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【発明の名称】 キャストロール、光学フィルムの製造装置、及び、光学フィルムの製造方法
【発明者】 【氏名】風間 研一

【要約】 【課題】キャストロールとタッチロールの端部との接触を防止すると共に、キャストロールの表面に押し出されたフィルム状の溶融物の薄膜部を均一な圧力で挟圧してリタデーションの均一性に優れた光学フィルムを製造するためのキャストロール、光学フィルムの製造装置、及び、光学フィルムの製造方法を提供する。

【構成】フィルム状の溶融物の薄膜部を挟圧するための挟圧部と、挟圧部の両端に位置し、前記フィルム状の溶融物を挟圧しない非挟圧部とを備えたキャストロールを用いて、押し出されたフィルム状の溶融物の端部の厚膜部を逃がした状態で、薄膜部のみを挟圧する。挟圧部は全幅で外径が一定であり、非挟圧部の外径は挟圧部の外径よりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流延ダイから押し出されたセルロース樹脂を含むフィルム状の溶融物であって、膜厚の均一な薄膜部の両端に前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部を有する溶融物を表面で支持し、前記溶融物を、タッチロールと挟圧して光学フィルムを製造するためのキャストロールにおいて、
前記キャストロールは、前記溶融物の前記薄膜部を挟圧するための挟圧部と、前記挟圧部の両端に位置し、前記溶融物を挟圧しない非挟圧部とを含むロール本体と、前記ロール本体を回転させるための回転軸とを有し、
前記挟圧部は、前記薄膜部の幅よりも小さく、かつ、全幅で外径が一定であり、
前記非挟圧部は、外径が前記挟圧部の外径よりも小さいことを特徴とするキャストロール。
【請求項2】
前記薄膜部の膜厚をt1、前記厚膜部の膜厚をt2、前記挟圧部の直径をφp、前記非挟圧部の外側端部の直径をφqとしたとき、
0.8φp≦φq≦φp−2(t2−t1)を満足することを特徴とする請求項1記載のキャストロール。
【請求項3】
前記非挟圧部の幅が、いずれも20mm〜1000mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のキャストロール。
【請求項4】
前記キャストロールの前記挟圧部の幅が、1500mm〜4000mmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のキャストロール。
【請求項5】
前記薄膜部の膜厚が15μm〜60μmであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のキャストロール。
【請求項6】
セルロース樹脂を含む溶融物をフィルム状に押し出す流延ダイと、
前記流延ダイから押し出されたフィルム状の溶融物を表面で支持するキャストロールと、
前記キャストロールに対して付勢され、前記溶融物を前記キャストロールとの間で挟圧するタッチロールとを備えた光学フィルムの製造装置において、
前記キャストロールは、請求項1乃至5の何れか1項に記載のキャストロールであることを特徴とする光学フィルムの製造装置。
【請求項7】
セルロース樹脂を含む溶融物を流延ダイからキャストロールの表面にフィルム状に押し出す流延工程と、
前記流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、前記キャストロールとタッチロールとで挟圧する挟圧工程とを備え、
前記溶融物は、膜厚の均一な薄膜部の両端に前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部を有し、
前記キャストロールは、前記溶融物の前記薄膜部を挟圧するための挟圧部を含むロール本体と、前記ロール本体を回転させるための回転軸とを有する光学フィルムの製造方法において、
前記流延工程は、前記薄膜部の幅が、前記キャストロールの前記挟圧部の幅よりも大きくなるように前記溶融物を押し出す工程であり、
前記挟圧工程は、前記溶融物のうち、前記薄膜部のみを挟圧する工程であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のキャストロールを用いることを特徴とする請求項7記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース樹脂を含む光学フィルムを溶融流延製膜法で製造するためのキャストロール、そのキャストロールを備えた光学フィルムの製造装置、及び、そのキャストロールを用いた光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、従来のCRT表示装置に比べて、省スペース、省エネルギーであることからモニターとして広く使用されている。さらにTV用としても普及が進んできている。このような液晶表示装置には、偏光板用の保護フィルムや位相差フィルムなどの種々の光学フィルムが使用されている。
【0003】
偏光板用の保護フィルムは、延伸ポリビニルアルコールなどからなる偏光フィルムに貼り付けて偏光フィルムを保護するためのフィルムであり、セルロース樹脂を含むフィルムが用いられている。また、位相差フィルムは、視野角の拡大やコントラストの向上などの目的で用いられるものであり、セルロース樹脂を含むフィルムを延伸するなどしてリタデーションが付与されたものである。光学補償フィルム呼ばれることもある。
【0004】
このようなセルロース樹脂を含む光学フィルムの製造方法には、大別して、溶融流延製膜法と溶液流延製膜法とがある。前者は、ポリマーを加熱溶融して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要に応じて延伸等を行ってフィルムにする方法であり、後者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要に応じて延伸等を行ってフィルムにする方法である。
【0005】
従来、膜厚の均一化が容易なこと等の理由により溶液流延製膜法による製造が主流であった。しかし、溶液流延製膜法は、溶剤を大量に使用するため環境負荷が大きいこと、溶剤の回収のため巨大な生産設備が必要となること等の問題があることから、これらの問題の無い溶融流延製膜法による光学フィルムの製造が注目されるようになった。
【0006】
一方、これらの光学フィルムでは、光学的な性能、特にリタデーションが均一であることが要求される。特に、モニターやTVの大型化や軽量化が進み、リタデーションの均一性がますます厳しく要求されると共に、光学フィルムの広幅化、薄膜化も強く要求されるようになってきた。
【0007】
溶融流延製膜法による光学フィルムの製造は、セルロース樹脂を含む溶融物を流延ダイからキャストロールの表面にフィルム状に押し出し、押し出されたフィルム状の溶融物をキャストロールとタッチロールとによって挟圧することによってフィルムを得るのが一般的である。この際、フィルムにかかる圧力が樹脂の配向状態に影響を与え、得られるフィルムのリタデーションが変化するため、リタデーションの均一性が高い光学フィルムを得るためには、十分に均一な圧力で挟圧を行うことが重要になる。
【0008】
