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【発明の名称】 射出成形機
【発明者】 【氏名】谷口 吉哉

【要約】 【課題】油汚れの虞なく、クリーンルーム内のように清浄な環境が要求される空間内において使用可能な射出成形機を提供すること。

【構成】サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構と、サーボモータの回転力で駆動されて力を拡大可能な型締め機構とを、備えた射出成形機において、ボールネジ機構のボールにセラミックスボールを用い、型締め機構(例えばクランク機構)における回転軸支部に、固形潤滑剤入りの転がり軸受または潤滑油封入タイプ転がり軸受を用いた、構成をとる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構と、サーボモータの回転力で駆動されて力を拡大可能な型締め機構とを、備えた射出成形機において、
前記ボールネジ機構のボールにセラミックスボールを用い、前記型締め機構における回転軸支部に、固形潤滑剤入りの転がり軸受または潤滑油封入タイプ転がり軸受を用いたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、
前記型締め機構は、型締め用サーボモータを駆動源とするクランク機構よりなることを特徴とする射出成形機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式の射出成形機に係り、特に、潤滑油の飛散などによる油汚れの虞がなく、クリーンルーム内などの油汚れを排除する必要のある環境下において、成形運転を行うのに用いて好適な射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式の射出成形機に用いられるホールネジ機構においては、ボールネジ機構の転動子(転動体)としてのボールは、一般的に、軸受け炭素鋼(SUJ2)よりなる鋼球が用いられている。この鋼球を用いたボールネジ機構には大量の潤滑油(グリース)の供給(補給)が必要である。また、電動式の射出成形機においては、型締め機構にトグルリンク機構が用いられることが一般的であるが、このトグルリンク機構のリンクの回転軸支部には、大量の潤滑油(グリース)の供給(補給)が必要なブッシュ(滑り軸受)が用いられている。このため、従来の射出成形機は、潤滑油の供給時の油垂れ、あるいは、油の供給部位に大量の潤滑油を必要とすることによる潤滑油の飛散や垂れによって、油による汚損が発生することは避け難たいものとなっていた。
【0003】
そこで、射出成形機に用いられるホールネジ機構による油汚れを回避するための等の理由から、ホールネジ機構のボールにセラミックスボールを用いることで、ホールネジ機構への無給油化を実質的に可能とする試みがなされている。このようなセラミックスボールを用いたボールネジ機構をもつ射出成形機の従来技術に関しては、本願出願人が先に提案した特開2005−131886号公報(特許文献1)や特開2006−7479号公報(特許文献2)が挙げられる。
【0004】
また、射出成形機に用いられるトグルリンク機構による油汚れを回避するための等の理由から、トグルリンク機構のリンクの回転軸支部に、固形潤滑剤入りの転がり軸受(ニードルローラを転動子(転動体)とした転がり軸受)を用いるようにした技術が、本願出願人によって特願2006−131300として提案されている。
【特許文献1】特開2005−131886号公報
【特許文献2】特開2006−7479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特願2006−131300で提案された技術は、トグルリンク機構の回転軸支部に固形潤滑剤入りの転がり軸受を用いるものであるが、公知のようにトグルリンク機構は、大型のマシン(射出成形機)では大パワーの型締め力を発生させるものであるので、大きな型締め力を発生させるトグルリンク機構の回転軸支部には、大きな負荷がかかる。このため、大きな型締め力を発生させるトグルリンク機構においては、転動子を用いた転がり軸受では、その強度が持たないことも懸念され、本願出願人においては、どの程度の大きさの型締め力まで、トグルリンク機構の回転軸支部に転がり軸受を用いることが可能であるかどうかを、検証中である。
【0006】
