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【発明の名称】 加硫用ブラダー
【発明者】 【氏名】紅林 光夫

【氏名】北村 吉文

【氏名】古澤 浩史

【要約】 【課題】加硫故障の抑制とともに、有機溶剤の使用量を低減することができる加硫用ブラダーを提供すること。

【構成】加硫対象物であるグリーンタイヤを挟んで金型と対向し、かつ膨張することでグリーンタイヤを金型に押圧する加硫用ブラダー1においてグリーンタイヤ10の内壁面11と接触するブラダー表面5には、ブラダー表面5に対する突出量がブラダー軸方向に向かって増加する複数の突出部51,52が形成され、各突出部51,52は、傾斜面51a,51bと外周面51b,52bとの間に形成されるエッジ51c,52cが軸方向に向かってに突出している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫対象物を挟んで金型と対向し、かつ膨張することで当該加硫対象物を当該金型に押圧する加硫用ブラダーにおいて、
前記加硫対象物と接触するブラダー表面には、前記ブラダー表面に対する突出量が一方向に向かって増加する複数の突出部が形成され、
前記各突出部は、傾斜面と外周面との間に形成されるエッジが前記一方向に突出していることを特徴とする加硫用ブラダー。
【請求項2】
前記一方向は、前記ブラダー表面の中央部から両クランプ部にそれぞれ向かう方向であることを特徴とする請求項1に記載の加硫用ブラダー。
【請求項3】
前記一方向は、ブラダー軸方向に対して0度から45度までの範囲であることを特徴とする請求項2に記載の加硫用ブラダー。
【請求項4】
前記突出部は、前記一方向あるいは当該一方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方において連続して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の加硫用ブラダー。
【請求項5】
前記直交方向において隣り合う前記突出部は、前記エッジの両端のうち少なくともいずれか一端が互いに接続されていることを特徴とする請求項4に記載の加硫用ブラダー。
【請求項6】
前記一方向において隣り合う前記突出部は、前記外周面に、前記エッジの両端のうち少なくともいずれか一端が接続されていることを特徴とする請求項4または5に記載の加硫用ブラダー。
【請求項7】
前記エッジは、円弧、楕円弧、2以上の直線の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の加硫用ブラダー。
【請求項8】
前記突出部は、前記ブラダー表面の全範囲のうち50%以上に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の加硫用ブラダー。
【請求項9】
前記ブラダー表面は、ブラダー周方向に複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の加硫用ブラダー。
【請求項10】
前記各溝の両溝壁面あるいは溝底の少なくともいずれか1つに前記複数の突出部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の加硫用ブラダー。
【請求項11】
前記各突出部の傾斜面の前記一方向における両端の最大長さは、0.3mm以上10mm以下とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の加硫用ブラダー。
【請求項12】
前記各突出部の最大突出量は、0.1mm以上2.0mm以下とすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の加硫用ブラダー。
【請求項13】
加硫対象物がタイヤであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の加硫用ブラダー。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張することで加硫対象物を金型に押圧する加硫用ブラダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加硫対象物、例えば加硫前のタイヤであるグリーンタイヤを加硫成型する際には、グリーンタイヤに圧力を加えることとなる。この圧力をグリーンタイヤに加えるものとして加硫用ブラダーがある。加硫用ブラダーは、グリーンタイヤを挟んで金型と対向して配置される。そして、この加硫用ブラダーは、膨張することでグリーンタイヤに接触しながら、このグリーンタイヤを金型に押圧することとなる。
【0003】
ここで、加硫用ブラダーは、グリーンタイヤの加硫成型時に、そのブラダー表面がグリーンタイヤの内壁面と接触しつつ、膨張することとなる。ブラダー表面は、グリーンタイヤが加硫用ブラダーが膨張することで金型に押圧されているため、このグリーンタイヤの内壁面に対して滑ることとなる。ブラダー表面がグリーンタイヤの内壁面に対して滑る際には、ブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面とが面接触となるため、ブラダー表面がグリーンタイヤの内壁面に対して滑る際の抵抗が大きくなる。従って、ブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面との密着性が低下し、このブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面との間に空気が残り、加硫故障の原因となっていた。
