トップ :: B 処理操作 運輸 :: B29 プラスチツクの加工;可塑状態の物質の加工一般

【発明の名称】 直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置、並びに転動体収容ベルト製造用金型
【発明者】 【氏名】松本 淳

【要約】 【課題】成形時に生じる欠肉を防止または抑制させ得る転動体収容ベルト製造用金型を提供する。

【構成】この金型90は、上型91および下型92の間に成形品形状部93を有し、この成形品形状部93が、これによって成形される転動体収容ベルト50を、無限循環路内で隣り合うボール同士の間に介装される間座部と、この間座部を相互に連結する連結腕部とを備え、ボールを無限循環路内の並び方向で整列可能とするように形成されている。そして、上型91は分割構造を有し、この分割構造は、間座部51の、無限循環路の内外周方向での外周側の端部を成形する位置91tを通る位置に分割位置BLが設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を有する直動案内装置用の転動体収容ベルトを、合成樹脂材料から射出成形で製造するために用いられ、上型および下型の間に前記転動体収容ベルトを成形するための成形品形状部を有し、当該成形品形状部が、これによって成形される前記転動体収容ベルトを、前記無限循環路内で隣り合う転動体同士の間に介装される間座部と、前記間座部を相互に連結する連結腕部とを備え、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列可能とするように形成されてなる金型であって、
前記上型および下型の少なくとも一方は分割構造を有し、当該分割構造は、前記間座部の、前記無限循環路の内外周方向での少なくとも一方の側の端部を成形する位置を通る位置に分割位置が設定されていることを特徴とする転動体収容ベルト製造用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の転動体収容ベルト製造用金型で製造されてなることを特徴とする直動案内装置用転動体収容ベルト。
【請求項3】
複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を有する直動案内装置に用いられ、前記無限循環路内で隣り合う転動体同士の間に介装される間座部と、前記間座部を相互に連結する連結腕部とを備え、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列可能に形成されており、分割構造を有する金型を用いて合成樹脂材料から射出成形で製造されてなる転動体収容ベルトであって、
前記間座部には、その前記無限循環路の内外周方向での少なくとも一方の側の端部に、前記金型のパーティングラインが転写されていることを特徴とする直動案内装置用転動体収容ベルト。
【請求項4】
請求項2または3に記載の直動案内装置用転動体収容ベルトを備えていることを特徴とする直動案内装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置、並びに転動体収容ベルト製造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置は、無限循環路内を転動しつつ循環する複数の転動体を介してスライダを案内レールに対して相対移動させている。しかし、直動案内装置では、スライダが案内レールに対して相対移動すると、各転動体は同一方向へ回転しつつ移動するため、隣り合う転動体同士が擦れ合って転動体の円滑な転動が妨げられる。そのため、騒音が大きくなり、転動体の摩耗の進行も早くなる。そこで、従来から、騒音の発生を抑制し、円滑に直動案内装置を作動させるために、転動体を無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトが提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、隣り合う転動体同士の間に介装される間座部と、その間座部を相互に連結する連結腕部とを備えた転動体収容ベルトが開示されている。このような構成の転動体収容ベルトによれば、転動体を無限循環路内の並び方向で転動体列として整列させて、騒音の発生を抑制し、無限循環路内を円滑に循環させることができる。
【0004】
