し平均化した。
(2)積層膜表面の中心面平均粗さ
JIS−B−0601に従って、小坂研究所社製 触針式三次元粗さ計「ET4000AK」により、フィルム積層膜上の任意の直線上の形状を80箇所、測定長0.5mmで計測し、Cut Off 0.25mmの演算により中心面平均粗さを求めた。接触する針の曲率は2.0μmRであった。
(3)積層ポリエステルフィルムの全光線透過率とヘイズ
スガ試験機株式会社製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて、550nmの波長の光に対して、JIS−K−7105に従って行った。
(4)積層膜表面の濡れ張力
JIS−K−6768に従って、フィルムの積層膜上に綿棒で試験用混合液を6cmの面積に塗布し、2秒後の塗膜の状態を観察する。2秒後も塗膜が塗布時と同様の形態を保つ場合にはより表面張力の高い試験用混合液を塗布していき、正確に2秒だけぬらすことのできる混合液の表面張力を積層膜面の濡れ張力とする。
(5)150℃30分間加熱後の長手方向、幅方向の熱収縮率
ASTM−D−1204に従って、フィルムサンプルに200mm間隔で標点をつけ、加重をかけずに所定の温度のオーブンで所定の時間加熱処理を行い、熱処理後の標点座標を測定して、フィルム長手方法と幅方向の熱収縮率を下記式にて算出した。
熱収縮率(%)=(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離×100
(6)積層膜側の面の水性ペン記入性
PILOT社製水性万年筆「カスタム743」を用いて、積層膜表面に30cmの直線を書き、記入後1分後に直線がはじいてとぎれてないか、もしくはにじんでないかどうか評価した。はじき・にじみなし:○、はじき・にじみあり:×と判定した。
(7)積層膜側の面の耐擦傷性
理研コランダム社製耐水研磨紙[タイプ:C34P、粒度:P2000]上に、ポリエステルフィルムを4cm×3cmの面積だけ積層膜を下にして接触させ、接触面上に断面積4cm×3cmの20gのおもりを載せ、4cmの距離を1秒間で滑らせて、取り出したフィルム片に目視できる擦り傷がついているかどうかをチェックした。目視判断時の環境は、光源は三波長蛍光灯(36ワット)とし、光源からフィルムサンプルを1.5m離し、目からフィルムの距離は20cm、光源とフィルムと目は直線上に位置し、透過光で傷を観察する。フィルム平面上に目の焦点をあて、フィルムを通して見える蛍光灯の像から1cm離れた場所の傷を観察する。裸眼もしくは矯正視力で1.2であることとする。擦り傷が見えれば×、見えなければ○と判定した。
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0025】
実施例1
常法によりテレフタル酸とエチレングリコールを用いて重合したフィラーを含まないポリエチレンテレフタレートを280℃で溶融押出し、静電印可された25℃のキャストドラム上にキャストし無延伸シートとした後、これを100℃で予熱し、この温度にてロール延伸で長手方向に3.1倍延伸した。この後、ポリエステル樹脂A95.0wt%、メラミン系架橋剤5.0wt%の固形分濃度6.0%の水系塗料に易滑剤(粒径150nmのコロイダルシリカ)を水系塗料比0.06重量%で添加した塗布液を上記のフィルム両面に塗布した。塗布の計量には小林製作所製「メイヤーバー#4」(ワイヤー径0.1mm)をフリー回転で使用した。その後、120℃で幅方向に3.5倍延伸した。その後230℃で加熱しながら長手方向に4%収縮の弛緩処理、幅方向に6%収縮の弛緩処理を行った。これにより、総膜厚100nmの積層膜が両面に形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする125μm厚さの積層フィルムを得た。
【0026】
この積層フィルムの特性を表1に示した。積層膜面の濡れ張力は45mN/m、中心面平均粗さは5.0nmであり、積層フィルムの全光線透過率は92.0%、ヘイズは0.8%、熱収縮率は長手方向0.5%、幅方向0.5%であった。積層膜面の水性ペン記入性、積層膜面の耐擦傷性とも○であり、電子ペーパーの表層部材として使用可能な積層ポリエステルフィルムであった。
ポリエステル樹脂A:テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、セバシン酸、無水トリメリット酸、エチレングリコール、1・4ブタンジオール、ネオペンチルグリコールの共重合組成体。
