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【発明の名称】 大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物
【発明者】 【氏名】横内 哲郎

【要約】 【課題】大谷石が持つ自然の岩肌表面に微細な彫刻、象嵌を施す大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物を提供する

【構成】NC工作機の作業テーブルと切削用回転刃とを協動させて大谷石100を切削するに当たり、大谷石への装飾面を大谷石に端面加工を施すことにより形成する場合には、切削時にNC工作機の回転刃110を正回転させ大谷石を切削する際に、切削後に残そうとする大谷石の切削面101が回転刃の進行通路の右側に位置するように位置取りして大谷石を切削する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC工作機の作業テーブルと切削用回転刃とを協動させて大谷石を切削するに当たり、大谷石への装飾面を大谷石に端面加工を施すことにより形成する場合には、切削時にNC工作機の回転刃を正回転させ大谷石を切削する際に、切削後に残そうとする大谷石の切削面が回転刃の進行通路の右側に位置するように位置取りして大谷石を切削し、
大谷石への装飾面を大谷石への溝により形成する場合には、回転刃を大谷石の片面側から直進させて途中まで切削し、残りの溝加工を対向面側から直線切削して大谷石に条溝を形成し、
大谷石への装飾面を大谷石にポケットを施すことにより形成する場合には、ポケットの中心位置に回転刃を当て下降して中心部を切削し、テーブルを可動して回転刃に対し大谷石を反時計方向に回しながら切削してポケットを形成し、
大谷石への装飾面を大谷石に切欠き部を施すことにより形成する場合には、回転刃により大谷石の切欠き部の端面側を切削し、切欠き部の輪郭を切削して中島を形成し、さらに、中島を切削して切欠き部を形成することを特徴とする大谷石への装飾面加工方法。
【請求項2】
NC工作機における主軸回転数が2250〜3150rpm、テーブル送り速度が1000〜500mm/minである請求項1記載の大谷石への装飾面加工方法。
【請求項3】
NC工作機の作業テーブルと切削用回転刃とを協動させて大谷石を切削するに当たり、大谷石への装飾面を大谷石に端面加工を施すことにより形成する場合には、切削時にNC工作機の回転刃を正回転させ大谷石を切削する際に、切削後に残そうとする大谷石の切削面が回転刃の進行通路の右側に位置するように位置取りして大谷石を切削し、
大谷石への装飾面を大谷石への溝により形成する場合には、回転刃を大谷石の片面側から直進させて途中まで切削し、残りの溝加工を対向面側から直線切削して大谷石に条溝を形成し、
大谷石への装飾面を大谷石にポケットを施すことにより形成する場合には、ポケットの中心位置に回転刃を当て下降して中心部を切削し、テーブルを可動して回転刃に対し大谷石を反時計方向に回しながら切削してポケットを形成し、
大谷石への装飾面を大谷石に切欠き部を施すことにより形成する場合には、回転刃により大谷石の切欠き部の端面側を切削し、切欠き部の輪郭を切削して中島を形成し、さらに、中島を切削して切欠き部を形成してなる装飾面を備えた大谷石加工物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大谷石は耐久性・耐火性に富み、加工が容易であるため、従来より土木・建築、特に、門塀・石垣に用いられてきた歴史がある。大谷石を門塀・石垣とする場合、職人の手により製品化することが旧来より行なわれている(特許文献1参照)。
【特許文献1】 特開平5−98811号公報
【0003】
また、大谷石の素材から天然石の質感を活かし、和風感の漂う造形物として、大谷石を素材とした浴槽が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献2】 特開2004−187924号公報
【0004】
大谷石は淡い緑色をした上品な石であり、アメリカ合衆国の建築家であるフランク・ロイド・ライトにより設計され大正11年に竣工した帝国ホテルの建物に使用された実績がある。
【0005】
