| 【発明の名称】 |
高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法及びそれにより得られた眼用レンズ |
| 【発明者】 |
【氏名】平谷 治之
【氏名】石原 賢一
【氏名】馬場 雅樹
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| 【要約】 |
【課題】煩雑な処理を施すことなく、得られたレンズの表面における親水性が長時間持続せしめられ得る、高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法を、提供すること。
【構成】親水性モノマーを含むモノマー混合物を、かかる親水性モノマーと水素結合を形成し得る成分を結合含有する材質にて構成され、且つ水等の溶媒に溶解せしめられ得る、目的とするレンズ形状を与える成形キャビティを備えた成形型を用いて、重合する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、置換アミド基、エーテル基、スルホン酸基、スルホニル基、及び環状窒素のうちの少なくとも一つの官能基を有する不飽和化合物からなる親水性モノマーを含むモノマー混合物を重合して得られる重合体からなる眼用レンズを製造する方法にして、 前記親水性モノマーと水素結合を形成し得る成分を結合含有する材質にて構成され、且つ水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶媒に溶解せしめられ得る、目的とするレンズ形状を与える成形キャビティを備えた成形型を準備する工程と、 該成形型の成形キャビティ内に前記モノマー混合物を収容して、重合せしめる工程と、 かかる重合の終了した成形型を前記水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶媒にて溶解せしめて、該成形型の前記成形キャビティ内に形成された、目的とするレンズ形状を有する重合体からなる眼用レンズを取り出す工程と、 を含むことを特徴とする高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法。 【請求項2】 前記モノマー混合物が、前記成形型の成形キャビティ内に収容された後、かかるモノマー混合物と該成形キャビティ内面との接触状態を保持する工程を経て、前記重合が開始せしめられる請求項1に記載の高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法。 【請求項3】 請求項1又は請求項2の方法によって得られた眼用レンズ。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3の何れか一つの方法によって得られたコンタクトレンズ。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法及びそれにより得られた眼用レンズに係り、特に、煩雑な処理工程を採用することなく、眼用レンズ表面に高い親水性を付与せしめ得る方法と、及びそのような方法によって得られた、高親水性表面を有する眼用レンズに関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、シロキサニルメタクリレートやフルオロアルキルメタクリレート等の共重合体から構成され、角膜の代謝を阻害しないように材質自体に酸素透過性が付与された硬質コンタクトレンズが、実用化されている。しかし、このような酸素透過性硬質コンタクトレンズは、表面の撥水性が大きいため、眼に装用した際に涙液とレンズ表面との馴染みが悪く、涙液がレンズ表面ではじかれてしまうことから、装用者に対して乾燥感等の不快感を与えることがある。また、レンズと角膜との間に存在する涙液の交換が良好に行なわれにくくなるところから、涙液中の脂質成分がレンズ表面に付着しやすくなり、レンズの光学的特性が損なわれたり、視野のくもりやボケなどが生じ、またレンズ表面の汚れによって角膜に障害が生ずる恐れも内在している。 【0003】 他方、レンズ自体が柔軟で、角膜に馴染みやすく、良好な装用感を与える軟質コンタクトレンズも知られている。そのような軟質コンタクトレンズの多くは、水を吸収し、柔軟化する含水性の材料より構成されていることから、レンズ内部で細菌やカビが発生する等の様々な問題を有している。そこで、レンズ内部における細菌等の発生を防止し得るような、水を殆ど吸収、含有しない、柔軟な素材からなる非含水性軟質コンタクトレンズが開発されているが、かかる非含水性軟質コンタクトレンズにあっても、そのレンズ表面は撥水性であるために、上述した酸素透過性硬質コンタクトレンズと同様な問題を有することとなると共に、レンズの柔軟性とも相俟って、レンズの角膜への吸着という新たな問題も、生じているのである。 