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【発明の名称】 単結晶インゴット用内周刃切断機およびこれを用いた切断方法
【発明者】 【氏名】小川 建重

【氏名】久一 俊雄

【要約】 【課題】スラッジの堆積を抑制し、ドレッシングの頻度を低減することによって、内周刃のライフを向上させる単結晶インゴット用内周刃切断機およびこれを用いた切断方法を提供する。

【解決手段】本発明の内周刃切断機には、シリコン単結晶インゴット1を切断するための高速回転可能な内周刃2が備わっている。この内周刃2は、ドーナッツ形状のステンレス薄板製台金の内周に、ダイヤモンド砥粒層が電着されて形成されている。さらに、切削液供給ノズルとして、サプライ側切削液供給ノズル3と、クリーニング側切削液供給ノズル4を有している。そして、切削液として、比抵抗が1MΩ・cm以上の水を供給する機能を備えていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削液として、比抵抗が1MΩ・cm以上の水を供給する機能を具備することを特徴とする単結晶インゴット用内周刃切断機。
【請求項2】
単結晶インゴット用内周刃切断機を用いた単結晶インゴットの切断方法であって、
前記単結晶インゴット切断中に、切削液として、比抵抗が1MΩ・cm以上の水を供給することを特徴とする単結晶インゴットの切断方法。





