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【発明の名称】 水性分散体の製造装置および製造方法
【発明者】 【氏名】藤井 正和

【氏名】長谷 信隆

【氏名】田中 学

【要約】 【課題】大型の押出機を使用した場合でも、所望の平均粒子径、特に平均粒子径1μm以下の水性分散体を連続的に製造でき、また、得られる水性分散体中の未乳化物量を少なくできる水性分散体の製造装置を提供する。

【構成】本発明の水性分散体の製造装置は、バレル内にスクリュー12a,12bが配備された押出機を具備し、押出機のスクリュー12a,12bの内部に、冷却用媒体を流す流路13が形成されている。本発明の水性分散体の製造装置は、スクリュー12a,12bの直径が40mmを超える場合にとりわけ効果を発揮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル内にスクリューが配備された押出機を具備する水性分散体の製造装置であって、
押出機のスクリューの内部に、冷却用媒体を流す流路が形成されていることを特徴とする水性分散体の製造装置。
【請求項2】
スクリューの直径が40mmを超えることを特徴とする請求項1に記載の水性分散体の製造装置。
【請求項3】
乳化剤存在下にて熱可塑性樹脂と水性媒体とを、バレル内にスクリューが配備された押出機により混合して、水性媒体に熱可塑性樹脂を分散させる水性分散体の製造方法であって、
押出機のスクリューの内部に冷却用媒体を流してスクリューを冷却することを特徴とする水性分散体の製造方法。
【請求項4】
スクリューの直径が40mmを超えることを特徴とする請求項3に記載の水性分散体の製造方法。
【請求項5】
押出機のスクリューの内部に導入する冷却用媒体の温度Tc(℃)を、下記式(1)の関係を満足する温度に調節することを特徴とする請求項3または4に記載の水性分散体の製造方法。
Tc≧Ts−75 (1)
式(1)におけるTsは熱可塑性樹脂の軟化点(℃)である。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体に熱可塑性樹脂が分散した水性分散体を連続的に製造するための水性分散体の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤、塗料、樹脂改質剤等の原料として、水性媒体に熱可塑性樹脂が分散した水性分散体が使用されることがある。
水性分散体の製造方法としては、重合法および後乳化法が知られている。このうち、重合法は、水性分散体を得る方法として広く採用されているが、単量体の重合性により生成可能な熱可塑性樹脂の種類および単量体組成が限られ、また、重合反応のコントロールの繁雑さや装置上の複雑さなどの問題を有している。
一方、後乳化法は、乳化剤等の存在下、溶融した熱可塑性樹脂と水性媒体とを高剪断で混合して、水性媒体に熱可塑性樹脂を分散させて水性分散体を製造する方法である。
後乳化法による水性媒体の製造方法の具体例としては、例えば、特許文献1,2に、ポリオレフィンとカルボキシル基含有ポリオレフィンとを押出機により溶融混練後、水または塩基性物質の水溶液を供給し、これらを混合し、転相させて水性分散体を連続的に得る方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−34064号公報
【特許文献2】特開昭63−46273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,2に記載の方法では、スクリュー径30mm程度の小型の押出機を使用した場合には、所望の水性分散体が得られるものの、スクリュー径が40mmを超える大型の押出機を使用すると、水性分散体の製造が困難になったり、所望の平均粒子径の水性分散体(特に平均粒子径が1.5μm以下の水性分散体)が得られなかったりした。
例えば、スクリュー径30mmの同方向回転二軸押出機にて所望の水性分散体を得ることができる条件(例えばバレル内温度、スクリュー回転数等)を、スクリュー径40mmを超える大型の二軸押出機にそのまま適用し、原料供給速度を押出機の規模に合わせて速めても、所望の平均粒子径の水性分散体を得ることはできなかった。これは、大型の押出機では、剪断発熱により樹脂温度が高い部分が生じて、剪断による微粒子化が困難になることが原因であると思われる。
そこで、剪断発熱を抑えるために、スクリュー回転数を下げたり、混練性の小さいスクリュー構成に変更したりすることが考えられるが、これらの対策をとっても、所望の平均粒子径の水性分散体を得ることはできなかった。
【0004】
