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【発明の名称】 真空成形方法及び成形型
【発明者】 【氏名】飯尾 和典

【氏名】大原 将揮

【要約】 【課題】製造コストの低減。

【構成】シート周縁Saが保持されて加熱軟化した断熱用シートSを、浴槽裏面形状に対応する成形面3に吸引口13を開設した成形型2で押し上げた後、真空吸引して断熱用シートSを成形型2の成形面3に密着させ、その後に脱型して浴槽裏面被覆用断熱材6を得る真空成形方法であり、成形型2は、内部に吸引路10が設けられると共に外周側7aに成形面3の下側3aが形成された下方の基部7と、浴槽Bの開口縁部Bbを切除して外曲上縁部のない状態で上下反転されて外側に成形面3の上側3bが形成された上方の主部8とからなり、基部7に主部8を載設して下側3a及び上側3bの両成形面の境界部を連接させ、主部8に開設した吸引口13を基部7の吸引路10に連通させたこと。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート周縁が保持されて加熱軟化した断熱用シートを、浴槽裏面形状に対応する成形面に吸引口を開設した成形型で押し上げた後、真空吸引して断熱用シートを成形型の成形面に密着させ、その後に脱型して浴槽裏面被覆用断熱材を得る真空成形方法において、前記成形型は、内部に吸引路が設けられると共に外周側に成形面の下側が形成された下方の基部と、浴槽の開口縁部を切除して外曲上縁部のない状態で上下反転されて外側に成形面の上側が形成された上方の主部とからなり、基部に主部を載設して下側及び上側の両成形面の境界部を連接させ、主部に開設した前記吸引口を基部の吸引路に連通させたことを特徴とする真空成形方法。
【請求項2】
前記成形型の下方の基部は、前記下側の成形面の外側に環状縁部が設けられ、これら下側の成形面及び環状縁部の両者が、両者の間に上向き開口した環状凹部を形成して延長成形面で連接され、前記成形型を押し上げたときに、環状縁部の上面に前記シート周縁を水平又は略水平状態で密着させるようにした請求項1記載の真空成形方法。
【請求項3】
浴槽裏面形状に対応する成形面に吸引口を開設した真空成形用成形型において、前記成形型は、内部に吸引路が設けられると共に外周側に成形面の下側が形成された下方の基部と、浴槽の開口縁部を切除して外曲上縁部のない状態で上下反転されて外側に成形面の上側が形成された上方の主部とからなり、基部に主部を載設して下側及び上側の両成形面の境界部を連接させ、主部に開設した前記吸引口を基部の吸引路に連通させたことを特徴とする真空成形用成形型。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の裏面を被覆する浴槽裏面被覆用断熱材を得る真空成形方法及び成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽の裏面に断熱層を形成する方法としては、浴槽の裏面形状に対応する形状に成形した断熱材を、浴槽の裏面に外嵌装着して被覆する方法がある(例えば、特許文献1参照)。該断熱材の成形は、浴槽の裏面形状に対応する成形面を備えた成形型を準備し、シート周縁が保持されて加熱軟化した断熱シートを成形型の凸部で押し上げた後、真空吸引して断熱シートを型に密着させ、その後に脱型して浴槽裏面被覆用断熱材を得る真空成形方法の一種であるドレープ成形で行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−141756公報
【非特許文献1】「プラスチック加工技術便覧」,日刊工業新聞社,昭和54年4月10日,5版,p.435−437
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のドレープ成形による真空成形方法は、成形型として高価な金型を使用するため、製造コストを増大させる欠点があった。そこで、本発明は、浴槽を成形型に転用した安価な成形型で成形することで、製造コストを低減できる成形方法及び成形型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
製造コストを低減するために請求項1記載の本発明が採用した手段は、シート周縁が保持されて加熱軟化した断熱用シートを、浴槽裏面形状に対応する成形面に吸引口を開設した成形型で押し上げた後、真空吸引して断熱用シートを成形型の成形面に密着させ、その後に脱型して浴槽裏面被覆用断熱材を得る真空成形方法において、前記成形型は、内部に吸引路が設けられると共に外周側に成形面の下側が形成された下方の基部と、浴槽の開口縁部を切除して外曲上縁部のない状態で上下反転されて外側に成形面の上側が形成された上方の主部とからなり、基部に主部を載設して下側及び上側の両成形面の境界部を連接させ、主部に開設した前記吸引口を基部の吸引路に連通させたことを特徴とする真空成形方法である。