大谷石は栃木県大谷市に存在し8000万年の歴史があるとされている。大谷石は、凝灰岩で岩質はもろく微細な彫刻、象嵌には不向きとされ、門塀・石垣以外には十分に活用されていない実情にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、CADシステム(omputer ided esign system)と、CAMシステム(omputer ided anufacturing system)と、切削手段を備えたNC工作機(NCフライス盤)を用いて大谷石を切削加工することにより、大谷石が保有する自然の岩肌表面に微細な彫刻、象嵌を施すことができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
従って本発明の目的は、大谷石が持つ自然の岩肌表面に微細な彫刻、象嵌を施す大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、大谷石の表面に微細な彫刻、象嵌を持った同じ精度の装飾物の量産化が可能な大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物を提供することにある。
【0009】
本発明のもう一つ他の目的は、脆くて加工しにくい大谷石に欠損、割損、チッピングを生じることなく微細加工(マイクロマシニンブ)が可能な大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物を提供することにある。
【0010】
本発明のさらにもう一つ他の目的は、大谷石の活用範囲を広げることができ、また門塀・石垣等に使われた大谷石の古材の再活用を可能とし、斜陽化している大谷石材業界の活性化に寄与する大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、NC工作機の作業テーブルと切削用回転刃とを協動させて大谷石(被切削物)を切削するに当たり、大谷石への装飾面を大谷石に端面(きわ)加工を施すことにより形成する場合には、切削時にNC工作機の回転刃を正回転させ大谷石を切削する際に、切削後に残そうとする大谷石の切削面が回転刃の進行通路の右側に位置するように位置取りして大谷石を切削する。
【0012】
大谷石への装飾面を大谷石への溝により形成する場合には、回転刃を大谷石の片面側から直進させて途中まで切削し、残りの溝加工を対向面側から直線切削して大谷石に条溝を形成する。
【0013】
また、大谷石への装飾面を大谷石にポケットを施すことにより形成する場合には、ポケットの中心位置に回転刃を当て下降して中心部を切削し、テーブルを可動して回転刃に対し大谷石を反時計方向に回しながら切削してポケットを形成する。
【0014】
さらに、大谷石への装飾面を大谷石に切欠き部を施すことにより形成する場合には、回転刃により大谷石の切欠き部の端面側を切削し、切欠き部の輪郭を切削して中島を形成し、さらに、中島を切削して切欠き部を形成する。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明によれば、次の効果を奏する。
1.大谷石が持つ自然の岩肌表面に微細な彫刻、象嵌を施すことができる、大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物が得られる。
2.大谷石の表面に微細な彫刻、象嵌を持った同じ精度の装飾物を短時間で量産が可能な、大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物が得られる。
3.脆くて加工しにくい大谷石に欠損、割損、チッピングが生じることがなく、微細加工が可能な、大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物が得られる。
4.大谷石の活用範囲を広げることができ、また門塀・石垣等に使われた大谷石の古材の再活用を可能とし、斜陽化している大谷石材業界の活性化に寄与する、大谷石への装飾面加工方法、および装飾面を備えた大谷石加工物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る大谷石への装飾面加工では、切削面が回転刃の進行通路の右側に位置するように位置取りして大谷石を切削し、加工面の左側を工具中心が通るようにして大谷石をダウンカットする。
【0017】
大谷石に端面(きわ)加工を施す場合には、回転刃を大谷石の切削原点近傍まで下げ、回転刃を正回転させ大谷石に衝接させ、テーブルを可動し端面を切削する際に、切削後に残そうとする大谷石の切削面が回転刃の進行通路の右側に位置するように位置取りし、大谷石を切削する。
【0018】
大谷石に溝加工を施す場合には、回転刃を大谷石の片面側から直進させて途中まで切削し、残りの溝加工を対向面側から直線切削して大谷石に条溝を形成する。
