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【発明の名称】 プレス加工装置及びプレス加工方法
【発明者】 【氏名】小崎 貴史

【氏名】佐藤 日出之

【氏名】矢吹 徹朗

【氏名】藤井 敬之

【要約】 【課題】被加工物ごとに精度良く加工することができるプレス加工装置及びプレス加工方法を提供する。

【構成】ボルスタ130にスライド150を接近させて型締めした状態で、対向する第1の型及び第2の型との対向面間に配置された被加工物を所望の形状に塑性変形させるプレス加工装置100において、第1の型110、第2の型120、ボルスタ130(可動部131)、及びスライド150の少なくとも1つに圧力センサ170を配置し、プレス加工時における圧力センサ170の検出信号に基づいて、コントローラ180が、プレス加工中にスライド150とボルスタ130(可動部131)の接近状態(平行度及びスライド量の少なくとも一方)を制御するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす第1の型及び第2の型と、
前記第1の型が装着されたボルスタと、
前記第2の型が装着され、スライド駆動手段により駆動されて前記ボルスタに対して接近離反自在なスライドと、を備え、
前記ボルスタに前記スライドを接近させて、対向する前記第1の型及び前記第2の型との間で被加工物のプレス加工を行うプレス加工装置において、
前記第1の型、前記第2の型、前記ボルスタ、及び前記スライドの少なくとも1つに配置され、前記プレス加工時に作用する成形荷重を検出する少なくとも1つの検出手段と、
前記プレス加工時における前記検出手段の検出信号に基づいて、前記プレス加工中に前記スライドと前記ボルスタの接近状態を制御する制御手段と、をさらに備えることを特徴とするプレス加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて、前記スライドのスライド量が所定の値となるように前記スライド駆動手段に制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のプレス加工装置。
【請求項3】
前記スライド駆動手段は、1つの前記スライドに対して互いに離間して複数配置されており、
前記制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて、複数の前記スライド駆動手段にそれぞれ制御信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のプレス加工装置。
【請求項4】
前記スライド及び前記ボルスタの少なくとも一方を、前記被加工物を中心として揺動させる揺動手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて、前記ボルスタ及び前記スライドの型配置面同士のなす角度が所定角度となるように、前記揺動手段に制御信号を出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス加工装置。
【請求項5】
前記ボルスタを、前記被加工物を中心として揺動させる揺動手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて、前記ボルスタ及び前記スライドの型配置面同士のなす角度が所定角度となるように、前記揺動手段に制御信号を出力することを特徴とする請求項3に記載のプレス加工装置。
【請求項6】
前記ボルスタは、前記第1の型が装着され、前記揺動手段によって揺動される可動部と、前記可動部との摺動面が球状であり、前記可動部を保持する固定部とにより構成されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のプレス加工装置。
【請求項7】
ボルスタに装着された第1の型と、前記ボルスタに対して接近離反自在なスライドに装着された第2の型との間に被加工物を配置し、前記ボルスタに前記スライドを接近させて、前記被加工物をプレス加工するプレス加工方法であって、
前記プレス加工時において、前記第1の型、前記第2の型、前記ボルスタ、及び前記スライドの少なくとも1つに作用する成形荷重を検出し、前記成形荷重に基づいて、前記プレス加工中に前記スライドと前記ボルスタの接近状態を調整することを特徴とするプレス加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工装置及びプレス加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス加工装置において、例えば特許文献1に示されるように、製品寸法の高精度化を図ったものが知られている。
【0003】
特許文献1に示されるプレス加工装置(鍛造成形装置)は、加工前に被加工物(ワーク)の物理量を測定する測定装置と、測定装置の測定値に基づいてスライド下死点位置の補正量を算出するダイハイト制御装置と、ダイハイト制御装置から出力される補正信号を受けてスライドの下死点位置を調整するスライド制御装置と、を備えている。
