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【発明の名称】 冷却装置を備えた繊維強化プラスチックの積層成形装置
【発明者】 【氏名】林 宣也

【氏名】水野 宏

【氏名】長谷川 剛一

【氏名】太田 和雄

【要約】 【課題】繊維強化プラスチックテープの冷却により貯蔵弾性率を上げてタック性を無くすことにより、装置との接触部における粘着を回避して繊維強化プラスチックテープの搬送を円滑に行うとともに、貼り合わせ部においては貯蔵弾性率を下げタック性を持たせて2つの繊維強化プラスチックテープを強固に密着し得る自動積層成形装置を提供する。

【構成】繊維強化プラスチックテープを、積層ヘッドによって連続的に型の表面に供給し、該テープの貼り合わせ部にエネルギー線を照射して該貼り合わせ部を硬化、接着させることにより前記テープを積層成形する積層成形装置において、前記繊維強化プラスチックテープが収納された冷却室が内部に形成された材料ボックスを備え、該冷却室内で冷却された繊維強化プラスチックテープを繰り出して積層ヘッドを通して貼り合わせ部に搬送するように構成されたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックテープを、加圧ローラを備えた積層ヘッドによって連続的に型の表面に供給し、該繊維強化プラスチックテープの貼り合わせ部にエネルギー線照射装置によりエネルギー線を照射して該貼り合わせ部を硬化、接着させることにより前記テープを積層成形する繊維強化プラスチックの積層成形装置において、前記繊維強化プラスチックテープが収納された冷却室が内部に形成された材料ボックスを備え、該冷却室内で冷却された前記繊維強化プラスチックテープを繰り出して前記積層ヘッドを通して前記貼り合わせ部に搬送するように構成されたことを特徴とする繊維強化プラスチックの積層成形装置。
【請求項2】
前記冷却室の温度を、前記繊維強化プラスチックテープが前記積層ヘッドを通過するときの該繊維強化プラスチックテープの弾性率が前記貼り合わせ部の弾性率よりも大きい一定の高弾性率になるように制御する温度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチックの積層成形装置。
【請求項3】
前記温度制御手段は、前記材料ボックスの冷却室内に冷却空気を送給する冷却装置と、前記冷却室内温度又は前記積層ヘッド温度のいずれか一方又は双方を検出する温度検出手段と、該温度検出手段からの温度検出値に基づき前記冷却室内の温度を前記一定の高弾性率になるような目標温度に保持する温度コントローラとを備えたことを特徴とする請求項2に記載の繊維強化プラスチックの積層成形装置。
【請求項4】
前記繊維強化プラスチックテープの貼り合わせ部の温度を検出する貼り合わせ部温度検出手段を備え、前記温度コントローラは、前記冷却室内温度又は前記積層ヘッド温度のいずれか一方又は双方を検出する温度検出手段からの温度検出値、及び前記貼り合わせ部温度検出手段からの温度検出値に基づき、前記冷却室内の温度を、前記積層ヘッドを通過するときの該繊維強化プラスチックテープの弾性率が前記一定の高弾性率になりかつ前記貼り合わせ部の弾性率が前記高弾性率よりも小さい一定の低弾性率になるように制御することを特徴とする請求項3に記載の繊維強化プラスチックの積層成形装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチックテープの積層成形装置であって、該繊維強化プラスチックテープのプリプレグ材料の冷却装置を備えた積層成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機やロケット等に使用されるカーボンファイバ等を使った繊維強化プラスチック(CFRP)製品は、手作業で積層成形するのが一般的であるが、手作業による成形では製造コストが嵩むので、製造コストの低減、大型製品の高能率成形等の見地から、特許文献1(特開2004−66593号公報)にて提供されているようなファイバプレイスメント(Fiber Placement)法と呼ばれる自動積層成形方法および装置が近年開発されている。
【0003】
かかる自動積層成形装置では、繊維強化プラスチックテープをガスヒータで加熱しながら加圧ローラによって押し付けて位置を制御し、型の表面に張り付けて行って複雑な形状の成形品をつくって行く。前記テープの張り付けが終ると、オートクレーブで加圧しながらガスヒータにより加熱し、所望の繊維強化プラスチック製品を得る。