また、特許文献1,2に記載の方法にて、スクリュー径が40mmを超える大型の押出機を使用すると、未乳化物量が多くなった。得られた水性分散体は自然濾過方式による濾過をすることがある。そのため、未乳化物量が多いと、その濾過の際に未乳化物だけでなく、未乳化物に付着した一部の水性分散体も除去されてしまい、水性分散体の最終的な収率が低下した。また、押出機内での転相による乳化方法では、得られた水性分散体を水中へ分散して希釈槽中で希釈するが、未乳化物量が多いと、希釈の際に見かけ上の流動性が低くなったり、空気の巻き込みが増えたりする傾向にある。その結果、希釈が完了するまでの時間が長くなり、生産性が低下した。このことから、未乳化物量は少ないことが求められる。
【0005】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、大型の押出機を使用した場合でも、所望の平均粒子径、特に平均粒子径1.5μm以下の水性分散体を連続的に製造でき、また、得られる水性分散体中の未乳化物量を少なくできる水性分散体の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、大型の押出機を使用した場合に所望の水性分散体が得られない原因について鋭意検討を行い、大型の押出機では、スクリュー近傍の剪断発熱による樹脂温度の上昇を抑制できないためであることを見出した。そして、その知見に基づいて、さらに検討した結果、以下の水性分散体の製造装置および製造方法を発明するに至った。
【0007】
[1] バレル内にスクリューが配備された押出機を具備する水性分散体の製造装置であって、
押出機のスクリューの内部に、冷却用媒体を流す流路が形成されていることを特徴とする水性分散体の製造装置。
[2] スクリューの直径が40mmを超えることを特徴とする[1]に記載の水性分散体の製造装置。
[3] 乳化剤存在下にて熱可塑性樹脂と水性媒体とを、バレル内にスクリューが配備された押出機により混合して、水性媒体に熱可塑性樹脂を分散させる水性分散体の製造方法であって、
押出機のスクリューの内部に冷却用媒体を流してスクリューを冷却することを特徴とする水性分散体の製造方法。
[4] スクリューの直径が40mmを超えることを特徴とする[3]に記載の水性分散体の製造方法。
[5] 押出機のスクリューの内部に導入する冷却用媒体の温度Tc(℃)を、下記式(1)の関係を満足する温度に調節することを特徴とする[3]または[4]に記載の水性分散体の製造方法。
Tc≧Ts−75 (1)
式(1)におけるTsは熱可塑性樹脂の軟化点(℃)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性分散体の製造装置および製造方法によれば、大型の押出機を使用した場合でも、所望の平均粒子径の水性分散体を連続的に製造でき、また、得られる水性分散体中の未乳化物量を少なくできる。具体的には、スクリュー径が40mmを超える大型の押出機を使用しても、スクリュー径40mm未満の小型の押出機を使用した場合と同様に、所望の平均粒子径(特に、平均粒子径1.5μm以下)の水性分散体を製造でき、また、水性分散体中の未乳化物量を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(水性分散体の製造方法の概要)
熱可塑性樹脂可塑性樹脂と酸変性オレフィン系樹脂と乳化剤を溶融混練したところへ、アルカリ水溶液を注入し、さらに溶融混練することで、水相を連続相とする水性分散体へ転相させ、冷却機にて、水の沸点以下まで冷却し、必要に応じて水中に希釈分散する。
【0010】
(水性分散体の製造装置)
本発明の水性分散体の製造装置(以下、製造装置と略す。)の一実施形態例について説明する。なお、本発明の製造装置は、以下の実施形態例に限定されるものではない。
図1に、本実施形態例の製造装置を示す。この製造装置1は、加熱可能なバレル11内に2本のスクリュー12a,12bが配備された二軸押出機10と、二軸押出機10の先端10a側に設けられた冷却機20と、二軸押出機10のバレル11および冷却機20を気密状態で連結する連結管30と、バレル11の末端11a側に熱可塑性樹脂と酸変性オレフィン系樹脂、および乳化剤を供給する第1の供給手段40と、バレル11の中間部に水性媒体を供給する第2の供給手段50とを具備するものである。
本実施形態例では、二軸押出機10のスクリュー12a,12bの内部に、冷却用媒体を流す流路13が形成されている(図2参照)。
以下、各構成について説明する。
【0011】
該製造装置1を構成する二軸押出機10は、熱可塑性樹脂に水性媒体を添加した後、これらを転相させるために使用される。ここでいう転相とは、熱可塑性樹脂中に水性媒体が分散する状態から、水性媒体中に熱可塑性樹脂が分散する状態に転化することを意味する。
二軸押出機10に備えられたスクリュー12a,12bの直径は特に制限されないが、直径40mmを超える場合には、本発明の効果がとりわけ発揮されるため、好ましい。
二軸押出機10の2本のスクリュー12a,12bは、モータ15によって駆動する。2本のスクリュー12a,12bの回転方向は互いに同方向であってもよいし、異方向であってもよいが、同方向が好ましい。
【0012】