【0004】 そこで、従来より、レンズ表面の撥水性に基づく上述せる如き問題を解決すべく、コンタクトレンズ表面を親水化せしめる方法が、各種提案されているのであって、例えば、重合前にプラズマ処理を施したポリプロピレン製成形型を用いて、コンタクトレンズをモールド成形する方法や、特公昭63−40293号公報に開示されている如き、コンタクトレンズ材料表面にプラズマ処理を施して、水濡れ性を向上させる方法、更には、特開平6−49251号公報にて明らかにされている如き、眼用レンズ表面に親水性モノマーをグラフトする方法等が、提案されている。 【0005】 しかしながら、重合前にプラズマ処理を施したポリプロピレン製成形型を用いて、型内にてモノマー組成物を重合せしめ、コンタクトレンズをモールド成形する方法にあっては、かかる成形型内にてレンズ材料を重合せしめた後、重合物たるレンズを成形型から取り外すことが非常に困難であり、場合によっては、レンズが破損してしまう恐れがあると共に、プラズマ処理では成形型の表面改質を精密に制御することが技術的に困難であり、得られたレンズ表面の表面濡れ性に関する再現性に乏しいものであった。また、このような煩雑な処理を行なっても、レンズ表面においては、多数の疎水基の中にわずかに親水基が存在するに止まっているに過ぎないものであったのである。 【0006】 また、コンタクトレンズ材料表面にプラズマ処理を施して、水濡れ性を向上させる方法や、眼用レンズ表面に親水性モノマーをグラフト重合する方法は、レンズ形状を一度確保した後に、レンズ表面を化学修飾する手法であるため、材料の変形を招きやすく、眼用レンズ材料の光学的な機能を脅かす恐れがあると共に、プラズマ照射によりレンズ表面の化学結合の一部が破壊され、これによって生ずる分解物が、レンズ表面の親水化を阻害する恐れがあった。 【0007】 さらに、上述した何れの方法にあっても、レンズ表面に対して充分な親水性を与えることは出来ず、その効果の持続性も短いものであるにもかかわらず、煩雑な処理工程が必要となるのであって、レンズ製造に費やす時間及びコストが増大するようになるという問題をも内在するものであったのである。 【0008】 一方、Journal of Biomedical Material Research 35,第349〜356頁,1997にて提案されている、アクリロニトリルをベースとした重合体よりなる成形型を用いた含水性軟質コンタクトレンズの製造方法のように、ナイロンやポリアクリロニトリル等といった比較的親水性成分と親和性を示す材料よりなる成形型を用いることにより、その表面が高い親水性を有するコンタクトレンズ(眼用レンズ)を製造し得ることが知られているが、そのような従来の製造方法にあっては、成形型とコンタクトレンズ材料との間における物理的相互作用が極めて大きいために、成形型内にて重合せしめられたコンタクトレンズを該成形型から脱離することが著しく困難であり、その脱型に際してコンタクトレンズが破損するという問題があった。 【0009】 【特許文献1】特公昭63−40293号公報 【特許文献2】特開平6−49251号公報 【非特許文献1】Journal of Biomedical Material Research 35,第349〜356頁,1997 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、煩雑な処理を施すことなく、得られるレンズ表面の親水性が長期間持続し得る、高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法を提供することにある。また、本発明は、そのような高親水性レンズ表面を有する眼用レンズを提供することをも、その解決課題とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、親水性モノマーを含むモノマー混合物を重合して得られる重合体からなる眼用レンズを製造する方法にして、前記親水性モノマーと水素結合を形成し得る成分を結合含有する材質にて構成され、且つ水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶媒に溶解せしめられ得る、目的とするレンズ形状を与える成形キャビティを備えた成形型を準備する工程と、該成形型の成形キャビティ内に前記モノマー混合物を収容して、重合せしめる工程と、かかる重合の終了した成形型を前記水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶媒にて溶解せしめて、該成形型の前記成形キャビティ内に形成された、目的とするレンズ形状を有する重合体からなる眼用レンズを取り出す工程とを含むことを特徴とする高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法を、その要旨とするものである。 