トップ :: B 処理操作 運輸 :: B28 セメント,粘土,または石材の加工

【発明の名称】 硬脆材料板体の分割加工方法
【発明者】 【氏名】笹木 隆一郎

【要約】 【課題】分割予定ラインに沿って精度よく分割できる硬脆材料板体の分割加工方法を提供する。

【構成】厚さtの硬脆材料板体10に対し光学的に透明な波長を有する繰り返し短光パルスレーザビーム30を集光レンズ200を介して硬脆材料板体10の表面11に入射したとき、レーザビーム30のウエスト31が硬脆材料板体10の内部t/2より浅いか或いは深い位置に存在するように集光レンズ200の焦点位置を調整し、繰り返し短光パルスレーザビーム30が硬脆材料板体10の表面11にオーバラップ入射するようにして、レーザビーム30を硬脆材料板体10の表面11に入射する毎に、ウエスト31の領域及びウエスト31の領域から深さ方向に離間した硬脆材料板体10の裏面12付近に光誘起破壊を起こさせる工程を含むことを特徴とする硬脆材料板体10の分割加工方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さtの硬脆材料板体に対し光学的に透明な波長を有する繰り返し短光パルスレーザビームを集光レンズを介して該硬脆材料板体の表面に入射したとき、
前記レーザビームのウエストが前記硬脆材料板体の内部t/2より浅いか或いは深い位置に存在するように前記集光レンズの焦点位置を調整し、前記繰り返し短光パルスレーザビームが前記硬脆材料板体の表面にオーバラップ入射するように該レーザビームの光軸を該硬脆材料板体に対して想定された分割予定ラインに沿って相対的に移動させながら、該レーザビームを該硬脆材料板体の表面に入射する毎に、該ウエストの領域及び該ウエストの領域から深さ方向に離間した該硬脆材料板体の裏面付近に光誘起破壊を起こさせる工程を含むことを特徴とする硬脆材料板体の分割加工方法。
【請求項2】
前記集光レンズの開口数が0.3以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬脆材料板体の分割加工方法。
【請求項3】
前記t/2より浅い位置が前記硬脆材料板体の表面からレーリーレンジ以内であり、前記t/2より深い位置が該硬脆材料板体の裏面よりレーリーレンジ以内であることを特徴とする請求項1或いは2に記載の硬脆材料板体の分割加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等に用いられる硬脆材料板体の分割加工方法に関し、詳しくは、短光パルスレーザビームを用いて分割加工対象の硬脆材料板体に光誘起破壊域を形成して分割加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板とか、圧電セラミック基板とか、ガラス基板等の硬脆材料板体を分割加工するにあたり、加工対象の板体の表層部に分割予定ラインに沿って板体に透明な波長を有する短光パルスレーザを入射させ、表層部に微小クラックが群生した微細溶融痕を生成させ、その後応力を加えて、その微細溶融痕を起点に板体内部に向かって生じるクラックを利用して分割していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、シリコンやIII−V族半導体、ガラス等板体に対して透明な波長である1.5μm近傍に中心波長をもつ短光パルスレーザを表面から分割予定ラインに沿って入射させ、裏面に焦点が位置するように集光照射することにより、裏面に位置する集光部位で光誘起破壊を起こさせる分割加工方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−271563号公報
【特許文献2】特開2004−351466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の分割加工方法は、加工対象の硬脆材料板体の表層部あるいは裏面に微細溶融痕或いは光誘起破壊痕を形成している。すなわち、従来の分割加工方法は、表面或いは裏面にだけレーザ加工痕を形成するものである。したがって、その後の応力印加による分割工程では、レーザ加工痕を起点とするクラックを分割予定ラインに沿って発生させることができず、分割予定ラインに精度よく沿う分割が困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の分割加工方法の問題に鑑みてなされたもので、分割予定ラインに沿って精度よく分割できる硬脆材料板体の分割加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の硬脆材料板体の分割加工方法は、厚さtの硬脆材料板体に対し光学的に透明な波長を有する繰り返し短光パルスレーザビームを集光レンズを介して該硬脆材料板体の表面に入射したとき、前記レーザビームのウエストが前記硬脆材料板体の内部t/2より浅いか或いは深い位置に存在するように前記集光レンズの焦点位置を調整し、前記繰り返し短光パルスレーザビームが前記硬脆材料板体の表面にオーバラップ入射するように該レーザビームの光軸を該硬脆材料板体に対して想定された分割予定ラインに沿って相対的に移動させながら、該レーザビームを該硬脆材料板体の表面に入射する毎に、該ウエストの領域及び該ウエストの領域から深さ方向に離間した該硬脆材料板体の裏面付近に光誘起破壊を起こさせる工程を含むことを特徴としている。
