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カーボン金型、およびその製造方法 - 特開2008−1077 | j-tokkyo
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【発明の名称】 カーボン金型、およびその製造方法
【発明者】 【氏名】永井 久雄

【氏名】吉田 英博

【要約】 【課題】ナノオーダからミリオーダまでの三次元構造体を有する金型、およびその金型から得られる成型物を提供する。

【構成】カーボン材料からなり、ナノオーダの三次元構造体およびミリオーダの三次元構造体を有する金型。当該金型は、カーボン材料からなる基板の表面に、シリコン膜または酸化シリコン膜を成膜する第一工程;前記シリコン膜または酸化シリコン膜の上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光および現像して前記レジスト膜にパターンを形成する第二工程;前記シリコン膜または酸化シリコン膜を、第一のガスを用いてプラズマ処理してパターニングする第三工程;前記基板を、第二のガスを用いてプラズマ処理してエッチングする第四工程;および前記エッチングされた基板に、機械加工またはレーザ加工を施す第五工程を含む。当該金型の表面は硬化処理されていてもよい。当該金型は、インプリント用の金型として用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノオーダの三次元構造体およびミリオーダの三次元構造体を有し、カーボン材料からなる金型を製造する方法であって、
カーボン材料からなる基板の表面に、シリコン膜または酸化シリコン膜を成膜する第一工程、
前記シリコン膜または酸化シリコン膜の上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光および現像して前記レジスト膜にパターンを形成する第二工程、
前記シリコン膜または酸化シリコン膜を、第一のガスを用いてプラズマ処理してパターニングする第三工程、
前記基板を、第二のガスを用いてプラズマ処理してエッチングする第四工程、および
前記エッチングされた基板に、機械加工またはレーザ加工を施す第五工程
を含む製造方法。
【請求項2】
前記第二のガスは、酸素およびフルオロカーボンを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記機械加工またはレーザ加工を施された基板の表面に、カーボン系樹脂を含浸する工程、および
前記カーボン系樹脂を炭素化する工程、をさらに含む製造方法。
【請求項4】
前記カーボン系樹脂を熱処理により炭素化する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
カーボン材料からなる金型であって、ナノオーダの三次元構造体およびミリオーダの三次元構造体を有する金型。
【請求項6】
前記カーボン材料はガラス状カーボンである、請求項5に記載の金型。
【請求項7】
前記ミリオーダの三次元構造体の加工深さは、前記ナノオーダの三次元構造体の加工深さと異なる、請求項5に記載の金型。
【請求項8】
前記ミリオーダの三次元構造体の加工深さは、前記ナノオーダの三次元構造体の加工深さの2倍以上である、請求項5に記載の金型。
【請求項9】
前記金型の表面は硬化処理されている、請求項5に記載の金型。
【請求項10】
前記金型の表面の炭素密度は、内部の炭素密度よりも高い、請求項5に記載の金型。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか一項に記載の金型を用いてパターンが転写された、プラスチック成型物またはガラス成型物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン材料からなる金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会に移行していく社会情勢のなか、血液中の血糖値の計測を行うチップや、血液中のグルコースなどを含む様々な成分を分離、検出するためのチップ、あるいはDNA(Deoxyribonucleic acid デオキシリボ核酸)の成分を分離することを目的としたDNAチップや免疫分析チップなどの、バイオセンサーチップの研究が盛んに行われている。これらのチップは、衛生的に使い捨てが余儀なくされるため、安い材料であるプラスチックやガラスなどがチップ材料として検討され、さらにはチップ作製方法もコストの安い工法が望まれている。
【0003】