【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶インゴット用内周刃切断機およびこれを用いた切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョクラルスキー法(CZ法)やフローティングゾーン法(FZ法)で育成された単結晶インゴット、例えばシリコン単結晶インゴットは、円柱状直胴部の長手方向両側にコーン状の端部を有している。このコーン状端部は、一方がクラウン、他方がテールと呼ばれている。この育成されたシリコン単結晶インゴットは、通常、次のウェーハを切り出すスライス加工工程に送られる前に、直胴部が100〜500mm程度の長さのブロック数個に切断・分割される。これは、スライス加工工程で使用される使用されるワイヤーソー等の切断機への投入仕様に合わせるためである。そして、単結晶インゴットのクラウン並びにテールは、製品にならないため切り落とされ廃棄される。
【0003】
近年、大口径化によるφ300mmシリコン単結晶の需要が増大しており、このφ300mmシリコン単結晶インゴットのブロック切断には、インゴット径が大きいため、通常、バンドソーが使用されている。しかし、バンドソーの刃厚は厚く、内周刃切断機の内周刃の約1.5倍となる。そのため、切削ロスが大きくなり問題となる。
もっとも、φ200mm以下のシリコン単結晶インゴットは、φ300mmシリコン単結晶インゴットに比べて、切断径は小さい。このため、切削ロスが少なく切断速度も速い内周刃切断機の使用が可能となる。したがって、φ200mm以下のシリコン単結晶インゴットのブロック切断においては、内周刃を使った内周刃切断機が主流となっている(例えば、特許文献1)。
そして、ブロック切断に際しては、通常、油性あるいは水溶性の切削液ではなく、水を切削液として用いている。これはウェーハへのスライス加工とは異なり、ブロック切断には厳しい加工精度や、ワークの欠け防止への配慮等が不要のため、廃液処理が容易な水のみの切削液を用いることが経済的だからである。そして、切削液としては、従来、外周切断機、バンドソーや外周研削機と同様、河川水をフィルターでろ過した工業用水を使用していた。
【0004】
しかしながら、従来の切断方法では、内周刃の砥粒の周辺に、シリコン単結晶切削によるスラッジ(汚泥)が堆積する。そして、スラッジの堆積は、偏心圧や切断圧の増大を招く。このため、スラッジを除去するために、定期的に、ドレスストーンを使用したドレッシングを行うことが必要となっていた。
【特許文献1】特開2002−347019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ドレスストーンを用いたドレッシングは、その頻度が高くなると、内周刃ブレードのダイヤモンドの脱落を促進させる結果となり、内周刃のライフ(寿命)を短くするという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、スラッジの堆積を抑制し、ドレッシングの頻度を低減することによって、内周刃のライフを向上させる単結晶インゴット用内周刃切断機およびこれを用いた切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の単結晶インゴット用内周刃切断機は、切削液として、比抵抗が1MΩ・cm以上の水を供給する機能を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様の単結晶インゴットの切断方法は、単結晶インゴット用内周刃切断機を用いた単結晶インゴットの切断方法であって、単結晶インゴット切断中に、切削液として、比抵抗が1MΩ・cm以上の水を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スラッジの堆積を抑制し、ドレッシングの頻度を低減することによって、内周刃のライフを向上させる単結晶インゴット用内周刃切断機およびこれを用いた切断方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明者らは、鋭意検討した結果、単結晶インゴット切断の際に用いる切削液である水の比抵抗を上げることによって、スラッジの生成を抑制できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
以下、本発明に係る実施の形態の単結晶インゴット用内周刃切断機およびこれを用いた切断方法について添付図面に基づき説明する。なお、ここでは、被切断材を、シリコン単結晶インゴットを例として記載する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本発明に係る実施の形態の単結晶インゴット用内周刃切断機の構成を示す模式図である。
内周刃切断機には、シリコン単結晶インゴット1を切断するための高速回転可能な内周刃2が備わっている。この内周刃2の刃厚は約400μm以下となっている。また、内周刃2は、ドーナッツ形状のステンレス薄板製台金の内周に、ダイヤモンド砥粒層が電着されて形成されている。そして、外周をテンションヘッド(図示せず)でラジアル(放射)外方向に引っ張りあげることで切断機本体に装着される。
本実施の形態の単結晶インゴット用内周刃切断機は、切削液供給ノズルとして、サプライ側切削液供給ノズル3と、クリーニング側切削液供給ノズル4を有している。そして、切削液として、比抵抗が1MΩ・cm以上の水、例えば、半導体用純水を供給する機能を備えていることを最大の特徴とする。
【0012】
次に、上記装置を用いたシリコン単結晶装置の切断方法について、図1を用いて説明する。
まず、シリコン単結晶インゴット1は、内周刃2の中心部に同軸に配置される。この後、内周刃2を高速回転させる。この時、シリコン単結晶インゴットを保持している割出機構部(図示せず)によって、予め設定している厚み分を割り出し水平方向に移動させた後、シリコン単結晶インゴットを切断するために送り機構部(図示せず)を駆動し、シリコン単結晶インゴットを矢印Aの方向に移動させる。
【0013】
この時、シリコン単結晶インゴット1の外周面が、内周刃2に接触する前に、サプライ側切削液供給ノズル3から、半導体用純水を内周刃2に向けて噴射し続け、同時にクリーニング側切削液供給ノズル4からも半導体用純水を内周刃2に向けて噴射し続ける。これによって、シリコン切断粉を除去し、スラッジが内周刃2に堆積することを防止する。
シリコン単結晶インゴット1に対する切断が進むにつれて、内周刃2はシリコン単結晶インゴットに食い込んでいき、シリコン単結晶インゴット1の切断が徐々に進行し、最終的にシリコン単結晶インゴット1全体が切断される。この段階に至って送り機構部の駆動は停止され、内周刃2とシリコン単結晶インゴット1は完全に離間し、初期位置へ戻される。
以上が切断の一サイクルであり、このサイクルが繰り返されることで、シリコン単結晶インゴットが複数個のブロックに切断されることになる。
【0014】
本実施の形態のように、工業用水にかえて、比抵抗が高い半導体用純水を切削液として用いることにより、スレッジの堆積を抑制し、ドレッシングの頻度を低減させ、内周刃のライフ(寿命)を向上させるという作用・効果が得られる。
【0015】
この理由については、以下のように考えられる。
まず、表1に、従来切削液として用いられていた工業用水と、本実施の形態の半導体用純水の比抵抗および不純物含有量の比較を示す。
【表1】