ここで、この種の転動体収容ベルトを製造する方法として、例えば特許文献2では、上型および下型の間に前記転動体収容ベルトを成形するための成形品形状部(キャビティ)を有し、使用する転動体よりも大径の転動体型を所定の間隔で配置した金型を用いて、射出成形によって転動体収容ベルトを製造する技術が開示されている。
また、特許文献3では、射出成形に用いる金型の、上型および下型相互を斜めに移動させることによって、成形した転動体収容ベルトを金型から外す技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−9264号公報
【特許文献2】特開平11−247856号公報
【特許文献3】特開2005−69444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の転動体収容ベルトは、金型内の成型品形状部に、溶融した樹脂材料をゲートから注入して得られる。しかし、成型品形状部内には、残留した空気や、樹脂材料の溶融によって発生する気体などのガスが存在し、これらのガスは、樹脂の流れの行き止まりとなる部分(特に、上記の間座部の端部)に溜まりやすい。そのため、このようなガスが溜まった部分には、樹脂が十分に到達することができず、成型された転動体収容ベルトに欠肉が生じてしまう。このような欠肉があると、この部分を基点として転動体収容ベルトが損傷するおそれがある。
【0006】
ここで、例えば特許文献2ないし3に記載の技術では、金型の、上型と下型との合わせ目は、ガスベントとして機能させ得るものの、成形される間座部の端部には、ガス抜きのための特段の配慮がされていないので、上記のようなガスが溜まり易い。そのため、成形される間座部には、上記のようなガスを逃がして、欠肉が生じることを防ぐ上で未だ検討の余地がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、成形時に生じる欠肉を防止または抑制させ得る転動体収容ベルト製造用金型、およびこれによって製造される直動案内装置用転動体収容ベルト並びにその転動体収容ベルトを備える直動案内装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を有する直動案内装置用の転動体収容ベルトを、合成樹脂材料から射出成形で製造するために用いられ、上型および下型の間に前記転動体収容ベルトを成形するための成形品形状部を有し、当該成形品形状部が、これによって成形される前記転動体収容ベルトを、前記無限循環路内で隣り合う転動体同士の間に介装される間座部と、前記間座部を相互に連結する連結腕部とを備え、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列可能とするように形成されてなる金型であって、前記上型および下型の少なくとも一方は分割構造を有し、当該分割構造は、前記間座部の、前記無限循環路の内外周方向での少なくとも一方の側の端部を成形する位置を通る位置に分割位置が設定されていることを特徴としている。
【0008】
第一の発明によれば、間座部の、無限循環路の内外周方向での少なくとも一方の側の端部を成形する位置を通る位置に、金型の分割位置が設定されているので、この金型の分割位置の合わせ目を、間座部の端部でのガスベントとして機能させることができる。そのため、特に、上述のようなガスが溜まりやすい間座部の端部でのガス溜まりが防止または抑制可能であり、間座部の端部まで樹脂が到達可能となる。したがって、成形時に生じる欠肉を防止または抑制することができる。
【0009】
また、本発明のうち第二の発明は、直動案内装置用転動体収容ベルトであって、第一の発明に係る転動体収容ベルト製造用金型で製造されてなることを特徴をとしている。第二の発明によれば、第一の発明に係る転動体収容ベルト製造用金型で転動体収容ベルトが製造されているので、特に、間座部の端部に成形時に生じる欠肉の発生が好適に防止または抑制された転動体収容ベルトを提供可能である。
【0010】
また、本発明のうち第三の発明は、直動案内装置であって、第二の発明に係る直動案内装置用転動体収容ベルトを備えていることを特徴としている。第三の発明によれば、第二の発明に係る直動案内装置用転動体収容ベルトを備えているので、間座部の端部に欠肉を有しない、品質の安定した転動体収容ベルトを備える直動案内装置を提供可能である。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によれば、成形時に生じる欠肉を防止または抑制させ得る転動体収容ベルト製造用金型、およびこれによって製造される直動案内装置用転動体収容ベルト並びにその転動体収容ベルトを備える直動案内装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る直動案内装置用転動体収容ベルト及びその転動体収容ベルトを備えた直動案内装置並びに転動体収容ベルト製造用金型の実施形態について図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る転動体収容ベルトを備えた直動案内装置の第一の実施形態のリニアガイドを示す斜視図である。また、図2は、図1のリニアガイドのエンドキャップを取り外した正面図、図3は、図2のリニアガイドでのX−X線部分における断面図である。
