| 【発明の名称】 |
ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法および該ペレットから形成されたシリコンウエハーまたは磁気ディスクの収納搬送容器 |
| 【発明者】 |
【氏名】阿部 吉明
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| 【要約】 |
【課題】シリコンウエハーや磁気ディスク等の薄板の表面汚染を低減できる収納搬送容器に好適なポリカーボネート樹脂材料を提供する。
【構成】ポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法において、二軸押出機としてベントの上流側に少なくとも1つの水注入部を有する二軸押出機を用い、水注入部から水を注入すると共にベントの真空度を6.7kPa以下に調整し、且つ、水注入部直下の混練部のスクリュー構成を、上流側からシールリング、直交ニーディングディスクまたは順送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、シールリングの順の構成とし、混練部の各スクリューエレメントの長さを0.25D〜1.0Dの範囲とし、混練部のL2/Dを1〜4の範囲とすることを特徴とするポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法およびポリカーボネート樹脂ペレットから形成されるシリコンウエハーまたは磁気ディスクの収納搬送容器。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリカーボネート樹脂粉粒体を二軸押出機を用いて溶融押出し、ペレタイズしてポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法において、該二軸押出機としてベントの上流側に少なくとも1つの水を注入する機構(水注入部)を有するベント付き二軸押出機を用いて、該水注入部から水を注入すると共にベントの真空度を6.7kPa以下に調整し、且つ、該水注入部直下の混練部のスクリュー構成を、上流側からシールリング、直交ニーディングディスクまたは順送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、シールリングの順の構成とし、該混練部の各スクリューエレメントの長さ(L1)を0.25D〜1.0D(D;シリンダーの内径)の範囲とし、該混練部のL2/D(L2;混練部の長さ)を1〜4の範囲とすることを特徴とするポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。 【請求項2】 前記二軸押出機は、そのスクリュー構成全体のL3/D(L3;スクリュー全体の長さ)が28〜49の範囲である請求項1記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。 【請求項3】 前記二軸押出機は、そのベント数が2〜6箇所であり、水注入部が1〜5箇所である請求項1記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。 【請求項4】 各水注入部における水注入量が、ポリカーボネート樹脂100重量部当り0.1〜5重量部である請求項1記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。 【請求項5】 請求項1記載の製造方法により得られたポリカーボネート樹脂ペレットから形成されたシリコンウエハーまたは磁気ディスクの収納搬送容器。 【請求項6】 ポリカーボネート樹脂成形品を水中で80℃、24時間加熱処理した後に、該成形品から水中に溶出した塩素イオン量が10ng/cm2以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品。 【請求項7】 請求項6記載の成形品が、シリコンウエハーまたは磁気ディスクの収納搬送容器であるポリカーボネート樹脂成形品。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、シリコンウエハーや磁気ディスク等の収納搬送容器用の材料として好適に使用されるポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法およびその成形品に関する。 【背景技術】 【0002】 一般に、シリコンウエハーや磁気ディスクなどの表面汚染に敏感な薄板を収納運搬するための容器は、シリコンウエハー表面を常に正常に保って輸送できることが重要である。 最近、シリコンウエハーの大口径化と共に容器からのウエハー表面への汚染に対する要求がより厳しくなり、同時により高強度の材料が求められるようになった。そして、ウエハーだけでなく、磁気ディスク収納搬送容器に関しても同様の要求がある。この要求に適した成形材料としてポリカーボネート樹脂あるいはこれを主成分とする樹脂組成物を用いる試みがなされるようになった。 【0003】 例えば、特許文献1〜4では、ポリカーボネート樹脂中の不純物を除去することや、高温で加熱して発生する揮発ガスの量を低減することで、シリコンウエハーの表面の汚染を防止する方法が記載されている。しかしながら、シリコンウエハーや磁気ディスク用の収納搬送容器は一度だけの使用でなく、水洗して繰り返し利用されるため、上記特許文献1〜4に記載された収納搬送容器では水洗することによりイオン性の不純物が溶出され、容器の表面に付着したイオン性不純物がウエハー等の表面を汚染するという問題があった。 