トップ :: B 処理操作 運輸 :: B28 セメント,粘土,または石材の加工

【発明の名称】 脆性材料の切断方法
【発明者】 【氏名】地引 聡

【氏名】堀田 啓文

【要約】 【課題】冷却流体で汚染することなく、亀裂面同士の密着を抑制することにより、基板の分断を容易に行える、レーザビームを用いた脆性材料の切断方法を提供する。

【解決手段】予め初期亀裂が形成された脆性材料に対して、該初期亀裂を起点としてレーザビームを相対移動させながら照射して、前記脆性材料の表面に局所加熱部を形成する工程と、該局所加熱部に冷却流体を噴射して急冷することにより、前記初期亀裂から2次亀裂を伸展させて、切断線を形成する工程と、該切断線に沿って機械力を加えることにより、前記脆性材料を分断する工程と、を備える脆性材料の切断方法において、前記切断線の形成後に、前記2次亀裂の密着を防止する工程を含むことを特徴とする脆性材料の切断方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め初期亀裂が形成された脆性材料に対して、該初期亀裂を起点としてレーザビームを相対移動させながら照射して、前記脆性材料の表面に局所加熱部を形成する工程と、
該局所加熱部に冷却流体を噴射して急冷することにより、前記初期亀裂から2次亀裂を伸展させて、切断線を形成する工程と、
該切断線に沿って機械力を加えることにより、前記脆性材料を分断する工程と、を備える脆性材料の切断方法において、
前記切断線の形成後に、前記2次亀裂の密着を防止する工程を含むことを特徴とする脆性材料の切断方法。
【請求項2】
前記2次亀裂の密着を防止する工程が、前記2次亀裂の隙間に、前記2次亀裂の密着を抑制する機能を有する液体を浸透させるものである請求項1に記載の脆性材料の切断方法。
【請求項3】
前記液体が、アルコール、または、アルコールと水の混合溶液である請求項2に記載の脆性材料の切断方法。
【請求項4】
前記アルコールが、メタノールおよび/またはエタノールである請求項3に記載の脆性材料の切断方法。
【請求項5】
前記混合溶液のアルコール濃度が、50質量%以上である請求項3に記載の脆性材料の切断方法。
【請求項6】
前記混合溶液のアルコール濃度が、50質量%を超える請求項3に記載の脆性材料の切断方法。
【請求項7】
前記混合溶液のアルコール濃度が、70質量%以上である請求項3に記載の脆性材料の切断方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料の切断方法に関し、特にレーザビームを利用した脆性材料の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガラスなどの脆性材料の切断は、基板の表面に、ダイヤモンドや超硬合金製のホイールカッターで切断線(スクライブ線)を形成し、つづいて、この切断線に機械的または熱的な方法で曲げ応力を生じさせることにより、分断する方法が知られている。
【0003】
この方法は、所定の荷重を加えて、ガラスの表面に亀裂(傷)を形成するものであり、必然的にカレット(ガラス屑)が飛散する。カレットは、ガラスの表面に付着、残存して、キズの原因となる場合や、後工程で問題となる場合がある。また、分断後の切断面にはチッピングやクラックが発生するが、これらは、ガラスの強度を低下させることが知られている。さらには、切断面が平滑でないため、切断精度の低下を招き、高い切断精度が要求される分野への適用は困難であった。
【0004】
これに対して、近年、レーザビームを利用した切断方法が注目を集めている。この方法は、レーザビームを照射して基板表面を加熱し、つづいて、適当な冷却流体を用いて急冷することにより、切断線を形成するものである。この方法によれば、高精度かつ高品質の切断が可能となるため、液晶ディスプレイなどの分野を中心に、実用化が進んでいる。
【0005】
特許第3027768号公報には、レーザビームにより脆性非金属材料を軟化点よりも低い温度に加熱し、つづいて、局所的に冷却して亀裂を生じさせることにより、前記脆性非金属材料を分断する方法が記載されている。
特開2002−346995号公報には、表面張力特性、熱伝導度特性、粘度特性に優れた冷媒を使用することにより、切断速度が向上することが記載されている。
特表2005−536428号公報には、水性界面活性剤溶液を含む冷却媒体を用いることにより、表面クラック形成後に所定の時間が経過しても、切断荷重が一定に維持されることが記載されている。
【特許文献1】特許第3027768号公報
【特許文献2】特開2002−346995号公報
【特許文献3】特表2005−536428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、次のような問題点があった。
