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【発明の名称】 インサート成形金型、及びインサート成形品
【発明者】 【氏名】宇野 洋介

【氏名】中地 浩幸

【要約】 【課題】折曲部間の離間距離の調整が容易であるインサート成形金型を得る。

【構成】この発明に係るインサート成形金型は、可動側金型1と、この第1の可動側金型1と協同して第1のインサート部品4a及び第2のインサート部品4bを挟んで型締めする固定側金型2と、固定側金型2に設けられ先端部が第1のインサート部品4a及び第2のインサート部品4b側に突出したくさびブロック3とを備え、可動側金型1には、第1及び第2の折曲部4a1,4b1を離間した状態で受け入れる受入れキャビティ6が形成され、型締め時に、くさびブロック3の先端部3aが第1のインサート部品4a及び第2のインサート部品4bを押圧塑性変形して、第1及び第2の折曲部4a1,4b1の離間距離を調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインサートされた、端部にそれぞれ折曲された第1及び第2の折曲部を有し塑性変形可能な第1のインサート部品及び第2のインサート部品と、内部に注入された溶融樹脂とを一体化してインサート成形品を成形するインサート成形金型において、
第1の金型と、
この第1の金型と協同して前記第1のインサート部品及び前記第2のインサート部品を挟んで型締めする第2の金型と、
前記1の金型または前記第2の金型に設けられ先端部が第1のインサート部品及び前記第2のインサート部品側に突出したくさびブロックとを備え、
前記第1の金型または前記第2の金型には、前記第1の折曲部及び前記第2の折曲部を離間した状態で受け入れる受入れキャビティが形成され、
型締め時に、前記くさびブロックの先端部が前記第1のインサート部品及び前記第2のインサート部品の少なくとも一方を押圧塑性変形して、前記第1の折曲部及び前記第2の折曲部の離間距離を調整することを特徴とするインサート成形金型。
【請求項2】
前記くさびブロックの前記先端部の突出距離により、前記第1の折曲部及び前記第2の折曲部の離間距離が調整されることを特徴とするインサート成形金型。
【請求項3】
前記第1のインサート部品及び前記第2のインサート部品は、帯状であり、前記くさびブロックの前記先端部により、全幅に渡って押圧変形されることを特徴とする請求項1または2に記載のインサート成形金型。
【請求項4】
前記第1の金型は、前記受入れキャビティが形成された可動側金型であり、前記第2の金型は、前記くさびブロックが一対取り付けられた固定側金型であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインサート成形金型。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のインサート成形金型を使用して成形された前記インサート成形品であって、
前記第1のインサート部品及び前記第2のインサート部品の少なくとも一方には、前記くさびブロックを用いて前記第1の折曲部及び前記第2の折曲部の離間距離を調整した際に生じる溝を有していることを特徴とするインサート成形品。
【請求項6】
端部に板厚方向に折曲されたL字状の折曲部を有した複数の帯状のインサート部品を、それぞれの端部を露出しかつ折曲部同士を対向して成形樹脂と一体化して構成されたインサート成形品であって、
前記端部は、前記折曲部の折曲方向と反対側の面に前記インサート部品の板厚方向に窪んだ溝を有し、この溝を起点として前記折曲部同士の離間距離が接近する方向に塑性変形されることを特徴とするインサート成形品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、端部に折曲部を有するインサート部品と樹脂とを一体化して成形するインサート成形金型、及びインサート成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インサート部品をインサート成形金型内に配設し、溶融樹脂をインサート成形金型のキャビティ内に充填して、インサート部品と成形樹脂とを一体化させるインサート成形金型において、型締め圧力によりインサート部品の端部を折り曲げ、折曲部を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−163297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成のインサート成形金型を用いて、例えば端部に板厚方向に折曲されたL字状の折曲部を有した一対の帯状のインサート部品の端部がそれぞれ露出し、かつ互いに対向した折曲部同士が接触して成形樹脂と一体化されたインサート成形品を製造しようとした場合には、型締め圧力時に互いに対向、接触した折曲部を形成しなければならず、インサート成形金型の構造上困難であった。
