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【発明の名称】 プレス成形装置及び方法
【発明者】 【氏名】三吉 宏治

【要約】 【課題】プレス成形装置で、スタンパを加工対象物に押しつけてパターンを転写した後、スタンパを加工対象物から離型しやすくする。

【構成】上下のスタンパ35a,35bと、スタンパ35a,35bを加熱および冷却する温調節プレート34a,34bと、エアブローノズル41とを備えたプレス成形装置1が、温調節プレート34a,34bを加工対象物2の軟化温度以上に加熱し、真空または減圧状態で軟化温度以上のスタンパ35a,35bを加工対象物2の両面に押し付けてプレス成型する。プレス成形後、温調プレート34aと温調プレート34bを異なる温度に冷却し、スタンパ35a,35b間の距離をΔHだけ広げる。さらに、真空チャンバを大気開放するとともに、熱歪みによる変形で生じたスタンパ35a,35bと加工対象物2間の隙間に対してエアブローを吹き付ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の熱可塑性の加工対象物(2)をプレス成形するための第1及び第2の型(35a,35b)と、前記第1及び第2の型を加熱および冷却するための第1及び第2の温度調節部(34a,34b)と、前記第1及び第2の温度調節部の温度を目標温度に制御する温度制御装置(60)と、エアブローを吹き出すエアブローノズル(41、41)とを備え、前記加工対象物の両面に前記第1及び第2の型を押しつけてプレス成形を行った後、前記エアブローノズルからのエアブローを用いて前記加工対象物を前記第1及び第2の型から離型させるプレス成形装置(1)であって、
前記温度制御装置は、
前記加工対象物に前記第1及び第2の型を押しつけてプレス成形を行う際に、前記第1及び第2の温度調節部のいずれもが、前記加工対象物の軟化温度以上の目標温度になるように加熱制御する加熱制御手段と、
前記エアブローノズルがエアブローを吹き出す際に、前記第1及び第2の温度調節部が、前記軟化温度以下の、互いに異なる目標温度になるように冷却制御する冷却制御手段と、を備えるプレス成形装置。
【請求項2】
前記冷却制御手段は、前記第1及び第2の温度調節部を、前記軟化温度以上の目標温度から冷却して前記互いに異なる目標温度になるように制御する、請求項1記載のプレス成形装置。
【請求項3】
前記冷却制御手段は、前記第1及び第2の温度調節部を冷却した後、再加熱を行って、前記第1及び第2の温度調節部を前記互いに異なる目標温度とするように制御する、請求項1記載のプレス成形装置。
【請求項4】
板状の熱可塑性の加工対象物(2)をプレス成形するための第1及び第2の型(35a,35b)と、前記第1及び第2の型を加熱および冷却するための第1及び第2の温度調節部(34a,34b)と、エアブローを吹き出すエアブローノズル(41、41)とを備えたプレス成形装置(1)のプレス成形方法であって、
前記第1及び第2の温度調節部が、前記第1及び第2の型を前記加工対象物の軟化温度以上に加熱するステップと、
前記軟化温度以上に加熱された第1及び第2の型を、前記加工対象物の両面に押し付けてプレス成型するステップと、
前記プレス成形後、前記第1及び第2の型間の距離を所定距離だけ広げ、前記第1及び第2の型と前記加工対象物とが接している面へ向けて前記エアブローノズルからエアブローを吹き付けるステップと、
前記エアブローを吹き付ける際に、前記第1及び第2の温度調節部をそれぞれ異なる目標温度になるように冷却するステップと、を含むプレス成形方法。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なパターン有するスタンパを熱可塑性樹脂板の表面に押付けて、熱可塑性樹脂板の表面に微細なパターンを転写するプレス成形に関し、特に、プレス成形後に熱可塑性樹脂板からスタンパを離型しやすくするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を材料として、真空または減圧状態の真空チャンバ内で、微細パターンを熱転写プレス成形する装置が知られている。このプレス成形装置は、例えば、液晶ディスプレイパネルで用いられる熱可塑性樹脂製の導光板の製造などに用いられる。