これらのバイオチップには、診断する患者負担の観点から、少量の血液またはDNAで、多くの項目を一度に診断できることが望まれている。そのため、被診断溶液が流れる部分は非常に微細な構造にすることが必要とされている。たとえば、血液診断をする一般的なバイオチップは、血液を溜めるための空間はミリオーダ;血液が流れる流路はマイクロオーダ;血液やDNAを分離するための柱状構造はナノオーダとされることが望ましい。現在の技術において、これらのバイオチップを製造するには、それぞれの加工オーダに合わせた別個の方法により加工された部材を用意する必要があるため、多くの工程数と複雑なプロセスフローが必要とされる。
【0004】
一方、ナノインプリント技術は、アスペクト比の高いナノ構造体(成型物)を形成するためによく用いられる技術である。ナノインプリントによれば、ガラスや、ポリマー樹脂や光硬化性樹脂にマイクロサイズ、ナノサイズの形状を転写することができる。そのため、ナノインプリント用の金型を作製してしまえば、比較的安いコストでナノ構造体を大量生産することができる。
【0005】
近年、ナノインプリント技術は、バイオチップ作製への応用が検討され始めている。ナノインプリント用の金型の材料としては、石英やシリコン、シリコンカーバイト(SiC)といった比較的硬度の高い材料が使用されている(特許文献1を参照)。これらの材料を、半導体プロセス、すなわちホトリソグラフィ、ドライエッチング、もしくはFIB(集束イオンビーム)などを用いてマイクロサイズ加工やナノサイズ加工して、ナノインプリント用の金型としている。
【0006】
また、金型をポリマー樹脂や光硬化性樹脂に転写する際、金型に形成されたナノ構造を正確に転写させるため、金型成型面に炭素微粒子を充填して、金型材料と樹脂材料の離型性向上させる方法が報告されている(特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2002−97030号公報
【特許文献2】特開2002−356334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
石英、シリコンまたはシリコンカーバイトは非常に硬い材料であるために、これらを材料とする金型をドライエッチングやFIB(収束イオンビーム)などを用いた加工により製造しようとすると、加工速度が遅く、途中で加工が止まってしまう。したがって、大きくてもマイクロオーダまでの加工しかできず、ミリオーダの加工を行うことは非常に困難である。また、石英、シリコンまたはシリコンカーバイトなどを材料とする金型を、加工速度の速い機械加工を用いて製造しようとすると、チッピングや欠けが生じることがあるので、ミリオーダの加工をすることはやはり困難である。
【0008】
一方、金属を材料とする金型は、機械加工により製造されても欠けなどが起こらず、ミリオーダの加工が容易になされうる。しかしながら金属材料は、ドライエッチングやFIBなどでマイクロ、ナノオーダの加工を行おうとしても、加工速度が極端に遅く、加工が途中で止まってしまうという問題があった。
【0009】
このように、いずれの材料を用いても、ミリオーダからナノオーダまでの三次元構造体が混在した金型を製造することは困難であった。したがって従来は、ミリオーダの金型とマイクロオーダまたはナノオーダの金型を別々に作製(例えば別の材料の金型を作製)して、それらを結合させるなどして、多くの工程数と複雑なプロセスフローで、ミリオーダからナノオーダまでの三次元構造体が混在した金型を製造することが検討されていた。
【0010】
そこで本発明は、ナノオーダからミリオーダまでの三次元構造体を有する金型、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、金型材料としてカーボン材料を用いて、ミリオーダまたはマイクロオーダの機械加工またはレーザ加工と、マイクロオーダまたはナノオーダの加工(プラズマ加工など)の両方の加工を施すことによって、ミリオーダからナノオーダまでの三次元構造体が混在した金型が得られることを見出した。
【0012】
さらに本発明者は、カーボン材料からなる金型に、カーボン系樹脂を含浸させて熱処理することによって、金型表面が硬化され、カーボン材料特有の「もろさ」が改善された金型が得られることを見出した。
【0013】
すなわち本発明の第一は、以下に示す金型の製造方法に関する。
[1] ナノオーダの三次元構造体およびミリオーダの三次元構造体を有し、カーボン材料からなる金型を製造する方法であって、