【0005】
そこで、端部に折曲部を有するインサート部品を予め形成し、このインサート部品を対向した折曲部同士を接触させた状態でインサート成形金型内に配設し、この状態でインサート成形金型内部に溶融樹脂を注入して、インサート部品と成形樹脂とが一体化されたインサート成形品を製造することが考えられる。
しかしなら、このものの場合、インサート部品の寸法のばらつきにより、次のような問題点が生じる。即ち、
インサート部品の寸法が規定よりも短い場合には、対向した折曲部間に許容できない隙間ができ、そのためインサート部品同士の接触不良が発生し、その後の工程である折曲部同士の溶接等による接続工程においても、溶接不良が発生する。
また、インサート部品の寸法が規定よりも長い場合には、インサート部品のインサート成形金型への挿入が不可能になり、インサート部品の折曲部間に抵抗力が発生した状態でインサート成形金型内に挿入しなければならず、インサート部品の挿入作業性が低下する。
さらに、インサート部品の折曲部における曲げ精度のばらつきによっても、上述した内容と同じ問題点が発生する。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消することを課題とするものであって、インサート部品の内部への挿入作業性が向上し、またインサート部品の折曲部間の離間距離の調整が容易であるインサート成形金型、及びインサート成形品を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るインサート成形金型は、第1の金型と、この第1の金型と協同して第1のインサート部品及び第2のインサート部品を挟んで型締めする第2の金型と、前記1の金型または前記第2の金型に設けられ先端部が前記第1のインサート部品及び前記第2のインサート部品側に突出したくさびブロックとを備え、前記第1の金型または前記第2の金型には、前記第1の折曲部及び前記第2の折曲部を離間した状態で受け入れる受入れキャビティが形成され、型締め時に前記くさびブロックの先端部が前記第1のインサート部品及び前記第2のインサート部品の少なくとも一方を押圧塑性変形して、第1の折曲部及び第2の折曲部の離間距離を調整するようになっている。
【0008】
また、この発明に係るインサート成形品は、上記インサート成形金型を使用して成形されたインサート成形品であって、第1のインサート部品及び第2のインサート部品の少なくとも一方には、くさびブロックを用いて第1の折曲部及び第2の折曲部の離間距離を調整した際に生じる溝を有している。
【0009】
また、この発明に係るインサート成形品は、端部に板厚方向に折曲されたL字状の折曲部を有した複数の帯状のインサート部品を、それぞれの端部を露出しかつ折曲部同士を対向して樹脂と一体化して構成されたインサート成形品であって、前記端部は、前記折曲部の折曲方向と反対側の面に前記インサート部品の板厚方向に窪んだ溝を有し、この溝を起点として前記折曲部同士の離間距離が接近する方向に塑性変形される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、インサート部品のインサート成形金型への挿入作業性が向上し、またインサート部品の折曲部間の離間距離の調整が容易である効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1のインサート成形金型について図に基づいて説明するが、各図において同一または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
図1はこの発明の実施の形態によるインサート成形金型が型開き状態の時の縦断面図である。
このインサート成形金型は、第1の金型である可動側金型1と、第2の金型である固定側金型2と、固定側金型2に設けられ先端部3aが可動側金型1側に突出したくさびブロック3とを備えている。
このインサート成形金型内には、例えば板厚が0.6mm、幅が3mmの帯状の導電金属板からなる第1のインサート部品4a及び第2のインサート部品4bが配設され、溶融樹脂が樹脂キャビティ5a,5b内に充填されることで、第1及び第2のインサート部品4a,4bが、成形樹脂7によって一体化され、図4に示すインサート成形品が成形される。
【0012】
