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【発明の名称】 上塗塗料、塗装方法および自動車用外装部品
【発明者】 【氏名】朝井 雅剛

【要約】 【課題】省エネでかつ審美性の高い仕上がり外観を有する複層塗膜を得る。

【構成】被塗基材10上にベース塗膜12を形成し、さらに第1クリア塗膜14、第2クリア塗膜18を順次有する複層塗膜を形成するための塗装方法において、被塗基材10に対しベース塗料を塗装し、次いでウエットオンウエットにて第1クリア塗料を塗装し、次にウエットオンウエットにて第2クリア塗料を塗装し、その後、焼き付け乾燥を行う塗装方法であって、第1クリア塗料は、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料であり、イソシアネート化合物と多価アルコールの配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0である塗装方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース塗料と第1クリア塗料と第2クリア塗料とを含み被塗基材上に複層塗膜を形成するための上塗塗料において、
前記第1クリア塗料は、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料であり、
前記第2クリア塗料は、カルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有する熱硬化性塗料であり、
前記イソシアネート化合物と多価アルコールの配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0であることを特徴とする上塗塗料。
【請求項2】
被塗基材上にベース塗膜を形成し、さらに第1クリア塗膜、第2クリア塗膜を順次有する複層塗膜を形成するための塗装方法において、
被塗基材に対しベース塗料を塗装し、
次いでウエットオンウエットにて第1クリア塗料を塗装し、
次にウエットオンウエットにて第2クリア塗料を塗装し、
その後、焼き付け乾燥を行う塗装方法であって、
前記第1クリア塗料は、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料であり、
前記イソシアネート化合物と多価アルコールの配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0であることを特徴とする塗装方法。
【請求項3】
請求項1に記載の上塗塗料を塗装してなることを特徴とする自動車用外装部品。
【請求項4】
請求項2に記載の塗装方法を用いて塗装されてなることを特徴とする自動車用外装部品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、上塗塗料、塗装方法および自動車用外装部品、特に、上塗塗膜における層間付着性を向上可能な上塗り塗料および塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来、自動車車体外板部に上塗塗膜を形成する方法として、着色ベース塗料を塗装し、次いで2クリア塗料を塗装したのち、加熱硬化させ2層塗膜を形成する2コート1ベーク(2C1B)方法が用いられていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、塗膜の平滑性、鮮鋭性などの向上の観点から、上塗塗料を2度塗りする3コート方式が、近年採用され始めている。例えば、3コート方式として、着色ベース塗料と第1クリア塗料とを塗装した後、加熱して両塗装を硬化させてから第2クリア塗料を塗装し、再び加熱硬化させ3層塗膜を形成する3コート2ベーク(3C2B)方式(例えば、特許文献2,3)と、着色ベース塗料と第1クリア塗料と第2クリア塗料とをウエットオンウエットで塗装してから、この3層塗膜を同時に硬化させる3コート1ベーク(3C1B)方式とが既知である。
【0004】
上述した3コート2ベーク方式は、2回の加熱工程を有するため、3コート1ベーク方式に比べ1工程多くなってしまい、省エネ化にあまりそぐわない。また、3コート2ベーク方式は、第1クリア塗料を塗装してから加熱し、その後に第2クリア塗料を塗装するため、第1クリア塗膜と第2クリア塗膜との層間付着性が低下してしまうおそれもあった。
【0005】
そこで、3コート1ベーク方式で上塗塗装を行う方法が提案されている。例えば、特許文献4には、数平均分子量が10,000〜12,000で水酸基価100〜110mgKOH/gでかつ酸価5mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂を、第1クリア塗料ならびに第2クリア塗料として用いることが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−85659号公報
【特許文献2】特開2003−277678号公報
【特許文献3】特開2000−136345号公報