本実施形態例における二軸押出機10のスクリュー12a,12bの流路13は、スクリュー12a,12bの末端12c側から先端12d近傍に向けて冷却用媒体を流す第1の流路13aと、先端12d近傍にて冷却用媒体の流れ方向を反転させる第2の流路13bと、第1の流路13aの外側に設けられ、第2の流路13bからスクリュー12a,12bの末端12c側に冷却用媒体を戻す第3の流路13cとを有するものである。
【0013】
冷却機20としては、例えば、冷却用のジャケットを備えたスタティックミキサー、押出機などが挙げられるが、好ましくは単軸押出機である。
【0014】
第1の供給手段40としては、例えば、一般に押出機で使用される定量フィーダを用いることができる。定量フィーダを用いれば、所望の平均粒子径の水性分散体を容易に製造でき、また、水性分散体中の未乳化物量をより少なくできる。
第2の供給手段50としては、例えば、水性媒体を充填する容器51と、容器51内の水性媒体を二軸押出機10に送り出すポンプ52と、ポンプ52および二軸押出機10を接続した供給管53とを備える液体供給手段などが挙げられる。ポンプ52としては、例えば、ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ等を使用できる。
【0015】
一般に、バレル近傍の熱可塑性樹脂はバレルの設定温度に追従しやすいため、剪断発熱が生じても、バレルの設定温度を下げることにより、バレル近傍の熱可塑性樹脂の樹脂温度を下げることができるが、バレル内壁から離れた位置(すなわち、スクリュー近傍)の熱可塑性樹脂の樹脂温度は容易に下がらない。その傾向は、バレル孔径の大きくなる程、強くなる。そのため、従来、大型の押出機では、剪断により熱可塑性樹脂を微粒子化することは困難であった。
これに対し、上述した製造装置では、スクリュー12a,12bの内部に流路13が形成され、それらの流路13に冷却用媒体を流すことにより、スクリュー12a,12bを冷却することができる。これにより、スクリュー12a,12b近傍の熱可塑性樹脂の樹脂温度を下げることができるため、スクリュー12a,12b近傍でも剪断により熱可塑性樹脂を容易に微粒子化できる。
したがって、上記実施形態例の製造装置1によれば、所望の平均粒子径、特に平均粒子径1.5μm以下の水性分散体を連続的に製造でき、また、得られる水性分散体中の未乳化物量を少なくできる。この効果は、押出機が大型になる程(具体的にはスクリュー径が40mmを超える程)、とりわけ顕著に発揮される。
【0016】
(水性分散体の製造方法)
上述した製造装置1を用いた水性分散体の製造方法(以下、製造方法と略す。)について説明する。
本実施形態例の製造方法では、まず、バレル11内を加熱した二軸押出機10の2本のスクリュー12a,12bを回転させながら、第1の供給手段40により熱可塑性樹脂および乳化剤をバレル11の末端11a側に連続的に供給する。そして、熱可塑性樹脂と乳化剤とを溶融混練する。
【0017】
熱可塑性樹脂の供給量は二軸押出機10の能力に(具体的には、スクリュー径)に応じて適宜選択することが好ましい。
乳化剤の供給量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましい。乳化剤の供給量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5質量部以上であれば、水性媒体に熱可塑性樹脂を容易に分散させることができ、10質量部以下であれば、水性分散体の泡立ちを防止できる。
【0018】
二軸押出機10のバレル11内温度は140〜250℃に調整することが好ましい。分散する樹脂の特性に応じて二軸押出機10のバレル11内温度を140℃以上かつ250℃以下の範囲内とすれば、水性分散体を容易に製造できる。
【0019】
次いで、第2の供給手段50により水性媒体をバレル11の中間部に連続的に供給し、さらに溶融混練して転相させる。
水性媒体の供給量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して2.0〜100質量部であることが好ましい。分散する樹脂の特性に応じて水性媒体の供給量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して2.0質量部以上かつ100質量部以下の範囲内とすれば、熱可塑性樹脂を容易に製造できる。
水性媒体は、所望の平均粒子径の水性分散体を容易に製造でき、また、未乳化物量をより少なくできることから、一定に供給することが好ましい。そのためには、第2の供給手段50のポンプ52として精度の高いものを用いることが好ましい。
【0020】
その後、二軸押出機10により得た転相体を、連結管30を介して冷却装置に移送し、水性媒体の沸点以下まで冷却する。これにより得られた水性分散体は、通常、所望の濃度に希釈する。
【0021】