【特許文献1】特開平8−24985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるプレス加工装置によれば、実際に加工する前に、被加工物の物理量を測定し、その測定値に基づいてスライドの下死点位置を調整するので、被加工物の物理量が変動した場合には、被加工物ごとに精度良く加工することができる。しかしながら、例えば型の加工部位(パンチ)の表面粗さや塑性加工用潤滑剤のつき具合によって、型と被加工物との間の摩擦がばらついた場合にも、加工状態(例えば下死点位置)が変化する。すなわち、加工精度が低下する恐れがある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、被加工物ごとに精度良く加工することができるプレス加工装置及びプレス加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為に請求項1〜6に記載の発明は、対をなす第1の型及び第2の型と、第1の型が装着されたボルスタと、第2の型が装着され、スライド駆動手段により駆動されてボルスタに対して接近離反自在なスライドと、を備え、ボルスタにスライドを接近させて、対向する第1の型及び第2の型との間で被加工物のプレス加工を行うプレス加工装置に関するものである。
【0007】
そして、請求項1に記載の発明においては、第1の型、第2の型、ボルスタ、及びスライドの少なくとも1つに配置され、プレス加工時に作用する成形荷重を検出する少なくとも1つの検出手段と、プレス加工時における検出手段の検出信号に基づいて、プレス加工中にスライドとボルスタの接近状態を制御する制御手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
このように本発明によれば、被加工物の物理量(例えば硬度や形状)の変化や型と被加工物との間の摩擦の変化に応じて変化する成形荷重を検出手段によって検出し、この検出信号(成形荷重)に基づいて、プレス加工中にスライドとボルスタの接近状態(スライドのスライド量、型配置面同士の平行度)を補正制御(フィードバック制御)する。したがって、従来よりも被加工物ごとに精度良く加工することができる。
【0009】
なお、成形荷重は、第1の型、第2の型、ボルスタ、及びスライドの少なくとも1つが、プレス加工時に受ける圧力として検出することができる。加工条件が一定であれば、例えば被加工物が硬いほど、成形荷重(圧力)は大きく、型の変形量は大きく、被加工物の変形量は小さくなり、軟らかいほど、成形荷重(圧力)は小さく、型の変形量は小さく、被加工物の変形量は大きくなる。したがって、成形荷重に基づいてスライドとボルスタの接近状態を制御することで、被加工物ごとに精度良く加工することができる。
【0010】
請求項2に記載のように、制御手段が、検出手段の検出信号に基づいて、スライドのスライド量が所定の値となるようにスライド駆動手段に制御信号を出力する構成としても良い。これによれば、成形荷重に基づいて、スライドのスライド量(換言すれば下死点位置)を補正制御するので、被加工物ごとに精度良く加工することができる。
【0011】
請求項3に記載のように、スライド駆動手段が1つのスライドに対して互いに離間して複数配置されており、制御手段が、検出手段の検出信号に基づいて、複数のスライド駆動手段にそれぞれ制御信号を出力する構成としても良い。これによれば、平行度(ボルスタ及ぶスライドの型配置面同士のなす角度)を制御することができる。したがって、例えば型が部分的に変形した場合でも、成形荷重に基づいて平行度を補正制御する(例えば平行状態からボルスタの型配置面に対してスライドの型配置面を傾けた状態)ので、被加工物ごとにより精度良く加工することができる。
【0012】
請求項1又は請求項2に記載の発明においては、請求項4に記載のように、被加工物を中心としてスライド及びボルスタの少なくとも一方を揺動させる揺動手段を備え、制御手段が、検出手段の検出信号に基づいて、ボルスタ及ぶスライドの型配置面同士のなす角度が所定角度となるように、揺動手段に制御信号を出力する構成としても良い。
【0013】
このように、スライド及びボルスタの少なくとも一方を、被加工物を中心として揺動させることによっても、平行度(ボルスタ及ぶスライドの型配置面同士のなす傾き)を制御することができる。したがって、例えば型が部分的に変形した場合でも、成形荷重に基づいて平行度を補正制御するので、被加工物ごとに精度良く加工することができる。
【0014】
また、揺動手段は、被加工物を中心としてスライド及びボルスタの少なくとも一方を揺動させるので、被加工物と加工中心は常に同一の位置となる。したがって、成形荷重に基づいて平行度を補正制御したとしても、被加工物と加工中心のズレによる精度低下を防ぐことができる。すなわち、請求項3に記載の構成よりも、被加工物ごとに精度良く加工することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明においては、請求項5に記載のように、被加工物を中心としてボルスタを揺動させる揺動手段をさらに備え、制御手段が、検出手段の検出信号に基づいて、ボルスタ及ぶスライドの型配置面同士のなす角度が所定角度となるように、揺動手段に制御信号を出力する構成としても良い。その効果は、請求項3に記載の発明と同様であるので、その記載を省略する。