レーザビームによる切断は、従来のホイールカッターよる切断に比較して、分断荷重が大きくなるため、基板を分断し難くなる。例えば、厚さ1.1mmの液晶用ガラス基板を切断する場合、レーザビームで切断線が形成された基板は、超硬合金製ホイールカッターで切断線が形成された基板の5倍以上の分断荷重を必要とする。
【0007】
また、もう一つの問題としては、切断線を形成してから時間が経過するにつれて、分断荷重がさらに増大して、基板の分断が一層困難になることである。
【0008】
これに対して、特表2005−536428号公報では、水性界面活性剤溶液を含む冷却媒体を用いることにより、切断荷重を一定に維持する方法が提案されている。しかしながら、このような界面活性剤は、基板表面に付着、残存して、汚れの原因となる。特に、ガラスの表面に付着した界面活性剤は、一般的な洗浄では除去することが困難である。このような汚れは、電子用途向けの製品の製造においては、大きな問題となる。また、この方法では、従来のホイールカッターによる切断に比較して、分断荷重が著しく増大することについては、何ら解決できていない。
【0009】
そこで、本発明は、以上の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、亀裂面同士の密着を抑制することにより、基板の分断を容易に行うことができ、また、冷却流体で汚染することもない、レーザビームを用いた脆性材料の切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、分断荷重が増大する原因を、以下のように考えた。すなわち、急速な加熱と冷却により形成された亀裂面には、多数の切断されたシロキサン結合が存在しており、非常に活性に富んだ状態にある。冷却流体が一般的な水の場合、この水が亀裂の隙間に浸透して、前記切断されたシロキサン結合と結合してシラノール基を形成する。この結果、2つの亀裂面のシラノール基の密度が増大して、亀裂面同士の密着性を強固なものにする。
【0011】
これに対して、本発明者らは、さらに研究を進めた結果、切断線形成後に、2次亀裂の密着を防止する工程を設けることにより、亀裂面同士の密着を抑制して、切断線形成後に基板を放置しておいても、分断荷重の増大を抑制できることを見出した。さらには、驚くべきことに、本発明者らの見出した切断方法であれば、従来に比べて、切断線形成直後の分断荷重をも大幅に低減できることが分かった。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、予め初期亀裂が形成された脆性材料に対して、該初期亀裂を起点としてレーザビームを相対移動させながら照射して、前記脆性材料の表面に局所加熱部を形成する工程と、該局所加熱部に冷却流体を噴射して急冷することにより、前記初期亀裂から2次亀裂を伸展させて、切断線を形成する工程と、該切断線に沿って機械力を加えることにより、前記脆性材料を分断する工程と、を備える脆性材料の切断方法において、前記切断線の形成後に、前記2次亀裂の密着を防止する工程を含むことを特徴とする脆性材料の切断方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、2次亀裂の密着を防止する工程が、2次亀裂の隙間に、2次亀裂の密着を抑制する機能を有する液体を浸透させるものである脆性材料の切断方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、液体が、アルコール、または、アルコールと水の混合溶液である脆性材料の切断方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、アルコールが、メタノールおよび/またはエタノールである脆性材料の切断方法である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、混合溶液のアルコール濃度が、50質量%以上である脆性材料の切断方法である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、混合溶液のアルコール濃度が、50質量%を超える脆性材料の切断方法である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、混合溶液のアルコール濃度が、70質量%以上である脆性材料の切断方法である。
【発明の効果】
【0019】
以上のような構成により本発明は、従来のレーザビームを用いた切断方法に比較して、分断荷重を大幅に低減するため、基板の分断が容易な脆性材料の切断方法を提供することができる。また、この切断方法によれば、切断線形成後に基板を放置しておいても、分断荷重の増大を抑制できるため、従来に比較して時間的な制約を受けずに、基板の分断を行うことができる。さらには、冷却流体による汚染の危険性がないため、切断工程前の清浄度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本発明の切断線の形成方法を模式的に示した。以下、本発明について、工程に従って詳細に説明する