【0004】
そこで、従来の加硫用ブラダーでは、ブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面との間の空気を排出するために、ブラダー表面に加工を施したものがある。例えば、特許文献1に示すように、ブラダー周方向に複数の傾斜溝が形成された加硫用ブラダーが提案されている。この特許文献1に示す加硫用ブラダーであれば、ブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面との間の空気の排出性を向上することができる。しかしながら、ブラダー表面がグリーンタイヤの内壁面に対して滑る際には、傾斜溝が形成されていないブラダー表面と同様に、ブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面とが面接触となる。従って、ブラダー表面がグリーンタイヤの内壁面に対して滑りを向上することができず、多量の有機溶剤を必要とする。
【0005】
また、特許文献2に示すように、ブラダー表面に微細な凹凸が形成された加硫用ブラダーが提案されている。この特許文献2に示す加硫用ブラダーであれば、ブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面とが複数の小さな面接触となる。従って、ブラダー表面がグリーンタイヤの内壁面に対して滑りを向上することができ、有機溶剤の使用量を低減することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平6−143288号公報
【特許文献2】特開平7−195380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に示す加硫用ブラダーでは、ブラダー表面は、ブラダー表面とグリーンタイヤの内壁面とが複数の小さな面接触を維持したまま、グリーンタイヤに対して滑ることとなるので、抵抗が十分に小さくすることができず、ブラダー表面がグリーンタイヤの内壁面に対して滑りを十分に向上することができず、有機溶剤の使用量を十分に低減することが困難であった。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、加硫故障の抑制とともに、有機溶剤の使用量を低減することができる加硫用ブラダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、加硫対象物を挟んで金型と対向し、かつ膨張することで当該加硫対象物を当該金型に押圧する加硫用ブラダーにおいて、前記加硫対象物と接触するブラダー表面には、前記ブラダー表面に対する突出量が一方向に向かって増加する複数の突出部が形成され、前記各突出部は、傾斜面と外周面との間に形成されるエッジが前記一方向に突出していることを特徴とする。
【0010】
また、この発明では、上記加硫用ブラダーにおいて、前記一方向は、前記ブラダー表面の中央部から両クランプ部にそれぞれ向かう方向であることを特徴とする。
【0011】
また、この発明では、前記一方向は、ブラダー軸方向に対して0度から45度までの範囲であることを特徴とする。
【0012】
これらの発明によれば、加硫用ブラダーにより加硫対象物を金型に押圧する際には、まずブラダー表面の各突出部のエッジあるいは傾斜面が加硫対象物と接触する。そして、加硫対象物に対してブラダー表面が滑る際には、このエッジのみあるいはエッジと傾斜面の一部が接触した状態となる。このとき、各突出部と加硫対象物との間に隙間が形成され、この隙間に空気が残る。しかしながら、各突出部に対向する各隙間は、隣り合う隙間と連通している。従って、各突出部と加硫対象部とが密着した際には、各隙間に存在していた空気は、隣り合う隙間に移動することができる。これにより、空気の排出性を向上することができ、加硫故障を抑制することができる。
【0013】
加硫用ブラダーにより加硫対象物を金型に押圧する際には、この加硫用ブラダーは、まず中央部が加硫対象物と接触する。そして、加硫用ブラダーが膨張する際には、この中央部と加硫対象物との相対移動がほとんどないため、この中央部を基準に膨張することとなる。従って、加硫用ブラダーが膨張する際に、加硫対象物に対してブラダー表面が移動する方向(以下、単に「相対移動方向」と称する。)は、ブラダー表面の中央部から両クランプ部にそれぞれ向かう方向(軸方向に対して0度から45度までの範囲)と反対方向となる。この発明によれば、各突出部は、この相対移動方向と反対方向に向かってそのブラダー表面に対する突出量が増加しているので、加硫対象物に対してブラダー表面が滑る際に加硫対象物と接触する傾斜面は、相対移動方向と反対方向に向かって突出した傾斜面となる。また、加硫対象物に対してブラダー表面が滑る際に加硫対象物と接触するエッジも、相対移動方向と反対方向に向かって突出する。従って、加硫対象物に対してブラダー表面が相対移動方向に滑る際の抵抗を減少することができるので、ブラダー表面が加硫対象物に対して相対移動方向と反対方向に滑り易くなり、ブラダー表面と加硫対象物との密着が促進することができる。これにより、有機溶剤の使用量を低減することできる。
