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【発明の名称】 クロスヘッド被覆ダイ、押出成形装置および導電性弾性体ローラ
【発明者】 【氏名】小澤 雅基

【氏名】村田 淳

【氏名】加藤 久雄

【氏名】永田 之則

【氏名】宍塚 和之

【要約】 【課題】ウェルドラインを低減させることのできる導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイおよび押出成形装置、導電性弾性体ローラの周方向電気抵抗値のばらつきを低減させた導電性弾性体ローラを提供する。

【構成】内側ダイ33外周面と外側ダイ35内周面とから構成される環状流路37を有する導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイ30において、内側ダイ外周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有し、かつ、外側ダイ内周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有する。このクロスヘッド被覆ダイと、円形状ダイリップ38とを具備する導電性弾性体押出成形装置。この押出成形装置を用いて製造された導電性弾性体ローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側ダイ外周面と外側ダイ内周面とから構成される環状流路を有する導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイにおいて、
該内側ダイ外周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有し、かつ、該外側ダイ内周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有することを特徴とする導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイ。
【請求項2】
前記環状流路の少なくとも一部において、内側ダイ外周面に設けられたつる巻線状溝と外側ダイ内周面に設けられたつる巻線状溝のつる巻線状巻き方向が同じ向きであることを特徴とする請求項1に記載の導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイ。
【請求項3】
内側ダイ外周面と外側ダイ内周面とから構成される環状流路を有するクロスヘッド被覆ダイと、円形状ダイリップとを具備する導電性弾性体押出成形装置において、
該クロスヘッド被覆ダイが、内側ダイ外周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有し、かつ、外側ダイ内周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有することを特徴とする導電性弾性体押出成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の導電性弾性体押出成形装置を用いて製造された導電性弾性体ローラ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば複写機、印刷機、レーザビームプリンター、写真現像機などに用いられる導電性弾性体ローラに関し、特に電子写真プロセスを用いた画像形成装置に用いる導電性弾性体ローラに関するものである。また本発明は、このような導電性弾性体ローラを製造するために用いることのできる導電性弾性体押出成形装置、およびこの装置に用いられる導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンター、複写機および静電記録装置等の画像形成は、帯電、露光、現像、転写、定着プロセスから成り立っている。図1に模式図を示すごとく導電性ローラは画像形成装置において、感光ドラム91表面を帯電させる帯電ローラ92、感光ドラム表面の静電潜像をトナー像に現像する現像ローラ93、感光ドラム表面上のトナー像を転写する転写ローラ94として使用されている。また、これら導電性ローラは感光ドラムに押圧されて使用されることが多く、感光ドラムと導電性ローラ間で均一なニップを得ること、感光ドラムを均一に帯電するために均一な電気抵抗値であること、感光ドラム汚染が少ないことなどが求められる。なお、図中Pは紙等の被転写材である。
