Warning: copy(htaccessbak): failed to open stream: No such file or directory in /home/jtokkyo/public_html/header.php on line 10
艶消し金属調表面を有する樹脂成形体及び金属薄膜形成基材用樹脂成形体 - 特開2008−981 | j-tokkyo
トップ :: B 処理操作 運輸 :: B29 プラスチツクの加工;可塑状態の物質の加工一般

【発明の名称】 艶消し金属調表面を有する樹脂成形体及び金属薄膜形成基材用樹脂成形体
【発明者】 【氏名】鈴木 紀之

【氏名】宮野 淳司

【要約】 【課題】金属加工の分野で知られている金属表面をサンドブラストして得られる艶消し金属表面や、金属表面をヘアライン加工して得られる艶消し金属表面のような、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面を備えた樹脂成形体を提供することを課題とする。

【構成】艶消し金属調表面を有する樹脂成形体であって、前記艶消し金属調表面が、中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上である微細な凹凸形状を有する金属薄膜表面により形成されていることを特徴とする艶消し金属調表面を有する樹脂成形体を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
艶消し金属調表面を有する樹脂成形体であって、
前記艶消し金属調表面が、中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上である微細な凹凸形状を有する金属薄膜表面により形成されていることを特徴とする艶消し金属調表面を有する樹脂成形体。
【請求項2】
前記微細な凹凸形状が、以下の少なくとも一方の条件を満たす梨地形状である請求項1に記載の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体。
(1)ピークカウント(Pc)が50以上
(2)凹凸1周期の平均間隔(Sm)が100μm以下
【請求項3】
前記微細な凹凸形状がヘアライン形状であって、前記ヘアラインの線幅が100μm以下である請求項1に記載の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体。
【請求項4】
微細な凹凸形状が形成された表面を有する樹脂成形体であって、
前記微細な凹凸形状が中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上であることを特徴とする金属薄膜形成基材用樹脂成形体。
【請求項5】
前記微細な凹凸形状が以下の少なくとも一方の条件を満たす梨地形状である請求項4に記載の金属薄膜形成基材用樹脂成形体。
(1)ピークカウント(Pc)が50以上
(2)凹凸1周期の平均間隔(Sm)が100μm以下
【請求項6】
前記微細な凹凸形状がヘアライン形状であって、前記ヘアラインの線幅が100μm以下である請求項4に記載の金属薄膜形成基材用樹脂成形体。
【請求項7】
前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体が20×20×2(mm)の平板成形体金型で測定した成形収縮率が1.8%以下の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物から形成されるものである請求項4〜6の何れか1項に記載の金属薄膜形成基材用樹脂成形体。
【請求項8】
前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体が、数平均等価面積円直径0.5μm以下の層状無機フィラーを1〜15質量%含有するものである請求項4〜7の何れか1項に記載の金属薄膜形成基材用樹脂成形体。
【請求項9】
前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体が、無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂を3〜
60質量%含有するものである請求項4〜7の何れか1項に記載の金属薄膜形成基材用樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、艶消し金属調表面を有する樹脂成形体及び前記樹脂成形体を得るために用いられる金属薄膜形成基材用樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の外観部品や内装部品、各種電気製品のハウジング等として、樹脂成形体の表面に金属調の加飾表面処理を施した部材が知られている。
【0003】
前記金属調の加飾表面処理の例としては、樹脂成形体の平滑表面に金属薄膜を形成して得られる光沢を有する金属調表面(以下、光沢金属調表面とも呼ぶ)が挙げられる。
【0004】
光沢金属調表面を得る方法としては、鏡面仕上げした金型で樹脂組成物を成形した後、成形体表面を平滑化するためにコート剤を塗布してアンダーコート層を形成し、アンダーコート層表面に金属薄膜を形成させる方法が挙げられる。このようにして形成される光沢金属調表面は光沢性に優れており、自動車の車両用灯具等の反射面として用いられている。
【0005】
一方、近年、前記光沢金属調表面とは異なった金属質感を有する表面を備えた樹脂部材が高級感を求める消費者に求められている。
【0006】
前記光沢金属調表面とは異なった金属質感としては、金属加工の分野において知られた各種意匠、具体的には、例えば、金属表面をサンドブラストして得られる艶消し金属表面や金属表面をヘアライン加工して得られる艶消し金属表面のような、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面が挙げられる。
【0007】
これらの意匠は金属加工の分野においては一般的に知られているものであるが、樹脂部材にこのような金属質感を付与することは困難であった。
【0008】
前記金属を削りだしたような外観の艶消し金属調表面を樹脂成形体表面に適用する方法としては、光輝性のフィラーを含有する樹脂組成物を微細な梨地シボを有する金型に射出成形することにより、表面に艶消し金属調表面が形成された成形体を得る方法(例えば特許文献1)や、金属薄膜が形成された成形体表面をブラッシングすることにより、表面に艶消し金属調表面が形成された成形体を得る方法等が知られている。
