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【発明の名称】 タイヤの製造方法及びタイヤ
【発明者】 【氏名】篠崎 雅則

【要約】 【課題】より効率的にタイヤを製造することができるタイヤの製造方法及びそのタイヤの製造方法によって製造されたタイヤを実現する。

【構成】キシレンにRBCとアクリル系シリコーン樹脂とを分散させて調製した離型剤溶液20を未加硫ゴムシート10の一方の面に塗布して乾燥し、RBCを含有するアクリル系シリコーン樹脂の被膜30が形成された未加硫ゴムシート10の一方の面が内面となるように成形された生タイヤ60を金型M内に入れ、その生タイヤ60の内面側でブラダーを膨らませて加硫を行う、タイヤの製造方法を採ることした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴムシートの一方の面に、粒状フィラーを含むシリコーン樹脂の被膜を形成し、この被膜が形成された面が内面となるように成形された生タイヤを金型内に入れ、前記生タイヤの内面側でブラダーを膨らませて加硫を行うことを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記被膜は、粒状フィラーとシリコーン樹脂とが揮発性有機溶剤に分散された溶液を、前記未加硫ゴムシートの一方の面に塗布して形成することを特徴とする請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記粒状フィラーは、RBC(Rice Bran Ceramics)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂は、アクリル系シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のタイヤの製造方法によって、製造されたことを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法及びタイヤに係り、特にブラダーを用いるタイヤ製造におけるタイヤの製造効率を改善するタイヤの製造方法及びそのタイヤの製造方法によって製造されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの製造工程において、生タイヤ(グリーンタイヤ)の内面に離型剤を塗布することによって、タイヤとブラダーとの離型性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
生タイヤの内面に塗布する離型剤としては、例えば、タルクやマイカなどの微粉末をシリコーン水溶液に分散させてなる、水性シロキサン乳濁液などがある。
【0003】
その離型剤溶液をスプレーガンで噴霧するなどして生タイヤの内面に塗布し乾燥させた後、加硫工程にて、金型に入れられた生タイヤの内面側で高温・高圧の蒸気によって膨らまされるブラダーが、その生タイヤを外側の金型に押し付けるように加熱・加圧してタイヤを成型する。
そして、成型されたタイヤからブラダーを取り外して、タイヤが完成する。
【特許文献1】特開昭53−42243号公報
【特許文献2】特開昭53−91988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の場合、生タイヤの内面に離型剤溶液を塗布する作業は煩雑であり、また、塗布した水性の離型剤溶液が乾燥するまでには時間がかかるため、この離型剤塗布処理は効率の悪いものであった。
【0005】
本発明の目的は、より効率的にタイヤを製造することができるタイヤの製造方法及びそのタイヤの製造方法によって製造されたタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、タイヤの製造方法であって、未加硫ゴムシートの一方の面に、粒状フィラーを含むシリコーン樹脂の被膜を形成し、この被膜が形成された面が内面となるように成形された生タイヤを金型内に入れ、生タイヤの内面側でブラダーを膨らませて加硫を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、金型内に