カーボン材料からなる基板の表面に、シリコン膜または酸化シリコン膜を成膜する第一工程;前記シリコン膜または酸化シリコン膜の上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光および現像して前記レジスト膜にパターンを形成する第二工程;前記シリコン膜または酸化シリコン膜を、第一のガスを用いてプラズマ処理してパターニングする第三工程;前記基板を、第二のガスを用いてプラズマ処理してエッチングする第四工程;および前記エッチングされた基板に、機械加工またはレーザ加工を施す第五工程を含む製造方法。
[2] 前記第二のガスは、酸素およびフルオロカーボンを含む、[1]に記載の製造方法。
[3] [1]または[2]に記載の製造方法であって、前記機械加工またはレーザ加工を施された基板の表面に、カーボン系樹脂を含浸する工程;および前記カーボン系樹脂を炭素化する工程、をさらに含む製造方法。
[4] 前記カーボン系樹脂を熱処理により炭素化する、[3]に記載の製造方法。
【0014】
さらに本発明の第二は、以下に示す金型に関する。
[5] カーボン材料からなる金型であって、ナノオーダの三次元構造体およびミリオーダの三次元構造体を有する金型。
[6] 前記カーボン材料はガラス状カーボンである、[5]に記載の金型。
[7] 前記ミリオーダの三次元構造体の加工深さは、前記ナノオーダの三次元構造体の加工深さと異なる、[5]または[6]に記載の金型。
[8] 前記ミリオーダの三次元構造体の加工深さは、前記ナノオーダの三次元構造体の加工深さの2倍以上である、[5]〜[7]のいずれかに記載の金型。
[9] 前記金型の表面は硬化処理されている、[5]〜[8]のいずれかに記載の金型。
[10] 前記金型の表面の炭素密度は、内部の炭素密度よりも高い、[5]〜[9]のいずれかに記載の金型。
【0015】
さらに本発明の第三は、以下に示す金型を用いて得られる成型物に関する。
[11] [5]〜[10]のいずれかに記載の金型を用いてパターンが転写された、プラスチック成型物またはガラス成型物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、複雑なプロセスフローによることなく、容易に、ミリオーダからナノオーダの三次元構造体が混在した金型を得ることができる。本発明の金型を用いることによって、ミリオーダからナノオーダの三次元構造体が転写された成型物を得ることができ、この成型物は、例えばバイオチップやプラスチックMEMS、有機デバイスとして利用されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.本発明の金型
本発明の金型は、カーボン材料からなることを特徴とする。カーボン材料とは、ガラス状カーボンからなる材料であることが好ましい。ガラス状カーボンは、グラッシーカーボンと称されることもある。ガラス状カーボンは、セルロースまたは各種の熱硬化性樹脂などを固相状態でゆるやかに炭素化することによって生成する難黒鉛化性炭素である。ガラス状カーボンは、結晶とアモルファスとが混在するカーボンであっても、アモルファスカーボンであってもよい。
またカーボン材料は、カーボン系樹脂を焼成して炭素化することによって得られる。焼成される樹脂の例には、セルロースや、フェノール樹脂、イミド樹脂、塩化ビニル樹脂などが含まれる。また、カーボン材料は、コークスなどの黒鉛からも製造されうる。
【0018】
本発明の金型は、その材質がカーボン材料であるため、後述するように、機械加工およびプラズマ加工などの微細加工のいずれもが施されることができる。また本発明の金型は、材質がカーボン材料であるため、プラスチックやガラスなどとの離型性に優れる。よって本発明の金型は、その成型面に保護膜を設けたり、離型材を使用したりするなどの処理をすることなく、容易にプラスチックやガラスを成型することができる。
【0019】
さらに本発明の金型は、ナノオーダの三次元構造体と、ミリオーダの三次元構造体とを有することを特徴とする。三次元構造体を有するとは、金型の表面に特定の構造の溝が形成されていること、および特定の構造の突起が形成されていることを含む。前記溝は、多段階の溝であってもよく、チャンバであってもよい。
【0020】
ナノオーダの三次元構造体とは、金型に形成された溝の幅、または金型に形成された突起の幅が、1nm〜1μm、好ましくは50nm〜0.8μmである構造体を意味する。ナノオーダの三次元構造体の加工深さは特に限定されないが、通常は50nm〜3μm程度である。加工深さとは、金型に形成された溝(チャンバを含む)の深さまたは金型に形成された突起の高さを意味する。
金型が有するナノオーダの三次元構造体は、後述するように、プラズマ加工、イオンビーム加工または電子ビーム加工により行われることが好ましく、プラズマ加工により行われることがより好ましい。具体的な加工条件については後述する。