【0009】
前記特許文献1に記載の方法においては、細かな梨地シボやヘアライン形状のシボを成形体表面に形成する場合に、シボの凹凸の大きさに比べて前記光輝性のフィラーの大きさが大きすぎるために、シボの細かな部分には前記光輝性のフィラーが充分に侵入せず、光沢感が低かった。また、射出成形して得られる成形体にウエルド部が形成される場合には、その部分で色ムラが生じるという問題もあった。
【0010】
また、前記金属薄膜が形成された成形体表面をブラッシングすることにより、表面に艶消し金属調表面が形成された成形体を得る方法においては、ブラッシングする工程が煩雑であるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−192637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、金属加工の分野で知られている金属表面をサンドブラストして得られる艶消し金属表面や、金属表面をヘアライン加工して得られる艶消し金属表面のような、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、成形体表面に比較的浅く、且つ、斜面の角度が急である微細な凹凸表面を有する成形体表面に金属薄膜を形成することにより、金属の質感を失わない程度に艶消しすることができ、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面を樹脂成形体表面に付与することができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体は、艶消し金属調表面を有する樹脂成形体であって、前記艶消し金属調表面が、中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上である微細な凹凸形状を有する金属薄膜表面により形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
このような艶消し金属調表面を有する樹脂成形体は、金属を削りだしたように艶消しされた金属調表面を有するものである。
【0015】
また、艶消し金属調表面を有する樹脂成形体としては、前記微細な凹凸形状が(1)ピークカウント(Pc)が50以上、及び(2)凹凸1周期の平均間隔(Sm)が100μm以下の少なくとも一方の条件を満たす梨地形状であることが好ましい。このような形状を有する場合には、金属表面をサンドブラストして削りだしたときに得られるような艶消し金属調表面(以下、単に、サンドブラスト艶消し金属調表面とも言う)が得られる。
【0016】
また、艶消し金属調表面を有する樹脂成形体としては、前記微細な凹凸形状がヘアライン形状を有し、前記ヘアラインの線幅が100μm以下であることが好ましい。このような形状を有する場合には、金属表面をヘアライン加工して得られるような艶消し金属調表面(以下、単に、ヘアライン艶消し金属調表面とも言う)が得られる。
【0017】
また、本発明の金属薄膜形成基材用樹脂成形体は、微細な凹凸形状が形成された表面を有する樹脂成形体であって、前記微細な凹凸形状が中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上であることを特徴とするものである。このような樹脂成形体の表面に金属薄膜を形成させることにより、艶消し金属調表面を有する樹脂成形体を容易に得ることができる。
【0018】
また、前記微細な凹凸形状が(1)ピークカウント(Pc)が50以上及び(2)凹凸1周期の平均間隔(Sm)が100μm以下の少なくとも一方の条件を満たす梨地形状である場合には、このような樹脂成形体の表面に金属薄膜を形成させることにより、サンドブラスト艶消し金属調表面が得られる。
【0019】
また、前記微細な凹凸形状がヘアライン形状であって、前記ヘアラインの線幅が100μm以下である場合には、このような樹脂成形体の表面に金属薄膜を形成させることにより、ヘアライン艶消し金属調表面が得られる。
【0020】
また、前記樹脂成形体が20×20×2(mm)の平板成形体金型で測定した成形収縮率が1.8%以下の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物から形成されるものである場合には、このような樹脂成形体の表面に金属薄膜を形成させて得られる艶消し金属調表面には外観ムラが生じにくい。
【0021】
また、前記樹脂成形体が、数平均等価面積円直径0.5μm以下の層状無機フィラーを1〜15質量%含有するものである場合には、このような樹脂成形体の表面に金属薄膜を形成させて得られる艶消し金属調表面には外観ムラが生じにくく、また、剛性や耐熱性に優れている点から好ましい。
【0022】
また、前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体が、無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂を3〜60質量%含有するものである場合には、特に、成形収縮率が低い成形体であるので艶消し金属調表面の外観ムラが特に生じにくい点から好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、金属表面をサンドブラストして削りだしたときに得られるような艶消し金属調表面や、金属表面をヘアライン加工して得られるような艶消し金属調表面のような、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体は、艶消し金属調表面を有する樹脂成形体であって、前記艶消し金属調表面が、中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上である微細な凹凸形状を有する金属薄膜表面により形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
前記微細な凹凸形状を有する金属薄膜表面は、後述するように、微細な凹凸形状が形成された表面を有する成形体表面に金属薄膜を形成することにより得られる。
【0026】
