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【発明の名称】 偏心加工を行なうことができる加工機械及びその制御方法
【発明者】 【氏名】鈴木 裕一

【要約】 【課題】複数の加工軸を用いて偏心加工を行なう場合、高精度な加工力の制御を実現する。

【構成】機構部26を支持する構造部26の複数箇所の歪を歪検出器34L、34Rで検出し、複数箇所の歪の一次関数式を演算することで、複数の加工軸の力20L、20Rの各々を精度良く算出し、複数の加工軸力20L、20Rの算出値をフィードバックして、複数の加工軸力20L、20Rにそれぞれ割当てられた動力源12L、12Rを制御する。機構部26の左の所定箇所30Lでの歪の検出値をfL、右の所定箇所30Rでの歪の検出値をfR、左の加工軸力の算出値をFL、右の加工軸力の算出値をFRとするとき、前記一次関数式はFL=(fL+fR)/2+(fL-fR)/2α及びFR=(fL+fR)/2-(fL-fR)/2αである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を出力する動力源(12L、12R)と、
前記複数の加工軸を有し、前記複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を前記動力源(12L、12R)から受けて、前記複数の加工軸にそれぞれ従った複数の加工軸力(20L、20R)を被加工物(18)に出力する機構部(26)と、前記機構部(26)と前記被加工物(18)とを支持する構造部(30)とを備えた加工機械(10)において、
前記構造部(30)の複数箇所(30L、30R)における歪又は内力の値をそれぞれ検出する歪/内力検出手段(34L、34R、66L、66R)と、
前記複数箇所における歪又は内力の検出値を組み合わせることにより、前記複数の加工軸力の値をそれぞれ算出する加工軸力計算手段(73L、73R)と、
前記複数の加工軸力の算出値に基づいて、前記動力源(12L、12R)からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御することができる制御手段(64L、64B)と
を備えたことを特徴とする加工機械(10)。
【請求項2】
請求項1記載の加工機械(10)において、
前記加工軸力計算手段(73L、73R)が、前記複数箇所における歪又は内力の検出値の全てを、所定の一次関数に適用することで、前記複数の加工軸力(20L、20R)の値の各々を算出することを特徴とする加工機械(10)。
【請求項3】
請求項2記載の加工機械(10)において、
前記加工機械(10)が、平行な左右の2つの加工軸をもつプレス機械であり、
前記機構部の左の所定箇所(30L)での歪又は内力の検出値をfL、前記機構部の右の所定箇所(30R)での歪又は内力の検出値をfR、左の加工軸力の算出値をFL、右の加工軸力の算出値をFRとするとき、前記一次関数が、次の式
【数1】


又は前記式と等価な演算式
であることを特徴とする加工機械(10)。
【請求項4】
複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を出力する動力源(12L、12R)と、
前記複数の加工軸を有し、前記複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を前記動力源(12L、12R)から受けて、前記複数の加工軸にそれぞれ従った複数の加工軸力(20L、20R)を被加工物(18)に出力する機構部(26)と、前記機構部(26)と前記被加工物(18)とを支持する構造部(30)とを備えた加工機械(10)において、
前記構造部(30)の複数箇所(30L、30R)における歪又は内力の値をそれぞれ検出する歪/内力検出手段(34L、34R、66L、66R)と、
前記複数の加工軸力(20L、20R)にそれぞれ対する複数の第1の力目標値を出力する力目標設定手段(70L、70R)と、
前記複数の第1の力目標値を組み合わせることにより、前記複数箇所(30L、30R)における歪又は内力にそれぞれ対する複数の第2の力目標値を算出する力目標計算手段(71L、71R)と、
前記複数箇所(30L、30R)における歪又は内力の検出値と、算出された前記複数の第2の力目標値とに基づいて、前記動力源(12L、12R)からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御することができる制御手段(64L、64B)と
を備えたことを特徴とする加工機械(10)。
【請求項5】
請求項4記載の加工機械(10)において、
前記力目標計算手段(71L、71R)が、前記複数の第1の力目標値の全てを、所定の一次関数に適用することで、前記複数の第2の力目標値の各々を算出することを特徴とする加工機械(10)。
【請求項6】
請求項5記載の加工機械(10)において、
前記加工機械(10)が、平行な左右の2つの加工軸をもつプレス機械であり、
左の加工軸力に対する第1の力目標値をFL、右の加工軸力に対する第1の力目標値をFR、前記機構部の左の所定箇所(30L)で検出された歪又は内力に対する第2の力目標値をfL、前記機構部の右の所定箇所(30R)で検出された歪又は内力に対する第2の力目標値をfRとしたとき、前記一次関数が、次の式
【数2】