【特許文献4】特開平10−244218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、更なる塗膜の平滑性、鮮鋭性の向上が望まれ、さらに、耐久性の観点からも第1クリア塗膜と第2クリア塗膜とのより強固な層間付着性が切望されている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、上塗塗膜における層間付着性を向上させる上塗り塗料および塗装方法、これらから得られる自動車用外装部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上塗塗料、塗装方法および自動車用外装部品は、以下の特徴を有する。
【0010】
(1)ベース塗料と第1クリア塗料と第2クリア塗料とを含み被塗基材上に複層塗膜を形成するための上塗塗料において、前記第1クリア塗料は、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料であり、前記第2クリア塗料は、カルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有する熱硬化性塗料であり、前記イソシアネート化合物と多価アルコールの配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0である。
【0011】
第1クリア塗料を構成するイソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料は、常温でも2液が反応可能であるため、第1クリア塗料と第2クリア塗料をウエットオンウエットで塗装しても、第1クリア塗膜の平滑性を確保することができる。さらに、第1クリア塗料中のイソシアネート化合物と多価アルコールの配合量をモル比でNCO/OH比=0.5〜1.0とすることにより、第1クリア塗料と第2クリア塗料をウエットオンウエットで塗装し同時に焼き付けした際、第1クリア塗膜塗面に付着性を促進する残留水酸基(OH基)が多く存在することになる。その結果、焼き付け後の第1クリア塗膜と第2クリア塗膜との層間付着性が向上し、外観および耐久性の高い複層上塗塗膜を得ることができる。
【0012】
(2)被塗基材上にベース塗膜を形成し、さらに第1クリア塗膜、第2クリア塗膜を順次有する複層塗膜を形成するための塗装方法において、被塗基材に対しベース塗料を塗装し、次いでウエットオンウエットにて第1クリア塗料を塗装し、次にウエットオンウエットにて第2クリア塗料を塗装し、その後、焼き付け乾燥を行う塗装方法であって、前記第1クリア塗料は、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料であり、前記イソシアネート化合物と多価アルコールの配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0である。
【0013】
上述したように、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料を第1クリア塗料として用いることにより、常温でも2液が反応可能であるため、第1クリア塗料と第2クリア塗料をウエットオンウエットで塗装しても、第1クリア塗膜の平滑性を確保しながら2層からなる複層クリア塗膜を形成することができる。したがって、3コート2ベーク方式に比べ1回焼き付けを省略することができ、経済性に優れる。また、第1クリア塗料中のイソシアネート化合物と多価アルコールの配合量をモル比でNCO/OH比=0.5〜1.0とすることにより、第1クリア塗料と第2クリア塗料をウエットオンウエットで塗装し同時に焼き付けした際に、第1クリア塗膜塗面に付着性を促進する残留水酸基(OH基)が多く存在することになる。したがって、焼き付け後の第1クリア塗膜と第2クリア塗膜との層間付着性が向上し、外観および耐久性の高い複層上塗塗膜を得ることができる。
【0014】
(3)上記(1)に記載の上塗塗料を塗装してなる自動車用外装部品である。
【0015】
(4)上記(2)に記載の塗装方法を用いて塗装されてなる自動車用外装部品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、平滑性、鮮鋭性を有する2層クリア塗膜の層間付着性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
[上塗塗料]
本実施の形態の上塗塗料は、ベース塗料と第1クリア塗料と第2クリア塗料とを含み被塗基材上に複層塗膜を形成するための上塗塗料であって、前記第1クリア塗料は、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ウレタン塗料であり、前記第2クリア塗料は、カルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有する熱硬化性塗料であり、前記イソシアネート化合物と多価アルコールの配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0である。なお、本発明では、「多価アルコール」と「ポリオール」とは同義である。