現状、市場に出回っている電動式の射出成形機では、型締め機構にトグルリンク機構を用いる場合には、トグルリンク機構のリンクの回転軸支部には、機械的強度が従前より保証されている、潤滑油を含浸させた焼結合金よりなるブッシュ(滑り軸受)を一般的に用いており、このため、ブッシュへの定期的な潤滑油の供給(補給)が必要となっている。このように、トグルリンク機構のブッシュに対して潤滑油の供給が必要であることから、ボールネジ機構に対しても潤滑油の供給を行う構成としてもよいではないかという理由により、潤滑油の供給が必要な鋼球を用いたボールネジ機構が、現状採用されていた。
【0007】
しかしながら、先にも述べたように、潤滑油の供給(補給)が必要な構成をとると、潤滑油の飛散や垂れによって、油による汚損が発生することは否めず、クリーンルーム内のように清浄な環境が要求される空間内において、射出成形機を運転させることができないという問題があった。しかし、近時の生産技術革新に伴って、小型のマシン(射出成形機)であっても差し支えないが、油汚れの虞なくクリーンルーム内で使用可能な射出成形機を実現することへの要望が高まっている。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、油汚れの虞なく、クリーンルーム内のように清浄な環境が要求される空間内において使用可能な射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記した目的を達成するために、サーボモータの回転を直線運動に変換して直線移動部材を直線移動させるボールネジ機構と、サーボモータの回転力で駆動されて力を拡大可能な型締め機構とを、備えた射出成形機において、ボールネジ機構のボールにセラミックスボールを用い、型締め機構(例えば、クランク機構)における回転軸支部に、固形潤滑剤入りの転がり軸受または潤滑油(グリース)封入タイプ転がり軸受を用いた、構成をとる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ボールネジ機構のボールにセラミックスボールを用い、また、例えばクランク機構よりなる型締め機構における回転軸支部に、固形潤滑剤入りの転がり軸受または潤滑油封入タイプ転がり軸受を用いている。セラミックスボールは油膜形成に優れて、潤滑条件が鋼球に較べてはるかに良好となるので、本願発明者等の検証によれば、セラミックスボールを用いたボールネジ機構は、1千万回転程度は無給油で支障なく(信頼性を損なうことなく)回転が可能であることが確認されており、したがって、1千万ショット程度のショット数の成形運転は無給油で支障なく行える。また、例えば、ニードルローラを転動子とし、潤滑剤として、微粒子の高分子ポリオレフィン樹脂と潤滑油(グリース)を混合したものを熱処理して固形化してなる固形潤滑剤を用いた、固形潤滑剤入りの転がり軸受は、転動子(ニードルローラ)の回転に伴い潤滑油が適量だけ(すなわち、円滑回転を保証しつつ、油漏れがないように)長期にわたって浸み出し、したがって、非常に長期にわたって(非常に長時間の連続運転下においても)、無給油で回転運動を安定して支承できる。また、例えば、ボールを転動子とし、潤滑油の漏れがないように転動子封入部が完全密閉された構造の、潤滑油封入タイプ転がり軸受は、封入された潤滑油の漏れがないことは言うまでもないが、潤滑油の消去までの期間が長く、非常に長期にわたって(非常に長時間の連続運転下においても)、無給油で回転運動を安定して支承できる。したがって、本発明による射出成形機は、長期にわたって無給油で支障なく運転できる、油汚れの虞が殆どないクリーン性に優れたマシンとすることができ、クリーンルーム内のように清浄な環境が要求される空間内において使用するのに、好適なマシンとすることができる。また、給油が要らないので、メンテナンス性にも優れたものとなり、ランニングコストも抑えることができる。なお、クランク機構よりなる型締め機構は、その構造上、最大型締め力が30〜50トン程度と比較的に小さいので、本発明による射出成形機は小型のマシンへの適用となるが、最大型締め力が小さいが故に、転動子をもつ転がり軸受けであっても、型締め機構における回転軸支部に用いてもその機械的強度には、全く不安のないものとできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1〜図4は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)による電動式の射出成形機に係り、図1は、本実施形態の射出成形機の簡略化し且つ一部を切断した正面図である。
【0012】
図1において、1はメインフレーム部材、2は、メインフレーム部材1上に正面から見て右側に配置された射出系メカニズム、3は、メインフレーム1上に正面から見て左側に配置された型開閉系メカニズムである。
【0013】
