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【発明の名称】 光学フィルムの製造方法および光学フィルム
【発明者】 【氏名】熊沢 英明

【氏名】小宮 全

【要約】 【課題】

【構成】本発明の光学フィルムの製造方法は、ノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルムを、その樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜30℃高い温度で、幅方向もしくは長さ方向、あるいはその両方向にそれぞれ1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばして、面内位相差が0〜50nmのフィルムを得ることを特徴としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルムを、その樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、幅方向に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばして、面内位相差が0〜50nmのフィルムを得ることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
ノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルムを、その樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、長さ方向に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばして、面内位相差が0〜50nmのフィルムを得ることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
ノルボルネン系樹脂の未延伸フィルムに対して、下記工程(I)および工程(II)を任意の順にもしくは同時に行うことにより、面内位相差が0〜50nmのフィルムを得ることを特徴とする光学フィルムの製造方法;
(I)フィルムの樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、幅方向に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばす工程、
(II)フィルムの樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、長さ方向に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばす工程。
【請求項4】
引き伸ばす時のフィルムにかかる引張応力が、降伏応力よりも小さい範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
未延伸フィルムの厚さが、2〜500μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
幅方向に対して測定したフィルム面内における位相差の分布が、測定長50mm中における最大値と最小値の差が3nm以下であり、かつ、位相差の面内方向(幅方向)の距離による変化率(絶対値)が1ppm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
未延伸フィルムが、ノルボルネン系樹脂を、キャストドラム、ベルトまたはベースフィルム上に溶液流延し、溶剤を15〜50%含有する状態で剥離し、乾燥して得たフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
未延伸フィルムが、ノルボルネン系樹脂を溶融押出成形して得たフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
未延伸フィルムが、製膜したフィルムを巻き取ったフィルムロールから引き出したフィルムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする光学フィルム。
【請求項11】
前記請求項10に記載の光学フィルムを偏光子の片側もしくは両側に貼合した偏光フィルム。
【請求項12】
前記請求項11に記載の偏光フィルムを使用した液晶ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法および光学フィルムに関する。詳しくは、本発明は、ノルボルネン系樹脂からなり、面内位相差が少なく、その位相差の変動も少ない光学フィルムの製造方法および光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系樹脂製フィルムは、その優れた光学特性とその安定性から、液晶ディスプレイ用の位相差フィルム、集光シート、拡散シート、光反射シートなどの各種光学フィルムあるいは光学シートとして用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイ等に用いられるノルボルネン系樹脂製フィルムは、その光学特性が正確に制御されていることが必要である。たとえば、位相差フィルムとして用いるためには位相差が小さいフィルムを定められた条件で延伸することにより、所望する位相差を付与する。所望する位相差を正確に付与するためには、延伸に用いるフィルムの位相差ができるだけ小さく、しかもその位相差のフィルム面内における変動ができるだけ小さいことが望ましい。
【0004】
近年の液晶ディスプレイの需要拡大に伴って、このような面内の位相差およびその変動が小さい、光学的に均一なノルボルネン系樹脂製フィルムに対する需要も高まっている。それと同時により経済的な方法でノルボルネン系樹脂製フィルムを製造することが望まれている。
【0005】
このような問題を解決するものとして、本発明者は、ノルボルネン系樹脂フィルムを特定条件で引き伸ばすことにより、フィルムの面積を広げてフィルムの製造量を増やすことができるだけでなく、光学特性がより均一なフィルムを提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ノルボルネン系樹脂からなり、面内の位相差が小さく、位相差の変動が小さく、均一な光学特性を有する光学フィルムを、効率的かつ経済的に製造する方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学フィルムの製造方法は、ノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルムを、その樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、幅方向あるいは長さ方向、もしくはその両方向に対して逐次あるいは同時に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばして、面内位相差が0〜50nmのフィルムを得ることを特徴としている。
【0008】
このような本発明の光学フィルムの製造方法では、引き伸ばす時のフィルムにかかる引張応力が、降伏応力よりも小さい範囲であることが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法では、未延伸フィルムの厚さが、2〜500μmであることが好ましい。
【0009】
本発明の光学フィルムの製造方法では、幅方向に対して測定したフィルム面内における位相差の分布が、測定長50mm中における最大値と最小値の差が3nm以下であり、かつ、位相差の面内方向(幅方向)の距離による変化率(絶対値)が1ppm以下であるこ
とが好ましい。
【0010】
本発明の光学フィルムの製造方法では、未延伸フィルムが、ノルボルネン系樹脂を、キャストドラム、ベルトまたはベースフィルム上に溶液流延し、溶剤を15〜50%含有する状態で剥離し、乾燥して得たフィルムであることが好ましく、また、未延伸フィルムが、ノルボルネン系樹脂を溶融押出成形して得たフィルムであることも好ましい。さらに本発明の光学フィルムの製造方法では、未延伸フィルムが、製膜したフィルムを巻き取ったフィルムロールから引き出したフィルムであることも好ましい。
