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【発明の名称】 樹脂製接合品の製造方法
【発明者】 【氏名】北 裕一郎

【要約】 【課題】樹脂部材を接合してその接合界面に流路を形成した場合でも、流路に接着剤などの異物が残留せず、かつ、流路形成溝の内面の変質、変形を防止することのできる樹脂製接合品の製造方法を提供すること。

【構成】樹脂製接合品1は、微小突起25を底部に備えた流路形成溝21が形成された第1の樹脂部材2に対して第2の樹脂部材3を接合してなる。樹脂製接合品1を製造するには、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを間に溶剤41が介在する状態で重なり合った状態とする第1工程と、樹脂部材2、3を加熱、加圧して樹脂部材2、3を接合させる第2工程とを行う。また、第2工程を行う際、流路形成溝21内に対して溶剤41による変質を防止するための流体42を流す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂部材の第1の接合面と第2の樹脂部材の第2の接合面とが接合され、前記第1の接合面および前記第2の接合面の少なくとも一方に流路形成溝が形成された樹脂製接合品の製造方法において、
前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを間に溶剤が介在する状態で重なり合った状態とする第1工程と、
前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材を加圧して前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを接合させる第2工程とを有し、
当該第2工程を行う際、前記流路形成溝内に対して、当該流路形成溝の前記溶剤による変質を防止するための流体を流すことを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第2工程では、前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材を加熱した状態で加圧することを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記流体は、気体であることを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2において、前記流体は、前記第2工程を行う際の前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材に対する溶解性が前記溶剤より低い液体であることを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項5】
第1の樹脂部材の第1の接合面と第2の樹脂部材の第2の接合面とが接合され、前記第1の接合面および前記第2の接合面の少なくとも一方に流路形成溝が形成された樹脂製接合品の製造方法において、
前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを重ね合わせる第1工程と、
前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材をガラス転移温度付近まで加熱した状態で加圧して前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを接合させる第2工程とを有し、
当該第2工程を行う際、前記流路形成溝内に対して冷却用の流体を流すことを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、前記流体は、前記第2工程を行う際の加熱温度よりも低い温度の気体であることを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項7】
請求項5において、前記流体は、前記第2工程を行う際の加熱温度よりも低い温度の液体であることを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記第2工程では、前記流体を流す際、当該流体を前記流路形成溝内から吸引することを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、前記流路形成溝内には、微小な凹凸が形成されていることを特徴とする樹脂製接合品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材の接合面同士を接合することにより形成される樹脂製接合品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、内部に微細な流路を形成した流路構成体が提案されており、このような流路構成体は、例えば、生化学・医学等の分野においてバイオチップとして用いられている。バイオチップとは、流路に導入された試験液を光学的に観察することにより、試験液の分析を行うものである。
【0003】