【0027】
実施例2
アクリル樹脂A80.0wt%、メラミン系架橋剤20.0wt%の固形分濃度9.0%の水系塗料に易滑剤(粒径300nmのコロイダルシリカ)を水系塗料比0.12重量%で添加した塗布液を実施例1と同等の方法で片面にのみ塗布し、幅方向延伸のあとの加熱しながらの弛緩処理を長手方向だけ中止し、それ以外は全て実施例1と同様の方法で製造した結果、総膜厚150nmの積層膜が片面に形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする125μm厚さの積層フィルムを得た。
【0028】
この積層フィルムの特性を表1に示した。積層膜面の濡れ張力は37mN/m、中心面平均粗さは8.0nmであり、積層フィルムの全光線透過率は91.6%、ヘイズは0.7%、熱収縮率は長手方向1.0%、幅方向0.5%であった。積層膜面の水性ペン記入性、積層膜面の耐擦傷性とも○であり、積層膜をA側に向ければ電子ペーパーの表層部材として使用可能な積層ポリエステルフィルムであった。
アクリル樹脂A:メチルメタクリレート、エチルアクリレート、Nメチロールアクリルアミド、アクリル酸の共重合組成体。
【0029】
実施例3
アクリル樹脂A78.0wt%、帯電防止剤A20.0wt%、メラミン系架橋剤2.0wt%の固形分濃度2.1%の水系塗料に易滑剤(粒径80nmのコロイダルシリカ)を水系塗料比0.12重量%で添加した塗布液を実施例1と同等の方法で両面に塗布し、それ以外は全て実施例1と同様の方法で製造した結果、総膜厚35nmの積層膜が両面に形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする125μm厚さの積層フィルムを得た。
【0030】
この積層フィルムの特性を表1に示した。積層膜面の濡れ張力は57mN/m、中心面平均粗さは3.0nmであり、積層フィルムの全光線透過率は91.5%、ヘイズは0.4%、熱収縮率は長手方向0.5%、幅方向0.5%であった。積層膜面の水性ペン記入性、積層膜面の耐擦傷性とも○であり、積層膜面をA側にする場合には、電子ペーパーの表層部材として使用可能な積層ポリエステルフィルムであった。
帯電防止剤A:ポリスチレンのスルホン化物及びその軽金属塩。
【0031】
比較例1
実施例1の水系塗料の固形分を0.3%に薄め易滑剤(粒径15nmのコロイダルシリカ)を水系塗料比0.04重量%で添加した塗布液を実施例1と同等の方法で片面にのみ塗布し、かつもう片方の面には実施例1と同じ水系塗料(易滑材も実施例1と同様)を塗布し、それ以外は全て実施例1と同様の方法で製造した結果、片方の面には総膜厚5nmの積層膜が形成され、もう片方の面に実施例1と同様の積層膜を形成したポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする125μm厚さの積層フィルムを得た。
【0032】
この積層フィルムの特性を表1に示した。この積層フィルムの総膜厚5nmの方の積層膜をA側に向けた場合、A側の積層膜面の濡れ張力は45mN/mであったが、中心面平均粗さは積層膜の厚さが十分でなく易滑剤に径の大きなものを選べなかったため0.8nmであった。積層フィルムの全光線透過率は91.0%、ヘイズは0.5%、熱収縮率は長手方向0.5%、幅方向0.5%であった。積層膜面の水性ペン記入性は○であったが、積層膜面の耐擦傷性は×であり、電子ペーパーの表層部材としては使用することができない積層ポリエステルフィルムであった。
【0033】
比較例2
実施例1の水系塗料の固形分を24.0%に濃度を上げ易滑剤(粒径500nmのコロイダルシリカ)を水系塗料比0.08重量%で添加した塗布液を実施例1と同等の方法で片面にのみ塗布し、かつもう片方の面には実施例1と同じ水系塗料(易滑材も実施例1と同様)を塗布し、それ以外は全て実施例1と同様の方法で製造した結果、片方の面には総膜厚400nmの積層膜が形成され、もう片方の面に実施例1と同様の積層膜を形成したポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする125μm厚さの積層フィルムを得た。
【0034】