入れられた生タイヤの内面側でブラダーを膨らませるタイヤの製造方法において、未加硫ゴムシートの一方の面であって、粒状フィラーを含むシリコーン樹脂の被膜が形成された面(未加硫ゴムシートの一方の面)が内面となるように成形された生タイヤを金型内に入れて、その生タイヤの内面側でブラダーを膨らませて加硫を行うタイヤの製造方法を採ることができるので、従来技術における生タイヤの内面に水性シロキサン乳濁液などを塗布して離型剤の層を形成することに比して、より効率的に生タイヤの内面にタイヤとブラダーとを離型させるための被膜を形成することができ、より効率的にタイヤを製造することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤの製造方法において、被膜は、粒状フィラーとシリコーン樹脂とが揮発性有機溶剤に分散された溶液を、未加硫ゴムシートの一方の面に塗布して形成することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、このタイヤの製造方法において形成される被膜は、粒状フィラーとシリコーン樹脂とが揮発性有機溶剤に分散された溶液を、未加硫ゴムシートの一方の面に塗布して形成されるので、粒状フィラーを含有したシリコーン樹脂からなる被膜を未加硫ゴムシートの一方の面に容易に形成することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のタイヤの製造方法において、粒状フィラーは、RBC(Rice Bran Ceramics)であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、未加硫ゴムシートの一方の面に形成される被膜に含まれる粒状フィラーは硬質多孔性炭素材料であるRBCであるので、そのRBCの固形潤滑剤(摺動剤)としての機能によって、この被膜に好適な離型作用が付与される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のタイヤの製造方法において、シリコーン樹脂は、アクリル系シリコーン樹脂であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、未加硫ゴムシートの一方の面に形成される被膜となるシリコーン樹脂は、アクリル系シリコーン樹脂であるので、この被膜形成性がよいアクリル系シリコーン樹脂が揮発性有機溶剤に分散された溶液を未加硫ゴムシートの一方の面に塗布し乾燥させることで、容易に乾燥被膜を形成することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、タイヤであって、請求項1〜4の何れか一項に記載のタイヤの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、タイヤは、生タイヤとブラダーの間に離型性がよいシリコーン樹脂被膜が介された状態で製造されるため、タイヤからブラダーが好適に剥がれ易く、そのブラダーをタイヤから取り外し易いので、効率的に製造される。
また、タイヤからブラダーが好適に剥がれるので、製造されたタイヤとブラダーとを分離する際に、タイヤが損傷してしまうことが低減される。また、その製造工程においてタイヤの表面に異物が付着してしまうことを低減することができる。
また、タイヤ表面には、そのシリコーン樹脂被膜が残存するので、製造後のタイヤ表面の損傷や異物付着を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、粒状フィラーを含むシリコーン樹脂の被膜が形成された未加硫ゴムシートの一方の面が内面となるように成形された生タイヤを金型内に入れ、その生タイヤの内面側でブラダーを膨らませて加硫を行うタイヤの製造方法を採ることができるので、従来技術における生タイヤの内面に水性シロキサン乳濁液などを塗布して離型剤の層を形成することに比して、より効率的に生タイヤの内面にタイヤとブラダーとを離型させるための被膜を形成することができ、より効率的にタイヤを製造することができる。