ここで、本発明における中心線平均粗さ(Ra)及び粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)とは、凹凸形状の形態を示すパラメーターであり、表面粗さ測定機能を備えたレーザー顕微鏡により測定することができる以下のようなものである。
【0027】
すなわち、中心線平均粗さ(Ra)とは、表面粗さ測定機能を備えたレーザー顕微鏡により測定された粗さ曲線の中心線に対する絶対値偏差の平均値と定義され、また、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)とは、前記粗さ曲線を一定間隔で横方向に区切り、各区間内における粗さ曲線の終始点を結ぶ線分の傾きの絶対値の平均値であると定義される。
【0028】
前記微細な凹凸形状の中心線平均粗さ(Ra)は、5〜50μmであり、好ましくは10〜40μmである。前記中心線平均粗さが50μmを超えると、凹部の深さが深すぎるために光の乱反射が強くなって光沢が失われて金属感が低下し、5μm未満の場合には光沢が強すぎて艶消し効果を充分に発揮し得ない。
【0029】
また、前記粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)は、30度以上であり、35度以上、さらには40度以上であることが好ましい。前記Δaが30度未満の場合には、艶消し効果を充分に発揮できない。また、Δaが90度を超える場合には、成形体の成形時の離型性が損なわれる点から好ましくない。
【0030】
前記微細な凹凸形状としては、梨地状、ヘアライン状、皮シボ状、幾何学模様等の形状が挙げられるが、これらの中では、梨地状及びヘアライン状であることが特に意匠性に優れている点から好ましい。
【0031】
前記微細な凹凸形状が梨地状に形成されている場合には、サンドブラスト艶消し金属調表面が得られる。また、前記微細な凹凸形状がヘアライン状に形成されている場合には、ヘアライン艶消し金属調表面が得られる。
【0032】
なお、前記梨地状の凹凸形状としては、(1)ピークカウント(Pc)が50以上及び(2)凹凸1周期の平均間隔(Sm)が100μm以下の少なくとも一方の条件を満たすことが好ましい。
【0033】
前記梨地状の凹凸形状としては、前記ピークカウント(Pc)が50以上、さらには60以上、特には70以上であることが好ましい。ピークカウントが50未満の場合には光沢が低下して金属感が低下する傾向がある。なお、前記ピークカウント(Pc)とは、粗さ曲線の中心線に対し上側に5μmの位置に、中心線に対して平行な1本のピークカウントレベルを設けたとき、中心線と粗さ曲線が交差する2点間において、ピークカウントレベルと粗さ曲線が交差する点が1回以上存在する場合を1ピークとし、10mm当たりにおけるピークの合計数を表すパラメーターである。
【0034】
また、前記凹凸1周期の平均間隔(Sm)は、100μm以下、さらには90μm以下、特には80μm以下であることが好ましい。100μmを超えると光沢が低下して金属感が低下する傾向がある。なお、凹凸の平均間隔(Sm)とは、前記レーザー顕微鏡により測定された粗さ曲線から、その中心線の方向に基準長さを抜き取り、1つの山およびそれに隣り合う1つの谷に対応する中心線の長さの平均値であると定義される。
【0035】
一方、前記ヘアライン形状の凹凸形状としては、前記ヘアラインの線幅が100μm以下、さらには、80μm以下であることが、ヘアライン艶消し金属調表面が得られる点から好ましい。
【0036】
本発明の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体は、微細な凹凸形状が形成された表面を有する樹脂成形体であって、前記微細な凹凸形状が中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上であるような樹脂成形体(以下、単に金属薄膜形成基材用樹脂成形体とも呼ぶ)の表面に、金属薄膜を形成することにより得られる。
【0037】
前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体は、中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上であるような微細な凹凸形状が形成された表面を有するキャビティを備えた金型で、表面転写性のよい熱可塑性樹脂又は樹脂組成物を射出成形し、前記キャビティの微細な凹凸形状を正確に転写することにより形成されうる。
【0038】
前記金型に形成される微細な凹凸形状は、ヘアライン加工、サンドブラスト法、化学エッチング法、フォトエッチング法、電鋳加工、放電加工及びノングレア処理等、金型にシボ表面を形成するための従来から知られた各種方法により形成することができる。
【0039】
梨地状の微細な凹凸形状を形成するための方法の具体例としては、例えば、金型表面を脱脂した後に、必要に応じてマスキングして乾燥し、その表面を酸で処理する方法が挙げられる。また、必要に応じて前記酸で処理された表面をサンドブラストして前記形状の表面になるように調節してもよい。さらに、酸で処理しないで前記形状を形成する方法としては、ガラスビーズなどによるサンドブラストのみで形成してもよい。この場合には、所望の平均粗さを得るために種々の大きさのガラスビーズを適宜選択する。
【0040】
このようにして得られる梨地加工表面の具体例としては、例えば、(株)棚澤晩翠堂のシボ加工番手TB−S40D、TB−225、TB−218等、または、これらを更にサンドブラスト処理することにより表面形状を微調整したもの等が挙げられる。
【0041】
また、ヘアライン形状の凹凸形状を形成するための各種ヘアライン加工の具体例としては、例えば、金型表面を脱脂した後に旋盤やけがき工具を用いて切削加工したり、エッチング加工、電極放電加工等を施す方法が挙げられる。
【0042】
このようにして得られるヘアライン形状の具体例としては、例えば、(株)棚澤晩翠堂のシボ加工番手TB−330、TB−331等、または、これらを更にサンドブラスト処理すること等により表面状態を微調整したもの等が挙げられる。
【0043】
また、皮シボ状の凹凸形状を形成するための方法としては、皮シボのパターンを金型に転写し、必要に応じてマスキングした後に、エッチングとサンドブラストを繰り返して皮シボ状の凹凸形状を形成することができる。