【0019】
<ベース塗料>
本実施の形態のベース塗料は、基体樹脂と架橋剤とを含有し、基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等を挙げることができる。また、架橋剤としては、例えば、基体樹脂中の官能基と反応し得るメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物等を挙げることができる。基体樹脂と架橋剤との比率は、両成分の合計量を基準に、基体樹脂は50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%、架橋剤は50〜10重量%、好ましくは、40〜20重量%である。なお、ベース塗料としてメラミン−アクリル系樹脂等の1液性硬化型塗料が好ましい。
【0020】
ベース塗料が着色ベース塗料である場合には、着色顔料が添加される。着色顔料としては、例えば、ソリッドカラー顔料、メタリック顔料及びパール調顔料等が使用できる。ソリッドカラー顔料として、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の有機顔料が挙げられる。メタリック顔料としては、例えば、りん片状アルミニウム、雲母状酸化鉄等が挙げられる。また、パール調顔料としては、例えば、雲母、金属酸化物で表面被覆した雲母等が挙げられる。
【0021】
これらの着色顔料は、単独で又は2種以上併用することが可能である。これらの着色顔料の配合量は、目的とする色調、メタリック感、パール調に応じて、任意に選択でき、制限は特にない。
【0022】
有機溶剤は上記基体樹脂、架橋剤及び着色顔料を混合して溶解乃至分散できるものであれば良く、例えば、炭化水素系、エステル系、エーテル系、アルコール系、ケトン系等の通常の塗料用溶剤が使用できる。
【0023】
着色ベース塗料は、上記基体樹脂、架橋剤及び着色顔料を有機溶剤に常法により混合して溶解乃至分散させることによって調製できる。
【0024】
<第1クリア塗料>
本実施の形態の第1クリア塗料は、低温硬化性クリア塗料であり、この低温硬化性クリア塗料としては、好ましくは、例えば70〜80℃で10〜30分といったプレヒート乾燥条件においては少なくとも十分な硬化性を示すものであり、かつ多層塗装における最表面層として適した光沢性、耐候性、硬度等の諸性能を満たす硬化剤ないし架橋剤によって硬化するタイプのものである。上記のような低温硬化性クリア塗料としては、2液性ポリウレタン塗料、特にポリオール硬化型ポリウレタン塗料が挙げられる。
【0025】
ポリオール硬化型ポリウレタン塗料は、ポリエステル系やポリエーテル系、あるいは水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂などのポリオールの水酸基を、イソシアネートプレポリマーと化学反応させてウレタン結合で硬化する塗料である。
【0026】
前記ポリオール成分はそのいずれであってもよいが、ベース塗料との付着性を考慮するとベース塗料と同じ系のものが望ましく、また、例えば、耐有機溶剤性という面からはポリエステル系のものが、耐アルカリ、耐水性という面からはポリエーテル系のものが、耐汚染性、速乾性という面からは(メタ)アクリル系のものがそれぞれ望ましい。
【0027】
本実施の形態の第1クリア塗料の2液中の多価アルコールとしては、アルキレン(直鎖状、側鎖状、脂環式)多価アルコールまたはアルキレンエーテル多価アルコールであり、1分子中に2個以上の水酸基を有する。例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールマンニットなどの3価以上の多価アルコール;およびこれらの2価アルコールおよび/または3価以上の多価アルコールをエーテル化してなるアルキレンエーテルポリオール等が挙げられる。
【0028】
また、上記多価アルコールの炭素鎖長が短い程、第1クリア塗料のソリッド性が高くなり、クリア感が発現する。
【0029】
一方、本実施の形態の第1クリア塗料の2液中のイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられ、さらにこれらの水添物も用いることができる。これらのうち、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0030】
なお、ポリオール硬化型ポリウレタン塗料において使用されるイソシアネートプレポリマーは、上記に例示したごときイソシアネート単体を原料として構成される各種のものであってよい。
【0031】
第1クリア塗料を塗装した場合、以下に示すような2液の反応により、ポリウレタン塗膜を形成させることができる。特に、低温焼き付け(例えば、80℃)でも、平滑性・クリア性等の塗膜性能を確保することができる。
【化1】


【0032】