つまり、未加硫ゴムシートの一方の面に離型剤溶液を塗布するなどして粒状フィラーを含むシリコーン樹脂の被膜を形成した後に、その被膜が形成された未加硫ゴムシートの一方の面が生タイヤの内面となるように、未加硫ゴムシートやゴム材を組み上げて生タイヤを成形する工程の方が、先に略タイヤ形状に成形された生タイヤの内面側に水性シロキサン乳濁液などを塗布して離型剤の膜を形成する従来の工程に比べて、容易な作業で行うことができるので、本発明のように、ゴム材を生タイヤ形状に組み上げる前に、未加硫ゴムシートの一方の面に被膜を形成することによって、タイヤの製造をより効率的に行うことができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、このタイヤの製造方法において形成される被膜は、粒状フィラーとシリコーン樹脂とが揮発性有機溶剤に分散された溶液を、未加硫ゴムシートの一方の面に塗布して形成されるので、粒状フィラーを含有したシリコーン樹脂からなる被膜を未加硫ゴムシートの一方の面に容易に形成することができる。
つまり、未加硫ゴムシートの一方の面に、粒状フィラーとシリコーン樹脂とが揮発性有機溶剤に分散された溶液を刷毛塗りやスプレーコーティングなどによって塗布した後、揮発性有機溶剤は比較的短時間で揮発して、その溶液が乾燥し硬化するので、粒状フィラーを含有したシリコーン樹脂からなる被膜を未加硫ゴムシートの一方の面に容易に且つ速やかに形成することができる。
そして、この被膜を速やかに形成することによって、タイヤの製造効率を向上させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、未加硫ゴムシートの一方の面に形成される被膜に含まれる粒状フィラーは硬質多孔性炭素材料であるRBCであるので、そのRBCの固形潤滑剤(摺動剤)としての機能によって、この被膜に好適な離型作用が付与される。
つまり、未加硫ゴムシートの一方の面に形成され、生タイヤの内面に配される被膜は、好適な離型作用を有するので、生タイヤの内面側でブラダーを膨らませて、その生タイヤを金型に押し付けて加硫を行い成型したタイヤからブラダーを取り外す際に、RBCを含有したシリコーン樹脂からなる被膜の離型作用によって、タイヤからブラダーが好適に剥がれ易く、そのブラダーをタイヤから取り外し易いので、効率的なタイヤ製造を行うことができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、未加硫ゴムシートの一方の面に形成される被膜となるシリコーン樹脂はアクリル系シリコーン樹脂であるので、この被膜形成性がよいアクリル系シリコーン樹脂が揮発性有機溶剤に分散された溶液を未加硫ゴムシートの一方の面に塗布し乾燥させることで、容易に耐摩耗性や耐摩擦性、摺動性の良好な乾燥被膜を形成することができる。
つまり、未加硫ゴムシートの一方の面に形成され、生タイヤの内面に配される被膜は、被膜形成性がよいアクリル系シリコーン樹脂からなるので、RBCなどのフィラーを良好に含有する好適な被膜であって、耐摩耗性や耐摩擦性、摺動性に優れた被膜となるので、生タイヤの内面側でブラダーを膨らませて、その生タイヤを金型に押し付けて加硫を行う際に、その被膜の耐摩耗性(耐摩擦性)によって、ブラダー表面は損傷してしまわないように保護される。また、成型したタイヤからブラダーを取り外す際に、その被膜の摺動性によって、タイヤからブラダーが剥がれ易いので、そのブラダーをタイヤから容易に取り外すことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、タイヤは、生タイヤとブラダーの間に離型性がよいシリコーン樹脂被膜が介された状態で製造されるため、タイヤからブラダーが好適に剥がれ易く、そのブラダーをタイヤから取り外し易いので、効率的に製造される。
特に、タイヤからブラダーが好適に剥がれるので、製造されたタイヤとブラダーとを分離する際に、タイヤが損傷してしまうことが低減される。また、その製造工程においてタイヤの表面に異物が付着してしまうことを低減することができる。
また、タイヤ表面には、そのシリコーン樹脂被膜が残存するので、製造後のタイヤ表面の損傷や異物付着を防止することができる。