【特許文献1】特開2004−66593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえば前記特許文献1(特開2004−66593号公報)にて提供されているような、ファイバプレイスメント方法を実施する自動積層成形装置(AFP装置)では、繊維強化プラスチックテープの型への貼り合わせに加熱が必要であり、貼り合わせ後の硬化には型全体をも含む加熱が必須であり、このため加工プロセスに時間を要する上に、ハンドリング性に欠けていた。したがって、かかる従来技術にあっては、製造工程上及びコスト上の負担を軽減することが望まれていた。
【0005】
そこで、本発明者らは、前記のような問題点を解消し、加熱操作を要せず、製造上及びコスト上の負担が小さく、かつ硬化性状に優れた積層成形体が得られるようにした積層成形方法及び積層成形装置を提供する技術として、特願2005−216691号の発明を提供した。
【0006】
かかる発明においては、繊維強化プラスチックテープを、加圧ローラを備えた可動積層ヘッドによって連続的に型の表面に供給し、前記テープを積層成形するファイバプレイスメント法による積層成形方法において、前記繊維強化プラスチックテープのマトリックス樹脂をエネルギー線硬化樹脂とし、上記可動積層ヘッドと連動するエネルギー線照射装置(光源としてLEDを用いる)によりエネルギー線を照射し、エネルギー線を照射される部位の任意の照度への可変に要する時間が1秒以内であり、上記エネルギー線硬化樹脂を硬化させながら上記テープを積層成形するようにしたことを特徴としている。
ここで、前記貼り合わせ部位における前記エネルギー線の照射幅が、上記繊維強化プラスチックテープの幅±10%以内であるように制御し、前記エネルギー線の光量を、エネルギー線の電流値によって制御し、前記貼り合わせ部位における前記エネルギー線の光量を前記テープの貼り合わせ操作に合わせて制御し、前記エネルギー線の光量を、エネルギー線の照射時間によって制御し、前記エネルギー線の光量をエネルギー線の照射スリット幅によって制御することが好適である。
【0007】
また、かかる発明においては、繊維強化プラスチックテープを連続的に型の表面に供給するための可動積層ヘッドを備え、該可動積層ヘッドが前記テープを積層成形するための加圧ローラを備え、ファイバプレイスメント法による積層成形を実施する積層成形装置において、前記可動積層ヘッドと連動するエネルギー線照射装置(光源としてLEDを備える)を備え、該エネルギー線照射装置によってエネルギー線を照射することが可能であり、エネルギー線を照射される部位の任意の照度への可変に要する時間が1秒以内(好ましくは0.1秒以内)であり、前記繊維強化プラスチックテープのマトリックス樹脂を構成するエネルギー線硬化樹脂を硬化させながら積層成形するようにしたことを特徴としている。
かかる発明において、前記貼り合わせ部位における前記エネルギー線の光量を前記テープの貼り合わせ操作に合わせて制御可能とし、前記エネルギー線の光量をエネルギー線の電流値によって制御し、前記エネルギー線の光量をエネルギー線の照射時間によって制御し、そして前記エネルギー線の光量を、該エネルギー線の照射スリット幅によって制御することが好適である。
【0008】
そしてかかる発明によれば、加熱操作を要せず、製造上及びコスト上の負担が小さく、かつ硬化性状に優れた積層成形体が得られるようにした積層成形方法及び積層成形装置が提供される。
【0009】
しかしながら、かかる発明においては、前記のような顕著な効果を奏する一方で、さらに次のような解決すべき課題を抱えている。
すなわち、かかる発明においては、型の表面に沿って配置された繊維強化プラスチックテープに、ボビン内にリールに巻回された状態で収納されている繊維強化プラスチックテープを該ボビン内から繰り出して、繰り出しロールや複数の案内ロールを通してから積層ヘッドに導き、該積層ヘッドにおいて、前記2つの繊維強化プラスチックテープを、加圧ローラを用いて貼り合わせ、紫外線のエネルギー線を照射して貼り合わせ部を硬化させることにより、繊維強化プラスチックテープを強固に密着させて行くようになっている。
【0010】
