| 【発明の名称】 |
積層シートの製造装置および製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】井ノ本 健
【氏名】野村 文保
【氏名】古野 良治
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| 【要約】 |
【課題】本発明の目的は、積層装置と口金とを接続する流路と口金の吐出口の寸法を積層体の層厚みに応じて限定することにより、複雑な制御装置を必要とせず、界面不安定現象の発生を抑制し、高品質の多層フィルムを容易に製造することが可能な積層シートの製造装置および製造方法を提供することにある。
【構成】複数種類のシート材料を前記種類の数よりも多い数の層に積層した積層体を形成する積層装置と、該積層装置の下流側に設けられ前記積層体をシート状に成形する口金とを備えた積層シートの製造装置であって、前記積層装置と前記口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、前記口金の吐出口のシート幅方向寸法をWd、前記積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法をLとすると、式(1)と式(2)の関係を共に満足することを特徴とする積層シートの製造装置。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数種類のシート材料を前記種類の数よりも多い数の層に積層した積層体を形成する積層装置と、該積層装置の下流側に設けられ前記積層体をシート状に成形する口金とを備えた積層シートの製造装置であって、前記積層装置と前記口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、前記口金の吐出口のシート幅方向寸法をWd、前記積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法をLとすると、式(1)と式(2)の関係を共に満足することを特徴とする積層シートの製造装置。 【数1】
【数2】
【請求項2】 さらに、10≦T/L≦1000を満足することを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造装置。 【請求項3】 さらに前記シート幅方向寸法Wが50mm<W<300mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層シートの製造装置。 【請求項4】 さらに前記シート厚み方向寸法TがT<1000mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層シートの製造装置。 【請求項5】 積層装置により複数種類のシート材料を前記種類の数よりも多い数の層に積層した積層体を形成し、前記積層装置の下流に設けられた口金により前記積層体をシート状に成形する積層シートの製造方法であって、前記積層装置と前記口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、前記口金の吐出口のシート幅方向寸法をWd、前記積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法をLとすると、式(1)と式(2)の関係を共に満足する前記流路を用いることを特徴とする積層シートの製造方法。 【数3】
【数4】
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、積層シートの製造装置および製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 今日、複数種類のシート材料をフィルムの厚み方向に積層した多層構造をもつ多層フィルムの用途は光学用途へと広がりつつある。その中、より優れた光学特性を満足するために、積層数が100〜1000層あるいはそれ以上と膨大であるにも関わらず、高品質の超多層フィルムが要求されている。しかし、超多層フィルムを形成する場合、従来の多層フィルムよりも、フローマークや層の断裂などの界面不安定現象が発生する確率が格段に増加するという問題がある。本発明者らの知見によれば、この界面不安定現象を引き起こす大きな原因として、界面にかかるせん断応力が挙げられると考えている。超多層フィルムでは積層数が100〜1000層あるいはそれ以上と膨大であるので、各層の厚みは非常に小さい。つまり、超多層フィルムを形成する場合、壁面に近いせん断応力の大きい領域に界面が存在することになり、界面に強力なせん断応力がかかる。ゆえに、超多層フィルムを形成する場合に界面不安定現象が頻繁に発生するのは必然的であるといえる。 【0003】 多層フィルムを形成するための積層シートの製造装置および製造方法としては、積層装置により複数種類(とくに2種類)のシート材料(典型的には溶融樹脂など)を複数のスリットを通して分流することにより複数の層をもつ積層体を形成し、この積層体をシート幅方向に延びるスリット間隙を有する口金から吐出し、積層シートを形成する方法が知られている。そして、口金から吐出された積層シートは、そのまま、あるいは、延伸等の後処理が施され、多層フィルムとして用いられる。 【0004】 ところで、本発明の好ましい形態と一見して似ているように見える技術として、特許文献1、特許文献2に開示されている積層シートの製造装置がある。 