【0044】
また、幾何学模様の凹凸形状を形成するための方法としては、いわゆるフォトエッチングの方法が用いられる。具体的には、金型面の脱脂、フィルムトリミング、レジスト塗布、フィルム添付、露光、加熱現像、エッチング、レジスト除去、サンドブラストの工程を繰り返して幾何学模様の凹凸形状を形成することができる。
【0045】
そして、このようにして形成された凹凸表面は、凹凸表面の形成後、さらに、防錆加工することが好ましい。
【0046】
前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体は、前記のような金型を用いて表面転写性のよい熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られる。
【0047】
前記表面転写性のよい熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物としては、数10μmオーダーの大きさを有するような汎用的なガラス繊維や無機フィラーを殆ど含有しないような熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。なお、汎用的なガラス繊維や無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて、前記金型で成形した場合には、ガラス繊維や無機フィラーの大きさが凹凸形状の大きさに比べて大きすぎて、金型の微細な凹凸形状を正確に転写することが困難であり、また、成形体の表面にガラス繊維や無機フィラーが浮き出るために表面が荒れて、前記のような表面状態を有する成形体を得ることは困難である。
【0048】
前記熱可塑性樹脂又は樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ビニル系樹脂が挙げられる。
【0049】
前記ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等、または前記各ポリエステルを構成する単位を主成分とし、それらと共重合可能な単量体に由来する単位を含有する共重合ポリエステルを挙げることができる。これらの中では、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート樹脂、または、これらの樹脂とビスフェノールAのポリエチレンオキサイド付加化合物またはポリテトラメチレングリコールとの共重合体が、取扱性、剛性、結晶性、耐熱性および表面性の点から好ましい。
【0050】
前記ポリエステル系樹脂は、成形工程における成形流動性および最終製品の諸物性を考慮して適度な対数粘度のものを選択して用いることが好ましい。具体的には、ポリエステル系樹脂の対数粘度として、フェノール/テトラクロロエタン(5/5質量比)混合溶媒を用い25℃にて測定した対数粘度が、0.3〜2.0dl/g、さらには、0.35〜1.9dl/g、とくには、0.4〜1.8dl/gであることが好ましい。ポリエステル系樹脂の対数粘度が0.3dl/g未満である場合には、得られる成形体の機械的特性が低くなる傾向があり、2.0dl/gを超える場合には成形流動性が低下するために、金型表面に形成された凹凸表面の転写性がやや低下する傾向がある。
【0051】
また、前記ポリアミド系樹脂とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を含む熱可塑性樹脂である。前記ポリアミド系樹脂の具体例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)等の脂肪族ポリアミドや、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ポリアミド6T/6I)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))等の半芳香族ポリアミド等及びこれらを主構成単位とする共重合ポリアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、MXDポリアミド及びこれらの共重合ポリアミドが強度、弾性率、コスト等の点から好ましい。
【0052】
前記ポリアミド系樹脂の相対粘度は特に制限されないが、通常、25℃の濃硫酸中で測定した相対粘度が0.5〜5.0程度のポリアミド樹脂が成形流動性と物性とのバランスに優れている点から好ましい。
【0053】
また、前記ポリアセタール系樹脂とは、オキシメチレン基(−CHO−)単位を主たる構成単位とする熱可塑性樹脂であり、ポリオキシメチレン単独重合体、またはオキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、これ以外に他の構成単位、例えば、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオール等のコモノマー単位を含有する共重合体が挙げられる。機械的特性の点から、ポリオキシメチレン単独共重合体及び/又はオキシメチレンを主構成成分とする重合体中に炭素数2以上のオキシアルキレン単位を0.1〜4.0%含有して成る共重合体が好ましい。また、本発明で用いられるポリアセタール樹脂は、所望の物性を損なわない範囲内であれば、ポリアセタール樹脂の一部または全部がターポリマー、ブロックポリマーであってもよい。また、他の有機官能基を導入した公知の変性ポリアセタール樹脂であってもよい。
【0054】
前記ポリアセタール系樹脂としては、ASTM D1238−89Eに従って190℃で測定したメルトインデックスが1〜50g/10分、より好ましくは5〜35g/10分のものであることが好ましい。
【0055】
また、前記ビニル系樹脂とは、芳香族ビニル化合物を単独で共重合して得られる重合体、または、芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体とを共重合して得られる重合体である。
【0056】
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン等が挙げられる。
【0057】
