トップ :: B 処理操作 運輸 :: B28 セメント,粘土,または石材の加工

【発明の名称】 レーザ照射による脆性材板割断の方法および装置。
【発明者】 【氏名】山田 啓司

【氏名】山根 八洲男

【氏名】關谷 克彦

【要約】 【課題】脆性材料の板である半導体デバイスや液晶パネルを多数形成した大型半導体ウエファあるいはガラス基板の切り分け工程において、該基板表面に形成した電子回路素子に汚染影響、熱影響を与えない切り分け方法、装置を提供すること。

【構成】レーザ照射による脆性材料板の割断方法において、レーザとして割断対象板に対して透過性を有する波長を使用し、該板の裏面側には前記レーザを吸収する材質を密着させ、割断対象板の表面からレーザを照射する。レーザ照射により該板裏面が加熱されて、表面との温度差を生じ、その結果熱応力が作用して初期欠陥を起点としたクラックが進展し、割断対象板の割断が行なわれる。電子回路素子を形成した表面は温度上昇しないので素子への熱影響を防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料の板の面にレーザを照射して該板を割断する方法において、当該割断対象板の所望の割断線に沿って一部又は全部にあらかじめ初期欠陥を施しておき、該板に対して透過性を有するレーザを一方の面から照射するよう配置し、前記のレーザを照射する面と反対側の面には前記のレーザを吸収する材料を該面に接するように配置し、前記レーザを割断対象板の所望の割断線に沿って照射することにより該板を割断することを特徴とする脆性材料の板のレーザ照射割断方法。
【請求項2】
レーザ照射面と反対側の面に配置するレーザを吸収し発熱する材料は、該反対面にレーザ吸収性の物質をコーティング又は同物質のフイルムを貼付したものであることを特徴とする請求項1記載の脆性材料板のレーザ照射割断方法。
【請求項3】
レーザ照射面と反対側の面に配置するレーザを吸収し発熱する材料を、割断対象板を支持し又は搬送する台又はテーブルの該板と接触する面とその近傍に組み込み又は置いたものであることを特徴とする請求項1記載の脆性材料板のレーザ照射割断方法。
【請求項4】
割断対象板がガラス板、シリコン基板、セラミックス基板、又はサファイア基板であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の脆性材料板のレーザ照射割断方法。
【請求項5】
脆性材料の板を割断する装置であって、所望の割断線に沿って一部又は全部にあらかじめ所期欠陥を施した割断対象板にレーザを照射して該板を割断する装置において、当該割断対象板に対して透過性を有するレーザ照射手段を一方の面から照射するよう配置し、該板の所望の割断線に沿って前記レーザ照射手段が照射するレーザビームの位置決めと移動を行う制御手段を備え、前記レーザ照射面と反対側の面には前記のレーザを吸収する材料を該面に接するように配置し、前記レーザを割断対象板の所望の割断線に沿って照射することにより該板を割断することを特徴とする脆性材料の板のレーザ照射割断装置。
【請求項6】
割断対象板のレーザ照射面と反対側の面に配置するレーザを吸収する材料が、該反対面にレーザ吸収性の物質をコーティング又は同物質のフイルムを貼付したものであることを特徴とする請求項5記載の脆性材料板のレーザ照射割断装置。
【請求項7】
割断対象板を支持し又は搬送する架台又はテーブルの該板と接触する面とその近傍にレーザを吸収する材料を組み込み又は置き、割断対象板の前記架台又はテーブルに支持された側とは反対の面からレーザ照射面を行うように配置したことを特徴とする請求項5記載の脆性材料板のレーザ照射割断装置。
【請求項8】
割断対象板がガラス板、シリコン基板、セラミックス基板、又はサファイア基板であることを特徴とする請求項5ないし7に記載の脆性材料板のレーザ照射割断装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材板にレーザを照射して割断する技術、特に複数の液晶パネルを形成したガラス板や多数の集積回路を成型した半導体ウエファ等の割断技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや集積回路素子の生産コスト低減を目的に大型のガラス基板又は半導体ウエファ(ガラス基板、半導体ウエファ等を以下では基板と呼ぶ)上に複数の液晶パネルや集積回路を生成し、その後に個々のパネルや集積回路素子に切分ける製造工程が一般的に採用される。この際基板上に生成した電子素子、回路の汚染あるいは損傷が生じないように切分ける必要がある。また、切断面の形状の不整や微細なクラックの発生も防止しなければならない。従来から各種の切分けの方法が採用されている。
