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【発明の名称】 光学素子金型の製造方法及び光学素子金型
【発明者】 【氏名】山口 修一

【氏名】田口 淳

【要約】 【課題】光学素子金型を精度良く製造することができる光学素子金型の製造方法及び光学素子金型を提供する。

【構成】ワーク雇い上に載置された被加工物1Aを切削する工具を用いて加工して、複数の独立した光学機能面を有する光学素子を成形するための金型を作成する加工方法において、まず工具としての単結晶ダイヤモンドバイト42を用いてワーク雇い50に装着されたダミー加工物1BにX軸方向へ延びる直線的な溝を形成し、その最終端の座標を求める。その後、この座標を基準として加工すべき被加工物1Aの外周部の4つのポイントの座標から被加工物1Aの仮中心座標を求める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する工具と、前記被加工物を保持する保持部と、前記工具と前記保持部とを相対的に移動させるステージと、前記ステージの移動により前記工具とともに移動可能な顕微鏡とを有する加工装置を用いて加工して、光学機能面を有する光学素子を成形するための金型を作成する光学素子金型の製造方法において、
前記ステージを移動させながら前記工具を用いてダミーワークにX軸方向へ延びる直線的な溝を形成し、この溝の最終端のステージ位置座標を前記ステージからの出力に基づいて求め、
次に、前記溝の最終端のX座標、前記溝の一方の稜線のY座標、及び前記溝の他方の稜線のY座標を前記顕微鏡を用いて観察して、前記溝の最終端の座標を求め、
前記溝の加工時における最終端のステージ位置座標と前記顕微鏡を用いて観察された前記溝の最終端の座標とから差分量を求める第1工程と、
第1工程の後、加工すべき前記被加工物の外周部の4つのポイントの座標と前記差分量とに基づいて前記被加工物の基準座標を求める第2工程と
を含み、
前記基準座標に基づいて金型設計データから工具の刃先の位置を算出することを特徴とする光学素子金型の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記被加工物の外周部の4つのポイントの座標から前記被加工物の基準座標を求める工程を複数回行い、求められた基準座標が2回以上同一であったときの座標を基準座標とする工程を含むことを特徴とする請求項1記載の光学素子金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法で製造されたことを特徴とする光学素子金型。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は光学素子金型の製造方法及び光学素子金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズアレイ金型を切削加工によって製造する場合、その金型の基材(被加工物)の加工方法として、フライカット、シェーパ、プレーナ加工がある。被加工物はねじを用いて雇い(テーブル)に固定されるのが一般的である(下記特許文献参照)。
【0003】
レンズアレイ金型の製造途中で、レンズアレイ金型のうちの1つのレンズに対応する凹部を被加工物の加工面に形成し、雇いから被加工物を取り外し、被加工物の外周部から凹部の寸法を測定し、その測定値を凹部の位置ずれ補正に利用する。
【特許文献1】特開平11−179601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金型を製造するときの加工精度は刃先と被加工物との位置精度に依存するにもかかわらず、ねじの公差等のために被加工物を雇い上に高精度に位置決めすることは難しいので、金型を精度良く製造することは難しかった。
【0005】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は光学素子金型を精度良く製造することができる光学素子金型の製造方法及び光学素子金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、被加工物を加工する工具と、前記被加工物を保持する保持部と、前記工具と前記保持部とを相対的に移動させるステージと、前記ステージの移動により前記工具とともに移動可能な顕微鏡とを有する加工装置を用いて加工して、光学機能面を有する光学素子を成形するための金型を作成する光学素子金型の製造方法において、前記ステージを移動させながら前記工具を用いてダミーワークにX軸方向へ延びる直線的な溝を形成し、この溝の最終端のステージ位置座標を前記ステージからの出力に基づいて求め、次に、前記溝の最終端のX座標、前記溝の一方の稜線のY座標、及び前記溝の他方の稜線のY座標を前記顕微鏡を用いて観察して、前記溝の最終端の座標を求め、前記溝の加工時における最終端のステージ位置座標と前記顕微鏡を用いて観察された前記溝の最終端の座標とから差分量を求める第1工程と、第1工程の後、加工すべき前記被加工物の外周部の4つのポイントの座標と前記差分量とに基づいて前記被加工物の基準座標を求める第2工程とを含み、前記基準座標に基づいて金型設計データから工具の刃先の位置を算出することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光学素子金型の製造方法において、前記第2工程は、前記被加工物の外周部の4つのポイントの座標から前記被加工物の基準座標を求める工程を複数回行い、求められた基準座標が2回以上同一であったときの座標を基準座標とする工程を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の製造方法で製造されたことを特徴とする光学素子金型である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、光学素子金型を精度良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1(a)はこの発明の一実施形態に係る光学素子金型の製造方法の使用に用いられる加工装置の側面図、図1(b)はその平面図である。