【0016】
具体的には、請求項6に記載のように、ボルスタが、第1の型が装着され、揺動手段によって揺動される可動部と、可動部との摺動面が球状であり、可動部を保持する固定部とを含む構成とすればよい。これによれば、ボルスタ(第1の型)を所定位置に固定しつつ、成形荷重に応じて、その一部のみを可動させて平行度を補正することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、ボルスタに装着された第1の型と、ボルスタに対して接近離反自在なスライドに装着された第2の型との間に被加工物を配置し、ボルスタにスライドを接近させて、被加工物をプレス加工するプレス加工方法に関するものであり、プレス加工時において、第1の型、第2の型、ボルスタ、及びスライドの少なくとも1つに作用する成形荷重を検出し、成形荷重に基づいて、プレス加工中にスライドとボルスタの接近状態を調整することを特徴とする。
【0018】
このように本発明によれば、被加工物の物理量(例えば硬度)の変化や型と被加工物との間の摩擦の変化に応じて変化する成形荷重を検出し、この成形荷重に基づいて、プレス加工中にスライドとボルスタの接近状態(スライドのスライド量、型配置面同士の平行度)を調整(フィードバック制御)する。したがって、従来よりも被加工物ごとに精度良く加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプレス加工装置の概略構成を示す断面図である。図2は、圧力センサの配置を示す平面図である。図3は、ボルスタ及び揺動手段の概略構成を説明するための断面図である。図4は、ボルスタ(可動部)の揺動動作を説明するための断面図である。なお、本実施形態に係るプレス加工装置は、車両エンジンのクランクシャフトなどの鍛造加工に使用される鍛造用のプレス加工装置として構成されている。
【0020】
図1に示すように、プレス加工装置100は、対をなす第1の型110及び第2の型120と、第1の型110が装着されるボルスタ130と、第2の型120が装着され、ボルスタ130に対して図1に示すZ軸方向に接近離反自在に設けられたスライド150と、を備え、ボルスタ130にスライド150を接近させて型締めした状態で、対向する第1の型及び第2の型との対向面間に配置された被加工物を所望の形状に塑性変形させる(プレス加工する)ように構成されたものである。
【0021】
そして、第1の型110、第2の型120、ボルスタ130、及びスライド150の少なくとも1つに、プレス加工時に作用する成形荷重を検出する検出手段としての圧力センサ170が配置され、プレス加工時における圧力センサ170の検出信号に基づいて、コントローラ180が、プレス加工中にスライド150とボルスタ130の接近状態(互いの位置関係)を補正制御するように構成されている点を特徴とする。なお、図1に示す符号190は、上述した各要素が固定されるフレームである。また、図1においては、被加工物を取り出すエジェクタピンなどを省略して図示している。
【0022】
対をなす第1の型110及び第2の型120のうち、ボルスタ130に装着される第1の型110は所謂固定型に相当するものである。本実施形態に係る第1の型110は、全く位置が変わらないのではなく、被加工物の配置位置111を中心として揺動するボルスタ130の一部とともに揺動が可能である。揺動についての詳細は後述する。また、スライド150に装着される第2の型120は所謂可動型に相当するものである。本実施形態に係る第2の型120は、図1に示すZ軸方向に移動自在に設けられたスライド150とともに、移動が可能である。
【0023】
また、本実施形態においては、プレス加工時において、第1の型110に作用する成形荷重を検出すべく、図1に示すように、第1の型110に対して圧力センサ170が配置されている。より具体的には、図2に示すように、X軸方向及びY軸方向において、被加工物10(配置位置111)を挟んで(より好ましくは図2に示すように対称位置に)計4個の圧力センサ170a〜170dが配置されている。したがって、プレス加工時に第1の型110が受ける応力(成形荷重)及びその偏り(分布)を検出することができる。
【0024】
ボルスタ130は、第1の型110を所定位置に保持するためのものである。本実施形態においては、図1及び図3に示すように、第1の型110が装着され、揺動機構140によって被加工物の配置位置111を中心として揺動される可動部131と、フレーム190の所定位置に固定されて、可動部131を保持する固定部132とにより構成されている。
【0025】
