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【発明の名称】 ディスク用射出成形機の冷却機構
【発明者】 【氏名】市川 和司

【氏名】西田 一彦

【要約】 【課題】固定盤や可動盤等の成形時の温度上昇に伴う成形精度の低下を抑制するとともに、簡易な構成でかつ強度面にも優れたディスク用射出成形機の冷却機構を提供する。

【構成】縦方向に立設され、略中央部分に射出装置11が嵌挿可能な開口部21を有するとともに複数のタイバー22が上下に水平に配置された固定盤20と、固定盤20に対向配置され、複数のタイバー22に沿って固定盤20に対して進退する可動盤30と、固定盤20に配設された固定金型41及び可動盤30に配設された可動金型46とからなる金型部40と、金型部40と固定盤20及び可動盤30との間に配置され、金型部40より大きい平面部51を有する冷却プレート50とを有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向から射出装置によって溶融樹脂材料を射出して成形するディスク用射出成形機の冷却機構であって、
縦方向に立設され、略中央部分に前記射出装置が嵌挿可能な開口部を有するとともに複数のタイバーが上下に水平に配置された固定盤と、
前記固定盤に対向配置され、前記複数のタイバーに沿って前記固定盤に対して進退する可動盤と、
前記固定盤に配設された固定金型及び前記可動盤に配設された可動金型とからなる金型部と、
前記金型部と前記固定盤及び可動盤との間に配置され、前記金型部より大きい平面部を有する冷却プレート
とを有することを特徴とするディスク用射出成形機の冷却機構。
【請求項2】
前記金型部と前記冷却プレートとの間あるいは前記冷却プレートと前記固定盤及び前記可動盤との間に断熱板が配置される請求項1に記載のディスク用射出成形機の冷却機構。
【請求項3】
前記冷却プレートには、冷却液が流通する冷却通路が形成されている請求項1又は2に記載のディスク用射出成形機の冷却機構。
【請求項4】
前記冷却プレートの下部に前記固定金型または前記可動金型を支持する受け部が形成された請求項1ないし3のいずれか1項に記載のディスク用射出成形機の冷却機構。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向から射出装置によって溶融樹脂材料を射出して成形するディスク用射出成形機の冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVD等の光ディスク成形品の成形にあっては、溶融樹脂材料を射出装置から射出して金型部において型締圧力を加えて成形するディスク用射出成形機が用いられる。このようなディスク用射出成形機では、ディスク成形時に射出装置から高温(約300℃〜400℃)の合成樹脂材料が射出されて金型部内に流入されるため、前記金型部が熱膨張して成形精度が低下して、同一条件で成形される成形品に品質のばらつきが生じるおそれがある。
【0003】
そこで、従来のディスク用射出成形機では、金型部と該金型部が配置される固定盤及び可動盤との間にそれぞれ断熱板を配置したり、前記金型部の要部に冷却媒体が流通可能な流路を形成して温度制御する温調手段を配設する等の手法により、金型部の温度上昇を抑制する冷却機構が設けられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、上記のような従来のディスク用射出成形機の冷却機構では、断熱板や温調手段によって金型部の温度上昇を抑制した場合であっても、前記金型部から外部に放出される熱や、周辺機器等からの発熱等が固定盤や可動盤、複数配置されたタイバー等に伝わって、固定盤や可動盤、各タイバー等の温度が上昇して熱膨張するため、当該成形機の状態が変化して結果的に成形精度の低下に影響を及ぼすことがある。特に、固定盤と可動盤の熱膨張の方向が異なる(固定盤が上方向に熱膨張するのに対して、可動盤は上下方向に熱膨張する)ことにより金型間の位置ずれが発生したり、各タイバーの温度上昇による熱膨張が種々の外的要因のために全て均一となるとは限らないことから、成形されるディスクの中心孔に対する転写の偏心位置(ECC)のずれが大きくなるという問題があった。
【0005】
これに対し、可動盤や固定盤、タイバー等に冷却媒体が流通可能な冷却流路を形成して温度制御する温調手段を配設することによって前記可動盤等の温度上昇を抑制することも可能であるが、このように構成する場合は、当該射出成形機全体に冷却通路を形成しなければならず、極めて煩雑な構成となる。また、固定盤には、射出装置が嵌挿可能な開口部が形成されているため、強度面でも問題があった。