【0012】 このように、本発明に従う眼用レンズの製造方法にあっては、レンズ原料であるモノマー混合物の重合に用いられる成形型が、かかるモノマー混合物に含まれる親水性モノマーと水素結合を形成し得る成分を結合含有する材質にて構成されているところから、該成形型の成形キャビティ内に、レンズ原料であるモノマー混合物を収容して、重合を開始すると、モノマー混合物中の親水性モノマーと成形型、より具体的には成形キャビティ面を構成する材質との間に、水素結合が形成された状態の下において、モノマー混合物の重合が進行することとなる。即ち、モノマー混合物中の親水性モノマーは、成形型の成形キャビティ面に引きつけられた状態において、モノマー混合物の重合が進行するところから、重合後に得られる重合体(眼用レンズ)の表面には、かかる親水性モノマー成分が配向して存在せしめられることとなるのであり、以て、眼用レンズの表面は、高い親水性(水濡れ性)を示すこととなるのである。 【0013】 また、本発明において用いられる成形型は、上述の如く、水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶液に溶解せしめられ得るものであるところから、重合の終了した成形型を水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶液に溶解せしめるという極めて簡易な手法により、目的とする眼用レンズを、破損することなく、成形型より取り出すことが出来るのである。 【0014】 なお、このような本発明に従う高親水性を有する眼用レンズの製造方法における好ましい態様の一つによれば、前記モノマー混合物が、前記成形型の成形キャビティ内に収容された後、かかるモノマー混合物と該成形キャビティ内面との接触状態を保持する工程を経て、前記重合が開始せしめられることとなる。この保持工程を経ることにより、モノマー混合物中の親水性モノマーと成形型との間において、水素結合がより有利に形成され得るのであり、以て、得られる眼用レンズ表面の親水性も、より一層向上せしめられ得るのである。 【0015】 また、本発明に係る眼用レンズの製造方法における好ましい別の態様の一つによれば、前記親水性モノマーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、置換アミド基、エーテル基、スルホン酸基、スルホニル基、及び環状窒素のうちの少なくとも一つの官能基を有する不飽和化合物であることが好ましく、このような特定の親水性モノマーを含むモノマー混合物をレンズ材料として選択することにより、本発明の目的がより一層有利に実現され得ることとなる。 【0016】 さらに、本発明の眼用レンズの製造方法における他の望ましい態様の一つによれば、前記成形型は、前記親水性モノマーの単独重合体若しくは他のモノマーとの共重合体又はポリビニルアルコールにて構成されることとなる。このような特定の重合体よりなる成形型を選択することによって、得られる眼用レンズに対して、より優れた親水性を付与せしめ得るのである。 【0017】 加えて、本発明の眼用レンズの製造方法における望ましい別の態様の一つによれば、前記親水性モノマーは、ヒドロキシル基、エーテル基及び環状窒素のうちの少なくとも一つの官能基を有する不飽和化合物であり、前記成形型が、不飽和カルボン酸の単独重合体、又は不飽和カルボン酸と他のモノマーとの共重合体からなるものである。 【0018】 また、本発明の別の好ましい態様の一つによれば、前記親水性モノマーがヒドロキシル基含有不飽和化合物であり、前記成形型が、ビニルピリジンの単独重合体、又はビニルピリジンと他のモノマーとの共重合体からなるものである。 【0019】 さらにまた、本発明の別の望ましい態様の一つによれば、前記親水性モノマーがカルボキシル基含有不飽和化合物であり、前記成形型が、アクリルアミドの単独重合体、又はアクリルアミドと他のモノマーとの共重合体からなるものである。 【0020】 このように、モノマー混合物に含まれる親水性モノマーに応じた、特定の重合体にて構成されている成形型を用いることによって、より優れた親水性を発揮し得る眼用レンズを製造することが、出来るのである。 【0021】 加えて、本発明は、上述せる如き優れた利点を享受する眼用レンズの製造方法によって得られた、高親水性レンズ表面を有する眼用レンズ及びコンタクトレンズも、その対象とするのである。 【発明の効果】 【0022】 このように、本発明に従う眼用レンズの製造方法においては、そこで用いられる成形型が、レンズ原料たるモノマー混合物中の親水性モノマーと水素結合を形成し得る成分を結合含有する材質にて構成されているところから、そのような成形型において重合せしめられた重合体(眼用レンズ)の表面には、親水性モノマー成分が移行乃至は配向して、多数存在せしめられることとなるのであり、以て、得られる眼用レンズの表面は、高い親水性乃至は表面濡れ性を示すこととなるのである。 