【0012】
この加工装置はZ軸ステージ10とY軸ステージ20とX軸ステージ30とB軸ステージ(ステージ)40とを備えている。
【0013】
この実施形態の加工装置は例えばNC加工装置であり、例えばNCコントローラ(図示せず)からの指示によって、Z軸ステージ10、Y軸ステージ20、X軸ステージ30及びB軸ステージ40を駆動するモータ等のアクチュエータ(図示せず)の起動・停止や回転速度が制御される。
【0014】
Z軸ステージ10は定盤5上に配置されている。Z軸ステージ10は定盤5上をZ軸ステージガイド11に沿ってZ軸方向へ移動可能である。Z軸ステージ10の位置は例えばエンコーダで検出され、検出結果がNCコントローラにフィードバックされる。
【0015】
Z軸ステージ10上に配置された主軸ユニット15のZ軸方向の先端部にはワーク雇い(保持部)50が装着されている。ワーク雇い50を主軸ユニット15にさせるとき、主軸ユニット15に対するワーク雇い50の走り出し(X,Y,Z軸に対する傾き調整)が行なわれる。
【0016】
X軸ステージ30は定盤5上にZ軸ステージ10に対してZ方向に所定間隔をおいて対向配置されている。X軸ステージ30は定盤5上をX軸方向へ移動可能である。X軸ステージ30の位置は例えばエンコーダで検出され、検出結果がNCコントローラにフィードバックされる。
【0017】
Y軸ステージ20はX軸ステージ30上に配置されている。Y軸ステージ20はY軸ステージガイド21に沿ってY軸方向(高さ方向)へ移動可能である。Y軸ステージ20の位置は例えばエンコーダで検出され、検出結果がNCコントローラにフィードバックされる。
【0018】
B軸ステージ40はY軸ステージ20上に配置されている。B軸ステージ40はY軸ステージ20の下面に配置されたB軸ステージ用モータ41によってZ軸及びX軸と直交するY軸周りへ回転可能である。B軸ステージ40の回転角度は例えばエンコーダによって検出され、検出結果がNCコントローラにフィードバックされる。
【0019】
B軸ステージ40にはダイヤモンドバイト(工具)42を保持するダイヤモンドバイトホルダ43が設けられている。ダイヤモンドバイト42は一般に単結晶ダイヤモンドバイトが使用される。単結晶ダイヤモンドバイトは図3、4に示す溝2や凹部44aの外周部をばりを発生させないように形成することができるという特長を有する。
【0020】
ダイヤモンドバイト42を用いて被加工物1A(図2参照)の加工面(XY面)44を研削して、マイクロレンズのレンズ形状に対応する凹部44aを形成する。
【0021】
また、Y軸ステージ20には顕微鏡25が設けられている。顕微鏡25の視野には指標が設けられており、ワーク雇い50上の所望の位置に指標の中心が来るようにX軸ステージ30、Y軸ステージ20を位置決めすることで、ワーク雇い50上のXY平面座標を求める。
【0022】
図2(a)はこの発明の一実施形態に係る光学素子金型の平面図、図2(b)はその側面図である。
【0023】
ワーク雇い50には図3に示すマイクロレンズ金型(光学素子金型)1の基材となる被加工物1Aとダミー加工物(ダミーワーク)1Bとが固定されている。
【0024】
被加工物1Aの材料としては、例えばスタバックスにNi−P(無電解ニッケルめっき)を施したものがある。
【0025】
ダミー加工物1Bの材料としては例えば真鍮がある。
【0026】
次に、被加工物1Aの加工位置の算出方法を説明する。
【0027】
図3は溝加工されたダミー加工物の拡大平面図、図4(a)は被加工物の中心座標を求める方法を説明する被加工物の拡大平面図、図4(b)は被加工物の中心位置と凹部との位置関係を説明するための被加工物の拡大平面図、図5は製造方法を説明するフローチャートである。なお、図5において、S1〜S11は各加工ステップを示す。
【0028】
まず、ワーク雇い50に被加工物1A(ワーク)とダミー加工物1Bとを固定する(S1)。
【0029】
次に、ワーク雇い50を加工装置の主軸ユニット15に取り付ける(S2)。
【0030】
その後、ダミー加工物1Bの加工面にX軸方向へ延びる直線的な溝2を形成する(図2参照)(S3)。
【0031】
次に、工具座標系でダミー加工物1Bの加工面上の溝2の最終端の位置(XY座標(ステージ位置座標))を各エンコーダの出力値に基づいて求め、NCコントローラのメモリに記憶する(S4)。
【0032】
その後、溝2の最終端のX座標Xe、溝の一方の稜線のY座標Y1、及び溝2の他方のY座標Y2をそれぞれ顕微鏡25の指標中心に来るようにX軸ステージ30、Y軸ステージ20を駆動し、そのときの位置を各エンコーダの出力値に基づいて求める(図3参照)(S5)。このとき、1式を用いてY座標Y1とY座標Y2とから最終端のY座標Ycを求める。そして、工具座標系で溝2の最終端の座標と顕微鏡25を用いて観察された座標(Xe,Yc)とに基づいて差分量を求め、NCコントローラのメモリに記憶させる。