【0005】 特許文献1には、3層程度の層数の多層フィルムを製造するための積層装置と口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、口金の吐出口のシート幅方向寸法をWdとし、20<W/T<30、かつ5≦Wd/W≦17の範囲に限定することによって、低粘度側のシート材料の層が高粘度側のシート材料の層を包み込む、いわゆる「包み込み現象」を抑制し、各層のシート幅方向厚みムラを少なくするという方法が開示されている。確かに、いわゆる「包み込み現象」は各層のシート幅方向厚みムラを引き起こすが、層数が増加するにつれ、その影響は打ち消しあい、減少するため、特許文献1に開示されている技術を超多層フィルムの形成へ応用したとしてもその効果は減少することになる。 【0006】 特許文献2には、溶液製膜において、3層程度の層数の多層フィルムを製造するための積層装置と口金とを接続する流路において流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、口金の吐出口のシート幅方向寸法をWdとし、2<W/T<10、かつ10≦Wd/W≦25の範囲に限定することによって、溶液が積層装置から口金の吐出口までに滞留する滞留時間を短縮して、吐出量を増やし、生産量を増加させても、各層のシート幅方向厚みムラを少なくできるという方法が開示されている。確かに、溶液製膜の場合、溶液の滞留時間による各層のシート幅方向厚みムラへの影響は大きいが、溶融製膜の場合には、滞留時間による各層のシート幅方向厚みムラへの影響は少なく、特許文献2に開示されている技術を超多層フィルムの形成へ応用したとしてもその効果は減少することになる。 【0007】 また、本発明者らの知見によると、特許文献1、特許文献2のような従来の積層シートの製造装置では、各層のシート幅方向厚みムラ改善はなしえても、界面不安定現象の点については改善することは困難であった。 【特許文献1】特許第3516099号公報 【特許文献2】特許第3727883号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明の目的は、複雑な制御装置を必要とせず、界面不安定現象の発生を抑制し、高品質の多層フィルムを容易に製造することが可能な積層シートの製造装置および製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記目的を達成するために、本発明は、複数種類のシート材料を前記種類の数よりも多い数の層に積層した積層体を形成する積層装置と、該積層装置の下流側に設けられ前記積層体をシート状に成形する口金とを備えた積層シートの製造装置であって、前記積層装置と前記口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、前記口金の吐出口のシート幅方向寸法をWd、前記積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法をLとすると、式(1)と式(2)の関係を共に満足する積層シートの製造装置を提供する。 【0010】 【数1】
【0011】 【数2】
【0012】 また、本発明の好ましい形態によれば、さらに、10≦T/L≦1000を満足する積層シートの製造装置を提供する。 【0013】 また、本発明の好ましい形態によれば、さらに前記シート幅方向寸法Wが50mm<W<300mmである積層シートの製造装置を提供する。 【0014】 また、本発明の好ましい形態によれば、さらに前記シート厚み方向寸法TがT<1000mmである積層シートの製造装置を提供する。 【0015】 また、本発明の別の形態によれば、積層装置により複数種類のシート材料を前記種類の数よりも多い数の層に積層した積層体を形成し、前記積層装置の下流に設けられた口金により前記積層体をシート状に成形する積層シートの製造方法であって、前記積層装置と前記口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、前記口金の吐出口のシート幅方向寸法をWd、前記積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法をLとすると、式(1)と式(2)の関係を共に満足する前記流路を用いることを特徴とする積層シートの製造方法を提供する。 【0016】 【数3】
【0017】 【数4】
【0018】 本発明において、「シート材料」とは、たとえば、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリプロピレンテレフタレート・ポリブチルサクシネート・ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂、などを溶融するなどして流体化したものを用いることができる。またこれらの熱可塑性樹脂としてはホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。また、各熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。 【0019】 また、本発明において、「積層体」とは、押出し機から押出されてから、口金から吐出されるまでの間で、複数種類のシート材料を複数の層として積層した多層構造をもつシート材料をいう。 