その結果として、タイヤ自体の寿命を長くすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るタイヤの製造方法の実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、ブラダーを用いるタイヤの製造方法において、タイヤの素材となるゴム材に所定の被膜を形成することによって、タイヤの製造効率の向上を図る技術について説明する。
【0022】
タイヤの製造に用いられるブラダーは、例えば、ブチルゴムが袋状に形成されてなる加圧装置の一部であって、タイヤの加硫成型工程において、金型内に保持される未加硫ゴムからなる生タイヤ(グリーンタイヤ)の内面側に装填されるとともに、そのブラダーの内部に高温高圧の飽和蒸気や熱水等が充填されることに伴い膨張して、その生タイヤを金型の内面に加圧することで、タイヤの加硫成型を行うものである。
このようにブラダーは、高温高圧下でタイヤに圧接されるので、加硫成型処理後にタイヤとブラダーとが圧着してしまわないように、タイヤ側となるゴム材の表面に離型作用を有する被膜形成を行う必要がある。
このようなタイヤの製造方法における被膜形成処理について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(離型剤溶液)
離型作用を有する被膜を形成するための離型剤溶液は、揮発性有機溶剤に粒状フィラーとシリコーン樹脂とを分散させて調製することができる。
本実施形態における離型剤溶液は、揮発性有機溶剤としてのキシレンに、粒状フィラーとしてのRBC(Rice Bran Ceramics)と、シリコーン樹脂としてのアクリル系シリコーン樹脂とを分散させて調製する。
キシレンは、揮発性に優れ、離型剤溶液を速やかに乾燥させる。
RBCは、固形潤滑剤、摺動剤としての機能を有し、離型剤溶液が乾燥してなる被膜に良好な離型作用を付与する。
特に、RBCは硬質多孔性炭素材料であり、塊状になりやすい粉体であるため、そのRBC粉体の表面積は大きく、溶液などが浸透しやすい物性を有するので、バインダーとなるアクリル系シリコーン樹脂などを保持する性能が高くなり、離型剤溶液を薄く塗布しても良好な離型性能を有する強くしっかりとした離型剤被膜を形成することが可能となる。
アクリル系シリコーン樹脂は、被膜形成性に優れる樹脂であり、キシレンが揮発し離型剤溶液が乾燥すると、RBCを含有する良好な乾燥被膜となる。
この離型剤溶液におけるRBCの配合率は、例えば、0.1〜50%であることが好ましく、また、アクリル系シリコーン樹脂の配合率は、例えば、1〜25%であることが好ましい。
【0024】
なお、キシレンに替えて、ジイソブチルケトンやシクロヘキサノンなど、他の有機溶剤を使用してもよく、また、これらを混合させた溶剤を使用してもよい。溶剤としては揮発性が高いものがより好ましい。
また、RBCに替えて、タルク、マイカ、黒鉛(カーボンブラック)、炭素繊維、シリカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、雲母、珪酸アルミニウム等、ゴム表面において摺動性あるいは耐摩耗性を奏する微粒子をフィラーとして使用してもよい。なお、余剰なフィラーがタイヤに付着した際に見栄えが悪くないように、フィラーとしてはRBCや黒鉛など、タイヤの色(黒色)に近いものを使用することが好ましい。
また、アクリル系シリコーン樹脂に替えて、被膜形成性のよい他のシリコーン樹脂や、シリコーングラフトアクリル樹脂などシリコーン系樹脂を使用してもよい。
【0025】
(タイヤの製造方法)
タイヤの製造工程は、例えば、カーカス、ビード、トレッド、ベルトなどタイヤの各パーツを加工する「材料加工工程」、できあがった各パーツをタイヤの形に組み上げて生タイヤを成形する「成形工程」、組み上がった生タイヤを加熱・加圧する「加硫工程」などの複数の工程から成り立っている。
【0026】
まず、「材料加工工程」において加工されたゴム材であって、タイヤの内面側のパーツとなる未加硫ゴムシート10の一方の面に、図1(a)に示すように、キシレンにRBCとアクリル系シリコーン樹脂とを分散させて調製した離型剤溶液20を塗布し、乾燥させると、図1(b)に示すように、一方の面に被膜30が形成された未加硫ゴムシート10ができる。