本実施形態例では、上記のように水性分散体を製造している際に、二軸押出機10の各スクリュー12a,12bの流路13に冷却用媒体を流して、スクリュー12a,12bを冷却する。
冷却用媒体としては、特に限定されないが多量に使用するのに適していることから、水が好ましい。
【0022】
この製造方法における冷却用媒体の温度(Tc:℃)はバレル内温度以下であるが、過度に低温の冷却用媒体を使用すると、スクリュー表面にて熱可塑性樹脂の再固形化が生じ、繊維状の未乳化物が発生して未乳化物の総量が増加する傾向にある。そのため、この製造方法では、各スクリュー12a,12bの流路13に導入する冷却用媒体の温度(Tc:℃)を、下記式(1)の関係を満足する温度に調節することが好ましい。
Tc≧Ts−75 (1)
式(1)におけるTsは熱可塑性樹脂の軟化点(℃)である。ここで、軟化点とは、ビカット軟化点のことであり、JIS K 7206に従い、荷重10N、昇温速度50℃/時間の条件で測定した値である。
【0023】
Tcを、式(1)の関係を満足する温度に調節しないと、過剰冷却になり、粒状の未乳化物だけでなく、繊維状の未乳化物も発生して、歩留まり低下、濾過作業負担増加および廃棄物増加を引き起こし、環境への負荷が増大する上に、不経済になる傾向にある。また、所望の平均粒子径を得ることも困難になる傾向にある。
【0024】
冷却用媒体の温度を調節する方法としては、冷却用媒体として使用できる温度を維持でき、流路13の閉塞や腐食が防止された方法が適用され、例えば、熱交換器にて冷却用媒体を別の冷却用媒体で冷却して温度調節する方法が挙げられる。
【0025】
本製造方法で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのα−オレフィンからなるホモポリマー、これらモノマーのコポリマー、これらモノマーと非共役ジエン、共役ジエン、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物等とを共重合したコポリマーなどが挙げられる。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体が好ましい。また、これらのホモポリマーまたはコポリマーにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸を導入した重合体も使用できる。
【0026】
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンのランダム共重合体やブロック共重合体、それらの水素添加物、酢酸ビニルなどのビニルエステルの各種共重合体とその加水分解物などを用いることもできる。ビニルエステルの各種共重合体とその加水分解物の中では、エチレン―酢酸ビニルとその部分ケン化物または高ケン化物を用いることが好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂には、例えば、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤、無機充填剤などの添加剤があらかじめ添加されていても構わない。
【0028】
酸変性オレフィン系樹脂としては、酸価が10〜200mg/gの無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。市販品としては、三井化学(株)製の「三井ハイワックス2203A」、三洋化成(株)製の無水カルボン酸変性ポリプロピレン「ユーメックス1010」、無水カルボン酸変性ポリエチレン「ユーメックス2000」などが挙げられる。
【0029】
本製造方法で使用される乳化剤としては、各種のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、第1級高級脂肪酸塩、第2級高級脂肪酸塩、第1級高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、第1級高級アルキルスルホン酸塩、第2級高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スルホン化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゾイルイミダゾールスルホン酸塩などが挙げられる。アニオン界面活性剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
なお、上記乳化剤を構成する高級脂肪酸としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
高級脂肪酸と塩を形成するための元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
【0030】