【0013】
図1および図2に示すように、このリニアガイド10は、転動体案内面14を有する案内レール12と、その案内レール12に対して相対移動可能に案内レール12上に跨設されるスライダ16とを備えている。
案内レール12は、ほぼ角形の断面形状を有し、その両側面にそれぞれ2条ずつ計4条の転動体案内面14が、その長手方向に沿って直線状に形成されている。
スライダ16は、図1に示すように、スライダ本体17と、スライダ本体17の軸方向両端にそれぞれ装着されたエンドキャップ22とを備えて構成されている。スライダ本体17およびエンドキャップ22の軸方向に連続した形状は、ともに略コ字形の断面形状である。
【0014】
スライダ本体17には、図2に示すように、その略コ字形をした両袖部の内側に、案内レール12の各転動体案内面14にそれぞれ対向する断面ほぼ半円形の負荷転動体案内面18が計4条形成されている。また、エンドキャップ22には、図3に示すように、負荷転動体案内面18の両端にそれぞれ連なる一対の方向転換路24が内部に形成されている。さらに、図2および図3に示すように、スライダ本体17には、その一対の方向転換路24に連通して、負荷転動体案内面18に平行で断面円形の貫通孔からなる転動体戻し通路20が袖部の内部に形成されている。そして、案内レール12の転動体案内面14と、これに対向するスライダ本体17の負荷転動体案内面18との間に挟まれた空間が転動体軌道路26をなしている。そして、一対の方向転換路24、転動体戻し通路20、および、転動体軌道路26によって環状に連続する無限循環路28が計4本構成されている。さらに、各無限循環路28内には、転動体としてのボール46が複数装填されている。そして、各無限循環路28内の複数のボール46は、転動体収容ベルト50によって転動体収容ベルト50とともに転動体列62を構成している。
【0015】
以下、この転動体収容ベルト50について、図3および図4を適宜参照しつつより詳しく説明する。なお、図4は、転動体収容ベルトを説明する図であり、同図(a)は無限循環路の外周側から見た斜視図を、同図(b)は無限循環路の内周側から見た斜視図を示し、また、同図(c)はボールの並び方向に沿った断面図を示している。
この転動体収容ベルト50は、図3に示すように、有端状に形成されており、無限循環路28内で隣り合うボール46同士の間に介装される間座部51と、その間座部51同士を連結する連結腕部52とを備えている。これら間座部51および連結腕部52は、可撓性をもつ伸縮可能な弾性材料である合成樹脂材料から射出成形によって一体に成形されている。このような合成樹脂材料としては、ポリエステル系エラストマーやポリウレタン等の可撓性のある熱可塑性プラスチック材料が選定される。
【0016】
上記連結腕部52は、図3に示すように、薄肉で長尺のベルト形状の部材であり、図4に示すように、ボール46を収容するための円形の貫通孔であるボール収容穴58が、長手方向に並んで形成されている。このボール収容穴58は、ボール46が連結腕部52の表裏の方向に自由に係合離脱可能な内径寸法をもって形成されている。
そして、図4に示すように、間座部51は、連結腕部52に対し、ボール46の並び方向で各ボール収容穴58の両側にそれぞれ配置されている。この間座部51は、ボール46の外径より僅かに小さい外径を有する短円柱状の部材であり、その短円柱状の軸線は、転動体収容ベルト50の長手方向と一致している。また、間座部51は、各ボール収容穴58の両側に所定の距離を隔てて配置され、連結腕部52によって、無限循環路28の幅方向の両側で連結されている。その短円柱状の両端は、無限循環路28内での、隣り合うボール46の側に向く面54として形成されている。
【0017】
