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【発明の名称】 近赤外線吸収性能を備えた樹脂成形体の製造方法
【発明者】 【氏名】北山 和彦

【氏名】田村 信人

【氏名】下村 直

【要約】 【課題】近赤外線吸収性及び可視光線透過性を備えた樹脂成形体の製造方法において、金属硫化物微粒子を小さくして均一分散させ、硫黄臭を抑えるようにする。

【構成】ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物とを、金属化合物中の金属と硫黄及び/または硫黄化合物中の硫黄とのモル比率が9:6よりも硫黄の比率が大きく、かつ、1:10よりも硫黄の比率が小さくなる割合で混合し、3者が溶融し得る温度に加熱して混練することにより、金属化合物の金属と硫黄及び/または硫黄化合物の硫黄とを反応させて金属硫化物微粒子を合成させる共にベース樹脂中に分散させるようにして樹脂成形体を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物とを、金属化合物中の金属と硫黄及び/または硫黄化合物中の硫黄とのモル比率が9:6よりも硫黄の比率が大きく、かつ、1:10よりも硫黄の比率が小さくなる割合で混合し、これら3者が溶融し得る温度に加熱して混練することにより、金属化合物の金属と硫黄及び/または硫黄化合物の硫黄とを反応させて金属硫化物微粒子を合成させる共に該金属硫化物微粒子をベース樹脂中に分散させることを特徴とする金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
金属化合物と硫黄及び/または硫黄化合物とを予め混合し、この混合物をベース樹脂に添加して加熱し混練することを特徴とする請求項1記載の金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
樹脂のメルトゾーンの入り口部直後にミキシングデバイスを少なくとも一つ以上備えた溶融混練押出機を用いることにより、ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物とを混練しながら溶融押出する過程で、金属化合物の金属と硫黄及び/または硫黄化合物の硫黄とを反応させて金属硫化物微粒子を合成すると共にベース樹脂中に分散させることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物とを混練する温度を、ベース樹脂の流動開始温度以上でかつ該流動開始温度よりも130℃以上には高くない温度範囲とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物とを混練する温度を、ベース樹脂の流動開始温度以上でかつ該流動開始温度よりも100℃以上には高くない温度範囲とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物とを混練する温度を、ベース樹脂の流動開始温度以上でかつ該流動開始温度よりも80℃以上には高くない温度範囲とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
金属化合物と硫黄及び/または硫黄化合物とを、金属化合物中の金属と硫黄及び/または硫黄化合物中の硫黄とのモル比率が5:6乃至1:6となるように混合することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの製造方法によって製造された金属硫化物微粒子含有樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線を吸収し、且つ可視光線を透過する樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線を吸収し、且つ可視光線を透過する樹脂成形体は、太陽からの熱を遮ることができ、しかも明るさを十分に採り入れることができるため、アーケード、ガレージ、サンルーム、テラス、温室等の屋根材や壁材などの採光材として利用されている。
【0003】
この種の樹脂成形体としては、従来、例えばチウラム系化合物および/またはジチオカルバメート系化合物と銅化合物とを含有してなる樹脂成形体(特許文献1参照)や、ジチオカルバミン酸銅系化合物と銅化合物とを含有した樹脂成形体(特許文献2参照)などが知られていた。
【0004】