【0023】 また、そのような成形型は、水等の溶媒に溶解せしめられ得るものでもあることから、重合が終了した成形型を水等の溶媒に浸漬する等して溶解せしめるという極めて簡易な手法により、目的とする眼用レンズを、破損することなく、成形型より容易に取り出すことが出来るのである。 【0024】 さらに、成形型を構成する材料は、それが溶解せしめられた溶液から、再沈精製操作によって、回収することが可能であり、その回収物を、粉末化又はペレット化させた後、成形型として再利用することも可能である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0025】 ところで、かくの如き本発明に従う高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法においては、原料たるモノマー混合物として、親水性モノマーを含むモノマー混合物が用いられることとなる。 【0026】 そこにおいて、そのような親水性モノマーとしては、水と相互に作用し合い、水との親和力が強いモノマーであって、眼用レンズの原料モノマーとして好適に用いられ得るものの中から、眼用レンズに求められる特性に応じて、1又は2以上の親水性モノマーが適宜に選択されることとなるが、好ましくは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、置換アミド基、エーテル基、スルホン酸基、スルホニル基、及び環状窒素のうちの少なくとも一つの官能基を有する不飽和化合物が、選択されるのである。 【0027】 そして、上記の如き特定の官能基を有する不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド系化合物であるジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、グリセロールアクリルアミド、及びアクリルアミド−N−グリコール酸、(メタ)アクリレート系化合物であるヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、含リン(メタ)アクリル酸エステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びグリセロール(メタ)アクリレート、スルホン系化合物であるビニルスルホン、スチレンスルホン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等や、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、ビニルピリジン、酢酸ビニル、イタコン酸、クロトン酸、N−ビニルイミダゾール、ビニルベンジルアンモニウム塩、ビニルベンジルアルコール、ヒドロキシスチレン等を挙げることが出来る。なお、本明細書において、「・・(メタ)アクリル・・」なる表記は、「・・アクリル・・」及び「・・メタクリル・・」を含む総称であり、また、「・・(メタ)アクリレート」なる表記は、「・・アクリレート」及び「・・メタクリレート」を含む総称であることが、理解されるべきである。 【0028】 ここで、上記したモノマー混合物における親水性モノマーの配合量が余りにも少ないと、重合して得られる眼用レンズの表面における親水性が不十分となる一方、その配合量が多すぎると、モノマー混合物の重合前、及び重合中に、モノマー混合物に含まれる親水性モノマーによって成形キャビティ内面が溶解せしめられ、得られる眼用レンズが、所望のレンズ形状を有しない、光学的特性の低いものとなる恐れがあるところから、かかる親水性モノマーは、一般に0.5〜70w/w%、好ましくは1〜50w/w%、更に好ましくは5〜30w/w%の割合において、モノマー混合物中に配合せしめられることとなる。 【0029】 なお、モノマー混合物には、そのような親水性モノマー以外に、各種コンタクトレンズ等の眼用レンズの材料として従来から用いられている、ビニル基、アリル基、アクリル基、またはメタクリル基を分子中に1個以上含む化合物(モノマー)が配合せしめられるのであり、より具体的には、アルキル(メタ)アクリレート、シロキサニル(メタ)アクリレート、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、多価アルコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレンの誘導体、N−ビニルラクタム等が、眼用レンズに必要とされる特性に応じて、適宜配合せしめられる。また、必要に応じて、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが、架橋剤として配合せしめられ、更に、必要な重合開始剤、例えば熱重合開始剤、光重合開始剤等や、増感剤等の添加剤が配合されて、レンズ原料であるモノマー混合物とされる。 