【0003】
このようなプレス成形装置では、微細なパターンを有するスタンパを熱可塑性樹脂板の表面に押付けて、パターンの転写が完了すると、熱可塑性樹脂板をスタンパから離型しなければならない。ところが、スタンパが熱可塑性樹脂板の表面に貼りついてしまい、うまく離型できない場合がある。そのような場合のために、特許文献1では、加工対象物とスタンパの接触面に対してエアブローを吹き付けて、加工対象物とスタンパの間にエアを送り込んで離型させることが記載されている。
【特許文献1】特開2006−167788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアブローを用いた離型は、加工対象物とスタンパの間に僅かでも隙間がある場合は、エアブローのエアが加工対象物とスタンパとの隙間(離型面)に入り込み、うまく機能する。
【0005】
しかしながら、スタンパと加工対象物の間が真空になっているときは、加工対象物とスタンパ間にはまったく隙間がない。従って、エアブローを吹き付けたとしても、エアが加工対象物とスタンパの間に入らないので、離型できない場合がある。これは、真空または真空に近い減圧状態でプレス成形が行われたときに、特に起きやすい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、プレス成形装置で、スタンパを加工対象物に押しつけてパターンを転写した後、スタンパを加工対象物から確実に離型しやすくする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様に従うプレス成形装置は、板状の熱可塑性の加工対象物(2)をプレス成形するための第1及び第2の型(35a,35b)と、前記第1及び第2の型を加熱および冷却するための第1及び第2の温度調節部(34a,34b)と、前記第1及び第2の温度調節部の温度を目標温度に制御する温度制御装置(60)と、エアブローを吹き出すエアブローノズル(41、41)とを備え、前記加工対象物の両面に前記第1及び第2の型を押しつけてプレス成形を行った後、前記エアブローノズルからのエアブローを用いて前記加工対象物を前記第1及び第2の型から離型させるプレス成形装置(1)である。そして、前記温度制御装置は、前記加工対象物に前記第1及び第2の型を押しつけてプレス成形を行う際に、前記第1及び第2の温度調節部のいずれもが、前記加工対象物の軟化温度以上の目標温度になるように加熱制御する加熱制御手段と、前記エアブローノズルがエアブローを吹き出す際に、前記第1及び第2の温度調節部が、前記軟化温度以下の、互いに異なる目標温度になるように冷却制御する冷却制御手段と、を備える。
【0008】
好適な実施形態では、前記冷却制御手段は、前記第1及び第2の温度調節部を、前記軟化温度以上の目標温度から冷却して前記互いに異なる目標温度になるように制御するようにしてもよい。
【0009】
別の好適な実施形態では、前記冷却制御手段は、前記第1及び第2の温度調節部を冷却した後、再加熱を行って、前記第1及び第2の温度調節部を前記互いに異なる目標温度とするように制御するようにしてもよい。
【0010】
本発明の一実施態様に従うプレス成形方法は、板状の熱可塑性の加工対象物(2)をプレス成形するための第1及び第2の型(35a,35b)と、前記第1及び第2の型を加熱および冷却するための第1及び第2の温度調節部(34a,34b)と、エアブローを吹き出すエアブローノズル(41、41)とを備えたプレス成形装置(1)のプレス成型方法であり、前記第1及び第2の温度調節部が、前記第1及び第2の型を前記加工対象物の軟化温度以上に加熱するステップと、前記軟化温度以上に加熱された第1及び第2の型を、前記加工対象物の両面に押し付けてプレス成型するステップと、前記プレス成形後、前記第1及び第2の型間の距離を所定距離だけ広げ、前記第1及び第2の型と前記加工対象物とが接している面へ向けて前記エアブローノズルからエアブローを吹き付けるステップと、前記エアブローを吹き付ける際に、前記第1及び第2の温度調節部をそれぞれ異なる目標温度になるように冷却するステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係るプレス成形装置について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプレス成形装置1の概略構成を示す図である。