【0020】 また、本発明において、「積層シート」とは幅と厚みが調整され、口金から吐出された積層体をいう。 【0021】 また、本発明において、「多層フィルム」とは積層シートが固化し、そのまま、あるいは、延伸等の後処理が施されたものをいう。 【0022】 また、本発明において、「積層装置」とは、積層体を形成する装置をいう。 【0023】 また、本発明において、「積層装置と口金とを接続する流路」とは、積層装置内部でシート材料の積層が完成される位置の1mm下流部から口金内部でマニホールドによってシート幅方向の流路の拡幅が開始される位置の1mm上流部までの積層体が流れる流路をいう。 【0024】 また、本発明において、「流路方向」とは、積層装置と口金とを接続する流路の各部において積層体が流れる方向をいう。 【0025】 また、本発明において、「シート厚み方向」とは、積層シートの各層が積層される方向をいう。 【0026】 また、本発明において、「シート幅方向」とは、積層シートの流路方向とシート厚み方向の両方に直交する方向をいう。 【0027】 また、本発明において、「積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法L」とは、積層体の最表層の厚みが最も薄くなっている部位における寸法をいう。積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法Lは、次の方法を用いて算出することができる。まず、多層フィルムにおける各層の厚みを測定する。次に、多層フィルムにおける各層の厚みの比率と積層体における各層の流量の比率が一致することから、積層体における各層の流量を算出する。そして、積層装置と口金とを接続する流路内における積層体の流速分布をシート厚み方向寸法の2次関数として近似すると、流量から積層体における各層の厚みを算出できる。ゆえに、多層フィルムにおいて、フィルム全体の厚みに対する最表層の最小厚みの割合をLsとすると、積層装置と口金とを接続する流路内における積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法Lは式(3)より算出することができる。この場合、積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法Lは、寸法Lの3次方程式を数値解析などで導き出すことによって算出することができる。 【0028】 【数5】
【発明の効果】 【0029】 本発明に係る積層シートの製造装置および製造方法では、複雑な制御装置を必要とせず、界面不安定現象の発生を抑制し、高品質の多層フィルムを製造することが出来る。 【発明を実施するための最良の形態】 【0030】 以下に本実施形態について詳細に述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。 【0031】 図1及至図8は本実施形態の積層シートの製造装置に関する図である。なお、図1及至図8において、同じ用途および機能を有している部材については、同じ符号を有している場合がある。 【0032】 本実施形態では、積層装置により複数種類(とくに2種類)のシート材料(典型的には溶融樹脂など)を複数のスリットを通して分流することにより複数の層をもつ積層体を形成し、この積層体をシート幅方向に延びるスリット間隙を有する口金から吐出し、積層シートを形成する。 【0033】 本実施形態の積層シートの製造装置の基本構成を図1に示す。図1において、積層シートの製造装置は、図示しない別々の押出機から押し出されたシート材料A、シート材料Bを供給するシート材料導入管1、2、シート材料導入管1、2により供給されたシート材料A、シート材料Bを交互に多数積層した積層体を形成する積層装置3、積層装置3からの積層体を下流側に導く導管4および導管4からの積層体の幅と厚みを所定の値に調整、吐出し、積層シートを形成する口金5を有している。また、7は、口金5から吐出された積層シート6を冷却し固化させるキャスティングドラムである。キャスティングドラム7で固化した積層シートは、通常、未延伸フィルム8と呼称される。未延伸フィルム8は、通常、矢印NSで示すように、延伸工程(図示せず)に送られ、一方向あるいは二方向に延伸され、多層フィルムとされる。 【0034】 また、積層数が20層以上ある積層体を形成する場合、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる積層装置3は、図2に示すような流路を形成するように構成されていることが多い。図2は、積層装置3の内部空間を表す概略斜視図であり、積層装置3内に形成される空間部すなわちシート材料の流路を表している。積層装置3は、その内部に、シート材料A、シート材料Bを供給するシート材料導入路11、12と、シート材料導入路11、12により供給されたシート材料A、シート材料Bをシート厚み方向寸法に小さく拡げるマニホールド13、14と、マニホールド13、14からのシート材料A、シート材料Bを所定の層数に分ける多数の細孔15、16の列と、各細孔15、16からのシート材料A、シート材料Bを下流側に導く多数の積層装置のスリット17、18の列とを有しており、さらに各積層装置のスリット17、18の出口側には積層完了部19が設けられていて、各積層装置のスリット17、18からのシート材料A、シート材料Bを交互に多数積層して、積層体を形成できるようになっている。 