本実施の形態において、上記多価アルコールとイソシアネート化合物の配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0である。ここで、NCO/OH比が0.5を下回った場合、焼き付け硬化後に第1クリア塗膜塗面に残存する官能基である水酸基が少なく、後述する第2クリア塗膜との層間付着性が劣るおそれがある。一方、NCO/OH比が1.0を超える場合には、未反応のNCOが塗膜中の水分と反応し、吸水性を有するようになるおそれが高い。従って、塗膜中に水分が溜まり易くなり、その結果としてブリスター(膨れ)等の不具合が発生する。
【0033】
<第2クリア塗料>
本実施の形態の第2クリア塗料は、特に、外観の審美性、耐候性の高いことが望ましい。したがって、以下のものに限定されるわけではないが、好ましくは、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有化合物とを含有する透明塗膜を形成する塗料であって、第1クリア塗料の硬化もしくは未硬化の塗面に塗装する塗料である。
【0034】
第2クリア塗料で使用するカルボキシル基含有樹脂は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する樹脂であり、下記の群から選ばれた1種もしくは2種以上が使用できる。
【0035】
例えば、アクリル樹脂中の水酸基にハーフエステル化反応により多塩基酸無水物を開環付加してカルボキシル基を2個以上導入したものを用いることができる。
【0036】
上記アクリル樹脂としては、例えば、アクリル系単量体としては例えばアクリル酸またはメタクリル酸と炭素数1〜20のモノアルコールとのモノエステル化物が使用でき、該単量体にはエポキシ基、水酸基およびカルボキシル基などの官能基を有していない。また、上記アクリル系単量体として、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレートおよびメチルグリシジルメタクリレートなどを用いることもできる。また、上述のアクリル系単量体に、スチレン、ビニルトルエンアクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのその他の単量体を併用した共重合体も包含され、その他の単量体の使用量はアクリル系単量体の同量以下が好ましい。また、上記アクリル樹脂の数平均分子量は約3,000〜100,000、特に4,000〜50,000が適している。
【0037】
さらに、上記アクリル樹脂で例示したアクリル系単量体および水酸基含有単量体を含有する単量体成分を共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂の水酸基の一部もしくは全部に多塩基酸無水物をハーフエステル化反応により付加し、該無水環を開環して遊離のカルボキシル基を導入することにより、カルボキシル基含有樹脂が得られる。
【0038】
ハーフエステル化反応前の水酸基含有アクリル樹脂は、1分子中に2個以上の水酸基を有しており、これは水酸基当量で10〜200mgKOH/g、特に20〜120mgKOH/gが適している。
【0039】
ハーフエステル化させる上記多塩基酸無水物としては、たとえば無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸等が挙げられる。
【0040】
ハーフエステル化反応は既知の方法で行え、この反応によって、無水環が開き、一方のカルボキシル基はアクリル樹脂中の水酸基とエステル反応し、残りのカルボキシル基は遊離の状態でアクリル樹脂に結合している。
【0041】
多塩基酸無水物と水酸基含有単量体とをあらかじめハーフエステル化反応させてから、これをアクリル系単量体、さらに必要に応じて水酸基含有単量体と共重合せしめることによっても、カルボキシル基含有樹脂が得られる。
【0042】
したがって、上記カルボキシル基含有樹脂は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有し、さらに水酸基も併存することもある。その酸価は10〜200mgKOH/g、特に20〜120mgKOH/gが、水酸基価は190mgKOH/g以下、好ましくは5〜120mgKOH/g、特に好ましくは10〜100mgKOH/gが適している。
【0043】
一方、エポキシ基含有化合物としては、例えば、7−オキサビシクロ(4,1,0)ヘプト−3−イルメチルエステルのような脂環式エポキシ化合物、水添ビスフェノール類のグリシジルエーテル、および1分子中に2個以上の水酸基を有する脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル、ビスフェノール類のグリシジルエーテルなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する化合物も使用できる。
【0044】
第2クリア塗料における2液成分の反応は、以下に示す通りである。
【化2】


【0045】
また、第2クリア塗料は、さらに、希釈溶剤(反応性希釈溶剤を含む)、その他、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤等の添加剤が必要に応じて添加されている。