この場合、加圧ローラを用いての貼り合わせ時点では、繊維強化プラスチックテープの貯蔵弾性率を一定値よりも小さくしてタック性(粘度により左右されるべたつき度合い)を持たせることにより、2つの繊維強化プラスチックテープの密着度を上げている。しかし、前記繊維強化プラスチックテープの貯蔵弾性率を小さくしてタック性を持たせると不都合を生じる。すなわち、ボビン内から繰り出した繊維強化プラスチックテープを、該ボビンから積層ヘッドを通して貼り合わせるまでの過程で、該繊維強化プラスチックテープがタック性を持たせてあるため、ボビンから積層ヘッドを経て貼り合わせ部までの装置を通る際に、これら装置との接触部に粘着して、繊維強化プラスチックテープの搬送が円滑に行われ難いという問題が発生する。
しかしながら、かかる発明においては、積層ヘッド部で繊維強化プラスチックテープの冷却を行なうことが提案されているものの、繊維強化プラスチックテープのタック性のコントロールについては言及されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、繊維強化プラスチックテープの冷却により貯蔵弾性率を上げてタック性を無くすことにより、装置との接触部における粘着を回避して繊維強化プラスチックテープの搬送を円滑に行うとともに、貼り合わせ部においては貯蔵弾性率を下げタック性を持たせて2つの繊維強化プラスチックテープを強固に密着し得る自動積層成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1の発明は、繊維強化プラスチックテープを、加圧ローラを備えた積層ヘッドによって連続的に型の表面に供給し、該繊維強化プラスチックテープの貼り合わせ部にエネルギー線照射装置によりエネルギー線を照射して該貼り合わせ部を硬化、接着させることにより前記テープを積層成形する繊維強化プラスチックの積層成形装置において、前記繊維強化プラスチックテープが収納された冷却室が内部に形成された材料ボックスを備え、該冷却室内で冷却された前記繊維強化プラスチックテープを繰り出して前記積層ヘッドを通して前記貼り合わせ部に搬送するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
前記発明において、次のように構成するのが好ましい。
すなわち、前記冷却室の温度を、前記繊維強化プラスチックテープが前記積層ヘッドを通過するときの、該繊維強化プラスチックテープの弾性率が前記貼り合わせ部の弾性率よりも大きい一定の高弾性率になるように制御する温度制御手段を備えたことを特徴とする(請求項2)。
【0014】
そして、前記温度制御手段は、具体的には次のように構成する。
(1)前記温度制御手段は、前記材料ボックスの冷却室内に冷却空気を送給する冷却装置と、前記冷却室内温度又は前記積層ヘッド温度のいずれか一方又は双方を検出する温度検出手段と、該温度検出手段からの温度検出値に基づき前記冷却室内の温度を前記一定の高弾性率になるような目標温度に保持する温度コントローラとを備える(請求項3)。
【0015】
(2)前記繊維強化プラスチックテープの貼り合わせ部の温度を検出する貼り合わせ部温度検出手段を備えるとともに、前記温度コントローラは、前記冷却室内温度又は前記積層ヘッド温度のいずれか一方又は双方を検出する温度検出手段からの温度検出値、及び前記貼り合わせ部温度検出手段からの温度検出値に基づき、前記冷却室内の温度を、前記積層ヘッドを通過するときの該繊維強化プラスチックテープの弾性率が前記一定の高弾性率になりかつ前記貼り合わせ部の弾性率が前記高弾性率よりも小さい一定の低弾性率になるように制御する(請求項4)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷却室が内部に形成された材料ボックスを設けて、該冷却室にリールに巻回した繊維強化プラスチックテープを収納し、該冷却室内で冷却された繊維強化プラスチックテープを繰り出して積層ヘッドを通して前記貼り合わせ部に搬送するように構成し、好ましくは温度制御手段によって、前記冷却室の温度を、繊維強化プラスチックテープが積層ヘッドを通過するときの該繊維強化プラスチックテープの弾性率が、貼り合わせ部の弾性率よりも大きい一定の高弾性率になるように制御するように構成したので、前記材料ボックス内の繊維強化プラスチックテープを温度制御手段によって温度制御しながら冷却して、材料ボックスから繰り出されて積層ヘッドを通過するまでの繊維強化プラスチックテープの弾性率を貼り合わせ部の弾性率よりも大きい一定の高弾性率に常時保持することにより、該繊維強化プラスチックテープのタック性(粘度により左右されるべたつき度合い)を小さく保持できて、繊維強化プラスチックテープが前記材料ボックスから積層ヘッドを経て貼り合わせ部までの装置を通る際に、これら装置との接触部に粘着して円滑な搬送が阻害されるという問題の発生を防止できる。
