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【発明の名称】 空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤ
【発明者】 【氏名】富塚 裕

【要約】 【課題】軸方向両端部における補強コードの蛇行が防止されたベルト層23を容易かつ安価に製造する。

【構成】円筒状のBTドラム40の外側に配置されたゴム部材42により、ベルト層23の軸方向中央部をその軸方向両端部より半径方向外側に膨出させるようにしたので、加硫モールド閉止終了時にグリーンタイヤのトレッド部全域と加硫モールドの内表面との間にベルト層23の拡張率の範囲内の間隙が設けられ、この結果、トレッドの軸方向両端部が加硫モールドにより半径方向内側に押し込まれることはない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイダル状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置され、内部にタイヤ赤道Sに実質上平行に延びる高弾性率の補強コードが埋設されたベルト層と、ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドとを備えた空気入りタイヤの製造方法であって、円筒状を呈する成形ドラムの外側に略円筒状のゴム部材を密着配置する工程と、前記ゴム部材の外側に、前記補強コードをゴム被覆したストリップを螺旋状に巻き付けて、略円筒状のベルト層を成形し、前記ゴム部材によりベルト層の軸方向中央部をその軸方向両端部より半径方向外側に位置させる工程と、前記ベルト層の外側にトレッドを貼付けベルト・トレッドバンドを成形する工程と、トロイダル状をしたカーカス層の半径方向外側に前記ベルト・トレッドバンドを配置してグリーンタイヤを成形する工程と、前記グリーンタイヤを加硫する工程とを備えたことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ベルト層をゴム部材より広幅とし、ベルト層の軸方向両端部をゴム部材より軸方向外側まで延在させることで、ベルト層の軸方向中央部をその軸方向両端部より半径方向外側に位置させるようにした請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム部材の軸方向長さAをベルト層の軸方向長さBの0.75〜0.85倍の範囲とするとともに、ゴム部材の肉厚Cをベルト層の肉厚Dの 0.9〜 2.0倍の範囲内とした請求項2記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記ゴム部材の肉厚Cを軸方向位置に拘わらず一定とした請求項2または3記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記ゴム部材を軸方向両外端から軸方向中央に向かうに従い徐々に厚肉とするとともに、該ゴム部材の軸方向中央部をベルト層の軸方向中央部に重なり合わせることで、ベルト層の軸方向中央部をその軸方向両端部より半径方向外側に位置させるようにした請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記補強コードを芳香族ポリアミド繊維から構成した請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法を用いて製造したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤ赤道に実質上平行に延びる高弾性率の補強コードが埋設されたベルト層を有する空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤ業界においては種々の課題に対応するため、種々の空気入りタイヤが提案されており、例えば、風洞実験等に用いる高性能乗用車用のテストタイヤを簡単に製造するため、あるいは、二輪車用タイヤにおいてトラクション、グリップ性能を格段に向上させるため、主ベルト層を、タイヤ赤道Sに実質上平行に延びる高弾性率の補強コードが内部に埋設されているベルト層のみで構成した空気入りタイヤが提案されている。
【0003】