【0003】
従来から行われている基板の切り分け方法は、ブレード状の切断砥石(ダイシングブレードと呼ぶ)で対象物に切り込み、基板に送りを与えて切断する方法である。この方法ではダイシングブレードの幅相当が除去されるが、同ブレードを薄くすることには限界があり、従って加工しろは少なくとも数十μmは必要である。さらに冷却と切削くず除去のために切削液の使用が必須であるので、切削液、切削くずによる汚染防止対策および洗浄工程を必要とする。しかし汚染に対してセンシティブな素子の製造工程では使用不可能な場合がある。
【0004】
切断対象基板の表面又は内部に微細な傷をあらかじめ付けておき(前記の微細な傷を以下では初期欠陥と呼ぶ)、切断工程で基板に外力を加えて前記の所期欠陥を起点とした破断を生じさせて割断する方法がある。そのような方法の例は特許文献1に開示されている。同文献に開示されている方法では、内部にレーザにより変質層を形成した基板にダイシングテープを展張し、同テープの外側を外部のフレームに固定して張力を生じさせ、基板の周辺から前記外部フレームとの間にオフセットを生じさせて基板に外力を加え、前記の内部に形成した変質層を起点とする割れを発生させるものである。このような方法は近年需要の高まる薄型シリコンウエファや大型液晶パネル用ガラス基板の分断への適用は困難であり、曲線の割断への適用も困難である。
【0005】
特許文献2は基板にレーザビームを照射し、レーザの吸収により基板に生じた熱応力により割断する方法が開示されている。特許文献2にはレーザ照射により生じた熱応力によってクラックを発生させる起点となるスクライブを付ける手段と、レーザ照射手段を一体にまとめた装置を提案している。レーザ照射による割断方法は、ダイシングブレードにより切り分ける方法と比較して加工しろが少なく、切削液による汚染の影響がなく、外力による割断のように割断線の不整や微細な割れの発生がなく、直線以外の割断線形状にも対応できる利点がある。
【0006】
半導体デバイスや液晶パネル生産工程では、通常基板の一方の面は搬送テーブルや支持テーブル上に保持して加工し移動するので、素子の形成加工からパネルやデバイスへの切り分けの工程においては表面への加工は容易であるが、裏面への加工を行なう場合には基板の反転等複雑なハンドリングが必要である。複雑なハンドリングを省くため、基板切り分け又は割断のためのレーザ照射は半導体回路や液晶素子が形成された面と同一面に対して行われることになり、熱に敏感な半導体回路素子に悪影響を与えることがある。
【特許文献1】特開2004−335909号公報
【特許文献2】特開2002−020134号公報
【特許文献3】特開2001−232687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザ照射によるガラス基板や半導体基板等の脆性材板を割断する方法および装置であって、基板の複雑なハンドリングが不要で、基板に形成した液晶や半導体デバイスに熱影響を与えず、また基板に汚染を生じない割断技術の確立を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を実現する手段は、基板に電子デバイスを形成する側の面(以下表面と呼ぶ)からレーザビームを照射して、基板の裏面(前記基板表面の反対側の面を裏面と呼ぶ)を加熱し、それによって基板に生じた熱応力により割断することである。このような割断方法を実現するためには、照射レーザとして基板に対して透過性を有するものを適用するとともに、基板の裏面には前記レーザを吸収して熱を生じる材料をコーティングやフイルムの貼付等の手段により密着させる。この結果、表面から照射したレーザによって基板の表面は加熱されないが、基板裏面は前記レーザ吸収材料のレーザ吸収による熱の伝導によって加熱され、両面に温度差を生ずる。その結果基板に熱応力を生じ、あらかじめ適当な手段で割断線に沿って基板に付けられた傷、改質部等の初期欠陥を起点として割断に至る。なお、以下の説明は主として半導体デバイスや液晶パネルを形成した基板への適用を中心に行うが、以下の説明に記載した基板材料と同様、又は類似の硬い脆性材料である板にも前記基板と同様に本発明の割断方法及び装置が適用され得る。