タッチロールとしては、ロールに弾性を持たせて圧力の均一化を図るため、金属内筒の外側に薄肉金属外筒をかぶせた二重筒ロールが知られている。また、このような二重筒のタッチロールにおいて、圧力の均一性を更に高めるために、中心部の径を大きくした太鼓形のロールを用いたロール装置や、薄肉金属外筒の肉厚をロールの両端部近傍で薄くしたロール装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−235747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、実際にセルロース樹脂を含む溶融物を流延ダイからキャストロールの表面にフィルム状に押し出した場合、押し出されたフィルム状の溶融物は、膜厚の均一な薄膜部の両端に前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部を有しることが明らかになった。かかる厚膜部の膜厚は、薄膜部の膜厚の1.2倍〜5倍になる。
【0010】
特許文献1においては、かかる厚膜部の存在については全く認識されておらず、提案されているロール装置を用いても、厚膜部の影響により、フィルム状の溶融物の薄膜部に均一な圧力をかけることができず、結果としてリタデーションの均一性が高い光学フィルムを得ることができないという問題があった。特に、薄膜部の膜厚が15μm〜60μmの場合にこの影響が顕著であり大きな問題となっていた。
【0011】
また、タッチロールとして弾性をもった二重筒ロールなどを使用した場合には、タッチロールが撓んでフィルムよりも外側でタッチロールがキャストロールに接触してしまい、薄膜部にかかる圧力が大きくばらついてしまうという問題があった。
【0012】
特許文献1で提案されている薄肉金属外筒の肉厚をロールの両端部近傍で薄くしたロール装置を用いることである程度はこの問題を抑制することができる。しかし、薄肉金属外筒の肉厚を薄くするため歪みが入りやすく耐久性に劣るという問題があり、特に、幅が1500mm〜4000mmといった幅広の光学フィルムの製造には対応しきれないという問題が残っていた。
【0013】
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、キャストロールとタッチロールの端部との接触を防止すると共に、キャストロールの表面に押し出されたフィルム状の溶融物の薄膜部を均一な圧力で挟圧してリタデーションの均一性に優れた光学フィルムを製造するためのキャストロール、光学フィルムの製造装置、及び、光学フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0015】
1. 流延ダイから押し出されたセルロース樹脂を含むフィルム状の溶融物であって、膜厚の均一な薄膜部の両端に前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部を有する溶融物を表面で支持し、前記溶融物を、タッチロールと挟圧して光学フィルムを製造するためのキャストロールにおいて、前記キャストロールは、前記溶融物の前記薄膜部を挟圧するための挟圧部と、前記挟圧部の両端に位置し、前記溶融物を挟圧しない非挟圧部とを含むロール本体と、前記ロール本体を回転させるための回転軸とを有し、前記挟圧部は、前記薄膜部の幅よりも小さく、かつ、全幅で外径が一定であり、前記非挟圧部は、外径が前記挟圧部の外径よりも小さいことを特徴とするキャストロール。
【0016】
2. 前記薄膜部の膜厚をt1、前記厚膜部の膜厚をt2、前記挟圧部の直径をφp、前記非挟圧部の外側端部の直径をφqとしたとき、0.8φp≦φq≦φp−2(t2−t1)を満足することを特徴とする前記1記載のキャストロール。
【0017】
3. 前記非挟圧部の幅が、いずれも20mm〜1000mmであることを特徴とする前記1又は2記載のキャストロール。
【0018】
4. 前記キャストロールの前記挟圧部の幅が、1500mm〜4000mmであることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載のキャストロール。
【0019】
5. 前記薄膜部の膜厚が15μm〜60μmであることを特徴とする前記1乃至4の何れか1項に記載のキャストロール。
【0020】
6. セルロース樹脂を含む溶融物をフィルム状に押し出す流延ダイと、前記流延ダイから押し出されたフィルム状の溶融物を表面で支持するキャストロールと、前記キャストロールに対して付勢され、前記溶融物を前記キャストロールとの間で挟圧するタッチロールとを備えた光学フィルムの製造装置において、前記キャストロールは、前記1乃至5の何れか1項に記載のキャストロールであることを特徴とする光学フィルムの製造装置。
【0021】
7. セルロース樹脂を含む溶融物を流延ダイからキャストロールの表面にフィルム状に押し出す流延工程と、前記流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、前記キャストロールとタッチロールとで挟圧する挟圧工程とを備え、前記溶融物は、膜厚の均一な薄膜部の両端に前記薄膜部よりも膜厚の厚い厚膜部を有し、前記キャストロールは、前記溶融物の前記薄膜部を挟圧するための挟圧部を含むロール本体と、前記ロール本体を回転させるための回転軸とを有する光学フィルムの製造方法において、前記流延工程は、前記薄膜部の幅が、前記キャストロールの前記挟圧部の幅よりも大きくなるように前記溶融物を押し出す工程であり、前記挟圧工程は、前記溶融物のうち、前記薄膜部のみを挟圧する工程であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0022】
8. 前記1乃至5の何れか1項に記載のキャストロールを用いることを特徴とする前記7記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、キャストロールとタッチロールの端部との接触を防止すると共に、押し出されたフィルム状の溶融物を端部の厚膜部を逃がした状態で挟圧できるため、キャストロールの表面に押し出されたフィルム状の溶融物の薄膜部を均一な圧力で挟圧してリタデーションの均一性に優れた光学フィルムを製造するためのキャストロール、光学フィルムの製造装置、及び、光学フィルムの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面(図1〜図4)を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
本発明は、溶融流延製膜法によってセルロース樹脂を含む光学フィルムを製造するための装置等に関するものである。ここで、溶融流延製膜法とは、セルロース樹脂を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その流動性を持った溶融物を流延して冷却固化することにより光学フィルムを得る方法である。
【0026】
図1は本発明における光学フィルムの製造装置の一例を示す図である。図1に示す光学フィルムの製造装置は、押出し機1、流延ダイ2、キャストロール3、タッチロール4、冷却ロール5、6、剥離ロール7、延伸装置8、巻取り機9を備えている。
【0027】
本実施形態においては、セルロース樹脂を含むフィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ2からキャストロール3の表面に溶融押し出しを行い、押し出されたフィルム状の溶融物をキャストロール3とタッチロール4により所定の圧力で挟圧する。さらに、2本の冷却ロール5、6に順に外接させて冷却固化し、剥離ロール7によって剥離する。剥離されたフィルム10は、延伸装置8によりフィルムの両端部を把持して幅手方向に延伸された後、巻取り装置9により巻き取られる。