【0014】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記突出部は、前記一方向あるいは当該一方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方において連続して形成されていることが好ましい。
【0015】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記直交方向において隣り合う前記突出部は、前記エッジの両端のうち少なくともいずれか一端が互いに接続されていることが好ましい。
【0016】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記一方向において隣り合う前記突出部は、前記外周面に、前記エッジの両端のうち少なくともいずれか一端が接続されていることが好ましい。
【0017】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、エッジは、円弧、楕円弧、2以上の直線の少なくともいずれか1つであることが好ましい。
【0018】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記突出部は、前記ブラダー表面の全範囲のうち50%以上に形成されていることが好ましい。
【0019】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記ブラダー表面は、ブラダー周方向に複数の傾斜溝が形成され、前記各傾斜溝は、前記ブラダー表面の中央部と両クランプ部との間に、かつブラダー軸方向に対して傾斜して形成されていることが好ましい。これにより、空気の排出性をさらに向上させることができる。
【0020】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記各溝の両溝壁面あるいは溝底の少なくともいずれか1つに前記複数の突出部が形成されていることが好ましい。
【0021】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記各突出部の傾斜面の前記一方向における両端の最大長さは、0.3mm以上10mm以下とすることが好ましい。
【0022】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、前記各突出部の最大突出量は、0.1mm以上2.0mm以下とすることが好ましい。
【0023】
なお、上記加硫用ブラダーにおいては、加硫対象物がタイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
この発明にかかる加硫用ブラダーは、加硫対象物に対してブラダー表面が相対移動方向と反対方向に滑る際の抵抗を減少することができるので、加硫故障の抑制とともに、有機溶剤の使用量を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。ここで、以下の実施例では、加硫対象物をタイヤとし、このタイヤの加硫成型時に用いるタイヤ加硫用ブラダーについて説明するが、この発明はこれに限定されるものではなく、加硫対象物を挟んで金型と対向し、かつ膨張することができる加硫用ブラダーであれば、タイヤの加硫成型時に用いられるものに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
図1は、この発明にかかる加硫用ブラダーの構成例を示す図である。図2は、ブラダー表面の一部を示す図である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、図2のB部分拡大図である。図5は、図2のC部分拡大図である。なお、図2は、この発明にかかる加硫用ブラダーをブラダー周方向に展開した図である。
【0027】
図1に示すように、この発明にかかる加硫用ブラダー1は、本体部2と、クランプ部3,4とにより構成されている。本体部2は、円環形状であり、ブチルゴムなどの膨張可能な材料で構成されている。この本体部2の外周面には、加硫対象物であるグリーンタイヤ10の内壁面11と接触するブラダー表面5が形成されている。クランプ部3,4は、本体部2のブラダー軸方向の両端部に形成されるものである。この各クランプ部3,4は、リング状であり、加硫用ブラダー1を膨張させるための気体供給装置に固定されている。
【0028】
ブラダー表面5には、図2〜図5に示すように、ブラダー表面の中央部Sからクランプ部3との間に複数の突出部51が、ブラダー表面の中央部Sからクランプ部4との間に複数の突出部52がそれぞれ形成されている。各突出部51,52は、ブラダー径方向外側に突出して形成されている。また、各突出部51は、一方向としてブラダー表面5に対する突出量が中央部Sからクランプ部3に向かって(この実施例ではブラダー軸方向のうち一方に向かって)増加するように形成されている。また、各突出部52は、一方向としてブラダー表面5に対する突出量が中央部Sからクランプ部4に向かって(この実施例ではブラダー軸方向のうち他方に向かって)増加するように形成されている。つまり、ブラダー表面5に形成される各突出部51,52は、このブラダー表面5の中央部Sを挟んで、一方向がブラダー軸方向において互いに反対方向となる。