【0003】
さて、導電性ローラは、少なくともその内部に位置する支持軸とその外周面に導電性層を有する構成であるが、感光ドラムと導電性ローラ間で均一なニップを得るために低硬度であることが必要とされる。そのため、導電性ローラの外周面の導電性層材がゴム状弾性体から構成される導電性弾性体ローラが使用される。
【0004】
導電性弾性体ローラの電気抵抗値の均一化については、導電性弾性体ローラの長手方向の電気抵抗値の均一化を図って、押出成形を用いた製造方法が広く採用されている。
【0005】
押出成形を用いた導電性弾性体ローラの製造方法としては、次のような方法が知られている。すなわち、押出成形装置によって導電性弾性体組成物を中空円筒状に成形した後に、導電性弾性体組成物を当該組成物の性状に応じて加熱または冷却によって固化させることにより、中空の導電性弾性円筒体を得る。得られた導電性弾性円筒体の内部貫通孔に金属や樹脂からなる支持軸を挿入して、研磨や表面処理などの2次工程を経て、導電性弾性体ローラを得る。
【0006】
また、安価に導電性弾性体ローラを製造するために、導電性弾性体チューブの貫通孔への導電性支持軸挿入工程を省略するために、クロスヘッド被覆ダイによる被覆押出成形を用いた導電性弾性体ローラの製造方法が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−353766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クロスヘッド被覆ダイによる被覆押出成形を用いた導電性弾性体ローラの製造方法を、図2および図3を用いて説明する。図3はクロスヘッド被覆ダイを用いた被覆押出成形装置の模式図である。被覆押出成形装置は押出機10と、内側ダイ33および外側ダイ35によって構成される環状流路37を有するクロスヘッド被覆ダイ30と、円形状ダイリップ38とから構成される。はじめに、押出機10の投入口12に投入された導電性弾性体組成物11はシリンダ13内にてシリンダ13とスクリュ14から受けるせん断力により可塑化および混練されて、押出機シリンダ出口15へ搬送される。続いてブレーカプレート16を通過して、クロスヘッド被覆ダイ30の材料導入口へ搬送される。クロスヘッド被覆ダイ30に導入された導電性弾性体組成物11は内側ダイ33によって分流されたのち、再び合流して内側ダイ33と外側ダイ35で構成される環状流路37にて円筒状(断面は円環状)に形成されて導電性弾性円筒体となる。導電性弾性円筒体は、あらかじめ内側ダイ33内部の貫通孔に設置された支持軸3上に被覆されて、円形状のダイリップ38にて所望の外径寸法に調整される。このようして図2に示すような支持軸3の外周に導電性弾性円筒体2を有する導電性弾性円筒被覆体1が得られる。こうして得られた導電性弾性円筒被覆体を導電性弾性円筒体がゴムの場合は架橋工程、導電性弾性体組成物が熱可塑性のエラストマーの場合は冷却工程を経て導電性弾性体ローラを得る。なおシリンダ13には投入口12と押出機シリンダ出口15の間に脱気口17が設けられる。
【0008】
ところで、クロスヘッド被覆ダイ30の環状流路内37で導電性弾性体組成物11が内側ダイ33によって分流され、再び合流する地点ではウェルドラインと呼ばれる導電性弾性体組成物11の合わせ目が発生する。その結果、導電性弾性円筒被覆体1にウェルドライン4が生じることがある。ウェルドライン4は導電性弾性円筒被覆体1の導電性弾性円筒体2の内周面から外周面に渡って連続して存在するため、導電性弾性円筒被覆体に研磨などの2次加工を施して得られる導電性弾性体ローラにもウェルドライン4は残存する。導電性弾性体組成物において、ウェルドライン4の部分はウェルドライン以外の領域と組成が異なるため電気抵抗値が異なる。このため、導電性弾性体ローラの周方向の電気抵抗値にばらつきが生じ、例えば、導電性弾性体ローラが帯電ローラである場合は感光体ドラムを均一に帯電させることができなくなり、画像不良が発生する場合がある。
【0009】