一方で、前記繊維強化プラスチックテープが貼り合わせ部に到達したときには、型及びその周辺の温度状態が常温レベルになっているため、繊維強化プラスチックテープの温度が上昇することにより弾性率が低下し、該繊維強化プラスチックテープのタック性が回復することとなって、繊維強化プラスチックテープの密着度が上がり、2つの繊維強化プラスチックテープを強固に密着できる。
【0017】
したがって、本発明によれば、材料ボックス内の冷却室で温度制御しつつ繊維強化プラスチックテープを冷却することによって、該繊維強化プラスチックテープの弾性率を上げてタック性を無くすことにより、装置との接触部における粘着を回避して繊維強化プラスチックテープの搬送を円滑に行うことができるとともに、貼り合わせ部においては弾性率を下げタック性を持たせて2つの繊維強化プラスチックテープを強固に密着できる自動積層成形装置が得られる。
【0018】
また、前記温度制御手段を、温度コントローラにおいて冷却室内温度又は積層ヘッド温度の検出値に基づき、冷却室内の温度を、繊維強化プラスチックテープが積層ヘッドを通過するまでの弾性率を貼り合わせ部の弾性率よりも大きい高弾性率にするような温度に制御するように構成することにより(請求項3)、材料ボックスから積層ヘッドを通過するまでの繊維強化プラスチックテープの弾性率を、繊維強化プラスチックテープが前記材料ボックスから積層ヘッドを経て貼り合わせ部までの装置を通る際にこれら装置との接触部に粘着を回避可能な弾性率に常時安定して保持できる。
さらに、これに加えて、前記温度制御手段を、温度コントローラにおいて貼り合わせ部温度の検出値に基づき、冷却室内の温度を、積層ヘッドを通過するときの該繊維強化プラスチックテープの弾性率が前記のような一定の高弾性率になり、かつ貼り合わせ部の弾性率が前記高弾性率よりも小さい低弾性率になるように制御することにより(請求項4)、前記のような装置との接触部における粘着防止効果に加えて、貼り合わせ部においては弾性率を、タック性を持たせて強固に密着効果が得られる一定の低弾性率に常時安定して保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係る積層成形装置について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る冷却装置を備えた積層成形装置の要部構成図、図2は本発明が適用される紫外線LED(発光ダイオード)照射装置を備えたAFP(自動積層成形装置)システムの全体構成図である。
先ず図2に示すAFP(自動積層成形装置)において、118(118a,118b)は繊維強化プラスチックテープであり、該繊維強化プラスチックテープ118としては、CF(カーボンファイバー)を強化繊維材とし、これにマトリックス樹脂としてUV(紫外線)硬化樹脂を含浸させた素材(プリプレグ、トウプレグといわれるもの)を採用している。
【0021】
前記AFP(自動積層成形装置)システムは、制御用プロセッサ(コンピュータ)100、及び制御インターフェイス102を含む。制御用プロセッサ100は、制御インターフェイス102を介して、加圧ローラ104を備えた可動の積層ヘッド1及びエネルギー線照射装置106を制御することができるように構成されている。
さらに、前記エネルギー線照射装置106は、主な構成要素としてLED電源装置108と、LEDモジュール110を備え、紫外線LED(発光ダイオード)を光源として採用している。また、前記エネルギー線照射装置106は、少なくとも前記LEDモジュール110が積層ヘッド1と連動可能であるように構成されている。ここで連動するとは
、前記加圧ローラ104による繊維強化プラスチックテープ108の貼り合わせ操作に伴い、積層ヘッド1に引き連れて、前記LEDモジュール110が少なくとも移動して行くことをいう。
【0022】
そして、前記AFP(自動積層成形装置)システムには、さらに、速度センサ112及びUV照度センサ116が設けられている。前記UV照度センサ116は、繊維強化プラスチックテープ118aと118bとの貼り合わせ部位119の近傍に設置される。
前記加圧ローラ104を操作するための可動積層ヘッドの機械的構成は、従来のものを採用できるので、ここではその説明を省略する。
図示を省略するが、LEDモジュール110では、3つのユニットと、集光レンズとを遮光フェンスで支持している。そして前記各々のユニットは、正面から見て中央部分に発光素子から成る発光部を備えており、前記集光レンズは位置を前後に調整できるように構成されている。
【0023】
