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【発明の名称】 透明カバー部品用転写シート及び透明カバー部品
【発明者】 【氏名】渡瀬 友也

【氏名】笠原 拓也

【要約】 【課題】ブロッキングを防止することができ、同時にヘイズ、ギラツキの問題を解消することができる透明カバー部品用転写シート及び転写シートを用いた透明カバー部品を提供する。

【構成】基材フィルム35と、前記基材フィルムの表面に形成された転写層32を有し、成形樹脂体である透明カバー成形体90の表面に前記転写層32を前記基材フィルム35から剥離させて転写する透明カバー成形体用転写シートである。前記転写層32は、基材フィルム35から剥離して、転写後に前記透明カバー成形体の最外面を形成する透明保護層34が設けられており、前記透明保護層34は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂又はエポキシ系樹脂又はこれらの2種以上の混合樹脂で構成され、平均粒子径が1μm以下で屈折率が1.42から1.52である体質顔料37を固形分比率で10から70重量%含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの表面に形成された転写層を有し、成形樹脂体である透明カバー成形体の表面に前記転写層を前記基材フィルムから剥離させて転写する透明カバー成形体用転写シートであって、
前記転写層は、転写後に基材フィルムから剥離して、前記透明カバー成形体の最外面を形成する透明保護層が設けられており、
前記透明保護層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂又はエポキシ系樹脂又はこれらの2種以上の混合樹脂で構成され、平均粒子径が1μm以下で屈折率が1.42から1.52である体質顔料を固形分比率で10から70重量%含むことを特徴とする、透明カバー成形体用転写シート。
【請求項2】
前記体質顔料は、前記透明保護層を形成している樹脂と略等しい屈折率を有することを特徴とする、請求項1に記載の透明カバー成形体用転写シート。
【請求項3】
前記体質顔料の屈折率は、前記透明保護層を形成している樹脂の屈折率と0.03以下の差である請求項1に記載の透明カバー成形体用転写シート。
【請求項4】
前記表面保護層は、活性エネルギー線硬化樹脂で構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の透明カバー成形体用転写シート。
【請求項5】
前記体質顔料は、シリカ系反応性微粒子で構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の透明カバー成形体用転写シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の透明カバー成形体用転写シートの転写層が熱転写又は成形同時転写により転写されたことを特徴とする、透明カバー部品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、転写箔や成形同時転写箔及びそれらを転写して得られた透明カバー部品、特に高品位な表示性能を要求される携帯電話端末、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯情報端末などのディスプレイ部分あるいは、カメラレンズのカバー部品を製造するための透明カバー成形体用転写シート及び透明カバー部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末やビデオカメラや携帯可能な小型のパソコンなどの携帯機器が普及し一般に使用されるようになってきている。これらの携帯機器には、ほとんどディスプレイ表示部が設けられており、当該機器の使用者は、そのディスプレイ表示部に表示された文字や映像から多くの情報を得ている。
【0003】
また、カメラがついた携帯電話端末やPDAも広く流通しており、当該カメラのレンズを保護するための透明カバー成形体として射出成形品が多く用いられている。
【0004】
携帯電話や携帯情報端末などのディスプレイやレンズのカバー部品は、熱転写や成形同時転写によって転写用フィルムを転写させて作られることがある。これらの方法によると、加飾とカバー部品表面のハードコートを1回の工程で付加させられ、また、成形同時転写の場合は、それらを三次元曲面に付加することが可能である。このときに用いられる転写用フィルムは、基材シートの表面に転写層が形成された構成である。そして、転写層は、基材フィルムから剥離し転写時に成形体の最表面に位置する表面保護層、転写層中の絵柄などの絵柄インキ層、樹脂成形体との接着を行うための接着層がそれぞれ積層された構成を有している。
【0005】
ここで、従来の転写箔及び成形同時転写箔の表面保護層には、ハードコート性や耐ブロッキング性を持たせるために体質顔料が含まれていることが一般である。ハードコート性とは耐擦傷性や耐摩耗性のことをいい、ブロッキングとは表面をコーティングして基材を巻き取ったときにコーティング面と基材の裏面とが接触して、基材の裏面にコーティング面に設けられている層が剥離して付着する現象である。
【0006】
この現象はコーティングの面と基材の裏面とが密着することが原因であるため、コーティング面に5μm以上(例えば、1〜10μm)の粒径の大きい体質顔料を加えて表面に凹凸を形成させて粗くさせブロッキングを防止する技術が開示されている。例えば、特開2000−109682号公報(特許文献1)には、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスなどの滑剤を表面保護層に入れることで、表面が粗化されブロッキングを生じにくくすることができ、また、滑剤の量が0.5重量%を下回ると、表面を十分に粗くすることができず、ブロッキング防止の効果が少なくなることが開示されている。