従って、導電性弾性円筒被覆体1のウェルドライン4を低減させることが望まれる。このために、外周面につる巻線状溝を有する内側ダイ外周面と平滑な外側ダイ内周面から構成される環状流路を有するクロスヘッド被覆ダイ(内側スパイラルダイ式クロスヘッド被覆ダイ)を用いた被覆押出成形を採用することができる。
【0010】
この成形では、図6に示すように、導電性弾性体導入口32よりクロスヘッド被覆ダイ30内に導かれた導電性弾性体組成物は、内側ダイ33によって分流される。そののち、導電性弾性体組成物は再び合流して内側ダイ33と外側ダイ35で構成される環状流路37にて円筒状に形成されて導電性弾性円筒体となる。図6は、クロスヘッド被覆ダイの押出方向に垂直な面における断面図であり、導電性弾性体組成物の流れを矢印で示してある。この際に、内側ダイ外周面のつる巻線状溝に導かれて内側ダイ周方向に周回する流れ(以下、周回流れと称す)が生じる。その結果、内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ内周面との間隙において押出軸方向に流れる漏洩流が発生して導電性弾性円筒体に生じるウェルドラインを低減する。
【0011】
しかし内側スパイラルダイ式クロスヘッド被覆ダイを用いたクロスヘッド被覆押出成形の場合においても、押出成形される導電性弾性体組成物11の環状流路37を流れる際の挙動によっては次のような現象が発生することがある。すなわち、導電性弾性体組成物が、熱可塑性樹脂が示すような粘性の挙動に加えて、ゴムや熱可塑性エラストマーのように弾性の挙動を大きく示す場合は、内側ダイ周方向に周回する流れが十分に発生しないことがある。この場合内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ内周面の間隙に発生する漏洩流が不足する。
【0012】
さらに、押出成形される導電性弾性体組成物11の環状流路37を流れる際の挙動が、熱可塑性樹脂が示すような粘性の挙動に加えて、ゴムや熱可塑性エラストマーのように弾性の挙動を大きく示す場合(弾性的挙動が大きい場合)は、次の懸念もある。すなわち、内側ダイと外側ダイの間隙の幅(以下、環状流路幅と称す)を大きくしなければ、環状流路内を導電性弾性体が流れることができなくなり押出成形ができなくなる可能性がある。このため、環状流路内における流れの挙動が弾性的挙動を大きく示す導電性弾性体組成物を押出成形するためのクロスヘッド被覆ダイは、クロスヘッド被覆ダイの環状流路幅を大きくする必要がある。しかし、環状流路幅を大きくすると、導電性弾性体組成物11が弾性的挙動を大きく示すために、環状流路の外側ダイ近傍における内側ダイ外周面のつる巻線状溝から受ける周回流れの力が不足することがある。その結果、環状流路の外側ダイ近傍の導電性弾性体組成物は十分に周回流れを発生することができず、漏洩流が不足することがある。このため、弾性的挙動を大きく示す導電性弾性体組成物に内側スパイラルダイ式クロスヘッドを用いた場合、十分にウェルドラインを低減することができない場合がある。このため、導電性弾性円筒体2のウェルドライン4を十分に低減することが出来なくなり、導電性弾性円筒被覆体1にウェルドライン4が生じることがある。このため、導電性弾性円筒被覆体1を次工程で加工して得られる導電性弾性体ローラにウェルドラインは残存して、当該ローラの周方向電気抵抗値にばらつきが生じることがある。また、導電性弾性体組成物11中に導電性付与や機械的強度向上などのためとして、カーボンブラック、カーボンファイバー、金属粉末、金属酸化物粉末などが含有される場合がある。これらはウェルドラインに偏在しやすいため、ウェルドラインとウェルドライン以外の電気抵抗値のばらつきが一層大きくなり、導電性弾性体ローラのウェルドラインに起因する電気抵抗値のばらつきが大きくなることがある。
【0013】
本発明の目的は、押出成形される導電性弾性体組成物の環状流路を流れる際の挙動が、熱可塑性樹脂が示すごとき粘性の挙動に加えて、ゴムや熱可塑性エラストマーのように弾性の挙動を大きく示す場合においても、ウェルドラインを低減させることのできる導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイおよび導電性弾性体押出成形装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、導電性弾性体ローラの周方向電気抵抗値のばらつきを低減させ、電子写真式画像形成装置に用いた場合に画像不良を低減可能な導電性弾性体ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、内側ダイ外周面と外側ダイ内周面とから構成される環状流路を有する導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイにおいて、