ここで、このような空気入りタイヤを、従来の空気入りタイヤと同様の方法で製造、即ち、円筒状をしたBT(ベルト・トレッド)ドラムの外側に、補強コードをゴム被覆したストリップを螺旋状に巻き付けて、主ベルト層としての円筒状のベルト層を成形した後、該ベルト層の外側にトレッドを巻き付けることでBT(ベルト・トレッド)バンドを成形し、このようなBTバンドを用いて製造しようとすると、加硫済みタイヤとなったとき、ベルト層の軸方向両端部における補強コードに蛇行が発生してしまうのである。この結果、ベルト層の軸方向両端部における周方向剛性が低下して、タイヤ転動時におけるトレッド端部での径成長を十分に抑制することができず、タイヤの異常発熱による偏摩耗や高速耐久性の悪化などが生じてしまうという問題があった。
【0004】
その理由は、一般に、空気入りタイヤのトレッド部の外周面(踏面)は、軸方向中央部が軸方向両端部より半径方向外側に膨出するよう、一定の曲率半径(クラウンアール)で湾曲しているのに対し、前述の円筒状をしたベルト層は加硫時における拡張が補強コードによって全範囲で強力に(最大で3%程度に)制限されているため、BTドラムの外径を加硫済みタイヤのベルト層の軸方向中央部における内径と略同一とせざるを得なかった。
【0005】
しかしながら、このような円筒状のベルト層を有するグリーンタイヤを加硫しようとすると、加硫モールド閉止終了直前にグリーンタイヤの両トレッド端部が該加硫モールドに接触して半径方向内側に押し込まれ、その後、加硫の進行に伴ってトレッド中央部が加硫モールドに接触するまで拡張するため、ベルト層の軸方向両端部において補強コードに余りが生じて蛇行してしまうのである。
【0006】
このようなことから、従来においては、前述のようなベルト層の軸方向両端部における補強コードの蛇行を防止するために、以下の特許文献1に記載されている空気入りタイヤの製造方法の一部を従来の製造方法に代えた製造方法で空気入りタイヤを製造している。
【特許文献1】特開平1−249429号公報
【0007】
ここで、特許文献1に記載された一部の製造方法とは、成形ドラムを拡径して該成形ドラムの外周を軸方向中央部が軸方向両端部より半径方向外側に位置するよう(成形ドラムの外周における軸方向断面形状と、製品タイヤとなったベルト層の軸方向断面形状とがほぼ同一となるよう)湾曲させる工程と、成形ドラムの外側に高弾性率の補強コードをゴム被覆したストリップを螺旋状に巻き付け、その軸方向中央部が軸方向両端部より半径方向外側に位置しているベルト層を成形する工程とを備えた方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した特許文献1記載の方法を一部に用いた空気入りタイヤの製造方法にあっては、湾曲した外周を提供する成形ドラムはアルミニウム、スチール等の金属から構成されているため、異なる種類の空気入りタイヤを製造する場合には、異なる湾曲の成形ドラムが必要となって、その種類毎に成形ドラムを設計製作しなければならず、この結果、空気入りタイヤの製造コストが高価となってしまうという課題があった。
【0009】
この発明は、ベルト層の軸方向両端部における補強コードの蛇行を防止しながら容易かつ安価に製造することができる空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、トロイダル状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置され、内部にタイヤ赤道Sに実質上平行に延びる高弾性率の補強コードが埋設されたベルト層と、ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドとを備えた空気入りタイヤの製造方法であって、円筒状を呈する成形ドラムの外側に略円筒状のゴム部材を密着配置する工程と、前記ゴム部材の外側に、前記補強コードをゴム被覆したストリップを螺旋状に巻き付けて、略円筒状のベルト層を成形し、前記ゴム部材によりベルト層の軸方向中央部をその軸方向両端部より半径方向外側に位置させる工程と、前記ベルト層の外側にトレッドを貼付けベルト・トレッドバンドを成形する工程と、トロイダル状をしたカーカス層の半径方向外側に前記ベルト・トレッドバンドを配置してグリーンタイヤを成形する工程と、前記グリーンタイヤを加硫する工程とを備えることにより、達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、円筒状を呈する成形ドラムの外側に略円筒状のゴム部材を密着配置した後、ゴム部材の外側に高弾性率の補強コードをゴム被覆したストリップを螺旋状に巻き付けて略円筒状のベルト層を成形し、前記ゴム部材によりベルト層の軸方向中央部をその軸方向両端部より半径方向外側に位置させるようにしたので、加硫モールド閉止終了時にグリーンタイヤのトレッド部全域と加硫モールドの内表面(型付け面)との間にベルト層の拡張率の範囲内の間隙を設けることができ、この結果、加硫モールドの閉止終了時にトレッド部のいずれの部分も該加硫モールドによって半径方向内側に押し込まれることはない。