そして、この転動体収容ベルト50は、その間座部51および連結腕部52のボール収容穴58で画成された空間が転動体収容部59になっており、この転動体収容部59にボール46を個別に収容して無限循環路28内での並び方向で整列させて転動体列62を構成可能である。さらに、この転動体収容ベルト50は、図2に示すように、連結腕部52が、無限循環路28内で幅方向に両側にそれぞれ張り出しており、その厚さは、案内溝60の溝幅より僅かに小さく、必要十分な強度を維持可能な範囲で薄く形成されており、この連結腕部52を案内溝60内に摺動可能に係合させ、無限循環路28の幅方向の両側で案内されるようになっている。なお、この転動体収容ベルト50は、図3に示すように、その有端状をなす両端にそれぞれ位置する二つの端部57が、無限循環路28内で互いに非接触な状態で対向するようになっており、これら対向する端部57同士の間には、ボール46が一つ装填されている。
【0018】
ここで、この転動体収容ベルト50では、図4に示すように、間座部51は、その隣り合うボール46の側に向く面54が、当該隣り合うボール46には当接しない非当接面55と、その非当接面55よりも窪んで形成された当接面56と、を有して形成されている。
詳しくは、非当接面55は、無限循環路28内の並び方向とは直交する方向に沿った平面で形成されている。これに対し、当接面56は、ボール46の転動面である球面に当接する部分をもつ面として形成されており、本実施形態の例では、各当接面56は、対向方向に同じ幅で外周側に延びる凹の円筒面からなる側面部56bと、内周側の端部に向けて幅が広くなる部分がつくる凹の円錐面である斜面部56aとの二つの面によって構成されている。
【0019】
そして、各間座部51は、並び方向で対向する当接面56同士が互いに対をなすことで、各転動体収容部59でのボール46の移動を、無限循環路28の外周側には許容し、内周側に向けては拘束しつつボール46を転動自在に保持可能になっている。
すなわち、図4(c)に示すように、隣り合う間座部51同士の当接面56は一対をなし、この一対をなす当接面56の対向する側面部56b同士の対向方向での距離TWは、上記ボール収容穴58の内径(直径)に等しく、各ボール収容穴58に収容されるボール46の移動を、無限循環路28の外周側に向けては許容するように形成されている。他方、一対をなす当接面56の斜面部56a同士は、前記並び方向に対し所定の傾斜角でそれぞれ当接する凹の円錐面になっており、各ボール収容穴58に収容されるボール46の移動を、無限循環路28の内周側に向けては拘束するように形成されている。
【0020】
上述の構成からなるこのリニアガイド10は、スライダ16を案内レール12の軸方向に相対移動させると、無限循環路28内をボール46が回転しつつ移動し、ボール46とともに転動体収容ベルト50も無限循環路28内を移動する。このとき、無限循環路28内で転動体収容ベルト50の間座部51は、自分の移動方向の前方にあるボール46を押し、さらに、ボール46は自分の移動方向の前方にある間座部51を押す。これにより、転動体列62全体が無限循環路28内を循環移動する。そして、転動体列62は、転動体軌道路26においてスライダ16とは反対方向に移動し、転動体軌道路26の一方の端部から連続する一方の方向転換路24に入って移動方向を変え、方向転換路24から転動体戻し通路20に入ってスライダ16と同じ方向に移動し、他方の方向転換路24に入って再び移動方向を変えて転動体軌道路26へ戻るという循環を繰り返すことができる。さらに、各転動体収容ベルト50の連結腕部52は、案内溝60に係合しているので、転動体軌道路26内で各間座部51が倒れたりすることは防止されており、転動体列62の配列が乱れてその円滑な移動が妨げられることも防止される。また、転動体収容ベルト50の連結腕部52が案内溝60に沿って無限循環路28を案内されるので、転動体収容ベルト50が移動する際の振れは規制され、転動体収容ベルト50が連結腕部52の間に保持するボール46の振れも規制され、転動体列62全体が無限循環路28内を正確かつ円滑に移動可能となる。
【0021】
ここで、上記転動体収容ベルト50は、図5に示すような金型を用いて、射出成形によって製造される。
以下、この転動体収容ベルト50を製造するための金型およびこれを用いた射出成形によるその製造工程について、図5ないし図7を適宜参照しつつ説明する。なお、射出成形自体は通常の方法によっているので概要のみ簡単に述べる。
この転動体収容ベルト50の成型用型枠である金型には鋼材が使われており、図5に示すように、この金型90は、可動側金型である上型91と固定側金型である下型92とを備えて構成されている。これら上型91と下型92とは、図6(a)に示すように、互いに対向して配置される。そして、図7に示すように、これら上型91と下型92との間に画成される空隙部が、成形品形状部(キャビティ)93になっている。