【0035】 また、積層数が20層未満しかない積層体を形成する場合、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる積層装置3は、図3に示すような流路を形成するように構成されていることが多い。図3は、積層装置3の内部空間を表す概略斜視図であり、積層装置3内に形成される空間部すなわちシート材料の流路を表している。積層装置3は、その内部に、シート材料A、シート材料Bを供給するシート材料導入路11、12と、シート材料導入路11、12により供給されたシート材料A、シート材料Bをシート厚み方向寸法に小さく拡げるマニホールド13、14と、マニホールド13、14からのシート材料A、シート材料Bを所定の層数に分ける多数の細孔15、16の列と、各細孔15、16からのシート材料A、シート材料Bをシート幅方向に小さく広げ、下流側に導く多数のマニホールド付きスリット17m、18mの列とを有しており、さらに各マニホールド付きスリット17m、18mの出口側には積層完了部19が設けられていて、各マニホールド付きスリット17m、18mからのシート材料A、シート材料Bを交互に多数積層して、積層体を形成できるようになっている。そして、積層装置3内の流路を本出願人が特願2005−286331において提案したような構成にすることによって、各層のシート幅方向厚みムラを抑制することができる。 【0036】 また、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる導管4および口金5は、図4に示すような流路を形成するように構成されている。図4は、積層完了部19、導管4および口金5の内部空間を表す概略斜視図であり、積層完了部19、導管4および口金5内に形成される空間部すなわちシート材料の流路を表している。積層完了部19および導管4は、その内部に、積層装置3によって形成された積層体を口金5まで導く流路24を有している。また口金5は、その内部に、流路24によって導かれた積層体をシート幅方向に延ばすマニホールド21と、マニホールド21からの積層体をシート厚み方向に縮小する口金のスリット22と、口金のスリット22からの積層体を積層シートとして吐出する吐出口23を有しており、幅と厚みを所定の値に調整した積層体を吐出し、積層シートを形成できるようになっている。ここで、積層装置3と口金5とを接続する流路24における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT,口金5の吐出口23のシート幅方向寸法をWdとしている。また、積層装置3と口金5とを接続する流路24とは、積層装置3内部の各積層装置のスリット17、18、または各マニホールド付きスリット17m、18mの出口のうち、最下流にある出口の1mm下流から口金5内部でマニホールド21によってシート幅方向への流路の拡幅が開始される位置の1mm上流までの積層体が流れる流路をいう。 【0037】 また、図5は、積層体が通過中の流路24における流路方向に垂直な任意の断面の断面図である。積層体31はシート材料Aの層32とシート材料Bの層33からなる。ここで、流速分布の関係から、積層体31の界面には流路24のシート厚み方向と垂直な壁面に近いほど強いせん断応力がかかるため、積層体31の中で、もっとも強いせん断応力がかかる界面は界面34である。このもっとも強いせん断応力がかかる界面34の流路24のシート厚み方向と垂直な壁面との距離、つまり積層体31の最表層の最小シート厚み方向寸法をLとしている。 【0038】 本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、流路24の流路方向に垂直なあらゆる断面、すなわち、流路24の最上流から最下流までの各断面において、式(1)および式(2)の関係を共に満足させることにより、界面不安定現象の生じない積層シートが得られることを見出した。 【0039】 【数6】
【0040】 【数7】
【0041】 このような構成とすることにより、積層体の界面にかかるせん断応力を減少させ、界面不安定現象を抑制することができる。ここで、口金拡幅比Wd/Wは、口金による積層体のシート幅方向拡幅比、断面寸法比W/Tは、積層体が流れる流路の流速分布を決定するパラメータ、層厚み比T/Lは、もっともせん断応力を受ける積層体の界面がせん断応力を受ける度合いを表すパラメータを意味する。 【0042】 口金拡幅比Wd/Wの値が10以上になると、積層体がシート幅方向に拡幅される際に生じるシート幅方向のせん断応力が大きくなり、界面不安定現象が発生する。また、口金拡幅比Wd/Wの値が1以下になると、装置の大型化につながる。装置をよりコンパクトにするためには、5<Wd/W<10であることが好ましい。 【0043】 本発明者らは、ここで、断面寸法比W/Tの値は図9に示す範囲であることが好ましいことを見出した。図9は、層厚み比T/Lに対する界面不安定現象の発生しない断面寸法比W/Tの範囲を表したグラフであり、横軸は層厚み比T/L、縦軸は断面寸法比W/Tである。また、点線は式(4)を表し、色のついた部分は式(2)の範囲を表す。断面寸法比W/Tの値が大きくなると壁面付近の流速勾配が大きくなり、界面にかかるせん断応力が大きくなる。また、層厚み比T/Lの値が大きくなるともっとも大きいせん断応力がかかる界面が相似的に壁面に近くなるため、界面にかかるせん断応力は大きくなる。つまり、このグラフは、界面にかかるせん断応力は断面寸法比W/Tの値と層厚み比T/Lの値との関係によるもので、例え同じ断面寸法比W/Tの値でも層厚み比T/Lの値が大きいほど界面にかかるせん断応力は大きくなるため界面不安定現象が発生することがあることを意味する。押出機の押出不良や、ヒーターの温度ムラなどによって、シート厚み方向寸法Lが瞬間的に減少し、層厚み比T/Lの値が急激に大きくなることなどを考慮すると、W/T≦5であることが好ましい。 【0044】 【数8】