可動部131は、固定部132に保持される頭部133と、頭部133に連結された断面円形の柱部134を有している。頭部133は、第1の型110が装着されるとともに、揺動されない状態(基準状態)で固定部132のスライド150に対する対向面と面一となる型配置面133aと、被加工物の配置位置111を中心とする球面133bとを有している。そして、球面133bには、柱部134が連結(本実施形態においては一体的に成形)されている。本実施形態においては、柱部134の中心軸(図3に示す一点鎖線)が被加工物の配置位置111を通り、型配置面133aとなす角が略90度となるように、頭部133の球面133bの一部に連結されている。
【0026】
なお、柱部134との連結部位を除く球面133bの一部に対応して、固定部132に同一Rの球面132aが設けられている。すなわち、固定部132に対して頭部133(可動部131)が摺動可能に構成されている。また、固定部132に、球面132aを介して柱部134が挿通される貫通孔132bが設けられている。これら球面132aと貫通孔132bは、安定的に頭部133を保持しつつ、揺動時に柱部134が接触しないように設定されている。
【0027】
柱部134には、可動部131の一部として、揺動機構140と接触するリング状部材135が固定されている。本実施形態において、リング状部材135は、図3に示すように、球状の部材に中心を通る貫通孔135aを形成してなり、この貫通孔135aに柱部134が挿通された状態で、柱部134に固定されている。そして、このリング状部材135の球状外周面に接触して、揺動機構140のX−Yテーブル141が配置されている。なお、本実施形態においては、リング状部材135をほぼ球としているが、揺動範囲に応じて半球等としても良い。
【0028】
また、リング状部材135に対して、揺動機構140と干渉しない位置に、被加工物の配置位置111を中心とする球面136aをもったR補正部材136が固定されている。本実施形態において、R補正部材136は、図3に示すように、リング状部材135の外周面のうち、X−Yテーブル141を介して固定部132の対向側に固定されている。このように、本実施形態に係るボルスタ130は、可動部131と固定部132とを有し、可動部131は、頭部133、柱部134、リング状部材135、及びR補正部材136とにより構成されている。
【0029】
揺動機構140は、特許請求の範囲に記載の揺動手段に相当し、図1及び図3に示すように、可動部130のリング状部材135の外周面に接するX−Yテーブル141と、X−Yテーブル141をX,Y軸方向にそれぞれ駆動させるための揺動用モータ142と、R補正部材136に対応してフレーム190の所定位置に固定された支持部材143とにより構成される。
【0030】
X−Yテーブル141は、図1及び図3に示すX,Y軸方向にそれぞれ移動可能に設けられており、各軸方向にX−Yテーブル141を移動させるために、2つの揺動用モータ142(図1においてはまとめて1つを図示)を有している。より具体的には、揺動用モータ142としてサーボモータを採用し、当該モータ142、ボールネジ、及びリニアガイドによって、X−Yテーブル141を各軸方向に移動させるようにしている。このような構成は周知であり、詳細な説明は省略する。また、図3に示すように、X−Yテーブル141にはリング状部材135の球状外周面に対応して、同一Rの球状内壁面をもつ貫通孔135aが設けられている。そして、可動部131のうち、リング状部材135がX−Yテーブル141に設けられた貫通孔141a内に接触配置されるように、X−Yテーブル141がフレーム190に位置決めされている。すなわち、X−Yテーブル141に対してリング状部材135(可動部131)が摺動可能に構成されている。
【0031】
支持部材143は、R補正部材136に対応して、同一Rの球面143aを有しており、球面136a,143a同士が接触するように、フレーム190の所定位置に固定されている。すなわち、支持部材143に対してR補正部材136(可動部131)が摺動可能に構成されている。
【0032】
ここで、ボルスタ130(可動部131)の揺動動作について説明する。揺動機構140の揺動用モータ142を駆動させて、例えば図4に示すように、X−Yテーブル141をX軸に沿う白抜き矢印方向に移動させたとする。これにともない、リング状部材135がX−Yテーブル141(貫通孔141aの内壁面)に押されて、白抜き矢印方向に移動しようとする。このとき、R補正部材136の球面136aが対向する支持部材143の球面143aに対して摺動しつつ、リング状部材135の外周面も貫通孔141aの内壁面に対して摺動する。そして、この動きにともなって、柱部134と連結された頭部133の球面133bが対応する固定部132の球面132aに対して摺動する。したがって、可動部131(型配置面133a)は、被加工物の配置位置111を中心とし、R補正部材136の球面136a及び支持部材143の球面143aに沿って(当該球面136a,143aの有するRの円弧状(図4に示す2点鎖線)に沿って)揺動することができる。
【0033】
スライド150は、第2の型120を保持するためのものであり、図1に示すように、スライド駆動機構160により駆動されて、ボルスタ130に対して図1に示すZ軸方向に接近離反自在に設けられている。スライド駆動機構160は、スライド駆動用モータ161と当該モータ161に直結されたボールネジ162とにより構成される。本実施形態においては、スライド150に対して1つのスライド駆動機構160が接続された所謂単軸の駆動機構となっている。また、スライド駆動用モータ161としてサーボモータを採用している。