【0028】
(材料の調製)
本発明において、セルロース樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、混合機等により行なってもよく、セルロース樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、一般的な混合機を用いることができる。
【0029】
本発明においては、上記のように光学フィルムを構成する材料を混合した後に、その混合物を押出し機1を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機1で溶融して製膜するようにしてもよい。また、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
【0030】
なお、本発明の製造装置で製造される光学フィルムを構成する材料の詳細については後述する。
【0031】
(押出し機)
押出し機1は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、中でも溶融混練押出し機が好ましい。単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。フィルム構成材料からペレットを作製せずに直接製膜を行なう場合、適当な混練度が必要であるために2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューとすることにより、適度の混練が得られるので使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。これらの押出し機は、一般的にプラスチック成形機として入手可能である。
【0032】
押出し機1の内部は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
【0033】
押出し機1内におけるフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するフィルムの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。押出し時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出し機1内でのフィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機1の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
【0034】
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機1でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
【0035】
(流延ダイ)
押出し機1から吐出された溶融物は流延ダイ2に供給され、流延ダイ2からフィルム状に押し出される。
【0036】
流延ダイ2はシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。流延ダイ2の材質としては、例えば、クロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミニウム、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以上の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向が好ましい)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどが挙げられる。
【0037】
(キャストロール)
キャストロール3は、流延ダイ2から押し出されたセルロース樹脂を含むフィルム状の溶融物を表面で支持し、その溶融物をタッチロール4と挟圧して光学フィルムを製造するためのロールである。
【0038】
図2は、図1のXで示される部分を上方から見た模式図である。本来、キャストロール3とフィルム状の溶融物20、タッチロール4は密着しているが、それぞれの形状を分かりやすく表すため、これらの図では、キャストロール3と溶融物20の間、溶融物20とタッチロール4の間にそれぞれ隙間を設けて表している。また、本発明の特徴を説明するため形状を誇張して表現している。
【0039】
キャストロール3は、溶融物20の薄膜部21を挟圧するための挟圧部を含むロール本体33と、ロール本体33を回転させるための回転軸34とを有している。通常は、高剛性の金属ロールであり、表面に支持したフィルム状の溶融物を冷却する機能も有している。溶融物を均一に、かつ効率よく冷却するため、ロール本体33の内部に水やオイルなどの冷却媒体が流れるような構造を備えていることが好ましい。ロール本体の表面の材質として、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどを用いることができる。更に表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0040】
流延ダイ2から押し出されてキャストロール3の表面で支持されるフィルム状の溶融物20は、膜厚の均一な薄膜部21の両端に薄膜部21よりも膜厚の厚い厚膜部22を有している。厚膜部22の膜厚は種々の条件によって異なるが、薄膜部の膜厚の1.2倍〜5倍になる。かかる厚膜部22は、通常、溶融物20の幅方向の両端部から内側に向かって、10mmから40mm程度の幅で存在している。なお、薄膜部21の膜厚は均一であり、通常、薄膜部の中央部の膜厚の90%〜110%の範囲に収まるように設定されている。
【0041】
フィルム状の溶融物20をキャストロールとタッチロールで挟圧する際、この厚膜部22を含めた溶融物20の全体を挟圧してしまうと、厚膜部22の影響によって、薄膜部21に対して均一に圧力をかけることができない。その結果、得られる光学フィルムは、リタデーションの均一性が悪く要求される品質を満足できないものとなってしまう。
【0042】
本発明においては、キャストロールの、溶融物の薄膜部を挟圧するための挟圧部の幅を、溶融物の薄膜部の幅よりも小さくして、溶融物のうち薄膜部のみを挟圧することでこの問題を解決している。このため、本発明のキャストロール3は、溶融物20の薄膜部21を挟圧するための挟圧部31と、挟圧部31の両端に位置し、溶融物20を挟圧しない非挟圧部32とを含むロール本体33と、ロール本体33を回転させるための回転軸34とを有している。
【0043】
挟圧部31は、フィルム状の溶融物20の薄膜部21に対して均一な圧力を加えると共に、フィルムの厚みを均一なものとするために、全幅で外径が一定であることが必要である。もっとも、外径が完全に一定な挟圧部31を有するキャストロールを実際に製造することは困難であり、キャストロールの製造の際に不可避的に生じる加工誤差程度のバラツキは許容される。一般的に、このような加工誤差としての外径のバラツキを、直径で10μm以下に抑えるのは困難である。
【0044】