【0046】
また、上述した第1,第2クリア塗料は、クリア塗料中にカラーベース塗料中に含まれる顔料と同種ないし異種の顔料を透明性を損なわない限度において配合し、いわゆるカラークリア塗料とすることも可能である。この場合クリア塗料中に配合される顔料としてはカラーベース塗料中に含まれる顔料よりも小粒径のものとすることが望ましい。またこの低温硬化型クリア塗料は、一般的な溶液型あるいはハイソリッド型等のいずれの形態とされているものでもよいが、このうち特に、一般的な溶液型のものが好ましい。
【0047】
[塗装方法]
本実施の形態の塗装方法は、被塗基材上にベース塗膜を形成し、さらに第1クリア塗膜、第2クリア塗膜を順次有する複層塗膜を形成するための塗装方法において、被塗基材に対しベース塗料を塗装し、次いでウエットオンウエットにて第1クリア塗料を塗装し、次にウエットオンウエットにて第2クリア塗料を塗装し、その後、焼き付け乾燥を行う塗装方法であって、前記第1クリア塗料は、イソシアネート化合物と多価アルコールとからなる2液性ポリウレタン塗料であり、前記イソシアネート化合物と多価アルコールの配合量は、モル比にてNCO/OH比が0.5〜1.0であり、3コート1ベークの方式である。
【0048】
本実施の形態の塗装方法において、被塗基材としては、例えば、自動車車体外板などの鋼板ないし金属部品、樹脂バンパー等の樹脂部品などが挙げられる。また、上記自動車車体外板としては、自動車のボディーも含まれる。
【0049】
本実施の形態の塗装方法は、図1,図2を用いて、具体的に説明する。なお、図1には、自動車のボディーの塗装方法の概要が示され、図2には、自動車のボディーのドア開口部への塗装方法の概要が示されている。また、図1,図2において、被塗基材10として、電着済みの鋼板に中塗り塗装し140℃で18分程度保持して焼き付けされた自動車車体外板を例に取って、以下に説明する。
【0050】
上記電着塗膜は、鋼板表面に下塗り塗料としてカチオン電着塗料を用い塗装することにより得られる。ここで、カチオン電着塗料としては、カチオン性高分子化合物の塩の水溶液もしくは水分散液に、必要に応じて架橋剤、顔料や各種添加剤を配合してなるそれ自体既知のものを使用することができ、その種類は特に限定されない。カチオン性高分子化合物としては、例えば、架橋性官能基を有するアクリル樹脂またはエポキシ樹脂にアミノ基などのカチオン性基を導入したものが挙げられ、これは有機酸または無機酸などで中和することによって水溶化もしくは水分散化することができる。これらの高分子化合物を硬化するための架橋剤としては、ブロックポリイソシアネート化合物、脂環式エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0051】
電着塗膜は、硬化塗膜を基準にして、通常、10〜40μmの範囲が好ましく、塗膜は140〜220℃で10〜40分間加熱硬化させることができる。
【0052】
上記中塗塗膜を形成する中塗り塗料としては、ビヒクル成分として使用される熱硬化性樹脂組成物は、基本的に、基体樹脂と架橋剤とからなり、基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基のような架橋性官能基を1分子中に2個以上有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられ、また、架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂などのようなアミノ樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物などが挙げられる。
【0053】
また、中塗塗膜は、膜厚30〜40μmで塗装される。必要に応じて、中塗塗膜には、例えば酸化チタン顔料、アルミニウムフレークなどの顔料を含むことができる。
【0054】
さらに、ベース塗料を用いたベース塗膜形成について、上述したように、被塗基材10として、自動車車体外板を自動車のボディー一般部の場合とドア開口部の場合とに分けて、以下に説明する。
【0055】
また、図1に示すベース塗膜12を形成するベース塗料としては、溶剤系ベース塗料と水性ベース塗料とがある。そして、水性ベース塗料、特に熱硬化型水性塗料は、上述したように、顔料と、水に溶解又は分散可能な樹脂と、必要に応じて架橋剤と、溶媒である水とを含有する。水に溶解又は分散可能な樹脂としては、例えば、1分子中にカルボキシル基等の親水基と水酸基等の架橋性官能基とを含有する樹脂であって、具体的に、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、例えば、疎水性又は親水性のアルキルエーテルメラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物等を挙げることができる。一方、溶剤系ベース塗料は、鱗片状のチタン酸顔料と、上記同様の樹脂と、必要に応じて架橋剤と、溶剤とを含有する。
【0056】
また、ベース塗膜12は、水性ベース塗料を用いた場合には膜厚10〜15μmで塗装され、溶剤系ベース塗料を用いた場合には、膜厚12〜18μmで塗装される。