【特許文献1】特開2000−109682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの滑剤の粒子径は一般に数μmであり、ブロッキング防止のため、この粒子を上記の0.5重量%以上添加すると、ヘイズ(透明体の内部又は表面の不明瞭なくもり様の外観のこと)が大きくなる。したがって、成形体としてディスプレイの透明窓カバーやカメラのレンズカバーにこの転写シートを転写すると、透明部分が白曇りとなるため、透明性が求められるこれらの製品の性能を劣化させる。
【0008】
また、転写用フィルムに含まれる粒子径が大きいと、成形品表面に凹凸が形成される。透明窓カバー表面の凹凸は、光の屈折散乱の原因となり、透明窓カバーのギラツキや、カメラのレンズカバーのフレアや解像度低下を引き起こすなど、透明樹脂成形品の品質の低下を引き起こすこととなる。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、ブロッキングを防止することができ、同時にヘイズ、ギラツキの問題を解消することができる透明カバー部品用転写シート及び転写シートを用いた透明カバー部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の転写シートを提供する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、基材フィルムと、前記基材フィルムの表面に形成された転写層を有し、成形樹脂体である透明カバー成形体の表面に前記転写層を前記基材フィルムから剥離させて転写する透明カバー成形体用転写シートであって、
前記転写層は、転写後に基材フィルムから剥離して、前記透明カバー成形体の最外面を形成する透明保護層が設けられており、
前記透明保護層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂又はエポキシ系樹脂又はこれらの2種以上の混合樹脂で構成され、平均粒子径が1μm以下で屈折率が1.42から1.52である体質顔料を固形分比率で10から70重量%含むことを特徴とする、透明カバー成形体用転写シートを提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記体質顔料は、前記透明保護層を形成している樹脂と略等しい屈折率を有することを特徴とする、第1態様の透明カバー成形体用転写シートを提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記体質顔料の屈折率は、前記透明保護層を形成している樹脂の屈折率と0.03以下の差である第1態様の透明カバー成形体用転写シートを提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記表面保護層は、活性エネルギー線硬化樹脂で構成されていることを特徴とする、第1から第3態様のいずれか1つの透明カバー成形体用転写シートを提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記体質顔料は、シリカ系反応性微粒子で構成されていることを特徴とする、第1から第4態様のいずれか1つの透明カバー成形体用転写シートを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1態様によれば、透明保護層を構成する樹脂であるアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂又はエポキシ系樹脂又はこれらの2種以上の混合樹脂中に、密着性を有さない平均粒子径が1μm以下の透明粒子である体質顔料を10から70重量%混入することにより、ブロッキングを防止することができる。なお、体質顔料が10重量%より少ないと、透明保護層の十分なハードコート性を確保することができず、70重量%を越えると透明保護層の透明性や延伸性が損なわれたりする。また、体質顔料は、屈折率が1.42から1.52と、上記透明保護層を構成する樹脂と近似した屈折率であるので、ヘイズを防止することができる。さらに、粒子が可視光の波長領域より大きいと散乱が生じやすくなるため、体質顔料を1μm以下と小さく構成し、散乱を防止することができる。なお、上記構成において、1μm以上の粒子は表面保護層に含まない、あるいは含んでも1重量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の第2及び第3態様において、体質顔料の屈折率がそれを添加する塗膜の樹脂の屈折率との差が大きくなる(概ね0.03以上)と、光の散乱が大きくなり、ヘイズが生じやすくなる。透明保護層を構成する樹脂と体質顔料を構成する材料の屈折の差は0.03以下であることが好ましく、屈折率がそれ以上になるとヘイズ値が高くなり白曇りが生じることとなる。
【0018】
本発明の第4態様によれば、透明保護層を構成する樹脂として、紫外線や電子線により硬化する活性エネルギー線硬化材料を用いることでハードコート性をより高くすることができる。
【0019】