【0022】
上型91および下型92に形成される成形品形状部93の形状は、成形品(製品)となる上記転動体収容ベルト50の形状と相対的に形成された雌雄反転した形状であり、さらに、射出成形による変形量等を考慮してその寸法が決められている。
すなわち、図5に示すように、この金型90には、上記転動体収容部59の形状と相対的に形成された雌雄反転した形状として、上型91には略円錐台状に張り出す凸の円錐台部91aが長手方向に複数形成され、他方、下型92には、上型91の凸の円錐台部91aに対して対向して配置されるとともに、この凸の円錐台部91aに整合して、これに嵌り合い可能な略円錐台状の凹の円錐台部92aが複数形成されている。
【0023】
また、上型91には、その凸の円錐台部91aの基端側の周囲に、連結腕部52を成形するための平面部91mが形成され、下型92には、その凹の円錐台部92aの開口する側の周囲に、平面部91mとともに連結腕部52を成形する平面部92mが形成されている。さらに、この金型90の長手方向において、上型91には、凸の円錐台部91aの両側に、間座部51を成形するための凹部91cが形成され、他方、下型92には、凹の円錐台部92aの両側に、間座部51を成形するための凹部92cが形成されており、これらについても上記間座部51の形状と相対的に形成された雌雄反転した形状になっている。
【0024】
そして、上記間座部51の当接面56は、上型91の凸の円錐台部91aが有する斜面部91dと、間座部51を成形するための凹部91c内に形成されている凸の円筒部91bとによって成形されるようになっており、また、上記間座部51の非当接面55は、上型91の凹部91c内に形成されて上記長手方向を向く平面部91fと、下型91の凹部92c内に形成されて上記長手方向を向く平面部92fとによって成形されるようになっている。なお、これら平面部91fおよび平面部92fの向きは、成形された転動体収容ベルト50の非当接面55が、無限循環路28内の並び方向とは直交する方向に沿った平面になるように形成されており、さらに、この非当接面55の形成される方向に沿って上型91および下型92の離型方向が設定されている。また、上型91および下型92相互の分割位置は、下型92寄りになっており、間座部51の内周側の端部51nは下型92の近傍に位置している。
【0025】
ここで、図5(b)および図6に示すように、この上型91は長手方向に沿った分割構造を有して形成されている。つまり、この上型91は、長手方向に沿って幅方向での中央に分割位置BLが設定されており、この分割位置BLで幅方向の一方の側と他方の側との二つの分割上型91A,91Bに分割されている。そして、この上型91の相互の分割位置BLは、上述した間座部51の、無限循環路28の内外周方向での外周側の端部51t(図4(c)参照)を成形する位置(以下、端部成形位置という)91tを通る位置に設定されている。
【0026】
さらに、この金型90には、図7に示すように、溶融した合成樹脂材料(湯)を成形品形状部93内に注入するためのゲート(注湯口)94が、下型92に設けられている。このゲート94は、成形される間座部51の内周側端部に対応する位置に、必要な数だけ設けられている(同図の例では1つ置きの間座部51毎)。また、上型91側には押出しピン95が複数設けられている。これら押出しピン95は、各間座部51を繋いでいる連結腕部52の幅の広い部分(各間座部51と連結腕部52とを繋ぐ部分の近傍)に対向して配置されている。なお、この押出しピン95は、上型91および下型92のうち、ボール46の移動を許容する側の成形品形状部93を有する側に配置されている。
【0027】
上記の金型90による製造工程は、まず、二つに分割されている分割上型91A,91Bを組み合わせて上型91を構成するとともに、図7(a)に示すように、その上型91および下型92を所定の位置に対向配置する。次いで、図7(b)に示すように、上型91を下方に移動して上型91および下型92を所定の対向位置で密着させる。次いで、図7(c)に示すように、下型92に設けられたゲート94から成形品形状部93内に溶融した合成樹脂材料(湯)を射出する。次いで、合成樹脂材料が固化後、図7(d)に示すように、上型91を上方に移動して上下方向に型を開き、上型91側に配置された押出しピン95によって成形された転動体収容ベルト50を突き出して取り出す。これにより、上述した転動体収容ベルト50が製造される。そのため、この転動体収容ベルト50の間座部51には、その端部51tに金型90のパーティングラインの線跡が形成される。