この積層フィルムの特性を表1に示した。この積層フィルムの総膜厚400nmの方の積層膜をA側に向けた場合、A側の積層膜面の濡れ張力は45mN/mであり、中心面平均粗さは10.0nmであった。積層フィルムの全光線透過率は91.5%であったが、ヘイズは1.8%で使用不可能なレベルではないが少し高く画面が少し白く見える電子ペーパーであった。熱収縮率は長手方向0.5%、幅方向0.5%であった。積層膜面の水性ペン記入性は○であったが、ロール製品でのブロッキングのため元々フィルム表層に傷と積層膜はがれ物がついており、積層膜面の耐擦傷性試験をやるまでもなく外観は×であった。そのため電子ペーパーの表層部材としては使用することができない積層ポリエステルフィルムであった。
【0035】
比較例3
実施例2で製造した片面積層フィルムを、積層膜面側ではなく、積層膜を設置していないフィルム基材裸面をA側として使用する検討を実施した。
【0036】
この積層フィルムの特性を表1に示した。ポリエステル基材裸面の濡れ張力は37mN/m、中心面平均粗さは0.5nmであり、積層膜面の水性ペン記入性は○であったが、積層膜面の耐擦傷性は×であり、積層膜が表層を向いていなければ電子ペーパーの表層部材としては使えないことが分かった。
【0037】
比較例4
実施例1の水系塗料に易滑剤(粒径300nmのコロイダルシリカ)を水系塗料比0.24重量%で添加した塗布液を実施例1と同等の方法で片面にのみ塗布し、かつもう片方の面には実施例1と同じ水系塗料(易滑材も実施例1と同様)を塗布し、それ以外は全て実施例1と同様の方法で製造した結果、総膜厚100nmの積層膜が両面に形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする125μm厚さの積層フィルムを得た。
【0038】
この積層フィルムの特性を表1に示した。この積層フィルムの粒径300nmのコロイダルシリカを0.24重量%で添加した方の積層膜をA側に向けた場合、A側の積層膜面の濡れ張力は45mN/mであったが、中心面平均粗さは13.0nmであり、積層フィルムの全光線透過率は91.8%であったが、ヘイズは2.2%で画面が少し白く見えるため電子ペーパーの表層部材としては使用することができない積層ポリエステルフィルムであった。熱収縮率は長手方向0.5%、幅方向0.5%であり、積層膜面の水性ペン記入性、積層膜面の耐擦傷性とも○であった。
【0039】
比較例5
常法によりテレフタル酸とエチレングリコールを用いて重合したポリエチレンテレフタレートに粒径2.5μmのシリカのフィラーを原料比0.06重量%添加したものを280℃で溶融押出し、積層膜については実施例1と同様のものを片面だけに塗布し、それ以外は全て実施例1と同様の方法で製造した結果、総膜厚100nmの積層膜が片面に形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする125μm厚さの積層フィルムを得た。
【0040】
この積層フィルムの特性を表1に示した。積層膜面の濡れ張力は45mN/m、中心面平均粗さは5.0nmであり、熱収縮率は長手方向0.5%、幅方向0.5%であった。積層膜面の水性ペン記入性、積層膜面の耐擦傷性とも○であった。但し積層フィルムの全光線透過率は88.5%、ヘイズは10.0%であり、画面が白く見えること、及び全体的に輝度が足りなくなることから、電子ペーパーの表層部材としては使用することができない積層ポリエステルフィルムであった。
【0041】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は電子ペーパーの表層基材として特に有効に利用できる。直接水性ペンで字を書くことができる機能とあわせ、ハードコートを使用しない点から気軽に字を書き込めるだけの低コストを実現できる手段となり得るため、紙との置き換えを現実的に可能とし、紙の地球規模的使用量の削減に寄与できる。
しかし本発明の利用可能性は上記に限定されるものではなく、光学用途に好適に使用され、それ以外でも高透明、低ヘイズを要求するあらゆる部材に対して好適に使用可能である。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−1050(P2008−1050A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174953(P2006−174953)