又は前記式と等価な演算式
であることを特徴とする加工機械(10)。
【請求項7】
請求項1又は4記載の加工機械(10)において、
前記機構部(26)の複数の箇所の位置を検出する位置検出手段(32L、32R)をさらに備え、
前記制御手段(64L、64B)は、
前記複数の箇所の位置の検出値に基づいて、前記動力源(12L、12R)からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御する位置制御手段と、
前記複数の箇所での歪又は内力の検出値又は前記複数の加工軸力の算出値に基づいて、前記動力源(12L、12R)からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御する力制御手段と、
前記加工軸毎に、前記位置制御手段と前記力制御手段のいずれを有効にするかを切り換える自動切換手段(82L、82R)と
を備える加工機械(10)。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加工軸を用いて偏心加工を行なうことができる加工機械及びその制御方法に関し、例えばプレス加工、曲げ加工、押出し加工、射出成形などに使用されるサーボプレス、プレスブレーキ、押出し成形機、射出成形機などに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーボプレスの多段モーション制御装置及びその制御方法が開示されている。この公知発明によれば、多段加工を行なう場合、段毎にスライドの加圧及び待機の位置と時間を異なる値に設定でき、それにより、生産効率を向上させることができる。
【0003】
特許文献2には、電動プレスの制御方法及び制御装置が開示されている。この公知発明によれば、スライドを動かす電動サーボモータのトルクを用いて加圧力が制御される。
【0004】
特許文献3には、鍛圧機械のサーボモータ制御装置が開示されている。この公知発明によれば、プレス加工又は曲げ加工において、金型が閉じていくとき、最初は位置制御が行なわれ、途中で圧力制御に切り替えられる。
【0005】
特許文献4には、ダイクッション制御装置およびダイクッション制御方法が開示されている。この公知発明によれば、ダイクッションのクッションパッドに取り付けられた歪ゲージからのフィードバック信号に基づいてクッション圧が制御される。
【0006】
【特許文献1】特開平10-277797号公報
【特許文献2】特開平11-33799号公報
【特許文献3】特開2006-7296号公報
【特許文献4】特開2006-26738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、複数の加工軸を用いて偏心加工を行なうことができる加工機械の一例として、2本の加工軸をもつサーボプレス機の概略図を示す。
【0008】
このプレス機1では、2本の加工軸にそれぞれ対応する互いに平行で軸方向に直線移動可能な2本のスライドシャフト14L、14Rが、1つのスライド16に接続される。2つの電動サーボモータ12L、12Rにより、2本のスライドシャフト14L、14Rが駆動される。2本のスライドシャフト14L、14Rがスライド16を押して降下させることで、1以上の被加工物18、18のプレス加工が行われる。スライドシャフト14L、14Rからスライド16に加わる2つ加工軸力20L、20Rの大きさを等しくして加工を行なうことも、意図的に不均等にして加工を行うことも可能である(以下、不均等な加工軸力で行なう加工を「偏心加工」といい、そのような不均等な加工軸力を「偏心荷重」という)。
【0009】
図1に示したような加工機械において、偏心加工を行なう場合の被加工物18、18に加わる圧力又は力の分布を所望通りに精度良く制御するために、2本の加工軸力20L、20Rを精度良く検出して、その検出値を制御システムにフィードバックすることが要求される。加工軸力を検出するための方法として、従来から、動力源であるサーボモータの軸トルクを検出する方法が知られている。しかし、サーボモータからスライドまでの間の機構の粘性抵抗力及び摩擦力、並びにモータ特性の変化の影響を受けるために、サーボモータの軸トルクに基づいて加工軸力を正確に測定することが難しい。別法として、スライドシャフト或いはスライドに歪ゲージを取り付けてその歪から加工軸力を検出するという方法も採用し得る。しかし、スライドシャフトやスライドなどの機構は、非常に剛性の高い材料で作られているために、大きい力を受けてもその歪は小さく、よって、その歪を検出して力を精度良く測定することが難しい。その結果、高精度な偏心加工を行なうことが難しいという問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、複数の加工軸を用いて偏心加工を行なう場合に、高精度な加工力の制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面に従えば、複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を出力する動力源と、
前記複数の加工軸を有し、前記複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を前記動力源から受けて、前記複数の加工軸にそれぞれ従った複数の加工軸力を被加工物に出力する機構部と、
前記機構部と前記被加工物とを支持する構造部とを備えた加工機械において、
前記構造部の複数箇所における歪又は内力の値をそれぞれ検出する歪/内力検出手段と、
前記複数箇所における歪又は内力の検出値を組み合わせることにより、前記複数の加工軸力の値をそれぞれ算出する加工軸力計算手段と、
前記複数の加工軸力の算出値に基づいて、前記動力源からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御することができる制御手段と
を備えたことを特徴とする加工機械が、提供される。
【0012】
この側面に従う加工機械によれば、構造部の複数箇所における歪又は内力の値をそれぞれ検出して、それら複数箇所の歪又は内力の検出値を組み合わせることにより、複数の加工軸力の値をそれぞれ算出することにより、偏心加工を行なっているときでも、複数の加工軸力の値を高精度に算出することができる。この高精度な加工軸力の算出値に基づいて、それぞれの加工軸に割り当てられた動力源からの動力を制御することで、高精度な偏心加工の制御が可能である。
【0013】
好適な実施形態では、前記加工軸力計算手段が、前記複数箇所における歪又は内力の検出値の全てを、所定の一次関数に適用することで、前記複数の加工軸力の値の各々を算出する。例えば、前記加工機械が、平行な左右の2つの加工軸をもつプレス機械である場合、前記機構部の左の所定箇所で検出された歪又は内力の値をfL、前記機構部の右の所定箇所(30R)で検出された歪又は内力の値をfR、算出された左の加工軸力の値をFL、算出された右の加工軸力の値をFRとしたとき、前記一次関数として、次の式
【数1】