可動側金型1には、端部が90°可動側金型1側にL字状に折曲された第1のインサート部品4aの折曲部4a1(例えば長さ5mm)と、端部が90°可動側金型1側にL字状に折曲された第2のインサート部品4bの折曲部4b1(例えば長さ5mm)とを、例えば折曲部4a1,4a2間に0.5mm程度離間させて受け入れる受入れキャビティ6が形成されている。この空間である受入れキャビティ6には、溶融樹脂は充填されない。
また、固定側金型2の一対のくさびブロック3の間には、折曲部4a1及び折曲部4b1の塑性変形を容易にするために、インサート部品4a,4bの塑性変形時にインサート部品4a,4bが固定側金型2と干渉しないように、固定側金型2に逃し部2aが形成されている。
【0013】
一対の矩形形状のくさびブロック3は、それぞれ受入れキャビティ6から同一距離離れており、またその幅(奥行)寸法は、第1のインサート部品4a及び第2のインサート部品4bの幅寸法と同等、またはそれ以上に構成されている。
即ち、例えば、くさびブロック3における幅寸法は5mmであり、その先端部3aの厚さ寸法は3mmである。
なお、この実施の形態では、端部が90°にL字状に折曲されたインサート部品4a,4bについて説明したが、勿論、角度は90°に限られるものではない。
また、くさびブロック3の先端部3aの厚さ寸法3mm、その先端R0.5mmについても、当然この数値に限定されるものではない。
【0014】
この実施の形態によるインサート成形金型では、先ず図2に示すように、インサート成形金型の型開き状態で第1及び第2のインサート部品4a,4bを可動側金型1にセットする。このときには、第1のインサート部品4aの折曲部4a1及び第2のインサート部品4bの折曲部4b1は、0.5mmの隙間を介して対向した状態で受入れキャビティ6内に収納される。
次に、図3に示すように、インサート成形金型の型締めを行う。このときには、くさびブロック3の先端部3aが第1のインサート部品4a及び第2のインサート部品4bを、その板厚方向に反折曲部4a1,4b1側の面から押圧する。その結果、第1のインサート部品4aの折曲部4a1は反時計方向に塑性変形し、また第2のインサート部品4bの折曲部4b1は時計方向に塑性変形し、折曲部4a1と折曲部4b1とは互いの隙間が減少し、両者が接触する。
【0015】
その後、インサート成形金型内の樹脂キャビティ5a,5b内に溶融樹脂を注入することで、第1及び第2のインサート部品4a,4bと成形樹脂7とが一体化されて、インサート成形品が成形される。このインサート成形品は、インサート成形金型の型開きした後に取り出される。
【0016】
図4に示す、この取り出されたインサート成形品は、樹脂から露出した帯状の端部の先端に板厚方向に折曲された略L字状の折曲部4a1,4b1を有し、この折曲部4a1,4b1同士が互いに対向し先端部が接触している。また、折曲部4a1,4b1の折曲方向と反対側の面には、くさびブロック3により生じたインサート部品4a,4bの板厚方向に窪んだ溝8(深さ0.2mm程度)がインサート部品4a,4bの幅方向全域に渡って形成されている。
この溝8は、折曲部4a1,4b1同士が離間距離を接近する方向に塑性変形する起点をなしている。
このインサート成形品は、例えば、電子部品が装着された基板等を収納する電子制御装置のケース等に使用され、折曲部4a1,4b1間が溶接等で接合され、インサート部品4a,4bは電流通路をなすように接続される。
【0017】
上記構成のインサート成形金型によれば、型締め時にくさびブロック3がインサート部品4a,4bを押圧塑性変形することで、折曲部4a1,4b1同士を容易に接触させることができる。従って、インサート部品4a,4bをインサート成形金型にインサートする時には、折曲部4a1,4b1同士を接触させる必要はなく、インサート部品4a,4bをインサート成形金型に挿入する作業性は向上するとともに、例えば後工程の折曲部4a1,4b1同士の溶接作業も円滑に行うことができる。
【0018】
また、くさびブロック3は、樹脂キャビティ5a,5bと受入れキャビティ6との間に設けられ、その先端部3aが第1及び第2のインサート部品4a,4bを押圧するために、第1及び第2のインサート部品4a,4bはインサート成形金型内で確実に保持され、成形時の溶融樹脂圧力によるインサート部品4a,4bの位置ずれの防止が強化される効果もある。
【0019】
また、くさびブロック3の先端部3aにより、第1及び第2のインサート部品4a,4bの全幅に渡って押圧変形されるので、折曲部4a1,4b1の塑性変形は、変形量が安定し、変形に要する押圧力も低減できる。
また、一対の矩形形状のくさびブロック3の位置は、それぞれ受入れキャビティ6から同一距離離れているので、第1のインサート部品4aの折曲部4a1の回動変形量と、第2のインサート部品4bの折曲部4b1の回動変形量とは同等であり、折曲部4a1及び折曲部4b1の変形量調整、端面接触面積調整が容易である。