このような流路構成体を製造するにあたっては、例えば、第1の樹脂部材において微細な流路形成溝が形成された第1の接合面と、第2の樹脂部材の第2の接合面とを接着剤で接合する方法が提案されている。また、接着剤によって接合する際、接着剤によって流路内が損傷するのを防止する方法として、接着剤として嫌気性の接着剤を用い、硬化前に流路形成溝内の接着剤を気体で追い出す方法や、流路形成溝内を低融点物質で埋めて保護しておき、接着後、流路形成溝内から低融点物質を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、第1の接合面と第2の接合面との間に溶剤を介在させた状態で加圧・加熱して第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とを接合する溶剤接着という方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7−314561号公報
【特許文献2】特開昭58−128812号公報
【特許文献3】特開2003−118000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、接着剤が流路形成溝内にはみ出して流路内に余計な凹凸が発生するとともに、流路内で接着剤が試料と接触して試験液の分析・検出を阻害する可能性がある。また、特許文献2に記載の製造方法では、低融点物質が流路内に残留することがあり、残留物は、汚染を嫌う生化学分野においては分析の妨げとなる。
【0006】
さらに、特許文献3に記載の製造方法では、流路形成溝の内面が溶剤との接触により変質し、流路形成溝の内面が白濁してしまうことがあり、かかる白濁は、光学的な方法で分析する際の妨げとなる。
【0007】
特に、流路形成溝の底部にナノサイズからミクロンサイズの微細な凹凸を形成し、かかる凹凸によって、試料中の成分を分離するタイプのバイオチップなどでは、微細な凹凸が溶剤との接触や熱により変質、変形してしまうことがある。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、樹脂部材を接合してその接合界面に流路を形成した場合でも、流路に接着剤などの異物が残留せず、かつ、流路形成溝の内面の変質、変形を防止することのできる樹脂製接合品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、第1の樹脂部材の第1の接合面と第2の樹脂部材の第2の接合面とが接合され、前記第1の接合面および前記第2の接合面の少なくとも一方に流路形成溝が形成された樹脂製接合品の製造方法において、前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを間に溶剤が介在する状態で重なり合った状態とする第1工程と、前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材を加圧して前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを接合させる第2工程とを有し、当該第2工程を行う際、前記流路形成溝内に対して、当該流路形成溝の前記溶剤による変質を防止するための流体を流すことを特徴とする。
【0010】
本発明では、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とを接合するにあたって、前記第2工程では、前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材との間に溶剤を介在させた状態で加圧する溶剤接着法を採用するため、流路内に接着剤が残留することがない。また、溶剤接着法では、溶剤を用いるため、流路形成溝の内面が溶剤あるいはその蒸気と接すると、膨潤して変質するおそれがあるが、本発明では、流路形成溝内に対して流体を流しながら第2工程を行うため、流路形成溝の内面が膨潤状態になることを防止することができる。それ故、流路形成溝の内面では、溶剤あるいはその蒸気との接触に起因する白濁、面荒れ、面溶解などといった損傷が発生しない。
【0011】
本発明は特に、前記第2工程において、前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材を加熱した状態で加圧する場合に適用すると効果的である。前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材との間に溶剤を介在させるとともに加熱した場合には、その分、流路形成溝の内面には、溶剤あるいはその蒸気との接触に起因する白濁、面荒れ、面溶解などといった損傷が発生しやすいが、本発明によれば、かかる損傷を確実に防止することができる。
【0012】
本発明において、溶剤接着法を採用する場合、前記流体は、例えば、気体である。また、前記流体は、前記第2工程を行う際の前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材に対する溶解性が前記溶剤より低い液体であってもよい。すなわち、流体として液体を用いる場合、液体自身が溶剤よりも樹脂部材に対する溶解性が低い場合には、第2工程を行う際の溶剤の温度よりも高くてもよいが、流体として用いる液体の樹脂部材に対する溶解性が溶剤と同等、あるいは高い場合には、流体として用いる液体の温度を第2工程を行う際の溶剤の温度よりも低く設定する。