前記AFPシステムでは、従来の積層成形装置と同様に、可動の積層ヘッド1の加圧ローラ104によって、繊維強化プラスチックテープ118aを押し付けて位置を制御しながら、型の表面に貼り付けて行く。なお、図2では、繊維強化プラスチックテープ118aに118bを貼り付けるように示されているが、最初の繊維強化プラスチックテープ118aは型に貼り付けられ、その上に繊維強化プラスチックテープ118bを順次貼り付けて行く。
【0024】
このような貼り付け操作を実行する際、前記繊維強化プラスチックテープ118のマトリックス樹脂を構成するエネルギー線硬化樹脂を硬化させることにより、貼り付け操作を実行する。そして、その際、貼り付け部119にエネルギー線(紫外線)の照射を行ない、これによって、繊維強化プラスチックテープ118のうち、該貼り付け部119の側にあるエネルギー線硬化樹脂の層のみが硬化する。したがって、図2において、繊維強化プラスチックテープ118aの未硬化層(上面)と、繊維強化プラスチックテープ118bの未硬化層(下面)とが、ほぼ未硬化のまま一体化し、強力に接着することとなる。
【0025】
一方、前記LEDモジュール110によって照射される紫外線の、照射される部位の任意の照度への可変に要する時間は、好ましくは1秒以内である。
前記LED電源装置108の発光量は、制御インターフェイス102を経た制御用プロセッサ100からの、該LED電源装置108に対する電流指示によって維持される。なお、可動の積層ヘッド1の動きも制御用プロセッサ100によって制御されるので、加圧ローラ104の移動速度に合わせて前記発光量が維持される。
たとえば、前記加圧ローラ104がある曲率を持った型面を移動する状態を、速度センサ112が検知すると、その検知信号が制御インターフェイス102を介して制御用プロセッサ100に伝達される。すると前記曲率に合わせてLED電源装置108からの電流が変化するようにして、材料の貼り合わせに必要な光量を一定に保つ。
【0026】
また、前記UV照度センサ116からの検知信号により、貼りあわせ部119での照射量が適切であるかを、制御インターフェイス102を介して監視することができ、LEDモジュール110を通しての発光量を適切に維持することができる。なおまた、好ましくは、前記貼り合わせ部119における前記エネルギー線の照射幅が、繊維強化プラスチックテープ118の幅±10%以内をカバーするようにする。
【0027】
さらに、前記繊維強化プラスチックテープ118として、たとえば特開平11−193322号公報に記載されたカチオン系光・熱重合開始剤系成分と、カチオン系光重合開始剤との重量比を特定割合で含む樹脂組成物のような、連鎖硬化型の樹脂組成物も採用することができる。「連鎖硬化型の樹脂組成物」とは、UV(紫外線)等のエネルギー線により硬化を開始し、硬化の際、自己の硬化反応熱をも利用した連鎖硬化を伴って硬化する樹脂組成物である。
すなわち、前記連鎖硬化型の樹脂組成物では、エネルギー線をいったん照射すると、照射された部位で硬化が起こり、次にこの硬化発熱により連鎖硬化に移行する。これによって、エネルギー線の到達の有無や遮蔽物等に無関係に硬化が可能であるため、エネルギー線の届かない深部にまで、すみやかに硬化をする挙動を示す。例えば、板厚1cmのCFRPを3分で硬化可能である。
【0028】
本発明は、前記のような構成を備えたAFP(自動積層成形装置)システムに適用される冷却装置付き積層成形装置に係るものである。
本発明の実施形態に係る冷却装置を備えた積層成形装置の要部構成を示す図1において、1は図2に示されるものと同様な可動式の積層ヘッドで、該積層ヘッド1には加圧ローラ104が回転可能に取り付けられている。2は前記積層ヘッド1を支持するフレームで、前記加圧ローラ104を備えた積層ヘッド1は、図示しない型の表面に沿って水平2方向及び垂直の3軸方向に移動可能で、かつ支軸廻りに回転可能に前記フレーム2に支持されている。
118は繊維強化プラスチックテープで、図2に示されるように、後述する材料ボックス3から繰り出された繊維強化プラスチックテープ118bを、図示しない型の上にある繊維強化プラスチックテープ118aに、前記加圧ローラ104によって貼り合わせ部119にて貼り合わせて、エネルギー線照射装置106によりエネルギー線を照射して該貼り合わせ部119を硬化、接着させてなる。
【0029】
