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【発明の名称】 均一性に優れたプリプレグの製造法
【発明者】 【氏名】飯塚 佳夫

【要約】 【課題】シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂とから、均一性に優れたプリプレグを製造する方法を提供する。

【構成】熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類又はハロゲン化炭素類からなる溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョン浴に、強化繊維材料からなるシートを浸漬し、樹脂粉末をシートに付着せしめ、次いでシートを浴外に取出し加熱して樹脂粉末を溶融させ、繊維材料と樹脂を一体化させて均一性に優れたプリプレグを製造するに際し、(1)複数のシートを、それぞれ導入ローラーを経て浴中に導入・浸漬する、(2)複数のシートを積層して、一枚の積層シートとして浴から導出する、(3)シートが浴中に浸漬されている間に、浴中に設置された噴射ノズルから、シートの表面及び層間にサスペンジョンを噴射する、(4)浴から導出された積層シートを、170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させる、ことからなるプリプレグの製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョン浴に、強化繊維材料からなるシートを浸漬し、樹脂粉末をシートに付着せしめ、次いで樹脂粉末が付着したシートを浴外に取出し、シートを加熱して樹脂粉末を溶融させ、強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させて均一性に優れたプリプレグを製造するに際し、
(1)複数のシートを、それぞれ導入ローラーを経てサスペンジョン浴に導入・浸漬すること、
(2)複数のシートを積層して、一枚の積層シートとして引取ローラーを経てサスペンジョン浴から導出すること、
(3)複数のシートがサスペンジョン浴に浸漬されている間に、浴中に設置された噴射ノズルから、シートの表面及び層間にサスペンジョンを噴射すること、
(4)サスペンジョン浴から導出された積層シートを、170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させること、
を特徴とする均一性に優れたプリプレグの製造法。
【請求項2】
樹脂粉末が付着したシートを加熱して樹脂粉末を溶融させた後、引き続いて上下一対の加熱・加圧ローラーを用いてローラー圧力3〜10Kg/cm、ローラー温度(Tg+15)〜(Tg+100)℃で、シートを加熱・加圧することを特徴とする請求項1記載の均一性に優れたプリプレグの製造法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂粉末の平均粒子径が、5〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の均一性に優れたプリプレグの製造法。
【請求項4】
サスペンジョン中の熱可塑性樹脂の濃度が、1〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造法。
【請求項5】
プリプレグ中の熱可塑性樹脂の含有率が、10〜70重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度が、150℃以上の結晶性又は非晶性の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族又は脂肪族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドなる群から選ばれた1種若しくは2種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造法。








【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の強化繊維材料とこれに含浸せしめられた熱可塑性樹脂とから、均一性に優れたプリプレグを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維材料は、各種のマトリックス樹脂と複合化され、得られる強化繊維複合材料は種々の分野・用途に広く利用されるようになってきた。そして、高度の機械的特性や耐熱性等を要求される航空・宇宙分野や、一般産業分野では、従来、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されてきた。しかし、特に航空・宇宙分野では、これらのマトリックス樹脂は、脆く、耐衝撃性に劣るという欠点を有するため、その改善が求められてきた。また、熱硬化性樹脂の場合、これをプリプリグとしたとき、樹脂のライフ等によるプリプレグの保存管理上の問題点や、成形時間が長く生産性が低い等の問題もあった。