また、前記芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、アクリルアミン、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等のアミノ基含有不飽和化合物、3−ヒドロキシー1ープロペン、4−ヒドロキシー1ーブテン、シス−4−ヒドロキシー2ーブテン、トランス−4−ヒドロキシー2ーブテン、3−ヒドロキシー2ーメチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有不飽和酸、およびアクリルアミド、ビニルオキサゾリンなどが挙げられる。
【0058】
また、前記ビニル系樹脂としては、ゴム質重合体の存在下にビニル単量体や共重合可能な他の単量体をグラフト重合する事により得られるゴム含有グラフト重合体であってもよい。
【0059】
前記ゴム質重合体の例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等の共役ジエン系ゴム、およびこれらに水素添加した飽和あるいは部分飽和ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン系アイオノマー、シリコーン系ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン等が挙げられる。上記エチレン−プロピレン−非共役ジエンに含有されるジオレフィンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−エチル−1,11−トリデカジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン、リモネン等が挙げられる。
【0060】
これらのビニル系樹脂は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体を形成する熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物としては、成形収縮率が低いものが好ましい。成形収縮率が高い熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物を用いて成形した場合には、成形体が複雑形状であったり、厚みの異なる部分を有する形状であった場合には、成形収縮やヒケを生じ艶消し金属調表面に色ムラが生じたりするおそれがあるためである。
【0062】
従って、本発明に用いられる熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物としては、20×20×2mmの平板成形体金型で測定した成形収縮率が1.8%以下、さらには、1.6%以下、さらには、1.5%以下の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物であることが好ましい。
【0063】
なお、ビニル系樹脂や非晶性ポリエステル樹脂や非晶性ポリアミド樹脂等の非晶性樹脂の成形収縮率は通常1.8%以下程度であるが、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の結晶性ポリエステル系樹脂やポリアミド6やポリアミド66等の結晶性ポリアミド樹脂等の結晶性樹脂の成形収縮率は通常1.8%を超える場合が多い。
【0064】
このような成形収縮率が高い熱可塑性樹脂の成形収縮率を抑制する方法としては、無機フィラー等を配合する方法が一般的に知られている。
【0065】
しかしながら、熱可塑性樹脂組成物の充填材である、数10μmオーダーもの大きさを有する汎用的なガラス繊維や無機フィラーを配合することは好ましくない。
【0066】
前記のような無機フィラーやガラス繊維等は前記金型の表面に形成された凹凸表面を正確に転写することを阻害する。すなわち、凹凸のサイズに対して、無機フィラーやガラス繊維が大きすぎて、転写性が低下する。また、成形体表面に前記無機フィラーやガラス繊維が浮き出て、成形体表面が荒れてしまい、光沢を大きく低下させるおそれがある。
【0067】
従って、熱可塑性樹脂の成形収縮率を抑制する方法としては、成形収縮率が低い樹脂成分を配合する方法、あるいは、微細な無機フィラーを配合する方法を用いることが好ましい。
【0068】
前記成形収縮率の低い樹脂成分が配合された熱可塑性樹脂組成物は、成形収縮率の高い熱可塑性樹脂と成形収縮率が低い樹脂とを公知の溶融混練方法を用いて溶融混練することにより得られる。
【0069】
前記成形収縮率が低い樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の芳香族ビニル樹脂、ポリグルタルイミド樹脂等の変性アクリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂等の非晶性樹脂が好ましく用いられる。なお、これらの成形収縮率が低い樹脂としては、熱可塑性樹脂組成物中における分散性を高めるために、カルボキシル基、無水マレイン酸等の脂環式ジカルボン酸無水物基、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物基、エポキシ基等を有するものが好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では無水マレイン酸基を有するポリスチレン樹脂である、無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂が成形収縮率を低下させる効果が高い点から好ましい。
【0070】
一方、前記微細な無機フィラーが配合された熱可塑性樹脂組成物は、以下の方法により得られる。
【0071】
第1の方法としては、層状無機フィラーとポリエーテル化合物やシラン系化合物等の表面処理剤とを剪断力を与えながら撹拌混合して得られる表面処理された層状無機フィラーや、層状無機フィラーを水や水を含有する極性溶媒等の分散媒中に添加し、さらにポリエーテル化合物やシラン系化合物等の表面処理剤を添加して撹拌混合して得られる表面処理された層状無機フィラーを前記熱可塑性樹脂と溶融混合する方法が挙げられる。
【0072】