また、インサート部品4a,4bのインサート成形金型への挿入作業性が向上するとともに、折曲部4a1,4b1間を確実に接触させることができるインサート成形品を得ることができ、その後の溶接工程等で折曲部4a1,4b1間を容易に接合することができる。
【0020】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態によるインサート成形金型が型締め状態の時の縦断面図である。
この実施の形態では、実施の形態1のインサート成形金型と比較してくさびブロック3の先端部3bが固定側金型2から突出する寸法(突出距離)が長い。その他の構成は実施の形態1と同じである。
このように、先端部3bの突出距離を変えることで、折曲部4a1,4b1の回動変形量を変化させ、両接触面の接触圧力の調整等を容易に行うことができる。
なお、折曲部4a1,4b1は、溝8が塑性変形の基点であり、この基点である溝8の位置を変えることでも、回動変形量を変化させ、両接触面の接触圧力の調整等を行うことができる。
【0021】
なお、上記各実施の形態では、可動側金型1に受入れキャビティ6を形成し、固定側金型2にくさびブロック3を一対設けたが、勿論このものに限定されるものではなく、固定側金型2に受入れキャビティ6を形成し、可動側金型1にくさびブロック3を一対設けてもよい。
但し、可動側金型1に受入れキャビティを設け、固定側金型2にくさびブロック3を設けた場合の方が、可動側金型1にインサート部品4a,4bを挿入した時に、くさびブロック3の上記突出距離分だけ可動側金型1の上面からインサート部品4a,4bが浮き上がることがなく、インサート部品4a,4bは安定して保持される利点がある。
また、インサート部品4a,4bは、下側に配置された、可動側金型1または固定側金型1に挿入した後、インサート成形金型の型締めを行う方が、作業性が向上する。
【0022】
また、くさびブロック3は必ずしも一対設ける必要性はなく、第1及び第2のインサート部品4a,4bのうち一方の折曲部4a1,4b1のみをくさびブロック3により塑性変形させて他方の折曲部4a1,4b1に接近させたものでもよい。
また、この実施の形態では、第1及び第2のインサート部品4a,4bと成形樹脂7とが一体のインサート成形品について説明したが、この発明は、第1及び第2のインサート部品4a,4bを2組以上有するインサート成形品にも適用することができる。
さらに、3個以上の互いに対向する折曲部4a1,4b1をくさびブロック3により塑性変形させて接触させるインサート成形品にも適用することができる。
また、この発明は、折曲部4a1,4b1を当接させ接触させる場合に限らず、折曲部が所定の空隙を介して対向するように、くさびブロック3により、その隙間調整をおこなうインサート成形にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1によるインサート成形金型が型開き状態の時の縦断面図である。
【図2】図1の可動側金型にインサート部品がセットされた時の縦断面図である。
【図3】図1のインサート成形金型が型締めの時の縦断面図である。
【図4】図1のインサート成形金型により成形されたインサート成形品の斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるインサート成形金型が型締めの時の縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 可動側金型、2 固定側金型、3 くさびブロック、4a 第1のインサート部品、4b 第2のインサート部品、5a,5b 樹脂キャビティ、6 受入れキャビティ、7 成形樹脂、8 溝。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成18年8月28日(2006.8.28)
【代理人】 【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治

【識別番号】100084010
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 秀利

【識別番号】100094695
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 憲七

【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順


【公開番号】 特開2008−49642(P2008−49642A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−230209(P2006−230209)