なお、未加硫ゴムシート10に離型剤溶液20を塗布する場合、刷毛塗り、スプレーコーティング、ディップコーティングなど、任意の塗布方法によって処理すればよい。
【0027】
ここで、未加硫ゴムシート10の一方の面に塗布された離型剤溶液20によって形成される被膜30について、詳細に説明する。
図2(a)に示すように、離型剤溶液20を、ブラダーとの圧接面となる未加硫ゴムシート10の一方の面に塗布する。かかる塗布は室温下(摂氏20度程度)で行うことが好ましいが、当該温度に限定されるものではない。
【0028】
未加硫ゴムシート10の一方の面に離型剤溶液20が塗布されると、図2(b)に示すように、キシレンの作用によりゴムの表面が膨潤し、ゴムの分子間に溶剤であるキシレンが侵入する。そして、ゴムの分子間へのキシレンの侵入に伴い、アクリル系シリコーン樹脂がゴムの表面からより内部に浸透することとなる。また、フィラーであるRBCもゴムの表面から内部に浸透する。
なお、図2(b)において、ゴムの表面を鋸歯状に図示しているが、溶剤やシリコーン樹脂が侵入しやすい状態を概念的に示しているものであって、実際の形状を示すものではない。
【0029】
そして、未加硫ゴムシート10の表面の乾燥を待つ。即ち、室温下において30分程度溶剤を乾燥させ、離型剤溶液20を硬化させる。このとき、離型剤溶液20に含まれるキシレンは揮発し、図2(c)に示すように、未加硫ゴムシート10の一方の面に、RBCを含んだアクリル系シリコーン樹脂からなる離型作用を有する被膜30が形成される。
なお、アクリル系シリコーン樹脂とRBCは、ゴム表面に付着するだけでなく、その一部がゴム表面近くの内部に浸透した状態でゴム表面近くに残留する。
このようにアクリル系シリコーン樹脂の被膜30は、RBCを含有して未加硫ゴムシート10の表面(一方の面)に安定した性状で強固に形成される。
【0030】
次いで、「成形工程」において、図3(a)に示すように、被膜30が形成された未加硫ゴムシート10の一方の面が内側となるように、所定の成形機のロールRに巻き付けると、図3(b)に示すように、タイヤの内面部パーツ40ができる。なお、この被膜30は、未加硫ゴムシート10の一方の面に安定した乾燥被膜として被着しているので、ロールRと接触しても剥がれたり脱落したりせず、未加硫ゴムシート10の一方の面であり、生タイヤ60の内面にしっかりと被着している。
更に、タイヤの内面部パーツ40の外側にトレッド部パーツ50を巻き付けるなど組み上げて、所定の成形処理を施すことによって、図5に示すような生タイヤ60が成形される。
この生タイヤ60の内面が、未加硫ゴムシート10の一方の面に相当するようになっており、生タイヤ60の内面に被膜30が形成された状態になっている。つまり、生タイヤ60の内面に離型剤溶液20を塗布して被膜30を形成したようになっている。
【0031】
次いで、「加硫工程」において、図6に示すように、各パーツが組み上げられた生タイヤ60の内部にブラダーを装填するとともに、その生タイヤ60を金型Mの中に入れる。
この金型Mが密閉された内部において、ブラダーを高温高圧の蒸気によって膨らませることで、生タイヤ60を金型60に押し付ける。このときの熱と圧力によって未加硫ゴムの分子と硫黄の分子とが結合すること(加硫)によって、タイヤのゴムに弾力性と耐久性が付与される。
そして、生タイヤ60は、金型Mに応じたトレッド面の模様(トレッドパターン)が形成された、所定の製品形状のタイヤTに成型される。
この成型されたタイヤTからブラダーを取り外して、タイヤTが完成する。
【0032】
なお、この生タイヤ60の内面に、離型作用を有する被膜30が予め形成されているため、成型されたタイヤTからブラダーを取り外す際に、タイヤTからブラダーが剥がれ易くなっている。
そして、図7のグラフに示されるように、タイヤTからブラダーを取り外す際の剥離抵抗力〔gf〕は、ブラダーの使用回数が増す毎に低下し、10回を越えると75〔gf〕程度になり、30回を越えると50〔gf〕程度と弱くなり、タイヤTからブラダーがより剥がれ易くなる。