【0007】
硬脆材料板体の内部と裏面或いは表面と裏面に分割予定ラインに沿って光誘起破壊痕が形成されるので、その後の応力印加による分割工程で分割予定ラインに沿って精度よく分割することができる。
【0008】
また、前記集光レンズの開口数が0.3以下であることが好ましい。
【0009】
開口数が0.3以下であると、所謂焦点深度が大きいためにビームウエストが光軸方向に緩やかに広がるので、加工対象の板体の厚さが大になっても内部と裏面或いは表面と裏面に光誘起破壊痕を形成することができる。
【0010】
さらに、前記t/2より浅い位置が前記硬脆材料板体の表面からレーリーレンジ以内であり、前記t/2より深い位置が該硬脆材料板体の裏面よりレーリーレンジ以内であることが望ましい。
【0011】
ウエストから表面或いは裏面までの距離がレーリーレンジより小さいので、加工対象の板体の厚さが大になっても内部と裏面或いは表面と裏面に光誘起破壊痕をより一層確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
硬脆材料板体の内部と裏面或いは表面と裏面に分割予定ラインに沿って光誘起破壊痕が形成されるので、その後の応力印加による分割工程で分割予定ラインに沿って精度よく分割することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の硬脆材料板体の分割加工方法を図1〜4を用いて説明する。図1は本発明の分割加工方法を説明する模式図、図2は図1のA−A線から見た一部切欠断面図、図3は図2のビームウエスト付近を拡大して模式的に示した図である。図4は、ビームウエストがサファイア基板の表面11からその厚さtの半分より浅い位置にあるように調整されたときのビームウエスト付近の拡大図である。図1及び図2で10が硬脆材料板体である例えばサファイア基板、レーザビームが入射する表面11に点線で示す15が分割予定ラインである。図1及び図2に示すように、サファイア基板10によって線形吸収を起こさないような波長を有する、例えば、希土類ドープモードロックファイバレーザベースのフェムト秒レーザ装置から、発生された、例えば、400fsのパルス幅を有する繰り返し周期100kHzの短光パルスレーザビーム30が使用される。この短光パルスレーザビーム30は、表面11に対して、垂直に且つビーム30のウエスト31が基板1の内部に位置するように集光レンズ200で絞り込まれて入射される。この場合、当該分割加工を開始する前に、後述する加工装置(図6)の駆動部61で光学ベンチ64をZ軸方向に微動させ、サファイア基板の表面11と集光レンズ200との間隔距離を調整することにより、レーザビーム30のビームウエスト31が基板10の表面11から深さ方向に厚さtの半分より深い位置に存在するように設定される。
【0014】
上記集光レンズ200により集光された短光パルスレーザビーム30のウエスト31の表面11に垂直な方向(深さ方向)距離d0(>t/2)位置への設定は、先ず、照明光源を用いて上記集光レンズ200の焦点を基板10の表面11に設定し、次いで、集光レンズ200を基板10の表面11側に所定の距離d移動させることにより行われる。前記所定距離dとd0の関係は、レーザビーム30の波長λと基板10の屈折率n(λ)に依存し、
0=n(λ)d (1)
と表される。例えば、基板10の厚さが100μmで、表面11から深さ方向に80μmの位置にウエスト31を設定する場合、d0=80μm、n(λ)=1.75から、d=45.7μmと求まり、集光レンズ200を表面11側に約46μm移動させればよい。
【0015】
短光パルスレーザビーム30の光軸OAが、サファイア基板10の表面11に想定された分割予定ライン15(図1中に点線で示す)に沿って、所定の加工速度Vをもって矢印D方向(図2においては、光軸OAと直交し紙面に平行な方向)に、基板10の表面11に対して、相対的に移動させられる。このとき、パルスレーザビーム30の各パルスは、図3Bに示すように、実線のスポット31と点線のスポット31´(スポット31の一つ前のパルスによるスポット)がオーバラップするように矢印D方向の移動速度(加工速度)Vが設定される。ここで、オーバラップ度合いを示すスポット31の中心線CLとスポット31´の中心線CL´の間隔γは、レーザビーム30のパルス繰り返し周波数Rと加工移動速度Vで一義的に定まる。すなわちγは、