【0021】
ミリオーダの三次元構造体とは、金型に形成された溝の幅、または金型に形成された突起の幅が、1μm〜50mmである構造体を意味する。ミリオーダの三次元構造体の加工深さは特に限定されないが、通常は20μm〜10mm程度である。
金型が有するミリオーダの三次元構造体は、後述するように、機械加工またはレーザ加工により形成されることが好ましい。機械加工の例には、ドリルを用いた加工などが含まれる。
【0022】
前述の通り、本発明の金型はナノオーダの三次元構造体と、ミリオーダの三次元構造体を併せもつが、ミリオーダの三次元構造体の加工深さは、ナノオーダの三次元構造体の加工深さと異なる値であることが好ましく、より大きな値であることが好ましい。具体的には、ミリオーダの三次元構造体の加工深さは、ナノオーダの三次元構造体の加工深さの2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。
【0023】
本発明の金型は、後述するように、カーボン材料からなる一の基板に、ナノオーダの三次元構造体とミリオーダの三次元構造体とを形成することによって製造されうるため、加工サイズ(オーダ)に応じた複数の金型を製造して、それを結合させる必要がない。よって本発明の金型は、異なる加工サイズの境目に、境界もしくは段差を有さない金型とすることができる。
【0024】
さらに本発明の金型は、その加工表面(つまり前記三次元構造体がある面)が硬化処理されていてもよい。カーボン材料は特有のもろさを有していることがあるので、硬化処理をすることによって、金型としての有用性(例えば耐久性など)をさらに高めることができる。
【0025】
前記硬化処理は、従来から知られているカーボン材料を硬化させる方法を用いればよく、特に限定はされない。好ましくは、硬化処理は、金型の加工表面の炭素材料の炭素密度を向上させる処理でありうる。炭素材料の炭素密度は、カーボン系樹脂を含浸させて、含浸されたカーボン系樹脂を炭素化することによって向上されうる。カーボン系樹脂の種類、炭素化の手段については後述する。
【0026】
2.本発明の金型の製造方法について
本発明の金型は任意の方法によって製造されうるが、好ましくは、カーボン材料からなる基板を準備するステップ;ならびに基板にプラズマ加工、イオンビーム加工または電子ビーム加工、および機械加工またはレーザ加工を施すステップを含む。つまり、プラズマ加工、イオンビーム加工または電子ビーム加工により、基板にナノオーダの三次元構造体を与え、機械加工またはレーザ加工により基板にミリオーダの三次元構造体を与える。
【0027】
このように、本発明の金型の製造方法によれば、一の基板に、ナノオーダの三次元構造体を形成するための加工(以下、「ナノ加工」と称することがある)と、ミリオーダの三次元構造体を形成するための加工(以下、「ミリ加工」と称することがある)とを施すため、寸法に応じた複数の金型を製造する必要がない。よって、異なる加工サイズの境目に、境界もしくは段差を有さない金型を製造することができる。
【0028】
本発明の金型の製造方法において、ナノ加工とミリ加工は、任意の順序で行われればよく、その順序は所望とする金型の形状に応じて適宜決定される。
【0029】
前述の通り、カーボン材料からなる基板は、プラズマ加工、イオンビーム加工または電子ビーム加工によりナノ加工されるが、好ましくは、ナノ加工はプラズマ加工により行われる。カーボン材料からなる基板へのプラズマ加工は、酸素ガスの雰囲気下で行われ、好ましくは酸素ガスと少量のフルオロカーボンを含むガス雰囲気下で行われる。該ガスにおけるフルオロカーボンの含有量は、1〜20体積%であることが好ましい。フルオロカーボンの例には、テトラフルオロメタンやトリフルオロメタンなどが含まれる。
【0030】
プラズマ加工により基板にナノ加工を施すには、カーボン材料からなる基板に、シリコンまたは酸化シリコンからなる、パターニングされた膜をマスクとして用いることが好ましい。基板に、シリコンまたは酸化シリコンからなるパターニングされた膜を形成するには、a)加工しようとする基板面に、シリコンまたは酸化シリコン膜を形成して、b)形成された膜上にホトレジストからなる膜を形成して、c)レジスト膜に、露光により所望のパターンを転写および現像して、d)当該パターニングされたレジスト膜をマスクとして、プラズマドライエッチングにより、シリコンまたは酸化シリコン膜にパターンを形成すればよい。
【0031】