【0003】
これに対して、熱可塑性樹脂プリプレグの場合は、複合材料としたときの耐衝撃性が優れ、プリプレグの保存管理が容易で、かつ成形時間が短く、成形コスト低減の可能性もある。熱可塑性樹脂プリプレグの製造法としては、従来、例えば、フイルム状の樹脂を加熱溶融して強化繊維材料に含浸させる方法(溶融含浸法)、粉末状の樹脂を流動床法や懸濁法によって強化繊維材料に塗布・融着させる方法(パウダー法)、樹脂を溶液化し、強化繊維材料に含浸後溶媒を除去する方法(溶液含浸法)が知られている。しかしながら、溶融含浸法は、樹脂の溶融粘度が高いため繊維材料の内部にまで均一に樹脂を含浸させるのが困難であり、パウダー法では、樹脂の付着量を調整するのが難しく、溶液含浸法では、使用できる樹脂や溶媒の種類が制限されるという問題点・欠点があった。
【0004】
従来技術を改良したプリプレグの製造方法として、熱可塑性樹脂の粉末をアルコール等の有機溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒に分散させてサスペンジョンとし、かかるサスペンジョンに炭素繊維のストランド又はシートを浸漬し、樹脂粉末をストランド又はシートに付着させた後加熱して、樹脂を溶融させて熱可塑性樹脂と炭素繊維のストランド又はシートを一体化させる方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によると、樹脂が比較的均一に含浸したプリプレグ(含浸樹脂量のバラツキ値が4.2〜5.0)が得られること、更にサスペンジョンに通電処理を行う方法を組合わせると、バラツキ値が2.8〜3.8のものも得られたことが例示されている。しかしながら、最近の特に航空・宇宙分野の材料としては、より一層均一性等に優れたプリプレグが求められるようになっており、しかもその製造法も出来るだけシンプルなものである必要がある。
【特許文献1】特公平4−12894号公報
【0005】
本発明者も、シート状の強化繊維材料に熱可塑性樹脂を含浸させてプリプレグを製造するに当たり、熱可塑性樹脂粉末を、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の有機溶媒又はかかる有機溶媒と水との混合溶媒に分散させたサスペンジョンを用いて、特定の加工条件を採用することにより、均一性と表面平滑性に優れたプリプレグを製造する方法を提案した(特許文献2〜3参照)。しかしながら、かかる提案の方法では、得られたプリプレグの性能は優れたものであるが、樹脂粉末を含むサスペンジョン浴中で、強化繊維材料に樹脂粉末を均一に付着させるという点で、より改良の余地があった。
【特許文献2】特開2005−238596号公報
【特許文献3】特開2005−239843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シート状の強化繊維材料とこれに含浸せしめられた熱可塑性樹脂とからなる、ボイドが少なくかつ厚みのバラツキも少ない均一性に優れたプリプレグを、安定に製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョン浴に、強化繊維材料からなるシートを浸漬し、樹脂粉末をシートに付着せしめ、次いで樹脂粉末が付着したシートを浴外に取出し、シートを加熱して樹脂粉末を溶融させ、強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させて均一性に優れたプリプレグを製造するに際し、
(1)複数のシートを、それぞれ導入ローラーを経てサスペンジョン浴に導入・浸漬すること、
(2)複数のシートを積層して、一枚の積層シートとして引取ローラーを経てサスペンジョン浴から導出すること、
(3)複数のシートがサスペンジョン浴に浸漬されている間に、浴中に設置された噴射ノズルから、シートの表面及び層間にサスペンジョンを噴射すること、
(4)サスペンジョン浴から導出された積層シートを、170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させること、