【0030】 そして、上述の如きモノマー混合物が、目的とするレンズ形状を与える成形キャビティを備えた成形型に収容され、重合せしめられることとなるのであるが、本発明に従う眼用レンズの製造方法にあっては、そのような成形型として、特定の材質より構成されてなるものを用いるところに、大きな特徴を有しているのである。 【0031】 すなわち、本発明において用いられる成形型は、目的とする眼用レンズを与えるモノマー混合物を重合せしめる際に従来から用いられている樹脂、例えば、ナイロンやポリプロピレン等から構成されるものではなく、モノマー混合物中の親水性モノマーと水素結合を形成し得る成分を結合含有し、且つ水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶液に溶解せしめられ得る材質にて、構成されているのである。 【0032】 このように、親水性モノマーを含むモノマー混合物を重合するための成形型として、上述の如き特定の材質よりなる成形型を用いて、モノマー混合物の重合を開始すると、モノマー混合物と成形型を構成する材質との間に水素結合が形成された状態の下で、かかるモノマー混合物の重合が進行することとなる。即ち、モノマー混合物中に存在する親水性モノマーが、水素結合の結合力により、成形キャビティ内面(成形面)側に引きつけられた状態において、モノマー混合物の重合が進行せしめられるところから、重合終了後に得られる重合体(眼用レンズ)の表面には、従来の成形型を用いて得られた眼用レンズと比較して、より多くの親水性モノマー成分が配向して存在せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られる眼用レンズにあっては、その表面が高い親水性を示すとともに、かかる親水性は、長期間にわたって持続することとなるのである。なお、モノマー混合物中の親水性モノマーと成形型との間においては、水素結合のみならず、他の物理的相互作用、例えば、ファンデルワールス力や、静電的相互作用(荷電粒子間のクーロン力の他に、双極子や四極子などの多重極子間相互作用を含む)等の非共有結合も存在するのであり、そのような物理的相互作用も、かかる親水性モノマーの配向に寄与することは、言うまでもないところである。 【0033】 また、本発明において用いられる成形型は、上述したように、水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶媒に溶解せしめられ得るものでもあることから、本発明においては、その成形キャビティ内で重合が終了した成形型を、水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶媒に溶解せしめて取り除くことにより、重合体の表面を傷つけることなく、極めて容易に重合体(眼用レンズ)を取り出すことが可能である。従って、従来の眼用レンズの製造方法における、外力等を用いて成形型より眼用レンズを脱離せしめる工程が不要となるばかりではなく、特に眼用レンズ中の親水性成分と親和性を示す材質より構成される従来の成形型を用いた場合に問題であった、成形型から眼用レンズを脱離せしめる際にレンズが破損するといった恐れも、効果的に解消されるのである。 【0034】 さらに、本発明に従う眼用レンズの製造方法においては、レンズ原料であるモノマー混合物を、特定の材質よりなる成形型の成形キャビティ内にて重合せしめるだけで、得られる眼用レンズの表面に優れた親水性が付与せしめられるところから、従来の、モノマー混合物の重合前に、予め成形型表面に施される改質処理や、得られた重合体(眼用レンズ)表面へ親水性の付与を目的として実施される様々な処理は、一切必要とされることがないのである。 【0035】 ここで、そのような成形型を構成する材質としては、目的とする眼用レンズを与えるモノマー混合物中の親水性モノマーと水素結合を形成し得る成分を結合含有し、水若しくは有機溶媒又はそれらの混合溶媒(例えば、水、食塩水、メタノール、エタノール、プロパノール、若しくはジメチルスルホキシド、又はこれらの混合溶媒)に溶解せしめられ得るものであって、成形型を構成する材質として好適なものであれば、如何なるものであっても用いることが出来るが、好ましくは、親水性モノマーの単独重合体、若しくはそのような親水性モノマーと他のモノマーとの共重合体、又はポリビニルアルコール等が、採用されることとなる。なお、かかる親水性モノマーとしては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、置換アミド基、エーテル基、スルホン酸基、スルホニル基、及び環状窒素のうちの少なくとも一つの官能基を有する不飽和化合物が、有利に用いられ得るのであり、そのような不飽和化合物としては、具体的には、レンズ原料であるモノマー混合物に好適に含まれる親水性モノマーとして既述した、(メタ)アクリル酸等の化合物を、例示することが出来る。 