【0012】
この結果、前述のようなベルト層の軸方向両端部における補強コードの蛇行が効果的に防止され、ベルト層の軸方向両端部における周方向剛性を強力なものとすることができる。しかも、異なる種類の空気入りタイヤを製造する場合には、成形ドラムの外側に対応する肉厚、軸方向長さのゴム部材を密着配置するだけでよく、対応する成形ドラムを設計製作する必要がなくなる。この結果、空気入りタイヤの製造が容易となり、製造コストを安価とすることもできる。
【0013】
また、請求項2に記載のように構成すれば、ゴム部材を構成するゴムの量を減少させることができるので製作費が安価になるとともに、その製作を容易とすることができ、さらに、請求項3に記載のように構成すれば、加硫時にトレッド部の外表面と加硫モールドの内表面との間にエアが残留する事態を防止しながら、ベルト層の補強コードに発生する蛇行を確実に防止することができる。
【0014】
また、請求項4に記載のように構成すれば、ゴム部材として、製造が容易な均一厚さの帯状ゴムシートを用いることができ、この結果、ゴム部材を容易に製作することができるとともに、製作費が安価となる。さらに、請求項5に記載のように構成すれば、ゴム部材の外側にベルト層を成形するとき、その曲率半径を、製品となった空気入りタイヤのベルト層における曲率半径に近付けることができる。そして、この発明は補強コードが請求項6に記載のように、芳香族ポリアミド繊維から構成されているときに、特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は風洞実験等に用いられる高性能乗用車用の空気入りラジアルタイヤであり、このようなタイヤ11は、前記実験において空気抵抗やタイヤの周囲の空気の流れをシミュレートするために用いられる。前記タイヤ11はビードコア12がそれぞれ埋設された一対のビード部13と、これらビード部13からほぼ半径方向外側に向かって延びる一対のサイドウォール部14と、これらサイドウォール部14の半径方向外端同士を連ねる略円筒状のトレッド部15とを有する。
【0016】
そして、このタイヤ11は一方のビード部13から他方のビード部13までトロイダル状に延びることで前記サイドウォール部14およびトレッド部15を補強するカーカス層18を有し、このカーカス層18はその幅方向両端部がビードコア12の回りに内側から外側に折り返されている。また、前記カーカス層18は少なくとも1枚(ここでは1枚)のカーカスプライ19から構成され、該カーカスプライ19内にはほぼラジアル方向に延びる(タイヤ赤道Sに対し80〜90度の角度で傾斜している)多数本の互いに平行なナイロン、芳香族ポリアミド等の有機繊維、あるいは、スチールからなるカーカスコード、ここでは、低弾性率(1500〜3600MPa)の有機繊維から構成されたカーカスコード20が埋設されている。
【0017】
23は前記カーカス層18の半径方向外側に配置されたベルト層であり、このベルト層23はトレッド幅とほぼ同一幅である。また、前記ベルト層23は少なくとも1枚(ここでは1枚)のベルトプライ24から構成されており、該ベルトプライ24の内部にはタイヤ赤道Sと実質上平行に延びる高弾性率( 30000MPa以上、好ましくは 40000〜 50000MPa)の芳香族ポリアミド繊維から構成された補強コード25が埋設されている。なお、この補強コード25はスチールから構成してもよいが、軽量化等の理由から前述のような芳香族ポリアミドが好適である。
【0018】
このようにトレッド部15に高いたが効果を有するベルト層23を設ければ、高速走行時における遠心力によってトレッド部15が半径方向外側に大きく径成長するのが抑制され、これにより、タイヤ11は高速転動時においても所定の形状に保持される。そして、このようなタイヤ11、即ち主ベルト層として前述のようなベルト層23のみが配置されたタイヤ11は、簡単な構造でありながら高速転動にも耐え得るため、風洞実験等に好適である。また、前述のようなベルト層23は二輪車用タイヤにも適用することができ、この場合には、前記ベルト層23が周方向張力の大部分を負担することになるので、トラクション性能、グリップ性能を向上させることができる。
【0019】