又はこの式と等価な演算式を採用することができる。
【0014】
本発明の第2の側面に従えば、複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を出力する動力源と、
前記複数の加工軸を有し、前記複数の加工軸にそれぞれ割り当てられた動力を前記動力源から受けて、前記複数の加工軸にそれぞれ従った複数の加工軸力を被加工物に出力する機構部と、
前記機構部と前記被加工物とを支持する構造部とを備えた加工機械において、
前記構造部の複数箇所における歪又は内力の値をそれぞれ検出する歪/内力検出手段と、
前記複数の加工軸力にそれぞれ対する複数の第1の力目標値を出力する力目標設定手段と、
前記複数の第1の力目標値を組み合わせることにより、前記複数箇所における歪又は内力にそれぞれ対する複数の第2の力目標値を算出する力目標計算手段と、
前記複数箇所における歪又は内力の検出値と、算出された前記複数の第2の力目標値とに基づいて、前記動力源からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御することができる制御手段と
を備えたことを特徴とする加工機械が、提供される。
【0015】
この側面に従う加工機械によれば、構造部の複数箇所における歪又は内力に対する複数の第1の力目標値を組み合わせることにより、複数の加工軸力に対する複数の第2の力目標値をそれぞれ算出し、算出された複数の第2の力目標値と、構造部の複数箇所における歪又は内力の検出値と基づいて、複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御することにより、偏心加工を行なっているときでも、複数の加工軸力の値を高精度に制御することができ、よって、高精度な偏心加工の制御が可能である。
【0016】
好適な実施形態では、前記力目標計算手段が、前記複数の第1の力目標値の全てを、所定の一次関数に適用することで、前記複数の第2の力目標値の各々を算出する。例えば、加工機械が、平行な左右の2つの加工軸をもつプレス機械である場合、左の加工軸力に対する第1の力目標値をFL、右の加工軸力に対する第1の力目標値をFR、機構部の左の所定箇所で検出された歪又は内力に対する第2の力目標値をfL、機構部の右の所定箇所で検出された歪又は内力に対する第2の力目標値をfRとしたとき、前記一次関数として、次の式
【数2】