【0029】
これにより、各突出部51は、ブラダー表面5の中央部Sからクランプ部3に向かう方向でかつブラダー径方向外側に向かって緩やかに傾斜する傾斜面51aと、ブラダー表面5の中央部Sからクランプ部3に向かう方向でかつブラダー径方向内側に向かって急に傾斜する外周面51bとにより構成されている。また、各突出部51は、この傾斜面51aと外周面51bとの間にエッジ51cが形成されている。各突出部51は、エッジ51cが一方向であるブラダー表面5の中央部Sからクランプ部3に向かう方向に突出する、この実施例では、エッジ51cがブラダー軸方向のうち一方に突出する円弧となるように、形成されている。
【0030】
また、各突出部52は、ブラダー表面5の中央部Sからクランプ部4に向かう方向でかつブラダー径方向外側に向かって緩やかに傾斜する傾斜面52aと、ブラダー表面5の中央部Sからクランプ部4に向かう方向でかつブラダー径方向内側に向かって急に傾斜する外周面52bとにより構成されている。また、各突出部52は、この傾斜面52aと外周面52bとの間にエッジ52cが形成されている。各突出部52は、エッジ52cが一方向であるブラダー表面5の中央部Sからクランプ部4に向かう方向に突出する、この実施例では、エッジ52cがブラダー軸方向のうち一方に突出する円弧となるように、形成されている。
【0031】
ここで、図3に示すように、各突出部51,52の最大突出量Hは、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。さらに、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。なお、最大突出量Hを0.1mm以上とするのは、0.1mm未満であると、グリーンタイヤ10の内壁面11にブラダー表面5が接触した際に、各突出部51,52の傾斜面51a,52aの大部分が接触してしまい、グリーンタイヤ10に対してブラダー表面5が相対移動方向と反対方向に滑る際の抵抗を減少することができなくなるためである。また、最大突出量Hを2.0mm以下とするのは、2.0mmと超えると、各突出部51,52とグリーンタイヤ10との間に形成される隙間が大きくなり、空気抵抗が増大するためである。また、グリーンタイヤ10に対してブラダー表面5が滑った後における各突出部51,52の傾斜面51a,52aとグリーンタイヤ10の内壁面11との密着性が低下するし、空気の排出性が低下するためである。
【0032】
また、各突出部51,52の一方向における両端の最大長さWは、0.3mm以上10mm以下であることが好ましい。さらに、1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。なお、最大長さWを0.3mm以上とするのは、0.3mm未満であると、空気の排出性が低下するためである。また、最大長さWを10mm以下とするのは、10mmを超えると空気の排出性が低下するためである。なお、この実施例では、ブラダー表面5に形成される各突出部51,52の最大突出量Hおよび最大長さWは、ほぼ同一である。
【0033】
各突出部51は、図2および図3に示すように、ブラダー表面5の中央部Sからクランプ部3の間に、一方向である中央部Sからクランプ部3に向かう方向(この実施例ではブラダー軸方向のうち一方)およびこのブラダー軸方向と直交する直交方向であるブラダー周方向に連続して形成されている。各突出部52は、ブラダー表面5の中央部Sからクランプ部4の間に、一方向である中央部Sからクランプ部4に向かう方向(この実施例ではブラダー軸方向のうち他方)およびこのブラダー軸方向と直交する直交方向であるブラダー周方向に連続して形成されている。各突出部51,52のうち、ブラダー周方向において隣り合う突出部51,52は、エッジ51c、52cの両端51d、51e,52d、52eのうち少なくともいずれか一端が互いに接続されている。
【0034】
この実施例では、図4に示すように、各突出部51のエッジ51cの一端51dがブラダー周方向に隣り合う突出部51のエッジ51cの他端51eと接続され、各突出部51のエッジ51cの他端51eがブラダー周方向に隣り合う突出部51のエッジ51cの一端51dと接続される。また、図5に示すように、各突出部52のエッジ52cの一端52dがブラダー周方向に隣り合う突出部52のエッジ52cの他端52eと接続され、各突出部52のエッジ52cの他端52eがブラダー周方向に隣り合う突出部52のエッジ52cの一端52dと接続される。各突出部51、52のうち、ブラダー軸方向において隣り合う突出部51,52は、外周面51b,52bに、エッジ51c,52cの両端51d、51e,52d、52eのうち少なくともいずれか一端が接続されている。この実施例では、各突出部51の外周面51bのブラダー周方向におけるほぼ中央部に、ブラダー軸方向において隣り合う突出部51のエッジ51cの一端51dが接続されるとともに、この一端51dが接続される突出部51とブラダー周方向において隣り合う突出部51のエッジ51cの他端51eが接続される。また、各突出部52の外周面52bのブラダー周方向におけるほぼ中央部に、ブラダー軸方向において隣り合う突出部52のエッジ52cの一端52dが接続されるとともに、この一端52dが接続される突出部52とブラダー周方向において隣り合う突出部52のエッジ52cの他端52eが接続される。