【0013】
プレス成形装置1は、同図に示すように加工対象物2をプレスするプレス部30と、プレス部30を制御するための構成とを備える。プレス部30を制御するための構成は、スライド21を上下運動させるための電動機であるサーボモータ11、11と、サーボモータ11、11の回転をスライド21の直線運動に変換する動力変換機構(プーリ12、12、タイミングベルト13、13、ボールスクリュー14、14)と、サーボモータ11、11を駆動するコントローラ17と、スタンパ35の温度を調節するための温度制御装置60とを備える。コントローラ17は、スライド位置検出手段23、23の出力に基づいて、位置制御によりサーボモータ11、11を駆動するための制御信号を出力し、加圧力検出手段24、24の出力に基づいて、加圧力制御によりサーボモータ11、11を駆動するための制御信号を出力する。コントローラ17が出力する制御信号の詳細については、後述する。サーボアンプ16、16がコントローラ17から制御信号を受け付けると、この制御信号とエンコーダ15、15の出力に基づいてサーボモータ11、11に対して出力する電流を制御する。すなわち、コントローラ17からの指示によりサーボモータ11が動作し、スライド21に取り付けられた後述するスタンパ35が加工対象物2に接近及び離反する。さらに、コントローラ17の指示によりスタンパ35が加工対象物2に押しつけられて、加工対象物2がプレス成形される。
【0014】
加工対象物2は、熱可塑性樹脂製の板、例えば、アクリル製またはポリカーボネート製の導光板用の板である。スタンパ35a、35bは、それぞれ、例えば導光板の表面に形成されるべき凹凸形状を表面に有したステンレス製またはニッケル製の、0.2〜2.0mm程度の厚さを有する薄板である。
【0015】
図2は、プレス部30の詳細な構成を示す断面図であり、図3は、プレス部30と温度制御装置60の詳細な構成を示す図である。
【0016】
プレス部30は、スライド21に結合している上ケース31とボルスター22に結合している下ケース32とを有する。スライド21の上下動にあわせて、上ケース31が上下に移動する。そして、上ケース31と下ケース32が接する部分には、それぞれ真空パッキン39、39、39、39が取り付けられている。そして、上ケース31が下降して上ケース31に取り付けられている真空パッキン39、39と下ケース32に取り付けられている真空パッキン39、39とが接すると、上ケース31及び下ケース32の内部に密閉された空間(真空チャンバ)が形成される。
【0017】
下ケース32は、エアブローを吹き出すエアブローノズル41、41を備える。このエアブローは、プレス成形後に、スタンパ35から加工対象物2を離型するために、スタンパ35と加工対象物2の接触面付近に吹き付けられる。エアブローを吹き付けるタイミング等については後述する。
【0018】
下ケース32には、さらに、大気開放口36及び真空吸引口37が設けられている。大気開放口36は、真空バルブ46を介して大気に開放されている。真空吸引口37は、真空バルブ45を介して真空ポンプ40に接続されている。真空チャンバー内を真空または減圧状態にする場合は、真空バルブ45を開くとともに真空バルブ46を閉じて、真空ポンプ40で真空引きを行う。真空チャンバー内を大気開放する場合は、真空バルブ45を閉じるとともに真空バルブ46を開く。また、下ケース32には、真空チャンバ内の気圧を検出するための圧力センサ(図示しない)が取り付けられている。
【0019】
上ケース31および下ケース32のそれぞれの内側には、外側から内側へ向かって断熱板33(33a、33b)と、板状の温度調節容器(以下、温度調節プレートという)34(34a、34b)と、所定の凹凸パターンを加工対象物2に転写するための型であるスタンパ35(35a、35b)とが、この順序で積層されて構成されている。温度調節プレート34a、34bには、温度調節プレートの温度を検出するための温度センサ38a、38bが設けられている。