挟圧部31の幅は、薄膜部21の幅よりも小さくする。前述の通り、厚膜部22は、通常、フィルム状の溶融物20の幅方向の両端部から内側に向かって、10mmから40mmの幅で存在していることから、挟圧部31の幅を、溶融物20の幅よりも20mm以上短くすることが好ましい。但し、挟圧部31の幅を必要以上に短くすることは、製造される光学フィルムの幅が短くなるため好ましくない。このような観点から、挟圧部31の幅を、溶融物の幅よりも20mm〜100mm小さくすることが好ましい。
【0045】
一方、非挟圧部32は、挟圧の際に溶融物20の厚膜部22を逃がすことができるように、挟圧部31よりも小さな外径を有している必要がある。挟圧部31と非挟圧部32の外径の差は、溶融物20の厚膜部22を逃がすことができるだけの差があれば良い。従って、薄膜部21の膜厚をt1、厚膜部22の膜厚をt2、挟圧部31の直径をφp、非挟圧部の外側端部の直径をφqとすると、φq≦φp−2(t2−t1)であることが必要である。但し、挟圧の際にタッチロールが撓む場合には、溶融物20の薄膜部21と厚膜部22の膜厚の差だけでなく、挟圧の際にタッチロールが撓む量も考慮して、非挟圧部32の直径を小さく設定しておくことが好ましい。
【0046】
また、ロール本体の端部近傍は温度制御が困難であり、表面の溶融物を均一に冷却させることが困難であることから、ロール本体の端部近傍で溶融物20の薄膜部21を挟圧することは好ましくない。このような観点から、挟圧部31の両端にある非挟圧部32の幅はいずれも20mm以上であることが好ましい。逆に非挟圧部32の幅が大きすぎるとキャストロールが必要以上に大型化してしまうことから好ましくない。かかる観点から、非挟圧部の幅は、いずれも20mm〜1000mmであることが好ましい。さらに、挟圧部31と非挟圧部32の直径の差が大きすぎると、挟圧部31の端部近傍の温度制御が困難になってしまうため、φq≧0.8φpであることが好ましい。まとめて表すと、0.8φp≦φq≦φp−2(t2−t1)を満足することが好ましい。
【0047】
非挟圧部32はフィルム状の溶融物20と接触しなくても良いし、薄膜部21にかかる圧力に影響を与えない程度の圧力であれば溶融物20と接触しても良い。
【0048】
挟圧部31の表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるため好ましい。挟圧部31の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。非挟圧部32はフィルム状の溶融物20と接触しない場合は表面粗さに制限はない。但し、非挟圧部32がフィルム状の溶融物20と接触する場合には、溶融物20との剥離性が問題とならない程度の平滑性を有していることが好ましい。
【0049】
薄膜部21の膜厚が薄くなるほど、挟圧の際の圧力がフィルムのリタデーションに及ぼす影響が顕著に表れてくる。特に薄膜部21の膜厚が60μm以下の場合に本発明の効果が大きい。一方、あまりに薄すぎるフィルムは強度的に弱く実用的ではない。かかる観点より、本発明は薄膜部21の膜厚が15μm〜60μmの場合に特に適しており、更に20μm〜50μmの場合に適している。
【0050】
非挟圧部32は、挟圧部31とは異なり溶融物20を挟圧しないため、外径が一定である必要はなく、位置によって外径が異なる形状であっても良い。
【0051】
図3は、本発明に係る他の形状のキャストロール3aを使用した場合の、図1のXで示される部分を上方から見た模式図である。キャストロール3aの非挟圧部32aの外径は一定ではなく、端部ほど外径が小さくなる形状をしている。
【0052】
また、タッチロールとして撓みやすい弾性ロールを使用した場合の、図1のXで示される部分を上方から見た模式図を図4に示す。キャストロール3は図2に示したものと同じである。
【0053】
従来のキャストロールを使用した場合、挟圧の際にタッチロール4aが撓んでタッチロール4aの両端部がキャストロールに接触してしまい、薄膜部21にかかる圧力が大きくばらついてしまうという問題があった。本発明のキャストロール3は両端部に外径の小さい非挟圧部32が存在するため、タッチロール4aが多少撓んでもキャストロール3に接触するという問題は発生しない。このような問題は製造する光学フィルムの幅が広い場合に顕著であった。かかる観点から、本発明のキャストロールは、挟圧部31の幅が1500mm〜4000mmの場合に特に有効である。
【0054】
(タッチロール)
本発明において、タッチロール4は、一般的に溶融流延製膜法によるフィルムの製造に用いるものであれば特に制限はなく、適宜選択して用いることができる。例えば、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属ロールや、表面をゴム、樹脂等で被覆したロール等を用いることができる。
【0055】
また、キャストロール3との間でフィルム状の溶融物20を挟圧する際に溶融物20にかかる圧力を均一化するという観点からは、金属外筒と、内筒と、金属外筒と内筒との間にあって流体を流すための空間とを備えた2重構造の弾性タッチロールを用いることが好ましい。
【0056】
かかる2重構造の弾性タッチロールにおいて、金属外筒の材質は、平滑で、適度な弾性があり、耐久性があることが好ましい。炭素鋼、ステンレス、チタン、電鋳法で製造されたニッケルなどが好ましく用いることができる。更にその表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0057】
金属外筒の肉厚は、弾性、強度、回転ムラ等を考慮し、0.003≦(金属外筒の肉厚)/(タッチロール半径)≦0.03を満たす範囲とすることが好ましい。金属外筒の肉厚があまり薄すぎると強度が不足し破損の懸念がある。逆に、厚すぎると、フィルムにかかる圧力を均一に保つことが困難となる。一方、タッチロールの半径が大きければ金属外筒の肉厚が厚くても適度な弾性を確保できる。タッチロールの直径は、100mm〜600mmが好ましい。
【0058】
金属外筒の表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるため好ましい。金属外筒の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。
【0059】
内筒は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの軽量で剛性のある金属製であることが好ましい。内筒に剛性をもたせることで、ロールの回転ぶれを抑えることができる。内筒の肉厚は、外筒の2〜10倍とすることで十分な剛性が得られる。内筒には更にシリコーン、フッ素ゴムなどの樹脂製弾性材料が被覆されていてもよい。
【0060】
流体を流す空間を備えるのは、ロール表面の温度の均一化を図るためである。このため、例えば、幅方向に行きと戻りが交互に流れるような構造にしたり、スパイラル状に流れるような構造にすることでロール表面の温度分布を小さくすることができる。冷却のための流体は、特に制限はなく、使用する温度域に合わせて水やオイルを使用できる。
【0061】
タッチロール4の表面温度は、フィルムのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。Tgより高いと、フィルムとタッチロールとの剥離性が劣る場合がある。低すぎるとフィルムからの揮発成分がロールに析出する場合があるので、10℃〜Tg−10℃であることが更に好ましい。ここでTgとは、フィルムのTgであり、DSC測定(昇温速度10℃/分)によって求められる、ベースラインが偏奇し始める温度である。
【0062】