【0013】
本発明の別の形態では、第1の樹脂部材の第1の接合面と第2の樹脂部材の第2の接合面とが接合され、前記第1の接合面および前記第2の接合面の少なくとも一方に流路形成溝が形成された樹脂製接合品の製造方法において、前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを重ね合わせる第1工程と、前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材をガラス転移温度付近まで加熱した状態で加圧して前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とを接合させる第2工程とを有し、当該第2工程を行う際、前記流路形成溝内に対して冷却用の流体を流すことを特徴とする。なお、本発明における「ガラス転移温度付近」とは、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とを熱融着可能な温度のことを意味する。
【0014】
本発明では、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とを接合するにあたって、前記第2工程では、前記第1の樹脂部材および前記第2の樹脂部材をガラス転移温度付近まで加熱した状態で加圧する熱融着法を採用するため、流路内に接着剤が残留することがない。また、熱融着法では、加熱を行うため、流路形成溝の内面もガラス転移状態になってしまい変質、変形が発生するおそれがあるが、本発明では、流路形成溝内に対して流体を流しながら第2工程を行うため、流路形成溝の内面は冷却され、ガラス転移温度付近まで加熱されることがない。それ故、流路形成溝の内面には、加熱に起因する変形などの損傷が発生しない。
【0015】
本発明において、熱融着法を採用する場合、前記流体は、例えば、前記第2工程を行う際の加熱温度よりも低い温度の気体である。また、前記流体は、前記第2工程を行う際の加熱温度よりも低い温度の液体であってもよい。
【0016】
本発明において、前記第2工程では、前記流体を流す際、当該流体を前記流路形成溝内から吸引することが好ましい。例えば、前記流路形成溝の一方端側に前記流体を供給する一方、前記流路形成溝の他方端側で前記流体を吸引することが好ましい。このように構成すると、流路形成溝内を負圧とすることができ、このような負圧状態では、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とが密着した状態となる。それ故、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とを密着した状態に確実に接合することができる。
【0017】
本発明は特に、前記流路形成溝内に微小な凹凸が形成されている場合に適用すると効果的である。流路形成溝内に微細な凹凸が形成されている場合、かかる凹凸は、流路形成溝の内面よりも溶剤や熱によって損傷しやすいが、本発明によれば、かかる凹凸の損傷も確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、第2工程において、第1の樹脂部材および第2の樹脂部材との間に溶剤を介在させた状態で加圧する溶剤接着法、あるいは第1の樹脂部材および第2の樹脂部材をガラス転移温度付近まで加熱した状態で加圧する熱融着法を採用するため、流路内に接着剤が残留することがない。また、溶剤接着法あるいは熱融着法では、溶剤やその蒸気との接触、あるいは加熱によって、流路形成溝の内面も膨潤状態あるいはガラス転移温度付近になってしまい、変質や変形のおそれがあるが、本発明では、流路形成溝内に対して流体を流しながら第2工程を行うため、流路形成溝の内面は膨潤状態あるいはガラス転移温度付近にはならない。それ故、流路形成溝の内面には、溶剤やその蒸気との接触に起因する白濁、面荒れ、面溶解などといった損傷が発生せず、かつ、加熱に起因する変形などの損傷も発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用した樹脂製接合品およびその製造方法について説明する。
【0020】
[実施の形態1(溶剤接着法)]
(構造)
図1(A)、(B)、(C)は、本発明を適用した樹脂製接合品を模式的に示す斜視図、分解斜視図、および流路形成溝の底部に形成された微細な凹凸の説明図である。図2(A)〜(D)は、本発明を適用した樹脂製接合品の製造方法を示す工程図である。
【0021】
図1(A)、(B)、および図2(D)に示す樹脂製接合品1は、内部に2次元あるいは3次元の流路5が構成されており、流路5内に試験液を通過させることにより、試験液中に含まれる特定物質を検出することが可能である。従って、樹脂製接合品1はバイオチップ等として用いられる。
【0022】