本発明の第5態様によれば、シリカゾルは屈折率が透明保護層を構成する樹脂に近いので、ヘイズを防止することができる。また、1μm以下の粒子が容易かつ安価に入手可能であり、分散性がよい点において、透明保護層中に均一に分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る転写用フィルムについて、図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態にかかる転写シートが用いられる成形同時絵付け装置の基本的な構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、成形同時絵付け装置110は、可動盤61に取付けた可動側金型1と固定盤62に取付けた固定側金型2と両金型間に画定される成形用空間に溶融樹脂を射出する射出ノズル65を備える。
【0022】
この実施の形態では固定盤62は架台66に固定され、この固定盤62に固定されたタイバー64によって可動盤61が案内され固定盤62に離接可能に移動する。
【0023】
可動盤61を移動することで可動側金型1のパーティング面と可動側金型1のパーティング面が圧接し、可動側金型1の第2キャビティ58と可動側金型1の第1キャビティ28とで成形用空間を画定した型閉じ状態と、両金型のパーティング面が離隔した型開き状態となる。
【0024】
また、基本的には可動側金型1と可動側金型1を用い当該2つの金型で成形用空間を形成するが、例えば、両金型に挟まれて成形用空間を形成する中間金型などの附随的な部材を用いることもできる。
【0025】
前記可動盤61にはシート送り出し装置67とシート巻取り装置68が設けられている。シート送り出し装置67とシート巻取り装置68は、転写シート100を可動側金型1の第1キャビティ28に対して縦方向(鉛直方向)に移動させる。転写シート100は可動側金型1のパーティング面と離隔し、かつ平行となるように縦方向に移動される。
【0026】
なお、可動金型側及び固定金型側のシート送り出し装置とシート巻取り装置の取り付け位置は、図1に示すものに限るものではない。シート送り出し装置67を可動盤61の下部に設け、シート巻取り装置68を可動盤61の上部に設けるようにしてもよい。あるいは、可動金型側のシート送り出し装置67とシート巻取り装置68を左右側部に取付け、固定金型側のシート送り出し装置とシート巻取り装置を固定盤62の上部又は下部に取付けてもよい。さらに、シート送り出し装置、シート巻取り装置を架台に直接取付けてもよい。
【0027】
つまり、転写シート100が、成形同時絵付けを行う前に金型のパーティング面(可動側金型1のパーティング面又は可動側金型1のパーティング面)に対向して配置されるように、転写シート100を移動可能である構成であればよい。
【0028】
次に、転写シートの構成について説明する。図2は、本実施形態にかかる転写シートの外観構成を示す。本実施形態にかかる転写シートは、ロールの状態から可動側金型のパーティング面上を移動するように送り出され、成形同時絵付けがなされた後、シート巻き取り装置でロール状に巻き取られる。
【0029】
転写シート100は、図2に示すように、図柄31が長手方向に間隔を置いて設けられている。転写シート100は、図3に示すように基材フィルム35、離型層38、転写層32とが積層された構造である。転写層32は透明保護層34と、その上に図柄31を構成する図柄インキ層31aが設けられる。また、図柄インキ層31aの上には、接着層33が設けられており、成形同時絵付け時に溶融樹脂と接触してこれに接着し、転写層32が透明保護層34の下側面34aを界面として離型層38から剥離する。
【0030】
成形同時絵付け時においては、この転写シートを成形金型内に挟み込み、キャビティ内に樹脂を射出充満させ、冷却して樹脂成形品を得るのと同時にその面に転写シート100を接着させた後、基材フィルム35を剥離して、樹脂成形品の表面に転写層32を転写して加飾を行う。
【0031】
基材フィルム35の材質としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ビスフェノールなどのジオールと、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェン酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、エイコ酸、ダイマー酸などで代表されるジカルボン酸とを縮重合させて得られるエステル基を主鎖にもつポリエステルを主成分とする樹脂が用いられる。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン-p-オキシベンゾエート、ポリ-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどが挙げられる。これらのポリエステルは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分が挙げられる。これらの材質のうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするものが好ましい。特に好ましいものは、引張り強度、耐熱性に優れたポリエチレンテレフタレートである。基材フィルム35は、一面に設けた絵柄層31aが他面側から透かして見えるようにする場合は、透明や半透明であってもよい。基材フィルム35は、着色されていてもよいが、絵柄層31a自体の色を活かすためには無色のものが好ましい。
【0032】
基材フィルム35の厚みDとしては、射出成形同時絵付け用として用いる場合は、一般的には0.025mm〜0.10mmであり、さらに好ましいのは0.030mm〜0.050mmである。0.025mmより薄いと成形樹脂による高熱と射出圧力によって射成形同時絵付け用フィルム100が破れてしやすくなるからである。一方、0.10mmを超えると剛性が大きくなり絵柄層31aなどを印刷する際の印刷基材として用いにくくなる。