【0004】 一方、溶融押出時に水を注入してポリカーボネート樹脂中の不純物を除去する方法が提案されている。特許文献5〜7には、ポリカーボネート樹脂粉末をベント付き押出機で少量の水を注入しながら押出す方法が提案されている。しかしながら、これらの方法はポリカーボネート樹脂中の不純物や塩素化合物をある程度除去できるものの、上述したようなウエハー等用の収納搬送容器の材料としては不十分であった。 【0005】 【特許文献1】特開平10−211686号公報 【特許文献2】特開平11−241012号公報 【特許文献3】特開2000−043436号公報 【特許文献4】特開2000−063505号公報 【特許文献5】特公平05−048162号公報 【特許文献6】特公平07−002364号公報 【特許文献7】特開平09−193230号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、表面汚染に敏感なシリコンウエハーや磁気ディスク等の薄板の表面汚染を低減できる収納搬送容器に好適に使用されるポリカーボネート樹脂材料を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、二軸押出機のスクリュー構成を特殊な構造として水注入直後の混練性能を高めて、ポリカーボネート樹脂を効率良く混練し水を分散混合させた後にベントで脱揮すれば脱揮効率が向上し、塩素化合物の含有量が少ないポリカーボネート樹脂ペレットを得ることができ、このペレットを材料として得られた成形品は、水洗しても発生する塩素イオンが少なく、シリコンウエハーや磁気ディスク等の収納搬送容器として好適に使用できることを見出し、本発明に到達した。 【0008】 すなわち、本発明によれば、 1.ポリカーボネート樹脂粉粒体を二軸押出機を用いて溶融押出し、ペレタイズしてポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法において、該二軸押出機としてベントの上流側に少なくとも1つの水を注入する機構(水注入部)を有するベント付き二軸押出機を用いて、該水注入部から水を注入すると共にベントの真空度を6.7kPa以下に調整し、且つ、該水注入部直下の混練部のスクリュー構成を、上流側からシールリング、直交ニーディングディスクまたは順送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、シールリングの順の構成とし、該混練部の各スクリューエレメントの長さ(L1)を0.25D〜1.0D(D;シリンダーの内径)の範囲とし、該混練部のL2/D(L2;混練部の長さ)を1〜4の範囲とすることを特徴とするポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法、 2.前記二軸押出機は、そのスクリュー構成全体のL3/D(L3;スクリュー全体の長さ)が28〜49の範囲である前項1記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法、 3.前記二軸押出機は、そのベント数が2〜6箇所であり、水注入部が1〜5箇所である前項1記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法、 4.各水注入部における水注入量が、ポリカーボネート樹脂100重量部当り0.1〜5重量部である前項1記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法、 5.前項1記載の製造方法により得られたポリカーボネート樹脂ペレットから形成されたシリコンウエハーまたは磁気ディスクの収納搬送容器、 6.ポリカーボネート樹脂成形品を水中で80℃、24時間加熱処理した後に、該成形品から水中に溶出した塩素イオン量が10ng/cm2以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品、および 7.前項6記載の成形品が、シリコンウエハーまたは磁気ディスクの収納搬送容器であるポリカーボネート樹脂成形品、 が提供される。 【0009】 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶剤の存在下界面重合法で反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂である。ここで用いる二価フェノールとしては例えばハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(通称ビスフェノールZ)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルオキシド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン等があげられる。なかでもビスフェノールA、ビスフェノールZ、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。 【0010】 カーボネート前駆体としてはカルボニルハライドまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲンまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。 