ノニオン界面活性剤としては、HLB(親水親油バランス)値が10以上のものが使用され、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸ショ糖エステル、アルキロールアミド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーなどが挙げられる。ノニオン界面活性剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
ノニオン界面活性剤を2種以上組合せて使用する場合には、その混合物のHLBが10以上になっていることが好ましい。
【0031】
また、水性媒体に熱可塑性樹脂を分散させるために、乳化剤の他に、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子を用いてもよい。
【0032】
乳化剤は、粉体状または粒状の固体であってもよいし、液体であってもよい。
【0033】
本製造方法で使用される水性媒体としては、例えば、水または塩基性物質の水溶液が使用される。
塩基性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アミンやアルカリ金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、水素化物ならびに、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、水素化物等の水溶液が挙げられる。塩基性物質は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水性媒体の中でも、水性分散体を容易に製造できることから、塩基性物質の水溶液が好ましく、水酸化カリウムの5〜30質量%水溶液がより好ましい。
【0034】
以上説明した製造方法では、二軸押出機10により熱可塑性樹脂と水性媒体を混合する際に、スクリュー12a,12bの流路13に冷却用媒体を流して、スクリュー12a,12bを冷却することができる。これにより、スクリュー12a,12b近傍の熱可塑性樹脂の樹脂温度を下げることができるため、スクリュー12a,12b近傍でも剪断により熱可塑性樹脂を微粒子化できる。
したがって、上記実施形態例の製造方法によれば、所望の平均粒子径、特に平均粒子径1.5μm以下の水性分散体を連続的に製造でき、また、得られる水性分散体中の未乳化物量を少なくできる。この効果は、押出機が大型になる程(具体的にはスクリュー径が40mmを超える程)、とりわけ顕著に発揮される。
【0035】
上記のようにして得られる水性分散体は、熱可塑性樹脂の種類に応じて、付着性、耐食性、ガスバリヤー性、耐チッピング性、耐ヒールマーク性などを発揮する。そして、発揮する効果によって、製品表面の防湿剤、撥水剤、皮膜形成剤、コーティング剤として使用されたり、繊維処理剤、ヒートシール剤、バインダー、プライマーなどとして他の材料と複合化されて使用されたりする。
また、水性分散体は、グラフト共重合体からなる樹脂改質剤の原料として使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について製造例を示して説明する。
なお、以下の例における熱可塑性樹脂の軟化点は、JIS K 7206に従い、荷重10N、昇温速度50℃/時間の条件で測定した値である。また、当然ながら熱可塑性樹脂が二種以上の混合物であったり、添加剤を含む場合には、バンバリーミキサーなどで溶融混練するなどして、組成に偏りが無い状態としてから測定した値である。ただし、同時に供給する酸変性オレフィン系樹脂や乳化剤は含まないものとする。
【0037】
[参考例]
参考例として、スクリュー内部に流路が形成されていない小型の押出機を具備する製造装置を用いて水性分散体を製造する例を示す。
本例で使用する製造装置は、加熱可能なバレル内に2本のスクリューが配備された二軸押出機(池貝鉄工(株)製、「PCM−30型」、L(スクリュー長さ)/D(スクリュー直径)=40、スクリュー径29mm)と、二軸押出機の先端側に設けられた冷却機であるジャケット付きスタティックミキサーと、二軸押出機およびスタティックミキサーを気密状態で接続する連結管と、バレルの末端側に熱可塑性樹脂および乳化剤を供給する第1の供給手段と、バレルの中間部に水性媒体を供給する第2の供給手段を具備するものである。
本例の二軸押出機は、スクリュー内部に冷却水を流す流路が形成されておらず、バレルのヒーターのみにより温度制御するものである。
【0038】
LLDPE(プライムポリマー社製、「エボリュー SP0540」、ビカット軟化点83℃)と、該LLDPE100質量部に対して10質量部の酸変性オレフィン系樹脂(三井化学(株)製、「三井ハイワックス2203A」、粘度平均分子量2700、無水マレイン酸変性、融点107℃、酸価30mg/g)と、3質量部のオレイン酸カリウムをタンブラーにて混合した。これにより得た混合物を、第1の供給手段により、上記二軸押出機に8.8kg/時間で供給した。その際、二軸押出機のバレル内温度を200℃に設定した。