【0057】
そして、上記したような本実施の形態の上塗り塗料を用いて、被塗基材10に対し、前記ベース塗料を塗装し、80℃で約10分間プレヒートを行い、次いでウェットオンウェットにて前記第1クリア塗料を塗装し、80℃で約10分間プレヒートを行う。このプレヒートにより、第1クリア塗膜14の塗面に、特に水酸基由来の塗面残留官能基16を存在させることができる。
【0058】
また、第1クリア塗膜14は、20〜50μmの膜厚で塗装される。
【0059】
次いで、第1クリア塗面に第2クリア塗料をウエットオンウエットで塗装し、130〜160℃、好ましくは140℃で、15〜20分間、好ましくは18分で焼き付け乾燥させる。第2クリア塗膜18は、20〜50μmの膜厚で塗装される。
【0060】
上記構成により、ベース塗料と第1クリア塗料と第2クリア塗料をウエットオンウエットで塗装し、それぞれ低温でプレヒートしただけであるため、ベース塗膜12と第1クリア塗膜14の塗面にはそれぞれ塗面残留官能基16が存在する。したがって、ベース塗膜12と第1クリア塗膜14との層間付着性、および第1クリア塗膜14と第2クリア塗膜18との層間付着性が高い。また、3コート2プレヒート1ベーク方式であるため、後述する図3の3コート1プレヒート2ベーク方式に比べ省エネ化を達成できる。さらに、第1クリア料の塗装後低温でプレヒートするのみであるため、第1クリア塗膜の熱収縮を抑制することができ、第1クリア塗膜14の塗面の平滑性を向上させることができる。したがって、2層クリア塗膜の鮮鋭性も向上する。
【0061】
一方、ボディーのドア開口部は、ドアを閉めている際には、自動車車体外観とならないため、単層クリア塗膜であっても、自動車車体外観の審美性を損ねない。このように単層クリア塗膜の形成のみとすることにより、塗装工程数を削減することができ、さらに複層クリア塗膜形成の場合のようにクリア塗装のために複数回ドアを開け閉めする作業者も不要となり、省エネ化が図れる。
【0062】
自動車ボディーのドア開口部は、自動車ボディーの塗装の一環で行われるものであり、したがって、本実施の形態におけるドア開口部の塗装方法は、図1に示す第1クリア塗料の塗装を省略するものとなる。すなわち、図2に示すように、被塗基材10に対し、前記ベース塗料を塗装し、80℃で約10分間プレヒートを行い、次いでウェットオンウェットにて前記第2クリア塗料を塗装し、130〜160℃、好ましくは140℃で、15〜20分間、好ましくは18分で焼き付け乾燥させる。第2クリア塗膜18は、20〜50μmの膜厚で塗装される。
【0063】
上記構成により、ベース塗料の塗装後低温でプレヒートしたのち、第2クリア塗料をウエットオンウエットで塗装しているため、ベース塗膜12の塗面にはそれぞれ塗面残留官能基26が存在する。したがって、ベース塗膜12と第2クリア塗膜18との層間付着性は高い。また、2コート1プレヒート1ベーク方式であるため、後述する図4の2コート2ベーク方式に比べ省エネ化を達成できる。さらに、ベース塗料の塗装後低温でプレヒートしているだけであるため、ベース塗膜12の熱収縮を抑制することができ、ベース塗膜12の塗面の平滑性を向上させることができる。したがって、単層クリア塗膜であってもドア開口部であれば、十分審美性を確保することができる。
【0064】
次に、本実施の形態で用いた第2クリア塗料を第1クリア塗料として用いた場合について図3,図4を用いて、参考例として説明する。
【0065】
第2クリア塗料は、上述したように、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとからなる2液性塗料である。したがって、120℃より高温でなければ反応が開始しないため、図3に示すように、例えば140℃で焼付を行う必要がある。すなわち、図3に示すように、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとからなる2液性の第1クリア塗料を塗装した後、140℃で焼付することにより、第1クリア塗膜24の塗面に塗面残留官能基36が発現されない。さらに、この第1クリア塗膜24の塗面に、上述同様の第2クリア塗料を塗装し焼付乾燥することによって、第1,第2クリア塗膜の層間付着性は十分に得られる。但し、図1に示す工程に比べ、3コート2ベークであるため、2回の焼付工程が必要であり、さらに焼き付け時間を考慮すると塗装時間が長時間化するおそれがあり、好ましくない。
【0066】
さらに、図4に示すドア開口部の単層クリア塗装の場合、自動車ボディーとともに塗装工程が進行するため、ベース塗膜12は、図3に示すように例えば140℃で焼付乾燥され、ベース塗膜12の塗面の塗面残留官能基26が消失してしまう。したがって、ベース塗膜12上に形成された第2クリア塗膜18との層間付着性が劣化する可能性があり、好ましくない。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明の上塗塗料塗装方法について、実施例を用いて具体的に説明する。
【0068】
実施例1.