これは、ブラダーの使用回数が増し、タイヤTからブラダーを取り外すことを繰り返したことによって、生タイヤ60の内面に形成されていた被膜30の一部など、離型作用を有する成分(例えば、RBC)がブラダーの表面に徐々に移着したことにより、その剥離抵抗力が低下して弱くなったためである。
なお、図7に示す剥離抵抗力の測定試験結果は、未加硫ゴムシート10の一方の面に離型剤溶液20を塗布して形成した被膜30を有する生タイヤ60に、180℃×20分、20kg/cmの条件でブラダーによる加熱加圧処理を施した後に、そのタイヤTからブラダーを取り外す際の剥離抵抗力〔gf〕を測定したものである。
このように生タイヤ60の内面に予め形成されていた被膜30によって、ブラダーの使用回数が増す毎にタイヤTからブラダーが剥がれ易くなるため、タイヤTからブラダーを取り外す際にブラダー表面に作用する負荷が軽減され、ブラダーが損傷してしまうことが低減されるので、ブラダーの寿命が延びるというメリットがある。
【0033】
また、生タイヤ60とブラダーとが高温高圧下で直接接触してしまうと、生タイヤ60とブラダーとの間で、それぞれのゴムの含有成分が互いに行き来してしまう成分移動が生じてしまうことがあり、そのゴム成分の移動によってブラダーの劣化が進行してしまうことがある。
本発明においては、生タイヤ60の内面にアクリル系シリコーン樹脂の乾燥被膜である被膜30が形成されているため、その被膜30が生タイヤ60とブラダーとが直接接触することを妨げ、ゴム成分の移動を防止することができるので、ブラダーの劣化を低減することができる。
このゴム成分の移動防止は、従来技術の水性シロキサン乳濁液などを生タイヤの内面に塗布して形成したタルク層ではできない技術であるので、本発明において生タイヤ60の内面に形成した被膜30は、ブラダーの劣化の低減に関する優れた技術であるといえる。
【0034】
このように、本発明に係るタイヤの製造方法において、未加硫ゴムシート10の一方の面に離型剤溶液20を塗布して形成した被膜30は、RBCを含有したアクリル系シリコーン樹脂からなる安定した性状の被膜として未加硫ゴムシート10の表面(一方の面)に形成されるので、その被膜30が形成された面が生タイヤ60の内面となるように未加硫ゴムシート10を内面部パーツ40に成形する加工を行った場合でも、被膜30は良好に生タイヤ60の内面に形成された状態を維持することができる。
そして、未加硫ゴムシート10の一方の面に離型剤溶液20を塗布することは、予め略タイヤ形状に成形された生タイヤの内面側に離型剤溶液20を塗布することに比べて容易な作業であるので、ゴム材を生タイヤ形状に組み上げる前に、未加硫ゴムシート10の一方の面に被膜30を形成することによって、タイヤTの製造をより効率的に行うことができる。
【0035】
これに対して、従来の水性シロキサン乳濁液の場合、未加硫ゴムシートに塗布した後の乾燥に時間が掛かるとともに、乾燥後の未加硫ゴムシートの表面にはタルクが付着した状態の塗料面(タルク層)が形成される程度であるため、そのタルクは未加硫ゴムシートから脱落しやすいので、生タイヤを組み上げるまでに剥がれ落ちてしまったり、剥がれ落ちてしまったタルクが他のゴム材などに付着してしまったりするトラブルが生じてしまうことがある。
そのため、従来の水性シロキサン乳濁液を用いる際には、各パーツのゴム材が組み上げられた生タイヤの内面に、その水性シロキサン乳濁液を塗布する方法を採る必要があり、未加硫ゴムシートに塗布する方法を採ることはできなかった。
【0036】
また、キシレンにRBCとアクリル系シリコーン樹脂とを分散させて調製した離型剤溶液20が塗布されて、キシレンが揮発したことで形成された被膜30を内面に有する生タイヤ60の内面側でブラダーを膨らませるタイヤの製造方法において、成型されたタイヤTからブラダーを取り外す際に、RBCを含有したアクリル系シリコーン樹脂からなる被膜30の離型作用によって、タイヤTからブラダーが剥がれ易いため、そのブラダーを取り外し易いので、効率的なタイヤ製造を行うことができる。
特に、タイヤ製造に際してブラダーを繰り返し使用して、タイヤTからブラダーを取り外すことを繰り返すことによって、生タイヤ60の内面に形成されていた被膜30の一部(例えば、RBC)などがブラダーの表面に徐々に移着することにより、ブラダーの使用回数が増す毎にタイヤTからブラダーが剥がれ易くなるため、タイヤTからブラダーを取り外す際にブラダーが損傷してしまうことを低減することができる。そして、ブラダーの損傷を抑えて使用することによって、ブラダーの寿命である耐用年数を延ばすことができる。