【0005】
成形設備における成形型の押し上げ寸法の制限により成形型の背丈寸法に制限を受けたとしても背丈寸法の高い成形品を得られるように請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記成形型の下方の基部は、前記下側の成形面の外側に環状縁部が設けられ、これら下側の成形面及び環状縁部の両者が、両者の間に上向き開口した環状凹部を形成して延長成形面で連接され、前記成形型を押し上げたときに、環状縁部の上面に前記シート周縁を水平又は略水平状態で密着させるようにした請求項1記載の真空成形方法である。
【0006】
製造コストを低減するために請求項3記載の本発明が採用した手段は、浴槽裏面形状に対応する成形面に吸引口を開設した真空成形用成形型において、前記成形型は、内部に吸引路が設けられると共に外周側に成形面の下側が形成された下方の基部と、浴槽の開口縁部を切除して外曲上縁部のない状態で上下反転されて外側に成形面の上側が形成された上方の主部とからなり、基部に主部を載設して下側及び上側の両成形面の境界部を連接させ、主部に開設した前記吸引口を基部の吸引路に連通させたことを特徴とする真空成形用成形型である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る真空成形方法及び請求項3記載の本発明に係る成形型は、浴槽を転用して成形面の大半を占める主部とすることで、安価な成形型が得られるので製造コストを低減できる。
【0008】
請求項2記載の本発明に係る真空成形方法は、基部の下側の成形面及び環状縁部の両者の間に上向き開口した環状凹部を形成したもの(前者)と、環状凹部を形成しないもの(後者)とにおける各々の環状縁部から主要部の頂部までの高さ寸法を比較すると、前者が後者に比べて低くなり、成形型の押し上げ寸法の制限のために成形型の背丈寸法に制限がある成形設備にあっては、前者は後者に比べて背丈寸法の高い成形品を得ることができるようになる。また、真空吸引するとき、前者では、環状縁部の上面にシート周縁が水平又は略水平状態で密着するので、シートを成形型の環状凹部及び延長用成形面に万遍なく密着させて、所定形状の成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る真空成形方法(以下、「本発明真空成形方法」と言う。)及び成形型(以下、「本発明成形型」と言う。)を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1乃至図4は本発明成形型を用いた本発明真空成形方法の実施の形態を示すものであり、図1は加熱装置5で断熱用シートSを加熱軟化させている途中を示す正面断面図、図2(A)は加熱軟化した断熱用シートSを本発明成形型2で押し上げた後の状態を示す正面断面図、図2(B)は真空吸引して断熱用シートSを成形型2の成形面3に密着させた状態を示す正面断面図、図3は加工を施した浴槽裏面被覆用断熱材6を用いて浴槽Bの裏面Baを断熱している状態を示す部分断面した正面図、図4(A)は成形型2を得るための浴槽Bを部分断面して切断箇所Y、Zを示した正面図、図4(B)は成形型2の主部8を形成する加工済み浴槽B’の上下反転前の正面断面図である。図5は対比する別態様の成形型2’で成形している状態を示す正面断面図である。
【0011】
真空成形用の成形設備1は、図1に示す如く、断熱用シートSを保持するシート保持装置4と、シート保持装置4で保持されている断熱用シートSを加熱する加熱装置5と、加熱軟化した断熱用シートSを真空成形するための本発明成形型2とを備えている。
【0012】
前記本発明成形型2は、図1に示す如く、鋼製部材を枠組みする等して構成された支持台9と、支持台9に支持された下方の基部7と、基部7に載設した上方の主部8とからなり、一体化した基部7及び主部8の各外側面7a,8aで成形面3を形成してある。成形面3は、下方の基部7の外側面7aで形成されている下側成形面域3aと、上方の主部8の外側面8aで形成されている上側成形面域3bとからなる。成形面3は、その高さ寸法H1が、真空成形して得た浴槽裏面被覆用断熱材6の脱型後の収縮代及び不要な部分を切断除去するための除去代を考慮して決定される。
【0013】