【0021】
[初期亀裂の形成]
まず、基板1の端部に、ホイールカッターなどの手段により、予め初期亀裂2を形成する。
本発明の加工対象物である基板1は、脆性材料からなる。具体的には、ガラス、シリコン、セラミックスなどが挙げられる。
【0022】
[切断線の形成]
つづいて、前記初期亀裂2を起点として、加熱手段と冷却手段とを基板に対して相対移動させながら、基板表面に局所加熱部3と局所冷却部4とを生じさせる。この急速な加熱と冷却によって生じる熱ひずみ(引張り応力)は、初期亀裂2を押し広げるように作用する。この結果、加熱手段と冷却手段の走査方向に沿って、初期亀裂2から2次亀裂が伸展していき、切断線5が形成される。
【0023】
前記加熱手段としては、レーザビームを照射する方法が用いられる。レーザビームの照射により生じる局所加熱部3は、略楕円形状であり、その長径方向が前記走査方向と一致するように調整される。基板の加熱温度は、基板を形成する脆性材料の軟化点より低いことが望ましい。
【0024】
レーザビームの種類は特に限定されず、CO2レーザやYAGレーザなどを使用することができる。基板がガラスの場合には、10.6μmの波長を有しているCO2レーザが適している。ガラスなどの透明な材料は、この波長域に吸収帯を有するため、効率的に加熱することができる。
【0025】
前記冷却手段としては、気体と液体の混合物からなる冷却流体を、液状または霧状の形で噴射する方法が用いられる。冷却流体は、レーザビームの照射位置の後方に、所定の間隔を設けて噴射される。これにより、基板1の表面に局所冷却部4が生じる。局所加熱部3と局所冷却部4の間隔は、必要に応じて、適宜調整することができる。冷却流体に含まれる気体としては、安価であるため、空気が好ましく、圧縮性のものを用いることが好ましい。また、空気の代わりに、窒素、炭酸ガス、ヘリウムなどの不活性ガスを用いてもよい。冷却流体に含まれる液体としては、冷却効率が高く、基板表面に残存して汚れの原因となるようなものでなければ、特に制限なく用いることができ、水などを例示できる。
【0026】
[2次亀裂の密着防止処理]
つぎに、前記切断線形成後に、前記2次亀裂の密着を防止する処理を施す。2次亀裂の密着を防止する処理としては、切断線の上に2次亀裂の密着を抑制する機能を有する液体を滴下して、2次亀裂の隙間に浸透させる方法が挙げられる。このような処理を行うならば、亀裂面同士の密着が防止されて、切断線形成後に基板を放置しておいても、分断荷重の増大を抑制することができる。さらには、このような方法であれば、従来に比べて、切断線形成直後の分断荷重をも大幅に低減することができる。2次亀裂の密着を効果的に防止するためには、前記液体の滴下および浸透は、切断線形成後に速やかに行うことが望ましい。なお、前記冷却流体に含まれる液体が、2次亀裂の密着を抑制する機能を併せ持つものであれば、切断線の形成と2次亀裂の密着を防止する処理とを同時に行うことができるので、特に好ましい。
【0027】
前記液体としては、2次亀裂の密着を抑制する機能を有しており、基板表面に残存して、汚れとなるようなものでなければ、特に制限なく用いることができる。具体的には、アルコール、または、アルコールと水の混合溶液が挙げられる。アルコールとしては、特に制限なく用いることができるが、水と同等以上の揮発性を有しており、基板に残存し難いものが望ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどを用いることができる。これらの中でも、安価に入手できる点で、特にメタノールが好ましい。また、アルコールの種類は1種類に限定されるものではなく、前記の複数種のアルコールを混合して用いてもよい。例えば、エタノールとして変成エタノールを用いれば、安価であり、製造コストを低減することができる。
【0028】
前記液体が亀裂面同士の密着を抑制する原理については、必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のように考えている。例えば、アルコールを含む液体を用いた場合、2次亀裂の隙間に浸透した液体に含まれるアルコールが、亀裂面の切断されたシロキサン結合と結合して、アルコキシル基を形成する。この結果、2つの亀裂面にはアルコキシル基とシラノール基が混在した状態となり、この2種類の官能基が反発し合って、亀裂面同士の密着を抑制するように働くと推測する。
【0029】