上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。 【0011】 界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤、触媒および有機溶媒の存在下に反応させる。 酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。 【0012】 有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、ブロモエタン、ブチルクロライド、クロロプロパンおよびクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられ、特に塩化メチレンが好ましく用いられる。これらの溶媒は単独もしくは2種以上混合して使用される。 【0013】 また、反応促進のために用いるアミン系触媒としては、例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒が挙げられ、特にトリエチルアミンが好ましく用いられる。 界面重縮合法による反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つことが好ましい。 【0014】 また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。 【0015】 これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少くとも10モル%末端に導入されることが望ましく、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。 【0016】 ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で1×104〜4×104が好ましく、1.3×104〜3×104がより好ましく、1.6×104〜2.4×104が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。かかる粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。 ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度) [η]=1.23×10−4M0.83 c=0.7 【0017】 上記反応により得られたポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液は、通常水洗浄が施される。この水洗工程は、好ましくはイオン交換水等の電気伝導度10μS/cm以下、より好ましくは1μS/cm以下の水により行われ、前記有機溶媒溶液と水とを混合、攪拌した後、静置してあるいは遠心分離機等を用いて、有機溶媒溶液相と水相とを分液させ、有機溶媒溶液相を取り出すことを繰り返し行い、水溶性不純物を除去する。水洗浄を行うことにより水溶性不純物が除去され、得られるポリカーボネート樹脂の色相は良好なものとなる。 【0018】 また、上述のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液は、触媒等の不純物を除去するために酸洗浄やアルカリ洗浄を行うことも好ましい。 酸洗浄に用いる酸としてはりん酸、塩酸、硫酸等の水溶液が好ましく用いられ、好ましくは0.0004〜40g/リットル濃度(またはpH5以下)の水溶液が使用される。アルカリ洗浄に用いるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物が挙げられ、特に水酸化ナトリウムが好ましく用いられ、好ましくは0.1〜20g/リットル濃度(またはpH11.5以上)の水溶液が使用される。 【0019】 アルカリ洗浄や酸洗浄に用いる水溶液と有機溶媒溶液との割合は、水溶液/有機溶媒溶液(容量比)で表して0.2〜1.5の範囲で用いるのが、洗浄が効率的に行われ好ましい。 前記水洗浄が施された有機溶媒溶液は、次いで、溶媒を除去してポリカーボネート樹脂の粉粒体を得る操作が行われる。 【0020】 ポリカーボネート樹脂粉粒体を得る方法(造粒工程)としては、操作や後処理が簡便なことから、ポリカーボネート粉粒体および温水(40〜90℃程度)が存在する造粒装置中に、攪拌状態で、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を連続的に供給して、該溶媒を蒸発させることにより、スラリーを製造する方法が好ましく採用される。造粒装置としては攪拌槽やニーダーなどの混合機が好ましく採用される。 【0021】 かかるスラリーは、次いで熱水処理を行うこともできる。熱水処理工程は、かかるスラリーを90〜100℃の熱水の入った熱水処理容器に供給するかまたは供給した後に蒸気の吹き込みなどにより水温を90〜100℃にすることによって、スラリーに含まれる有機溶媒を除去するものである。 【0022】 前記造粒工程で排出されたスラリーまたは前記熱水処理後のスラリーは、好ましくは濾過、遠心分離等によって水および有機溶媒をある程度除去し、ポリカーボネート樹脂の湿潤ペーストを回収する。 【0023】 前記ポリカーボネート樹脂の湿潤ペーストは、次いで乾燥される。乾燥機としては、伝導加熱方式でも熱風加熱方式でもよく、ポリカーボネート樹脂が静置、移送されても攪拌されてもよい。