前記基部7は、木質素材又は合成樹脂素材等から成形され、外側面7a(下側成形面域3a)の外側に高さ寸法H3の環状縁部7bが設けられ、これら外側面7a(下側成形面域3a)及び環状縁部7bの両者が延長成形面7dで連接されて、両者の間に上向き開口した環状凹部7cを形成してある。基部7は、図2(A)に示す如く、加熱軟化した断熱用シートSを成形型2で押し上げたときに、環状縁部7bの上面にシート周縁Saを水平又は略水平状態で密着させるようにしてある。基部7は、環状凹部7cに臨む外側面7aの適所に吸引口13を開設してある。
【0014】
前記主部8は、図4に示す如く、FRP(繊維強化プラスチック)製の浴槽Bを加工したものが転用される。浴槽Bの加工は、切断箇所Y,Zで切断し且つ浴槽裏面上縁側リブBfを切除することで、開口縁部Bbを切除した外曲上縁部のない状態にすると共に、底面側の補強リブBc及び脚部Bdを完全に切除するか、若干高さ寸法hだけ残して切除して大きな突出部のない目印程度となる状態にし、また適所に吸引口13を開設し、更に排水口を板等(図示略)で塞いでおく。浴槽裏面上縁側リブBf及び背丈の高い補強リブBcや脚部Bdを切除するのは、浴槽裏面上縁側リブBf及び補強リブBcや脚部Bdが、真空成形時に断熱用シートSを局部的に極端に延ばして切断等の成形不良を招くからである。このように加工された加工済み浴槽B’は、図1に示す如く、上下反転した状態にして、前記基部7の嵌合用段部7fに開口周縁部B’eを嵌合させて気密状態に載設されて主部8となり、基部7の外側面7aで形成される下側成形面域3aと浴槽B’からなる主部8の外側面8aで形成される上側成形面域3bとの境界部が連接され、浴槽B’からなる主部8に開設した吸引口13が基部7の吸引路10に連通される。
【0015】
本発明成形型2は、基部7の中刳した内側凹部7eを吸引路10とし、吸引路10とブロアー等からなる吸引装置(図示略)とを三方弁等の開閉弁11付きの配管12で連通し、真空成形の進行に伴い開閉弁11を開閉制御することで、吸引路10を介して基部7及び主部8の各吸引口13を真空状態又は大気圧状態となるようにする。なお、開閉弁11は、図示は省略したが、吸引装置と給気装置とに接続して、成形工程において各吸引口13を真空状態にし、脱型工程において各吸引口13から型外側へ空気を吐出させ脱型を助けるようにすることもある。
【0016】
前記シート保持装置4は、断熱用シートSの四周縁を着脱自在に保持するクランプ枠4aを備えている。前記加熱装置5は、電気で加熱するヒータや熱媒体油で加熱するヒータ等からなる上下の加熱本体5a,5bと、加熱本体5a,5bを進退させる進退操作具(図示略)とからなり、図1に示すようにシート保持装置4で保持されている断熱用シートSを加熱する前進位置と、図2に示すように断熱用シートSを加熱しない後退位置との間で加熱本体5a,5bを進退させるようにしてある。
【0017】
本発明成形型は、図1に示す如く、基部7の下側成形面域3a及び環状縁部7bの両者の間に上向き開口した環状凹部7cを形成した成形型2(前者)と、図5に示す如く、環状凹部を形成しない成形型2’(後者)とについて、両者の各々の環状縁部7bの上面から主要部8の頂部までの高さ寸法を比較すると、前者の高さ寸法H2が後者の高さ寸法H1に比べて低くなる(H2<H1)。もし、成形設備の大きさの制限から成形型2の上下移動寸法を大きくできない場合において、前者の成形型2は採用できるが、後者の成形型2’は採用できないときがある。もし、後者の成形型2’を採用するときには、高さ寸法H1を図1に示す高さ寸法H2に相当する寸法値まで低くしなければならない。したがって、前者は、後者に比べて背丈寸法の高い成形品14を得ることができることになる。また、真空吸引するとき、前者の成形型2(図1参照)では、環状縁部7bの上面にシート周縁Saが水平又は略水平状態で密着するので、環状凹部7cの真空状態が確実に得られ、シートSを環状縁部7b及び延長用成形面7dに万遍なく密着させて、所定形状の成形品14を確実に得ることができる。
【0018】
次に、真空成形用の成形設備1を用いて浴槽裏面被覆用断熱材6を得る真空成形方法の手順は、次の通りである。
【0019】
第1工程(加熱工程)
図1に示す如く、断熱用シートSの周縁をシート保持装置4のクランプ枠4aで保持しつつ、断熱用シートSを加熱状態の加熱装置5で真空成形可能な温度まで加熱して軟化させる。断熱用シートSとしては、厚みが10〜20mm程度のポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)の発泡シートが用いられる。
【0020】
第2工程(真空成形工程)
