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【発明の名称】 セメント含有洗浄廃水の発生を防止した連続的な生コンクリート製造方法並びに該方法に用いる安定化剤及び硬化促進剤
【発明者】 【氏名】馬場 文雄

【氏名】望月 宗夫

【氏名】鯵坂 巌

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント含有洗浄廃水の発生を防止した連続的な生コンクリートの製造方法であって、生コンプラントから運搬された生コンクリートを作業現場で荷卸し後、速やかに生コン車の付着モルタル及び/又はコンクリート残留物を定量の水で洗浄し、得られた洗浄液を生コン車内に貯留して生コンプラントに帰着し、次いで速やかに、本来添加されるべき水の量から前記定量の水に相当する量を減じた量の水で練り混ぜられた新たな生コンクリートを生コン車内に積込み、前記洗浄液と混合して生コン車を再び作業現場に運搬してなる一連の工程を、1回又は2回以上含んでなる、前記生コンクリートの製造方法。
【請求項2】
定量の水が、洗浄液中のセメントを、次の荷卸しが終了するまで間安定化し得る量の安定化剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項3】
新たな生コンクリートの積込みが、付着モルタル及び/又はコンクリート残留物に起因する生コンクリートが練混ぜを開始してから5時間以内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項4】
安定化剤が、洗浄液中のセメントに対して0.5重量%未満であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項5】
定量の水が、荷卸し後の生コン車を洗浄するのに支障のない量の水であり、かつその量は、本来添加されるべき水の量から前記定量の水に相当する量を減じた量の水で練り混ぜられた新たな生コンクリートが洗浄液との混合に支障のない量であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項6】
定量の水が、生コン車1台当たり20〜60リットルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項7】
連続的な生コンクリートの製造方法における最後に使用した生コン車及び/又は生コンプラントのコンクリート製造設備を、安定化剤を含む洗浄水で洗浄し、得られた洗浄廃水を、骨材分離装置に導いて骨材を分離して安定化スラリーとし、該安定化スラリーを当日又は翌日以降の生コンクリート製造の練混ぜ水に使用する工程をさらに含む、請求項1に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項8】
最後に使用した生コン車が、戻りコンクリートが残存する生コン車であることを特徴とする、請求項7に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項9】
洗浄水が、洗浄廃水中のセメントに対して0.2〜3重量%の安定化剤を含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項10】
連続的な生コンクリートの製造方法における最後の生コン車を、セメントが翌日以降まで安定化し得る量の安定化剤を含有する定量の水で洗浄し、洗浄液を生コン車に貯留し、翌日以降に、本来添加されるべき水の量から前記定量の水に相当する量を減じた量の水で練り混ぜられた新たな生コンクリートを生コン車内に積込み、前記洗浄液と混合してなる工程をさらに含む、請求項1に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項11】
定量の水が、洗浄液中のセメントに対して0.5〜5重量%の安定化剤を含有することを特徴とする、請求項10に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項12】
連続的な生コンクリートの製造方法における最後に使用した生コン車が戻りコンクリートが残存する生コン車であって、該生コン車で戻りコンクリートが当日又は翌日以降の生コンクリートの製造のために、運搬され荷卸しが終了するまでの間、戻りコンクリート中のセメントを安定化し得る量の安定化剤及び/又は流動化剤を添加・混合し、戻りコンクリートを生コン車に貯留し、生コンクリート製造に再使用する際に、硬化促進剤及び/又は新たな生コンクリートを積込む工程をさらに含む、請求項1に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項13】
安定化剤の添加量が、戻りコンクリート中のセメントに対して5重量%以下であり、硬化促進剤が、戻りコンクリート中のセメントに対して5重量%以下であることを特徴とする、請求項12に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項14】
請求項3〜13のいずれかに記載の生コンクリートの製造方法に使用される安定化剤。
【請求項15】
請求項12又は13のいずれかに記載の生コンクリートの製造方法に使用される硬化促進剤。
【請求項16】
安定化剤が、ホスホン酸誘導体、オキシカルボン酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、リグニンスルホン酸及びその塩、糖類、ケイ弗化物から選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項14に記載の安定化剤。
【請求項17】