【0020】
温度調節プレート34の内部には、温度制御装置60から供給される液体または気体などの流体が流れるための流路が設けられている。そして、この流路に所定の温度の流体を流すことにより、スタンパ35の加熱及び冷却を行う。後述するように、温度制御装置60が、温度調節プレート34内の流路に流す流体の温度を制御することにより、温度調節プレート34の加熱温度及び冷却温度を定めることができる。
【0021】
温度制御装置60は、温調プレート34の温度を目標温度に制御する。例えば、温度制御装置60は、温調プレート34を加熱するための媒体として高温の蒸気、冷却するための媒体として低温の冷却水を用い、これらのいずれか一方を上下の温調プレート34a,34bへそれぞれ供給する。すなわち、温度制御装置60は、冷却水が流入する冷却水供給口62と、蒸気が流入する蒸気供給口63と、冷却水を排水する冷却水戻り口64と、温調プレート34から冷却水を抜くときのエア供給口65とを備える。
【0022】
各供給口62,63は、それぞれ、上下の温調プレート34a,34bへ蒸気または冷却水を供給する供給ライン66と接続されていて、冷却水戻り口64は、上下の温調プレート34a,34bからの排水ライン67に接続されている。そして、各供給口62,63と供給ライン66との間には、電磁弁611〜616が配置されている。そして、後述するように、電磁弁611〜616の開閉を制御することにより、上下の温調プレート34a,34bの加熱及び冷却を行う。
【0023】
温度制御装置60は、上下の温調プレート34a,34bがそれぞれ異なる温度になるように、上下の温調プレート34a,34bを独立に制御することができる。さらに、温調プレート34を加熱する場合及び冷却する場合のいずれの場合についても、目標とする設定温度が予め複数定められていて、温度制御装置60は、その中から選択された一つの温度を目標温度とする。例えば、本実施形態では、図4に示すように上下の温調プレート34a,34bの温度をそれぞれ定めた加熱用パターンが2セット、冷却用パターンが2セット用意されていて、いずれかの温度パターンで加熱または冷却が行われる。
【0024】
次に、温調プレート34を加熱及び冷却する際の温度制御装置60の制御について説明する。
【0025】
まず、加熱時には、温度制御装置60は、電磁弁613,614,615を開き、電磁弁611,612,616,617を閉じる。これにより、上下の温調プレート34a,34bには、蒸気供給口62から蒸気が供給され、これにより加熱される。このとき、温度制御装置60は、上下の温調プレート34a,34bの各々の温度を温度センサ38a,38bによってモニターする。
【0026】
例えば、「加熱1」の温度パターンが選択されているとき、温度制御装置60は、上温調プレート34aへ蒸気を供給し、温度が設定温度Hu1を超えると電磁弁613を閉じる。電磁弁613を閉じると、上温調プレート34aへの蒸気の供給が止まり、上温調プレート34aの温度は下降し始める。そして、上温調プレート34aの温度が設定温度Hu1を下回ると、温度制御装置60は再び電磁弁613を開き、上温調プレート34aへの蒸気の供給を再開する。この電磁弁613の開閉によって上温調プレート34aの温度は、設定温度Hu1に維持され、温調プレート34aはスタンパ35aを設定温度Hu1に加熱する。
【0027】
下温調プレート34bを加熱する場合には、同様に、温度制御装置60が電磁弁614の開閉を制御して、設定温度Hl1を維持するように制御される。これにより、温調プレート34bはスタンパ35bを設定温度Hl1に加熱する。
【0028】
このときに、電磁弁613及び電磁弁614を独立に開閉させることにより、上下の温調プレート34a、34b及びスタンパ35a,35bを、それぞれ異なる温度に加熱することができる。
【0029】
また、「加熱2」の温度パターンが選択されているときは、上下の温調プレート34a,34bのそれぞれの設定温度をHu2及びHl2として、「加熱1」の場合と同様の制御が行われる。