射出系メカニズム2において、4は、メインフレーム部材1上に適宜のベース部材を介して固定され、射出系メカニズム2全体を前後進可能であるように支持したレール部材、5は、レール部材4に摺動可能に介装された直動ガイド6上に固定されたヘッドストック、7は、レール部材4に摺動可能に介装された直動ガイド8上に固定されると共に、ロードセルブロック9を介してヘッドストック5に固定された保持ブロック、10は、レール部材4に摺動可能に介装された直動ガイド11上に固定されて、ヘッドストック5に対して前後進可能とされた直動ブロック、12は、ヘッドストック5にその後端側を固定された加熱シリンダ、13は、加熱シリンダ12の先端側に固定されたノズル、14は、加熱シリンダ12内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュ、15は、スクリュ14の後端を固定すると共に、直動ブロック10に回転可能に保持された回転体、16は、回転体15に固定されると共に、直動ブロック10に搭載された図示せぬ計量用サーボモータの回転を、図示せぬ駆動プーリ、タイミングベルトを介して伝達される被動プーリ、17は、保持ブロック7に搭載された射出用サーボモータ、18は、射出用サーボモータ17の出力軸に固定された駆動プーリ、19は、射出用サーボモータ17の回転を駆動プーリ18、図示せぬタイミングベルトを介して伝達される被動プーリ、20は、被動プーリ19の回転を直線運動に変換するボールネジ機構、20aは、保持ブロック7に回転可能に保持されると共に、その端部に被動プーリ19を固定したボールネジ機構20のネジ軸、20bは、ネジ軸20aに螺合されると共に、直動ブロック10に固定されたボールネジ機構20のナット体である。
【0014】
図1に示す射出系メカニズム2において、成形運転時には、図示せぬノズルタッチ/バック用モータ、ノズルタッチ/バック機構によって、加熱シリンダ12の先端のノズル13は、後記する固定ダイプレート21に固定された図示せぬ固定側金型の樹脂注入口周辺に、所定の力で押し付けられている。このようなノズルタッチ状態において、計量工程時には、スクリュ14が図示せぬ計量用サーボモータによって回転駆動され、これによって、スクリュ14の根本側に供給された原料樹脂が、混練・可塑化されつつ、スクリュ14のネジ送り作用でスクリュ14の頭部側へ移送され、スクリュ14の頭部より前に(先に)溶融樹脂が溜まるにしたがってスクリュ14が後退する。このスクリュ14の後退に際して、射出用サーボモータ17が圧力フィードバック制御されて、背圧の制御が行われ、スクリュ14の頭部より先に(前に)所定量の溶融樹脂が蓄えられた時点で、スクリュ回転は停止される。また、射出時には、射出用サーボモータ17が回転駆動されることで、ボールネジ機構20のナット体20bが前進駆動され、これによって、直動ブロック10と一体となってスクリュ14が前進駆動されて、スクリュ14の頭部より先に蓄えられた溶融樹脂が金型内に射出・充填される。
【0015】
ここで、前記のボールネジ機構20は、前記ネジ軸20a、ナット体20bの他に、図示せぬボール循環部内に内蔵されて、ネジとナットとの螺合部位において転動子と機能するボールを含んで構成されている。本実施形態では、射出用および背圧制御用の前記したボールネジ機構20を含め、図示せぬ全てのボールネジ機構(ノズルタッチ/バック用のボールネジ機構や、イジェクト用のボールネジ機構)における転動子としてのボールに、窒化珪素系セラミックス(Si)よりなるセラミックスボールを用いている。このセラミックスボールは、油膜形成に優れて、潤滑条件が鋼球に較べてはるかに良好であり、本願発明者等の検証によれば、セラミックスボールを用いたボールネジ機構は、1千万回転程度は無給油で支障なく(信頼性を損なうことなく)回転が可能であることが確認されている。したがって、本実施形態の射出成形機のボールネジ機構は、回転頻度が高い箇所に用いられるボールネジ機構であっても、1千万ショット程度のショット数の成形運転は無給油で支障なく行えるものとなっている。よって、クリーン性に優れると共に、給油レスで済むので、ランニングコストも抑えられる。
【0016】