【0009】
図1には本発明に係わる基板割断方法の1例を示す。図1において1は割断対象の基板である。1aは基板の表面であり、半導体デバイス等が複数形成されている。また該基板にはスクライバ、砥石、レーザ、エッチング等適当な手段により割断線に沿った初期欠陥が付けられているものとする。図1の2はレーザ照射手段であり、図示しないレーザ光発生部、コリメータ機構、レンズ系機構などにより構成され、基板表面1a側から割断線に沿ってレーザビームを照射するように位置移動、位置決めが行なわれ、基板の裏面1bの側にレーザビームを集中するよう焦点合わせが行われる。なお、レーザ照射手段2から照射されるレーザは割断対象の基板に対して透過性を有する。図1の3は割断対象基板のハンドリング用あるいは加工用のテーブルであり、基板の裏面1bを支持している。基板の裏面1bには前記レーザを吸収する材料4がコーティングあるいは、裏面1bとテーブル3の支持面との間にレーザ吸収性材シートを挿入する等の手段で基板に密接して置かれる。
【0010】
図1において割断線に沿ってレーザ照射手段を移動しながら、レーザビームを基板1の裏面1bにビームを合わせて照射すると、該レーザは基板1は透過するが、材料4には吸収されて材料4が加熱される。材料4の熱は伝導により基板1の裏面1bに伝わり該裏面近傍が温度上昇し、基板1の表面1aと裏面1bの間に温度差を生じる。このような温度差により基板には下に凸に変形させる膨張力が作用すべきところ、基板の温度上昇は局部的であり、かつ拘束されているので、結果として基板1の表面1aに引張り力、裏面1bに圧縮力を発生させる。表面1aに発生した引っ張り力はあらかじめ付けた初期欠陥を起点としたクラックを生じさせ、クラックは進展して基板を貫通する。同様なレーザの照射を続けることにより局部的に貫通したクラックが繋がって基板の割断に至る。本発明の割断では、基板に溶融が生じないように制限したレーザ強度においても割断が可能であり、基板の溶融を避けなければならない半導体デバイス基板の割断に有効である。
【0011】
本発明の割断手段は、ガラスの基板だけでなく、シリコン、セラミックス、あるいはサファイア基板等、硬脆性材板基板に広く適用可能である。使用するレーザは割断対象材に吸収されない波長を選択する必要があり、ガラス基板ではNd:YAGレーザ、シリコン基板に対しては炭酸ガスレーザの使用が可能である。本発明によるレーザ割断では、熱応力がレーザ照射直下の裏面に局所的に生じ、その局所付近において初期欠陥を起点としたクラックが基板を貫通した微小な割れに進展し、それらがつながって割断がおこなわれる。微小なクラック貫通した割れを接続することにより曲線に沿った割断が可能である。
【0012】
なお、前記特許文献3にはレーザ透過性プラスチックとレーザ吸収性プラスチックを圧力を加えて重ね、レーザ透過性プラスチックの面からレーザを照射しレーザ吸収性のプラスチックに発生した熱でプラスチック同士を溶融させて溶着、貼り合わせる技術が開示されている。本発明のレーザ割断方法は、割断対象板の表裏面に温度差を生じさせることにより表面に引張り力を発生させ、あらかじめ付けた初期欠陥を起点としたクラックを進展させて割断に至らしめる方法である。さらに半導体デバイスや液晶パネルの基板の割断方法としては、基板温度をなるべく低く抑えることが重要であり、基板に溶融を発生させることは避けるべきである。従って本発明は原理的にも目的、作用の点からも特許文献3とは異なるものである。
【0013】
図2に示すように基板を支持するテーブル3自体の材質をレーザを吸収するもので構成して、テーブル3の基板支持面付近にレーザビームの焦点を調整してレーザを照射すれば、テーブル3が発熱し、基板裏面を加熱し、割断することができる。テーブル3の全体をレーザ吸収材料で構成する必要はなく、基板1との接触部とその近傍の台車部分にのみに該レーザ吸収材を塗布、貼り付け等によりレーザ吸収部位を形成しても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明による脆性材板のレーザ割断は、基板を支持又は搬送する台車又はテーブルに搭載したまま、基板表面の加工に続くデバイス、パネルへの切り分け、割断工程を一貫して行なうことを可能としながら、表面に形成した素子等に熱影響を与えない利点を有する。従って素子形成から割断工程において、基板の反転などの複雑なハンドリングを要せず、破損し易い大型ガラス基板の損傷防止にも有効である。