【0030】
一方、冷却時には、温度制御装置60は、電磁弁611,612,616を開き、電磁弁613,614,615,617を閉じる。これにより、上下の温調プレート34a,34bには冷却水が供給され、温調プレート34a,34bが冷却される。加熱の場合と同様に、温度センサ38a,38bによって温調プレート34a,34bの温度がモニターされるので、モニター結果に基づいて、以下のように温調プレート34a,34bの温度制御を行う。
【0031】
すなわち、「冷却1」の温度パターンが選択されているときは、上温調プレート34aへ冷却水を供給し、温度が設定温度Cu1を下回ると電磁弁611を閉じる。電磁弁611を閉じることで上温調プレート34aへの冷却水の供給が止まり、上温調プレート34aの温度降下が緩やかになる。下温調プレート34bについても同様に、下温調プレート34bへ冷却水を供給し、温度が設定温度Cl1を下回ると電磁弁612を閉じる。これにより、上下の温調プレート34a,34bをそれぞれ設定温度Cu1,Cl1に冷却でき、これとともに、冷却された温調プレート34a,34bによりスタンパ35a,35bも設定温度Cu1,Cl1にすることができる。
【0032】
このときに、電磁弁611及び電磁弁612を独立に開閉させることにより、上下の温調プレート34a、34b及びスタンパ35a,35bをそれぞれ異なる温度に冷却することができる。
【0033】
また、「冷却2」の温度パターンが選択された場合は、上下の温調プレート34a,34bのそれぞれの設定温度をCu2及びCl2として、「冷却1」のときと同様の制御が行われる。
【0034】
なお、温調プレート34の過冷却を防止するために、温調プレート34に残った冷却水を排水することができる。この排水は、電磁弁611,612を閉じた状態で、電磁弁617を開くことにより行う。
【0035】
次に、図5〜図9を用いて、本実施形態に係るプレス成形装置1で加工対象物のプレスを行う動作の1周期について説明する。
【0036】
図5A〜Dは、加工対象物2をプレスする第1のプレス動作における、1周期の各種状態の時間変化を示すものである。すなわち、同図Aは上下方向のスライドの位置変化、同図Bはプレス加圧力の変化、同図Cは温調プレート34の温度変化、及び同図Dは真空チャンバ内の気圧の変化をそれぞれ示す。
【0037】
図6A〜Dは、プレス部30の1周期の動作の様子を模式的に示す図である。同図では、スライドの位置の変化をS1〜S4で示す。このS1〜S4は、図5Aの縦軸に示したS1〜S4と対応する。
【0038】
図7は、プレス加工の1周期の処理手順を示すフローチャートである。
【0039】
まず、時刻0において、スライド21の位置は上限位置S1である。このときに加工対象物2がプレス部30に搬入される(S11)。ここから、コントローラ17による位置制御により、スライド21が、上下の真空パッキン39,39が接触する位置S2まで下降する(S12)。
【0040】
スライド21がS2まで下降すると(時刻:t1)、真空ポンプ40が真空チャンバ内の真空引きを開始する(S13)。これにより、図5Dに示すように、真空チャンバ内の圧力が低下し始める。
【0041】
また、時刻t1以降、真空引きと並行して、図5Cに示すように、温度制御装置60が上下温調プレート34a,34bを「加熱1」の温度パターンで加熱を開始する(S14)。第1のプレス動作では、「加熱1」の上下の温調プレート34a,34bの設定温度(Hu1,Hl1)は等しく、この設定温度は加工対象物2の軟化温度Tgより30℃以上高く設定される。従って、例えば、加工対象物2がアクリルの場合は、Hu1=Hl1=120〜140℃でよい。
【0042】
次に、上下の温調プレート34a,34bの温度が、概ね設定温度(Hu1,Hl1)に到達するとともに、真空チャンバ内の真空度が、予め定められている設定真空度Pに到達すると(時刻:t2)、コントローラ17による加圧力制御により、スライド21が下降する。このとき、コントローラ17は、図5Bに示すように、設定された加圧力Lとなるようにスライド21を下降させ、加圧力Lでスタンパ35を加工対象物2へプレスする(S15)。この加圧力Lがしばらく維持され、加工対象物2がプレス成形される。