【0034】
コントローラ180は、CPUを主体として構成され、メモリなどを含んでいる。このコントローラ180が、特許請求の範囲に示す制御手段に相当する。メモリには、プレス加工装置100全体の制御を実行するプログラムなどとともに、圧力と型110,120の変形量(被加工物の加工量)との関係が格納されている。コントローラ180は、上述した圧力センサ170の検出信号が入力されるとともに、揺動機構140の揺動用モータ142及びスライド駆動機構160のスライド駆動用モータ161との間で信号の授受が可能に構成されている。
【0035】
次に、このように構成されるプレス加工装置100の動作(プレス加工方法)について、図5〜図7を用いて説明する。図5は、補正制御の制御フローの一例を示すフロー図である。図6は、平行度補正を説明するための断面図であり、(a)は加工前、(b)は加工時であって補正前、(c)は補正後を示す図である。図7は、スライド量補正を説明するための断面図であり、(a)は加工前、(b)は加工時であって補正前、(c)は補正後を示す図である。
【0036】
第1の型110及び第2の型120が、それぞれ対応するボルスタ130(可動部131)及びスライド150に装着された状態で、一方の型(本実施形態において第1の型110)の所定位置111に被加工物10を配置する。そして、図5に示すように、コントローラ180からの制御信号によってスライド駆動機構160を構成するスライド駆動用モータ161を作動させ、スライド150をボルスタ130に接近する方向に移動させる(S10)。
【0037】
これによって、図6(a)及び図7(a)に示すように、第2の型120を構成するパンチ121が、第1の型110に配置された被加工物10と接触しない状態から、図6(b)及び図7(b)に示すように、被加工物10に接触する状態(型締め状態)となる。すなわち、被加工物10がプレス加工される。パンチ121が被加工物10に接触する(第1の型110及び第2の型120がともに被加工物10と接触する)と、成形による応力(成形荷重)が、第1の型110、第2の型120、ボルスタ130、及びスライド150にそれぞれ作用する。
【0038】
例えば図6(b)に示すように、被加工物10が、軟らかい部位11と当該部位11よりも硬い部位12を有していると、当接する部位11,12によってパンチ121の弾性変形量が異なることとなる(例えば、硬い部位12に当接する部分の変形量が大きい)。このように、加工条件が同一であっても、パンチ121の加工先端と第2の型120の対向面との平行度が悪化することがある。このように平行度が悪化した状態でプレス加工を続けると、被加工物10が所望形状に塑性変形されず、加工精度が低下することとなる。
【0039】
また、図7(b)に示すように、被加工物10の寸法が基準寸法に対して若干異なると、寸法によってパンチ121の弾性変形量が異なり、加工条件が同一であっても、スライド150のスライド量(又は下死点)が変化することがある。このようにスライド量(又は下死点)が変化した状態でプレス加工を続けると、被加工物10が所望形状に塑性変形されず、加工精度が低下することとなる。
【0040】
そこで、本実施形態においては、プレス加工の初期(パンチ121が被加工物10に接触した時点)において、上述の応力を圧力センサ170にて検出する(S20)。そして、この検出結果に基づいて、コントローラ180が、平行度及び/又はスライド量の補正量を算出し(S30)、補正信号を対応する機構(本実施形態において、平行度補正の場合は揺動機構140、スライド量補正はスライド駆動機構160)に出力する。そして、対応するモータ142,161が駆動されてボルスタ130(可動部131)及び/又はスライド150が移動され、ボルスタ130(可動部131)とスライド150の互いの位置関係(平行度、スライド量)が補正される(S40)。
【0041】
なお、本実施形態においては、成形荷重(圧力)と型110,120の弾性変形量、被加工物10の変形量との関係が、予め有限要素法(FEM)によって求められており、データベースとしてコントローラ180のメモリに格納されている。そして、コントローラ180は、このデータベースと圧力センサ170の検出信号とに基づいて補正量を算出するように構成されている。
【0042】
例えば、図6(b)に示す例においては、被加工物10の硬い部位12側に配置された圧力センサ170bの検出値は大きくなり、軟らかい部位11側に配置された圧力センサ170aの検出値は圧力センサ170bの検出値よりも小さくなる。コントローラ180は、圧力センサ170a,170bからの検出信号に基づいて、平行度を補正するように制御する。具体的には、補正信号を、X−Yテーブル141を駆動させる揺動用モータ142に出力する。これにより、可動部131が所定位置に揺動(型配置面133aが傾いた状態)されて、図6(c)に示すように、補正前の状態よりも平行度が補正される。なお、図6(c)に示す補正後の状態は、図4に示す可動部131の揺動状態に対応している。