を特徴とする均一性に優れたプリプレグの製造法である(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート状の強化繊維材料に熱可塑性樹脂を含浸させてなるプリプレグを、安定に且つ効率良く製造することができる。そして、得られたプリプレグは、これを用いて色々な用途の強化繊維複合材料に成形でき、プリプレグの均一性が高いが故に、得られた複合材料の機械的特性や耐熱性等の物性が非常に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョン浴に、強化繊維材料からなるシートを浸漬し、樹脂粉末をシートに付着せしめるものであるが、(1)複数のシートは、それぞれ導入ローラーを経てサスペンジョン浴に導入・浸漬されること、(2)その後、複数のシートは積層され、一枚の積層シートとして引取ローラーを経てサスペンジョン浴から導出されること、そして、(3)複数のシートがサスペンジョン浴に浸漬されている間に、浴中に設置された噴射ノズルから、シートの表面及び層間にサスペンジョンが噴射されること、を特徴とするものである。
【0010】
本発明における強化繊維材料からなるシートへ樹脂粉末を付着させる工程の一例について、図を用いて説明する。図1において1はサスペンジョン浴、2aと2bは共に強化繊維材料からなるシート、3aと3bは共にシートの導入ローラー、4は積層シートの引取ローラー、5a〜5eはガイドローラー、6a、6b、6cは共に噴射ノズル、7は積層シートである。
【0011】
強化繊維材料からなるシート2aと2bは、それぞれ導入ローラー3aと3bを経て、サスペンジョン浴1に導入・浸漬される。そのままでもサスペンジョン浴中の樹脂粉末はシートに付着するが、本発明においては、シートがサスペンジョン浴中に浸漬されている間に、浴中に設置された噴射ノズル6a〜6cから、シートの表面及び層間にサスペンジョンを噴射することを特徴とする。このようにサスペンジョンを噴射することによって、シート表面に樹脂粉末が十分に付着し、かかるシートを複数積層し一枚の積層シート7としたときに、各シートの層間に樹脂が局在あるいは偏在する状態になる。そして、かかる積層シート7を、後述の加熱・溶融工程を通すと、樹脂がシート全体に均一に含浸され、均一性に優れたプリプレグが得られるものである。
【0012】
なお、第1図においては、強化繊維材料からなる2枚のシートを用いる例を示したが、導入ローラーを増やすことによって、3枚、4枚あるいはそれ以上のシートを用いて一枚の積層シートを作成することもできる。また、ガイドローラーは、それぞれのシートをサスペンジョン浴に十分に浸漬できる配置になっている限り、その数や配置位置に制限はない。また、浴中に設置された噴射ノズルの数や設置位置も、シートの表面及び層間にサスペンジョンを十分に噴射することができる限り特に制限はないが、通常は、2〜10個設置するのが好ましい。
【0013】
本発明において、強化繊維材料からなるシートとは、繊維材料を一方向にシート状に引き揃えたもの、これらを例えば直交に積層したもの、繊維材料を織物や編物や不織布等の布帛に成形したもの、編組等のストランド状のものを全て含むが、ストランド状の繊維材料を一方向にシート状に引き揃えたものが好ましい。強化繊維材料としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維又はそれらの混合からなる繊維材料がある。具体的には、無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維を挙げることが出来る。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維が挙げられる。好ましいのは、炭素繊維とアラミド繊維である。
【0014】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、融点又はガラス転移温度が、150℃以上の結晶性又は非晶性の熱可塑性樹脂が好ましい(請求項6の発明)。好ましい樹脂の具体例は、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族又は脂肪族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド(請求項7の発明)である。これらの樹脂は、2種以上併用しても良い。航空機用のプリプレグのためには、特にポリエーテルイミド(PEI)又はポリイミド(PI)が好ましい。
【0015】
本発明において樹脂粉末は、強化繊維材料への良好な付着(繊維間あるいは繊維表面に樹脂粉末が保持された状態)を考慮すると、樹脂粉末の粒子径は50μm以下で、取扱性の点からは1μmを下回らないのが良く、平均粒子径が5〜20μmの範囲のものが好ましい(請求項3の発明)。本発明の範囲の粒度の熱可塑性樹脂粉末は、後述の分散媒に分散させたとき、その分散性(サスペンジョン浴内の樹脂粉末のバラツキ)が安定しており、長時間生産においても、繊維材料に樹脂粉末を安定的に付着できるという特徴がある。