該内側ダイ外周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有し、かつ、該外側ダイ内周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有することを特徴とする導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイが提供される。
【0016】
本発明により、内側ダイ外周面と外側ダイ内周面とから構成される環状流路を有するクロスヘッド被覆ダイと、円形状ダイリップとを具備する導電性弾性体押出成形装置において、
該クロスヘッド被覆ダイが、内側ダイ外周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有し、かつ、外側ダイ内周面に押出方向を中心軸とするつる巻線状溝を有することを特徴とする導電性弾性体押出成形装置が提供される。
【0017】
本発明により、上記の導電性弾性体押出成形装置を用いて製造された導電性弾性体ローラが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、押出成形される導電性弾性体組成物の環状流路を流れる際の挙動が、熱可塑性樹脂が示すごとき粘性の挙動に加えて、ゴムや熱可塑性エラストマーのように弾性の挙動を大きく示す場合においても、ウェルドラインを低減させることのできる導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイおよび導電性弾性体押出成形装置が提供される。
【0019】
本発明により、導電性弾性体ローラの周方向電気抵抗値のばらつきを低減させ、電子写真式画像形成装置に用いた場合に画像不良を低減可能な導電性弾性体ローラが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイは、内側ダイ外周面に押出方向を中心軸とする内側つる巻線状溝を有する内側ダイと、外側ダイ内周面に押出方向を中心軸とする外側つる巻線状溝を有する外側ダイから構成される環状流路を具備する。本発明の導電性弾性体押出成形装置は、このクロスヘッド被覆ダイと円形状ダイリップを具備する。つる巻線状とは内側ダイ外周面または外側ダイ内周面上において周方向にひとまわりした時に押出軸方向の位置が異なっている状態を示し、その時に押出軸方向に変化する当該押出軸方向距離をリードと定義する。図7に、つる巻線、リード、リード角などを示す。
【0021】
本発明の導電性弾性体ローラは、上記導電性弾性体押出成形装置を用いて形成されたものである。この導電性弾性体ローラを構成する導電性弾性体形成用材料としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴムを含むゴムや熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
【0022】
本発明に係る押出成形装置においては、内側ダイと外側ダイから構成される環状流路を具備するクロスヘッド被覆ダイにおいて、当該内側ダイ外周面と当該外側ダイの内周面それぞれにつる巻線状溝を有している。
【0023】
このため、押出成形される導電性弾性体組成物の環状流路を流れる際の挙動が、熱可塑性樹脂が示すごとき粘性の挙動に加えて、ゴムや熱可塑性エラストマーのように弾性の挙動を大きく示す場合においても、次のようにウェルドラインを抑制することができる。すなわち、クロスヘッド被覆ダイ環状流路において導電性弾性体組成物を円筒状に形成する際に、環状流路の内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ内周面のつる巻線状溝の双方から押出軸方向の漏洩流が発生する。従って、環状流路における押出軸方向の漏洩流量が増加して、導電性弾性体組成物の組成の均一性が向上して導電性弾性体円筒体のウェルドラインが低減する。従って、本押出成形装置を用いて製造した導電性弾性円筒体から得られる導電性弾性体ローラは、ローラの周方向電気抵抗値のばらつきが小さくなり、この導電性弾性体ローラを用いた電子写真装置における画質不良の発生を抑えることができる。