【0011】
本発明の光学フィルムは、前記本発明の製造方法により得られることを特徴としている。また、本発明の偏光フィルムは、前記本発明の光学フィルムを偏光子の片側もしくは両側に貼合したことを特徴としている。さらに本発明の液晶ディスプレイは、前記本発明の偏光フィルムを使用したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノルボルネン系樹脂による透明性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの優れた性状を有するとともに、面内の位相差が小さくその位相差の変動が小さい、光学的に均一な光学フィルムを、効率的かつ経済的に製造する方法を提供することができる。本発明に係る光学フィルムは、面内の位相差が小さく、その位相差の変動が小さく、光学的に均一であるため、各種光学フィルム用途に好適に使用することができ、さらに延伸を行って位相差を発現させたフィルムを製造する用途等にも好ましく用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明においては、ノルボルネン系樹脂製の長尺の未延伸フィルムを、その樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、幅方向あるいは長さ方向、もしくはその両方向に対して逐次あるいは同時に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばして、フィルム面内の位相差が小さい光学フィルムを得る。
<ノルボルネン系樹脂>
本発明に係るノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン骨格を有する化合物を含む単量体を開環(共)重合し、必要に応じて水素添加して得られる樹脂、ノルボルネン骨格を有する化合物を含む単量体を付加(共)重合して得られる樹脂をいずれも用いることができる。本発明では、このうち、ノルボルネン骨格を有する化合物を含む単量体を開環(共)重合し、必要に応じて水素添加して得られる樹脂が好ましく用いられる。
・単量体
本発明に係るノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン骨格を有する化合物を含む単量体から得られる。
【0014】
ノルボルネン骨格を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、たとえば、下記式(1m)で表される化合物が挙げられる。
【0015】
【化1】


【0016】
式(1m)中、mおよびA1〜A4は、mは0、1または2であり、A1〜A4はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜30、好ましくは1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。好ましくは、A1〜A4の少なくとも1つが極性基であり、かつその他のA1〜A4の少なくとも1つが炭素原子数1〜10の炭化水素基である。
【0017】
式(1m)において、極性基としては、たとえば、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;カルボニルオキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0018】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【0019】
また、置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば炭素原子数1〜
10の2価の炭化水素基(例えば、−(CH2m−(式中、mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基(例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルホン基(−SO2−)、エー
テル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−N
HCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R2)−(式中、Rはメチル、エ
チルなどのアルキル基))などが挙げられ、これらの複数を含む連結基であってもよい。
【0020】
式(1m)で表される環状オレフィン系化合物としては、具体的には、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデ
カ−3−エン、
ヘキサシクロ [6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプト−4−エン5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−6−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−6−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−イソプロポキシ
カルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチ
ル−8−n−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ
−3−エン、8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるも
のではない。
【0021】
本発明では、前記式(1m)で表される化合物における極性基が、下記式(a)で表される基であることが好ましい。すなわち、前記式(1m)で表される化合物は、A1〜A4の少なくとも一つが、下記式(a)で表される基であることが好ましい。
【0022】
−(CH2pCOOA’ …(a)
(式(a)中、pは0または1〜5の整数であり、A’は炭素数1〜15の炭化水素基である。)
上記式(a)において、nの値が小さいものほど、また、A’が炭素数の小さいほど、得られる共重合体のガラス転移温度が高くなり耐熱性が向上するので好ましい。すなわち、nは通常0または1〜5の整数であるが、好ましくは0または1であり、また、A’は通常炭素数1〜15の炭化水素基であるが、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であるのが望ましい。このようなカルボン酸エステル基を有するノルボルネン系化合物として、特に8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセンが、その製造方法が容易な点で好ましい。なお、前記A’で表される炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基があげられ、好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基であり、特に好ましくは、メチル基である。pは0以上の整数であり、特に好ましくは0である。
【0023】
さらに、上記式(1m)において、上記式(a)で表される極性基が結合した炭素原子にさらにアルキル基が結合している場合には、得られる共重合体の耐熱性と吸水(湿)性のバランスを図る上で好ましい。当該アルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
【0024】
また、ノルボルネン骨格を有する化合物としては、下記式(2m)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化2】


【0026】
式(2m)中、A5〜A10は各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ
若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。
【0027】
上記式(2m)において、ハロゲン原子、炭化水素基および極性基は、式(1m)に関して述べたものと同様である。
このような式(2m)で表される環状オレフィン系化合物としては、具体的には、たとえば、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−イソプロピル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,7−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−8−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エ
ン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,7−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0028】
また、ノルボルネン骨格を有する化合物としては、上記式(2m)で表される化合物に代えて、下記式(2m’)で表される化合物を用い、(共)重合した後に必要に応じて五員環を水素添加してもよい。
【0029】
【化3】


【0030】
このような環状オレフィン系単量体(2m’)としては、具体的には、たとえば、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(DCP)、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
9−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン
7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−メチル−7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7
−ジエン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン
などが挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。これらのうちでは、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエンが特に好ましく用いられる。
【0031】
極性基としては、たとえば水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、たとえばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられ;カルボニルオキシ基としては、たとえばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、たとえばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等が挙げられ;トリオルガノシロキシ基としてはたとえばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基等が挙げられ、アルコキシシリル基としてはたとえばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0032】
本発明に係るノルボルネン系樹脂の製造では、上述したようなノルボルネン系化合物の1種以上を含む単量体を重合あるいは共重合する。
本発明においては、上記で例示したノルボルネン系化合物とともに、共重合可能なその他の化合物(共重合性化合物)を単量体の一部として用いることができる。共重合性化合物としては、具体的には、たとえば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン等の環状オレフィン;1,4-シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエン等の非共役環状ポリエン;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン、エチレン−非共役ジエン重合体などの二重結合を有する低重合物;などが挙げられる。単量体中において、ノルボルネン系化合物/共重合性化合物は、好ましくは重量比で100/0〜50/50、より好ましくは100/0〜60/40の範囲であるのが望ましい。
・単量体の重合
本発明に係るノルボルネン系樹脂は、上述した単量体を開環(共)重合するか、単量体を付加(共)重合し、必要に応じて水素添加して得ることができる。
開環(共)重合体
ノルボルネン骨格を有する化合物を含む単量体の開環(共)重合体ならびにその水素添加物としては、特に限定されるものではないが、たとえば、下記式(1)で表される構造単位(1)を有する環状オレフィン系重合体が挙げられる。
【0033】
【化4】


【0034】
式(1)中、mは0、1または2であり、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、A1〜A4はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。好ましくは、A1
4の少なくとも1つが極性基であり、かつその他のA1〜A4の少なくとも1つが炭素原
子数1〜10の炭化水素基である。
【0035】
前記式(1)で表される構造単位は、開環(共)重合および必要に応じて水素添加することにより、前記式(1m)で表されるノルボルネン系化合物から誘導される。
またたとえば、ノルボルネン骨格を有する化合物を含む単量体の開環(共)重合体ならびにその水素添加物としては、下記式(2)で表される構造単位を有する環状オレフィン系重合体が挙げられる。
【0036】
【化5】


【0037】
(式(2)中、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、A5〜A10は各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ
若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。)、
上記式(2)で表される構造単位は、上記式(2m)で表されるノルボルネン系化合物を開環(共)重合し、必要に応じて水素添加するか、上記式(2m’)で表されるノルボルネン系化合物を開環(共)重合して水素添加することにより得ることができる。
開環(共)重合触媒
単量体の開環(共)重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行うことができる。
【0038】
本発明に用いられる開環重合用の触媒としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN,J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。
【0039】
このような触媒としては、たとえば、(a)W、Mo、ReおよびV、Tiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cd、Hg、B、Al、Si、Sn、Pbなどの化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなるメタセシス重合触媒が挙げられる。この触媒は、触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。また、その他の触媒として(d)助触媒を用いない周期表第4族〜8族遷移金属-カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体などからな
るメタセシス触媒が挙げられる。
【0040】
上記(a)成分として適当なW、Mo、ReおよびV、Tiの化合物の代表例としては、