又は前記式と等価な演算式を採用することができる。
【0017】
また、上述した2つの側面に従う加工機械は、前記機構部の複数の箇所の位置を検出する位置検出手段をさらに備えることができ、前記制御手段は、
前記複数の箇所の位置の検出値に基づいて、前記動力源からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御する位置制御手段と、
前記複数の箇所での歪又は内力の検出値又は前記複数の加工軸力の算出値に基づいて、前記動力源からの前記複数の加工軸にそれぞれ割り当られた動力を制御する力制御手段と、
前記加工軸毎に、前記位置制御手段と前記力制御手段のいずれを有効にするかを切り換える自動切換手段と
を備えることができる。この構成により、加工軸力を制御する力制御と、機構部の位置を制御する位置制御とを選択でき、よって、偏心加工のより高度な制御が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、偏心荷重を負荷するときであっても、複数軸における加工力の高精度な制御が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図2に、本発明の一実施形態にかかる複数の加工軸を有する加工機械の一例として、2本の加工軸を有するサーボプレス機の概略構成を示す。
【0020】
図2に示されるように、このサーボプレス機10は、中心軸11について左右対称の機械的な構造及び形状を有する。このサーボプレス機10は、動力源としての左右の2つの電動サーボモータ12L,12Rを有し、左右のサーボモータ12L,12Rは同一構造で、中心軸11について左右対称に配置される。このサーボプレス機10は、左右の2本の加工軸にそれぞれ相当する左右の2本のスライドシャフト14L、14Rを有する。これら左右のスライドシャフト14L、14Rは、中心軸11について左右対称かつ平行に配置され、実質的に同一の構造と形状を有する。左のサーボモータ12Lは左の加工軸(スライドシャフト14L)を動かすための動力源として割り当てられ、右のサーボモータ12Rからの動力は右の加工軸(スライドシャフト14R)に動かすための動力源として割り当てられる。
【0021】
サーボモータ12L、12Rは、コントローラ(図2では図示省略、図6、10参照)により制御される。サーボモータ12L、12Rは、回転モータでもよいし、リニアモータでもよい。サーボモータ12L、12Rが回転モータである場合、2つのサーボモータ12L、12Rの回転シャフトは、それぞれ、回転運動を直線運動に変換する運動変換機構(例えば、ボールねじ、クランクスライダ、リンク機構など)22L、22Rを介して、2本の加工軸にそれぞれ対応する2本のスライドシャフト14L、14Rに結合される。他方、サーボモータ12L、12Rがリニアモータである場合には、2つのサーボモータ12L、12Rの直動シャフトがそれぞれ2本のスライドシャフト14L、14Rに直接結合されてよい。2本のスライドシャフト14L、14Rには1つのスライド16が結合され、スライド16には可動金型24が取り付けられる。
【0022】
上述した運動変換機構22L、22R、スライドシャフト14L、14R、スライド16及び可動金型24は、動力源たるサーボモータ12L、12Rからの動力で運動することで、1以上の被加工物18、18に対して2本の加工軸(スライドシャフト14L、14R)に従った加工力20L、20Rを負荷する機構であり、これらを纏めて以下「機構部」26と呼ぶ。そして、機構部26から出力される2本の加工軸に従った加工力20L、20Rを、以下「加工軸力」といい、そのうち、左の加工軸(スライドシャフト14L)から出力される加工力を「左加工軸力」20Lと呼び、加工軸(スライドシャフト14R)から出力される加工力を「右加工軸力」20Rと呼ぶ。また、機構部26のうち、中心軸11の左側に位置する部分、すなわち、主として左のサーボモータ12Lからの動力を受けて運動して、主として左の加工軸力20Lを出力する部分を「左機構部」26Lと呼び、中心軸11の右側に位置する部分、すなわち、主として右のサーボモータ12Rからの動力を受けて運動して、主として右の加工軸力20Rを出力する部分を「右機構部」26Rと呼ぶ。左機構部26Lと右機構部26Rは、中心軸11について左右対称に配置され、実質的に同一の構造と形状を有する。
【0023】
また、固定金型28が、可動金型24に対向するように配置される。機構部26L、26Rと固定金型28とは、このプレス機10の骨組部分により支持され、この骨組部分を「構造部」30と呼ぶ。1以上の被加工物18、18が、可動金型24と固定金型28との間にセットされ、可動金型24の下降運動によりプレス加工されることになる。
【0024】
上記の構造部30には、機構部26L、26Rからそれぞれ加えられる2つの加工軸力20L、20Rに応じた内力が、矢印の力線で示すように、生じることになる。この構造部30のうちの中心軸11の左側に位置する部分を「左構造部」30Lと呼び、右側に位置する部分を「右構造部」30Rと呼ぶ。左構造部30Lと右構造部30Rは、中心軸11について左右対称に配置され、実質的に同一の構造と形状を有する。左機構部30Lに生じる内力の大きさは、主として左機構部26Lからの左加工軸力20Lの大きさに依存するが、それだけでなく、右機構部26Rからの右加工軸力20Rの大きさにも影響を受ける。同様に、右機構部30Rに生じる内力の大きさは、主として右機構部26Rからの右加工軸力20Rの大きさに依存するが、それだけでなく、左機構部26Lからの左加工軸力20Lの大きさにも影響を受ける。
【0025】
このプレス機10には、さらに、左右の2つの位置検出器32L、32Rが設けられる。左右の位置検出器32L、32Rは、中心軸11について左右対称に配置され、構造や形状において実質的に同一である。左の位置検出器32Lは、左機構部26L(例えば、スライド16の左端部16L)と左構造部30Lとの間に取り付けられ、左機構部26Lの運動方向の位置(例えば、スライド16の左端部16Lの直動方向の位置)を検出する。右の位置検出器32Rは、右機構部26R(例えば、スライド16の左端部16R)と右構造部30Rとの間に取り付けられ、右機構部26Rの運動方向の位置(例えば、スライド16の右端部16Rの直動方向の位置)を検出する。
【0026】
このプレス機10は、さらに、左右の2つの歪検出器34L、34Rを有する。左右の歪検出器34L、34Rは、いずれも例えば歪ゲージ又はロードセルであり、中心軸11について対称に配置され、構造や形状において実質的に同一である。左の歪検出器34Lは、左構造部30Lに取り付けられ、その出力信号に基づいてコントローラ(図2では図示省略)により、左構造部30Lの歪の大きさ、換言すれば、左構造部30Lに生じる内力の大きさ、が計測できるようになっている。右の歪検出器34Rは、右構造部30Rに取り付けられ、その出力信号に基づいてコントローラ(図2では図示省略)により、右構造部30Rの歪の大きさ、換言すれば、右構造部30Rに生じる内力の大きさ、が計測できるようになっている。さらに、後に詳述するように、コントローラは、左右の歪検出器34L、34Rからの信号により計測された左右の構造部30L、30Rの歪又は内力を、所定の方法で組み合わせることより、左右の加工軸力20L、20Rを精度良く計測することができるようになっている。
【0027】