さらに、上述のように基板の裏面を加熱し、結果として初期欠陥を付けた表面に引張り力を加えてクラックを進展させる原理を適用しているので、初期欠陥を付けた面と同一面を加熱する(この場合は加熱面に圧縮力が発生)従来の方法より割断が低温で行なえる可能性がある。その他本発明はレーザ割断方法の利点として従来から評価されている利点、すなわち汚染が無いこと、切断幅が狭いこと、切断面とその近傍の不整なクラックの発生と切断屑の飛び散りを防止できること、曲線の割断が可能である等の特徴をそのまま保有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図3に本発明を実施する形態の構成を示す。図3において、割断対象基板10はガラス基板である。基板10はテーブル12を有する搬送台車11上に一方の面10b(裏面)を接して搭載されている。台車11のテーブル12は鋼板で構成される。台車11は図示しない手段で図3の左右方向(x方向)に移動可能であり、基板10をx方向に移動、位置決めする。基板10の台車11への搭載側と反対の面10a(表面)には半導体デバイス、液晶などの電子素子が形成されており、該表面10aの側にはNd:YAGレーザを照射する手段13が設置され、図3のx方向と直角方向(y方向)にレーザビームを移動し位置決めする図示しない手段およびレーザを基板10の裏側に集光するレンズ系機構等を備え、前記台車11のx方向位置決めと同期してレーザを所定の割断線に沿って移動し、位置決めする。
【0016】
割断のためのレーザ照射前に基板10の表面10aには図示しないスクライバにより割断線に沿って機械的に微小溝(初期欠陥)を形成する。レーザを前記のように基板10の表面から照射すると、図4に示すように、台車11のテーブル12を構成する鋼板がレーザを吸収して発熱し、熱伝導により基板10の裏面10bを局部的に加熱する。その結果図4に示すように基板10の表面に引張り力が、裏側は圧縮力が生じ、基板10は表面からクラックが進展して裏面に貫通する。
【0017】
図5に示す従来のレーザ照射割断方法では、レーザは基板表面を加熱するので表面側に圧縮力が生じ、裏側に引張り力が生じるが、通常の割断の起点となる初期欠陥は基板の表面または基板内部であり、基板に生じた熱応力と初期欠陥の位置の対応においてクラック進展を促す方向とならない場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0018】
複数の半導体デバイスや液晶パネルを成形する基板の大型化が進んでいる現状において、効率的で電子回路素子に汚染や熱等の悪影響を極力与えない割断技術の開発、実用化が求められている。最近実用化されてきたレーザ照射割断は砥石ブレードや機械力による割断の問題点を解決する方法であるが、基板の電子回路素子を形成した側を加熱する問題点があった。この点本発明による割断方法、あるいは該方法による割断装置はレーザ照射割断の特徴を活かしつつ基板に形成した電子回路素子に対する熱影響を排除したものであり、産業上の利用可能性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のレーザ照射脆性材板割断方法及び同割断装置の構成と作用をしめす説明図である。
【図2】本発明のレーザ照射脆性材板割断方法及び同割断装置の割断対象脆性板支持テーブルの構成をしめす説明図である。
【図3】本発明のレーザ照射脆性材板割断方法及び同割断装置の実施の形態をしめす説明図である。
【図4】本発明のレーザ照射脆性材板割断方法及び同割断装置の作用を示す説明図である。
【図5】従来のレーザ照射脆性材板割断方法及び同割断装置の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 基板
1a 基板の表面
1b 基板の裏面
2 レーザ照射手段
3 基板支持テーブル
4 レーザ吸収材
10 ガラス基板
10a 基板の表面
10b 基板の裏面
11 台車
12 基板支持テーブル
13 Nd:YAGレーザ照射手段
【出願人】 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−62547(P2008−62547A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−244000(P2006−244000)