【0036】 また、そのような重合体の中でも、眼用レンズを製造する際の作業性、環境に対する安全性、生産コスト等の観点から、水溶性の重合体が、更に好ましく採用されるのであり、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、及びこれらを成分として含む共重合体等が、好適に用いられ得るのである。 【0037】 さらに、成形型を構成する材質を選択する際に、レンズ原料であるモノマー混合物に含まれる親水性モノマーの種類に応じた特定の材質、即ち、かかる親水性モノマーとの間でより強い水素結合を形成し得る成分を結合含有する材質が、有利に選択されることとなる。けだし、そのような材質よりなる成形型と、モノマー混合物中の親水性モノマーとの間においては、より強い水素結合が形成され得るところから、得られる眼用レンズ(重合体)の表面に、親水性モノマーを有利に配向せしめ得るからである。 【0038】 このような、モノマー混合物中の親水性モノマーとそれに応じた特定の材質との組合せとしては、(1)親水性モノマーがヒドロキシル基、エーテル基及び環状窒素のうちの少なくとも一つの官能基を有する不飽和化合物であり、成形型が、不飽和カルボン酸の単独重合体若しくは不飽和カルボン酸と他のモノマーとの共重合体からなる場合、(2)親水性モノマーがヒドロキシル基含有不飽和化合物であり、成形型が、ビニルピリジンの単独重合体若しくはビニルピリジンと他のモノマーとの共重合体からなる場合、及び、(3)親水性モノマーがカルボキシル基含有不飽和化合物であり、成形型が、アクリルアミドの単独重合体若しくはアクリルアミドと他のモノマーとの共重合体からなる場合等が存在する。また、それらの具体的な化合物の組合せとしては、下記表1に掲げるものを、例示することが出来る。 【0039】 【表1】
【0040】 なお、本発明の製造方法において用いられる成形型として、上述の如き、親水性モノマーと他のモノマーとの共重合体より構成される成形型を用いる場合にあっては、かかる共重合体中に含まれる親水性モノマーの割合は、50w/w%以上、好ましくは70w/w%以上、更に好ましくは90w/w%以上とされる。けだし、かかる親水性モノマーの配合量が少なすぎると、重合が終了した成形型を溶解せしめることが困難となると共に、得られた眼用レンズ表面の親水性が不十分なものとなるからである。 【0041】 また、そのような親水性モノマーと共重合せしめられる他のモノマーとしては、成形型の材質として従来より用いられているもの、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィンや、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルラクタム類等の公知の各種の不飽和化合物が、適宜選択されて、用いられることとなる。 【0042】 さらに、成形型を構成する重合体が架橋構造を有している場合、水等の所定の溶媒に溶解せしめることが困難となる恐れがあるところから、成形型は、未架橋の重合体より構成されていることが望ましい。 【0043】 かくして、本発明に従う眼用レンズの製造方法にあっては、上述のように、特定の材質より構成される成形型の成形キャビティ内に、親水性モノマーを含むモノマー混合物が収容され、通常の熱重合法や光重合法等に従って、重合せしめられることとなるのである。 【0044】 ここで、モノマー混合物を重合せしめるに際しては、有利には、モノマー混合物が成形型の成形キャビティ内に収容された後、かかるモノマー混合物と成形キャビティ内面との接触状態を保持する工程を経て、重合が開始せしめられることとなる。かかる工程を経ることにより、モノマー混合物中の親水性モノマー成分とキャビティ内面との間においては充分な水素結合が形成され、かかる親水性モノマー成分がより有利に成形キャビティ内面側に配向せしめられた状態とされた後に、モノマー混合物の重合が開始せしめられることとなるところから、得られる眼用レンズにあっては、その表面に親水性モノマー成分が効果的に配向せしめられ、以て、より高い親水性を示すようになるのである。 【0045】 なお、そのような重合操作において、モノマー混合物を成形型の成形キャビティ内に収容せしめた後、かかる成形キャビティ内にてモノマー混合物を保持する時間としては、かかるモノマー混合物に含まれる親水性モノマーの種類や、成形型を構成する材質、更には、目的とする眼用レンズに求められる親水性の程度等を総合的に勘案して、適宜に決定されることとなるが、一般に10秒〜60分程度、好ましくは30秒〜30分程度が採用される。 