さらに、図2には図示されてないが、サーボモータ12L、12Rの速度をそれぞれ検出する2つの速度検出器も設けられる(図6、10参照)。後述するように、コントローラは、左右の位置検出器32L、32Rにより検出された左右の機構部26L、26Rのそれぞれ位置をフィードバック値として用いて、左右のサーボモータ12L、12Rの速度を制御する(換言すれば、左右のサーボモータ12L、12Rの動力を制御する)ことにより、左右の機構部26L、26Rの位置の制御(以下「位置制御」という)を行なう。また、コントローラは、左右の歪検出器34L、34Rを用いて検出された左右の構造部30L、30Rのぞれぞれの歪、換言すれば、左右の構造部30L、30Rに加わる力、をフィードバック値として用いて、左右のサーボモータ12L、12Rの速度を制御する(換言すれば、左右のサーボモータ12L、12Rの動力を制御する)ことにより、左右の加工軸力20L、20Rの制御(以下「力制御」という)を行なう。
【0028】
ここで、注目すべき点の一つは、力制御では、加工軸力20L、20Lを計測するために、加工軸力20L、20Lを出力する機構部26L、26Rの歪又はサーボモータ12L、12Rの軸トルクではなく、加工軸力20L、20Lの内力が伝達される構造部30L、30Rの歪を検出している点である。これにより、高精度に加工軸力20L、20Lを計測することが可能になる。すなわち、機構部26L、26Rが被加工物18、18に対して荷重つまり加工軸力20L、20Rを負荷するとき、加工軸力20L、20Rの大きさに応じた大きさの内力が構造部30L、30Rに生じ、内力の力線(力の伝達を矢印で現したもの)は、図2に矢印で示すように閉じたループを形成し、そのループは構造部30の外に出ることがない。従って、構造部30L、30Rの歪又は内力と加工軸力20L、20Rとの間には一義的な関係が存在する(この関係については、後に詳述する)。因みに、構造部30L、30Rではなく、機構部26L、26R(例えば、サーボモータ12L、12Rのシャフト、スライドシャフト14L、14R又はスライド16など)に歪ゲージを貼り付けてその歪を検出する方法も採用可能である。しかし、一般に、機構部26L、26Rは、構造部30L、30Rに比べて剛性が高く、同じ大きさ内力による歪の大きさが、構造部30L、30Rのそれより小さい。そのため、機構部26L、26Rの歪を検出する方法では、構造部30L、30Rの歪を検出する方法よりも、計測の精度が下がってしまう。他方、ロードセルをモータシャフトやスライドシャフト14L、14Rのような機構部26L、26Rに組み込むことは困難である。さらに、加工軸力を計測するために、歪ではなく、サーボモータ12L、12Rの軸トルクを検出する方法も知られているが、この方法では、機構部26L、26Rの粘性抵抗力及び摩擦力並びにモータ特性の変化などの影響を受けて、正確な加工軸力の計測が困難である。従って、構造部30L、30Rの歪を検出する方法を採用することで、上述した他の検出方法よりも高精度に或いは容易に、加工軸力20L、20Lを計測することが可能である。
【0029】
さて、上述したように、構造部30L、30Rの歪又は内力と加工軸力20L、20Rとの間には一義的な関係が存在する。しかし、この関係は単純ではない。すなわち、左右の加工軸力20L、20Rが等しい場合には、構造部30L、30Rの歪と加工軸力20L、20Rとは比例関係にある。しかし、左右の加工軸力20L、20Rが異なる場合には、すなわち偏心加工が行われる場合には、構造部30L、30Rの歪と加工軸力20L、20Rとの間の比例関係が崩れ、偏心量(加工軸力20L、20R間の大きさの違いの程度)が大きくなるほど比例関係からの誤差が大きくなる。
【0030】
以下、この関係について、図3から図5を参照して具体的に説明する。なお、図3から図5に示された関係は、発明者らが行った解析と実験の結果から明らかになった新規な知見である。
【0031】
図3は、偏心荷重を負荷しているときにおける、左右の機構部26L、26Rから出力される加工軸力20L、20Rの合計値(横軸)と、測定された左右の構造部30L、30Rの歪の合計値(縦軸)との関係をグラフ40で示しており、この合計歪と合計加工軸力とは比例関係にあることが分かる。
【0032】
また、図4は、偏心荷重を負荷しているときにおける、左右の機構部26L、26Rからそれぞれ出力される加工軸力20L、20R(横軸)と、測定された左右それぞれの構造部30L、30Rの歪から計算される左右それぞれの構造部30L、30Rにかかる内力(縦軸)との間の関係の一例を示す。図4に示された例は、右の加工軸力20Rを50トンにし、左の加工軸力20Lを数トンから40トン強の間で種々の大きさに変えてみた解析結果を示している。図4において、右側の複数のプロット42Rは、右構造部30Rの歪から計算された右構造部30Rの内力の値を示し、左側の複数のプロット42Lは、左構造部30Lの歪から計算された左構造部30Lの内力の値を示す。また、直線44は、計算された左右の内力がそれぞれ左右の加工軸力と同じ値を示すという仮想的な場合を表す仮想線であり、計算された内力のプロット42L、42Rの各々と仮想線44との間の縦軸に沿った距離46が、その計算された内力とそれに対応する加工軸力との間の誤差に相当する。図4から分かるように、偏心荷重負荷時には左右の加工軸力と計算された左右の内力とは異なっており、両者間の誤差46は、偏心量が大きいほど(左右の加工軸力間の違いが大きいほど)より大きい。ここで注目すべき点は、図4において、偏心量にかかわらず、計算された左右内力(対応し合うプロット42Lと42R)とを結んだ直線48の傾きは一定であり、かつ、この直線48はその中点(つまり、計算された左右の内力の平均値)にて仮想線44と交差する、換言すれば、計算された左右の内力の平均値は左右の加工軸力の平均値と一致するという点である。
【0033】
図5は、偏心荷重を負荷しているときにおける、左右の機構部26L、26Rからそれぞれ出力される加工軸力20L、20R間の比(横軸)と、測定された左右それぞれの構造部30L、30Rの歪間の比(換言すれば、偏心量)(縦軸)との関係を、複数のプロット50で示す。図5において、直線52は、左右歪の比が左右加工軸力の比と同じであるという仮想的な場合を表す仮想線であり、この仮想線52と各プロット50との間の縦軸に沿った距離54が、両比間の相違に相当する。図5から分かるように、偏心量が大きいほど、左右歪比と左右加工軸力比との違いが大きい。
【0034】
図3から図5を参照して説明した構造部30L、30Rの歪(又は内力)と加工軸力20L、20Rとの間の関係に基づけば、左の加工軸力20Lと右の加工軸力20Lの各々は、左右の構造部30L、30Rの双方の歪(又は内力)の値から高精度に算出することができる。本実施形態にかかる加工機械では、左右のサーボモータ12L、12Rの速度を制御するために、左右の構造部30L、30Rの歪(又は内力)をフィードバックし、そのフィードバックされた左右の歪(又は内力)の一方の値を他方の値により相互に補正することにより(換言すれば、左右の歪(又は内力)の双方の値を組み合わせて)、左右の加工軸力20L、20Rを精度良く算出するように構成されたコントローラが採用される。或いは、変形例として、左右の加工軸力20L、20Rに対する制御目標値の一方を他方で相互に補正するように構成されたコントローラを採用することも可能である。以下の説明では、前者のコントローラの方式を「力フィードバック補正方式」と呼び、後者のコントローラの方式を「力目標補正方式」と呼ぶ。
【0035】
図6は、「力フィードバック補正方式」のコントローラの構成を示す。
【0036】
図6に示すように、コントローラ60は、目標設定装置62及び演算装置64を有する。目標設定装置62は、左右の力目標設定部70L、70Rと左右の位置目標設定部72L、72Rを有する。左力目標設定部70Lは、左加工軸力20Lについての目標値(以下「左力目標値」という)を演算装置64に出力し、また、右力目標設定部70Rは、右加工軸力20Rについての目標値(以下「右力目標値」という)を演算装置64に出力する。左位置目標設定部72Lは、左機構部26Lの位置(典型的には左のスライドシャフト14Lの位置)についての目標値(以下「左位置目標値」という)を演算装置64に出力し、また、右位置目標設定部72Rは、右機構部26Rの位置(典型的には右のスライドシャフト14Rの位置)についての目標値(以下「右位置目標値」という)を演算装置64に出力する。