28は前記ベルト層23の半径方向外側に設けられ、通常レイヤー層と呼ばれる一対の幅狭補強層であり、これら幅狭補強層28はベルト層23の軸方向両端部と重なり合うよう、ここではベルト層23の軸方向両端をそれぞれ跨ぐよう配置されている。また、前記幅狭補強層28は少なくとも1枚、ここでは1枚の幅狭補強プライ29から構成されており、各補強プライ29の内部にはタイヤ赤道Sと実質上平行に延びるナイロン、芳香族ポリアミド等の有機繊維、ここでは芳香族ポリアミドから構成された補強素子30がそれぞれ埋設されている。
【0020】
この結果、タイヤ11におけるトレッド端部の周方向剛性がさらに高い値となり、タイヤ11のトレッド端部における径成長が強力に抑制される。33は前記ベルト層23、幅狭補強層28の半径方向外側に配置されたゴムからなるトレッドであり、このトレッド33の外表面(踏面)には、排水性能を向上させるため、周方向に連続して延びる複数本、ここでは4本の主溝34が形成されている。また、前記トレッド33の外表面には幅方向や斜め方向に延びる多数本の横溝が形成されることもある。なお、35はサイドトレッドである。
【0021】
次に、このようなタイヤ11を製造するには、例えば、円筒状をした拡縮径可能で回転可能な図示していないバンドドラムを回転させるとともに、その周囲に帯状のインナーライナー、カーカスプライ19等を図示していない供給手段から次々に供給して巻き付ける。次に、バンドドラムの軸方向中央部を拡径してカーカスプライ19の軸方向中央部を拡径した後、図示していないビード供給手段により一対のスティフナー付きビードコア12をカーカスプライ19の外側でカーカスプライ19の段差に当接する位置に供給してセットする。この状態でビードコア12より軸方向外側のカーカスプライ19を折返しブラダ等を用いて軸方向内側に向かって折り返すとともに、該折返し部の外側にサイドトレッド35を貼り付ける。これにより、バンドドラムの周囲には円筒状をしたグリーンケースが成形される。
【0022】
一方、このようなグリーンケースの成形と並行して、図3に示すような回転可能で拡縮径可能な円筒状を呈する成形ドラムとしてのBT(ベルト・トレッド)ドラム40により、内径が前記グリーンケースの外径より大径である略円筒状のBTバンド41(ベルト・トレッドバンド)を成形する。このようなBTバンド41を成形するには、まず、BTドラム40を回転させるとともに、該BTドラム40の軸方向中央部でその半径方向外側に、幅方向位置(軸方向位置)に拘わらず肉厚が一定である断面略矩形状のゴムシートを図示していないシート供給手段から供給して巻き付けゴム部材42を成形する。なお、このゴム部材42は例えば、カーカスプライのコーティングゴム等のゴムから構成されている。
【0023】
このようにしてBTドラム40の外側に密着配置されたゴム部材42は中央部に軸方向に延びる中空孔43が形成された略円筒状、ここでは円筒状を呈することになる。ここで、前述のようにBTドラム40に巻き付けられるゴム部材42の肉厚を軸方向位置に拘わらず一定としたので、該ゴム部材42として、製造が容易な均一厚さの帯状ゴムシートを用いることができ、この結果、ゴム部材42を容易に製作することができるとともに、製作費が安価となる。
【0024】
そして、このようなゴムシートは、例えばカレンダー装置によって一定厚さ、一定幅の長尺ゴムシートを成形した直後にそのままBTドラム40に供給してもよく、あるいは、前述のように成形した後、リールにロール状に一旦巻き取り、その後、必要に応じて該リールから巻き出してBTドラム40に供給するようにしてもよい。また、前述のゴム部材42は、図示していない別の成形ドラムによって円筒状に成形した後、搬送手段によってBTドラム40に搬入移載することでBTドラム40の外側に密着配置するようにしてもよい。
【0025】
次に、少なくともゴム部材42の半径方向外側に、補強コード25を1本または少数本並べてゴム被覆したストリップを供給して螺旋状に巻き付け、少なくともゴム部材42の半径方向外側を覆うベルト層23を成形する。ここで、この実施形態では、ベルト層23をゴム部材42より広幅とした(軸方向長さを大とした)ので、該ベルト層23の軸方向両端部(幅方向両端部)はゴム部材42の軸方向両端より軸方向外側に位置していることになる。
【0026】