【0024】
[溝数量]
つる巻線1リードの間に存在するつる巻線の数を溝の数と定義する。内側ダイ外周面と外側ダイ内周面の溝の数はそれぞれ任意に設けることが許容されるが、好ましくは1〜36本の範囲、より好ましくは4〜20本である。溝の数を36本以下とすることで、つる巻線状溝内における導電性弾性体組成物の流動抵抗が増加することを抑制する観点から、溝の数は36本が好ましく、20本以下がより好ましい。
【0025】
環状流路出口における周方向の押出量の均一化の観点から、溝数は4本以上が好ましい。
【0026】
[溝形状]
つる巻線状溝の形状は、つる巻線の接線を法線とする面へ当該溝形状を投影した時の形状(以下、投影溝形状と称す)が、例えば半円形状、半だ円形状、多角形状(例えば、三角形、矩形、台形等)等にすることができる。中でも、導電性弾性体組成物の滞留防止の観点から半円形状、半だ円形状など投影溝形状に隅角部の無い流線形状が望ましい。つる巻線状溝に沿って、投影溝形状の大きさと形が変化していてもよい。
【0027】
[つる巻線状溝のリード角]
つる巻線状溝と、当該つる巻線状溝上の一点を通る押出方向の軸に直角な平面とが成す角度を、当該点を通る内側ダイまたは外側ダイの半径線に直角な平面に投影した角度をリード角と定義する(図7参照)。
【0028】
内側ダイ外周面のつる巻線状溝のリード角と外側ダイ内周面のつる巻線状溝のリード角はそれぞれ任意に設定できる。つる巻線状溝のリード角はつる巻線状溝上の任意の位置で、該リード角を変化することを許容する。
【0029】
[溝の配置]
内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ内周面のつる巻線状溝の配置はそれぞれ任意に設定できるが、環状流路出口における周方向の押出量が均一になるように配置することが望ましい。
【0030】
[環状流路]
また、本発明に係る押出成形装置は、単層の導電性弾性ローラを形成するための装置に限定されるものではない。外側ダイの外周面にもつる巻線状溝を形成し、さらにその外周につる巻線状溝を有する内周面を有する第二の外側ダイを設置して、第二の環状流路を設けることにより、二層の導電性弾性円筒体を支持軸上に設けることができる。このような装置は二層の導電性弾性体ローラの製造に適用することができる。さらに上述と同じようにして第三以上の外側ダイを用い、環状流路を複数段積層することにより、多層(三層以上)の導電性弾性体ローラを得ることができる。
【0031】
また、内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ内周面のつる巻線状溝のそれぞれのつる巻線状溝の巻き方向が同方向となるように構成することが好ましい。
【0032】
この場合、押出成形される導電性弾性体組成物の環状流路を流れる挙動が、熱可塑性樹脂が示すごとき粘性の挙動に加えて、ゴムや熱可塑性エラストマーのように弾性の挙動を大きく示す場合においても、次のような効果が得られる。すなわち、環状流路において導電性弾性体組成物を円筒状に形成して導電性弾性円筒体を得る際に、内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ内周面のつる巻線状溝から漏洩流が発生する。そして、さらに内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ外周面のつる巻線状溝の巻き方向が同じであるため、環状流路内における導電性弾性体組成物の周方向の流れが大きくなる。従って、内側ダイ外周面のつる巻線状溝と外側ダイ内周面のつる巻線状溝から生じる押出軸方向の漏洩流が増加する。その結果、導電性弾性体組成物の組成の均一性が向上して導電性弾性体円筒のウェルドラインをより低減することができ、導電性弾性円筒体から得られる導電性弾性体ローラのウェルドラインをより低減することができる。もって、導電性弾性体ローラにおける周方向電気抵抗値のばらつきがより低減される。