基板面に、シリコンまたは酸化シリコン膜を形成するには、例えばシリコンや酸化シリコンをスパッタリングするか、蒸着すればよい。形成されるシリコンまたは酸化シリコン膜の厚さは、カーボン材料への加工(好ましくはプラズマドライエッチング加工)深さによるが、数百ナノメートルから数マイクロメートル程度が望ましい。シリコンまたは酸化シリコン膜の厚さが、数マイクロメートル以上であると、膜応力によって基板から膜はがれを起こすことがある。
【0032】
シリコンまたは酸化シリコン膜上にホトレジストからなる膜を形成するには、例えばレジスト溶液をスピンコートすればよい。その後、数分間のプリベーク(90〜110℃)を行って、溶液の溶媒を除去する。
【0033】
シリコン膜にパターンを形成するには、六フッ化イオウ、フルオロカーボン、または酸素ガス雰囲気下(例えば、アルゴンガスを主成分とする、六フッ化イオウ、および酸素ガスまたはテトラフルオロメタンの混合ガス)におけるプラズマドライエッチングにより加工することが好ましい。また、酸化シリコン膜にパターンを形成するには、フルオロカーボン、またはアルゴンガス雰囲気下におけるプラズマドライエッチングにより加工することが好ましい。
【0034】
ミリ加工は、機械加工またはレーザ加工により行われる。機械加工には、切削加工が含まれ、切削加工とは例えばドリルを用いた加工である。
【0035】
本発明のより好ましい金型の製造方法は、カーボン材料からなる基板の表面に、シリコン膜または酸化シリコン膜を成膜する第一工程;前記シリコン膜または酸化シリコン膜の上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光および現像して前記レジスト膜にパターンを形成する第二工程;前記シリコン膜または酸化シリコン膜を、第一のガスを用いてプラズマ処理してパターニングする第三工程;前記基板を、第二のガスを用いてプラズマ処理してエッチングする第四工程;および前記エッチングされた基板に、機械加工またはレーザ加工を施す第五工程を含む。
【0036】
第一のガスには、プラズマ処理により、シリコン膜または酸化シリコン膜にパターンを形成できるガスを選択すればよく、その具体例は前述した通りである。第二のガスには、プラズマ処理により、カーボン材料からなる基板をエッチングすることができるガスを選択すればよい。その具体例は前述した通りであるが、酸素ガスと少量のフルオロカーボンを含むガスであることが好ましい。
【0037】
また、第四工程の後であって第五工程の前に、基板のエッチング面にレジスト膜を形成してもよい。
【0038】
また、本発明の金型の製造方法は、加工形状を与えられた基板の、少なくとも加工表面にカーボン系樹脂を含浸するステップ;および含浸されたカーボン系樹脂を炭素化するステップを含みうる。それにより、基板の加工表面が硬化され、カーボン材料特有のもろさを改善することできる。
【0039】
含浸されるカーボン系樹脂とは、炭素化されうる樹脂であればよい。例えば焼成されることによって炭素化される樹脂として、フェノール樹脂、イミド樹脂、塩化ビニル樹脂などが例示される。また金型の母材であるカーボン材料も、カーボン系樹脂を炭素化して得られる材料であるが、含浸されるカーボン系樹脂と、金型の母材の原料であるカーボン系樹脂とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
基板の加工面にカーボン系樹脂を含浸する手段は特に制限されないが、その例にはカーボン系樹脂を含む溶液に基板をディップするか、当該溶液を基板に塗布することが含まれる。
【0041】
含浸されたカーボン系樹脂は、加熱処理されて炭素化されることが好ましい。加熱処理の温度は、カーボン系樹脂の種類によって異なるが、数千℃程度である。含浸されたカーボン系樹脂が炭素化されることによって、基板の表面が硬化する。これは、基板の表面の炭素密度が向上するためであると考えられる。
【0042】
本発明の金型の製造方法を用いることで、従来は多数の工程と複雑なフローを必要とした金型の製法が、単純かつ簡素になる。したがって、例えばプラスチックやガラスの成型物の製造コストを低減することが可能である。
【0043】
以下において、本発明の金型の製造方法について、より具体的に図面を参照しながら説明するが、これにより本発明の範囲が限定されることはない。
【0044】
[実施の形態1]
図1には、本発明の金型の製造プロセスの一例が示される。
(a)まず、カーボン材料からなる基板1を用意し、基板1の加工する表面を洗浄する。洗浄は、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)やエタノール、アセトンなど用いて行えばよく、表面に付いたパーティクルを洗い落とす。これらの溶媒を用いて、超音波洗浄を行ってもよい。
【0045】