【0028】
次に、上記の金型90、およびこの金型90によって製造される転動体収容ベルト50並びにこの転動体収容ベルト50を備えるリニアガイド10の作用・効果について説明する。
上記金型90によれば、上型91の端部成形位置91tを通る位置に、金型の分割位置BLが設定されているので、この分割位置BLの合わせ目をガスベントとして機能させることができる。
【0029】
以下、このような分割構造を有する利点について、図8および図9を適宜参照してより詳しく説明する。ここで、図9は比較例の金型を説明する図であり、同図(a)に示す比較例の上型91Hは、上記本実施形態の上型91に比べ、長手方向に沿った分割構造(分割位置BL)を有しない点のみが異なっている(同図(a)参照)。また、同図(b)は、この上型91Hを下型92に組み合わせた金型90Hの成型品形状部93Hに樹脂を注入したときの樹脂の流れを模式的に示している。なお、図8(a)および図9(b)において、符号Aで示す矢印は、成型品形状部93内での樹脂の流れのイメージを示し、また、符号Bで示す矢印は、上型91と下型92との合わせ目からガスが逃げるイメージを示し、符号Cで示す矢印は、分割上型91A,91B相互の合わせ目(分割位置BL)からガスが逃げるイメージを示している。
【0030】
上述したように、成型品形状部内は、樹脂の流れの先端付近に、残留した空気や、樹脂材料の溶融によって発生する気体などのガスが存在する。しかし、比較例では、図9(b)に示すように、樹脂の流れが行き止まりとなる端部成形位置91tには、これらのガスが溜まり易く、このガスが溜まった端部成形位置91tの部分には、樹脂が十分に入り込むことができない。そのため、長手方向に沿った分割構造を有しない上型91Hの場合、これにより得られる成型品では、同図(c)に示すように、間座部51の端部51tに欠肉Knが生じ易くなる。このような欠肉Knは、転動体収容ベルト50に損傷を生じさせる原因になりうる。
【0031】
これに対し、上述した本実施形態の金型90によれば、その上型91は、長手方向に沿って分割されている分割位置BLの合わせ目をガスベントとして機能させることができるので、図8(a)に示すように、この分割位置BLからガスを逃がすことができる。特に、上述のようなガスが溜まりやすい端部成形位置91tでのガス溜まりが防止または抑制可能であり、これにより、間座部51の先端部分となる端部51tまで樹脂が到達可能となる。したがって、成形時に生じる欠肉を防止または抑制することができる。
【0032】
また、この金型90によれば、金型90内で転動体収容ベルト50を成形後に、転動体収容部59の収容されるボール46の移動を許容する側から押出しピン95で突くことによって、アンダーカットを有しない側から離型することができる。したがって、転動体収容ベルト50に無理な力をかけることなく離型可能である。また、アンダーカットを有しない構成なので、金型90の製造が容易である。なお、本実施形態の金型90によって成型される転動体収容ベルト50に転写される金型の分割箇所(パーティングライン)PLは、図8(b)に太い実線で示すように、各間座部51の幅方向中央に離型方向に沿って形成される垂直な線PL1と、上型91および下型92相互の分割位置に現れて斜面部56aの先端部分と非当接面55との境界を通るとともにボール収容穴58の内周面に沿って形成される線PL2と、によって形成される。
【0033】
そして、上記転動体収容ベルト50によれば、この金型90で製造されているので、特に、間座部51の先端部分に成形時に生じる欠肉Knの発生が好適に防止または抑制され、意図した通りの成型品が得られる。これにより、各ボール46を、所定の間隔を維持しながら無限循環路28内を転動体列62として円滑に循環させるという所期の性能をより確実なものとすることができる。
【0034】
また、この転動体収容ベルト50は、間座部51と連結腕部52とによってボール46を個別に収容する転動体収容部59が画成されており、この転動体収容部59は、そこに収容されるボール46の移動を、無限循環路28の内外周方向での外周側に向けては許容するように形成されているので、この転動体収容ベルト50にボール46を組み込む際には、その収容されるボール46の移動を許容する側から、転動体収容部59にボール46を容易に挿入することができる。