このように、比抵抗についてみると、工業用水の0.005〜0.01MΩ・cmに対し、半導体用純水は17MΩ・cm以上と、極めて高いことが分かる。また、不純物含有量については、Na、K、Cl等の電解質がすべて、半導体用純水においては工業用水の100分の1以下と極めて低くなっている。
【0016】
シリコン単結晶インゴット切断の際には、シリコン切断粉が発生する。このシリコン切断粉のフレッシュな面が酸化されシリコン酸化膜が形成される。この酸化された切断粉が内周刃砥粒の周辺に付着してスラッジの堆積が生ずると考えられる。
この点、工業用水の場合、Na、K、Cl等の電解質が多く含まれるため、この切断粉の酸化反応が、不純物の少ない半導体用純水に比較して、速く進むと考えられる。このため、スラッジの堆積速度も速くなり、結果的にドレッシングの頻度が上がり、内周刃のライフが短くなる。これに対し、電解質が少ないため酸化の進みにくい半導体用純水の場合は、逆にスレッジの堆積が抑制されるため、結果的にドレッシングの頻度が下がり、内周刃のライフが長くなる。
【0017】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。
実施の形態の説明においては、シリコン単結晶インゴットを被切断材とする場合について説明したが、被切断材は必ずしもシリコン単結晶インゴットに限られることなく、ガリウム砒素単結晶インゴット、インジウムリン単結晶インゴット等その他の半導体単結晶インゴットにも本発明を適用することは可能である。
また、実施の形態の説明においては、単結晶インゴット用内周刃切断機、およびこれを用いた切断方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる単結晶インゴット用内周刃切断機、およびこれを用いた切断方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての単結晶インゴット用内周刃切断機およびこれを用いた切断方法は、本発明の範囲に包含される。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例および図面を参照しつつ説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0019】
図1に示した単結晶インゴット用内周刃切断機で、シリコン単結晶用インゴットを切断した。
内周刃は、外形860mm、内径310mm、板厚0.2mmのステンレス製の台金に、刃厚400μmにわたりニッケルをベースとした結合材とダイヤモンド砥粒を電着させたものを使用した。切断条件としては、φ200mmのシリコン単結晶インゴットを使用し、内周刃の回転速度を1000rpm、切断速度を45mm/分、切削液量をサプライ側切削液供給ノズルおよびクリーニング側切削液供給ノズルそれぞれから、0.8L/分流した。
ドレッシングは、所定のスラッジの堆積が確認される都度行った。
切削液としては、比抵抗0.007MΩ・cmの工業用水と、比抵抗17MΩ・cmの半導体用純水、そしてこれらの混合によって作製した比抵抗0.1MΩ・cmと2MΩ・cmの合計4水準を用意した。
そして、上記4水準の切削液を用いて、シリコン単結晶インゴットを切断し、それぞれの場合の内周刃のライフを測定した。結果は図2に示す。
【0020】
従来の工業用水である比抵抗0.007MΩ・cmの場合が約400カットのライフであった。これに対し、比抵抗0.1MΩ・cmの場合が約600カットのライフ、比抵抗2MΩ・cmの場合が約850カットのライフ、半導体用純水である比抵抗17MΩ・cmの場合が約900カットのライフと、比抵抗が上がるにつれ、ライフが向上した。この結果から、比抵抗が1MΩ・cm以上になると、ライフが従来の2倍以上に向上することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態の単結晶インゴット用内周刃切断機の構成を示す模式図。
【図2】実施例の切削液比抵抗値に対する内周刃のライフを示す図。
【符号の説明】
【0022】
1 シリコンインゴット
2 内周刃
3 サプライ側切削液供給ノズル
4 クリーニング側切削液供給ノズル
【出願人】 【識別番号】507182807
【氏名又は名称】コバレントマテリアル株式会社
【出願日】 平成18年9月28日(2006.9.28)
【代理人】 【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之

【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真

【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章


【公開番号】 特開2008−80734(P2008−80734A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−265585(P2006−265585)