WCl6、MoCl5、ReOCl3、VOCl3、TiCl4など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0041】
上記(b)成分としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、
(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなど特
開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0042】
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−240517号公報に示される化合物を使用することができる。
【0043】
上記触媒(d)の代表例としては、W(=N-2,6-C6H3 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Mo(=N-2,6-C6H3 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh32Cl2、Ru(=CHPh)(PC6H112Cl2などが挙げられる。
【0044】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と、全単量体(ノルボルネン系単量体(Im)、(IIm)および他の共重合可能な単量体。以下、同じ)とのモル比で「(a)成分:全単量体」が、通常1:500〜1:500000となる範囲、好ましくは1:1000〜1:100000となる範囲であるのが望ましい。(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲であるのが望ましい。また、このメタセシス触媒に上記(c)添加剤を添加する場合、(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲であるのが望ましい。また、触媒(d)の使用量は、(d)成分と全単量体とのモル比で「(d)成分:全単量体」が、通常1:50〜1:50000となる範囲、好ましくは1:100〜1:10000となる範囲であるのが望ましい。
分子量調節剤
開環(共)重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。ここに、好適な分子量調節剤としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。分子量調節剤の使用量としては、開環(共)重合反応に供される全単量体1モルに対して0.001〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルであるのが望ましい。
開環(共)重合反応用溶媒
開環(共)重合反応において用いられる溶媒、すなわち、ノルボルネン系単量体、メタセシス触媒および分子量調節剤を溶解する溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。本発明では、これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0045】
溶媒の使用量としては、「溶媒:全単量体(重量比)」が、通常1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量であるのが望ましい。
水素添加
本発明で用いるノルボルネン系樹脂は、上記の開環(共)重合のみにより製造したものであってもよいが、開環(共)重合で得た開環(共)重合体をさらに水素添加して製造されたものであることが好ましい。開環(共)重合のみでは、得られるノルボルネン系開環(共)重合体は、上述の式(1)、(2)または(I)で表される構造単位中のXが、いずれも、式:−CH=CH−で表されるオレフィン性不飽和基の状態である。このような開環
(共)重合体は、そのまま使用することもできるが、耐熱安定性の観点から、上記のオレフィン性不飽和基が水素添加されて前記Xが-CH2-CH2-で表される基に転換された水素添
加物であることが好ましい。ただし、ここでいう水素添加物とは、上記のオレフィン性不飽和基が水素添加されたものであり、ノルボルネン系単量体に基づく側鎖の芳香環は実質的に水素添加されていないものである。
【0046】
なお、水素添加する割合としては、上記式(1)または(2)で表される構造単位におけるXの合計の90モル%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上で
あるのが望ましい。水素添加する割合が高いほど、安定な(共)重合体となり、熱による着色や劣化が抑制されるため好ましい。
【0047】
本発明で用いるノルボルネン系樹脂を製造する場合においては、水素添加反応は、単量体であるノルボルネン系化合物に基づく側鎖の芳香環がある場合、これが実質的に水素添加されない条件で行われるのが望ましい。このため通常は、開環(共)重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜30MPa、好ましくは2〜20MPa、更に好ましくは3〜18MPaで水素を作用させることによって行うのが望ましい。
【0048】
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、公知の不均一系触媒および均一系触媒をいずれも用いることができる。不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。また、この水素添加反応触媒は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0049】
これらの水素添加触媒は、単量体に基づく側鎖の芳香環が実質的に水素添加されないようにするために、その添加量を調整する必要があるが、通常は、「開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)」が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用するのが望ましい。
付加(共)重合体
本発明に係るノルボルネン系樹脂は、上述したノルボルネン系化合物を含有する単量体の付加(共)重合体であってもよい。付加(共)重合体を得るための方法としては、公知の方法をいずれも採用することができ、付加重合触媒を用いて単量体を付加(共)重合することにより得ることができる。
【0050】
付加(共)重合体を得るための付加重合触媒としては、通常、チタン化合物、ジルコニウム化合物、パラジウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれた少なくとも一種と、助触媒としての有機アルミニウム化合物とが用いられる。
【0051】
ここで、チタン化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタンなどを、またジルコニウム化合物としてはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを挙げることができる。
【0052】
さらに、バナジウム化合物としては、一般式
VO(OR)ab、またはV(OR)cd
(ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦(a+b)≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦(c+d)≦4である。)
で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与付加物が用いられる。
【0053】
上記電子供与体としては、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナートなどの含窒素
電子供与体などが挙げられる。
【0054】