また、水性媒体である14質量%水酸化カリウム水溶液を第2の供給手段により、水溶液として3質量部(水酸化カリウム0.42質量部と水2.58質量部)でバレルの中間部に供給した。そして、二軸押出機により、LLDPEと酸変性オレフィン系樹脂とオレイン酸カリウムと水性媒体とを連続的に溶融混練した。
得られた混練物を、二軸押出機出口側に設置したジャケット付スタティックミキサーで90℃まで冷却した。そして、冷却機20から吐出した吐出物を、80℃の温水中に投入し、固形分45質量%になるように調整して、水性分散体を得た。
【0039】
この水性分散体の平均粒子径および未乳化物の質量割合を以下のようにして求めた。これらの結果を表1に示す。なお、表1中の「%」は「質量%」のことである。
【0040】
<平均粒子径>
水性分散体における平均粒子径をMicrotrac UPA (Mountech Co.Ltd社製)により測定した。
<未乳化物の質量割合>
水性分散体を100メッシュのステンレス製金網で濾過し、メッシュ上の残留分を水洗、乾燥した後、濾過残留固形分の質量を測定した。そして、下記式(2)により水性分散体中の未乳化物の質量割合を求めた。
未乳化物の質量割合(質量%)=[濾過残留固形分の質量(g)/全固形分の質量(g)]×100(質量%) (2)
この未乳化物の質量割合が約50質量%以下であれば、水性分散体の収率低下および生産性低下を抑制できる。
【0041】
【表1】


【0042】
[製造例1]
本例は、スクリュー内部に冷却水を流す流路が形成された大型の押出機を具備する製造装置を用いて、参考例と同様の原料比率で、製造量が参考例の22倍以上になるように、水性分散体を製造する例である。
本例で使用する製造装置は、図1に示すような、加熱可能なバレル11内に2本のスクリューが配備された二軸押出機10(池貝鉄工(株)製、「PCM−87型」、L/D=41、スクリュー径83mm)と、二軸押出機10の先端側に設けられた冷却機20であるジャケット付きスタティクミキサーと、二軸押出機10および冷却機20を気密状態で接続する連結管30と、バレル11の末端11a側に熱可塑性樹脂と酸変性オレフィン系樹脂および乳化剤の混合物を供給する第1の供給手段40と、バレル11の中間部に水性媒体を供給する第2の供給手段50とを備えたものである。
この製造装置1の二軸押出機10の各スクリュー12a,12bの内部には、冷却用媒体である冷却水を流す流路13(直径10mm)が設けられている(図2参照)。
【0043】
また、この製造装置1は、ポンプによりスクリュー12a,12bの流路13に冷却水を供給し、スクリュー12a,12bの流路13から排出された冷却水を冷却し、その冷却された冷却水を再びスクリュー12a,12bの流路13に供給する冷却水供給ユニットを具備する。この冷却水供給ユニットは、スクリュー12a,12bの流路13から排出された冷却水を、その冷却水とは別の冷却水(二次冷却水)と熱交換することによって冷却する。スクリュー12a,12bを冷却する冷却水の温度は、二次冷却水の流量により調節した。
【0044】
本例では、まず、LLDPE(プライムポリマー社製、「エボリュー SP0540」)と、該LLDPE100質量部に対して10質量部の酸変性オレフィン系樹脂(三井化学(株)製、「三井ハイワックス2203A」)と、3質量部のオレイン酸カリウムとを混合した。これにより得た混合物を、第1の供給手段40により、二軸押出機10に194kg/時間で供給した。その際、二軸押出機10のバレル11内温度を200℃に設定した。
また、水性媒体である14質量%水酸化カリウム水溶液を第2の供給手段50により、水溶液として3質量部(水酸化カリウム0.42質量部と水2.58質量部)でバレル11の中間部に供給した。そして、二軸押出機10により、LLDPEと酸変性オレフィン系樹脂とオレイン酸カリウムと水性媒体とを連続的に溶融混練した。
得られた混練物を、二軸押出機10出口側に設置した冷却機20であるジャケット付スタティックミキサーで90℃まで冷却した。そして、冷却機20から吐出した吐出物を80℃の温水中に投入し、固形分濃度43質量%になるように調整して、水性分散体を得た。
本例の製造方法では、二軸押出機10のスクリュー12a,12bの流路13に、28℃の冷却水を供給した。各スクリュー12a,12bから排出された冷却水の温度は55℃であった。
得られた水性分散体の平均粒子径、未乳化物の質量割合の測定結果を表1に示す。
【0045】
[製造例2]
二軸押出機10のスクリュー12a,12bの流路13に導入する冷却水の温度を4℃とした以外は製造例1と同様にして、水性分散体を得た。
得られた水性分散体の平均粒子径、未乳化物の質量割合の測定結果を表1に示す。
【0046】
[製造例3]