γ=V/R (2)
と表される。例えば、スポット31、31´の直径が7μmでγ=0.4μmにするには、R=100kHzの場合、V=40mm/sとなる。すなわち、V=40mm/sとすることで、中心CLには9パルスのレーザビームがオーバラップ照射されることになる。
【0016】
次に、図3を用いて、ウエストの領域及びウエストの領域から深さ方向に離間した硬脆材料板体の裏面付近に例えば多光子吸収による光誘起破壊が起こるメカニズムについて説明する。図3に示すように、例えば、ウエスト31が表面11からd(>t/2)、裏面からレーリーレンジZr離れた位置にある場合は次のように考えられる。
【0017】
今、図3に示すように、ウエスト31から上下δの範囲(斜線でハッチングした範囲)をウエスト領域S、Sの下端からδの範囲をS、上端からδの範囲をS′、Sの下端からδの範囲をS、S′の上端からδの範囲をS′とすると、当然レーザビーム30の強度(単位面積当たりのパワー)は、Sが最も高く、次いでS及びS′、S及びS′の順である。したがって、レーザビームの強度が例えば5TW/cm程度であると、サファイア基板の結晶が同じ束縛条件下にあれば、S→S、S′→S、S′の順に多光子吸収による光誘起破壊加工が行われると考えられる。しかしながら、図3に示すように、Sの下端は自由空間に接し、束縛が弱いためと、光誘起破壊により発生する蒸気や粒子が自由空間に逃げやすいために、Sが加工され易い。それに対して、S、S、S′、S′は、自由空間から隔絶しており、束縛が強く、光誘起破壊により発生する蒸気や粒子が逃げられないために、加工されにくい。したがって、まず、Sが加工され、次に最も強度の高いSが加工されるものと考えられる。すなわち、ウエスト領域Sとそこから深さ方向に離間した裏面付近のS領域に光誘起破壊痕が形成され、光誘起破壊痕13、14となる。なお、このSの加工は、蒸気や粒子の逃げ道がないと進まないので、S領域も若干加工される必要があると思われる。したがって、S領域が全く加工されない非加工領域でなく、部分的に加工される領域である。
【0018】
ここで、レーリーレンジZrについて、説明する。レーリーレンジは、シングルモードのレーザビーム(ガウスビーム)を集光レンズで集光したときのビーム径がウエスト31でのスポット径の√2倍以内である距離であり、図3に示すようにレーリーレンジを越えるとビームは急激に大きくなる。したがって、レーリーレンジ以内のビームの強度が高く、レーリーレンジを越えるとビーム強度は急激に小さくなる。よって、ビームウエスト31の位置は、裏面12からレーリーレンジ以内が望ましい。なお、レーリーレンジZrは、集光レンズ200に入射するレーザビーム径を2aとすると、
Zr=(4λ/π)(1/2a) (3)
と表される。ここで、例えば、波長λ=1.045μmのレーザビームを集光する場合、NA=0.65のとき、f=4mm、2a=3mmを代入すると、Zr=2.4μm、となる。また、NA=0.24のとき、f=20mm、2a=3mmを代入すると、Zr=59μmとなる。したがって、NAが大きいほどZrが小さく、反対にNAが小さいほどZrが大きくなることがわかる。よって、集光レンズのNAを0.3以下にすると、分割加工対象である硬脆材料板体の厚さtが100μmのオーダでも上記のようなウエスト領域Sと裏面領域Sに光誘起破壊痕を形成することができるようになる。
【0019】
次に、図4を用いて、ウエストの領域及びウエストの領域から深さ方向に離間した硬脆材料板体の裏面付近に多光子吸収による光誘起破壊が起こるメカニズムについて説明する。図4は、レーザビームのウエストが硬脆材料板体の内部t/2より浅い位置に存在するように集光レンズの焦点位置を調整した場合である。図4に示すように、例えば、ウエスト31が表面11からd(<t/2)、裏面から(Zr+Δ)離れた位置にある場合は次のように考えられる。
【0020】