【0037】
コントローラ60には、また、図2に示された左右の位置検出器32L、32R及び左右の歪検出器34L、34Rだけでなく、図2には図示してなかった左右の力計算器66L、66R及び左右の速度検出器68L、68Rも関連付けられる。左右の力計算器66L、66Rは、それぞれ、左右の歪検出器34L、34Rの出力信号を受けて、左右の構造部30L、30Rのそれぞれの内力の値を計算し、それぞれの内力値を演算装置64に出力する。左右の速度検出器68L、68Rは、それぞれ、左右のサーボモータ12L、12Rの速度(換言すれば、左右の機構部26L、26Rの運動速度)を検出し、それぞれの速度値を演算装置64に出力する。また、左右の位置検出器32L、32Rは、既に説明したように、それぞれ、左右の機構部26L、26Rの位置を検出し、それぞれの位置の値を演算装置64に出力する。以下では、演算装置64に入力された上記左右の構造部30L、30Rの内力、左右の機構部26L、26Rの速度及び位置の値をそれぞれ、左右の「内力フィードバック値」、「速度フィードバック値」及び「位置フィードバック値」という。
【0038】
演算装置64は、左サーボモータ12Lの速度を制御するための左演算部64Lと、右サーボモータ12Rの速度を制御するための右演算部64Rとを有し、左演算部64Lと右演算部64Rのいずれもが、左右の力フィードバック値の双方を入力するように構成されている。左演算部64Lと右演算部64Rの構成は、基本的に同じであるから、以下では、左演算部64Lを代表にとってその構成を説明する。以下の左演算部64Lについての説明を「右」と「左」を入れ替えて読めば、右演算部64Rについて説明となる。
【0039】
図6に示すように、左演算部64Lは、二つの主たるフィードバック制御ループを有する。一つは、内力フィードバック値を用いて力制御を行なうための「力ループ」であり、もう一つは、位置フィードバック値を用いて位置制御を行なうための「位置ループ」である。そして、自動切換器82Lによる自動的に切り換え動作により、この二つのループのいずれか一方のループが自動的に選択されるようになっている。
【0040】
力ループは、荷重補正部73Lと減算器74Lと力制御部76Lを有する。荷重補正部73Lは、左力計算器66Lから左内力フィードバック値を入力し、右力計算器66Rから右内力フィードバック値を入力し、左内力フィードバック値を右内力フィードバック値で補正することにより(換言すれば、左内力フィードバック値と右内力フィードバック値の双方に基づいて、又はそれらを組み合わせて)、左加工軸力20Lの値を演算する。この演算方法には、既に図3〜図5を参照して説明した関係が反映されているが、その詳細は後に説明する。荷重補正部73Lにより演算された左加工軸力20Lの値を以下、「左軸力フィードバック値」という。減算器74Lは、左力目標設定部70Lから左力目標値を入力し、荷重補正部73Lから左軸力フィードバック値を入力し、左力目標値と左軸力フィードバック値との間の偏差(以下、「左力偏差」という)を計算する。力制御部76Lは、減算器74Lから左力偏差を入力し、その左力偏差に対して所定の演算(例えばPID演算)を行なって、その左力偏差をゼロに近づけるための左サーボモータ12Lの速度についての目標値である第1左速度指令を生成する。
【0041】
他方、位置ループは、減算器78Lと位置制御部80Lを有する。減算器78Lは、左地位置目標設定部72Lから左位置目標値を入力し、左位置検出器32Lから左位置フィードバック値を入力し、左位置目標値と左位置フィードバック値との間の偏差(以下「左位置偏差」という)を計算する。位置制御部80Lは、減算器78Lから左位置偏差入力し、その左位置偏差に対して所定の演算(例えばPID演算)を行って、その左位置偏差をゼロに近づけるための左サーボモータ12Lの速度についての目標値である第2左速度指令を生成する。
【0042】
力ループと位置ループは、自動切換器82L、減算器84L、速度制御部86L及び電流制御部88Lを共有する。自動切換器82Lは、第1左速度指令と第2左速度指令を入力し、その何れか一方を選択して、選択された速度指令(以下「選択左速度指令」という)を減算器84Lに出力する。この選択の判断材料の一つとして、自動切換器82Lは、左軸力フィードバック値を入力する。自動切換器82Lは、1回のプレス加工工程において、初期的には第2左速度指令を選択し(すなわち、位置制御を有効にし、力制御を無効にし)ており、そのとき、左軸力フィードバック値と、予め自動切換器82Lに設定されている閾値とを比較する。この比較の結果は、初期的には(つまり、可動金型24がいずれの被加工物18にも接触していない時は)左軸力フィードバック値が閾値より低いことになる。このときには、自動切換器82Lは、依然として第2左速度指令を選択し続ける。スライド16が下降して可動金型24がいずれかの被加工物18に接触すると、左軸力フィードバック値が増加して閾値を超える。このとき、自動切換器82Lは、第2左速度指令から第1左速度指令へと、選択を切替える(すなわち、位置制御から力制御へと制御モードを切替える)。
【0043】
減算器84Lは、自動切換器82Lからの選択左速度指令と、左速度検出器68Lからの左速度フィードバック値との偏差(以下、「左速度偏差」という)を計算する。速度制御部86Lは、左速度偏差を入力し、左速度偏差に対して所定の演算(例えばPID演算)を行って、その左速度偏差をゼロに近づけるための左サーボモータ12Lの励磁電流についての目標値である左電流指令を生成する。電流制御部88Lは、速度制御部86Lから左電流指令を入力し、この左電流指令に従って左サーボモータ12Lの励磁電流を制御することで、左サーボモータ12Lの速度を上記左速度指令に近づける。
【0044】
以下では、上述したコントローラ60において、左右の荷重補正部73L、73Rの各々により行われる、左右の内力フィードバック値の双方から左右の軸力フィードバック値の各々を演算するための方法について説明する。
【0045】
図7は、この演算方法の原理を示す。
【0046】
図7に示す原理は、図4に示した関係に基づいている。図7は、左右の機構部26L、26Rから出力される左右の加工軸力20L、20Rの値(横軸)がそれぞれFL、FRである場合を例示しており、その場合において、プロット100L、100Rは、左右の力計算機66L、66Rにより算出された左右の構造部30L、30Rの歪に基づく左右の内力の値(内力フィードバック値)(縦軸)fL、fRを示し、プロット102L、102Rは、左右の荷重補正部73L、73Rにより求めたい左右の加工軸力20L、20Rの正しい値(軸力フィードバック値)(縦軸)FL、FRを示す。ここで、内力フィードバック値fL、fRのプロット100L、100R間を結ぶ直線104は、図4に示した左右の複数のプロット42L、42R間を結ぶ複数の直線48の各々に相当し、また、軸力フィードバック値FL、FRのプロット102L、102R間を結ぶ直線106は、図4に示した仮想線48に相当する。
【0047】
図4を参照して既に説明したように、図7中の計測された内力フィードバック値fL、fRのプロット100L、100R間を結んだ直線104と、求めたい軸力フィードバック値FL、FRのプロット102L、102間を結んだ直線106とは、それぞれの中点(左右値の平均値)にて交差する。そして、内力フィードバック値fL、fRのプロット100L、100R間を結んだ直線104の傾きα(以下、「補正係数」と呼ぶ)は、偏心量にかかわらず一定値である。この補正係数αは、図7に基づいて、次の式(1)で定義される。
【数3】