【0043】
また、図7(b)に示す例においては、寸法が基準寸法よりも大きく、圧力センサ170a及び圧力センサ170bの検出値がともに大きくなる。コントローラ180圧は、力センサ170a,170bからの検出信号に基づいて、スライド量を補正するように制御する。具体的には、補正信号を、スライ150を駆動させるスライド駆動用モータ161に出力する。これにより、スライド150が所定位置(補正前よりも下方)に移動されて、図7(c)に示すように、補正前の状態よりもスライド量が補正される。
【0044】
なお、本実施形態においては、各機構(揺動機構140、スライド駆動機構160)を構成するモータ142,161としてサーボモータを採用しており、コントローラ180は、当該モータ142,161からの信号(例えば回転数)に基づいて、ボルスタ130(可動部131)及び/又はスライド150が目標位置となったかを判定する(S50)。そして、目標位置に移動されたと判定された場合には、当該被加工物10のプレス加工を完了とし、次の被加工物10を上述したS10〜S50に従ってプレス加工する。また、目標位置に移動されていないと判定された場合には、S20に戻って、再度、補正制御を行う。
【0045】
このように、本実施形態に係るプレス加工装置100及びプレス加工方法によれば、プレス加工時に第1の型110、第2の型120、ボルスタ130、及びスライド150の少なくとも1つに作用する応力(成形荷重)を圧力センサ170によって検出し、この検出結果に基づいて、プレス加工中にスライド150とボルスタ130の接近状態(スライド150のスライド量、型配置面同士の平行度)を補正制御(フィードバック制御)する。被加工物10の物理量(例えば硬度や形状)の変化のみならず、型110,120(本実施形態においてはパンチ121)と被加工物10との間の摩擦がばらついたり、型110,120(例えばパンチ121)が磨耗して変形した場合でも、その変化を成形荷重(圧力)として検出することができるので、従来よりも被加工物ごとに精度良く加工することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、成形荷重に基づいて、スライド150のスライド量(換言すれば下死点位置)を補正制御するので、被加工物10ごとに精度良く加工することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、被加工物10の配置位置111を中心としてボルスタ130の可動部131を揺動させ、平行度(ボルスタ130及ぶスライド150の型配置面同士のなす傾き)を制御することができる。したがって、例えば被加工物10ごとに型110,120の弾性変形量が異なっても、成形荷重に基づいて平行度を補正制御するので、被加工物10ごとに精度良く加工することができる。また、被加工物10の配置位置111を中心としてボルスタ130の可動部131を揺動させるので、平行度を補正制御する構成でありながら、被加工物10と加工中心のズレによる精度低下を防ぐことができる。すなわち、より精度良く加工することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図8に基づいて説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係るプレス加工装置100の概略構成を示す断面図である。
【0049】
第2実施形態に係るプレス加工装置100及びプレス加工方法は、第1実施形態に示したプレス加工装置100及びプレス加工方法と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0050】
本実施形態に係るプレス加工装置100は、図8に示すように、スライド駆動機構160が1つのスライド150に対して互いに離間して複数(図8では4つのうち2つを図示)配置されており、コントローラ180が、圧力センサ170の検出信号に基づいて、複数のスライド機構160(スライド駆動用モータ161)に、平行度を補正するための補正信号をそれぞれ出力する構成とされている点を特徴とする。具体的には、それぞれのスライド駆動用モータ161の駆動量を異なるものとすることで、スライド150の型配置面を、ボルスタ130の対向面(型配置面)に対して傾けることができる。すなわち、ボルスタ130及ぶスライド150の型配置面同士のなす傾き(平行度)を制御することができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、少なくとも平行度(好ましくは平行度とスライド量)の補正をスライド150側で実施するので、揺動機構140を有さず、ボルスタ130は第1の型110を所定位置の保持する機能のみを有する例を示した。しかしながら、平行度の補正は、ボルスタ130及びスライド150の一方の位置を移動させることによって行うだけでなく、両方の位置を移動させて補正することもできる。したがって、図8に示した構成に対し、第1実施形態に示したボルスタ130側(ボルスタ130及び揺動機構140)の構成を追加した構成としても良い。