前記液体に含まれるアルコールの濃度は、基板の分断荷重に大きく影響する。アルコールの濃度が高くなるほど、亀裂面に形成されるアルコキシル基の密度が増大するため、亀裂面同士の密着を抑制する効果が増大する。前記アルコールの濃度は、50質量%以上であることが好ましく、50質量%よりも大きいことがより好ましい。より好ましくは、70質量%以上であり、さらに好ましくは、100質量%である。ここで、アルコールの濃度が100質量%とは、原料となるアルコールに不純物として含まれるものや、空気中から吸収されるものなど、不可避的に混入する水分を除いて、意図的に水を含ませないことを意味する。
【0030】
[基板の分断]
前記切断線に沿って機械力を加えて、曲げ応力を生じさせることにより、基板を分断する。本発明の切断方法であれば、前記液体が亀裂面同士の密着を抑制するため、従来のレーザビームを用いた切断方法に比べて、分断荷重を大幅に低減することができる。また、切断線形成後に長時間放置しておいても、分断荷重が増大することなく、容易に分断することができる。なお、曲げ応力を発生させる手段としては、必ずしも機械力に限定されるものではなく、熱的な方法を用いても構わない。
【0031】
本発明の切断方法により製造した基板であれば、冷却流体による汚染がないので、切断工程前の清浄度を維持でき、切断後にわざわざ洗浄を行う必要がない。また、レーザビームを利用した切断方法を用いているので、寸法精度に優れており、カレットによるキズの発生がなく、強度が高くて割れ難い、といった特長を備えている。このような優れた品質を有する基板であれば、液晶ディスプレイなどの電子用途向けの基板として使用することができる。
【0032】
引き続き、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明する
【0033】
(実施例1)
厚さ1.1mmで、長辺寸法175mm、短辺寸法150mmの矩形のフロートガラス基板を用意した。このガラス基板の一方の主平面に、長辺を7等分、短辺を3等分するように、超硬合金製ホイールカッターで切断線6・・・(ここで、・・・は多数を表す)を形成した。このカッターホイールで形成された切断線6・・・は、基板にレーザビームで切断線5、5、5を形成した後、前記基板から試験片を切り出すためのものである(図2参照)。
【0034】
次に、前記切断線が形成された面と反対の主平面の、一方の短辺に沿って、超硬合金製ホイールカッターで初期亀裂を形成した。初期亀裂の形成位置は、短辺の中点および両端から25mmの3箇所である。
【0035】
つづいて、前記初期亀裂を起点として、基板に対して相対移動させながら、レーザビームの照射と冷却流体の噴射を行った。その結果、図2に示したように、基板1に、切断線5、5、5が形成された。前述したように、レーザビームで形成された切断線5、5、5と、前記カッターホイールで形成された切断線6・・・とは、異なる主平面に位置する。
【0036】
レーザビームは、CO2レーザ発振器(ユニバーサルレーザーシステムズ社製、ULC100−OEM型)で発生させた波長10.6μm、出力40WのCO2レーザを用いた。基板に対するレーザビームの相対移動速度は、100mm/秒であり、局所加熱部の形状は、長径30mm、短径1mmの略楕円形状であった。
冷却流体としては、メタノールと水の混合溶液と、空気とを混合したものを用いた。前記混合溶液は、メタノール(関東化学社製、鹿1級)と蒸留水を混合して、メタノール濃度が30質量%になるように調製した。冷却流体は、レーザビームによる局所加熱部の後方約5mmの位置に噴射し、噴射量は0.2mL/分であった。局所急冷部は、直径が約1mmの略円形であった。
【0037】
つぎに、前記カッターホイールで形成された切断線6・・・に沿って、基板を分断し、試験片を得た。図3に、試験片の模式図を示した。試験片11は、長辺寸法50mm、短辺寸法25mmの矩形であり、2つの長辺の中点を結ぶ位置に、レーザビームで形成された切断線5がある。なお、初期亀裂を有するものは、試験片から除外した。
【0038】
この試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所製、AGS−J型)により、3点曲げ試験を行い、分断荷重を測定した。図4に、3点曲げ試験の模式図を示した。試験片11の、レーザビームで形成された切断線5のある主平面と反対側の主平面の、切断線5の直上にあたる位置に、圧子12で荷重を負荷して、試験片11が分断したときの荷重を測定した。ここで、支点13、13は、試験片11の切断線5の形成された主平面の、両端から5mmの位置に設置した。支点間距離は、40mmであった。圧子12による荷重は、0.5mm/分の速度で負荷した。なお、切断線形成後の経過時間を変えながら、1条件につき10個の試験片を用いて、3点曲げ試験を行った。