本発明の製造装置で用いるタッチロール4は、幅方向の中央部の径が端部の径より大きい、いわゆる太鼓形の形状とすることが好ましい。タッチロールは、その両端部を加圧手段でフィルムに押圧するのが一般的であるが、この場合、タッチロールが撓むため端部にいくほど強く押圧されてしまう現象がある。タッチロールを太鼓形にすることで更に均一な圧力で挟圧することが可能となる。
【0063】
本発明の製造装置では、タッチロール4の汚れを清掃する装置を配してもよい。清掃装置としては、例えば、必要により溶剤を浸透させた不織布などの部材をタッチロール4の表面に押し当てる装置、コロナ放電やグロー放電などのプラズマ放電によりタッチロール表面の汚れを揮発させる方装置などが挙げられる。
【0064】
タッチロール4の表面温度を更に均一にするため、タッチロール4に温調ロールを接触させたり、温度制御された空気を吹き付けたり、液体などの熱媒体を接触させてもよい。
【0065】
(冷却ロール)
本実施形態においては、押し出されたフィルム状の溶融物をキャストロール3とタッチロール4により所定の圧力で挟圧した後、2本の冷却ロール5、6に順に外接させて冷却固化させて光学フィルム10を得る。
【0066】
冷却ロール5、6は高剛性の金属ロールであり、キャストロール3と同様に、表面に支持したフィルムの冷却の均一化と冷却効率の向上のため、内部に水やオイルなどの冷却媒体が流れるような構造を備えていることが好ましい。冷却ロール5、6の直径は、表面に支持したフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常は100mmから1m程度である。表面の材質として、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどを用いることができる。更に表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。表面粗さは、算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。
【0067】
本実施形態の製造装置は、2本の冷却ロールを備えているが、冷却ロールの本数はこれに限定される物ではなく、更に多数の冷却ロールを備えた製造装置とすることもできる。
【0068】
(延伸装置)
本実施形態においては、冷却ロール5、6で冷却固化したフィルムは、剥離ロール7によって冷却ロール6から剥離された後、フィルムの用途に応じて延伸装置8によって延伸される。
【0069】
延伸装置8として、公知のフィルム用延伸機を用いることができる。1軸延伸機の他、必要に応じて同時2軸延伸機などを用いることもできる。延伸は、製造する光学フィルムの用途に応じて、所望のリタデーション特性が得られるように、温度、倍率などの条件を選択すればよい。
【0070】
例えば、偏光板用の位相差フィルムを製造する場合、延伸方向を幅方向とすることで、偏光フィルムとの積層をロール形態で行うことができるため好ましい。本実施形態において製造されるセルロース樹脂を含んだフィルムを幅方向に延伸することで、フィルムの幅方向が遅相軸となった位相差フィルムが得られる。一方、位相差フィルムと張り合わされる偏光フィルムの透過軸も通常幅方向である。偏光フィルムの透過軸と位相差フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
【0071】
偏光板用の位相差フィルムを製造する場合、通常、延伸倍率は1.1〜3.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる場合が多い。延伸倍率が小さすぎると所望のリタデーションが得られない場合があり、大きすぎると破断してしまう場合がある。また、延伸温度が低すぎると破断してしまう場合があり、高すぎると所望のリタデーションが得られない場合がある。
【0072】
位相差フィルムの場合に好ましい面内リタデーション(Ro)は20〜200nm、厚み方向リタデーション(Rt)は90〜400nmであり、フィルムの面内リタデーション(Ro)が20〜100nm、厚み方向リタデーション(Rt)が90〜200nmであることが更に好ましい。また、RtとRoの比Rt/Roは、0.5〜4が好ましく、特に1〜3が好ましい。いずれも測定波長は590nmである。
【0073】
なお、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。
【0074】
リタデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±2nm以下である。本発明の製造装置を用いることで、リラデーションの均一性の高い光学フィルムを製造することができる。
【0075】
光学フィルムを幅方向に延伸するための延伸装置(横延伸装置)の前または後に、光学フィルムを長手方向に延伸するための延伸装置(縦延伸装置)を備えていても良い。このような縦延伸装置として、例えば特開2001−198976号公報に記載の装置などを用いることができる。
【0076】
(巻取り機等)
延伸装置8によって所望のリタデーション特性が付与された光学フィルムは、端部を図示しないスリッターによって所定の幅に切断された後、巻取り機9によって巻き取られる。
【0077】
なお、本発明の製造装置は、用途に応じて適宜他の装置を備えていても良い。例えば、延伸装置の後に、熱固定のための熱処理機を備えていても良い。また、巻取り機の前に、フィルムの端部の張り付き傷を防止するためのナーリング加工装置(エンボッシング加工装置)や、冷却装置、除電装置、等を備えていても良い。
【0078】
(光学フィルムを構成する材料)
本発明の製造装置で製造される光学フィルムを構成する材料は、セルロース樹脂、必要により安定化剤、可塑剤、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、滑り剤としてのマット剤、リタデーション制御剤等が含まれる。これらの材料は、目的とする光学フィルムの要求特性により適宜選択される。
【0079】
光学フィルムを構成する材料に揮発成分が存在すると、光学フィルムとして要求される平面性や透明性を阻害する要因となる場合があるため好ましくない。これは、製膜されたフィルムに揮発成分が混入すると透明性が低下すること、及び流延ダイから押し出されたフィルムの表面に筋が入る要因となり平面性劣化を誘発することがあるからである。加熱溶融時に揮発成分の発生を回避する観点から、光学フィルムを構成する材料の中に製膜するための溶融温度よりも低い温度領域で揮発する成分が存在することは好ましくない。
【0080】
揮発成分としては、例えば、光学フィルムを構成する材料の中のいずれかが吸湿した水分や、材料の購入前又は合成時に混入した溶剤等が挙げられ、加熱による蒸発、昇華あるいは分解によって揮発が起こる。従って光学フィルムを構成する材料の選択は、揮発成分の発生を回避する上でも重要である。
【0081】
(セルロース樹脂)
本発明の製造装置で製造される光学フィルムを構成する材料としてのセルロース樹脂とは、セルロースエステルの構造を有し、脂肪族アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の中から少なくともいずれかの構造を含む、セルロースの単独または混合酸エステルである。
【0082】
以下、本発明の製造装置で製造される光学フィルムを構成する材料として適したセルロース樹脂について例示するがこれらに限定されるものではない。