【0045】 このような範囲に含まれるよう構成できる導管4および口金5の例を図6,7,8に示す。 【0046】 図6は、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる積層完了部19、導管4および口金5の例を示す。流路24の積層装置3よりのシート幅方向寸法をW1、シート厚み方向寸法をT1、口金5よりのシート幅方向寸法をW2、シート厚み方向寸法をT2とすると、シート幅方向寸法W1とW2、シート厚み方向寸法T1とT2は共に等しく、流路方向に対して、流路24の各寸法が変化しないよう構成されている。 【0047】 図7は、図6とは異なる本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる積層完了部19、導管4および口金5の例を示す。流路24の積層装置3よりのシート幅方向寸法をW1、シート厚み方向寸法をT1、口金5よりのシート幅方向寸法をW2、シート厚み方向寸法をT2とすると、シート幅方向寸法W1とW2は等しいが、シート厚み方向寸法T2はT1よりも小さく、流路方向に対して、流路24のシート厚み方向寸法だけが連続的に小さくなるよう構成されている。 【0048】 図8は、図6および図7とは異なる本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる積層完了部19、導管4および口金5の例を示す。流路24の積層装置3よりのシート幅方向寸法をW1、シート厚み方向寸法をT1、口金5よりのシート幅方向寸法をW2、シート厚み方向寸法をT2とすると、シート厚み方向寸法T1とT2は等しいが、シート幅方向寸法W2はW1よりも大きく、流路方向に対して、流路24のシート幅方向寸法だけが段階的に大きくなるよう構成されている。 【0049】 また、超多層フィルムのように層数が非常に多い場合、各層のシート幅方向厚みムラは、いわゆる「包み込み現象」ではなく、口金の拡幅による積層体の急激な流れの変化が主な原因である。この積層体の急激な流れの変化を抑制するには、口金による積層体のシート幅方向への拡幅と積層体の流速を小さく、つまり口金拡幅比Wd/Wと断面寸法比W/Tの値を小さくする必要がある。ゆえに、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる口金拡幅比Wd/Wと断面寸法比W/Tの値を上述のように極力小さくすることは、各層のシート幅方向厚みムラを抑制する効果がある。 【0050】 また、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられる層厚み比T/Lの値を10≦T/L≦1000の範囲にすることによって、界面不安定現象を抑制する効果を増大させることができる。 【0051】 また、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられるシート幅方向寸法Wの値をそれぞれ50mm<W<300mmの範囲にすることによって、装置を大型化させることがなく、また、界面不安定現象を抑制する効果を増大させることができる。すなわち、シート材料を積層するために適した圧力損失を得るためには積層体の総質量流量に応じてシート幅方向寸法Wを大きくする必要はあるが、一般に用いられる積層体の総質量流量が4ton/hour未満の積層シートの製造装置において、シート幅方向寸法Wが300mm以上となると、ただ単に流路が大きくなり装置が大型化するだけであり、また、シート幅方向寸法Wが50mm以下となると、口金拡幅比を大きくとる必要があり、界面不安定現象を抑制する効果が減少する。 【0052】 また、本実施形態の積層シートの製造装置において用いられるシート厚み方向寸法Tの値をT<1000mmの範囲にすることによって、装置の大型化を防ぐことができる。すなわち、シート材料を積層するために適した圧力損失を得るためには積層体の総質量流量に応じてシート厚み方向寸法Tを大きくする必要はあるが、一般に用いられる積層体の総質量流量が4ton/hour未満の積層シートの製造装置において、シート厚み方向寸法Tが1000mm以上となると、ただ単に流路が大きくなり装置が大型化するだけである。 【実施例】 【0053】 [実施例1] 本発明の積層シートの製造装置を用いて、実際に多層フィルムを製造した結果を説明する。本実施例における具体的な多層フィルムの製造方法は以下の通りである。 【0054】 (1)シート材料:シート材料A;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(東レ(株)製熱可塑性樹脂F20S)、シート材料B;シクロヘキサンジメタノール共重合PET(イーストマン社製熱可塑性樹脂PETG6763)、シート材料S;シクロヘキサンジメタノール共重合PET(イーストマン社製熱可塑性樹脂PETG6763) (2)仕込み:各シート材料を乾燥後、押出機に供給。押出機は280℃に設定し、ギヤポンプ、フィルターを介した後、各シート材料を積層装置に供給し合流させた。 