【0033】
離型層38は、基材フィルム35からの転写層の剥離性を改善するために、基材フィルム35上に全面的に形成される。ただし、基材フィルム35からの転写層32の剥離性がよい場合には、これを設けることなく基材フィルム35上に転写層32を直接設けてもよい。離型層38は、成形同時加飾後に基材フィルム35を剥離した際に、基材フィルム35とともに転写層32から離型するが、場合によっては層間離型を起こし、一部が転写層32の最外面に残存することもある。離型層38の材質としては、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂系の離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いることができる。特に、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂の1種の樹脂又は2種以上の混合樹脂から構成されることが好ましい。
【0034】
離型層38の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。離型層の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法が用いられる。
【0035】
透明保護層34は、転写用フィルム100が透明カバー成形体に転写されたときに最表面となり、塗装品でいうクリア塗装の役目をする層である。成形樹脂体には、耐擦傷性や耐摩耗性などのハードコート性が要求される場合もあり、透明保護層34によって透明カバー成形体にこの性質を付与することができる。
【0036】
透明保護層34の材質としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリルもしくはメタクリルモノマーの単独共重合体もしくはこれらのモノマーを含む共重合体のアクリル系樹脂のほか、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることができる。具体的には、メラミン、アクリルメラミン、エポキシメラミン、アルキド、ウレタン、アクリルなどの一液硬化性及びこれらを混合した樹脂、またはイソシアネートなどの硬化剤との組み合わせによる二液硬化性の樹脂、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレートなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーやプレポリマーなどから構成される紫外線、電子線硬化樹脂などが使用できる。なお、紫外線硬化樹脂を用いるときは、光開始剤をさらに添加する。本実施形態においては、ポリメタクリル酸メチル(屈折率1.5)を用いている。
【0037】
透明保護層34には、透明粒子である体質顔料37が分散されて混入されている。体質顔料37は、一次粒子の平均粒子径が1μm以下の大きさの粒子である。体質顔料37は固形分比率で10から70重量%、好ましくは20から50重量%含まれる。体質顔料が10重量%より少ないと透明保護層34に十分なハードコート性を付与することができず、70重量%を超えると透明保護層34の透明性や成形同時転写時の延伸性が劣化する。
【0038】
また、体質顔料37は、1μm以下であるため、転写時に透明カバー成形体の表面に大きな凹凸を形成させることがなく、ギラツキを防止することができる。また、体質顔料37として、透明保護層34を構成する樹脂の屈折率に近似する屈折率を有する素材を用いることにより、透明保護層34の白曇りが発生せず、透明カバー成形体のヘイズを小さくすることができる。本実施形態においては、透明保護層34を構成するポリメタクリル酸メチル(屈折率1.5)と略同じ屈折率を有するシリカゾル(屈折率1.3〜1.5)を体質顔料として用い、光の散乱、屈折を防止する。また、体質顔料の大きさが、可視光の波長より大きいと光の屈折、散乱の原因となるため、1μm以下の体質顔料を用いることにより光の屈折、散乱を少なくし、透明カバー成形体のヘイズを少なくすることができる。すなわち、透明保護層34は、密着性を有さない小さい体質顔料を10から70重量%混入することにより、ブロッキングを防止することができ、同時にヘイズ、ギラツキの問題を解消することができる。
【0039】
なお、体質材料としては、シリコン、フッ素、スチレン、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
【0040】
透明保護層34の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法が用いられ、離型層38の表面に体質顔料37を分散させた上記樹脂を印刷することにより形成される。透明保護層の厚みは、0.5〜50μmが好ましい。膜厚が0.5μmより薄いと、十分なハードコート性が得られないという問題があり、50μmより厚いと、形成時に乾燥に時間を要し、また転写時にはクラックを生じるなどの問題が生じる。
【0041】
図柄インキ層31aは、透明カバー成形体の表面に形成される文字、数字、図形、記号、模様などを表現する層である。図柄インキ層31aは、通常は、透明保護層34の上に、印刷することによって形成する。図柄インキ層31aの材質としては、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。図柄インキ層31aの形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印別法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。印刷層は、表現したい図柄に応じて、全部的に設ける場合や部分的に設ける場合もある。