【0083】
セルロース樹脂が芳香族アシル基を含む場合、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基の例として、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2、−O−Si(−R)3等が挙げられる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。
【0084】
置換基の数は、1個〜5個、好ましくは1個〜4個、より好ましくは1個〜3個、さらにより好ましくは1個または2個である。さらに、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよい。また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0085】
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基又はウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基又はカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基が最も好ましい。
【0086】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。また、上記アルキル基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0087】
上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシが挙げられる。
【0088】
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例として、フェニルやナフチルが挙げられる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシやナフトキシが挙げられる。
【0089】
上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例として、ホルミル、アセチル、ベンゾイルが挙げられる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルボンアミド基の例として、アセトアミドやベンズアミドが挙げられる。
【0090】
上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例として、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドが挙げられる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。ウレイド基の例として、(無置換)ウレイドが挙げられる。
【0091】
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例として、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルが挙げられる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例として、メトキシカルボニルが挙げられる。
【0092】
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例として、フェノキシカルボニルが挙げられる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例として、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0093】
上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例として、(無置換)カルバモイルやN−メチルカルバモイルが挙げられる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例として、(無置換)スルファモイルやN−メチルスルファモイルが挙げられる。
【0094】
上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例として、アセトキシやベンゾイルオキシが挙げられる。上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例として、ビニル、アリル、イソプロペニルが挙げられる。
【0095】
上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例として、チエニルが挙げられる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0096】
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
【0097】
セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20であり、具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
【0098】
ここで、脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味である。この場合の置換基としては、上述の芳香族アシル基において芳香族環がベンゼン環である場合に、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
【0099】
位相差フィルムとして用いる光学フィルムを製造する場合には、セルロース樹脂としてセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0100】
これらの中で特に好ましいセルロース樹脂として、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0101】
本発明で用いられるセルロース樹脂の原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロース樹脂は適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
【0102】
セルロース樹脂以外の高分子材料やオリゴマーを、適宜選択してセルロース樹脂と混合してもよい。このような高分子材料やオリゴマーはセルロース樹脂と相溶性に優れ、フィルムにしたときの全可視域(400nm〜800nm)に渡り高い透過率が得られるものが好ましい。
【0103】
(安定化剤)
セルロース樹脂の加熱溶融前または加熱溶融時に、安定化剤を添加することが好ましい。安定化剤には、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。
【0104】
安定化剤としては、ヒンダードフェノール酸化防止剤、酸捕捉剤、ヒンダードアミン光安定剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、アミン類などを含む。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−197073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。