この結果、ベルト層23の軸方向中央部(幅方向中央部)の半径方向内側にのみゴム部材42が配置されることになり、これにより、ベルト層23の軸方向中央部は半径方向外側に膨出(突出)して軸方向両端部より半径方向外側に位置することになる。この結果、ベルト層23は断面ハット形の略円筒状を呈することとなる。即ち、この実施形態では、BTドラム40の外径は、加硫済みタイヤにおけるベルト層の軸方向両端部の内径とほぼ同一であって、前述した従来のBTドラムの外径より小径であるが、BTドラム40の軸方向中央部にゴム部材42を配置し、巻き付けられたベルト層23の軸方向中央部を半径方向外側に膨出させることで、該軸方向中央部における内径を、従来のBTドラムの外径と実質上同径で、かつ、製品タイヤにおけるベルト層の軸方向中央部の規定された内径とほぼ同一としている。
【0027】
そして、前述のようにベルト層23をゴム部材42より広幅として、ベルト層23の軸方向両端部をゴム部材42より軸方向外側まで延在させることで、ベルト層23の軸方向中央部を膨出させるようにすれば、例えば、断面凸形状のゴム部材の外側に、このゴム部材と等幅のベルト層を成形することで、ベルト層の軸方向中央部をその軸方向両端部より半径方向外側に膨出させるような場合に比較して、ゴム部材42を構成するゴムの量を減少させることができ、製作費が安価になるとともに、その製作を容易とすることができる。さらに、ゴムシートを周上一箇所で接合してゴム部材42を成形する場合、その接合作業が容易となる。
【0028】
次に、前記補強素子30を1本または少数本並べてゴム被覆したストリップをベルト層23の軸方向両端を跨ぐよう螺旋状に巻き付けることで、一対の幅狭補強層28をベルト層23の半径方向外側に成形する。その後、前記ベルト層23、幅狭補強層28の半径方向外側に帯状をしたトレッド33を供給して円筒状に貼付ける。これにより、BTドラム40の外側にはゴム部材42、ベルト層23、幅狭補強層28、トレッド33からなる略円筒状のBTバンド41が成形される。
【0029】
次に、バンドドラム、BTドラム40と後述のシェーピングドラム47との間に配置された搬送手段(図示せず)により、前記グリーンケースおよびBTバンド41の双方を半径方向外側から把持した後、バンドドラム、BTドラム40を縮径し、グリーンケースおよびBTバンド41をバンドドラム、BTドラム41から搬送手段に受け渡す。
【0030】
その後、該搬送手段によりグリーンケースおよびBTバンド41をシェーピングドラム47(図4参照)まで同時に搬送する。次に、前記シェーピングドラム47に設けられた一対のビード支持体48を拡径し、グリーンケースのビードコア12を半径方向内側からそれぞれ支持した後、略円筒状のBTバンド41を搬送手段によりシェーピングドラム47を囲む位置まで搬送する。
【0031】
その後、前記一対のビード支持体48を軸方向内側に移動させることで、一対のビードコア12を互いに接近させるとともに、ビードコア12間のグリーンケース内に内圧を供給し、該グリーンケースをトロイダル状に変形させる。このとき、該グリーンケースの半径方向外側には、略円筒状のBTバンド41が予め供給配置されているため、前述したグリーンケースのトロイダル状への変形の途中に、グリーンケースの半径方向外側にBTバンド41が貼付けられ、グリーンタイヤ51が形成される。なお、このようにして形成されたグリーンタイヤ51のカーカス層18とベルト層23の軸方向中央部との間には、これらに密着したゴム部材42がそのまま残留している。
【0032】
次に、図示していない搬送手段によりグリーンタイヤ51を半径方向外側から把持して前記シェーピングドラム47から取り出した後、図5に示すような上サイドモールド54、下サイドモールド55、セクターモールド56からなる加硫モールド57内に搬入する。その後、加硫モールド57を閉止するとともに、加硫ブラダ58内に加硫媒体を供給して、グリーンタイヤ51を型付けしながら加硫し、空気入りタイヤ11とする。
【0033】
ここで、このような加硫時、前記ゴム部材42を構成するゴムは、カーカス層18内のカーカスコード20が加硫媒体からの内圧を受けて簡単に長手方向に伸張するため、カーカス層18により半径方向外側に押され、ベルト層23の補強コード25間を通ってベルト層23より半径方向外側に流動する。このため、加硫が終了したときには、カーカス層18とベルト層23の間にゴム部材42が殆ど残留することはなく、これにより、加硫済み空気入りタイヤ内のベルト層23は、カーカス層18の半径方向外側にこれに密着して積層されるとともに、軸方向中央部が軸方向両端部より半径方向外側に位置し、ほぼ一定の曲率半径でカーカス層18と平行に湾曲する。
【0034】