【0033】
対向する内側ダイ外周面と外側ダイ内周面のつる巻線状溝の巻方向が同方向である導電性弾性体押出成形用クロスヘッド被覆ダイを有する押出成形装置を用いて製造した導電性弾性体ローラは、ローラの周方向電気抵抗値のばらつきがより小さくなる。その結果、この導電性弾性体ローラを用いた電子写真装置における画質不良の発生をより低減させることができる。
【0034】
本発明の押出成形装置は、内側ダイ外周面と外側ダイ内周面とから構成される環状流路を有するクロスヘッド被覆ダイを具備し、円形状ダイリップを具備する押出成形装置である。そしてこの装置は、内側ダイ外周面に押出方向を軸とする内側つる巻線状溝を有しつつ、外側ダイ内周面に押出方向を軸とする外側つる巻線状溝を有する環状流路を具備するクロスヘッド被覆ダイを有することを特徴とする。以下、本発明の好ましい実施の形態について図4を用いて説明する。
【0035】
図4に本発明に係る押出成形装置の例を示す。この装置は、押出機10と、環状流路37を具備する環状被覆ダイ30とを有する。押出機10は導電性弾性体組成物11を投入する投入口12と導電性弾性体組成物11を可塑化および混練しながら搬送するためのシリンダ13とスクリュ14を有する。そして、さらに可塑化および混練された導電性弾性体組成物を排出するための排出口(押出機シリンダ出口)15、ブレーカプレート16を有している。シリンダ13は投入口12と排出口15の間に脱気口17を有しており、脱気口17には真空ポンプ(不図示)が連結されている。なお、投入口12へ投入する導電性弾性体組成物の形状は、連続的に導電性弾性体組成物を押出機へ供給できる形状が好ましく、具体的には短冊状や紐状、粒状等の形状が適している。また、ブレーカプレート16には導電性弾性体組成物中の異物除去やシリンダ内圧力上昇などを目的とした金網の設置が許容される。
【0036】
本例では、クロスヘッド被覆ダイへの導電性弾性体組成物を供給する装置としてスクリュ式押出機を示した。しかし、当該導電性弾性体組成物供給装置としては、スクリュ式押出機以外にもギヤポンプ式押出機やスクリュ押出機とギヤポンプを組み合わせた装置などを用いることができる。
【0037】
押出機10の排出口15は、クロスヘッド被覆ダイ30を構成する外側ダイ35の導電性弾性体組成物導入口と連結する。クロスヘッド被覆ダイ30は内側ダイ33の外周面と外側ダイ35の内周面から構成される環状流路37を備える。内側ダイ33は外側ダイ35の内周面の一部と嵌合固定されつつ、環状流路37の内周側の壁面となり、外側ダイ35の内周面と環状流路を構成する。外側ダイ35の内周面は環状流路37の外周側の壁面となる。内側ダイ33は環状流路37の中心軸と同じ向きに貫通孔を具備し、この貫通孔には支持軸3を装着することができる。クロスヘッド被覆ダイ30の押出方向端部には円形状のダイリップ38が取り付けられており、図2に示すような、導電性弾性円筒体(断面は円環状)2によって支持軸3(の一部)が被覆された導電性弾性円筒被覆体1が排出される。排出された導電性弾性円筒被覆体1を加熱架橋または冷却固化して、導電性弾性体ローラを得る。
【0038】
支持軸3は往復動が自在な状態で内側ダイ貫通孔に設置される。支持軸の材質は特に制限は無く、例えば金属や樹脂などを用いる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
図4に示す構造を有する押出成形装置を用いた。具体的には、シリンダ直径が50mmで、L/D(シリンダの長さ/直径比)が22である脱気口付きの押出機を用いた。クロスヘッド被覆ダイとして図4のごとく、外周面につる巻線状溝を有する内側ダイと内周面につる巻線状溝を有する外側ダイで構成される環状流路を具備するクロスヘッド被覆ダイを使用した。内側ダイ外周面に設置されたつる巻線状溝の形態は、つる巻線状溝数12本、つる巻線状溝のリード角60°、つる巻線状溝の配置は内側ダイ外周面に等間隔に配置した。また、つる巻線状溝をリード角に垂直な面に投影した時の当該つる巻線状溝の投影形状(投影溝形状)が半だ円形状、つる巻線の巻き方向は右ねじの方向とした。一方、外側ダイ内周面のつる巻線状溝の形態は、つる巻線状溝数6本、つる巻線状リード角45°、つる巻線状溝配置は外側ダイ内周面に等間隔に配置した。また投影溝形状が半円形であり、つる巻線状巻き方向が左ねじ方向とした。