なお、上記のセラミックスボールは、鋼球に較べて、質量が半分以下で単位衝撃エネルギーが大幅に小さく、したがって、高速回転の際、循環部への衝突エネルギーが小さく、損傷の大幅な低減が図れ、また、質量が軽いので衝突音も小さくなる(騒音も小さくなる)。また、セラミックスボールの線膨張係数は、鋼球のそれに較べると1/4以下であるので、熱変形が少なく、熱的損傷の虞が殆どなく、かつ、発熱の低減にも繋がる。また、セラミックスボールの縦弾性係数は、鋼球のそれに較べると約1.5倍であるので、(つまり、許容圧縮荷重が鋼球のそれと比較すると約1.5倍であるので)、鋼球を用いたボールネジ機構よりもDN値を大幅に向上させることができ(許容回転数を大幅に高めることができ)、したがって、鋼球を用いたボールネジ機構よりも大幅な高速回転が可能となり、運転の可及的な高速化を図ることができる。また、許容圧縮荷重が鋼球の約1.5倍であるため(負荷に対する剛性が鋼球のそれより約50%アップしているので)、ボールネジ径を小さくしてもメカ信頼性を保つことが保証されるので、ボールネジ径を小さくすることができる。したがって、回転円柱体のGD(慣性)は径の4乗に比例することから、ボールネジ径を小さくすることで、ネジ軸のGD(慣性)も大幅に小さくできる。さらに、ボールネジ径を小さくすることで、ボールネジ機構の回転部であるネジ軸を保持するベアリングの回転部分の径も小さくできるので、全体の慣性を大幅に小さくすることも可能となっている。
【0017】
また、図1に示す型開閉系メカニズム3において、21は、メインフレーム部材1上に適宜のベース部材を介して固定され、図示せぬ固定側金型を搭載した固定ダイプレート、22は、メインフレーム部材1上に適宜のベース部材を介して固定されたレール部材、23は、レール部材22に摺動可能に介装された直動ガイド24上に固定され、成形運転時には固定位置を維持されるテールストック、25は、固定ダイプレート21とテールストック23にその両端をそれぞれ固定された複数本のタイバー、26は、レール部材22に摺動可能に介装された直動ガイド27上に固定され、タイバー25に挿通・案内されて固定ダイプレート21とテールストック23との間で前後進可能であると共に、図示せぬ可動側金型を搭載した可動ダイプレート、28は、テールストック23に搭載された型締め用サーボモータ(型開閉用サーボモータ)、29は、型締め用サーボモータ28の回転力でその原動部が回転駆動されることで、可動ダイプレート26を前後進駆動するクランク機構である。
【0018】
上記のクランク機構29は型締め機構として機能するもので、型締め用サーボモータ28の回転を減速回転伝達系を介して伝達されて、型閉じ過程の後期以降には可動ダイプレート26を固定ダイプレート21側に前進させる力を拡大し、型締め状態時には、30〜50トン程度の型締め力を発現可能となっている。
【0019】
以下、上記のクランク機構29の詳細を説明する。図2は、クランク機構29とそれに回転を伝達する減速回転伝達系などを示す、一部を割愛した簡略した要部断側面図であり、図3は、クランク機構29へ回転を伝達する減速回転伝達系などを示す要部正面図である。
【0020】
図2、図3において、23aは、テールストック23と一体の1対の支持プレート部であり、図2おいては、テールストック23は左右で分離されて描かれているが、実際には、テールストック23は全体が一体に連なった構造物となっている。31は、テールストック23に、固形潤滑剤入りの転がり軸受32を介して回転可能に保持された1対の回転軸で、対をなす回転軸31はその回転中心が同一線上にあるように配置されている。各回転軸31の一端側には、それぞれ第1アーム33の一端側が固定されていて、この1対の第1アーム33の他端側には、この他端側同士を一体に結合する連結軸34が固定されている。この連結軸34の中間部には、第2アーム35の一端側が固形潤滑剤入りの転がり軸受32を介して回転可能に保持されていて、第2アーム35の他端側は、可動ダイプレート26の膨出部26aに固形潤滑剤入りの転がり軸受32を介して回転可能に保持された回転軸36に固定されている。そして、対をなす第1アーム33と単一の第2アーム35とそれらの回転軸支部とにより、クランク機構29が構成されており、クランク機構29の各回転軸支部(4つの回転軸支部)には、全て固形潤滑剤入りの転がり軸受32が用いられている。なお、この固形潤滑剤入りの転がり軸受32の詳細については後述する。
【0021】
また、図2、図3において、37は、テールストック23に搭載された前記した型締め用サーボモータ28の出力軸に固定された小径の駆動プーリである。38は、テールストック23に軸受39を介して回転可能に保持された回転軸で、この回転軸38には駆動プーリ37よりも大径の第1中間プーリ40が固定されていて、この第1中間プーリ40と駆動プーリ37にはタイミングベルト41が掛け回されている。42は、回転軸38の両端にそれぞれ固定された、第1中間プーリ40よりも小径の対をなす第2中間プーリ、43は、上記の対をなす回転軸31の他端側にそれぞれ固定された大径の被動プーリで、対応するもの同士の第2中間プーリ42と被動プーリ43には、タイミングベルト44がそれぞれ掛け回されている。そして、駆動プーリ37、タイミングベルト41、第1中間プーリ40、回転軸38、第2中間プーリ42、タイミングベルト44、被動プーリ43によって、減速回転伝達系が構成されている。