さらに、助触媒としての有機アルミニウム化合物としては、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合あるいはアルミニウム−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも一種が用いられる。
【0055】
上記において、例えばバナジウム化合物を用いる場合におけるバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物の比率は、バナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)が2以上であり、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20の範囲である。
【0056】
付加重合に使用される重合反応用溶媒は、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。また、得られる飽和重合体の分子量の調節は、通常、水素を用いて行われる。
ノルボルネン系樹脂
本発明においては、ノルボルネン系樹脂のクロロホルム溶液をウッベローデ型粘度計で測定して得られる固有粘度[η]を、通常0.2〜5.0、好ましくは0.3〜4.0、さらに好ましくは0.35〜3.0とするのが望ましい。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン換算)による分子量の測定による、数平均分子量(Mn)を、通常1000〜50万、好ましくは2000〜30万、さらに好ましくは5000〜30万とし、重量平均分子量(Mw)を、通常5000〜200万、好ましくは1万〜100万、さらに好ましくは1万〜50万とするのが望ましい。ここで、固有粘度[η]が0.2未満、Mnが1000未満あるいはMwが5000未満であると、得られた開環(共)重合体を用いた成形物の強度が著しく低下する場合がある。一方、固有粘度[η]が5.0以上、Mnが50万以上あるいはMwが200万以上であると、ノルボルネン系樹脂の溶融粘度あるいは溶液粘度が高くなりすぎて、フィルムの成形が困難になる場合がある。
【0057】
本発明に係るノルボルネン系樹脂は、所望により、各種添加剤を添加して使用することができる。添加剤としては、たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチルテトラキス[.3−(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドキシフェニル)プロピオレート、4,4−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、オク
タデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオレートなどのフェノール系、ヒドロキノン系酸化防止剤、または例えばトリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系酸化防止剤を挙げるこ
とができ、これらの酸化防止剤の1種または2種以上を添加することにより、ノルボルネン系樹脂の酸化安定性を向上することができる。また、たとえば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2,−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール
−2−イル)フェノール]]などの紫外線吸収剤を挙げることもでき、これらを添加する
ことによって、本発明で用いるノルボルネン系樹脂の耐光性を向上することができる。また、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
<ノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルム>
本発明に係るノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルムは、上述したノルボルネン系樹脂をフィルム状に製膜したものであり、好ましくは連続的に製膜した長尺のフィルムである。
【0058】
ノルボルネン系樹脂から未延伸のフィルムを製膜する方法としては、特に限定されるも
のではないが、溶融押出法などの溶融成形法、あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)が好ましく挙げられる。本発明に係る未延伸フィルムは、長尺のフィルムであることが好ましく、連続的に製造された長尺のフィルムであることがより好ましい。製膜した未延伸フィルムは、ロール状に巻き取ったフィルムロールの形態であることが好ましい。
【0059】
溶融押出法
溶融押出法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶融押出機として公知の1軸式押出機あるいは2軸式押出機を用い、成形樹脂材料であるノルボルネン系樹脂を溶融させ、この溶融状態のノルボルネン系樹脂(以下、「溶融樹脂」ともいう。)を、ギアポンプで定量的に計量し、スリット状の出口を持ったダイからフィルム状に押し出す手法を用いることができる。
【0060】
また、押出機には、ギアポンプによって定量された成形樹脂材料中の異物、溶融押出処理中に生成される焼けやゲルなどの夾雑物を除去するためのポリマーフィルターが備えられていることが好ましい。
【0061】
ここに、押出機としては、L/Dが28〜40であるものが好ましく、また、そのスクリュー径は、押出量により異なるが、通常、30〜125mmである。スクリュー径が30mm未満である場合には、計量安定性やフィルム生産性が低くなるおそれがあり、一方、スクリュー径が125mmを超える場合には、計量された溶融樹脂が滞留し、これに起因して熱劣化が生じるおそれがある。
【0062】
ギアポンプとしては、溶融樹脂を潤滑に排出することができることから、外潤式のものが好適に用いられる。ダイとしては、通常、Tダイが用いられる。Tダイとしては、コートハンガーダイ、フィッシュテールダイなどが挙げられ、これらの中では、コートハンガーダイが好ましい。また、マニーホールドとしては、特に制限はないが、成形樹脂材料の熱劣化を抑制するという観点から、滞留が生じにくい構造を有するものが好適に用いられる。
【0063】
ポリマーフィルターとしては、溶融樹脂が滞留することを抑制することができることから、リーフディスクタイプのものが好適に用いられる。また、ポリマーフィルターの濾過精度は、通常、20μm以下であり、好ましくは10μm以下である。濾過精度が20μmを超える場合には、夾雑物がポリマーフィルターをすり抜け、得られる特定積層体に黒色欠点などの外観不良が生じるおそれがある。
【0064】
溶液流延法
溶液流延法(溶剤キャスト法)としては、たとえば、ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させて適度の濃度の液にし、適当なキャリヤー上に注ぐかまたは塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
【0065】
ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際には、該樹脂の濃度を、通常は0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%にする。該樹脂の濃度を上記未満にすると、フィルムの厚みを確保することが困難になる。また、溶媒蒸発に伴う発泡等によりフィルムの表面平滑性が得にくくなるなどの問題が生じる。一方、上記を超えた濃度にすると溶液粘度が高くなりすぎて得られる光学用フィルムの厚みや表面が均一になりにくくなるために好ましくない。
【0066】
また、室温での上記溶液の粘度は、通常は1〜1,000,000(mPa・s)、好
ましくは10〜100,000(mPa・s)、さらに好ましくは100〜100,00
0(mPa・s)、特に好ましくは1,000〜10,000(mPa・s)である。
【0067】