さらに、上記リニアガイド10によれば、この転動体収容ベルト50を備えているので、転動体収容ベルト50に欠肉Knの発生に起因する損傷が生じるおそれが少なく、その品質を安定したものとすることができる。
【0035】
以上説明したように、この金型90によれば、成形品形状部93の端部への樹脂の到達のガス溜りによる妨害が防止または抑制されるので、欠肉Knのない、意図した通りの転動体収容ベルト50が得られる。さらに、その転動体収容ベルト50およびこれを備えるリニアガイド10を提供することができる。
なお、本発明に係る転動体収容ベルト製造用金型、直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、本発明に係る金型、転動体収容ベルトおよびこれを備えた直動案内装置の一実施形態として、ボールを備えたリニアガイドを例に説明したが、これに限定されず、例えば本発明を、ローラを備えたローラガイドに適用することができる。
【0036】
また、例えば、上記実施形態では、上記の転動体収容部59は、そこに収容されるボール46の移動を、無限循環路28の内外周方向での外周側に向けては許容するように形成されている例で説明したが、これに限定されず、転動体収容ベルトに無理な力をかけることなく離型する構成とする上では、転動体収容部は、そこに収容される転動体の移動を、無限循環路の内外周方向での少なくとも一方の側に向けては許容するように形成されていればよい。このような構成であれば、金型内で転動体収容ベルトを成形後に、転動体の移動を許容する側から押出しピンで突くことによって、アンダーカットを有しない側から無理なく離型することができる。
【0037】
また、本発明に係る分割構造を有する金型についても、上記実施形態に限定されず、上型91および下型92の少なくとも一方が分割構造を有し、その分割構造は、間座部51の、無限循環路28の内外周方向での少なくとも一方の側の端部を成形する位置を通る位置に分割位置BLが設定されていれば、間座部51の先端部分に成形時に生じる欠肉を防止または抑制可能である。
【0038】
例えば、図10に第一の変形例を示す。
同図に示すように、この第一の変形例では、上記実施形態での構成に対し、さらに、固定側金型である下型92をも分割した点が上記実施形態とは異なっている。すなわち、この下型92は、上記実施形態での上型91同様に、その長手方向に沿った分割構造を有し、長手方向に沿って幅方向での中央に分割位置BL2が設定され、この分割位置BL2で幅方向の一方の側と他方の側との二つの分割下型92A,92Bに分割されている。そして、この下型92の相互の分割位置BL2は、上述した間座部51の、無限循環路28の内外周方向での内周側の端部51n(図5(c)参照)を成形する位置92nを通る位置に設定されている。
【0039】
このような構成であれば、上記実施形態の作用・効果に加え、さらに、下型92においても、間座部51の内周側の端部51nでの欠肉Knの発生をより確実に防止することができる。しかし、上記実施形態での構成のように、上型91および下型92相互の分割位置が、下型92寄りになっており、間座部51の内周側の端部51nが下型92の近傍に位置している場合には、上述の実施形態での金型90のように、上型91側に形成される端部成形位置91tに比べて、下型92側に形成される、間座部51の内周側の端部51nを形成する置92nでのガスは逃げやすいので、あえて下型92をも分割する必要性は低い。また、下型92をも分割すると、その分、金型90の構成が複雑になるので、金型90の製造コストが上がる。そのため、上記実施形態では、コストの低減を重視して、下型92を分割しない構造を採用している。
【0040】
また、例えば図11および図12に第二の変形例を示す。
図11に示すように、この第二の変形例では、上記実施形態での分割位置BLに替えて、その上型91Jには、各間座部51を形成するための凹部91cの位置それぞれに、長手方向とは直角な方向に沿って分割位置BL3が設定されている点が異なっている。すなわち、この上型91Jは、その長手方向とは直角な方向に沿った分割構造を有し、間座部51の数に応じた数だけ分割されている。そして、この上型91Jの相互の分割位置BL3は、上述した間座部51の、無限循環路28の内外周方向での外周側の端部51t(図5(c)参照)を成形する端部成形位置91tを通る位置に設定されている。
このような構成であっても、各分割位置BL3の合わせ目をガスベントとして機能させることができるので、間座部51の外周側の端部51tでの欠肉の発生を防止または抑制することができる。