本形態の樹脂製接合品1は、アクリル樹脂などを板状に金型成形してなる第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3を接合することにより得られるものである。第1の樹脂部材2の接合面20(第1の接合面)には、流路5を形成するための微細な流路形成溝21が形成されている。また、第2の樹脂部材3には、第1の樹脂部材2と重ねたときに流路形成溝21の一方側端部および他方側端部に重なる位置に試料の注入などに用いられる貫通穴32、33が形成されているとともに、流路形成溝21から外れた位置に接着用の溶剤を注入するための貫通穴35が形成されている。このように構成された第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを接合すると、流路形成溝21の上方が第2の樹脂部材3に塞がれて流路5が形成されるとともに、貫通穴32、33が流路5に連通する。
【0023】
本形態の樹脂製接合品1において、流路5(流路形成溝21)の底部には、図1(C)および図2(D)に示すように、流路形成溝21よりも幅の狭い隙間を隔てて複数の微小突起25(微細な凹凸)が形成されている。微小突起25は、そのサイズおよび隙間寸法がナノサイズからミクロンサイズであり、流路5内を流れる試験液に含まれる特定物質の分離や吸着、試験液の粒径分別、流路を長くする等の機能を果たす。
【0024】
(製造方法)
本形態の樹脂製接合品1を製造するにあたっては、まず、図2(A)に示す第1工程において、接合面20、30同士が重なるように第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを重ねた状態で加圧ステージ6上に配置する。その結果、流路形成溝21は、上方が第2の樹脂部材3の接合面30で覆われるが、流路形成溝21の両端は、貫通穴32、33によって外部と連通する。次に、図2(B)に示すように、貫通穴35からプロピルアルコールなどの接着用の溶剤41を注入する。その結果、溶剤41は接合面20、30との間に薄く広がる。なお、樹脂部材2、3の接合面20、30の間に溶剤41を注入する方法として、樹脂部材2、3の接合面20、30の端部から溶剤41を毛管現象により吸い込ませる方法を用いてもよい。また、第1の樹脂部材2の接合面20、および第2の樹脂部材3の接合面30のうちの少なくとも一方に溶剤41を塗布し、その後、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを重ね合わせてもよい。さらには、流路形成溝21に直接、通じる貫通穴32、33より溶剤41を導入し、流路形成溝21の縁部から樹脂部材2、3の接合面20、30の間に溶剤41を毛管現象により染み出させてもよい。
【0025】
次に、図2(C)に示す第2工程では、加圧ヘッド7により、樹脂部材2、3を加圧する。その際、加圧ステージ6に内蔵されたヒータ(図示せず)、加圧ヘッド7に内蔵されたヒータ(図示せず)あるいは、加圧ステージ6や加圧ヘッド7の周りに配置されたヒータ(図示せず)により、樹脂部材2、3を例えば60℃の温度まで加熱する。その結果、第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3では、接合面20、30同士が溶剤接着され、図1(A)、(B)および図2(D)を参照して説明した樹脂製接合品1が完成する。
【0026】
このような第2工程を行うにあたって、本形態では、図2(C)に矢印Inで示すように、貫通穴33を介して流路形成溝21の一方端側に流体42を導入する一方、図2(C)に矢印Outで示すように、貫通穴32を介して流路形成溝21の他方端側で流体42を吸引する。例えば、加圧ヘッド7に対して、貫通穴33と重なる位置に流体導入穴71を形成する一方、貫通穴32と重なる位置に流体吸引穴72を形成し、流体導入穴71および貫通穴33を介して流路形成溝21の一方端側に流体42を導入する一方、流体吸引穴72および貫通穴32を介して流路形成溝21の他方端側で流体42を吸引する。
【0027】
ここで、流体42としては、第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3を侵さない流体であれば、例えば、空気や窒素ガスなどの気体を用いることができる。これらの気体のうち、第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3が酸化を嫌う材料である場合、流体42としては、窒素ガスなど、酸素を含有しない気体を用いる。また、流体42としては、第2工程を行う際の第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3に対する溶解性が溶剤41より低い液体を用いてもよく、例えば、水やメチルアルコールなどの液体を用いてもよい。この場合、流体42(水やメチルアルコール)の温度は、第2工程を行う際の溶剤41や樹脂部材2、3の温度よりも高くてもよい。また、流体42としては、プロピルアルコールを用いてもよく、この場合、流体42の温度を、第2工程を行う際の溶剤41や樹脂部材2、3の温度よりも低い温度に設定すればよい。
【0028】
なお、流路形成溝21に空気(流体42)を流す場合には、貫通穴32に対して、吸引ポンプが接続されたパイプを接続する一方、貫通穴33を開放状態とし、パイプを介して流路形成溝21の内部を吸引してもよい。
【0029】
(本形態の効果)