【0037】
また、生タイヤ60の内面に形成されている被膜30が、生タイヤ60とブラダーとが直接接触することを妨げ、ゴム成分の移動を防止することができるので、ブラダーの劣化を低減することができる。そして、ブラダーの寿命(タイヤを製造することができるブラダーの使用可能回数)を延ばすことができる。これは、RBC離型剤を塗布したブラダーと、生タイヤに塗布したRBC離型剤を併用することで、ブラダーの寿命(ブラダーのゴムの寿命)を理想とする限界まで延ばすことが可能となるためである。
【0038】
また、タイヤTは、生タイヤとブラダーの間に離型性がよいRBCを含有したシリコーン樹脂の被膜30が介された状態で製造されるため、製造されたタイヤTからブラダーが好適に剥がれるので、タイヤTとブラダーとを分離する際に、タイヤTが損傷してしまうことを低減することができる。
また、生タイヤ60に被膜30を形成したことによって、そのタイヤの製造工程においてタイヤの表面に異物が付着してしまうことを低減することができる。
また、タイヤTの表面には、そのシリコーン樹脂被膜30が残存するので、製造後のタイヤT表面の損傷や異物付着を防止することができる。
その結果、タイヤ自体の寿命を長くすることが可能になる。
【0039】
なお、以上の実施の形態においては、離型剤溶液20は、キシレンにRBCとアクリル系シリコーン樹脂とを分散させて調製するとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の添加剤や機能薬品、例えば、分散剤などを加えてもよい。
【0040】
また、以上の実施の形態においては、未加硫ゴムシート10の一方の面に離型剤溶液20を塗布して被膜30を形成し、その被膜30が形成された未加硫ゴムシート10を用いて生タイヤ60を組み上げ成形するとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、予め所定の形に成形された生タイヤの内面に離型剤溶液20を塗布して、RBCを含有するアクリル系シリコーン樹脂からなる被膜30を生タイヤに形成するようにしてもよい。
【0041】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】未加硫ゴムシートの一方の面に離型剤溶液を塗布する工程(a)と、離型剤溶液が塗布された面に被膜が形成された未加硫ゴムシート(B)とを示す説明図である。
【図2】未加硫ゴムシートの表面における被膜形成に関する説明図であって、未加硫ゴムシートに離型剤溶液が塗布された状態(a)と、未加硫ゴムシートの表面が膨潤した状態(b)と、未加硫ゴムシートの表面に被膜が形成された状態(c)と、を示している。
【図3】未加硫ゴムシートをロールに巻き付ける工程(a)と、その未加硫ゴムシートにより形成された内面部パーツ(b)と、を示す説明図である。
【図4】内面部パーツにトレッド部パーツを組み付ける状態を示す説明図である。
【図5】生タイヤを示す説明図(斜視図)である。
【図6】金型に生タイヤを入れて行う、タイヤの加硫成型に関する説明図である。
【図7】タイヤからブラダーを取り外す際の剥離抵抗力の測定試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
10 未加硫ゴムシート
20 離型剤溶液
30 被膜
40 内面部パーツ
50 トレッド部パーツ
60 生タイヤ
M 金型
R ロール
T タイヤ
【出願人】 【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司

【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男


【公開番号】 特開2008−62543(P2008−62543A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−243899(P2006−243899)