なかでも、伝導加熱方式でポリカーボネート樹脂が攪拌される溝形または円筒乾燥機が好ましく、溝形乾燥機が特に好ましい。乾燥温度は130℃〜150℃の範囲が好ましく採用される。 【0024】 本発明において、混練押出処理に供給される芳香族ポリカーボネート樹脂の形状は、粉末状、微粒状、フレーク状、ペレット状のもののいずれであってもよく、好ましくは粉末状、微粒状またはフレーク状のものである。 【0025】 本発明において、混練押出処理に供給される芳香族ポリカーボネート樹脂は、その樹脂中の塩素原子含有量が5〜2000ppmの範囲のものが好ましく、5〜1500ppmの範囲がさらに好ましい。塩素原子含有量が上記範囲であると本発明の目的が効果的に達成される。 【0026】 本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体の混練押出に用いる押出機は、通常使用されるベント付き二軸押出機である。ベントの数は2箇所以上のものが好ましく、より好ましくは2〜6箇所であり、さらに好ましくは3〜5箇所である。なお、ベントの数が1箇所では得られたポリカーボネート樹脂成形品中の残存塩素イオン量が多くなり易く、またベント数が多くなりすぎると押出機のスクリュー構成全体のL3/D(L3;スクリュー全体の長さ、D;シリンダーの内径)が長くなるため樹脂のヤケや樹脂劣化等の悪影響が発生し易くなる。 【0027】 また、該二軸押出機には、ベントの上流側に少なくとも1つの水を注入する機構(水注入部)が設置され、該水注入部はベントの数より少なくてもよく、1〜5箇所が好ましく、2〜3箇所がより好ましい。水注入箇所が2箇所以上になると、本発明の目的であるポリカーボネート樹脂成形品中の残存塩素イオン量の低減が達成され易く好ましい。なお、ベント上流側の水注入箇所は各ベント全てに設置する必要はなく、必要に応じて水注入位置を決定すればよい。かかる押出機のスクリュー構成全体のL3/Dは好ましくは28〜49の範囲であり、より好ましくは31.5〜45.5の範囲である。 【0028】 本発明において、水を注入する箇所(水注入部)直下における混練部のスクリュー構成が重要である。かかるスクリュー構成は上流側から、シールリング、直交ニーディングディスクまたは順送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、シールリングの順に構成される。 【0029】 ここで使用されるニーディングディスクは二条ネジ型のものが好ましい。ニーディングディスクのネジレ角は好ましくは15度〜90度、より好ましくは45度〜90度であり、各ニーディングディスクは、複数のディスクで構成され、ディスク枚数は好ましくは3〜7枚、より好ましくは4〜6枚である。 【0030】 また、混練部の各スクリューエレメントの長さ(L1)は、0.25D〜1.0Dの範囲であり、好ましくは0.5D〜0.75Dの範囲である。 さらに、上記シールリングからシールリングまでのマテリアルシール機構を有する混練部のL2/D(L2;混練部の長さ)は1〜4の範囲であり、好ましくは1.5〜3.5の範囲である。 【0031】 水注入部直下の混練部を上述したようなスクリュー構成とすることにより、ポリカーボネート樹脂中の塩素化合物の含有量が低減され、得られたペレットから形成された成形品は、水による塩素イオンの溶出量が少なく、シリコンウエハーや磁気ディスクの収納搬送容器として好適に使用される。 【0032】 水注入部から添加する水注入量は、あまりに少ないと水注入添加の効果が発現せず、得られるポリカーボネート樹脂ペレット中の塩素原子含有量が低減されず、また、あまりに多くなるとベント部における脱気が不十分になり、ポリカーボネート樹脂に対し加水分解等の悪影響を及ぼすようになるので、各水注入部における水注入量は、ポリカーボネート樹脂100重量部当り0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましい。 【0033】 また、注入する水は25℃で測定した電気伝導度が1μS/cm以下であることが望ましく、さらに0.5μS/cm以下が望ましい。かかる1μS/cm以下の電気伝導度の水を使用すると、ポリカーボネート樹脂の加水分解がより起こり難くなり、樹脂の分子量低下が抑制され好ましい。 【0034】 さらに、二軸押出機の各ベントにおける真空度は、6.7kPa以下であり、2.0kPa以下が好ましい。真空度がかかる範囲であれば、注入添加した水がベント部で十分に除去され、塩素原子量が少なくなるとともに、芳香族ポリカーボネート樹脂に加水分解等の悪影響を及ぼすことがなく好ましい。 また、ポリカーボネート樹脂を混練押出する際の樹脂温度は、ポリカーボネート樹脂の分子量等により適宜設定され、270〜320℃程度が好ましく用いられる。 【0035】 前述した方法により得られたポリカーボネート樹脂ペレットは、押出成形や射出成形等通常の方法により成形される。かかるポリカーボネート樹脂ペレットより形成された成形品は、水により溶出する塩素イオン量が著しく低下する。具体的には、ポリカーボネート樹脂成形品を水中で80℃、24時間加熱処理した後に、該成形品から水中に溶出した塩素イオン量が10ng/cm2以下であり、好ましくは9ng/cm2以下である。下限は特に限定されないが0.5ng/cm2以下にすることは困難である。かかる成形品はシリコンウエハーや磁気ディスクの収納搬送容器として好適に使用される。 