【0042】
また、図柄インキ層31aは、金属薄膜層からなるもの、あるいは印刷の層と金属薄膜層との組み合わせからなるものでもよい。金属薄膜層は、図柄インキ層31aとして金属光沢を表現するためのものであり、真空蒸着法、スパッターリング法、イオンプレーテイング法、鍍金法などで形成する。この場合、表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金又は化合物を使用する。部分的な金属薄膜層を形成する場合の一例としては、金属薄膜層を必要としない部分に溶剤可溶性樹脂層を形成した後、その上に全面的に金属薄膜を形成し、溶剤洗浄を行って溶剤可溶性樹脂層と共に不要な金属薄膜を除去する方法がある。この場合によく用いられる溶剤は、水又は水溶液である。また、別の一例としては、全面的に金属薄膜を形成し、次に金属薄膜を残しておきたい部分にレジスト層を形成し、酸又はアルカリでエッチングを行い、レジスト層を除去する方法がある。なお、金属薄膜層を設ける際に、他の転写層と金属薄膜層との密着性を向上させるために、前アンカー層や後アンカー層を設けてもよい。前アンカー層および後アンカー層の材質としては、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用するとよい。前アンカー層および後アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0043】
図柄インキ層31aの膜厚は0.5μm〜50μmが好ましい。膜厚が0.5μmより薄いと、十分な意匠性が得られないという問題があり、50μmより厚いと、印刷後に乾燥し難いという問題があるためである。但し、金属膜層の場合は50〜1200μmが好ましい。金属膜層の膜厚が50μmより薄いと、十分な金属光沢感が得られないという問題があり、1200μmより厚いと、クラックが生じやすいという問題があるためである。
【0044】
接着層33は、樹脂成形品の面に上記の各層を接着するものである。接着層33は、接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面的なら、図柄インキ層31a上に接着層33を全面的に形成する。また、接着させたい部分が部分的な場合は、図柄インキ層31a上に接着層33を部分的に形成する。接着層33としては、樹脂成形品の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、樹脂成形品の材質がポリアクリル系樹脂の場合は、同じポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、樹脂成形品の材質がポリフェニレンオキシド共重合体ポリスチレン系共重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、樹脂成形品の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。
【0045】
接着層33の厚みは、0.5〜50μmが好ましい。膜厚が0.5μmより薄いと、十分な接着性が得られないという問題があり、50μmより厚いと、印刷後に乾燥し難いという問題が生じる。接着層33の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用い、透明保護層34及び図柄インキ層31aの上から印刷する。
【0046】
なお、転写層32の構成は、上記した態様に限定されるものではなく、たとえば、図柄インキ層の材質として樹脂成形品との接着性に優れたものを使用する場合には、接着層33を省略することができる。
【0047】
なお、体質顔料は、透明保護層34だけではなく、例えば、基材フィルム35,転写層32の各層に含まれていてもよい。各層に含まれる体質顔料は、透明保護層34に含まれる体質顔料と同じ物性を有するものであることが好ましく、1μm以下で屈折率が透明保護層34を構成する樹脂の屈折率に近似する値を有することが好ましい。また、好ましくは、各層に含有される体質顔料は、10から70重量%、さらに好ましくは20から50重量%の固形分比率で混入する。
【0048】
前記した転写シート100を用いて成形同時転写法により樹脂成形体である透明カバー成形体の面に装飾を行う方法について説明する。図4Aから図4Cは、樹脂の流れの理解のために、模式的な樹脂の流れを示している。まず、図4Aに示すように、可動側金型1と可動側金型1とからなる成形同時絵付け用金型内に転写シートを送り込む。この場合、本実施形態においては、長尺の転写シート100の必要部分を間欠的に送り込む構成としているが、毎葉の転写材を1枚ずつ送り込んでもよい。長尺の転写シート100を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写シートの図柄31と成形同時絵付け用金型との見当が一致するようにするとよい。
【0049】
また、転写シートを間欠的に送りこむ際に、転写シートの位置をセンサーで検出した後に転写シートを可動側金型と固定側金型とで挟んで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写材を固定することができ、図柄インキ層の位置ずれが生じないので便利である。
【0050】