【0019】
大谷石にポケット加工を施す場合には、ポケットの中心位置に回転刃を当て下降して中心部を切削し、テーブルを可動して回転刃に対し大谷石を反時計方向に回しながら切削してポケットを形成する。
【0020】
大谷石に切欠き加工を施す場合には、回転刃により大谷石の切欠き部の端面側を切削し、切欠き部の輪郭を切削して中島を形成し、さらに、中島を切削して切欠き部を形成する。
【0021】
切削時に欠損、割損、チッピングが生じないようにするために、切込み幅Wは回転刃の直径φの半径以下で削るようにし、また切削時の切込み深度Dは、大谷石の割損を防ぐため、回転刃の直径φの三分の一以下で削るようにすることが好ましい。
【0022】
同様に、切削時に欠損、割損、チッピングが生じないようにするために、NC工作機(切削マシン)における主軸(回転刃をホールドしている)の回転数は2250〜3150rpm、テーブルの送り速度は1000〜500mm/minとすることが好ましい。
【0023】
大谷石の切削表面には、大谷石の天然の色を定着させ表面を強化するために表面強化剤、例えば、ケイ酸ナトリウム溶液を塗布することが好ましい。
【0024】
大谷石表面への装飾面を加工するため、CADシステムと、CAMシステムと、切削手段を備えたNC工作機により大谷石を乾式/湿式状態で切削加工する(細かい切削加工、あるいは小領域の切削加工が含まれる場合には、該部分に水分を含ませて切削を行なう湿式切削を乾式切削と併用するとよい)。NC工作機は自動工具交換装置を備え、工具は各種の切削用回転刃をつけてマカジンに格納されている。
【0025】
切削加工では、CADで用いられた図形データ(大谷石への切削加工の具体的なデータ)を基にCAMによりNC工作機が使用するNCデータが作成される。また、CAMシステムで、加工順序や加工方の決定、加工条件の決定や工具経路の決定を行なう。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例について説明する。
図1は、側壁に微細な彫刻が施された大谷石側壁パーツ群を備えたショーケースを示す斜視図、
図2は、側壁パーツ群の構成メンバーの一部を分離した状態を示すショーケースの斜視図、
図3は、ショーケースの構成メンバーを分離した状態を示す斜視図、
図4は、側壁パーツ群を構成している側壁パーツの拡大斜視図、
図5は、側壁パーツ群を構成している側壁パーツの拡大側面図である。
【0027】
これらの図において、ショーケース10は、ケース本体20と、天蓋30と、左右側壁パーツ群40A,40Bと、台座80より構成されている。ショーケース10は、ケース本体20に、天蓋30、側壁パーツ群40A,40B、台座80を接着し組み立てて形成される。
【0028】
前記ケース本体20は、上下方向に3つの棚21、22、23が形成され、4つの物品収容室を形成している。
【0029】
前記天蓋30、側壁パーツ群40A,40B、中座82は大谷石により形成される。右側壁パーツ群40Aは、側壁パーツ50、51、60A、61、70、71より構成され、左側壁パーツ群40Bは、側壁パーツ50、51、60B、61、70、71より構成される。特に、側壁パーツ50、51、60A、60B、61には微細な加工(彫刻)が施され、装飾面を備えた大谷石加工物を形成する。
【0030】
前記台座80は、上座81、中座82、ベース83より形成される。
【0031】
大谷石は脆く、過度の負担がかからないようにして、大谷石の切削部位に欠損、割損、チッピングが生じないようにする。このために、切削加工の内容によってテーブルの送り速度を変える。切削加工時に切削工具である回転刃(例えば、エンドミル)の直径に応じて回転数と送り速度を変え、切削時に欠損、割損、チッピングが生じないようにする。切込み幅Wは回転刃の直径φの半径以下で削るようにし(図6参照)、また切削時の切込み深度Dは、大谷石の割損を防ぐため、回転刃の直径φの三分の一以下で削るようにする(図7参照)。
【0032】
NC工作機における回転刃の直径、主軸の回転数、テーブルの送り速度の好適な例を示す。
(回転刃の直径mm) (主軸回転数rpm) (テーブル送り速度mm/min)
φ10 2250 1000
φ 6 2800 800
φ 3 3150 500
【0033】
(大谷石への装飾面加工方法)
ここで、大谷石への装飾面加工方法について図8乃至図11を用いて説明する。
図8は、大谷石に端面(きわ)加工を施す場合の方法略図、
図9は、大谷石に溝加工を施す場合の方法略図、