【発明の効果】 【0036】 本発明によれば、水注入部の混練部において、水分散効果の優れたスクリューを具備したマテリアルシール機構を有するベント付き二軸押出機を用いて、ポリカーボネート樹脂を溶融押出しすることにより、シリコンウエハーや磁気ディスク等の表面汚染を低減できる収納搬送容器を形成する材料として好適に使用されるポリカーボネート樹脂ペレットを得ることができ、その奏する工業的効果は格別のものがある。 【実施例】 【0037】 以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。尚、実施例中の部は重量部であり、%は特に断らないかぎり重量%を示す。評価は下記の方法で行った。 【0038】 (1)塩素イオン量:ポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形して得られた厚さ1mmの試料板を縦20mm、横25mmの大きさに切り取り、抽出用パックに入れ超純水15cm3を加えて密閉し、80℃で24時間加熱した後、室温まで放冷し、次いでイオンクロマトグラフィで水中のCl−の定量を行い、成形品の表面積1cm3当たりのCl−の抽出量を求めた。なお、使用した装置および条件は下表1のとおりである。 【0039】 【表1】
【0040】 (2)塩素原子含有量:ポリカーボネート樹脂ペレットを完全燃焼させ、生成した塩化水素(HCl)を銀イオン(Ag+)で電位滴定し、この電位滴定に要した電気量より塩素原子含有量を求めた。 【0041】 (3)色相(ペレットのb値):色相計(日本電色(株)製Z−II)を用いて、b値を測定した。b値が高いほど黄色みを帯びており、ポリカーボネート樹脂の溶融押出時における熱安定性が劣っていたことを示す。 【0042】 [実施例1〜7および比較例1〜4] ベント数が3箇所(ホッパーに近いベントからV1、V2、V3という)で、ベントV2、V3の直前に水注入部(原料供給ホッパーに近い水注入箇所からW1、W2という)を設けたスクリュー径30mmφの二軸押出機[(株)日本製鋼所製 TEX30α、スクリュー構成全体のL3/D=45.5]により、表2記載の原料樹脂を供給し、表2記載の押出条件でストランド状に押出し、カットしてペレットを製造した。評価結果を表3に示した。 なお、表2における原料樹脂と水注入部のスクリューの記号は下記のものを示す。 【0043】 樹脂原料A:ビスフェノールAとホスゲンを塩化メチレン中で常法により反応させて得た粘度平均分子量が18500のポリカーボネート樹脂粉末(塩素原子量50ppm)である。 樹脂原料B:ビスフェノールAとホスゲンを塩化メチレン中で常法により反応させて得た粘度平均分子量が18500のポリカーボネート樹脂粉末(塩素原子量236ppm)である。 【0044】 スクリューA:押出機水注入部ノズル穴から上流側1.0Dの場所にシールリング(長さ0.5D)を配し、リングから下流へ直交ニーディングディスク(長さ0.5D;長さ0.1Dのディスク5枚で構成)を2枚、逆送りニーディングディスク(長さ0.5D;長さ0.1Dのディスク5枚で構成)を2枚の後、シールリング(長さ0.5D)を配した水注入部のスクリュー形状(混練部のスクリューエレメントのネジレ角は直交ニーディングディスクが90度で逆送りニーディングディスクが45度であり、L2/Dは3.0Dである)を有する。 【0045】 スクリューB:押出機水注入部ノズル穴から上流側1.0Dの場所にシールリング(長さ0.5D)を配し、リングから下流へ順送りニーディングディスク(長さ0.5D;長さ0.1Dのディスク5枚で構成)を3枚、逆送りニーディングディスク(長さ0.5D;長さ0.1Dのディスク5枚で構成)を1枚の後、シールリング(長さ0.5D)を配した水注入部のスクリュー形状(混練部のスクリューエレメントのネジレ角は順送りニーディングディスクが45度で逆送りニーディングディスクが45度であり、L2/Dは3.0Dである)を有する。 【0046】 【表2】
【0047】 【表3】
【0048】 [実施例8および比較例5] 実施例および比較例1で得られたペレットを使用して、シリコンウエハー用収納搬送容器を成形した。このシリコンウエハー用収納搬送容器を80℃の温水中に24時間浸漬した。その後容器を乾燥してこの容器に所定枚数のシリコンウエハーを挿入し、密閉容器内で1週間常温保持した後、シリコンウエハーを取り出し、表面の5箇所で水とウエハー表面との接触角を測定した。測定した接触角の平均を表4に示した。 【0049】 【表4】
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| 【出願人】 |
【識別番号】000215888 【氏名又は名称】帝人化成株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年7月12日(2006.7.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100099678 【弁理士】 【氏名又は名称】三原 秀子
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| 【公開番号】 |
特開2008−18594(P2008−18594A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月31日(2008.1.31) |
| 【出願番号】 |
特願2006−191325(P2006−191325) |
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