しかし、これらの樹脂成形体は、含有物であるチウラム系化合物やジチオカルバメート系化合物が雨水によって溶出し、環境汚染の原因となる可能性があった。また、溶融成形温度が高くなると、近赤外線吸収性能が低下するという問題も抱えていた。
【0005】
かかる問題点を解決するため、特許文献3に係る発明は、チウラム系化合物を含有しない樹脂成形体として、樹脂に硫黄と所定の銅化合物とを含有させてなる樹脂成形体を提案している。
【0006】
【特許文献1】特開平11−181302号公報
【特許文献2】特開平11−349828号公報
【特許文献3】特開2005−97577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示された樹脂成形体をガレージの屋根材等とすれば、雨水によって含有物が溶出することがないばかりか、近赤外線すなわち熱線の吸収性能に優れるため、太陽熱を遮り、ガレージに駐車した自動車の車内温度上昇を抑えることができ、しかも可視光線透過性にも優れるため、明るさを十分確保することができる。
【0008】
ところが、研究を進めるうちに、この種の樹脂成形体が含有する近赤外線吸収性能を備えた微粒子、特に金属硫化物微粒子の大きさをより小さくして分散させることにより、近赤外線吸収性及び可視光線透過性がさらに高まることが分ってきた。と同時にまた、硫黄および/または硫黄化合物を樹脂中に溶融混練すると、溶融混練した際に成形後の樹脂成形体から特有の硫黄臭が生じることが分かってきた。
【0009】
そこで本発明は、近赤外線吸収性及び可視光線透過性を備えた樹脂成形体の製造方法に関し、近赤外線吸収性能を備えた微粒子の大きさを小さくすると共に、該微粒子を樹脂中に均一分散させることができ、しかも硫黄臭を生じさせない新たな製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物とを、金属化合物中の金属と硫黄及び/または硫黄化合物中の硫黄とのモル比率が9:6よりも硫黄の比率が大きく、かつ、1:10よりも硫黄の比率が小さくなる割合で混合し、これら3者が溶融し得る温度に加熱して混練することにより、金属化合物の金属と硫黄及び/または硫黄化合物の硫黄とを反応させて金属硫化物微粒子、具体的には平均粒子径が1μmより小さい金属硫化物微粒子を合成させる共に該金属硫化物微粒子をベース樹脂中に分散させることを特徴とする金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の製造方法を提案する。
【0011】
通常入手できる金属硫化物、例えば硫化銅(CuS)の粒子径は小さくとも数μm程度であるが、上記の如く金属化合物と硫黄及び/または硫黄化合物とを樹脂と共に溶融混練しながら反応させることにより、肉眼では視認できない大きさの微粒子、すなわち平均粒子径が1μmより小さいナノレベルの金属硫化物微粒子を合成することができ、同時に該微粒子を樹脂中に均一分散させることができる。そして、このようにして製造すれば、粒子径が1μm以上のミクロンレベルの金属硫化物(例えば硫化銅(CuS))を含有していた従来の樹脂成形体に比べ、近赤外線吸収性及び可視光線透過性をより一層優れたものとすることができる。
さらに、金属化合物中の金属と硫黄及び/または硫黄化合物中の硫黄とのモル比率を所定範囲に規定することにより、金属硫化物微粒子を分散させた場合に生じる特有の硫黄臭の発生を抑えることもできる。
【0012】
なお、本発明において、金属硫化物微粒子の判別は、電子顕微鏡観察により判定することも可能であるが、肉眼による目視にて視認できない大きさであれば当該金属硫化物微粒子と判定することができる。すなわち、本発明における「金属硫化物微粒子」は、肉眼による目視にて視認できない大きさの金属硫化物微粒子と言い換えることができ、より具体的には平均粒子径1μmより小さな金属硫化物微粒子であるということもできる。
また、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意であり、「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意を包含するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態では、ベース樹脂と、金属化合物と、硫黄及び/または硫黄化合物(以下、まとめて「硫黄等」という)とを混合し、この混合物を加熱しながら混練し押出すことにより、肉眼では視認できない金属硫化物微粒子、すなわち平均粒子径が1μmより小さいナノレベルの金属硫化物微粒子が分散してなる樹脂成形体(以下、「本樹脂成形体」という)を製造する。以下、この製造方法を本製造方法という。