【0046】 そして、上記したモノマー混合物の重合が所定の成形型の成形キャビティ内において開始された後、所定時間が経過して重合が終了した成形型を、水等の所定の溶媒に溶解せしめて、成形型の成形キャビティ内に形成された、目的とするレンズ形状を有する重合体からなる眼用レンズが、取り出されることとなるのである。 【0047】 このように、本発明に従う眼用レンズの製造方法にあっては、成形型を水に溶解せしめるという簡易な手法により、目的とする眼用レンズを取り出すことが可能であるところから、従来の高親水性レンズ表面を有する眼用レンズの製造方法では生じていた、外力等により眼用レンズが破損する等の問題は、効果的に解消され得ているのである。 【実施例】 【0048】 以下に、本発明の代表的な実施例を含む幾つかの実験例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実験例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、下記表2乃至表4における「CL」とは、何れも、コンタクトレンズを表示するものである。 【0049】 実験例 1 下記表2に示した非含水コンタクトレンズ用組成の100重量部に対して、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート及び重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:ダロキュア1173)を、それぞれ0.8重量部及び0.2重量部添加せしめてなるモノマー混合液を、調製した。また、成形型として、凸型及び凹型にて構成される、未架橋ポリアクリル酸製成形型(直径:20mm×厚さ:0.3mmの円形プレート状試験試料作成用:PAAc成形型)を、準備した。 【0050】 次いで、かかる成形型の成形キャビティ内に上記したモノマー混合液を注入し、型組みを行ない、その型組みされた成形型を、30分間、そのままの状態にて保持した。そして、その保持の後、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製;UX0302−03、測定波長:365nm)を用いて、室温下、照射強度:11mW/cm2 にて、15分間、紫外線を成形型に対して照射し、かかる成形型内のモノマー混合液を重合した。重合終了の後、得られた重合体は成形型に付着していたため、成形型ごと食塩水中に浸漬し、未架橋ポリアクリル酸製成形型を溶解せしめて、円形プレート状の重合体を取り出した。そして、この取り出された重合体を、水→2−プロパノール→メタノール→水の溶媒順番に従って、各々の溶媒にて洗浄して、試験試料1を得た。 【0051】 実験例 2 実験例1で用いたものと同様なモノマー混合液を調製する一方、成形型として、凸型及び凹型にて構成される、ポリプロピレン製成形型(直径:20mm×厚さ:0.3mmの円形プレート状試験試料作成用:PP成形型)を準備した。そして、かかる成形型を用いて、実験例1と同様の手法及び条件により、モノマー混合液の重合を行なった。重合終了後、成形型に付着している重合体を、外力により、強制的に脱離せしめ、実験例1と同様な洗浄処理を施すことにより、試験試料2を得た。 【0052】 実験例 3 下記表2に示した酸素透過性硬質コンタクトレンズ用組成の100重量部に対して、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート及び重合開始剤としての2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V65)を、それぞれ0.86重量部及び0.086重量部添加せしめてなるモノマー混合液を、調製した。そして、このモノマー混合液を、実験例1と同様にして、PAAc成形型に注入し、型組みを行ない、その型組みされた成形型を、30分間、そのままの状態で保持した。 【0053】 次いで、かかる保持が終了した成形型を、50℃の加熱雰囲気とされた恒温乾燥器内に、8時間載置し、成形型内のモノマー混合液を重合した。重合終了後、得られた重合体は成形型に付着していたため、成形型ごと食塩水中に浸漬し、未架橋ポリアクリル酸製成形型を溶解せしめて、円形プレート状の重合体を取り出した。その後、かかる得られた重合体を、実験例1と同様に洗浄することにより、試験試料3を得た。 【0054】 実験例 4 実験例3で用いたものと同様のモノマー混合液を、実験例2と同様にして、PP成形型を用いて、実験例3と同様の手法及び条件に従って、重合した。重合終了後、成形型に付着している重合体を、外力により強制的に脱離せしめ、実験例1と同様に洗浄処理を施すことにより、試験試料4を得た。 【0055】 【表2】