【0041】
また、導電性弾性体組成物として、
・NBR(商品名「Nipol DN219」:日本ゼオン(株)製)100質量部に対して、
・カーボンブラック1(導電性粒子)(商品名「旭HS−500」:旭カーボン製)14質量部、
・カーボンブラック2(導電性粒子)(商品名「ケッチェンブラックEC600JD」:ライオン製)6質量部、
・ステアリン酸亜鉛1質量部、
・酸化亜鉛5質量部、
・液状エポキシ化ポリブタジエン(商品名「アデカザイザーBF−1000」:旭電化工業(株)製)10質量部、
・炭酸カルシウム(商品名「ナノックス#30」:丸尾カルシウム(株)製)30質量部
・炭酸カルシウムを5質量%含む架橋NBR粒子(商品名「Baymod N PV KA 8641」:バイエル(株)製)50質量部、
・ジベンゾチアゾリルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM−P」:大内新興化学(株)製)1質量部、
・テトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名「パーカシットTBzTD」:フレキシス(株)製)3質量部、および
・硫黄(加硫剤)1.2質量部
をオープンロールで混錬したゴムを使用した。
【0042】
クロスヘッド被覆ダイを構成する内側ダイ内部貫通孔には、予め外直径6mm、長さ251mmの丸棒状の鋼製支持軸を装着した。
【0043】
図4に示す構造を有する押出成形装置を用いて、シリンダ、スクリュ、クロスヘッド被覆ダイ、ダイリップの成形温度をそれぞれ100℃、スクリュ回転数10回転で外直径6mmの鋼製支持軸上に導電性弾性体組成物を被覆して導電性弾性円筒被覆体を得た。
【0044】
得られた導電性弾性円筒被覆体を160℃の熱風炉で1時間架橋して、導電性弾性体ローラを得た。さらに導電性弾性体ローラの導電性弾性体長が230mmになるように導電性弾性体(導電性弾性円筒体が硬化したもの)端部を切断して、この導電性弾性体部分を回転砥石で研磨し、導電性弾性体部を端部直径8.3mm、中央部8.5mmのクラウン形状とした。さらに波長250nm近傍の紫外線ランプを得られたローラの軸方向と平行に設置して、このローラを周方向に回転させながら紫外線を2分間照射して、表面に高架橋層を形成した上で、帯電ローラとした。
【0045】
[実施例2]
内側ダイ外周面のつる巻線状溝形態を、溝数12本、リード角60°、溝配置は内側ダイ外周面に等間隔に配置、投影溝形状が半だ円形状、つる巻線巻き方向は右ねじ方向とした。また、外側ダイ内周面のつる巻線状溝形態を、溝数12本、リード角60°、溝配置は外側ダイ内周面に等間隔に配置、投影溝形状が台形であり、つる巻線巻き方向が左ねじ方向とした。それ以外は実施例1と同様にして、帯電ローラを得た。
【0046】
[実施例3]
内側ダイ外周面のつる巻線状溝形態を、溝数12本、リード角60°、溝配置は内側ダイ外周面に等間隔に配置、投影溝形状が半だ円形状、つる巻線状巻き方向は右ねじ方向とした。また、外側ダイ内周面のつる巻線状溝形態を、溝数12本、リード角60°、溝の配置は外側ダイ内周面に等間隔に配置、投影溝形状が半円形であり、つる巻線巻き方向が右ねじ方向とした。それ以外は実施例1と同様にして、帯電ローラを得た。
【0047】
[比較例1]
内側ダイ外周面のつる巻線状溝形態を、溝数12本、リード角60°、溝配置は内側ダイ外周面に等間隔に配置、投影溝形状が半だ円形状、つる巻線巻き方向は右ねじ方向とした。外側ダイ内周面は平滑面とした。それ以外は実施例1と同様にして、帯電ローラを得た。
【0048】
[比較例2]
内側ダイ外周面のつる巻線状溝のリード角を45°とした以外は比較例1と同様にして、帯電ローラを得た。
【0049】
以上の実施例と比較例の条件を表1に一覧として示す。
【0050】
上述の実施例1〜3、比較例1〜2で得られた帯電ローラについて周方向の電気抵抗値のばらつき測定と画像評価を実施した。
【0051】
〈電気抵抗値のばらつき〉