【0015】
〔原料〕
(ベース樹脂)
本製造方法に用いることができるベース樹脂は、特に限定するものではなく、例えばポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等の透明な樹脂を挙げることができ、これらの1種を単独で使用することも、2種類以上を組合わせて使用することもできる。
【0016】
上記の樹脂の中でも、透明性、耐熱性、耐衝撃性など点でポリカーボネート系樹脂が好ましい。
ここで、ポリカーボネート系樹脂とは、主鎖中に炭酸エステル結合を含む線状高分子であり、例えば種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとをホスゲン法により反応させたり、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとをエステル交換法で反応させたりして得ることができる重合体などである。ちなみに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が一般的であるが、これに限るものではない。
【0017】
〔金属化合物〕
金属化合物としては、Cu、Ag、Au、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf等の金属の塩、すなわちこれらの金属に、フッ素、塩素、−CN、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナートが結合した化合物、或いは、R1−Y(R1は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。)から選ばれる一価基を示す。Yは、−COO、−SO、−SO、−PO、−Oのいずれかを示す。)が結合した化合物を挙げることができ、これらの中で、その融点が上記ベース樹脂の流動開始温度と略同じか(±20℃)、或いはベース樹脂の流動開始温度より低いものを用いることが重要である。
【0018】
なお、ベース樹脂の流動開始温度は、一定加圧下で樹脂が流動を開始する温度であり、樹脂を溶融加工する際の加工温度の目安となる。具体的には、3.9MPa(40kgf/cm)加圧下で樹脂を3℃/分で昇温し、樹脂を溶融しながら直径1mmで長さ2mmの細管を押出し、樹脂が実質的に細管から押出され始める温度として、流動開始温度を測定する。この様な流動開始温度は、例えば、島津製作所社製の定荷重押出し形細管式レオメータ(商品名:フローテスターCFT−500C)等を使用して測定することができる。
【0019】
上記金属化合物の中でも、近赤外線吸収性能の点からすると、ステアリン酸銅、硫酸銅、フタロシアニル銅、ステアリン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、酢酸銀、酢酸アンチモン、オクチル酸スズ、インジウムアセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ジルコニウムなどが好ましいが、その中でも、ステアリン酸銅、硫酸銅、フタロシアニル銅は特に好ましい。
【0020】
〔硫黄及び/または硫黄化合物〕
硫黄としては、市販の硫黄粉末を使用することができる。例えば、鶴見化学(株)製(JIS2級相当品)の硫黄粉末などを用いることができる。
【0021】
硫黄化合物としては、硫化水素、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化セシウム、硫化カドミウム,硫酸バリウム,硫酸ストロンチウム、硫化鉛,硫化亜鉛,硫化スズ,硫化カルシウム,硫化ゲルマニウム,硫化アンチモン,硫化コバルト,硫化珪素,硫化金,硫化鉄,硫化ニッケル,硫化ニオブ,硫化ストロンチウム,硫化タンタル,硫化バナジウム,硫化水銀,硫化砒素,硫化モリブデン,硫化マンガン,硫化リン,硫化バリウム,硫化ビスマス,硫化カリウム,硫化ナトリウム,硫酸リチウム,硫酸ナトリウム,硫酸カリウム,硫酸マグネシウム,硫酸カルシウム,硫酸鉛,硫酸ニッケル,硫酸鉄,硫酸セリウム,硫酸チタン,硫酸コバルト,硫酸ジルコニウム,硫酸水銀,硫酸マンガン,硫酸アルミニウム,硫酸亜鉛,硫酸カドミウム,硫酸クロム,硫酸ベリリウムなどを挙げることができるが、これらの中で、その融点が上記ベース樹脂の流動開始温度と略同じか(±20℃)、或いはベース樹脂の流動開始温度より低いものを用いることが重要である。