図10は、大谷石にポケット加工を施す場合の方法略図、
図11は、大谷石に切欠き加工を施す場合の方法略図である。
【0034】
本発明に係る大谷石への装飾面加工方法では、加工部位に応じて次の方法をとる
[大谷石に端面(きわ)加工を施す場合(図8参照)]
NC工作機のX−Yテーブル面(図8のX−Yにより形成される面であり、同一平面上で360度可動する)に切削する大谷石(被切削物)100を載置して固定し、回転刃(図8のZ−Z方向に昇降する)110を大谷石の切削原点近傍まで下げる。回転刃110を正回転させ大谷石100に衝接させ、テーブル150を可動して端面101をすみ削りし前加工面102を形成する。さらに、直径の小さな回転刃120を用いて切削を再開し仕上げ切削を行なって加工面の精度を上げる。かくして、大谷石100への装飾面を大谷石に端面加工を施すことにより形成する場合には、回転刃110、120を正回転させ大谷石を切削する際に、切削後に残そうとする大谷石の切削面が回転刃の進行通路の右側に位置するように位置取りして大谷石を切削する[加工面の左側を工具中心が通るようにし大谷石をダウンカット(下向き削り)する]。
【0035】
[大谷石に溝加工を施す場合(図9参照)]
テーブルを可動し回転刃210を片面側からのみ直進させて大谷石200切削し溝を形成する場合には、大谷石より回転刃が抜ける最後の段階で溝部の左側がアップカット(上向き削り)になるため該部位に欠損が生じ易い。このことを回避するため、大谷石200への装飾面を大谷石に溝加工を施すことにより形成する場合には、テーブルを可動し回転刃210を大谷石200の片面側から直進させて途中まで切削し、残りの溝加工を対向面側(逆方向)から直線切削して大谷石に条溝201を形成する。
【0036】
[大谷石にポケット加工を施す場合(図10参照)]
大谷石300への装飾面を大谷石にポケット加工を施すことにより形成する場合には、ポケット301の中心位置に回転刃310を当て下降して中心部を切削し、さらに、テーブルを可動して回転刃310に対し大谷石300を反時計方向(左回り)に回しながら切削しポケット301を形成する。
【0037】
[大谷石に切欠き加工を施す場合(図11参照)]
大谷石400への装飾面を大谷石に切欠き加工を施すことにより形成する場合には、回転刃410により大谷石400の切欠き部の端面(きわ)401側を切削する。さらに細い径の回転刃420により切欠き部の輪郭402を切削して中島403を形成する。さらに、回転刃410を中島403に入れて中島403を切削し切欠き部404を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】 側壁に微細な彫刻が施された大谷石側壁パーツ群を備えたショーケースを示す斜視図である。
【図2】 側壁パーツ群の構成メンバーの一部を分離した状態を示すショーケースの斜視図である。
【図3】 ショーケースの構成メンバーを分離した状態を示す斜視図である。
【図4】 側壁パーツ群を構成している側壁パーツの拡大斜視図である。
【図5】 側壁パーツ群を構成している側壁パーツの拡大側面図である。
【図6】 切削時の切込み幅Wと回転刃の直径φとの良好な関係を示す平面略図である。
【図7】 切削時の切込み深度Dと回転刃の直径φとの良好な関係を示す側面略図である。
【図8】 大谷石に端面加工を施す場合の方法略図である。
【図9】 大谷石に溝加工を施す場合の方法略図である。
【図10】 大谷石にポケット加工を施す場合の方法略図である。
【図11】 大谷石に切欠き加工を施す場合の方法略図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ショーケース
20 ケース本体
30 天蓋
40A 側壁パーツ群
40B 側壁パーツ群
50 側壁パーツ
51 側壁パーツ
60A 側壁パーツ
60B 側壁パーツ
61 側壁パーツ
70 側壁パーツ
100 大谷石
200 大谷石
300 大谷石
400 大谷石
【出願人】 【識別番号】306001219
【氏名又は名称】株式会社ギャラックス
【出願日】 平成18年8月9日(2006.8.9)
【代理人】 【識別番号】100088753
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 豊


【公開番号】 特開2008−37083(P2008−37083A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−240805(P2006−240805)