前記層状無機フィラーの具体例としては、例えば、膨潤性雲母、非膨潤性雲母、スメクタイト、タルク、カオリン等のケイ酸塩、リン酸ジルコニウム等のリン酸塩、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、タングステン酸ナトリウム等のタングステン酸塩、ウラン酸ナトリウム等のウラン酸塩、バナジン酸カリウム等のバナジン酸塩、モリブデン酸マグネシウム等のモリブデン酸塩、ニオブ酸カリウム等のニオブ酸塩、黒鉛層状化合物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化ケイ素や酸化チタン、アルミナ等の酸化物、炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩化合物、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の硫酸塩化合物の他、硫化亜鉛、リン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中では、膨潤性雲母、非膨潤性雲母、タルク、カオリン、スメクタイトなどの層状ケイ酸塩がへき開性が高い点から好ましく用いられる。
【0073】
前記表面処理剤としては、シラン系化合物、チタン系化合物、アルミナ系化合物、ポリエーテル系化合物、アミン系化合物などが用いられうる。入手の容易さ、取り扱い性、ポリエステル樹脂への熱劣化の影響の観点から、シラン系化合物、ポリエーテル系化合物が好ましい。
【0074】
前記攪拌の方法は特に限定されず、例えば、従来公知の湿式撹拌機を用いて行うことができる。前記湿式撹拌機としては、撹拌翼が高速回転して撹拌する高速撹拌機、高剪断速度がかかっているローターとステーター間の間隙で試料を湿式粉砕する湿式ミル類、硬質媒体を利用した機械的湿式粉砕機類、ジェットノズルなどで試料を高速度で衝突させる湿式衝突粉砕機類、超音波を用いる湿式超音波粉砕機などを挙げることができる。なお、このときに無機フィラーに与える剪断力を調整することにより、層状無機フィラーの粒子径を制御することができる。
【0075】
このようにして得られた層状無機フィラーと結晶性熱可塑性樹脂とを溶融混練することにより微細な無機フィラーが配合された熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0076】
なお、溶融混練は、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の従来から知られた溶融混練機が用いられうるが、剪断効率の高い点から二軸押出機を用いることが特に好ましい。
【0077】
一方、第2の方法としては、層状無機フィラーを水や水を含有する極性溶媒等の分散媒中に添加し、この分散媒中で熱可塑性樹脂の重合性プレポリマーを混合する。そして、前記混合液中でプレポリマーの重合を進行させることにより、層状無機フィラーをへき開させて樹脂中に微分散させる方法が挙げられる。
【0078】
前記熱可塑性樹脂組成物中における層状無機フィラーの含有割合は熱可塑性樹脂組成物全量に対して、1〜15質量%であることが好ましい。前記層状無機フィラーの含有割合が1質量%未満の場合には、成形収縮率を低下させる効果が不充分であり、15質量%を超える場合には金型に形成された凹凸表面を転写する際の転写性が低下する傾向がある。
【0079】
このようにして得られる微細な層状無機フィラーが配合された熱可塑性樹脂組成物中の層状無機フィラーの大きさとしては、数平均等価面積円直径が0.5μm以下であることが好ましい。このような数平均等価面積円直径の微細な層状無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂組成物から形成される成形体は、表面状態の平滑性に優れており、また、成形収縮率も低い点から好ましい。
【0080】
なお、前記等価面積円直径とは、電子顕微鏡で観察される観察像において、種々な形状で分散している層状無機フィラーの面積と等しい面積を有する円の直径であると定義する。そして、前記数平均等価面積円直径とは、前記観察像中で観察される無機フィラーを不作為に100個選択し、それぞれの等価面積円直径を算出し、数平均化したものである。これらの算出は、画像処理装置を備えた電子顕微鏡により算出することができる。
【0081】
前記金属薄膜形成基材用樹脂成形体は、前記金型に前記のような熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られる。
【0082】
前記射出成形の方法としては、通常の熱可塑性樹脂の射出成形法が用いられ、完充填しうる条件で、そり、引け、収縮等を抑制しうる条件を選択する通常の条件で成形すれば、とくにその条件は限定されない。
【0083】
このようにして得られる金属薄膜形成基材用樹脂成形体は、金型のキャビティに形成された表面の微小な凹凸形状の表面がほぼ正確に転写されたものである。
【0084】
前記微細な凹凸形状は中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmであり、好ましくは10〜40μmである。前記中心線平均粗さが50μmを超えると、樹脂成形体の表面に金属薄膜を形成させた場合に、凹部の深さが深すぎるために光の乱反射が強くなって光沢が失われて金属感が低下し、5μm未満の場合には光沢が強すぎて艶消し効果を充分に発揮し得ない。
【0085】
また、前記微細な凹凸形状は粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)は、30度以上であり、35度以上、さらには40度以上であることが好ましい。前記Δaが30度未満の場合には、艶消し効果を充分に発揮できない。また、Δaが90度を超える場合には、成形体の成形時の離型性が損なわれる点から好ましくない。
【0086】
また、前記微細な凹凸形状が梨地状に形成されている場合には、サンドブラスト艶消し金属調表面が得られ、また、ヘアライン状に形成されている場合には、ヘアライン艶消し金属調表面が得られる。
【0087】
なお、前記梨地状の凹凸形状としては、(1)ピークカウント(Pc)が50以上及び(2)凹凸1周期の平均間隔(Sm)が100μm以下の少なくとも一方の条件を満たすことが好ましい。
【0088】
前記梨地状の凹凸形状として、前記ピークカウント(Pc)が50以上、さらには60以上、特には70以上であることが好ましい。ピークカウントが50個未満の場合には光沢が低下して金属感が低下する傾向がある。
【0089】