【0016】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂を分散させるための分散媒は、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒である。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ等が、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が、ハロゲン化炭化水素類としては、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。中でも好ましいのは、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンあるいはそれらと水との混合溶媒、又は水である。かかる分散媒は、シート状の強化繊維材料を浸漬させたとき繊維材料を適度に開繊させるという作用もあるので、サスペンジョン中の樹脂粉末が繊維材料に均一に付着するのに効果的である。
【0017】
熱可塑性樹脂とそれを分散させるための分散媒(溶媒)との組合わせは、樹脂が溶媒に溶解するものであってはならず、樹脂が溶媒に膨潤するかあるいは溶解しないものである必要がある。
【0018】
サスペンジョン中の熱可塑性樹脂の濃度(熱可塑性樹脂重量/(分散媒重量+熱可塑性樹脂重量)×100)は、1〜50重量%(請求項4の発明)、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。
【0019】
シート状の強化繊維材料を浸漬させるときのサスペンジョンの温度は、樹脂の分散状態が良好に保たれる限り特に制限はなく、また、用いられる熱可塑性樹脂や分散媒の種類、濃度によって異なるが、通常は5〜50℃、好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは15〜30℃である。浸漬時間は、熱可塑性樹脂の付着量にも依存するが、通常は5〜180秒間で十分である。
【0020】
本発明においては、複数のシートがサスペンジョン浴に浸漬されている間に、浴中に設置された噴射ノズルから、シートの表面及び層間にサスペンジョンを噴射することを特徴とする。シートの表面及び層間にサスペンジョンが噴射される限り、噴射ノズルの形状や位置や数に特に制限はない。噴射条件についても特に制限はなく、サスペンジョンが満遍なくシート表面及び層間に行きわたるようにすれば良い。
【0021】
前記の様な条件の下で、通常、シート状の強化繊維材料には10〜70重量%(繊維材料と熱可塑性樹脂の合計量に対して)(請求項5の発明)の熱可塑性樹脂粉末が付着するが、プリプレグの製造上は20〜50重量%が好ましい。
【0022】
図1において、サスペンジョン浴1から引取ローラー4を経て導出された強化繊維材料からなる積層シート7は、通常は、乾燥機(図示せず)に導入され分散媒を除去することによって乾燥される。乾燥条件・方法等は特に限定されるものではないが、通常、熱可塑性樹脂が分解又は反応しない温度下で乾燥される。一般的には、80〜200℃で1〜20分間乾燥される。
【0023】
次いで、強化繊維材料からなる積層シートは、170〜390℃でシートに付着した樹脂粉末が溶融する程度に加熱され、強化繊維材料と熱可塑性樹脂が一体化される。
【0024】
本発明においては、樹脂粉末の付着の均一性をより上げるために、シート状の強化繊維材料の浸漬時に、繊維材料とサスペンジョン浴との間で直流電流による通電処理を行っても良い。例えば、繊維材料が接触する浴外の電極ローラーを陽極とし、サスペンジョン浴中に陰極を設け、浴中にある繊維材料の単位表面積当たり、電流密度が0.001〜5A/mとなるように通電すれば良い。
【0025】
本発明において、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂の接着力をより高めるためには、シート状の強化繊維材料に繊維の集束剤、油剤、糊剤等が付着している場合には、事前にこれらを除去しておく方が望ましい。また、必要な場合には、事前に繊維材料の開繊処理や、電解や薬品による表面処理を行っておいても良い。
【実施例】
【0026】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。各実施例及び比較例において、得られたプリプレグの均一性の評価は、シート状の強化繊維材料への樹脂の含浸性の良否を示すボイド率及び顕微鏡による断面観察で相対的に評価し、十分に平滑(◎)、かなり平滑(○)、平滑性に劣る(×)で示した。ボイド率は硫酸分解法により測定した。
【0027】
[実施例1]