【0052】
また、本実施形態においては、図8に示すように、圧力センサ170をスライド150に配置する例を示した。しかしながら、圧力センサ170の配置は上記例に限定されるものではない。第1の型110、第2の型120、ボルスタ130、及びスライド150の少なくとも1つに、プレス加工時に作用する成形荷重を検出する検出手段としての圧力センサ170が配置されれば良い。ただし、複数の圧力センサ170を配置して平行度補正を実施する構成においては、第1実施形態において示したように、複数の圧力センサ170を、図8に示すX,Y軸方向において、被加工物10(配置位置111)を間に挟んで(より好ましくは対称位置に)配置すると良い。また、1個の圧力センサ170で平行制御を行う場合には、X,Y軸方向において、被加工物10(配置位置111)からずれた位置とすれば良い。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0054】
本実施形態においては、各機構(揺動機構140、スライド駆動機構160)を構成するモータ142,161としてサーボモータを採用する例を示した。しかしながら、スライド150の高さを検出する位置センサを配置することで、スライドのスライド量(下死点)を検出し、圧力センサ170の検出結果に基づいてスライド量を補正するようにしても良い。また、位置センサをスライド150の両端に配置することで、スライド150の傾きを検出し、圧力センサ170の検出結果に基づいて平行度を補正するようにしても良い。同様に、位置センサをボルスタ130の可動部131の両端に配置することで、可動部131の傾きを検出し、圧力センサ170の検出結果に基づいて平行度を補正するようにしても良い。また、位置センサをスライド150とボルスタ130の両方に配置しても良い。
【0055】
本実施形態においては、ボルスタ130が、揺動可能な可動部131と固定部132とにより構成される例を示した。しかしながら、固定部132に代えて可動部131を保持する固定部材を用いる構成とすれば、ボルスタ130を固定部132のない構成(換言すればすべて可動部131)とすることもできる。
【0056】
本実施形態においては、圧力センサ170の検出結果に基づいて、プレス加工中にボルスタ130及ぶスライド150の型配置面同士のなす傾き(平行度)を制御する例を示した。しかしながら、第1の型110、第2の型120、ボルスタ130、及びスライド150の少なくとも1つに、プレス加工時に作用する成形荷重を検出する検出手段としての圧力センサ170が配置され、その検出結果に基づいて、プレス加工中にスライド150とボルスタ130の接近状態(互いの位置関係)が補正制御される構成とすれば良い。したがって、例えば図9に示すように、1つの圧力センサ170がスライド150に配置され、この検出結果に基づいて、コントローラ180が1つのスライド駆動用モータ161の動作を制御し、スライド量が補正制御される構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係るプレス加工装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】圧力センサの配置を示す平面図である。
【図3】ボルスタ及び揺動手段の概略構成を説明するための断面図である。
【図4】ボルスタ(可動部)の揺動動作を説明するための断面図である。
【図5】補正制御の制御フローの一例を示すフロー図である。
【図6】平行度補正を説明するための断面図であり、(a)は加工前、(b)は加工時であって補正前、(c)は補正後を示す図である。
【図7】スライド量補正を説明するための断面図であり、(a)は加工前、(b)は加工時であって補正前、(c)は補正後を示す図である。
【図8】第2実施形態に係るプレス加工装置の概略構成を示す断面図である。
【図9】その他変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
100・・・プレス加工装置
130・・・ボルスタ
131・・・可動部
132・・・固定部
140・・・揺動機構(揺動手段)
141・・・X−Yテーブル
142・・・揺動用モータ
150・・・スライド
160・・・スライド駆動機構(スライド駆動手段)
170・・・圧力センサ(検出手段)
180・・・コントローラ(制御手段)
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年9月12日(2006.9.12)
【代理人】 【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行

【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平


【公開番号】 特開2008−68269(P2008−68269A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−247122(P2006−247122)