次に、図4Bに示すように、成形同時絵付け用金型を閉じた後、固定側金型に設けたゲート46より溶融樹脂をキャビティ内に射出充満させ、被転写物を形成するのと同時にその面に転写シートを接着させる。上述のように透明保護層34には、1μm以下の体質顔料が含まれており、透明カバー成形体の表面に大きな凹凸が形成されることがない。したがって、透明カバー成形体は、液晶ディスプレイのカバー部材として、あるいは、デジタルカメラのレンズカバーとして用いられた場合、ギラツキやフレアを防止することができる。なお溶融樹脂の冷却において、図示しない冷却水供給装置よりキャビティを冷却するための冷媒を両金型のキャビティに供給し、キャビティを冷却することにより溶融樹脂を短時間で固化することができ、成形に要する時間を短くすることができる。
【0051】
次いで、図4Cに示すように、被転写物である透明カバー成形体を冷却した後、成形同時絵付け用金型を開いて透明カバー成形体を取り出す。最後に、基材フィルム35を剥がすことにより、射出された成形樹脂の表面に転写層32が転写された透明カバー成形体を得ることができる。
【0052】
図5は、図1の成形同時絵付け装置によって成形された透明カバー成形体の外観構成を示す図である。図5に示す透明カバー成形体90は、携帯電話端末のケーシングの表面に取り付けられて用いられる。透明カバー成形体90は、液晶ディスプレイ及び小型デジタルカメラを保護するものである。
【0053】
透明カバー成形体90は、図5に示すように、薄い透明樹脂製のパネルであり、加飾部分94及び透明窓部分91,93が設けられており、透明窓部分91,93からその下方にそれぞれ設けられる液晶ディスプレイ、小型デジタルカメラなどへ透光可能になっている。加飾部分94は、図6に示すように、上述した転写シート100の転写層32が成形樹脂90aに転写され、絵柄インキ層31aによって絵付けされた部分であり、絵柄インキ層31aが形成されていない転写層の部分が透明窓部分91,93として形成される。転写層32の表面には、透明保護層34が位置することとなり、透明カバー成形体34のハードコート性を向上させている。
【0054】
上述のように、転写層32の透明保護層34には、1μm以下の体質顔料37が含まれており、転写時に転写層32表面に大きな凹凸が形成されることがない。したがって、加飾部分94以外の透明窓部分91,93において、表面の凹凸が原因で生じるギラツキやフレアの問題が生じることがない。また、体質顔料が小さいので、透明窓部分91,93において光の散乱などが起こることがなく、ヘイズの問題も生じることがない。
【0055】
以上説明したように、本実施形態にかかる転写シートによれば、透明保護層中に、屈折率1.42から1.52の材質で作られた1μm以下の大きさの体質顔料を固形分比率で10から70重量%混入することにより、転写フィルムの表面に凹凸を形成させてブロッキングを防止すると共に、成形体の表面に大きい凹凸が形成されるのを防止して、ギラツキ、フレアなどの問題を防止することができる。また、屈折率が透明保護層を構成する樹脂と近似しているので、透過する光の散乱、屈折が抑えられ、ヘイズの問題を防止することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。上記実施形態においては、転写シートは、成形同時絵付け用の転写シートとして説明したが、例えば、熱転写により予め成形しておいた樹脂成形体である透明カバー成形体に転写するようなものであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、体質顔料として、シリカゾルを用いているが、これに限定されるものではなく、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂又はエポキシ系樹脂又はこれらの2種以上の混合樹脂からなるものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る転写シートが用いられる成形同時絵付け装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の成形同時両面加飾装置において用いられる本発明の一実施形態にかかる加飾フィルムの構成を示す外観斜視図である。
【図3】図2のIII-III線の断面を示す断面図である。
【図4A】図1の成形同時絵付け装置における成形同時絵付けの工程を示す模式図である。
【図4B】図1の成形同時絵付け装置における成形同時絵付けの工程を示す模式図である。
【図4C】図1の成形同時絵付け装置における成形同時絵付けの工程を示す模式図である。
【図5】図1の成形同時両面加飾装置によって製造された携帯電話用カバーパーツの外観構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 可動側金型
2 固定側金型
31a 図柄インキ層
32 転写層
33接着層
34 透明保護層
34a 剥離境界面
35 基材フィルム
37 体質顔料
38 離型層
90 透明カバー成形体
91,93 透明窓部
92 縁部
100 転写用フィルム
110 成形同時絵付け装置
【出願人】 【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫

【識別番号】100115934
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 雅也


【公開番号】 特開2008−988(P2008−988A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172781(P2006−172781)