【0048】
また、図7に基づいて、求めたい軸力フィードバック値FL、FRは、次の式(2)で表される。
【数4】


【0049】
ここで、次の関係が存在する。
【数5】


【0050】
上記の関係を用いると、(2)式は次の(3)式のように変換される。
【数6】


【0051】
この(3)式が、内力フィードバック値fL、fRから、軸力フィードバック値FL、FRを算出するための計算式のセットである。ここで、補正係数αは或る一定値であり、その具体的な値は、本実施形態にかかる加工機械(サーボプレス機)30の具体的な構成に依存して決まり、これは実験的に決定することができる。従って、左右の加工軸力20L、20Rの値FL、FRはいずれも、左右の内力フィードバック値fL、fRの一次関数である。上記(3)式中の左の軸力フィードバック値FLを求めるための計算式は、図6に示された左の荷重補正部73Lにより実行され、右の軸力フィードバック値FRを求めるための計算式は、右の荷重補正部73Rにより実行されることになる。
【0052】
図8は、(3)式を実行する左右の荷重補正部73Lと73Rの機能的構成を示す。
【0053】
図8に示すように、荷重補正部73Lと73Rは、値「fL+fR」を計算する加算ブロック110、値「fL-fR」を計算する減算ブロック112、値「fL+fR」に係数「1/2」を乗算する乗算ブロック114、値「fL-fR」に係数「1/2α」を乗算する乗算ブロック116、乗算ブロック114と116の出力値を加算して左軸力フィードバック値FLを求める加算ブロック118、及び、乗算ブロック114の出力値から乗算ブロック116の出力値を減算して右軸力フィードバック値FRを求める減算ブロック120とを有する。このような構成の演算を「干渉ブロック型」の偏心補正演算と呼ぶ。なお、図8から分かるように、荷重補正部73Lと73Rは、演算ブロック110、112、114及び116にて一体的に構成されてよい。
【0054】
さて、上述した(3)式を左右の内力フィードバック値fL、fRのそれぞれに対する項に分けて書き直すと、次の(4)式が得られる。
【数7】


【0055】
この(4)式は(5)式のように表される。
【数8】


【0056】
この(5)式を行列の形で表すと(6)式のようになる。
【数9】


【0057】
ここで、
【数10】


とおくと、上記(6)式は(7)式のようになる。
【数11】


【0058】
従って、荷重補正部73Lと73Rは、(7)式を実行するように構成されることもできる。
【0059】
図9は、(7)式を実行する荷重補正部73Lと73Rの機能的構成を示す。
【0060】
図9に示すように、伝達行列ブロック130により、内力フィードバック値fL、fRが軸力フィードバック値FL、FRに変換される。この構成による演算を「干渉行列型」の偏心補正演算と呼ぶ。なお、図9から分かるように、荷重補正部73Lと73Rは一体的に構成されてよい。なお、上記(7)式は、前述した(3)式と、数学的には等価であるから、図9に示された「干渉行列型」の偏心補正演算の結果は、図8に示された「干渉ブロック型」の偏心補正演算の結果と同じである。
【0061】
次に、前述した変形例としての「力目標補正方式」のコントローラについて説明する。図10は、力目標補正方式のコントローラの構成を示す。図10に示されたコントローラ140の構成要素のうち、図6に示されたコントローラ60の要素と同一又は類似の目的又は機能を果たす要素には、図6で付したと同じ参照番号を付してある。
【0062】
図10に示されたコントローラ140の、図6に示されたコントローラ60と異なる点は、図6における左右の荷重補正部73L、73Rが無く、その代わりに、目標設定装置62において左右の逆変換部71L、71Rが追加されている点である。荷重補正部73L、73Rが無いので、力計算部66L、66Rから出力された左右の内力フィードバック値は、そのまま、左右の力ループの減算器74L、74Rと、自動切換器82L、82Rに入力される。また、左右の逆変換部71L、71Rは、左右の力目標設定部70L、70Rから出力される左右の加工軸力20L、20Rに対する力目標値の各々を他方の力目標値で補正することにより、左右の内力フィードバック値に対する力目標値を計算するものである。
【0063】
左右の逆変換部71L、71Rが行う力目標値の補正演算の方法も、図4又は図7を参照して既に説明した、左右の加工軸力20L、20Rと左右の内力フィードバック値との関係に基づいている。すなわち、図7に基づくと、左右の歪から求められる左右の内力フィードバック値fL、fR
は、式(8)で表される。
【数12】