【0105】
光学フィルムを構成する材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種起因の分解反応を抑制または防止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために安定化剤を用いる。すなわち、光学フィルムを構成する材料への安定化剤の添加は、光学フィルムを構成する材料のうち安定化剤以外の材料の変質や分解による揮発成分の発生を抑制または防止する観点で優れている。また、安定化剤自身もフィルム構成材料の溶融温度領域において、揮発成分を発生しないことが求められる。
【0106】
位相差フィルムとして用いる光学フィルムを製造する場合にも、安定化剤を含有させることが好ましい。安定化剤を含有させることにより、位相差フィルムとしてのリタデーションを付与するための工程において、フィルム構成材料の強度の劣化を抑制し、または材料固有の強度を維持できる。また、安定化剤の存在は、加熱溶融時において可視光領域の着色物の生成を抑制すること、または揮発成分がフィルム中に混入することを防止することによって、透過率やヘイズ値といった特性を位相差フィルムとして好ましい値に維持できる点で優れている。ヘイズ値は1%未満、より好ましくは0.5%未満であることが好ましい。
【0107】
安定化剤は、少なくとも1種以上選択することができる。添加する量は、セルロース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.005質量部以上3質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以上0.8質量部以下である。
【0108】
安定化剤の添加量が少なすぎると、安定化作用が低いために安定化剤の効果が得られず、また添加量が多すぎると、樹脂への相溶性の観点からフィルムとしての透明性の低下を引き起こし、またフィルムが脆くなることもあるために好ましくない。
【0109】
安定化剤は、樹脂を溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、公知の混合機等により行なうことができる。セルロース樹脂調製過程において混合してもよい。混合を樹脂の融点以下、安定化剤の融点以上の温度で混合することにより、安定化剤のみを溶融して樹脂の表面に安定化剤を吸着させるようにしてもよい。
【0110】
(可塑剤)
光学フィルムの機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等の観点から、可塑剤を含んでいることが好ましい。また、セルロース樹脂単独の場合よりも溶融温度を低下させることができ、または同じ加熱温度においてセルロース樹脂単独の場合よりも溶融粘度を低下させることができるという観点からも可塑剤を含んでいることが好ましい。溶融温度を低下させるためには、添加する可塑剤がセルロース樹脂のガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつことが好ましい。
【0111】
可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の質量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
【0112】
リン酸エステル誘導体としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
【0113】
カルボン酸エステル誘導体としては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等が挙げられ、フタル酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。
【0114】
その他、使用できる可塑剤の例として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート、トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート)等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。また、これらアルキルフタリルアルキルグリコレート等を2種以上混合して使用してもよい。
【0115】
可塑剤の添加量は、セルロース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上〜20質量部未満、より好ましくは1質量部以上〜11質量部未満である。
【0116】
(紫外線吸収剤)
製造される光学フィルムの用途によっては、更に、紫外線吸収剤を含んでいることが好ましい。紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0117】
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0118】
(マット剤)
光学フィルムには、滑り性、搬送性や巻き取りをし易くするためにマット剤を添加してもよい。マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。
【0119】
中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。
【0120】
微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の平均粒径は0.005〜1.0μmの範囲が好ましい。微粒子が凝集して二次粒子が形成されていても良い。特に好ましい微粒子の平均粒径は5〜50nm、さらに好ましくは、7〜14nmである。微粒子の含有量は、セルロース樹脂に100質量部に対して0.005〜0.3質量部が好ましい。
【0121】
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル株式会社製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。
【0122】
これらの微粒子は樹脂と混練して添加することができ、更に安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤などとともに混練することも出来る。或いは予めメタノール、エタノールなどの溶媒中に分散した微粒子をセルロース樹脂に噴霧し、混合後乾燥させたものを用いてもよく、溶媒中に分散した微粒子を主にメチレンクロライド或いは酢酸メチルを溶媒とするセルロース樹脂溶液に添加混合したものを乾燥させて固形化しペレット状にしたものを溶融流延の原材料として用いてもよい。この場合、微粒子を含むセルロース樹脂溶液には、更に安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤などの一部若しくは全部を含有させることがより好ましい。
【0123】
あるいは、セルロース樹脂100質量部あたり、微粒子0.1〜20質量部をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの溶媒10〜100質量部に分散させた分散液を添加し、溶媒を除去しながら混練して得た熱可塑性樹脂組成物を微粒子を含有する溶融流延の原材料(好ましくはペレット状)として用いてもよい。