【0043】
ところで、加圧力Lでプレスを行っているときのスライド21の位置は、図5Aに示すように、およそS3の位置となる。しかしながら、このときは位置制御ではなく、加圧力制御が行われているので、温調プレート34a,34b及び加工対象物2の、加熱及び冷却に伴う熱膨張及び熱収縮に追従して、スライド21の位置も僅かに上下動し、加圧力が一定に保たれる。
【0044】
つぎに、温度制御装置60は、図5Cに示すように、時刻t3から上下の温調プレート34a、34bを「冷却1」の温度パターンで冷却を開始する(S16)。このとき、スライド21の位置(図5A)、プレス加圧力(図5B)、及び真空チャンバ内の気圧(図5D)は、そのまま維持される。
【0045】
第1のプレス動作では、「冷却1」の温調プレート34a、34bの設定温度Cu1,Cl1は、いずれも加工対象物の軟化温度Tgより低く、かつ、上温調プレート34aの設定温度Cu1と下温調プレート34bの設定温度Cl1が異なるように(例えばCu1>Cl1)設定される。従って、加工対象物がアクリルの場合、Cu1とCl1は50〜90℃の間でよい。
【0046】
上下の温調プレート34a、34bの温度が「冷却1」の設定温度まで冷却されると、コントローラ17は、スライド21を位置制御によって所定の移動距離ΔHだけ上昇させて上下スタンパ35a,35b間の距離を広げ、S4の位置へ移動させる(S17)。ここで、スライド21の移動距離ΔHは、真空チャンバーが開かない位置で、かつ、加工対象物2の表面とスタンパ35間にエアブローのエアが入る隙間を形成可能な距離であればよい。
【0047】
このとき、上下の温調プレート34a,34bの温度が異なる状態でスライド21が上昇すると、加工対象物2の上面と下面の間に生じた温度勾配によって加工対象物2が反るように変形する。この反りにより、上下のスタンパ35a,35bと加工対象物2の間にわずかな隙間ができる。ここで、加工対象物2の反りは、なるべく小さい方が好ましい。従って、移動距離ΔH及び設定温度Cu1,Cl1を最適化することにより、最小の反りで加工対象物2を離型できるようにすることができる。
【0048】
時刻t4で、真空チャンバを大気開放する(S18)と同時に、エアブローノズル41から加工対象物2の上下面とスタンパ35a,35b間に向けてエアを吹付ける(S19)ことにより、加工対象物2とスタンパ35a,35b間にエアが入って、加工対象物2がスタンパから離型する。エアブローは、予め定められた時間(ここでは、時刻t4〜t5の間)だけ行う。
【0049】
その後、温度制御装置60は、上下温調プレート34a,34bを「冷却2」の温度セットパターンで冷却する(S20)。
【0050】
「冷却2」の温調プレートの設定温度Cu2、Cl2は同じ温度であり、かつ、「冷却1」の上下の温調プレートの設定温度Cu1,Cl1のいずれよりも低い。設定温度Cu2及びCl2を等温とすることで、加工対象物2の反りを直す。従って、加工対象物2がアクリルの場合、設定温度Cu2、Cl2は40〜70℃の間で設定される。
【0051】
上下の温調プレート34a,34bの温度が「冷却2」の設定温度Cu2,Cl2になると(時刻:t5)、スライド21が位置制御によって上限位置S1へ上昇し(S21)、成形された加工対象物2の取り出しが可能となる。
【0052】
次に、第2のプレス動作について説明する。第1のプレス動作と相違する点を中心に説明する。
【0053】
図8及び図9は、加工対象物2をプレスする第2のプレス動作における、1周期の各種状態の時間変化を示すグラフ及びフローチャートである。第2のプレス動作は、時刻t3までは第1のプレス動作と同一である。従って、フローチャートでは、ステップS31〜S35までが、第1のプレス動作におけるステップS11〜S15と同一である。
【0054】
第2のプレス動作では、時刻t3以降、温度制御装置60は、設定温度がCu1=Cl1に設定された「冷却1」の温度パターンに従って、温調プレート34a,34bを冷却する(S36)。ここで、設定温度Cu2,Cl2は、いずれも加工対象物2の軟化温度Tg以下である。そして、温調プレート34a,34bが設定温度まで冷却された後、つまり時刻t4になると、温度制御装置60は、「加熱2」の温度セットに従って温調プレート34a,34bを再加熱する(S37)。