今、図4に示すように、ウエスト31から上下δの範囲をウエスト領域S、Sの下端からδの範囲をS、上端からδの範囲をS′、Sの下端からδの範囲をS、Sの下端からΔの範囲をSとすると、当然レーザビーム30の強度(単位面積当たりのパワー)は、Sが最も高く、次いでS及びS′、S、Sの順である。したがって、サファイア基板の結晶が同じ束縛条件下にあれば、S→S、S′→S→Sの順に加工されると考えられる。しかしながら、図4に示すように、S´の途中、Sの下端は自由空間に接し、束縛が弱いためと、光誘起破壊により発生する蒸気や粒子が自由空間に逃げやすいために、S´、Sが加工され易い。それに対して、S、S、Sは、自由空間から隔絶しており、束縛が強く、光誘起破壊により発生する蒸気や粒子が逃げられないために、加工されにくい。したがって、まず、S´ついでSが加工され、次に最も強度の高いS、次いでSの下部が加工されるものと考えられる。すなわち、ウエスト領域Sとそこから表面11に至るS´の一部と裏面付近のS及びSの一部に光誘起破壊痕が形成され、光誘起破壊痕13´、14′となる。
【0021】
次に、上記分割加工方法で分割予定ラインに沿って形成されたサファイア基板30の内部光誘起破壊痕13及び裏面に連なる光誘起破壊痕14或いは表面に連なる光誘起破壊痕13´及び裏面に連なる光誘起破壊痕14´を介して分割又は割断する工程について図5と共に説明する。 図5で、10がサファイア基板、14、14´が分割予定ラインに沿って形成された裏面に連なる光誘起破壊痕である。まず、図6に示すように、サファイア基板10の分割予定ラインに沿って裏面12に形成された光誘起破壊痕14、14´の両側部(図5中白抜き矢印17で示す部分)を保持又は固定する一方、基板10の表面11における上記破壊痕14、14´に対応する部分(図5中、白抜き矢印18で示す部分)に図示しないブレーク刃等の刃先を押し当てて押圧することにより、破壊痕14、14´に歪み応力を集中作用させ、上記基板10を分割予定ラインに沿って簡単且つ容易に分割又は割断することができる。
【0022】
次に本発明の分割加工方法を実施する分割加工装置の一例を図6と共に説明する。分割加工装置は、レーザビーム30を発生するレーザ装置50と、レーザビーム30をON−OFF制御するシャッター54と、レーザビーム30を透過するダイクロイックミラー55と、ダイクロイックミラー55を透過したレーザビーム30を集光する集光レンズ200と、集光レンズ200で集光されたレーザビーム30がZ軸方向から入射される加工対象物の硬脆材料板体10が吸着載置される溝aが付いた吸着台57と、吸着台57をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ71と、吸着台57をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ72と、吸着台57をX軸及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ73と、制御用パソコン80と、を備える。
【0023】
分割加工装置は、さらに、吸着台57に吸着された硬脆材料板体10を可視光線で照明して観察するための可視光線を発生する観察光源63と、観察光源63からの可視光線を90°曲げてダイクロイックミラー55に入射させるハーフミラー56と、集光レンズ200、ダイクロイックミラー55、及びハーフミラー56を介してウエハ100を撮像するCCDカメラ62を備える。
【0024】
分割加工装置はさらに、レーザ装置50、シャッター54、ダイクロイックミラー55、集光レンズ200、ハーフミラー56、観察光源63、及びCCDカメラ62を配置する光学ベンチ64と、光学ベンチ64をZ軸方向に駆動する駆動部61と、を備える。
【0025】
シャッター54、観察光源63、CCDカメラ62、及び駆動部61は制御用パソコン80に接続されており、シャッター54、観察光源63のON−OFF制御、CCDカメラ62の撮像データ処理、駆動部61の駆動制御が行われる。したがって、制御用パソコン80からの命令でレーザビーム30のウエスト位置(焦点位置)31をCCDカメラ62で撮像して制御用パソコン80のモニター上で観察することができる。
【0026】
レーザ装置50は、発振モジュール51と、発振モジュール51から発振されたレーザ光を伝播するファイバ53と、ファイバ53を伝播してきたレーザ光を増幅する増幅モジュール52と、発振モジュール51からのレーザ光の出力、パルス幅、繰返し周波数を制御するレーザコントローラ54と、を備える。レーザコントローラ54はパソコン80に接続されており、パソコン80からの命令で動作する。発振モジュール51は、Ybドープのモードロックファイバレーザと、ファイバレーザから発振されたパルスレーザ光を受光して伸張されたパルスレーザ光を出力するファイバー伸張器と、伸張されたパルスレーザ光を受光してパルスを間引くパルス間引き器と、伸張されて間引かれたパルスレーザ光を受光して増幅されたパルスレーザ光を出力するファイバー前置増幅器と、を備える。増幅モジュール52は、発振モジュール51からのパルスレーザ光をファイバ53を通して受光してさらに増幅するファイバ主増幅器と、増幅されたパルスレーザ光を受光して圧縮されたパルスレーザ光を出力する圧縮器と、を備える。増幅モジュール52は光学ベンチ64にレーザビーム30がZ軸方向に出射されるように固定されている。増幅モジュール52からは波長が1045nm、平均出力が1.2W、パルス幅が500fs〜5ps、繰り返し周波数が50〜1000kHzのレーザビーム30が出射される。