【0064】
次の関係、
【数13】


を用いると、(8)式は(9)式に書換えられる。
【数14】


【0065】
この(9)式は、左右の加工軸力20L、20Rの値FL、FRから、左右の内力フィードバック値fL、fRを算出するための計算式のセットである。 (9)式において、値FL、FRに加工軸力20L、20Rに対する力目標値を代入すれば、値fL、fRとして、内力フィードバック値fL、fRに対する力目標値が得られることになる。(9)式から分かるように、内力フィードバック値fL、fRに対する力目標値はいずれも、加工軸力20L、20Rに対する力目標値の一次関数である。(9)式中の左側の演算式に加工軸力20L、20Rに対する力目標値を代入することで、左内力フィードバック値fLに対する力目標値を求める演算は、左逆変換部71Lにより実行され、また、(9)式中の右側の演算式に加工軸力20L、20Rに対する力目標値を代入することで、右内力フィードバック値fRに対する力目標値を求める演算は、右逆変換部71Rにより実行されることになる。
【0066】
図11は、上記(9)式を実行する「干渉ブロック型」の逆変換部71Lと71Rの機能的構成を示す。なお、以下の説明では、記号FL*、FR*は、左右の加工軸力20L、20Rの値FL、FRに対する力目標値をそれぞれ指し、記号fL*、fR*は、左右の内力フィードバック値fL、fRに対する力目標値をそれぞれ指すものとする。
【0067】
図11に示すように、逆変換部71Lと71Rは、値「FL*+FR*」を計算する加算ブロック150、値「FL*-FR*」を計算する減算ブロック152、値「FL*+FR*」に係数「1/2」を乗算する乗算ブロック154、値「FL*-FR*」に係数「α/2」を乗算する乗算ブロック156、乗算ブロック154と156の出力値を加算して左内力フィードバック値fLに対する力目標値fL*を求める加算ブロック158、及び、乗算ブロック154の出力値から乗算ブロック156の出力値を減算して右内フィードバック値fRに対する力目標値fR*を求める減算ブロック160とを有する。なお、図11から分かるように、逆変換部71Lと71Rは、演算ブロック150、152、154及び156にて一体的に構成されてよい。
【0068】
ところで、逆変換部71Lと71Rは、図11に示された「干渉ブロック型」の構成に代えて、「干渉行列型」の構成をもつこともできる。
【0069】
すなわち、上述した(9)式を左右の内力フィードバック値fL、fRのそれぞれに対する項に分けて書き直すと、次の(10) 式が得られる。
【数15】


【0070】
(10)式は(11)式に書き換えられる。
【数16】


【0071】
(11)式を行列の形で表すと(12)式のようになる。
【数17】


【0072】
ここで、
【数18】


とおくと、(12)式は(13)式のようになる。
【数19】


【0073】
この(13)式の値FL、FRに、加工軸力20L、20Rに対する力目標値FL*、FR*を代入すれば、値fL、fRとして、内力フィードバック値fL、fRに対する力目標値fL*、fR*が得られる。
【0074】
図12は、(13)式に従う演算を実行する「干渉行列型」の逆変換部71L、71Rの機能的構成を示す。
【0075】
図12に示すように、逆変換伝達行列ブロック170により、加工軸力20L、20Rに対する力目標値FL*、FR*が、内力フィードバック値fL、fRに対する力目標値軸fL*、fR*に変換される。なお、図12から分かるように、逆変換部71L、71Rは一体的に構成されてよい。なお、上記(13)式は、前述した(9)式と、数学的には等価であるから、図12に示された「干渉行列型」の逆変換演算の結果は、図11に示された「干渉ブロック型」の逆変換演算の結果と同じである。
【0076】
上述したような構成のコントローラ60又は140を用いることにより、偏心加工を行なうときであっても、複数の加工軸における加工力の高精度な制御が可能である。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】複数の加工軸を用いて偏心加工を行なうことができる加工機械の一例として、2本の加工軸をもつサーボプレス機の概略図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる複数の加工軸を有する加工機械の一例として、2本の加工軸を有するサーボプレス機の概略図。
【図3】左右の合計軸力と合計歪との関係を示す図。
【図4】偏心荷重負荷時における、左右個別の加工軸力と左右個別の構造部の歪から算出した内力との関係を示す図。
【図5】偏心量と歪の左右比との関係を示す図。
【図6】「力フィードバック補正方式」のコントローラの機能的構成を示すブロック図。
【図7】荷重補正部が行う左右の内力の双方から左の加工軸力を演算する方法の原理の説明図。
【図8】荷重補正部73L、73Rの干渉ブロック型の構成を示すブロック図。
【図9】荷重補正部73L、73Rの干渉行列型の構成を示すブロック図。
【図10】「力目標補正方式」のコントローラの機能的構成を示すブロック図。
【図11】逆変換部71L、71Rの干渉ブロック型の構成を示すブロック図。
【図12】逆変換部71L、71Rの干渉行列型の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0079】
10 サーボプレス機
12L、12R サーボモータ
14L、14R スライドシャフト
18 被加工物
20L、20R 加工軸力
26、26L、26R 機構部
30 プレス機
30、30L、30R 構造部
32L、32R 位置検出器
34L、34R 歪検出器
60、140 コントローラ
62 目標設定装置
64 演算装置
64L 左演算部
64R 右演算部
66L、66L 力計算器
70L、70R 力目標設定部
71L、71R 逆変換部
73L、73R 荷重補正部
【出願人】 【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
【出願日】 平成18年8月25日(2006.8.25)
【代理人】 【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−49372(P2008−49372A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−229204(P2006−229204)