このように加硫済みタイヤのベルト層の軸方向両端部とほぼ同径であるBTドラム40上にゴム部材42を設けた後、該ゴム部材42より幅広のベルト層23をその外側に成形したので、成形されたベルト層23の軸方向中央部は軸方向両端部より半径方向外側に位置して、加硫後におけるベルト層の全体形状とほぼ同一形状となる。この結果、加硫モールド57の閉止終了時にグリーンタイヤ51のトレッド部15全域と加硫モールド57、ここではセクターモールド56の内表面59(型付け面)との間にベルト層23の拡張率の範囲内の間隙60が設けられ(図5参照)、この結果、加硫モールド57の閉止終了時にトレッド部15のいずれの部分も該加硫モールド57によって半径方向内側に押し込まれることはない。
【0035】
この結果、ベルト層23の軸方向両端部における補強コード25の蛇行が効果的に防止され、ベルト層23の軸方向両端部における周方向剛性を強力なものとすることができる。しかも、異なる種類の空気入りタイヤを製造する場合には、BTドラム40の外側に対応する肉厚、軸方向長さのゴム部材42を密着配置するだけでよく、対応するBTドラム40を設計製作する必要がなくなる。この結果、空気入りタイヤ11の製造が容易となり、製造コストを安価とすることもできる。また、前述のようなゴム部材42の肉厚、軸方向長さを変化させれば、BTドラム40の外径を変化させずに、ベルト層23における軸方向(幅方向)の拡張率を任意に変化させてその形状をコントロールすることもできる。
【0036】
ここで、前記ゴム部材42の軸方向長さをA(mm)、ベルト層の軸方向長さをB(mm)としたとき、前記長さAを長さBの0.75〜0.85倍の範囲内とすることが好ましい。その理由は、前記長さAが長さBの0.75倍未満であると、ベルト層23の軸方向中央部の狭い範囲しか半径方向外側に膨出させることができず、加硫終了時にトレッド部15の外表面と加硫モールド57(セクターモールド56)の内表面59との間にエアが残留してしまうおそれがあるからであり、一方、前記長さAが長さBの0.85倍を超えると、ベルト層23の軸方向両端部もかなりの範囲で半径方向外側に膨出してしまうため、ベルト層23の軸方向両端部内における補強コード25の一部に蛇行が発生してしまうおそれがあるからである。
【0037】
また、前記ゴム部材42の肉厚をC(mm)、ベルト層の肉厚をD(mm)としたとき、前記肉厚Cを肉厚Dの 0.9〜 2.0倍の範囲内とすることが好ましい。その理由は、前記肉厚Cが肉厚Dの 0.9倍未満であると、グリーンタイヤ51の軸方向中央部と加硫モールド57との間の間隙60をベルト層23の拡張率の範囲内とするには、BTドラム40の外径を従来のBTドラムの外径に近付けなければならず、この結果、加硫済タイヤのベルト層23の軸方向両端部における補強コード25に蛇行が発生してしまうことがあり、一方、前記肉厚Cが肉厚Dの 2.0倍を超えると、BTドラム40の外径が小径となりすぎて、加硫終了時にトレッド部15の軸方向両端部外表面と加硫モールド57(セクターモールド56)の内表面59との間にエアが残留してしまうおそれがあるからである。
【0038】
図6はこの発明の実施形態2を示す図である。この実施形態2においては、略円筒状のゴム部材64を、その軸方向両端(幅方向両端)から軸方向中央(幅方向中央)に向かうに従い徐々に厚肉と、ここでは、該ゴム部材64の外周における軸方向断面形状を製品タイヤのベルト層の軸方向断面形状とほぼ同一としており、この結果、このゴム部材64は断面略凸レンズ状を呈することになる。そして、BTドラム40上に成形されたゴム部材64の半径方向外側に、前記補強コード25をゴム被覆したストリップを螺旋状に巻き付けることで、ベルト層23を成形するが、このとき、ゴム部材64の軸方向中央部(幅方向中央部)とベルト層23の軸方向中央部(幅方向中央部)とが重なり合うようにベルト層23を成形する。
【0039】
これにより、ベルト層23の軸方向中央部の半径方向内側に配置されたゴム部材64の肉厚が最も厚く、これからベルト層23の軸方向両外側に向かうに従い、該ベルト層23の半径方向内側に配置されたゴム部材64が徐々に薄肉となるため、ベルト層23の軸方向中央部はその軸方向両端部より半径方向外側に位置することになる。この結果、ゴム部材64の外側にベルト層23を成形するとき、このベルト層23の曲率半径を、製品となった空気入りタイヤのベルト層における曲率半径に容易に近付けることができる。なお、他の構成、作用は前記実施形態1と同様である。
【0040】