【0041】
ここで、この第二の変形例では、金型の分割数が増えてその構成が複雑になるが、転動体収容ベルト50の当接面56に対して、金型の分割面が設けられない点で有利である。つまり、転動体であるボール46と当接する当接面56にバリの発生するおそれがないので、ボール46と転動体収容ベルト50との安定した当接状態を保つ上で好ましい。なお、この第二の変形例での金型によって成形された転動体収容ベルトに転写される金型の分割箇所(パーティングライン)PLは、図12に太い実線で示すように、各間座部51にその長手方向とは直角な方向に沿って形成される線PL3と、上型91および下型92相互の分割位置に現れて斜面部56aの先端部分と非当接面55との境界を通るとともにボール収容穴58の内周面に沿って形成される線PL2と、によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る転動体収容ベルトを備えた直動案内装置の第一の実施形態のリニアガイドを示す斜視図である。
【図2】図1のリニアガイドのエンドキャップを取り外した正面図である。
【図3】本発明に係るリニアガイドを説明する図であり、同図は図2のリニアガイドでのX−X線部分における断面図である。
【図4】本発明に係る転動体収容ベルトを説明する図である。
【図5】本発明に係る転動体収容ベルト製造用金型を説明する斜視図であり、同図(a)は、上型については分割された奥側のみを示し、下型についてはその成形する転動体収容ベルトの長手方向に沿って切断した図を示している。また、同図(b)はその上型の成形品形状部を斜視図で示し、同図(c)は、その下型の成形品形状部を斜視図で示している。
【図6】本発明に係る転動体収容ベルトを製造するための金型を説明する斜視図であり、同図(a)は、分割された奥側を示し、同図(b)は分割された手前側を示している。
【図7】本発明に係る転動体収容ベルト製造用金型による成形工程を説明する図である。
【図8】本発明に係る転動体収容ベルト製造用金型の作用を説明する図であり、同図(a)は図7(c)での要部を拡大して示すとともに、金型の成型品形状部に樹脂を注入したときの樹脂の流れを模式的に示している。また、同図(b)は成形された転動体収容ベルトに転写される金型の分割箇所(パーティングライン)を示す斜視図である。
【図9】比較例の金型を説明する図である。なお、同図(a)は第一の実施形態での図5(b)に対応する図を示し、同図(b)は図8(a)に対応する図を示し、また、同図(c)は図8(b)に対応する図を示している。
【図10】本発明に係る分割構造を有する金型の変形例(第一の変形例)を説明する斜視図であり、同図(a)はその下型の成形品形状部を示し、同図(b)および(c)は、その下型の分割された奥側および手前側をそれぞれ示している。
【図11】本発明に係る分割構造を有する金型の変形例(第二の変形例)を説明する図であり、同図(a)はその上型の成形品形状部を斜視図で示し、同図(b)は図8(a)に対応する図を示している。
【図12】本発明に係る分割構造を有する金型の変形例(第二の変形例)を説明する図であり、同図は成形された転動体収容ベルトに転写される金型の分割箇所(パーティングライン)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10 リニアガイド(直動案内装置)
12 案内レール
14 転動体案内面
16 スライダ
17 スライダ本体
18 負荷転動体案内面
20 転動体戻し通路
22 エンドキャップ
24 方向転換路
26 転動体軌道路
28 無限循環路
46 ボール(転動体)
50 転動体収容ベルト
51 間座部
52 連結腕部
58 ボール収容穴
59 転動体収容部
60 案内溝
62 転動体列
90 金型
91 上型
92 下型
93 成形品形状部(キャビティ)
94 ゲート
95 押出しピン
BL 分割位置
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也

【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭

【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼


【公開番号】 特開2008−1031(P2008−1031A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174351(P2006−174351)