【0022】
上記した減速回転伝達系およびクランク機構29をもつ型開閉系メカニズム3において、型閉じ・型締め工程時には、型締め用サーボモータ28が所定方向に回転駆動されて、型締め用サーボモータ28の回転は、駆動プーリ37、タイミングベルト41を介して第1中間プーリ40に伝達され、さらに、第1中間プーリ40の回転は、回転軸38、第2中間プーリ42、タイミングベルト44を介して被動プーリ43に伝達されて、これにより、対をなす回転軸31(クランク機構29の原動軸である対をなす回転軸31)が同時に回転駆動される。対をなす回転軸31が回転駆動されると、対をなす第1アーム33が、回転軸31を回転中心として同時に所定方向に回転駆動され、これに伴って、第2アーム35が所定方向に連携追従動作して、この第2アーム35の動作で、可動ダイプレート26が固定ダイプレート21に向かう方向に前進駆動されて、やがて金型タッチが行われる。金型タッチ後も、型締め用サーボモータ28は所定量だけ同方向に回転駆動され、クランク機構29がトグル機構として機能することで、拡大された力が金型に付加され、所定の型締め力が発生した時点で、型締め用サーボモータ28の回転は停止されて、型締め完了状態となる。また、型開き工程時には、型締め用サーボモータ28が先とは逆方向に回転駆動され、型締め用サーボモータ28の回転は、同様の減速回転伝達系を介して、対をなす回転軸31に伝達され、これにより、クランク機構29が先とは逆方向に駆動されて、可動ダイプレート26が固定ダイプレート21から離間する方向に後退駆動される。
【0023】
本実施形態では、型締め用サーボモータ28の回転は、駆動プーリ37、タイミングベルト41、第1中間プーリ40からなる1段目の減速系でまず減速され、第2中間プーリ42、タイミングベルト44、被動プーリ43からなる2段目の減速系でさらに減速され、このような2段の減速によって、型締め用サーボモータ28の回転を大きく減速させることが可能なようになっている。したがって、1段の減速系に較べると、その回転数をさらに1/3〜1/4程度に減速することが容易に可能となっており、これにより、型締め用サーボモータ28として、その価格が低回転高トルクモータよりもはるかに安価である高回転低トルクモータを用いることを可能としている。
【0024】
また、本実施形態では、対をなす回転軸31および対をなす第1アーム33を、それぞれ減速回転伝達系を介して型締め用サーボモータ28により同時に直接回転駆動する、ツイン駆動方式のクランク機構の駆動形態を採っている。このため、対をなす回転軸31の一方のみを回転駆動し、一方の第1アーム33から連結軸34を介して他方の第1アーム33を回転駆動する、片側駆動方式のクランク機構に較べると、第2アーム35への力の伝達が、2つの力の伝達経路から均等に行われるので、回転軸支部に偏摩耗やガタなどが発生することがなくなり、信頼性の高いクランク動作を行うことを保証できるようになっている。
【0025】
次に、クランク機構29の各回転軸支部(4つの回転軸支部)に用いている固形潤滑剤入りの転がり軸受32の構成について説明する。図4は、本実施形態で用いている固形潤滑剤入りの転がり軸受32の断面図である。
【0026】
図4に示すように固形潤滑剤入りの転がり軸受32は、外輪51と、複数のニードルローラ(針状ころ)52と、固形潤滑剤53とを、具備したものとなっており、外輪51の内周面側に均一厚みで被着された固形潤滑剤53に埋め込まれる形で、複数のニードルローラ52が回転可能なように配設されている。各ニードルローラ52は、その一部のみを固形潤滑剤53から露呈されており、各ニードルローラ52の露出部に接するように、前記した回転軸31または連結軸34または回転軸36が、固形潤滑剤入りの転がり軸受32に嵌め込まれている。固形潤滑剤53は、微粒子の高分子ポリオレフィン樹脂と潤滑油(グリース)を混合したものを熱処理して固形化してものからなっており、回転する部材の回転に伴ってニードルローラ52が回転することにより、潤滑油が適量だけ(すなわち、円滑回転を保証しつつ、油漏れがないように)長期にわたって浸み出す構造となっている。したがって、クランク機構29の各回転軸支部に固形潤滑剤入りの転がり軸受32を用いることで、非常に長期にわたって(非常に長時間の連続運転下においても)、無給油で回転運動を安定して支承できるようになっている。また、クリーン性に優れると共に、給油レスで済むので、ランニングコストも抑えられるようになっている。