【0035】
つまり、複数の突出部51,52は、各突出部51,52が、ブラダー周方向において連続するとともに、ブラダー軸方向において各突出部51,52のブラダー周方向におけるピッチが半ピッチずれて連続する。この実施例では、各突出部51,52のエッジ51c,52cの円弧は、ブラダー周方向において連続し、ブラダー軸方向において、半径分ずれて連続する。これにより、ブラダー表面5には、形成された複数の突出部51,52により、魚の鱗のように、視認される鱗状模様が形成される。
【0036】
なお、各突出部51,52は、ブラダー表面5の全範囲のうち50%以上に形成されていることが好ましい。なお、ブラダー表面5の全範囲のうち50%以上とするのは、50%未満であると、空気の排出性が低下するためである。
【0037】
次に、この発明にかかる加硫用ブラダー1を用いたタイヤの加硫成型ついて説明する。図6は、タイヤの加硫成型の説明図である。まず、金型20と加硫用ブラダー1との間に、未加硫のタイヤであるグリーンタイヤ10が配置される。そして、グリーンタイヤ10を加熱しながら、加硫用ブラダー1を膨張させる。膨張した加硫用ブラダー1は、グリーンタイヤ10を金型20に押圧する。これにより、グリーンタイヤ10は加硫成型され、金型20の内周形状を転写されたタイヤとなる。
【0038】
グリーンタイヤ10と加硫用ブラダー1とが接触する際には、まずブラダー表面5の中央部Sがグリーンタイヤ10の内壁面11と接触する。この状態で、加硫用ブラダー1が膨張すると、この中央部Sとグリーンタイヤ10の内壁面11との相対移動がほとんどない。従って、加硫用ブラダー1は、ブラダー表面5の中央部Sを基準に膨張することとなる。ブラダー表面5の中央部Sがグリーンタイヤ10の内壁面11と接触した状態では、図6に示すように、加硫用ブラダー1とグリーンタイヤ10との間に空間部Gが形成される。従って、加硫用ブラダー1が膨張すると、この空間部Gをなくすように、グリーンタイヤ10の内壁面11に対してブラダー表面5が相対移動方向に滑る。つまり、ブラダー表面5のクランプ部3と中央部Sとの間の範囲、すなわち複数の突出部51が形成されている範囲は、クランプ部3から中央部Sに向かう方向に滑る。一方、ブラダー表面5のクランプ部4と中央部Sとの間の範囲、すなわち複数の突出部52が形成されている範囲は、クランプ部4から中央部Sに向かう方向に滑る。
【0039】
グリーンタイヤ10と加硫用ブラダー1とが接触する際には、ブラダー表面5の各突出部51,52のエッジ51c,52cあるいはエッジ51c,52cおよび傾斜面51a,52aの一部である接触部Tがグリーンタイヤ10の内壁面11と接触する。そして、グリーンタイヤ10の内壁面11に対してブラダー表面5が相対移動方向に滑る際にも、この各突出部51,52の接触部Tは、グリーンタイヤ10の内壁面11と接触した状態を維持する。このとき、図4および図5に示すように、各突出部51,52とグリーンタイヤ10の内壁面11との間に隙間Rがそれぞれ形成され、この隙間Rに空気が残ることとなる。各突出部51,52に対向する各隙間Rは、ブラダー周方向およびブラダー軸方向において隣り合う各突出部51,52に対向する隙間Rと連通している。従って、グリーンタイヤ10に対して加硫用ブラダー1が相対移動方向に滑り、各突出部51,52がグリーンタイヤ10の内壁面11に対して、相対移動方向と反対方向(図4および図5に示す矢印D)に順次密着した際には、図4および図5に示す矢印Eに示すように、各隙間Rに存在していた空気は、隣り合う隙間Rに移動することができる。これにより、空気の排出性を向上することができ、加硫故障を抑制することができる。
【0040】
各突出部51,52がこの相対移動方向と反対方向に向かってそのブラダー表面5に対する突出量が増加しているので、上述のように、グリーンタイヤ10の内壁面11に対してブラダー表面5が滑る際にこのグリーンタイヤ10の内壁面11と接触する傾斜面51a,52aは、相対移動方向と反対方向に向かって突出した傾斜面となる。また、グリーンタイヤ10の内壁面11に対してブラダー表面5が滑る際にこのグリーンタイヤ10の内壁面11と接触するエッジ51c,52cも、相対移動方向と反対方向に向かって突出する。従って、グリーンタイヤ10の内壁面11に対してブラダー表面5が相対移動方向に滑る際の抵抗を減少することができる。これにより、ブラダー表面5がグリーンタイヤ10の内壁面11に対して相対移動方向と反対方向に滑り易くなり、加硫用ブラダー1とグリーンタイヤ10との密着が促進することができ、ブラダー表面5に微細な凹凸が形成された従来の加硫用ブラダーと比較して、有機溶剤の使用量を低減することできる。
【0041】