本例では、まず、三洋化成(株)製の無水カルボン酸変性ポリプロピレン「ユーメックス1010」(質量平均分子量30,000、軟化点145℃、酸価52mg/g)と、該無水カルボン酸変性ポリプロピレン100質量部に対して8質量部のオレイン酸カリウムとを混合した。これにより得た混合物を、第1の供給手段40により、二軸押出機10に166kg/時間で供給した。その際、二軸押出機10のバレル11内温度を230℃に設定した。
また、水性媒体である20質量%水酸化カリウム水溶液22質量部を、第2の供給手段50によりバレル11の中間部に供給した。そして、二軸押出機10により、無水カルボン酸変性ポリプロピレンとオレイン酸カリウムと水性媒体とを連続的に溶融混練した。
得られた混練物を、二軸押出機10出口側に設置した冷却機20であるジャケット付スタティックミキサーで90℃まで冷却した。そして、冷却機20から吐出した吐出物を80℃の温水中に投入し、固形分濃度39質量%になるように調整して、水性分散体を得た。
本例の製造方法では、二軸押出機10のスクリュー12a,12bの流路13に導入する冷却水の温度を72℃とした。
得られた水性分散体の平均粒子径、未乳化物の質量割合の測定結果を表1に示す。
【0047】
[製造例4]
スクリュー12a,12bの流路13に導入する冷却水の温度を65℃とした以外は製造例3と同様にして、水性分散体を得た。
得られた水性分散体の平均粒子径、未乳化物の質量割合の測定結果を表1に示す。
【0048】
[製造例5]
本例では、まず、三洋化成(株)製の無水カルボン酸変性ポリエチレン「ユーメックス2000」(質量平均分子量16,000、軟化点108℃、酸価30mg/g)と、該無水カルボン酸変性ポリエチレン100質量部に対して7質量部の三井ハイワックス2203Aと、10質量部のオレイン酸カリウムとを混合した。これにより得た混合物を、第1の供給手段40により、二軸押出機10に156kg/時間で供給した。その際、二軸押出機10のバレル11内温度を200℃に設定した。
また、水性媒体である20質量%水酸化カリウム水溶液32.6質量部を、第2の供給手段50によりバレル11の中間部に供給した。そして、二軸押出機10により、無水カルボン酸変性ポリエチレンとオレイン酸カリウムと水性媒体とを連続的に溶融混練した。
得られた混練物を、二軸押出機10出口側に設置した冷却機20であるジャケット付スタティックミキサーで90℃まで冷却した。そして、冷却機20から吐出した吐出物を80℃の温水中に投入し、固形分濃度32質量%になるように調整して、水性分散体を得た。
本例の製造方法では、二軸押出機10のスクリュー12a,12bの流路13に導入する冷却水の温度を34℃とした。
得られた水性分散体の平均粒子径、未乳化物の質量割合の測定結果を表1に示す。
【0049】
[製造例6]
スクリュー12a,12bの流路13に導入する冷却水の温度を5℃とした以外は製造例5と同様にして、水性分散体を得た。
得られた水性分散体の平均粒子径、未乳化物の質量割合の測定結果を表1に示す。
【0050】
[製造例7]
製造例1と同様の製造装置1および同様の原料を使用したが、スクリュー12a,12bの流路13に冷却水を流さず、大気開放とした以外は製造例1と同様にして、水性分散体を製造しようとした。しかし、冷却機から吐出した吐出物は、水に分散せず、水性分散体を得ることができなかった。
【0051】
押出機のスクリューの流路に冷却水を流した製造例1〜6の水性分散体の製造方法では、押出機が大型であっても、所望の平均粒子径の水性分散体を製造でき、また、未乳化物量を少なくできた。特に、製造例1では、小型の押出機を使用した場合と略同等の結果が得られた。
これに対し、押出機のスクリューの流路に冷却水を流さなかった製造例7の水性分散体の製造方法では、水性分散体を得ることすらできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の水性分散体の製造装置の一実施形態例を示す模式図である。
【図2】図1の水性分散体の製造装置におけるスクリューを説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
1 製造装置(水性分散体の製造装置)
10 二軸押出機
11 バレル
12a,12b スクリュー
13 流路
13a 第1の流路
13b 第2の流路
13c 第3の流路
20 冷却機
30 連結管
40 第1の供給手段
50 第2の供給手段
51 容器
52 ポンプ
53 供給管
【出願人】 【識別番号】502163421
【氏名又は名称】ユーエムジー・エービーエス株式会社
【出願日】 平成18年9月11日(2006.9.11)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義

【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦


【公開番号】 特開2008−62619(P2008−62619A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−245834(P2006−245834)