3は材料ボックスで、箱体3aの内部に冷却室3bが形成され、該冷却室3b内にはリール4に巻回された繊維強化プラスチックテープ118bが収納されている。8は繰り出しロールで、前記リール4に巻回され前記冷却室3b内で冷却された繊維強化プラスチックテープ118bを繰り出し口3cから順次繰り出す。該繰り出し口3cから連続的に繰り出された繊維強化プラスチックテープ118bは、案内ロール9を介して前記積層ヘッド1に搬送され、さらに前記貼り合わせ部119に送り込まれて、型側にある繊維強化プラスチックテープ118aに貼り合わせ、前記のようにエネルギー線照射装置106によりエネルギー線を照射して、該貼り合わせ部119を硬化、接着させるようになっている。
【0030】
9は前記材料ボックス3の冷却室3b内に冷却空気を送給する冷却装置で、容量制御が可能な冷凍機等からなる。10は前記冷却装置9を後述する手段で制御する温度コントローラである。11は前記冷却室3b内の温度を検出する冷却室温度センサ、20は前記積層ヘッド1の繊維強化プラスチックテープ118b通過部近傍の温度を検出する積層ヘッド温度センサ、21は前記貼り合わせ部119の温度を検出する貼り合わせ部温度センサである。前記冷却室温度センサ11からの冷却室温度の検出信号、前記積層ヘッド温度センサ20からの積層ヘッド温度の検出信号、及び前記貼り合わせ部温度センサ21からの貼り合わせ部温度の検出信号は、前記温度コントローラ10にそれぞれ入力される。
【0031】
前記温度コントローラ10には、前記繊維強化プラスチックテープ118bが、前記材料ボックス3から積層ヘッド1の通過部までの装置との接触部に粘着しない小さいタック性になる高弾性率(貯蔵弾性率)と、冷却室内温度及び積層ヘッド温度との関係が設定されている。前記高弾性率(貯蔵弾性率)は、トーションモードの粘弾性測定値にて1E+08Pa(これは、100,000,000Paと同じ意味である。以下同様とする。)以上(好ましくは2E+08Pa以上、更に好ましくは4E+08Pa以上)に設定するのが好ましい。
そして、前記温度コントローラ10においては、前記冷却室温度の検出信号及び前記積層ヘッド温度の検出信号に基づき、前記冷却室3b内の温度を、前記繊維強化プラスチックテープ118bが前記のようにして設定された高弾性率(貯蔵弾性率)になるような冷却室内温度になるように、前記冷却装置9を制御する。これにより、前記繊維強化プラスチックテープ118bの弾性率(貯蔵弾性率)は前記高弾性率(1E+08Pa以上)に保持される。
【0032】
また、前記温度コントローラ10には、前記繊維強化プラスチックテープ118bが、前記貼り合わせ部119において強固に密着し得るタック性を持たせた一定の低弾性率と、前記貼り合わせ部119の温度との関係が設定されている。前記低弾性率(貯蔵弾性率)は、2E+08Pa以下(好ましくは1E+08Pa以下、更に好ましくは5E+07Pa以下)に設定するのが好ましい。
そして、前記温度コントローラ10においては、前記貼り合わせ部温度の検出信号に基づき、前記冷却室3b内の温度を、前記繊維強化プラスチックテープ118bが貼り合わせ部119において前記のようにして設定された低弾性率(貯蔵弾性率)になる冷却室内温度になるように、前記冷却装置9を制御する。
以上の制御により、前記繊維強化プラスチックテープ118bの弾性率(貯蔵弾性率)は前記材料ボックス3から積層ヘッド1の通過部までは前記高弾性率に保持され、貼り合わせ部119においては前記低弾性率に保持されることとなる。
【0033】
以上のように、本発明の実施形態によれば、冷却室3bが内部に形成された材料ボックス3を設けて、該冷却室3bにリール4に巻回した繊維強化プラスチックテープ118bを収納し、該冷却室3b内で冷却された繊維強化プラスチックテープ118bを繰り出して積層ヘッド1を通して前記貼り合わせ部119に搬送するように構成している。また、温度コントローラ10によって、前記冷却室3bの温度を、繊維強化プラスチックテープ118bが積層ヘッド1を通過するときの該繊維強化プラスチックテープ118bの弾性率が貼り合わせ部119の弾性率よりも大きい一定の高弾性率になるように制御するように構成している。このため、前記材料ボックス3内の繊維強化プラスチックテープ118bを温度コントローラ10によって温度制御しながら冷却して、材料ボックス3から繰り出されて積層ヘッド1を通過するまでの繊維強化プラスチックテープ118bの弾性率を、貼り合わせ部119の弾性率よりも大きい一定の高弾性率に常時保持することができる。これにより、該繊維強化プラスチックテープ118bのタック性(粘度により左右されるべたつき度合い)を小さく保持できる。したがって、該繊維強化プラスチックテープ118bが前記材料ボックス3から積層ヘッド1を経て貼り合わせ部119までの装置を通る際に、これら装置との接触部に粘着して円滑な搬送が阻害されるという問題の発生を防止できる。