(b)加工表面を洗浄されたカーボン材料からなる基板1に、スパッタや蒸着を用いて、シリコンもしくは酸化シリコンなどのシリコン系薄膜2を堆積させる。薄膜2の厚さは、数百ナノメートルから数マイクロメートル程度であればよい。薄膜2を堆積する前に、基板1の加工表面に逆スパッタを行ったり、加工表面を粗面化することが望ましい。薄膜2の密着性を向上させるためである。
【0046】
(c)薄膜2の上に、スピンコータを用いてホトレジストを塗布してホトレジスト膜3を成膜する。回転させてホトレジスト膜3の厚さを均一化することが好ましい。その後、90℃から110℃程度で数分間のプリベークを行い、膜の溶剤を除去する。
【0047】
(d)露光用マスクを用いて露光して、パターンをホトレジスト膜3に転写する。現像液を用いて露光されていない部分のホトレジストを除去し、マイクロからナノオーダのホトレジストパターン形成し、100℃以上で数分間のポストベークを行う。
パターニングされたホトレジスト膜3をマスクにして、プラズマドライエッチングにより、薄膜2をパターニングする。前述の通り、薄膜2がシリコン膜である場合は、六フッ化イオウ、フルオロカーボン(CxFy)、酸素などを用いたプラズマで加工を行い;酸化シリコン薄膜である場合は、フルオロカーボン(CxFy)、アルゴンなどを用いたプラズマで加工を行えばよい。
【0048】
(e)パターニングされた薄膜2をハードマスクにして、カーボン材料の基板1をプラズマドライエッチングにより加工する。このプラズマドライエッチングにおいて、主な成分を酸素ガスして、少量のフルオロカーボンガスを添加したガス中で、プラズマを発生させることが好ましい。それによりカーボン材料に薄膜2の残渣が残らず、シリコン系薄膜のパターンに即した垂直な三次元構造体を得ることができる。薄膜2の残渣が飛び散ると、それがマイクロマスクとして作用するので、カーボン材料が針状にパターニングされることがある。このプラズマドライエッチングによって、マイクロからナノオーダの加工形状が基板1に形成される。また、このプラズマドライエッチングによって、カーボン材料がエッチングされるとともに、ホトレジスト膜3が除去される。
【0049】
(f)その後、ホトレジストを再度塗布して、加工表面に膜3’を形成することが好ましい。膜3’は、次の工程で機械加工を行った際に発生する微小な加工くずが加工パターン内に入りこむことを防止する。したがって、発生した加工くずを洗浄で容易に除去できる場合には、膜3’の形成は省略されてもよい。
【0050】
(g)このマイクロからナノ加工されたカーボン材料からなる基板1に、機械加工(切削加工)を行い、ミリからマイクロオーダの三次元構造体を形成する。
【0051】
(h)(f)で形成したホトレジスト膜3’を剥離材により除去する。さらにパターンニングされた薄膜2(ハードマスク)を、ウェットエッチングで除去する。薄膜2がシリコン膜の場合は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどにより;酸化シリコン膜の場合は、フッ酸などにより除去される。その後、洗浄を行い表面についたパーティクル、加工くず等を除去して、金型を得る。
【0052】
[実施の形態2]
図2には、本発明の金型の製造プロセスの別の一例が示される。
(a)実施の形態1と同様に、カーボン材料からなる基板1を用意し、加工表面の洗浄を行う。
(b)機械加工により、ミリからマイクロオーダの三次元構造体を形成する。
【0053】
(c)(a)と同様の洗浄を行って加工くずを除去した後に、スパッタや蒸着を用いて、シリコンもしくは酸化シリコンなどの薄膜2を堆積させる。薄膜2の厚さは、数百ナノメートルから数マイクロメートル程度であればよい。薄膜2を堆積する前に、基板1の加工表面に逆スパッタを行ったり、加工表面を粗面化することが望ましい。薄膜2の密着性を向上させるためである。
【0054】
(d)スプレー式ホトレジスト堆積装置などを用いて、マイクロからナノ加工をしたい箇所だけにホトレジスト膜3を堆積する。ホトレジスト膜3の膜厚は、薄膜2を加工できるように調整されればよく、通常は数百nmから数μm程度でよい。
【0055】
(e)露光用マスクを用いて、露光によりパターンをホトレジスト上に転写する。現像液を用いて露光されていない部分のホトレジストを除去し、マイクロからナノオーダのホトレジストパターンを形成する。パターニングされたホトレジストには、100℃以上で数分間のポストベークを行うことが好ましい。
パターニングされたホトレジストをマスクに、プラズマドライエッチングを用いて、薄膜2のパターニングを行う。前述の通り、薄膜2がシリコン膜である場合は、六フッ化イオウ、フルオロカーボン(CxFy)、酸素などを用いたプラズマで加工を行い;酸化シリコン薄膜である場合は、フルオロカーボン(CxFy)、アルゴンなどを用いたプラズマで加工を行えばよい。