【特許文献1】特開2003−311798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、固定盤や可動盤等の成形時の温度上昇に伴う成形精度の低下を抑制するとともに、簡易な構成でかつ強度面にも優れたディスク用射出成形機の冷却機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、横方向から射出装置によって溶融樹脂材料を射出して成形するディスク用射出成形機の冷却機構であって、縦方向に立設され、略中央部分に前記射出装置が嵌挿可能な開口部を有するとともに複数のタイバーが上下に水平に配置された固定盤と、前記固定盤に対向配置され、前記複数のタイバーに沿って前記固定盤に対して進退する可動盤と、前記固定盤に配設された固定金型及び前記可動盤に配設された可動金型とからなる金型部と、前記金型部と前記固定盤及び可動盤との間に配置され、前記金型部より大きい平面部を有する冷却プレートとを有することを特徴とするディスク用射出成形機の冷却機構に係る。
【0008】
請求項2の発明は、前記金型部と前記冷却プレートとの間あるいは前記冷却プレートと前記固定盤及び前記可動盤との間に断熱板が配置される請求項1に記載のディスク用射出成形機の冷却機構に係る。
【0009】
請求項3の発明は、前記冷却プレートには、冷却液が流通する冷却通路が形成されている請求項1又は2に記載のディスク用射出成形機の冷却機構に係る。
【0010】
請求項4の発明は、前記冷却プレートの下部に前記固定金型または前記可動金型を支持する受け部が形成された請求項1ないし3のいずれか1項に記載のディスク用射出成形機の冷却機構に係る。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、横方向から射出装置によって溶融樹脂材料を射出して成形するディスク用射出成形機の冷却機構であって、縦方向に立設され、略中央部分に前記射出装置が嵌挿可能な開口部を有するとともに複数のタイバーが上下に水平に配置された固定盤と、前記固定盤に対向配置され、前記複数のタイバーに沿って前記固定盤に対して進退する可動盤と、前記固定盤に配設された固定金型及び前記可動盤に配設された可動金型とからなる金型部と、前記金型部と前記固定盤及び可動盤との間に配置され、前記金型部より大きい平面部を有する冷却プレートとを有するため、極めて簡易な構成で固定盤や可動盤等の成形時の温度上昇に伴う成形精度の低下を抑制することができるとともに、前記固定盤及び可動盤の強度を向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記金型部と前記冷却プレートとの間あるいは前記冷却プレートと前記固定盤及び前記可動盤との間に断熱板が配置されるため、より冷却効果を向上させることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記冷却プレートには、冷却液が流通する冷却通路が形成されているため、該冷却プレートによる冷却効果を向上させることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3において、前記冷却プレートの下部に前記固定金型または前記可動金型を支持する受け部が形成されたため、金型部を固定盤及び可動盤に配設する際の位置決めが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係るディスク用射出成形機の冷却機構の斜視図、図2は図1のディスク用射出成形機の冷却機構の要部断面図、図3は冷却プレートの正面図、図4は本発明と従来技術との固定盤,可動盤,タイバーの温度変化を比較したプロット図、図5は本発明と従来技術とのECCを比較したプロット図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施例に係るディスク用射出成形機の冷却機構10は、横方向から射出装置11によって溶融樹脂材料を射出して成形するものであって、固定盤20と、可動盤30と、金型部40と、冷却プレート50とを有する。図において、符号12は射出装置11の加熱筒、13は射出装置11のノズル、15はディスク成形時に型締め圧力を加えるための公知のシリンダ装置からなる型締機構である。なお、前記型締機構15はトグル機構を用いたものであってもよい。
【0017】
固定盤20は、縦方向に立設され、射出装置11側の略中央部分に射出装置11が嵌挿可能な開口部21を有するとともに複数(この例では4本)のタイバー22(上側タイバー22A,22B、下側タイバー22C,22D)が上下に水平に配置される。
【0018】
可動盤30は、固定盤20に対向配置され、複数のタイバー22A,22B,22C,22Dに沿って前記固定盤20に対して進退する。実施例の可動盤30は、型締機構15によって作動される。
【0019】