【0027】
レーザ装置50は、上記の他に、波長が300〜1800nm、パルス幅が10fs〜10ps、繰り返し周波数が50kHz〜10MHzの性能を有するものであればよい。例えば、再生増幅タイプのTi:サファイアレーザ装置等を用いてもよい。
【0028】
レーザ装置50は、波長が700〜1600nm、パルス幅が50fs〜2ps、繰り返し周波数が50〜300kHzの性能を有することが望ましい。
【0029】
以下に、上記構成の分割加工装置の操作手順について説明する。まず、シャッター54を閉じ、レーザ装置50を所定の繰り返し周波数で運転する。次にシャッター54を開いて集光レンズ200を出射するレーザビーム30のパルスエネルギが所定の値になるようにコントローラ54で発振モジュール51を制御する。
【0030】
次に、シャッター54を閉じて、吸着台57に分割予定ライン15の方向がY軸方向になるように且つ分割予定ライン15が吸着台57の溝イの直上に位置するように脆材料板体10をセットする。次に、観察光源63をONしてCCDカメラ62で硬脆材料板体10の表面11を観察しながら、焦点位置が表面11の分割予定ライン15に一致するようにX軸ステージ71、Y軸ステージ72を移動させると共に、駆動部61で光学ベンチ64をZ軸方向に微動させる。
【0031】
次に、ウエスト位置31が表面11から所定の深さd0(<t/2、ただし、tは板体10の厚さである。)に位置するように、駆動部61で光学ベンチ64を表面11に近づける(下降させる)。
【0032】
次に、シャッター54をONしてレーザビーム30をウエスト位置に集光照射しながら板体10をY軸ステージ72でY軸方向にビームスポットがオーバラップする所定の移動速度Vで移動させ、所定の距離移動させたらシャッター54をOFFする。
【0033】
裏面12に連なる光誘起破壊痕が形成される過程で、ガスや粒子といったデブリが放出されるが、分割予定ラインと吸着台の溝を一致させることで、次のような効果が発揮される。1)溝に純水或いはHe、N、反応性ガス等を流すことで、発生するデブリを効率よく除去することができる、2)分割加工対象の硬脆材料板体に応じて最適な反応性ガス(例えばフッ素ラジカルを生成するSF等)を選択使用することで化学エッチング作用が起こる(光誘起破壊で発生するプラズマの作用でフッ素ラジカルが発生し、例えば、ガラス板体に対して珪素のエッチングが化学的に進む)ため、裏面から内部に向けてより深い加工が可能になる、3)雰囲気ガスが最小限の容積で済む、4)溝を真空排気することで、デブリの飛散を抑制することができ、硬脆材料板体に形成されているデバイスへの付着を防止することができる。
【0034】
次に、本発明の分割加工方法を用いてサファイア基板を分割加工した実施例を分割断面写真と共に説明する。
【実施例1】
【0035】
図7にレーザビームのウエストをサファイア基板の厚さの1/2より深い位置に存在するように集光レンズの焦点位置を調整した分割加工結果を示す。
【0036】
加工条件
加工対象:サファイア基板(厚さt=100μm)
レーザ装置:Ybドープモードロックファイバレーザベースフェムト秒レーザ装置
波長:1.045μm
パルス幅:3.7ps
パルス繰り返し周波数:200kHz
平均出力:1.2W
ビーム径:3mm
集光レンズ:開口数0.16、焦点距離15.4mm
集光レンズ透過後のパルスエネルギ:1.5μJ
レーザビーム入射面:サファイア結晶のC面
レーザビーム入射方向:C面に垂直
ウエスト位置:表面(入射面)から厚み方向内部に78.8μm(集光レンズの焦点位置を入射面に合わせてから集光レンズを入射面に45μm近づけたときの計算値)入った位置
レーリーレンジ:35.1μm(計算値)
移動速度:40mm/s
ビームウエスト(スポット)径:6.8μm(計算値)
スポットオーバーラップ度(次パルスまでのスポット移動距離):0.2μm(計算値)
スポット中心への入射パルス数:17(計算値)
ビームウエスト強度:1.1TW/cm(計算値)
【0037】
図7は、上記加工条件で分割加工を行った後、ブレーク刃の刃先を押し当てて押圧して分割した分割面の顕微鏡写真である。このときのブレーク刃の押し込み量は100μmであった。表面から非加工域(劈開面)、加工域(ウエスト領域の光誘起破壊痕)、非加工域(部分加工域)及び裏面に連なる加工域が形成されていることがわかる。