ここで使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノールなどのセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。
【0068】
また、上記以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が通常10〜30(MPa1/2
、好ましくは10〜25(MPa1/2)、さらに好ましくは15〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲の溶媒を使用すれば、表面均一性と光学特
性の良好なフィルムを得ることができる。
【0069】
上記溶媒は単独であるいは2種以上併用して使用することができる。溶媒を2種以上併用する場合には、混合物としてのSP値は、その重量比から求めることができ、例えば二種の混合物の場合は、各溶媒の重量分率をW1,W2、また、SP値をSP1,SP2とする混合溶媒のSP値は下記式:
SP値=W1・SP1+W2・SP2
により計算した値として求めることができる。
【0070】
ノルボルネン系樹脂溶液の調整において,ノルボルネン系樹脂を溶媒で溶解する場合の温度は、室温でも高温でもよい。十分に攪拌することにより均一な溶液が得られる。なお、必要に応じて着色する場合には、溶液に染料、顔料の着色剤を適宜添加することもできる。
【0071】
また、フィルムの表面平滑性を向上させるためにレベリング剤を添加してもよい。一般的なレベリング剤であればいずれも使用できるが、たとえば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが使用できる。
【0072】
本発明に用いるフィルムを溶剤キャスト法により製造する方法としては、上記溶液をダイスやコーターを使用して金属ドラム(キャストドラム)、スチールベルト、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどのベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム(ベースフィルム)などの基材(キャリヤー)の上に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離する方法が一般に挙げられる。また、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、ディッピングなどの手段を用いて,樹脂溶液を基材に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離することにより製造することもできる。なお、塗布の繰り返しにより厚みや表面平滑性等を制御してもよい。
【0073】
また、基材としてポリエステルフィルムなどのベースフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーテイングやラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
【0074】
本発明では、キャリヤーとしては、キャストドラム、ベルトまたはベースフィルムが好ましく用いられる。溶剤キャスト法により製膜したフィルムは、溶剤を15〜50重量%、好ましくは15〜30重量%含有する状態でキャリヤーから剥離するのが好ましい。
【0075】
上記溶剤キャスト法の乾燥(溶剤除去)工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法等で実施できるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴い気泡が発生すると、フィルムの特性を著しく低下させるので、これを避けるために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程での温度あるいは風量を制御することが好ましい。
【0076】
また、フィルム中の残留溶媒量は、通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、残留溶媒量が10重量%より多いと、実際に該フィルムを使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりTgが低くなり、耐熱性も低下することから好ましくない。
【0077】
なお、後述する延伸工程を好適に行うためには、上記残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節する必要がある場合がある。具体的には、延伸配向時の位相差を安定して均一に発現させるために、残留溶媒量を通常は10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。溶媒を微量残留させることで、延伸加工が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
【0078】
未延伸フィルム
本発明に係る未延伸フィルムは、上述のように、溶融押出法や溶液流延法などの方法でノルボルネン系樹脂を製膜して得ることができる。得られた未延伸フィルムは、そのまま後述する延伸(引き伸ばし)に供してもよく、また、一旦ロール状に巻き取り、フィルムロールとしてもよい。
【0079】
本発明で用いる未延伸フィルムの厚さは、通常は1〜500μm、好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは2〜200μmである。2μm未満の厚みの場合には、実質的にハンドリングが困難となる。一方、500μm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き取った際にいわゆる「巻きぐせ」がついてしまい後加工等における取扱いが困難になる場合がある。
【0080】
本発明で用いるノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルムの厚み分布は、通常は平均値に対して±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±1%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下であることが望ましい。このように厚み制御を実施することにより、本発明の特定条件で延伸した場合に、より面内位相差の分布が小さく、光学特性が均一な光学フィルムを得ることができる。
<延伸(引き伸ばし)>
本発明では、上述したノルボルネン系樹脂製の未延伸フィルムを、その樹脂のガラス転移点温度より15〜40℃、好ましくは20〜40℃高い温度に保ち、幅方向あるいは長さ方向、もしくはその両方向に対して逐次あるいは同時に1.1〜5.0倍、好ましくは1.3〜3倍の範囲で引き伸ばすことで、面内位相差が低く光学的に均一なフィルムを製造する。ここで、幅方向とは長尺フィルムの幅の方向を意味し、ロール状に巻き取ったフィルムではフィルムロールの幅方向を意味する。両方向に対して延伸を行う場合には、下記工程(I)および工程(II)を任意の順にもしくは同時に行うことができる。
(I)フィルムの樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、幅方向に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばす工程、
(II)フィルムの樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15〜40℃高い温度で、長さ方向に1.1〜5.0倍の範囲で引き伸ばす工程。
【0081】
フィルムを引き伸ばす時にフィルムに発生する引張応力が、その温度における降伏応力よりも小さな範囲おいて、好ましくは降伏応力時引張伸びの90%以内、さらに好ましくは引張伸びの80%以内の範囲で引き伸ばすことで、延伸されたフィルムの厚みバラツキと位相差バラツキを抑えることができ、光学的なムラを防ぐことができる。
【0082】
本発明でフィルムを引き伸ばす場合に用いる装置としては、テンター型横延伸機を使用することが好ましいが、同時二軸延伸機を用いることもできる。