【0022】
上記金属化合物と上記硫黄等との組合わせについては、両者が反応して金属硫化物を合成し得るものであればよいが、中でも、ベース樹脂の流動開始温度以上で且つ130℃以上に、好ましくは100℃以上に、より好ましくは80℃以上に高くない温度範囲において、言い換えればベース樹脂の通常の押出温度範囲において、両者ともに溶融し得る組合わせであるのが好ましい。
【0023】
(その他の添加剤)
本樹脂成形体には、金属硫化物微粒子の効果を損なわない限度において、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、蛍光増白剤、離型剤、アンチブロッキング剤(シリカ、架橋ポリスチレンビーズ等)、軟化剤、帯電防止剤等の添加剤をさらに配合することができる。但し、添加剤を前記物質に限定するものではない。
【0024】
〔配合割合〕
金属化合物は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部を配合するのが好ましい。金属化合物の配合量がこの範囲を外れると、近赤外線吸収性能と透明性のバランスが悪くなる。このような観点から、金属化合物は、0.05〜0.3質量部配合するのが特に好ましい。
【0025】
硫黄等は、理論的には、上記金属化合物と反応する当量を配合すれば必要十分であるはずであるが、本発明においては、金属化合物中の金属と硫黄及び/または硫黄化合物中の硫黄とのモル比率が9:6よりも硫黄の比率が大きく、かつ、1:10よりも硫黄の比率が小さくなる割合で混合することが重要であり、中でも5:6乃至1:6、その中でも特に5:6〜3:6となるように調整して混合することが好ましい。
金属化合物中の金属と硫黄及び/または硫黄化合物中の硫黄とのモル比率が1:10よりも硫黄の比率が大きくなると、硫黄臭が顕著に高くなる傾向がある反面、9:6よりも硫黄の比率が小さいと、銅化合物の配合量が相対的に大きくなり、溶融成形時に成形が困難となる傾向がある。
【0026】
〔予備混合〕
原料の混合においては、ベース樹脂と混合する前に、予め金属化合物と硫黄等とを予備混合するのが好ましい。このように予め混合することにより、金属化合物の周囲或いは近傍に硫黄等を存在させることができ、金属化合物と硫黄等との反応率を高めることができ、結果として金属化合物および硫黄等の配合量を少なくすることができ、その分だけ近赤外線吸収性および可視光線透過性をより一層高めることができる。
但し、ベース樹脂と金属化合物と硫黄等とを混練機等に一括投入して一括混合するようにしてもよい。
【0027】
〔混練・押出〕
本実施形態では、原料混合物を加熱して溶融させながら混練するのが好ましい。このように溶融混練することにより、金属化合物と樹脂とを直接ブレンドすることができるばかりか、樹脂の種類に制約されないというメリットもある。
【0028】
このような溶融混練には、剪断効率の高い混練機構を備えた混練機乃至押出押出機を使用するのが好ましい。例えば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの押出機に「剪断効率の高い混練機構」を付設した押出機などを挙げることができる。
このように剪断効率の高い混練機構を備えた混練機乃至押出押出機を使用して溶融混練すれば、金属硫化物の合成反応を促進させることができると共に、合成された金属硫化物微粒子をベース樹脂中により均一に分散させることができ、これにより近赤外線吸収性および可視光線透過性をより一層高めることができる。
【0029】
上記の「剪断効率の高い混練機構を備えた押出機」としては、例えば、混練押出機のスクリュ部分に一種以上のミキシングデバイスを付設してなる混練押出機、具体的には、樹脂のメルトゾーンの入り口部直後にミキシングデバイスを少なくとも一つ以上備えた溶融混練押出機を好ましく例示することができる。この場合、樹脂のメルトゾーンにて、ベース樹脂、金属化合物及び硫黄等は溶融され、ミキシングデバイスにて混練されながら押出口に移送され、この間に金属硫化物微粒子が合成され樹脂中に分散されることになる。
また、回転ブレードと固定ブレードとが交互に多段に重ねてなる構成を有し、各々のブレードの両面に窪みの谷(キャビティー)が放射状に形成されてなる混練分散部を備えた混練押出機なども好ましく例示することができる。
【0030】