【0027】
以上のように本実施形態の射出成形機では、ボールネジ機構20等の各ボールネジ機構のボールにセラミックスボールを用い、また、クランク機構29における回転軸支部に固形潤滑剤入りの転がり軸受32を用いているので、長期にわたって無給油で支障なく運転できる、油汚れの虞が殆どないクリーン性に優れたマシンとすることができ、クリーンルーム内のように清浄な環境が要求される空間内において使用するのに、好適なマシンとすることができる。また、給油が要らないので、メンテナンス性にも優れたものとなり、ランニングコストも抑えることができる。なお、クランク機構29よりなる型締め機構は、その構造上、最大型締め力が30〜50トン程度と比較的に小さいので、転動子をもつ転がり軸受け(固形潤滑剤入りの転がり軸受32)であっても、その機械的強度には全く不安のないものとすることができる。
【0028】
なお、以上の実施形態では、固形潤滑剤入りの転がり軸受32を、クランク機構29における回転軸支部に用いているが、固形潤滑剤入りの転がり軸受32に代替して、ボールを転動子とし、潤滑油の漏れがないように転動子封入部が完全密閉された構造の、潤滑油封入タイプ転がり軸受を用いてもよく、この潤滑油封入タイプ転がり軸受は、封入された潤滑油の漏れがないことは言うまでもないが、潤滑油の消去までの期間が長く、非常に長期にわたって(非常に長時間の連続運転下においても)、無給油で回転運動を安定して支承できる。
【0029】
なおまた、以上の実施形態では、型締め機構にクランク機構29を用いているが、型締め機構にトグルリンク機構(例えば、ダブルトグルリンク機構やトリプルトグルリンク機構)を用いて、このトグル機構における回転軸支部に、固形潤滑剤入りの転がり軸受または潤滑油封入タイプ転がり軸受を用い、トグルリンク機構の力の入力端であるクロスヘッドを直線駆動するボールネジ機構(型締め用サーボモータの回転を直線運動に変換するボールネジ機構)のボールにセラミックスボールを用いた、構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機の、簡略化し且つ一部を切断した正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、クランク機構とそれに回転を伝達する減速回転伝達系などを示す、一部を割愛した簡略した要部断側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、クランク機構へ回転を伝達する減速回転伝達系などを示す要部正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る射出成形機において、クランク機構の各回転軸支部に用いている固形潤滑剤入りの転がり軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 メインフレーム部材
2 射出系メカニズム
3 型開閉系メカニズム
4 レール部材
5 ヘッドストック
6 直動ガイド
7 保持ブロック
8 直動ガイド
9 ロードセルブロック
10 直動ブロック
11 直動ガイド
12 加熱シリンダ
13 ノズル
14 スクリュ
15 回転体
16 被動プーリ
17 射出用サーボモータ
18 駆動プーリ
19 被動プーリ
20 ボールネジ機構
20a ボールネジ機構のネジ軸
20b ボールネジ機構のナット体
21 固定ダイプレート
22 レール部材
23 テールストック
23a テールストックの支持プレート部
24 直動ガイド
25 タイバー
26 可動ダイプレート
26a 膨出部
27 直動ガイド
28 型締め用サーボモータ(型開閉用サーボモータ)
29 クランク機構
31 第1回転軸
32 固形潤滑剤入りの転がり軸受
33 第1アーム
34 連結軸
35 第2アーム
36 第2回転軸
37 駆動プーリ
38 回転軸
39 軸受
40 第1中間プーリ
41 タイミングベルト
42 第2中間プーリ
43 被動プーリ
44 タイミングベルト
51 外輪
52 ニードルローラ(針状ころ)
53 固形潤滑剤
【出願人】 【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
【出願日】 平成18年9月5日(2006.9.5)
【代理人】 【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−62445(P2008−62445A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−240692(P2006−240692)