【0056】
(f)パターニングされた薄膜2をハードマスクに、カーボン材料のプラズマドライエッチング加工を実施する。その際、酸素ガスを主な成分としたガスの中にフルオロカーボン(CxFy)系ガスを少量添加したプラズマを用いることで、カーボン材料に残渣が残らず、薄膜2のパターン即した垂直な三次元構造体を得ることができる。また、このプラズマドライエッチングによって、カーボン材料がエッチングされるとともに、ホトレジスト膜3が除去される。
【0057】
(g)ハードマスクである薄膜2を、ウェットエッチングで除去する。例えば、薄膜2がシリコン膜の場合は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどで;酸化シリコン膜の場合は、フッ酸などで除去することができる。その後、洗浄を行い表面についたパーティクル、加工くず等を除去する。
【0058】
上記の実施の形態1または2のいずれにおいても、基板1のミリからナノ加工をプラズマエッチングにより行ったが、その加工手段が限定されるわけではない。たとえば、FIB(集束イオンビーム)を使用する場合は、薄膜2(シリコン系のハードマスク)を作製することなく、直接にカーボン材料からなる基板1を加工してもよい。つまり、実施の形態1では(b)、(c)および(d)ステップを;実施の形態2では(c)、(d)および(e)ステップを省略することができる。
【0059】
上記の実施の形態1または2のいずれにおいて得られた金型も、その表面を硬化されることが好ましい(図1(i)または図2(h)を参照)。例えば、カーボン系の樹脂を含浸させた後に、数千℃程度の加熱処理を行い、硬化させる。
【0060】
3.本発明の成型物について
本発明の成型物は、前述の金型を用いて製造されることを特徴とする。本発明の成型物の材質は、特に限定されないが、プラスチックまたはガラスなどであることが好ましい。
【0061】
本発明の成型物は、前述の金型を用いてインプリントを行うことによって製造されうる(図3を参照)。インプリントには、熱インプリントおよび光インプリントが含まれる。
すなわち、加熱された被加工材料(プラスチックやガラスなど)4を、圧力を加えて金型に押し込み、金型の形状を転写するか;または金型に添加された光硬化性樹脂を押し込みながら、紫外線を照射して(紫外線ランプや紫外線レーザによる)硬化することによって金型の形状を転写する、ことによって本発明の成型物を得る(図3(A)参照)。得られる成型物には、ナノ加工形状およびミリ加工形状がともに転写される(図3(B)参照)。
【0062】
カーボン材料は、ガラスやプラスチックなどとの離型性に優れる。したがって、ガラスやプラスチックからなる成型物は、金型から容易に離型される。
【0063】
本発明の成型物は、例えばバイオチップやプラスチックMEMS、有機デバイスとして用いることができる。例えば、血液診断するためのバイオチップとして用いる場合には、金型のミリ加工形状に対応する部位を、血液を留めるためのチャンバとして;マイクロ加工形状に対応する部位を、血液が流れる流路として;ナノ加工形状に対応する部位を、血液やDNAを分離するための柱状構造とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の金型は、ミリオーダからナノオーダまでの三次元形状が混在した金型であるので、例えば、血液診断チップやDNAチップなどのバイオチップデバイスの作製、プラスチックMEMS(メカニカルエレクトロマシンシステム)の作製、有機デバイスの作製などに適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の金型の製造プロセスの一例を示す図である。
【図2】本発明の金型の製造プロセスの一例を示す図である。
【図3】本発明の成型物を、インプリントにより製造する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 カーボン材料からなる基板
2 シリコン系薄膜(シリコン、酸化シリコン膜など)
3 レジスト膜
3’ レジスト膜
4 被加工材料(プラスチックやガラスなど)
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一


【公開番号】 特開2008−1077(P2008−1077A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175791(P2006−175791)