【0055】
このときの設定温度Hu2,Hl2は、いずれも加工対象物2の軟化温度Tg以下であり、かつ、上温調プレート34aの設定温度Hu2と下温調プレート34bの設定温度Hl2が異なるように(例えばHu2>Hl2)設定される。
【0056】
「加熱2」で加熱を行って、加工対象物2に温度勾配が生じたところで、コントローラ17による位置制御により、スライド21をΔH上昇させ、S4の位置へ移動する(S38)。そして、スライド21がS4へ移動した後、時刻t5で、真空チャンバを大気開放する(S39)と同時に、エアブローノズル41から加工対象物2の上下面とスタンパ35間に向けてエアを吹付ける(S40)ことにより、第1のプレス動作の場合と同様に、若干反った加工対象物2とスタンパ35a,35bの間にエアが入って、加工対象物2がスタンパ35a,35bから離型する。
【0057】
すなわち、第2のプレス動作では、上下のスタンパ35a,35bを加工対象物2の軟化温度以下の同じ温度に一旦冷却した後、軟化温度以下ではあるが、上下のスタンパ35a,35bの温度が異なるように再加熱して、加工対象物2に温度勾配を生じさせて、反らせるようにしている。
【0058】
これ以降、第1のプレス動作の場合と同様に、上下温調プレート34a,34bが同じ温度になるように「冷却2」の温度パターンに従って冷却し(S41)、スライド21を上限位置S1へ上昇させる(S42)。
【0059】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0060】
例えば、上述の実施形態では、真空でプレス成形を行う場合について説明しているが、本発明は、真空でない状態でプレス成形を行う場合にも適用できる。一方、上述の実施形態のように真空でプレス成形を行うと、特にスタンパと加工対象物とが接する面が真空になりやすく、離型が難しいので、本発明は特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係るプレス成形装置1の概略構成を示す図である。
【図2】プレス部30の詳細な構成を示す断面図である。
【図3】プレス部30と温度制御装置60の詳細な構成を示す図である。
【図4】加熱及び冷却の目標温度のセットを示す。
【図5】第1のプレス動作における、1周期の各種状態の時間変化を示す。
【図6】プレス部30の1周期の動作の様子を模式的に示す図である。
【図7】第1のプレス動作におけるプレス加工の1周期の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第2のプレス動作における、1周期の各種状態の時間変化を示す。
【図9】第2のプレス動作におけるプレス加工の1周期の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 プレス成形装置
11 サーボモータ
12 プーリ
13 タイミングベルト
14 ボールスクリュー
15 エンコーダ
16 サーボアンプ
17 コントローラ
21 スライド
22 ボルスター
23 スライド位置検出手段
24 加圧力検出手段
30 プレス部
31 上ケース
32 下ケース
33 断熱板
34a,34b 温調プレート
35a,35b スタンパ
36 大気開放口
37 真空吸引口
38a,38b 温度センサ
39 真空パッキン
40 真空ポンプ
41 エアブローノズル
60 温度制御装置
【出願人】 【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
【出願日】 平成18年7月12日(2006.7.12)
【代理人】 【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−18447(P2008−18447A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−191607(P2006−191607)