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(Victrex製PEEK)粉末(粒度分布、10%:8μm、50%:12μm、90%:17μm)をアセトンに分散させ、7%濃度のサスペンジョンを調整した。炭素繊維A(東邦テナックス社製HTA、単繊維直径5.0μm、12,000本)を平行に40本引き揃えてシートとし、シートの炭素繊維の目付が145g/mになるよう調整した。そして、シートを2枚に分けて、図1に示したような装置と操作によって、2枚のシートを上記サスペンジョン浴中に導入し、約30秒間浸漬し、樹脂の付着量が35±3重量%になるように調整し、1枚の積層シートとしてスペンジョン浴から導出した。引き続いて、得られた積層シートを150℃で1〜5分間乾燥させ、表面温度が380〜390℃のローラーに通し樹脂を溶融させ含浸させた。得られたプリプレグのボイド率及び顕微鏡観察結果は表1に示した通りであった。
【0028】
[比較例1]
1枚のシートを用い、それ以外は実施例1と同じ条件でプリプレグを得た。この比較例では、樹脂が十分含浸していないので均一性を満足していなかった。得られたプリプレグのボイド率及び顕微鏡観察結果は表1に示した通りであった。
【0029】
[実施例2]
熱可塑性樹脂としてPPS(ポリフェニレンサルファイド、大日本インキ製)の粉末(平均粒子径:10μm)を用い、これをアセトンに分散させ、7%濃度のサスペンジョンを調整した。サスペンジョン浴に、実施例1の炭素繊維と同じシート状の強化繊維材料を2枚用いて、実施例1の場合と同様にして約30秒間浸漬し、樹脂の付着量が35±3重量%になるように調整し、1枚の積層シートとしてスペンジョン浴から導出した。引き続いて、150℃で1〜5分間乾燥させ、表面温度が330〜350℃のローラーに通し樹脂を溶融させ含浸させた。得られたプリプレグのボイド率及び顕微鏡観察結果は表1に示した通りであった。
【0030】
[比較例2]
シートを分けずに1枚とし、それ以外は実施例2と同じ条件でプリプレグを得た。この比較例では、樹脂が十分に含浸していないので、均一性を満足していなかった。得られたプリプレグのボイド率及び顕微鏡観察結果は表1に示した通りであった。
【0031】
[実施例3]
ポリプロピレン(PP)樹脂(出光石化製)粉末(平均粒子径13μm)をアセトンに分散させ、7%濃度のサスペンジョンを調整した。実施例1の炭素繊維と同じシート状の強化繊維材料(3枚)を約30秒間浸漬し、樹脂の付着量が30±3重量%になるように調整し、1枚の積層シートとしてスペンジョン浴から導出した。引き続いて、150℃で1〜5分間乾燥させ、表面温度が170〜180℃のローラーに通し、樹脂を溶融させ含浸させた。得られたプリプレグのボイド率及び顕微鏡観察結果は表1に示した通りであった。
【0032】
[比較例3]
シートを分けずに一枚とし、それ以外は実施例3と同じ条件でプリプレグを得た。この比較例では、樹脂が十分含浸していないので均一性を満足していなかった。得られたプリプレグのボイド率及び顕微鏡観察結果は表1に示した通りであった。
【0033】
表1の結果から、本発明の複数シートに分けた条件内にある場合に限って、ボイド率と内部状態から見る樹脂含浸性が十分に満足すべきものが得られていることがわかる。
【0034】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の均一性と表面平滑性に優れたプリプレグは、目的に応じて、積層し、再度加熱、加圧して実質的に均一構造の複合材料に成形することが出来る。得られた複合材料は、優れた耐衝撃性等の機械的性質や優れた耐熱性等を有するので、航空・宇宙分野や一般産業分野に広く使用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のプリプレグの製造工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1 サスペンジョン浴
2a、2b 強化繊維材料からなるシート
3a、3b 導入ローラー
4 引取ローラー
5a〜5e ガイドローラー
6a、6b、6c 噴射ノズル
7 積層シート


【出願人】 【識別番号】000003090
【氏名又は名称】東邦テナックス株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100077263
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博


【公開番号】 特開2008−44165(P2008−44165A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−220241(P2006−220241)