【0034】
また一方で、前記繊維強化プラスチックテープ118bが貼り合わせ部119に到達したときには、型及びその周辺の温度状態が常温レベルになっているため、該繊維強化プラスチックテープ118bの温度が上昇することにより弾性率が低下し、該繊維強化プラスチックテープ118bのタック性が回復することとなって、該繊維強化プラスチックテープの密着度が上がり2つの繊維強化プラスチックテープ118a及び118bを強固に密着できる。
【0035】
したがって、本発明の実施形態によれば、前記材料ボックス3内の冷却室3bで温度制御しつつ繊維強化プラスチックテープ118bを冷却することによって、該繊維強化プラスチックテープ118bの弾性率を上げてタック性を無くすことにより、装置との接触部における粘着を回避して繊維強化プラスチックテープ118bの搬送を円滑に行うことができる。それとともに、貼り合わせ部119においては弾性率を下げタック性を持たせて2つの繊維強化プラスチックテープ118a及び118bを強固に密着できる自動積層成形装置が得られる。
【0036】
また、温度コントローラ10において,冷却室内温度又は積層ヘッド温度の検出値に基づき、冷却室3b内の温度を、繊維強化プラスチックテープ118bが積層ヘッド1を通過するまでの弾性率を貼り合わせ部119の弾性率よりも大きい高弾性率にするような温度に制御するように構成している。これにより、材料ボックス3から積層ヘッド1を通過するまでの繊維強化プラスチックテープ118bの弾性率を、該繊維強化プラスチックテープ118bが前記材料ボックス3から積層ヘッド1を経て貼り合わせ部119までの装置を通る際にこれら装置との接触部に粘着を回避可能な弾性率に常時安定して保持できる。
さらに、これに加えて、前記温度コントローラ10において貼り合わせ部温度の検出値に基づき、冷却室3b内の温度を、積層ヘッド1を通過するときの該繊維強化プラスチックテープ118bの弾性率が前記のような一定の高弾性率になり、かつ貼り合わせ部119の弾性率が前記高弾性率よりも小さい低弾性率になるように制御している。これにより、前記のような装置との接触部における粘着防止効果に加えて、貼り合わせ部119においては、弾性率を、タック性を持たせて強固に密着効果が得られる一定の低弾性率に常時安定して保持できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、繊維強化プラスチックテープの冷却により貯蔵弾性率を上げてタック性を無くすことにより、装置との接触部における粘着を回避して繊維強化プラスチックテープの搬送を円滑に行うとともに、貼り合わせ部においては貯蔵弾性率を下げタック性を持たせて2つの繊維強化プラスチックテープを強固に密着し得る自動積層成形装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却装置を備えた積層成形装置の要部構成図である。
【図2】本発明が適用される紫外線LED(発光ダイオード)照射装置を備えたAFP(自動積層成形装置)システムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1 積層ヘッド
2 フレーム
3 材料ボックス
3b 冷却室
9 冷却装置
10 温度コントローラ
11 冷却室温度センサ
20 積層ヘッド温度センサ
21 貼り合わせ部温度センサ
100 制御用プロセッサ
104 加圧ローラ
106 エネルギー線照射装置
108 LED電源装置
110 LEDモジュール
118,118a,118b 繊維強化プラスチックテープ
119 貼り合わせ部
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一

【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一

【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男

【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文


【公開番号】 特開2008−30296(P2008−30296A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206006(P2006−206006)