【0124】
(リタデーション制御剤)
位相差フィルムとして用いる光学フィルム等を製造する場合には、リタデーションを調節するためのリタデーション制御剤を添加してもよい。リタデーション制御剤としては、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することができる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
図1に示した光学フィルムの製造装置を用いて、セルロース樹脂を含んだ位相差フィルムを製造した。この装置は、キャストロールとして図2に示したキャストロール3を備えている。
【0126】
先ず、下記材料を、窒素ガスを封入したV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた2軸押出し機(PCM30(株)池貝社製)を用いて240℃で溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製した。
【0127】
セルロースアセテートプロピオネート(セルロース樹脂) 100質量部
(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.35、
総アシル基置換度2.75、数平均分子量60000、
ガラス転移点:Tg=174℃)
トリメチロールプロパントリベンゾエート(可塑剤) 10質量部
IRGANOX XP 420/FD(チバスペシャルティケミカルズ社製)
(安定化剤) 1質量部
シーホースターKEP−30(日本触媒(株)製)
(平均粒径0.3μmシリカ微粒子)(マット剤) 0.1質量部
Ti928(チバスペシャルティケミカルズ社製)(紫外線吸収剤) 1.5質量部
なお、上記アセチル基置換度、プロピオニル置換度、総アシル基置換度は、ASTM−D817−96の規定に準じた方法により測定した。
【0128】
得られたペレットを100℃で5時間乾燥させて含水率100ppmとし、幅1900mmの流延ダイ(Tダイ)を取り付けた単軸押出し機(GT−50;(株)プラスチック工学研究所社製)に供給して、押出し機および流延ダイを250℃に設定して製膜を行った。流延ダイ表面にはハードクロムメッキを施し面粗度0.1Sの鏡面仕上げを行った。押し出されたフィルム状の溶融物は、キャストロール3とタッチロール4とで溶融物を挟圧するための空隙部に落下させた。押し出されたフィルム状の溶融物の幅は約1800mm、薄膜部の厚みは約100μmであり、両端部に幅20mm、厚み250μmの厚膜部が存在していた。
【0129】
キャストロール3は、溶融物20の薄膜部21を挟圧するための挟圧部31と、挟圧部31の両端に位置し、溶融物20を挟圧しない非挟圧部32とを含むロール本体33と、ロール本体33を回転させるための回転軸34とを有している。挟圧部31は直径300mm、幅1740mm、非挟圧部32は直径が298mm、ロール本体33の幅は2200mmである。挟圧部の表面は、クロムメッキされ、更に面粗度0.1Sの鏡面仕上げが為されている。
【0130】
落下した溶融物をキャストロール3とタッチロール4で押圧した。このときの荷重は8700Nであり、荷重を挟圧部31の幅で除した線圧は50N/cmであった。押圧されたフィルムは、さらに2本の冷却ロール5、6に接触しながら搬送され、冷却固化した後、剥離ロール7によって冷却ロールから剥離された。次いで、延伸装置8によりフィルムの幅手方向に1.3倍延伸し、フィルムの端部をスリッターにより切断した後、巻取り機9によって巻き取った。
【0131】
得られた光学フィルムのリタデーションの測定を行った。測定箇所は、フィルムの幅方向の中央部、及びキャストロール3の挟圧部の幅より内側100mmの箇所(左右2カ所)の3カ所とした。各位置で面内リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定し、それぞれのバラツキ量を求めた。
【0132】
リタデーションの測定はKobra−WX150K(王子計測機器株式会社製)を用いて行った。測定波長は590nmとした。
【0133】
(実施例2〜9)
実施例1と同様に、本発明のキャストロール3を用いて光学フィルムを製造した。流延ダイを交換し、押出し量を変更することでキャストロール3の表面に押し出されたフィルム状の溶融物20の幅と厚みを変更し、キャストロール3の挟圧部の幅を、溶融物20の幅に応じて変更している。それ以外は基本的に実施例1と同じ条件である。但し、タッチロールによる荷重は、線圧が等しくなるように、キャストロール3の挟圧部の幅に応じて変更した。いずれの条件においてもキャストロールとタッチロールの端部とが接触することはなかった。その後、製造された光学フィルムのリタデーションを実施例1と同条件で測定した。
【0134】
(比較例1〜9)
キャストロールとして、非挟圧部を有さず、ロール本体の幅全体にわたって直径が均一なキャストロールを用いて、実施例1〜9と同様に光学フィルムを製造した。使用したキャストロールのロール本体の直径は300mmであった。比較例1〜9においては、荷重をフィルムの幅で除した値を線圧とした。実施例と同様に、製造された光学フィルムのリタデーションを測定した。測定箇所は実施例1〜9と同じ位置とした。
【0135】
実施例1〜9、及び、比較例1〜9の製造条件とリタデーションの測定結果と表1にまとめて示す。
【0136】
【表1】


【0137】
表1に示したように、本発明に係るキャストロールを用いて製造した実施例1〜9は、いずれもリタデーションのバラツキ量が5nm以下と非常に良好な値が得られている。これは、キャストロールが非挟圧部を備えているため、タッチロールとの間でフィルム状の溶融物20を挟圧する際、厚膜部の影響を排して均一な圧力を加えることができたからと考えられる。
【0138】
一方、比較例1〜9は、同条件の実施例と比較していずれもリタデーションのバラツキ量が大きく、良好な光学フィルムを得ることができなかった。特に、フィルムの幅が広く、厚みが薄いほど、実施例との差が大きい。さらに、キャストロールの幅が広い場合、キャストロールとタッチロールの端部とが接触してしまったため、リタデーションのバラツキ量が非常に大きくなった。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明における光学フィルムの製造装置の一例を示す図
【図2】図1のXで示される部分を上方から見た模式図
【図3】本発明に係る他の形状のキャストロール3aを使用した場合の、図1のXで示される部分を上方から見た模式図
【図4】タッチロールとして撓みやすい弾性ロールを使用した場合の、図1のXで示される部分を上方から見た模式図
【符号の説明】
【0140】
2 流延ダイ
3、3a キャストロール
4、4a タッチロール
20 フィルム状の溶融物
21 薄膜部
22 厚膜部
31、31a 挟圧部
32、32a 非挟圧部
33、33a ロール本体
34 回転軸
【出願人】 【識別番号】303000408
【氏名又は名称】コニカミノルタオプト株式会社
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−23745(P2008−23745A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195879(P2006−195879)