本実施例では、自動車のボディーを基材として用い、基材である図1に示すボディー一般部と図2に示すドア開口部とを同時に、以下の塗料を用いて塗装した。すなわち、電着塗装を行った後、中塗塗料として、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂とを基材樹脂とする塗料を用いた。また、ベース塗料として、アクリル樹脂とメラミン樹脂とを基材樹脂とし、酸化チタン顔料を含有率PWC20%で含有する塗料を用いた。さらに、第1クリア塗料として、NCO/OH比(モル比)を1.0に調整した2液性ウレタン塗料R254(日本ビーケミカル製)を塗装し、80℃で10分間プレヒートした。さらに、第2クリア塗料として、カルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するクリア塗料(「マックフローO−80クリヤー」、日本ペイント社製)を用いた。
【0069】
さらに、図1,2を用いて、本実施例の塗装方法を説明する。まず、電着済みの鋼板に顔料を含まない中塗り塗料を膜厚35μmとなるように塗装し、最高到達温度140℃で18分間焼き付けを行った。次いで顔料含有水性ベース塗料を、膜厚13μmで塗装した。ここで、水性ベース塗料を用いるため、最高到達温度80℃で10分間プレヒートを行い、その後、ボディー一般部にはベース塗膜上に膜厚35μmとなるように第1クリア塗料を塗布し、最高到達温度80℃で10分間プレヒートを行い、さらに、ボディー一般部とドア開口部に、膜厚35μmとなるように第2クリア塗料を塗布し、最高到達温度140℃で18分間保持して焼き付けを行った。
【0070】
実施例2.
第1クリア塗料として、NCO/OH比(モル比)を0.5に調整した2液性ウレタン塗料R254(日本ビーケミカル製)を用いた以外は、実施例1に準拠して複層塗膜を形成した。
【0071】
比較例1.
実施例1の第1クリア塗料の代わりに、実施例1の第2クリア塗料を用いた以外は、実施例1に準拠して複層塗膜を形成した。
【0072】
比較例2.
図3に示す塗装工程であって、実施例1の第1クリア塗料の代わりに、実施例1の第2クリア塗料を用い、さらに、第1クリア塗料を塗装後に140℃で18分間焼付乾燥した以外は、実施例1に準拠して複層塗膜を形成した。
【0073】
比較例3.
第1クリア塗料を塗装後に140℃で18分間焼付乾燥した以外は、実施例1に準拠して複層塗膜を形成した。
【0074】
比較例4.
第1クリア塗料として、NCO/OH比(モル比)を0.3に調整した2液性ウレタン塗料R254(日本ビーケミカル製)を用いた以外は、実施例1に準拠して複層塗膜を形成した。
【0075】
比較例5.
第1クリア塗料として、NCO/OH比(モル比)を1.1に調整した2液性ウレタン塗料R254(日本ビーケミカル製)を用いた以外は、実施例1に準拠して複層塗膜を形成した。
【0076】
<評価方法>
上記条件により、複層塗膜の仕上がり外観を目視により評価した。
◎:仕上がり外観極めて良好
○:仕上がり外観良好
△:仕上がり外観やや不良
また、付着性については、ゴバン目試験を行い、評価した。その結果を表1に示す。
ゴバン目試験は、塗膜にカッターで2mm平方のマス目100個を描き、その上からセロハンテープを圧着して瞬間的に引き剥がし、100個のマス目の塗膜の離脱状態を調べる試験である。評価基準は次の通りである。
○:0/100
×:1/100〜100/100
また、耐水付着性試験は、塗膜試験片を40℃の水中に10日間浸漬させた後に、上記ゴバン付着試験を行い、評価を行った。
【0077】
【表1】


【0078】
表1に示すように、本発明の第1クリア塗料を用いることにより、3コート1ベーク方式を採用することができ、さらに、第1クリア塗膜の熱収縮が抑制されるため、塗膜の仕上がり外観が向上する。さらに、第1クリア塗料の2液のNCO/OH比(モル比)によって、第1、第2クリア塗膜の層間付着性が高くなり、より第1クリア塗膜の平滑性を反映した鮮鋭性の高い塗膜を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の上塗塗料および塗装方法は、より審美性の要求される塗膜が形成される用途であれば、いかなる用途にも有効であるが、例えば車両用塗膜の形成に供することができ、特に車両用塗膜としては、車両外装の塗膜形成に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の塗装方法において自動車ボディーの一般部の塗装工程の一例を説明する工程概略図である。
【図2】本発明の塗装方法において自動車ボディーのドア開口部の塗装工程の一例を説明する工程概略図である。
【図3】本発明の塗装方法を説明するための自動車ボディーの一般部の塗装工程の参考例を説明する工程概略図である。
【図4】本発明の塗装方法を説明するための自動車ボディーのドア開口部の塗装工程の参考例を説明する工程概略図である。
【符号の説明】
【0081】
10 被塗基材、12 ベース塗膜、14 第1クリア塗膜、16 塗面残留官能基、18 第2クリア塗膜。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純


【公開番号】 特開2008−1036(P2008−1036A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174433(P2006−174433)