なお、通常の押出し機(例えばニーダー、ロール、1軸混練押出し機、2軸混練押出し機など)を使用することも不可能ではないが、粒子の凝集力は粒子径に反比例するため、金属硫化物微粒子の平均粒子径が1μm以下、特に平均粒子径100nm以下の微粒子となると、その凝集力はミクロン単位の微粒子の1,000倍以上にもなって凝集結合し易くなるため、ナノ粒子の凝集力を解砕して完全分散させることが難しくなる。
【0031】
混練温度(押出温度)は、ベース樹脂の流動開始温度以上で且つ当該流動開始温度よりも130℃、好ましくは100℃、より好ましくは80℃以上には高くない温度範囲において設定するのが好ましい。例えば、ベース樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合、その流動開始温度は約200℃前後であるから、330℃以下、特に300℃以下、中でも特に280℃以下に設定するのが好ましい。実際には、押出機に混練ゾーンの温度設定手段があればその温度に設定すればよいし、そのような温度設定手段がない場合には、押出機全般の設定温度を該温度範囲に設定すればよい。
混練温度が該流動開始温度よりも80℃以上、特に100℃以上、中でも特に130℃以上に高くなると、ベース樹脂の粘性が低下して金属硫化物微粒子の均一分散性が低下するばかりか、金属硫化物微粒子が分解する可能性がある。
【0032】
押出する形状及び大きさは、用途に応じて各種形状・各種大きさに押出せばよい。
【0033】
以上のようにして金属硫化物微粒子含有樹脂成形体を製造すれば、樹脂中に金属硫化物微粒子が均一に分散してなる金属硫化物微粒子含有樹脂成形体を得ることができる。
例えば、通常入手できる硫化銅(CuS)としては、小さくとも数μmの粒子であるが、上記の如く銅化合物と硫黄等とを溶融混練から押出までの間に反応させて硫化銅(CuS)を合成すると、肉眼では視認できない微粒子、すなわち平均粒子径が1μmより小さいナノオーダーレベルの微粒子(好ましくは、電子顕微鏡観察による平均粒子径100nm以下の微粒子)を合成することができ、しかも該微粒子を均一に分散させることができる。
なお、電子顕微鏡観察による平均粒子径とは、電子顕微鏡観察により任意に20個の微粒子を抽出し、各微粒子の最長径の20個平均値をいう。
【0034】
(用途)
以上のようにして得られた金属硫化物微粒子含有樹脂成形体は、近赤外線吸収性および可視光線透過性のいずれも優れているから、必要に応じて加工を施して、例えばアーケード、ガレージ、サンルーム、テラス、温室等の屋根材や壁材などの採光材として好適に利用することができる。
【0035】
金属硫化物微粒子含有樹脂成形体の一面又は両面に光触媒層を積層するようにしてもよい。この際、光触媒としては、酸化チタン、硫化カドミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化亜鉛、セレンカドミニウム等を用いることができるが、アナターセ型酸化チタンが好適に用いられる。
光触媒層の積層は、公知の方法でおこなえばよく、例えば、ゾルゲル法によるコーティング、転写箔を用いた転写法等やロールコーターによる塗布などでおこなう。また、光触媒層と採光材との間に基材保護層及び/又は接着層を設けてもよい。
【0036】
なお、上記では、金属硫化物微粒子含有樹脂成形体を溶融混練して押出成形して樹脂成形体を製造する方法について説明したが、例えば射出成形、ブロー成形、熱プレス成形、真空成形等種々の成形加工方法を採用することも可能である。また、場合によっては発泡剤を併用することにより発泡成形も可能である。ただし、光透過性を損なわせないためには、得られた発泡体の気泡サイズは可視光の波長に対して十分小さいサイズとする必要がある。
【実施例】
【0037】
以下、樹脂に硫黄と銅化合物とを含有させた場合の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0038】
<可視光線透過率、日射透過率の測定方法>
実施例及び比較例で得られた平板サンプルについて、分光光度計(島津製作所製UV3150型)を用いて波長300nm〜2100nmの領域の光線透過率(τλ)を測定した。
なお、熱線遮蔽板の可視光線透過率(τv、380nm〜780nm)および日射透過率(τe、300nm〜2100nm)の値をJISR−3106に準じて求めた。
【0039】
<臭気の測定方法>
ガス非透過素材からなるテドラーバッグ(容量1L)内に平板サンプル(10cm×10cm)を入れて1Lの空気を注入した後、23℃で24時間放置し、検知菅にて臭化水素を測定し、0.2ppm以下の場合を◎、0.2ppmより多く、且つ5ppm以下の場合を○、5ppmより多く、且つ10ppm以下の場合を△、10ppmより多い場合を×と評価した。