【実施例2】
【0038】
図8にレーザビームのウエストをサファイア基板の厚さの1/2より浅い位置に存在するように集光レンズの焦点位置を調整した分割加工結果を示す。
【0039】
加工条件
加工対象:サファイア基板(厚さt=100μm)
レーザ装置:Ybドープモードロックファイバレーザベースフェムト秒レーザ装置
波長:1.045μm
パルス幅:480fs
パルス繰り返し周波数:200kHz
平均出力:1.2W
ビーム径:3mm
集光レンズ:開口数0.25、焦点距離11.0mm
集光レンズ透過後のパルスエネルギ:1.5μJ
レーザビーム入射面:サファイア結晶のC面
レーザビーム入射方向:C面に垂直
ウエスト位置:表面(入射面)から厚み方向内部に17.5μm(集光レンズの焦点位置を入射面に合わせてから集光レンズを入射面に10μm近づけたときの計算値)入った位置
レーリーレンジ:17.9μm(計算値)
移動速度:10mm/s
ビームウエスト(スポット)径:4.9μm(計算値)
スポットオーバーラップ度(次パルスまでのスポット移動距離):0.05μm(計算値)
スポット中心への入射パルス数:46(計算値)
ビームウエスト強度:16.6TW/cm(計算値)
【0040】
図8は、上記加工条件で分割加工を行った後、ブレーク刃の刃先を押し当てて押圧して分割した分割面の顕微鏡写真である。このときのブレーク刃の押し込み量は100μmであった。表面から表面に連なる加工域(ウエスト領域の光誘起破壊痕)、非加工域及び裏面に連なる加工域が形成されていることがわかる。
【0041】
レーザ装置に所謂超短パルスレーザ(フェムト秒パルスレーザ)を使用するので、加工原理が光誘起破壊であり、断熱的な加工となる。そのため裏面に連なる加工域はクラックの発生が抑制され、分割された板体の抗折強度が向上する。また、同時に行われる内部加工或いは表面に連なる加工もパルス幅が短いため、低い平均パワーであっても効率よく行うことができる。その結果、板体を透過する余剰レーザ光によるデバイスなどへのダメージを抑制することができる。また、中心波長が1μm以上の近赤外域のフェムト秒パルスレーザを用いると、板体及び半導体デバイスに対する透過性が高いため、さらに熱影響を抑制することができる。さらに、発振器や増幅器に光ファイバを用いるフェムト秒ファイバレーザ装置を使用すると、100kHz以上の繰り返し周波数をもつため、繰り返し周波数が1kHz程度の従来のチタンサファイア結晶をはじめとする再生増幅方式による大エネルギフェムト秒レーザ装置に比べ、高速な加工ができる。また、ビーム品質も優れている(M=1.3)ため、回折限界近くまで集光することができ、加工形状精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
半導体産業に利用される可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の分割加工方法を説明する模式図である。
【図2】図1のA−A線から見た一部切欠断面図である。
【図3】図2のビームウエスト付近を拡大して模式的に示した図である。
【図4】ビームウエストがサファイア基板の表面からその厚さの半分より浅い位置にあるように調整されたときのビームウエスト付近の拡大図である。
【図5】本発明の方法で分割加工された硬脆材料板体を分割する原理を説明する模式図である。
【図6】本発明の分割加工方法を実施できる、分割加工装置を示すブロック図である。
【図7】レーザビームのウエストをサファイア基板の厚さの1/2より深い位置に存在するように集光レンズの焦点位置を調整して分割加工した実施例1の分割面の顕微鏡写真である。
【図8】レーザビームのウエストをサファイア基板の厚さの1/2より浅い位置に存在するように集光レンズの焦点位置を調整して分割加工した実施例2の分割面の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0044】
10・・・・・・硬脆材料板体
11・・・・・・硬脆材料板体の表面
12・・・・・・硬脆材料板体の裏面
15・・・・・・分割予定ライン
30・・・・・・短光パルスレーザビーム
31・・・・・・ウエスト
200・・・・・集光レンズ
OA・・・・・・レーザビームの光軸
【出願人】 【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏


【公開番号】 特開2008−6652(P2008−6652A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−178474(P2006−178474)