【0033】
Yc=(Y1+Y2)/2 (1式)
上記ステップS1〜S5が第1工程に対応する。
【0034】
次に、被加工物1Aの外周部の4つのポイントの座標x1,x2,y1,y2を顕微鏡25で観察しながら求める((図4(a)参照))(S6)。2式及び3式を用いて被加工物1Aの中心座標(KX、KY)を求め、その中心座標(KX、KY)を先のステップ(S5)で求めた差分量に基づいてダイヤモンドバイト42の座標(工具座標)に変換してNCコントローラに記憶させる((図3(b)参照))(S7)。
【0035】
KX=(x1+x2)/2 (2式)
KY=(y1+y2)/2 (3式)
その後、被加工物1Aの外周部の、前記4つのポイントと同一又は別の4つのポイントを再度顕微鏡で観察し、それらの座標からステップS7と同様にして被加工物1Aの中心座標(KX、KY)を求める(S8)。
【0036】
次に、ステップS7で求めた被加工物1Aの中心座標(KX、KY)とステップS8で求めた被加工物1Aの中心座標(KX、KY)とが一致するか否かを判断する(S9)。
【0037】
ステップS7で求めた被加工物1Aの中心座標(KX、KY)とステップS8で求めた被加工物の中心座標(KX、KY)とが一致しないとき(NO)、被加工物1Aの外周部の4つのポイントの座標を再度顕微鏡で観察し、それらの座標(図示せず)からステップS8と同様にして被加工物1Aの中心座標(KX、KY)を求め(S10)、ステップS9へ戻る。このステップS9、S10によって、より正確に中心座標KX、KYを求めることができる。
【0038】
ステップS7で求めた被加工物の中心座標(KX、KY)とステップS8で求めた被加工物の中心座標(KX、KY)とが一致したとき(YES)、この中心座標(KX、KY)を基準座標として工具座標上で、金型設計データ(マイクロレンズ金型の凹部の位置は設計値として定義されている)から被加工物1Aの加工位置(ダイヤモンドバイト42の刃先の位置)を算出する(S11)。
【0039】
上記ステップS6〜S11が第2工程に対応する。
【0040】
以上の工程を経て、ダイヤモンドバイト42と被加工物1Aとの位置関係が決まる。
【0041】
複数の種類のマイクロレンズ金型1を固定できるワーク雇い50の場合、ワーク雇い50を加工装置に取り付ける前に、各被加工物1A間の寸法を予め測定し、測定結果をNCコントローラのメモリに記憶させておけばよい。この測定結果を用いることによって総ての被加工物1Aの加工位置を求めることができる。
【0042】
その後、例えば以下の方法によって被加工物1Aを加工する。
(1)マイクロレンズ金型の凹部の曲率半径に応じてダイヤモンドバイト42をX軸、Z軸方向へ同時に移動させて、被加工物1Aの加工面44を切削する。
(2)被加工物1Aを予め決められた所定量だけ切削した後、被加工物1Aを所定ピッチだけY軸方向へ移動させる((図2(a)参照))。
(3)(1)と同様にダイヤモンドバイト42をX軸、Z軸方向へ同時に移動させて被加工物1Aの加工面44を切削する。
【0043】
以下、上記工程(1)〜(3)を繰返してマイクロレンズ金型1が作成される。
【0044】
本発明者が凹部44aの曲率半径2.5mmのいわゆる4目玉のマイクロレンズ金型1(直径:12mm)を上記加工方法によって作成したところ、位置決め誤差は最悪でも3μm以下であった(従来の方法では平均して10μm程度の位置決め誤差があった)。
【0045】
この実施形態によれば、レンズアレイ金型の製造途中で寸法測定のために、ワーク雇い50から被加工物1Aを取り外す必要がないため、ダイヤモンドバイト42と被加工物1Aとの位置関係を高精度に求め、被加工物1Aを容易かつ高精度に加工することができる。その結果、レンズアレイの各々を精度良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)はこの発明の一実施例に係る光学素子金型の製造方法の実施に使用される加工装置の側面図、図1(b)はその平面図である。
【図2】図2(a)はこの発明の一実施例に係る光学素子金型の平面図、図2(b)はその側面図である。
【図3】図3は溝加工されたダミー加工物の拡大平面図である。
【図4】図4(a)は金型の中心座標を求める方法を説明する被加工物の拡大平面図、図4(b)は金型の中心位置とマイクロレンズとの位置関係を説明する被加工物の拡大平面図である。
【図5】図5は加工方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1:マイクロレンズ金型(光学素子金型)、1A:被加工物、1B:ダミー加工物(ダミーワーク)、2:溝、25:顕微鏡、40:B軸ステージ(ステージ)、42:ダイヤモンドバイト(工具)、50:ワーク雇い(保持部)、x1,x2,y1,y2:4つのポイントの座標。
【出願人】 【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100091557
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 修


【公開番号】 特開2008−23758(P2008−23758A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196585(P2006−196585)