また、前記凹凸1周期の平均間隔(Sm)は、100μm以下、さらには90μm以下、特には80μm以下であることが好ましい。100μmを超えると光沢が低下して金属感が低下する傾向がある。
【0090】
一方、前記ヘアライン形状の凹凸形状としては、前記ヘアラインの線幅が100μm以下、さらには、80μm以下であることがヘアライン艶消し金属調表面が得られる点から好ましい。
【0091】
そして、このように形成された金属薄膜形成基材用樹脂成形体の微細な凹凸形状の表面に厚み0.005〜0.3μm程度の金属薄膜を成膜することにより艶消し金属調表面を有する成形体が得られる。
【0092】
前記金属薄膜としては、以下のような金属単体、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物から形成される金属薄膜が挙げられる。具体的には、例えば、アルミニウム、クロム、チタン、ニッケル、スズ、銅、インジウム、亜鉛、ジルコニウム、金、銀、白金等の金属単体、ニッケル−クロムやチタン−ニッケル等の金属合金、窒化チタンや窒化アルミニウム、窒化珪素などの金属窒化物、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭化チタン、炭化珪素等の金属炭化物等が挙げられる。
【0093】
前記金属薄膜を形成する方法としては特に限定されず、従来から公知の金属薄膜形成方法が特に限定なく用いられる。
【0094】
前記金属薄膜の形成方法の具体例としては、例えば、物理的気相蒸着法(PVD法)としては真空蒸着法、分子線エピタキシー法(MBE法)、スパッタリング法、イオン化蒸着法、レーザーアブレーション法、イオンクラスタービーム法等が挙げられ、化学的気相蒸着法(CVD法)としては熱CVD法、プラズマCVD法、有機金属CVD法(MOCVD法)、化学輸送法(CVT法)、基板反応法等が挙げられ、液相成長法としては液相エピタキシー法、トラベリングソルベント法、ソース電流制御法等が挙げられる。また、その他の方法として、ゾル−ゲル法、LB法、無電解めっき法等も用いることができる。これらの中では、膜厚及び膜質の制御性、汎用性、生産性等に優れている点から、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、プラズマCVD法、ゾル−ゲル法が好ましい。
【0095】
真空蒸着法は、電子ビームや抵抗加熱器で膜を形成するターゲットを加熱蒸発させて、基板に堆積成膜させる方法である。蒸着の条件としては、例えば、蒸着時の初期真空度を1×10−2Pa以下、好ましくは1×10−3Pa以下にまで減圧した後、5×10〜1×10−2μm/秒で蒸着することが好ましい。
【0096】
スパッタリング法は、非熱平衡グロー放電プラズマ雰囲気やイオン源からのイオンビームによって供給されるアルゴンイオン等の高運動エネルギー粒子を膜に用いるターゲットに衝突させて、ターゲットの放出粒子を得、基板に堆積成膜する方法である。
【0097】
プラズマCVD法は、水素化アモルファスSi膜の形成方法として広く用いられている方法である。例えば、シラン(SiH)ガスを高周波グロー放電によって分解して基板に堆積成膜する方法である。その条件の具体例としては、例えば、放電時の全圧が0.1〜1torr(13〜130Pa)、アルゴンまたは水素で希釈されている場合のガス濃度10%以上、ガス流量50〜200ml/min、投入パワー数十〜数百mW/cm等の条件が選ばれる。
【0098】
なお、前記金属薄膜は、アンダーコートのような下塗り処理せずに、成形体表面に直接製膜することが必要である。アンダーコートを形成することにより、形成された成形体表面の凹凸形状が埋まってしまい、所望の外観を表現することができなくなるためである。
【0099】
前記金属薄膜は複数種重ねて形成してもよい。また、前記金属薄膜を形成させる際には、予めプラズマ処理等により成形体表面を活性化することにより金属薄膜の密着性を高めることができる。
【0100】
前記金属薄膜の膜厚としては、0.005〜0.3μmであることが好ましい。前記膜厚が薄すぎる場合には膜厚が不均一になり、また厚すぎる場合には金属薄膜の密着性が乏しくなり、外観を損ねる傾向がある。
【0101】
このようにして、前記微細な凹凸形状が形成された表面を有する樹脂成形体の表面に上記のような金属薄膜を形成することにより、艶消し金属調表面を有する樹脂成形体が得られる。
【0102】
本発明の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体は艶消し金属調表面を有するものであり、金属表面をサンドブラストして削りだしたときに得られる表面のような艶消し金属調表面、金属表面をヘアライン加工して得られるような艶消し金属調表面のような金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面を容易に得ることができる。
【0103】
前記艶消し金属調の表面は、金属感を維持する程度に光沢が抑制された金属調表面であり、具体的には、拡散反射率(Rd)が10〜50%、好ましくは15〜45%の光沢を備えた金属色を有する表面である。
【0104】
本発明の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体は、自動車内装部材、電気製品のハウジング部材、各種化粧板等、種々の外観部材に好適に使用できる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0106】
(製造例1)表面処理フィラーの製造
湿式混合機を用い、純水100部(質量部、以下同様)に対し、膨潤性雲母(コープケミカル(株)製ソマシフME100) 10部を混合した。ついで、主鎖にビスフェノールA単位を含有するポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製のビスオール) 1.6部を添加して更に15〜30分間混合を続けることによって表面処理した。その後、乾燥して粉体化した。
【0107】
(製造例2)成形収縮率1.42%の熱可塑性樹脂組成物の製造
ポリブチレンテレフタレート樹脂(KOLON社製のKP210)93部、製造例1で得られた表面処理無機フィラー7部、カーボンブラック1部をドライブレンドし、2軸押出機により溶融混練し、ペレット化して成形収縮率1.42%の熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、このときの表面処理無機フィラーの数平均等価面積円直径を測定すると0.138μmであった。