図5に示す電子写真用導電性部材の電気抵抗測定装置を用いて帯電ローラの周方向電気抵抗値のばらつきを測定した。帯電ローラ5の支持軸3の両端部を図に示さない押圧手段で押圧することにより、帯電ローラは円柱状のステンレスドラム81に圧接され、ステンレスドラム61の回転駆動に伴い従動回転する。この状態で、電子写真用導電性部材(帯電ローラ)の支持軸3に外部電源82を用いて直流電圧を印加し、ステンレスドラム81に直列に接続した基準抵抗83にかかる電圧から、帯電ローラの電気抵抗を計算した。
【0052】
直流電源には小型電源PL−650−0.1(松定プレシジョン社製商品名)を、電圧計にはデジタルマルチメーターフルーク83(フルーク製商品名)を使用した。
【0053】
上記帯電ローラの電気抵抗は、温度23℃、相対湿度50%環境下で、図5の装置を使用し、支持軸とステンレスドラムの間に直流200Vの電圧を印加して0.1秒ごとに5秒間測定した。そして、その測定値の最大値÷最小値を電気抵抗値のばらつきとして算出した。
【0054】
〈画像評価〉
上述の実施例1〜3、比較例1〜2で得られた電子写真用導電性弾性体ローラを、図1の構成を有する電子写真装置であるLBP5500(キヤノン(株)製商品名)に帯電ローラとして、被帯電体(感光ドラム)と共に取り付けた。なお、ここで使用した被帯電体は、ポリカーボネート系樹脂を主体とする電荷輸送層をもつ。そして、温度15℃、相対湿度10%の環境下においてハーフトーン画像(感光ドラムの回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力した。このときに、帯電ローラの周方向電気抵抗値のばらつきに起因する帯状またはスジ状の「画像濃度むら」を評価した。その明部と暗部の濃度差から、以下の基準で評価した。実使用上、△評価以上であれば問題はない。
○:濃度差は無し。
△:濃度差は軽微。
×:はっきりとした濃度差が有り。
【0055】
実施例1〜3と比較例1〜2で得られた導電性帯電ローラの電気抵抗値のばらつきと画像評価の結果を表2に示す。
【0056】
【表1】


【0057】
【表2】


【0058】
以上説明されたように、本発明の押出成形装置によれば、被覆押出成形時のウェルドラインを低減させて、周方向電気抵抗値のばらつきの小さな導電性弾性体ローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】電子写真プロセスによる画像形成装置を説明するための模式図である。
【図2】押出成形装置から得られる導電性弾性円筒被覆体を説明するための模式図である。
【図3】クロスヘッド被覆ダイを有する従来の被覆押出装置を説明するための模式的部分断面図である。
【図4】本発明のクロスヘッド被覆ダイを用いた押出成形装置を説明するための模式的部分断面図である。
【図5】導電性弾性体ローラ電気抵抗測定装置の模式図である。
【図6】クロスヘッド被覆ダイにおける内側ダイによる導電性弾性体組成物の分流及び合流を説明するための模式的断面図である。
【図7】つる巻線、リード、リード角を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・導電性弾性円筒被覆体
2・・・導電性弾性円筒体
3・・・支持軸
4・・・ウェルドライン
5・・・導電性弾性体ローラ
10・・・押出機
11・・・導電性弾性体組成物
12・・・投入口
13・・・シリンダ
14・・・スクリュ
15・・・排出口
16・・・ブレーカプレート
17・・・脱気孔
30・・・クロスヘッド被覆ダイ
32・・・導電性弾性体組成物導入口
33・・・内側ダイ
35・・・外側ダイ
37・・・環状流路
38・・・円形状ダイリップ
81・・・ステンレスドラム
82・・・外部電源
83・・・基準抵抗
91・・・感光ドラム
92・・・帯電ローラ
93・・・現像ローラ
94・・・転写ローラ
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫

【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸

【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭


【公開番号】 特開2008−946(P2008−946A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171255(P2006−171255)