なお、上記実施例においては、各突出部51,52における一方向をブラダー軸方向としたがこの発明はこれに限定されるものではない。図7および図8は、この発明にかかる加硫用ブラダーの他の構成例を示す図である。図7および図8に示すように、各突出部51,52における一方向は、ブラダー表面5の中央部から両クランプ部3,4にそれぞれ向かう方向であれば、ブラダー軸方向と同一方向でなくても良い。
【0042】
例えば、図7に示すように、中央部Sとクランプ部3との間に形成されている複数の突出部51における一方向をブラダー軸方向と異ならせ、中央部Sとクランプ部4との間に形成されている複数の突出部52における一方向をこの複数の突出部51における一方向に対して180度回転した方向としても良い。つまり、複数の突出部51と複数の突出部52とを中央部Sを基準に点対称にブラダー表面5に形成しても良い。
【0043】
また、例えば、図8に示すように、中央部Sとクランプ部3との間に形成されている複数の突出部51における一方向をブラダー軸方向と異ならせ、中央部Sとクランプ部4との間に形成されている複数の突出部52における一方向をこの複数の突出部51における一方向に対して線対称とした方向としても良い。つまり、複数の突出部51と複数の突出部52とを中央部Sを基準に線対称にブラダー表面5に形成しても良い。
【0044】
なお、各突出部51,52における一方向とブラダー軸方向とのなす角θは、0度以上45度以下の範囲であることが好ましい。さらに、θは、0度以上30度以下であることが好ましい。なお、このなす角θを45度以下とするのは、45度を超えると空気の排出性が低下するためである。
【0045】
また、上記実施例において、ブラダー表面5に溝を形成しても良い。この溝は、ブラダー周方向に複数本形成されている。この溝が連続する連続方向は、ブラダー軸方向と同一方向であっても良いし、このブラダー軸方向と異なった方向であって良い。これにより、各突出部51,52に対向する各隙間Rに存在していた空気は、隣り合う隙間Rに移動するとともに、この溝内を相対同方向と反対方向に移動することとなる。これにより、空気の排出性をさらに向上することができ、加硫故障をさらに抑制することができる。なお、各溝の両溝壁面あるいは溝底の少なくともいずれか1つに上記複数の突出部51,52と同様な突起を形成しても良い。つまり、この溝内に突出部を形成しても良い。この場合、この溝内の突出部における一方向は、上述のように、ブラダー表面5の中央部Sから両クランプ部3,4に向かう方向であることが好ましい。
【0046】
また、上記実施例においては、各突出部51,52のエッジ51c,52cを円弧としたが、この発明はこれに限定されるものではない。図9および図10は、この発明にかかる加硫用ブラダーの他の構成例を示す図である。また、例えば、図9に示すように、ブラダー表面5に形成される各突出部53,54のエッジ53a,54aを楕円弧としても良い。例えば、図10に示すように、ブラダー表面5に形成される各突出部55,56のエッジ55a,56aを3本の直線により構成しても良い。なお、エッジ55a,56aを複数の直線で構成する場合は、同図に示す3本の直線に限られるものではなく、2本以上であれば良い。
【0047】
また、上記実施例では、各突出部51〜56の最大突出量Hおよび最大長さWは、ほぼ同一であるが、この発明はこれに限定されるものではなく、少なくともいずれか一方を異ならせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、この発明にかかる加硫用ブラダーは、タイヤの加硫成型に有用であり、特に、加硫故障の抑制とともに、有機溶剤の使用量を低減するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明にかかる加硫用ブラダーの構成例を示す図である。
【図2】ブラダー表面の一部を示す図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB部分拡大図である。
【図5】図2のC部分拡大図である。
【図6】図6は、タイヤの加硫成型の説明図である。
【図7】この発明にかかる加硫用ブラダーの他の構成例を示す図である。
【図8】この発明にかかる加硫用ブラダーの他の構成例を示す図である。
【図9】この発明にかかる加硫用ブラダーの他の構成例を示す図である。
【図10】この発明にかかる加硫用ブラダーの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 加硫用ブラダー
2 本体部
3 クランプ部
4 クランプ部
5 ブラダー表面
51,52 突出部
51a,52a 傾斜面
51b,52b 外周面
51c,52c エッジ
51d,51e,52d,52e 端部
53〜56 突出部
53a〜56a エッジ
10 グリーンタイヤ
11 内壁面
20 金型
【出願人】 【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明


【公開番号】 特開2008−926(P2008−926A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−170553(P2006−170553)