【0055】 (3)積層装置:積層装置は図3にしめすような構成のものからマニホールド付きスリットと細孔を2個ずつ減らしたものを用い、A層1層、B層2層からなるマニホールド付きスリットから上記樹脂を吐出させ、目標積層比はA:B=1:1となるようにし、両表層部分がB層となるようにした。シート厚み方向寸法Lは流速分布から導き出し、表1に示した通りである。 【0056】 (4)吐出:積層装置で積層完了後、導管を経た積層体をTダイに供給しシート状に押出した後、静電印加(直流電圧8kV)にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、成形した。積層装置と口金とを接続する流路と口金の吐出口は図4に示すように形成した。各寸法は表1に示した通りである。 【0057】 (5)表面処理:成形したキャストフィルムをロールで搬送し、コーティング装置において、キャストフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、濡れ張力を55mN/mとし、その処理面にガラス転移温度Tg18℃のポリエステル樹脂/Tg82℃のポリエステル樹脂/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜を塗布し、透明、易滑、易接着層を形成した。 【0058】 (6)熱処理:続いて逐次二軸延伸機に導き、95℃の熱風で予熱後、縦方向(フィルム長手方向)および横方向(フィルム幅方向)にそれぞれ3.5倍に延伸した。さらに230℃の熱風にて熱処理を行うと同時に縦方向に5%の弛緩処理を行い、引き続き横方向にも5%の弛緩処理を行って、室温まで除冷後巻き取った。 【0059】 また、本実施例における界面不安定性の評価は次の方法によった。 【0060】 界面不安定現象:界面不安定現象が発生しているか否かは、形成された多層フィルムを目視することによって行った。また、表1において、界面不安定現象が発生しないというのは界面不安定現象によって、多層フィルムの厚みや層自体が明らかに乱れ、波状のムラなどが目視にて確認でき、不良品と判断された多層フィルムの割合が5%未満の場合で、○で表しており、それ以外の場合は、×で表している。 【0061】 結果を表1に示す。 [実施例2] 図4の各寸法を表1に示したように変更した点と、積層装置を下記に示したように変更した点以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。 【0062】 積層装置:積層装置は図3にしめすような構成のものにマニホールド付きスリットと細孔を4個ずつ増やしたものを用い、A層5層、B層4層からなるマニホールド付きスリットから上記樹脂を吐出させ、目標積層比はA:B=1:1となるようにし、両表層部分がA層となるようにした。シート厚み方向寸法Lは流速分布から導き出し、表1に示した通りである。 [実施例3] 図4の各寸法を表1に示したように変更した点と、積層装置を下記に示したように変更した点以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。 【0063】 積層装置:積層装置は図2にしめすような構成のものを用い、A層51層、B層50層からなるスリットから上記樹脂を吐出させ、目標積層比はA:B=1:1となるようにし、両表層部分がA層となるようにした。シート厚み方向寸法Lは流速分布から導き出し、表1に示した通りである。 [実施例4] 図4の各寸法を表1に示したように変更した点と、積層装置を下記に示したように変更した点以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。 【0064】 積層装置:積層装置は図2にしめすような構成のものを用い、A層401層、B層400層からなるスリットから上記樹脂を吐出させ、目標積層比はA:B=1:1となるようにし、両表層部分がA層となるようにした。シート厚み方向寸法Lは流速分布から導き出し、表1に示した通りである。 [比較例1] 図4の各寸法を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。この口金拡幅比Wd/Wは式(1)の範囲内であるが、断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lは式(2)の範囲外である。 [比較例2] 図4の各寸法を表1に示したように変更した以外は、実施例2と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。この口金拡幅比Wd/Wは式(1)の範囲内であるが、断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lは式(2)の範囲外である。 [比較例3] 図4の各寸法を表1に示したように変更した以外は、実施例3と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。この口金拡幅比Wd/Wは式(1)の範囲内であるが、断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lは式(2)の範囲外である。 [比較例4] 図4の各寸法を表1に示したように変更した以外は、実施例4と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。