フィルムを引き伸ばすときの速度は、通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0083】
フィルムを引き伸ばすときの温度は、本発明に使用されるノルボルネン系樹脂のガラス転移温度を基準として、15〜40℃高く設定することが好ましい。より好ましくは樹脂のガラス転移温度より20から40℃高い温度に設定することが好ましい。前記の温度範囲を下回ると得られるフィルムの面内位相差が高くなり、均一性も損なわれる。また、前記の温度範囲を上回るとフィルムの弾性率が下がりすぎて引き伸ばし操作が困難となる。
【0084】
引き伸ばしたフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、さらに好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した低い面内位相差を持つ光学フィルムが得られる。
【0085】
通常の延伸操作では、延伸時にフィルムム内の分子が配向し、大きな位相差を示すようになるが、本願発明における延伸(引き伸ばし)では、未延伸のフィルムを上述した特定の方法で引き伸ばすことにより、得られた光学フィルムの面内位相差を0〜50nm、好ましくは0〜30nmの範囲に抑えることができる。
【0086】
また、得られた光学フィルムのフィルム面内における位相差の分布は、フィルムロールの幅方向に対して測定した場合において、測定長50mmにおける最大値と最小値の差がそれぞれ好ましくは3nm以下、さらに好ましくは2nm以下、特に好ましくは1nm以下であり、かつ、R0の面内方向(幅方向)の距離による変化率(絶対値)が好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.7ppm以下、特に好ましくは0.5ppm以下である。
【0087】
さらに、これを縦方向(フィルムロールの長手方向)に対して測定した場合においても、測定長50mmにおける最大値と最小値の差がそれぞれ好ましくは3nm以下、さらに好ましくは2nm以下、特に好ましくは1nm以下であり、かつ、位相差の面内方向(長手方向)の距離による変化率(絶対値)が好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.7ppm以下、特に好ましくは0.5ppm以下である。
【0088】
本発明では、未延伸のフィルムを上述した特定の方法で引き伸ばすことにより、未延伸のフィルムよりもさらに位相差の分布が少なく、光学的に均一な光学フィルムを得ることができ、しかも、光学フィルムの面内位相差が十分に低いものとすることができる。
【0089】
本発明で得られる光学フィルムの加熱による寸法収縮率は、80℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0090】
本発明では、使用されるノルボルネン系樹脂の原料である特定単量体やその他の共重合
性単量体を適宜選択すること、ならびに、フィルム成形方法やその条件、延伸方法やその条件あるいは上記ヒートセットの条件を適宜選択することにより、寸法収縮率を上記範囲内にすることができる。
【0091】
上記のように引き伸ばして得た光学フィルムの厚さは、好ましくは0.1〜300μm、さらに好ましくは0.5〜200μmである。厚みを適宜選択することで、液晶ディスプレイパネルが求める位相差フィルムに必要な位相差を与えるためにさらに延伸されるフィルムとしての応用範囲を広くすることができる。
【0092】
製膜した未延伸のノルボルネン系フィルムを幅方向に引き伸ばした場合、得られる光学フィルムの幅は通常1.6m〜7.5m、好ましくは2.0m〜4.5m、さらに好ましくは2.5m〜4.0mであり、従来のフィルム幅では対応できなかった大型の液晶ディスプレイに必要とされる偏光板の保護フィルム用途、位相差フィルムに使用することが可能となった。
【0093】
本発明によれば、製膜して得た未延伸のノルボルネン系樹脂製フィルムを、大きな位相差を発現させることなく延伸することができ、得られた光学フィルムの位相差が十分に小さく、しかも未延伸のフィルムよりもさらに膜厚のばらつきが少なく、面内位相差の分布が小さく、位相差を発現させる延伸をさらに施すのに好適な光学フィルムを製造することができる。
【0094】
このような本発明では、位相差が十分に小さく、面内位相差の分布が小さく、膜厚のばらつきが少なく、光学的に均一な特性を有するという好適な性状を有するノルボルネン系樹脂フィルムを、経済的かつ効率的に製造することができる。たとえば、未延伸のノルボルネン系樹脂製フィルムを製造した後にこれを本発明の方法で3倍に引き伸ばして光学フィルムを得ると、未延伸のフィルムを単に製造する場合の3倍の生産性で、位相差フィルムを製造する原料等に好適に用いられる、位相差の小さいノルボルネン系樹脂製フィルムを製造することができる。
【0095】
また、本発明により、光学的に均一で位相差が低いフィルムを幅方向に引き伸ばすことによって、これまで通常行われている方法では得ることができない幅広なフィルムを製造することが可能である。これまで行われてきた溶融押出法、溶剤キャスト法では用いるダイスの幅以上のフィルムを得ることはできなかった。ダイス及びキャスティングドラムもしくはベルト、あるいはロールの幅を広くするとその重量が増すことによって中央部にたわみが発生し、厚みバラツキが均一なフィルムを製造することはできなくなるため、光学的に均一で位相差が低いフィルムが広い幅で得ることができなかった。しかしながら本発明を用いることによって、これまでは得られなかった2mを超える幅を持つ、光学的に均一で、厚みバラツキが小さいフィルムが溶融押出法、溶剤キャスト法のいずれを用いた場合でも可能となった。
【0096】
本発明によってノルボルネン系の光学フィルムに求められる外観も向上させることができる。溶融押出法によって製造されるフィルムはダイライン、ロール表面への不均一転写によるムラなど微小な膜厚バラツキや急峻な段差に基づく外観ムラ、スジなどが観察されるが、本発明によりフィルムを引き伸ばすことによって引き伸ばす倍率を大きくするほど微小な膜厚バラツキは逆に小さくすることができ、急峻な段差を緩和することでスジが目立たなくなくすることができるため、光学フィルムとして良好な外観を得ることができる。
【0097】
本発明に係る光学フィルムは、透明性、耐熱性、耐水性、耐薬品性などの特性に優れるとともに、光学的な均一性に優れるため、そのまま保護フィルムなどの光学フィルム用途
に用いることができ、また、さらに位相差を発現させる延伸を行うことにより、均一性の高い位相差フィルムを製造する用途、特に、大画面化される液晶ディスプレイに用いられる偏光フィルムに好適に用いることができる。
【0098】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味する。
【0099】
本発明における各種物性値の測定方法を以下に示す。
ガラス転移温度(Tg)
セイコーインスツルメンツ社製、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気、昇温速度:20℃/分の条件で測定した。
面内位相差、面内位相差分布
大塚電子(株)製、位相差フィルム検査装置RETS−1200VAを用い、波長550nmにおける値を測定した。
残留溶媒量
サンプルを塩化メチレンに溶解し、得られた溶液をガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−7A)を用いて分析した。
対数粘度
ウベローデ型粘度計を用いて、クロロホルムまたはN−メチル−2−ピロリドン中(試料濃度:0.5g/dL)、30℃で測定した。
【0100】
<合成例1>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン(特定単量体)250部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)750部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変