【0039】
実施例1の初期の平均分断荷重は23.9MPaであり、1日経過後の平均分断荷重は50.2MPaであり、2日経過後の平均分断荷重は76.1MPaであった。ここで、初期とは、切断線形成直後から30分以内の時間のことを指す。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、メタノール濃度を50質量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、試験片を作製して、3点曲げ試験を行った。実施例2の初期の平均分断荷重は23.7MPaであり、1日経過後の平均分断荷重は47.2MPaであり、2日経過後の平均分断荷重は45.5MPaであった。
【0041】
(実施例3)
実施例1において、メタノール濃度を70質量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、試験片を作製して、3点曲げ試験を行った。実施例3の初期の平均分断荷重は27.3MPaであり、1日経過後の平均分断荷重は27.7MPaであり、2日経過後の平均分断荷重は38.7MPaであった。
【0042】
(実施例4)
実施例1において、メタノール濃度を100質量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、試験片を作製して、3点曲げ試験を行った。実施例4の初期の平均分断荷重は14.8MPaであり、1日経過後の平均分断荷重は19.9MPaであり、2日経過後の平均分断荷重は22.1MPaであった。
【0043】
(実施例5)
実施例4において、メタノールの代わりに、エタノール(関東化学社製、JIS1級)を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法により、試験片を作製して、3点曲げ試験を行った。実施例5の初期の平均分断荷重は、16.0MPaであり、1日経過後の平均分断荷重は17.0MPaであった。
【0044】
(比較例1)
実施例1において、メタノールと蒸留水の混合溶液の代わりに、蒸留水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、試験片を作製して、3点曲げ試験を行った。比較例1の初期の平均分断荷重は、55.6MPaであり、1日経過後の平均分断荷重は76.5MPaであり、2日経過後の平均分断荷重は79.3MPaであった。
【0045】
図5に、実施例および比較例の、分断荷重と切断線形成後の経過時間との関係を示した。実施例および比較例の結果から分かるように、メタノールを含む冷却流体を用いることにより、冷却流体が水の場合に比較して、初期の分断荷重を大幅に低減することができた。メタノール濃度が30質量%である実施例1の場合、切断線形成から1日経過後の分断荷重は、水の初期値より低くなったが、2日経過後の分断荷重は、水の初期値を超えた。これに対して、メタノール濃度が50質量%である実施例2の場合、切断線形成から2日経過しても、水の初期値より低くなった。メタノール濃度が50質量%を超えて、例えば、70質量%となる実施例3であれば、1日経過後の分断荷重が、初期値と同等のレベルまで低減した。さらにメタノール濃度が高くなって、100質量%となる実施例4であれば、長時間に渡って、極めて低い分断荷重を保ち続けた。また、メタノールの代わりにエタノールを用いた実施例5の場合にも、メタノールと同様の効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の加熱手段と冷却手段による切断線の形成を説明する図である。
【図2】切断線が形成された基板の模式図である。
【図3】試験片の模式図である。
【図4】3点曲げ試験の模式図である。
【図5】実施例および比較例の、分断荷重と切断線形成後の経過時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1:基板
2:初期亀裂
3:レーザビームの照射による局所加熱部
4:冷却流体の噴射による局所冷却部
5:レーザビームで形成された切断線
6:カッターホイールで形成された切断線
11:試験片
12:圧子
13:支点
【出願人】 【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
【出願日】 平成18年12月8日(2006.12.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−142979(P2008−142979A)
【公開日】 平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願番号】 特願2006−331285(P2006−331285)