【0056】 かくの如くして、以上の各実験例より得られた試験試料1〜4について、以下の各試験を行なった。 【0057】 接触角の測定 ゴニオメーター(エルマ販売株式会社製;G−1.2MG)を用いて、水中での各試験試料の接触角(°)を、気泡法により測定した。具体的には、25℃の水に浸漬させた試験試料に、シリンジを用いて、2μLの気泡を付着させ、気泡と試験試料との間に生じる左右の接触角を測定し、その平均を算出した。その結果を、下記表3に示す。また、水中より試験試料を取り出した際に、その表面状態を目視にて観察、評価し、その結果についても、下記表3に併せて示した。なお、下記表3における「○」は、撥水せず、試験試料表面が一様にぬれていたこと、即ち、高い親水性(表面濡れ性)を示したことを、また「△」は、わずかに撥水していたことを、更に「×」は、撥水が著しかったことを、それぞれ表わすものである。 【0058】 【表3】
【0059】 表3の結果から明らかなように、非含水コンタクトレンズ用組成及び酸素透過性硬質コンタクトレンズ用組成の何れにおいても、本発明に従って作成された試験試料(試験試料1,3)にあっては、ポリプロピレン製成形型を用いて成形した試験試料(試験試料2,4)と比較して、接触角が小さく、また、その表面は優れた表面濡れ性を有することが、認められた。 【0060】 元素分析 X線光電子分光装置(XPS:日本電子株式会社製JPS−9000MX型)を使用して、乾燥した各試験試料の深さ方向の3つの領域、具体的には、表面からの距離が0〜100Å(0〜1.00×10-8m)、100〜200Å(1.00×10-8〜2.00×10-8m)、200〜300Å(2.00×10-8〜3.00×10-8m)である各領域の元素(C、F、N、O、Si)組成比を、測定した。なお、かかる測定に際しての測定条件は、電流:10mA、電圧:10kV、スキャン回数:4回、ボルテージステップ:0.1eVを、それぞれ採用した。測定結果を、下記表4に示す。 【0061】 【表4】
【0062】 上記表4の結果から明らかなように、非含水コンタクトレンズ用組成よりなる試験試料1,2の間において、試験試料表面からの深さが100Å以上の領域における元素組成比に大きな差異は認められなかった。しかしながら、試験試料の表面付近の領域(表面からの深さが0〜100Åである領域)においては、PAAc型を用いて成形した試験試料1は、PP型を用いて成形した試験試料2と比較して、親水性成分であるN−ビニルピロリドン由来のN原子の存在比が大きいことが認められると共に、撥水性成分であるトリス(トリメチルシロキシ)アクリレート及びウレタン含有ポリシロキサンマクロモノマーに由来するSi原子の存在比が小さいことが、認められる。この結果より、本発明に従う方法により製造された試験試料1にあっては、その表面付近に多くの親水性成分が移行し、存在せしめられたことにより、表面の親水性(表面濡れ性)が優れたものになったと考えられるのである。 【0063】 また、酸素透過性硬質コンタクトレンズ用組成よりなる試験試料3,4の間においても、同様に、試験試料の表面付近の領域において、PAAc型を用いて成形した試験試料3は、PP型を用いて成形した試験試料4と比較して、親水性成分であるN−ビニルピロリドンに由来するN原子の存在比が大きく、一方、撥水性成分であるトリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン由来のSi原子や、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート由来のF原子の存在比が小さいことが、認められる。この結果よりして、本発明に従う方法により製造された試験試料3にあっても、その表面付近に多くの親水性成分が移動して、存在せしめられたことにより、表面の親水性が優れたものになったと考えられるのである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000138082 【氏名又は名称】株式会社メニコン
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| 【出願日】 |
平成19年10月9日(2007.10.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078190 【弁理士】 【氏名又は名称】中島 三千雄
【識別番号】100115174 【弁理士】 【氏名又は名称】中島 正博
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| 【公開番号】 |
特開2008−62652(P2008−62652A) |
| 【公開日】 |
平成20年3月21日(2008.3.21) |
| 【出願番号】 |
特願2007−263668(P2007−263668) |
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