【0108】
(製造例3)成形収縮率0.79%の熱可塑性樹脂組成物の製造
ポリブチレンテレフタレート樹脂(KOLON社製のKP210)65部、無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂(ノバ・ケミカル・ジャパン社製のダイラーク)35部、カーボンブラック1部をドライブレンドし、2軸押出機により溶融混練し、ペレット化して成形収縮率0.79%の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0109】
(製造例4)成形収縮率1.96%の熱可塑性樹脂組成物の製造
ポリブチレンテレフタレート樹脂(KOLON社製のKP210)100部、カーボンブラック1部をドライブレンドし、2軸押出機により溶融混練し、ペレット化して成形収縮率1.96%の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0110】
(実施例1〜18及び比較例1〜4)
はじめに、本実施例で用いた金型について以下に説明する。
【0111】
本実施例で用いた金型は120×120×2(mm)厚の角型平板試験片の金型であって、NAK−80(大同特殊鋼(株)製)の鋼材からなるものである。そして、角型平板試験片のキャビティ表面に下記表1に示したような微細な凹凸形状がシボ加工により形成されたものである。
【0112】
なお、梨地形状は、(株)棚澤晩翠堂のシボ番手TB−218、ヘアライン形状は、(株)棚澤晩翠堂のシボ番手TB−331により加工したシボ表面をガラスビーズで表面仕上げして得られたものである。
【0113】
得られた表面状態をレーザー顕微鏡((株)キーエンス製VK−9510)で測定した結果を表1に示す。なお、表1中の金型Cは金型Aのコア側に0.5mm厚のリブを設けたものであり、金型Dは金型Bのコア側に0.5mm厚のリブを設けたものである。
【0114】
【表1】


【0115】
表2に記載の熱可塑性樹脂組成物及び金型を用いて、表面に微細な凹凸形状が形成された表面を有する平板状の金属薄膜形成基材用樹脂成形体を射出成形した。このときの成形条件を以下に示す。
射出成形機:日精樹脂工業(株)製のFN1000
金型温度:設定温度70℃
樹脂温度:設定温度230〜260℃
そして、得られた前記樹脂成形体の表面状態を前記レーザー顕微鏡で測定した結果、表2に示すような表面状態を示していた。
【0116】
【表2】


【0117】
そして前記各成形体表面に表3に示した各金属薄膜を形成した。このときの製膜条件を以下に示す。
スパッタリング装置:((株)島津製作所のHSM−421)、バックグラウンド圧:約1×10−3〜9×10−3torr、アルゴン流量:約15ml/分、RF電源、印加電力:500W、スパッタ時間:600秒
そして、得られた金属薄膜表面の表面状態を前記レーザー顕微鏡で測定した。
【0118】
また、金属薄膜表面の拡散反射率(Rd)をミラー反射率計(東京電色(株)製、TR−1100AD)を用いて測定し、以下の基準で判定した。
I:Rdが0〜10%
II:Rdが10〜30%
III:Rdが30〜50%
IV:Rdが50%より大きい
さらに、薄膜表面の意匠の状態及び色調を目視により観察した。
【0119】
結果を表3に示す。
【0120】
【表3】


【0121】
中心線平均粗さ(Ra)が5〜50μmで、且つ、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度以上である凹凸形状を有する金属薄膜表面を有する実施例1〜18の樹脂成形体は、何れも、拡散反射率が10〜50%の範囲であり、艶消し金属調の表面を示した。また、それぞれ、金属表面をサンドブラストして削りだしたときに得られるような艶消し金属調表面や、金属表面をヘアライン加工して得られるような艶消し金属調表面のような、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面を有する樹脂成形体であった。
【0122】
一方、粗さ曲線における斜面の算術平均傾斜(Δa)が30度未満と低く、また、中心線平均粗さ(Ra)が55μm(比較例4)、69μm(比較例1)及び81μm(比較例2)である微細な凹凸形状を有する金属薄膜表面を有する樹脂成形体は光沢性に乏しく、金属調の表面を示さなかった。
【0123】
また、中心線平均粗さ(Ra)が4μmの比較例3の樹脂成形体は光沢が強すぎて、艶が充分に消されていなかった。
【0124】
以上のように、本発明の樹脂成形体によれば、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調の表面を有する樹脂成形体を容易に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明で得られる艶消し金属調表面を有する樹脂成形体は、樹脂成形体でありながら、金属表面をサンドブラストして得られる艶消し金属表面や金属表面をヘアライン加工して得られる艶消し金属表面のような、金属を削りだして得られるような外観の艶消し金属調表面を備え、自動車の内装部品、家電製品やOA機器等の電気・電子部品のハウジング等に好適に使用される。従って、鋭角に折れ曲がった形状や深く絞り込んだ形状など、金属では得られ難い形状の部品に樹脂を用いて金属調の外観を付与することができる。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司

【識別番号】100096150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝夫

【識別番号】100099955
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 次郎

【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝


【公開番号】 特開2008−981(P2008−981A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172575(P2006−172575)