金型部40は、固定盤20に配設された固定金型41及び可動盤30に配設された可動金型46とからなる。実施例の金型部40は公知のディスク成形用金型であって、マルテンサイト系ステンレス(SUS420J2)等からなり、固定金型41の固定盤20側に、ディスク成形時に射出装置11のノズル13が挿入されるロケートリング42が突設されている。また、この金型部40は、固定盤20及び可動盤30に対して着脱自在に構成されており、前記ロケートリング42が固定盤20の開口部21の孔部21aと係合することによって位置決めされる。
【0020】
冷却プレート50は、金型部40と固定盤20及び可動盤30との間に配置され、前記金型部40より大きい平面部51を有するものである。この平面部51を有する冷却プレート50が固定盤20と可動盤30の双方にそれぞれ配置されることにより、前記固定盤20及び可動盤30が熱膨張した際に生じるよる金型間の位置ずれを減少させるとともに、前記固定盤20及び可動盤30の強度を補強することができる。特には、固定盤20の開口部21によって形成される薄肉部21b部分の強度を補強することができる。実施例の冷却プレート50は、前記金型部と同様のマルテンサイト系ステンレス(SUS420J2)等によって構成される。また、図3に示すように、冷却プレート50の平面部51の略中央には適宜の大きさの貫通孔52が形成されており、固定盤20側に配置される場合はロケートリング42が挿通可能とされ、可動盤30側に配置される場合は図示しないエジェクタやパンチ等の駆動機構が挿通可能とされる。この冷却プレート50において、平面部51の厚さは、射出装置11のノズル13の前進可能位置によって適宜設定されるものであり、この例では12mm〜20mmに構成される。
【0021】
さらに、この冷却プレート50には、図2及び図3に図示しかつ請求項3の発明として規定したように、冷却液が流通する冷却通路55を形成することが好ましく勧められる。そして、図示しない公知のチラー(冷却水循環装置)を用いて冷却プレート50内に冷却液を流通させることにより、該冷却プレート50による冷却効果を向上させることができる。なお、冷却液としてはチラーにより約15℃〜20℃に冷却された水が使用されるが、公知の温調装置による約20℃〜35℃の温調水を使用してもよい。この図において、符号56は冷却通路55の流入路、57は冷却通路55の流出路を表す。
【0022】
加えて、この冷却プレート50には、図示しかつ請求項4の発明として規定したように、下部に固定金型41または可動金型46を支持する受け部58を形成することが好ましい。実施例の冷却プレート50では、側面視略L字型となるように前記受け部58が平面部51の下部に突出して形成されている。前述の如く平面部51が薄く構成されるため、受け部58が平面部51の下部に突出することで、温調装置と冷却通路55の流入路56及び流出路57との接続の際に作業がしやすくなる。また、この冷却プレート50は、可動盤20と固定盤30にそれぞれ配置する際に、各受け部58,58が対向配置され、該受け部58,58に金型部40が載置される。
【0023】
ここで、ディスク用射出成形機の冷却機構10の金型部40の取り付けについて説明すると、まず、固定盤20と可動盤30との間隔が金型部40の厚さより十分に広くなるように前記可動盤30を後退させる。続いて、板状部材Pを冷却プレート50の受け部58,58と同一平面となるように前記各受け部58,58間のタイバー22C,22D上に渡し、金型部40を前記板状部材P及び受け部58,58上に載置して、当該冷却機構10の側方から取り付け位置までスライドさせる。そして、金型部40の固定金型41に形成されたロケートリング42を固定盤20の開口部21の孔部21aに係合させ、前記可動盤30を前進させた後、適宜金型部40が固定される。このように、冷却プレート50に受け部58を形成することにより、金型部40を固定盤20及び可動盤30に配設する際の位置決めが容易となる。
【0024】
また、本発明のディスク用射出成形機の冷却機構10では、請求項2の発明として規定したように、金型部40と冷却プレート50との間あるいは冷却プレート50と固定盤20及び可動盤30との間に断熱板60を配置することが好ましく勧められる。図1及び図2に示す実施例では、固定金型41の冷却プレート50に当接する側と可動金型46の冷却プレート50に当接する側にそれぞれ断熱板60が貼り付けられている。また、この断熱板50は公知の部材よりなり、金型部40の型当接面と略等しい大きさの板状部材によって構成される。このように断熱板60を配置することにより、金型部40から外部に放出される熱を抑制することができ、冷却効果を向上させることができる。なお、図示しないが、冷却プレート50と固定盤20及び可動盤30との間に断熱板60を配置する際には、前記断熱板60を冷却プレート50の平面部51と略等しい大きさに構成して配置することが好ましく、このように配置した場合であっても、金型部40と冷却プレート50との間に配置した場合と同様に冷却効果を向上させることができる。