【0040】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
ポリカーボネート樹脂(住友ダウ(株)製カリバー303、流動開始温度198℃)に、表1に記載の質量分率にて、硫黄粉末(鶴見化学(株)製JIS2級相当品、融点120℃)及びステアリン酸銅(寺田薬泉工業(株)製、融点115〜120℃)を配合し、樹脂のメルトゾーンの入り口部直後にミキシングデバイスを装着した2軸押出機にて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数140rpmの条件で溶融混練し、各種マスターバッチ(MB)を得た。
得られたマスターバッチにポリカーボネート樹脂を加えて表1に記載の濃度に調整し、射出成形機(東芝機械製IS50)で280℃にて平板サンプル(100mm×100mm×2mm)を成形した。
そして、得られた平板サンプルについて可視光線透過率、日射透過率、臭気を測定し、結果を下記表1に示した。
【0041】
各平板サンプルを薄く切断し、電子顕微鏡にて観察した結果、実施例1〜4のいずれのサンプルも、樹脂中に分散している硫化銅(CuS)粒子の径が10nm〜50nmであり、臭気の評価も実用可能な△以上の評価であった。その一方、比較例1のサンプルは、銅と硫黄とのモル比率が1:10であったため、臭気の評価は実用上問題のある×という評価であった。
【0042】
[実施例5]
ポリカーボネート樹脂(住友ダウ(株)製カリバー303)に、表1に記載の質量分率にて、硫黄粉末(鶴見化学(株)製JIS2級相当品、融点120℃)及びステアリン酸銅(寺田薬泉工業(株)製、融点115〜120℃)を配合し、単軸押出機にて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数170rpmの条件で溶融混練し、各種マスターバッチ(MB)を得た。
得られたマスターバッチにポリカーボネート樹脂を加えて表1に記載の濃度に調整し、射出成形機(東芝機械製IS50)で280℃にて平板サンプル(100mm×100mm×2mm)を成形した。
そして、得られた平板サンプルについて得られた平板サンプルについて可視光線透過率、日射透過率、臭気を測定し、結果を下記表1に示した。
平板サンプルを薄く切断し、電子顕微鏡にて観察した結果、実施例5のサンプルについては、樹脂中に分散している硫化銅(CuS)粒子の径は100nmより大きく1μmより小さい大きさであり、臭気の評価は実用可能な△の評価であった。
【0043】
[実施例6]
ポリカーボネート樹脂(住友ダウ(株)製カリバー303)に、表1に記載の質量分率にて、硫黄粉末(鶴見化学(株)製JIS2級相当品、融点120℃)及びステアリン酸銅(寺田薬泉工業(株)製、融点115〜120℃)を配合し、ミキシングデバイスを装着しない2軸押出機にて、シリンダー温度280℃およびスクリュー回転数140rpmの条件で溶融混練し、各種マスターバッチ(MB)を得た。
得られたマスターバッチにポリカーボネート樹脂を加えて表1に記載の濃度に調整し、射出成形機(東芝機械製IS50)で280℃にて平板サンプル(100mm×100mm×2mm)を成形した。
そして、得られた平板サンプルについて可視光線透過率、日射透過率、臭気を測定し、結果を下記表1に示した。
平板サンプルを薄く切断し、電子顕微鏡にて観察した結果、実施例6のサンプルについては、樹脂中に分散している硫化銅(CuS)粒子の径は100nmより大きく1μmより小さい大きさであり、臭気の評価は実用可能な△の評価であった。
【0044】
【表1】


【出願人】 【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
【出願日】 平成18年7月12日(2006.7.12)
【代理人】 【識別番号】100072084
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三郎

【識別番号】100110962
【弁理士】
【氏名又は名称】市澤 道夫

【識別番号】100140615
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘


【公開番号】 特開2008−18585(P2008−18585A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−191092(P2006−191092)