以上説明したように、本形態では、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを接合するにあたって、第2工程では、第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3との間に溶剤41を介在させた状態で加圧する溶剤接着法を採用したため、流路5内に接着剤が残留することがない。また、溶剤接着法では、溶剤41によって、第1の樹脂部材2の接合面20と第2の樹脂部材3の接合面30とを軽い膨潤状態にするため、流路形成溝21の内面も、溶剤41あるいはその蒸気に接触して膨潤し、変質するおそれがあるが、本形態では、流路形成溝21内に対して流体42を流しながら第2工程を行う。このため、流路形成溝21の内面が膨潤することがないので、流路形成溝21の内面には、溶剤41やその蒸気との接触に起因する白濁、面荒れ、面溶解などといった損傷が発生しない。
【0030】
また、本形態では、流路形成溝21内に微小突起25が形成されており、かかる微小突起25は、流路形成溝21の内面よりも溶剤41によって損傷しやすいが、本形態によれば、かかる微小突起25の損傷も確実に防止することができる。
【0031】
さらに、本形態では、第2工程において流路形成溝21から流体42を吸引したため、流体42の導入と吸引とのバランス、例えば、貫通穴32、33のサイズバランスや、流体導入穴71と流体吸引穴72とのサイズバランスによっては、流路形成溝21内を負圧とすることができる。このような負圧状態で第2工程を行うと、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とが密着した状態となるので、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを確実に接合することができる。
【0032】
(評価結果の一例)
(実施例)
本発明の実施例では、第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3としてアクリル樹脂板を用いた。第2の樹脂部材3には直径5mmの貫通穴32、33が形成され、第1の樹脂部材2には、幅200μm、深さ200μmの流路形成溝21が形成され、流路形成溝21の内部には、20μmの隙間を有する微小突起25が形成されている。なお、第1工程において、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを重ね合わせる際、貫通穴32、33と、流路形成溝21の両端とを重ね、この状態で、溶剤41としての2−プロパノールを貫通穴35から注入して、第1の樹脂部材2の接合面20と第2の樹脂部材3の接合面30との間の全面に行き渡らせる。次に、第2工程において、貫通穴32に管を取り付け、流路形成溝21内に存在する溶剤のみを吸引できる程度の圧力(微小突起25を破壊しない程度の圧力)で吸引することにより、貫通穴33から常温の大気(約25℃の空気)を導入しながら、樹脂部材2、3を20kPaで加圧する。また、ヒータにより、第1の樹脂部材2、第2の樹脂部材3および溶剤41を約60℃に加熱する。このような状態を10分間保持する。その結果、樹脂部材2、3同士が接合されるとともに、流路形成溝21の内面は透明で、かつ、微小突起25も潰れることがなかった。
【0033】
(比較例)
本例の比較例として、実施例の条件のうち、流路形成溝21内を吸引する操作(空気を導入する操作)を省略したものであり、その他の条件は、実施例と同様である。この結果、樹脂部材2、3同士は接合されたが、微小突起25は溶け、流路形成溝21を塞いでしまった。また、流路形成溝21の内面は、溶剤41と反応して白濁化してしまった。
【0034】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1では、第2工程において、樹脂部材2、3を加熱して接合面20、30同士を溶剤接着したが、樹脂部材2、3の材質や溶剤41の種類によっては、加熱を省略してもよい。この場合、常温であっても、樹脂部材2、3の接合面20、30が膨潤するような樹脂部材2、3や溶剤41を用いることになるが、流路形成溝21内に対して流体42を流しながら第2工程を行えば、流路形成溝21の内面には、溶剤41やその蒸気との接触に起因する白濁、面荒れ、面溶解などといった損傷が発生しない。
【0035】
[実施の形態2(熱融着法)]
図3(A)〜(C)は、本発明の実施の形態2に係る樹脂製接合品の製造方法を示す工程図である。実施の形態1においては、溶剤接着法により第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3との接合を行ったが、溶剤接着法に代えて、熱融着法により、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3との接合を行ってもよい。なお、本形態の方法で製造した樹脂製接合品1も、図3(C)に示すように、微小突起25を底部に備えた流路形成溝21が形成された第1の樹脂部材2に対して第2の樹脂部材3を接合した構造を有しており、かかる構造は実施の形態1と同様であるため、図3(A)〜(C)を参照して製造方法のみを説明する。
【0036】
本形態では、まず、図3(A)に示す第1工程において、接合面20、30同士が重なるように第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを重ねた状態で加圧ステージ6上に配置する。その結果、流路形成溝21は、上方が第2の樹脂部材3の接合面30で覆われるが、流路形成溝21の両端は、貫通穴32、33によって外部と連通する。