なお、前述の実施形態においては、バンドドラム、BTドラム40によってグリーンケース、BTバンド41を成形した後、これらをシェーピングドラム47に搬送し、該シェーピングドラム47においてグリーンタイヤ51を形成したが、この発明においては、単一の成形ドラムによってグリーンタイヤを形成するようにしてもよく、また、グリーンケースを成形した後、該グリーンケースをトロイダル状に変形させる第1成形ドラムと、BTバンドを成形するBTドラムとの2台の成形ドラムによってグリーンタイヤを形成するようにしてもよい。
【0041】
また、前述の実施形態においては、ゴム部材42を、ゴムシートをBTドラム40に1周分巻き付けた後、その始、終端を接合することで成形したが、この発明においては、ゴム部材を、BTドラムの外周に未加硫ゴムからなる幅狭、薄肉のゴムストリップを軸方向に徐々にずらしながら多数回螺旋状に巻回することで成形してもよい。このようにすれば、ゴム部材42の軸方向断面形状に変化があった場合にも、これに容易に対処することができる。
【実施例1】
【0042】
次に、試験例1について説明する。この試験に当たっては、外側にゴム部材が密着配置された円筒状のBTドラムにストリップを螺旋状に巻き付けてベルト層を成形した後、その外側にトレッドを貼付けてBTバンドを成形し、その後、該BTバンドを用いて実施形態1で説明した方法により製造した図1に示すような構造の実施タイヤと、円筒状のBTドラムを使用しながら従来技術で説明した方法で製造した、実施タイヤと同一構造の従来タイヤとを準備した。
【0043】
ここで、前述の各タイヤはいずれもタイヤサイズが162.5/45R6.5 であった。また、実施タイヤにおけるゴム部材の軸方向長さAは 125mm(後述の長さBの0.83倍)で、肉厚Cは軸方向位置に拘わらず 2mm(後述の肉厚Dの1.82倍)であった。さらに、前述の各タイヤにおけるベルト層の軸方向長さBは 150mm、ベルト層の肉厚Dは 1.1mmであった。そして、前記ベルト層内には芳香族ポリアミドフィラメントを撚った直径が0.87mmの補強コードを50mm当り41.7本打ち込んだ。
【0044】
次に、このような各タイヤを加硫後に解剖してベルト層内における補強コードの蛇行の有無を検査した。その結果、従来タイヤにおいてはベルト層の軸方向両端部の補強コードに蛇行が発生していたが、実施タイヤにおいては蛇行の発生はなかった。
【0045】
次に、前記各タイヤを 6.85J−6.5のリムに装着した後、20kPaの内圧を充填するとともに、 196Nの荷重を作用させながらドラムに押し付け、この状態で各タイヤを 0km/hから 240km/hの速度まで増速させて、タイヤのトレッド部の軸方向中央部と軸方向両端部とにおける半径方向外側へのせり出し量(径成長量)を測定した。その結果を指数表示で表すと、従来タイヤの軸方向中央部では 0、軸方向両端部では 100であったが、実施タイヤの軸方向中央部では 0、軸方向両端部では60であった。なお、ここで数値が小さいほどせり出し量が小である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明は、空気入りタイヤの産業分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施形態1を示す空気入りタイヤの子午線断面図である。
【図2】そのトレッド部の一部破断平面図である。
【図3】BTドラム近傍の一部破断正面図である。
【図4】シェーピングドラム近傍の一部破断正面図である。
【図5】加硫モールド近傍の正面断面図である。
【図6】この発明の実施形態2を示すBTドラム近傍の一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0048】
11…空気入りタイヤ 18…カーカス層
23…ベルト層 25…補強コード
33…トレッド 40…成形ドラム
41…ベルト・トレッドバンド 42、64…ゴム部材
51…グリーンタイヤ A…軸方向長さ
B…軸方向長さ C…肉厚
D…肉厚 S…タイヤ赤道
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成18年9月4日(2006.9.4)
【代理人】 【識別番号】100080540
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 敏雄


【公開番号】 特開2008−55860(P2008−55860A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−238575(P2006−238575)