次に、加熱装置5を後退させて非加熱状態にしたならば、速やかに成形型2を上昇させて、シート保持装置4のクランプ枠4aで保持されている加熱軟化状態の断熱用シートを成形型2で押し上げる(図2(A)の状態にする)と共に、開閉弁11を操作して成形型2の各吸引口13を吸引状態にすることで、真空吸引して断熱用シートSを成形型2の成形面3に密着させる(同図(B)の状態)。このとき、成形型2は、環状縁部7bの上面にシート周縁Saが水平又は略水平状態で密着しているので、シートSを環状縁部7b及び延長用成形面7dに万遍なく密着させて、所定形状の成形品14を得ることができる。
【0021】
第3工程(冷却・脱型工程)
成形型2の成形面3に密着させた断熱用シートSの表面に冷風を吹付ける等して冷却して、断熱用シートSを冷却・硬化させ、その後に成形型2を降下させて成形型2の成形面3から脱型して成形品14を得る。成形型2を降下させるときに、開閉弁11を操作して各吸引口13から空気を吐出させて脱型を促進させることもある。シート保持装置4を操作して脱型した成形品14をクランプ枠4aから分離する。
【0022】
第4工程(仕上げ工程)
脱型・分離した成形品14は、図2(B)に示す切断位置C1で環状方向に沿って切断されて所定高さ寸法H4になると共に、リブ・脚部位置C2で切断されて、図3に示す如く、リブ・脚部挿通用の開口部6aを形成した浴槽裏面被覆用断熱材6(図3参照)に加工される。更に、浴槽裏面被覆用断熱材6は、浴槽裏面上縁側リブBf用の切込み6bが所定箇所に形成される。
【0023】
浴槽裏面被覆用断熱材6は、図3に示す如く、浴槽Bの裏面Baに外嵌装着して被覆する。キャップ状の浴槽裏面被覆用断熱材6は、冷却時の熱収縮により脱型すると3%程度収縮することがある。そのため、浴槽Bの裏面Baに収縮したキャップ状の浴槽裏面被覆用断熱材6を外嵌装着するとき、底面側から上縁部側へ向かって行く程に拡径するテーパー状となっている浴槽外側面に無理嵌めすることになる。無理嵌めするとき、断熱材6は、浴槽B外側面の周囲方向には拡径した状態のまま浴槽裏面に密着した嵌着状態を維持することができるが、浴槽B外側面の上下方向には延ばして嵌着した状態を維持させることは困難である。したがって、キャップ状の浴槽裏面被覆用断熱材6は、浴槽B裏面の断熱に必要な背丈寸法H4としてある。本発明成形方法は、必要な背丈寸法H4の浴槽裏面被覆用断熱材6を得るために、成形型2として、浴槽Bを加工したものを主部8として上側に用いると共に、主部8の外側面と連なる下側の基部7を併せて用いる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明成形型を用いた本発明真空成形方法の実施の形態を示すものであって、断熱用シートを加熱装置で加熱軟化させている途中を示す正面断面図である。
【図2】同実施の形態を示すものであって、(A)は加熱軟化した断熱用シートを本発明成形型で押し上げた後の状態を示す正面断面図、(B)は真空吸引して断熱用シートを成形型の成形面に密着させた状態を示す正面断面図である。
【図3】同実施の形態を示すものであって、加工を施した浴槽裏面被覆用断熱材を用いて浴槽の裏面を断熱している状態を示す部分断面した正面図である。
【図4】同実施の形態を示すものであって、(A)は成形型を得るための浴槽を部分断面して切断箇所を示した正面図、(B)は成形型の主部を形成する部材の上下反転前の正面断面図である。
【図5】本発明成形型を用いた本発明真空成形方法の別態様の実施の形態を示すものであって、対比する成形型で成形している状態を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0025】
2…本発明成形型、3…成形面、3a…下側成形面、3b…上側成形面、4…シート保持装置、5…加熱装置、6…浴槽裏面被覆用断熱材、6a…開口部、7…基部、7a…外側面、7b…環状縁部、7c…環状凹部、7d…延長成形面、7f…嵌合用段部、8…主部、8a…外側面、9…支持台、10…吸引路、13…吸引口、14…成形品、B…浴槽、Bb…開口縁部、Bc…補強リブ、Bd…脚部、S…断熱用シート、Sa…シート周縁、Y、Z…切断箇所
【出願人】 【識別番号】000000479
【氏名又は名称】株式会社INAX
【出願日】 平成18年9月7日(2006.9.7)
【代理人】 【識別番号】100082016
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敏彦


【公開番号】 特開2008−62501(P2008−62501A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−242517(P2006−242517)