【0037】
次に、図3(B)に示す第2工程では、加圧ヘッド7により、樹脂部材2、3を加圧する。その際、加圧ステージ6に内蔵されたヒータ(図示せず)、加圧ヘッド7に内蔵されたヒータ(図示せず)あるいは、加圧ステージ6や加圧ヘッド7の周りに配置されたヒータ(図示せず)により、樹脂部材2、3をガラス転移温度付近にまで加熱する。その結果、第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3では、接合面20、30同士が熱融着され、図1(A)、(B)および図3(D)に示す樹脂製接合品1が完成する。
【0038】
このような第2工程を行うにあたって、本形態では、図3(B)に矢印Inで示すように、貫通穴33を介して流路形成溝21の一方端側に冷却用の流体42を導入する一方、図3(B)に矢印Outで示すように、貫通穴32を介して流路形成溝21の他方端側で流体42を吸引する。例えば、加圧ヘッド7に対して、貫通穴33と重なる位置に流体導入穴71を形成する一方、貫通穴32と重なる位置に流体吸引穴72を形成し、流体導入穴71および貫通穴33を介して流路形成溝21の一方端側に流体42を導入する一方、流体吸引穴72および貫通穴32を介して流路形成溝21の他方端側で流体42を吸引する。
【0039】
ここで、流体42としては、第2工程での加熱温度よりも低い温度の空気や窒素ガスなどの気体を用いることができる。また、流体42としては、第2工程での加熱温度よりも低い温度の液体、例えば、水、メチルアルコール、プロピルアルコールなどを用いてもよい。
【0040】
なお、流路形成溝21に空気(流体42)を流す場合には、貫通穴32に対して、吸引ポンプが接続されたパイプを接続する一方、貫通穴33を開放状態とし、パイプを介して流路形成溝21を吸引してもよい。
【0041】
このように、本形態では、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを接合するにあたって、第2工程では、第1の樹脂部材2および第2の樹脂部材3をガラス転移温度付近まで加熱した状態で加圧する熱融着法を採用したため、流路5内に接着剤が残留することがない。また、熱融着法では、加熱を行うため、流路形成溝21の内面も、加熱されて熱変形するおそれがあるが、本形態では、流路形成溝21内に対して流体42を流し、流路形成溝21内を冷却しながら第2工程を行う。このため、流路形成溝21の内面が熱変形することがない。また、本形態では、流路形成溝21内に微小突起25が形成されており、かかる微小突起25は、流路形成溝21の内面よりも熱変形しやすいが、本形態によれば、かかる微小突起25の熱変形も確実に防止することができる。さらに、第2工程では、流路形成溝21から流体42を吸引したため、流体42の供給と吸引とのバランスによっては、流路形成溝21内を負圧とすることができる。このような負圧状態で第2工程を行うと、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とが密着した状態となるので、第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3とを確実に接合することができる。
【0042】
[その他の実施の形態]
上記形態の樹脂製接合品1では、樹脂部材2、3としてアクリル樹脂を用いたが、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂を用いてもよい。また、溶剤接着を行う際に用いる溶剤41としては、アルコール類、ケトン類、炭化水素系の溶剤を用いてもよい。さらに、上記形態の樹脂製接合品1では、流路形成溝21内に微細な凹凸として微小突起25を形成した例を説明したが、その形状は柱状、格子状、円錐状であってもよいなど限定がなく、さらに凹部からなる微細な凹凸が流路形成溝21内に形成されている場合に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(A)、(B)、(C)は、本発明を適用した樹脂製接合品を模式的に示す斜視図、分解斜視図、および流路形成溝の底部に形成された微細な凹凸の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る樹脂製接合品の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る樹脂製接合品の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0044】
1 樹脂製接合品
2 第1の樹脂部材
3 第2の樹脂部材
5 流路
20、30 接合面
21 流路形成溝
25 微小突起
【出願人】 【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎


【公開番号】 特開2008−30285(P2008−30285A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205744(P2006−205744)