【0025】
次に、当該ディスク用射出成形機の冷却機構10による冷却効果について、図4及び図5を用いて説明する。図4に示すプロット図は、本発明の冷却機構10における固定盤20,可動盤30,タイバー22と従来の冷却機構における固定盤,可動盤,タイバーとの経過時間(h)ごとの温度変化(℃)を表したものである。また、図5に示すプロット図は、本発明の冷却機構10と従来の冷却機構との時間(h)ごとのディスクの中心孔に対する転写の偏心位置(ECC)のずれ(μm)の変化を表したものである。
【0026】
図4に示すように、従来の冷却機構では、固定盤,可動盤,タイバーの各温度が時間の経過に伴って上昇(図示の例では、開始時に25℃前後だったものが、約3時間後には約45〜50℃まで上昇)している。これに対し、本発明の冷却機構10では、図3に示すように、固定盤20及び可動盤30が冷却プレート50,50によって冷却されることにより、固定盤20及び可動盤30の温度上昇を抑制するとともに、時間経過に関係なくほぼ一定の温度に制御することができる。また、固定盤20及び可動盤30の温度がタイバー22の温度以下で制御されるため、前記タイバー22に別途冷却部材等を設けなくとも該タイバー22の温度上昇及び熱膨張を抑制することができる。
【0027】
このように、固定盤20,可動盤30,タイバー22の経過時間ごとの各温度を一定に制御し、前述したように冷却プレート50を固定盤20及び可動盤30に配置して前記固定盤20及び可動盤30の熱膨張方向の差による位置ずれやタイバー22の熱膨張を減少させることにより、図5に示すように、従来の冷却機構が固定盤,可動盤,タイバーの温度上昇に伴ってECCの値が大きくなる傾向であるのに対して、本発明の冷却機構10では、ECCが低い値でほぼ一定に制御される。
【0028】
以上説明したように、当該ディスク用射出成形機の冷却機構10にあっては、金型部40と固定盤20及び可動盤30との間に前記金型部49より大きい平面部51を有する冷却プレート50,50を配置することにより、当該射出成形機全体に冷却通路を形成することなく、前記固定盤20や可動盤30,タイバー22の成形時の温度上昇を抑制することができ、さらに、前記固定盤及20び可動盤30の強度も補強することができ、型締時及び射出時の固定盤20及び可動盤30のたわみを減少させることができる。したがって、極めて簡易な構成で固定盤20や可動盤30,タイバー22の成形時の温度上昇に伴う成形精度の低下を抑制することができるとともに、前記固定盤20及び可動盤30の強度を向上させることができる。
【0029】
なお、本発明のディスク用射出成形機の冷却機構は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、冷却プレートの受け部の一側の端部にストッパを設けて、金型部を位置決めする際に横方向の規制を可能とするように構成してもよい。
【0030】
また、金型部の取付をより効率よく行うために、金型部の下面または冷却プレートの受け部の少なくとも一方に摩擦係数が低い樹脂板等を取り付けてもよい。
【0031】
さらに、前述の実施例では、金型部と冷却プレートとを個別に形成して配置するように構成していたが、前記金型部と冷却プレートとを一体に形成してもよい。また、金型部と冷却プレートを一体形成する場合においても、金型部と冷却プレートの間あるいは冷却プレートと固定盤及び可動盤の間に断熱板を配置しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係るディスク用射出成形機の冷却機構の斜視図である。
【図2】図1のディスク用射出成形機の冷却機構の側面図である。
【図3】冷却プレートの正面図である。
【図4】本発明と従来技術との固定盤,可動盤,タイバーの温度変化を比較したプロット図である。
【図5】本発明と従来技術とのECCを比較したプロット図である。
【符号の説明】
【0033】
10 ディスク用射出成形機の冷却機構
11 射出装置
12 加熱筒
13 ノズル
15 型締機構
20 固定盤
21 開口部
22 タイバー
30 可動盤
40 金型部
41 固定金型
42 ロケートリング
46 可動金型
50 冷却プレート
51 平面部
55 冷却通路
58 受け部
60 断熱板
【出願人】 【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋

【識別番号】100137028
【弁理士】
【氏名又は名称】武石 裕美子


【公開番号】 特開2008−18535(P2008−18535A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−189444(P2006−189444)