この口金拡幅比Wd/Wは式(1)の範囲内であるが、断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lは式(2)の範囲外である。 [比較例5] 図4の各寸法を表1に示したように変更した以外は、実施例2と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。この断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lは式(2)の範囲内であるが、口金拡幅比Wd/Wは10以上である。 [比較例6] 図4の各寸法を表1に示したように変更した以外は、実施例3と同様にして多層フィルムを製造した。結果を表1に示す。この断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lは式(2)の範囲内であるが、口金拡幅比Wd/Wは10以上である。 【0065】 【表1】
【0066】 [まとめ] 図10は、図9のグラフに各実施例および比較例1至及4における断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lの値を示したものであり、○は実施例、□は比較例1至及4を示している。これらの実施例の結果、表1と図10から、実施例、つまり積層装置と口金とを接続する流路の寸法が式(2)の関係を満足する形状である場合、多層フィルムに発生する界面不安定現象を抑制し、高品質の多層フィルムを形成する。 【0067】 また、比較例5および6において、表1から、断面寸法比W/Tと層厚み比T/Lの値は実施例2および3と等しく、式(2)の関係を満足する形状である。しかし、口金拡幅比Wd/Wの値は式(1)の関係を満たしておらず、結果としては多層フィルムに発生する界面不安定現象を抑制できなかった。つまり、多層フィルムに発生する界面不安定現象を抑制するためには、積層装置と口金とを接続する流路と口金の吐出口の寸法が式(1)および式(2)の関係を共に満足する形状である必要がある。 【産業上の利用可能性】 【0068】 本発明により製造される積層シートは、複数種類のシート材料が、その種類の数よりも多い数の複数の層に積層され、シート材料が固化して形成されたものである。本発明によれば、界面不安定現象の発生を抑制し、高品質の多層フィルムを容易に製造できる。 【図面の簡単な説明】 【0069】 【図1】本実施形態である積層シートの製造装置および製造工程を説明するための斜視図。 【図2】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる積層装置の内部構成を示す内部空間の部分斜視図。 【図3】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる積層装置の内部構成を示す内部空間の部分斜視図。 【図4】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる導管および口金の内部構成を示す内部空間の部分斜視図。 【図5】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる流路内を流れる積層体の断面図。 【図6】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる導管および口金の内部構成を示す内部空間の部分斜視図。 【図7】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる導管および口金の内部構成を示す内部空間の部分斜視図。 【図8】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる導管および口金の内部構成を示す内部空間の部分斜視図。 【図9】本実施形態である積層シートの製造装置において用いられる層厚み比T/Lに対する界面不安定現象の発生しない断面寸法比W/Tのグラフ。 【図10】各実施例の断面寸法比W/Tおよび層厚み比T/Lの値をプロットした図9のグラフ。 【符号の説明】 【0070】 1:シート材料Aが供給されるシート材料導入管 2:シート材料Bが供給されるシート材料導入管 3:積層装置 4:導管 5:口金 6:積層シート 7:キャスティングドラム 8:未延伸フィルム 11、12:シート材料導入路 13、14:マニホールド 15、16:細孔 17、18:積層装置のスリット 17m、18m:マニホールド付きスリット 19:積層完了部 21:マニホールド 22:口金のスリット 23:吐出口 24:流路 31:積層体 32:シート材料Aの層 33:シート材料Bの層 34:積層体の界面
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年7月27日(2006.7.27) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2008−30258(P2008−30258A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月14日(2008.2.14) |
| 【出願番号】 |
特願2006−204256(P2006−204256) |
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