性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル
:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7部を添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した対数粘度は0.75dl/gであった。
【0101】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C65)33 0.12部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応
を行った。
【0102】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂A1」という。)を得た。
【0103】
このようにして得られた樹脂A1について各種物性を測定したところ、1H−NMRを
用いて測定した水素添加率は99.9%、DSC法により測定したガラス転移温度(Tg)は165℃、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は32,000、重量平均分子量(Mw)は137,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.29、23℃における飽和吸水率は0.3%、SP値は19(MPal/2)、30℃のクロロホルム中における対数粘度は0.78dl/g であ
った。
【0104】
<合成例2>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン215部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン35部とを使用し、1−ヘキセン(分子量調節剤)の添加量を18部としたこと以外は、合成例1と同様にして水素添加重合体(以下、「樹脂B」という。)を得た。
【0105】
得られた樹脂Bについて、各種物性を測定したところ、水素添加率は99.9%、DSC法により測定したガラス転移温度(Tg)は125℃、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により測定した、ポリスチレン換算のMnは46,000、Mwは190,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.15、23℃における飽和吸水率は0.18%、SP値は19(MPal/2)、30℃のクロロホルム中における対数粘度は0.69dl/
g、ゲル含有量は0.2%であった。
【0106】
<製造例1> 樹脂フィルム(A−1)の製造
上記樹脂A1をトルエンに30%濃度(室温での溶液粘度は30,000mPa・s)になるように溶解し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を重合体100重量部に対して0.1重量部を添加し、日本ポール製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過した。得られたポリマー溶液を、クラス1000のクリーンルーム内に設置した井上金属工業製INVEXラボコーターを用い、アクリル酸系で親水化(易接着性化)表面処理した厚さ100μmの基材のPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーU94)上に、乾燥後のフィルム厚みが100μmになるように塗布し、これを50℃で一次乾燥の後、90℃で二次乾燥を行った。PETフィルムより剥がした樹脂フィルムを(a1−1)とした。得られたフィルムの残留溶媒量は0.5%であり、全光線透過率は93%であった。また、フィルム幅は1000mmであった。
<製造例2> 樹脂フィルム(B−1)の製造
樹脂Aの代わりに樹脂Bを使用した以外は製造例1と同様の方法により、厚さ75μmの樹脂フィルム(B−1)を得た。得られたフィルムの残留溶媒量は0.5%であり、全光線透過率は93%であった。また、フィルム幅は1000mmであった。
<製造例3> 樹脂フィルム(C−1)の製造
粉末状で得られた樹脂Bを溶融押出機を用いて一旦ペレットにした。本ペレットを90mm径の溶融押出機を使用して260℃で溶融し、85℃に温度制御された鏡面ロールに転写して250μ厚、1400mm幅の樹脂フィルム(C−1)を得た。
[実施例1]
クリップテンター式横延伸機(幅4100mm、最高温度200℃)を用いて、製造例1で得た樹脂フィルムA−1を、温度190℃で幅方向(TD)へ3.0倍に引き伸ばし、フィルム両端をスリットしながらロール状に巻き取った。得られたフィルムの幅は2800mmで、厚さは35μmであった。面内の位相差と位相差の分布を測定した結果を表1に示す。良好な光学特性であることを確認できた。
[実施例2]
使用するフィルムを製造例2で得た樹脂フィルムB−1を145℃とし、幅方向(TD)へ2.0倍に引き伸ばして、フィルム両端をスリットしながらロール状に巻き取った。得られたフィルムの幅は1800mmで、厚さは36μmであった。面内の位相差と位相差の分布を測定した結果を表1に示す。実施例1と同様に良好な光学特性であることを確認できた。
[実施例3]
同時二軸延伸機(幅4500mm、最高温度200℃)を用いて、製造例3で得た樹脂
フィルムC−1を、温度155℃で幅方向(TD)へ2.0倍、長さ方向1.5倍に引き伸ばし、フィルム両端をスリットしながらロール状に巻き取った。得られたフィルムの幅は2600mmで、厚さは80μmであった。面内の位相差と位相差の分布を測定した結果を表1に示す。良好な光学特性であることを確認できた。
[比較例1]
樹脂フィルムA−1を、温度170℃で幅方向(TD)へ3.0倍に引き伸ばし、フィルム両端をスリットしながらロール状に巻き取った。得られたフィルムの幅は2800mmで、厚さは34μmであった。面内の位相差と位相差の分布を測定した結果を表1に示す。面内の位相差が大きく、光学的な均一性も悪化していることを確認した。
[比較例2]
使用するフィルムを製造例2で得た樹脂フィルムB−1を125℃とし、幅方向(TD)へ2.0倍に引き伸ばして、フィルム両端をスリットしながらロール状に巻き取った。得られたフィルムの幅は1800mmで、厚さは37μmであった。面内の位相差と位相差の分布を測定した結果を表1に示す。面内の位相差が大きく、光学的な均一性も悪化していることを確認した。
【0107】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明に係る光学フィルムは、そのままで保護フィルムなどの低位相差が求められる光学フィルムとして好適に用いることができ、また、さらに延伸して位相差を発現させることができるため、位相差を有する光学フィルムの原料としても好適に用いることができる。具体的には、位相差フィルム、偏光板、偏光板保護フィルム、波長板、光拡散板、プリズムシート、反射防止フィルム、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、導光板などの光学フィルムまたはその原料として利用できる。
【出願人】 【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100081994
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊一郎

【識別番号】100103218
【弁理士】
【氏名又は名称】牧村 浩次

【識別番号】100107043
【弁理士】
【氏名又は名称】高畑 ちより

【識別番号】100110917
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 亨


【公開番号】 特開2008−955(P2008−955A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171653(P2006−171653)