硬化促進剤が、亜硝酸塩,硝酸塩,チオシアン酸塩,塩化カルシウム,アルカノールアミン、アルミン酸アルカリ塩,珪酸塩,アルカリ炭酸塩,カルシウムアルミネート,石膏から選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項16に記載の硬化促進剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはコンクリート製造に起因する汚染を防止して地球環境の保全に寄与するとともに、作業時間の短縮、資源の有効利用など、コンクリート製造工程全体を合理化するシステムに関し、具体的には、コンクリート製造に起因するセメント含有不要物の発生を防止する連続的な生コンクリートの製造方法並びに該方法に用いる安定化剤及び硬化促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、生コンプラント(以下、プラントと略す)稼働中の作業工程は、プラントで製造された生コンクリートを生コン車に積込み、工事現場まで運搬し、荷卸し後、付着モルタル或いはコンクリート残留物を洗浄し、その洗浄廃水を生コン車内に貯留した状態でプラントに帰着し、次いで、生コン車ドラム内を再び洗浄した後、新たな生コンクリートを積込むという一連の作業が終日まで繰り返し行われている。この作業工程の生コンクリート荷卸し後において、生コン車運転者は、生コン車のドラム内部、排出口及びシュート等に付着したモルタルやコンクリート残留物を洗浄している。この洗浄作業は、運転者の裁量に任せ、生コン車に搭載された約200リットルタンクの洗浄水を用いて行われているために、通常、約100リットル程度の洗浄水が使用されている。更に、この洗浄作業に際しては、工事現場の汚染を防止するため、洗浄廃水をスチール缶等の容器に一旦受けた後、この洗浄廃水を生コン車内に戻し、プラントに帰着している。
【0003】
また、プラントに帰着した後に生コン車の運転者は、生コン車中の洗浄廃水を、洗浄廃水処理施設に排出した後、清水や上澄水等を用いて洗浄し、排出する作業が行われている。この作業は、一般的に残水排出と呼ばれ、生コン車1台に付き平均3.5回/日実施され、平均約10分/1回程度の作業時間を要し、更に、この作業に伴って発生する洗浄廃水の量は、約30〜50リットル/1台と膨大なものである。また、戻りコンクリートの処理には、多量の水を使用して洗浄され、この他にミキサやポッパーなどの製造設備の洗浄によっても洗浄廃水が発生している。従って、プラントにおいては、この洗浄廃水を処理するために大規模な廃水処理施設の設置を余儀なくされ、その保全作業に要する費用も膨大なものとなっている。
【0004】
廃水処理施設により処理されたセメントを含む洗浄廃水は、その一部がスラッジ水として、生コンクリートの練混ぜ水として再使用されてはいるものの、その殆どは脱水処理装置を用いて脱水して脱水ケーキとし、産業廃棄物として産業廃棄物処理業者に処理を委託しているために、この費用もまた膨大なものとなっている。
【0005】
ところで、平成11年6月10日発行のコンクリート工業新聞は、全国生コン工業組合連合会技術委員会・スラッジ対策部会の生コンスラッジの実態に関する報告書のまとめに基づき、スラッジ、戻りコン及び残コンの総廃棄費用の合算は、年間約150億円(内スラッジ廃棄費用:42億円弱)にものぼると試算している。また、スラッジの発生原因となる戻りコンや残コンの発生量は、1工場当たりの月平均が32.4mで、出荷量に対する発生量が0.91%、さらに、回答者の8割が廃棄物の発生量は減らないとみており、スラッジの減量化方法として練混ぜ水への推進が必要とする一方で、「スラッジの管理体制の拡充とユーザーへの情報公開が必要」と報道している。この報道からも明らかなように、プラント運営上、廃棄物処理費用が深刻な問題となっており、この解決策が強く望まれている。
【0006】
上記の現状を踏まえ、特開昭59−73461号公報には、生コン工場の回収水に含まれるスラッジの有効利用を目的に、沈殿分離その他の手段により濃縮したスラリーに凝結遅延剤を加え、スラリー中のセメントの水和進行を抑制し、コンクリート材料として再利用する技術が、特開平3−218954号公報には、コンクリート製品を製造する過程で排出されるセメントスラッジを脱水して含水比65%以下の脱水スラッジとし、該スラッジを新たに混練するコンクリートに再利用する技術が提案されている。
【0007】
また、特開平3−265550号(特許第2651537号)には、生コン車の付着モルタルやコンクリート残留物をスラッジ水として積極的に使用する手法として、凝結遅延剤を含有する水で生コン車を洗浄し、得られた洗浄廃水を骨材分離槽に導いて、骨材を分離し、骨材分離後の洗浄廃水をスラッジ沈降槽に放置して、上澄水とスラッジ水に分離し、分離取得したスラッジ水と上澄水とを翌日以降に生コンクリートの練混ぜ水として使用する方法が提案されている。しかし、この方法は、廃棄物処理費用を低減することはできても、残水排出作業が依然として必要となり、かつ、骨材分離槽、スラッジ沈降槽、上澄水槽、スラッジ貯留槽等の設備が必要不可欠となるために大規模な廃水処理設備への多大なる投資及び設備設置後の保全作業が煩雑となり合理的な技術とは言えない。
【0008】
さらに、特許第2579373号には、スラッジ水の発生を防止する手法として、生コンクリート製造日の最後に使用した生コン車中のコンクリート残留物に、比較的多量の安定化剤を添加し、12〜90時間程度までコンクリート残留物を安定化し、翌日以降に新しいコンクリートを添加する技術が開示されている。
そして、特許第2124288号には、戻りコンクリートに安定化剤を添加し、使用前に促進剤及び/又は新たなコンクリートを加え、戻りコンクリートを再利用する技術が開示されている。
【0009】
いずれにしても、上記の従来技術は、プラントの運営における一部分を改善・改良する技術が開示されているにすぎず、プラントの運営において、コンクリートの製造によるセメント含有不要物の発生を大幅に低減又は完全に防止する手法は、前記の新聞記事と照らし合わせて見ても明らかなように、未だ提案されてはいない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、プラントにおけるコンクリート製造に起因するセメント含有不要物の発生を大幅に低減又は完全に防止し、もって地球環境の保全と資源の有効利用、作業効率の向上に寄与する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、一定量の水で生コンクリート荷卸し後の生コン車を洗浄し、この洗浄液を新たなコンクリートの練混ぜ水として使用することによって、プラントにおける生コン車の残水排出作業をなくし、洗浄廃水の発生を防止できるばかりでなく、生コンクリートの製造を連続的に効率よく行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、セメント含有洗浄廃水の発生を防止した連続的な生コンクリートの製造方法であって、生コンプラントから運搬された生コンクリートを作業現場で荷卸し後、速やかに生コン車の付着モルタル及び/又はコンクリート残留物を定量の水で洗浄し、得られた洗浄液を生コン車内に貯留して生コンプラントに帰着し、次いで速やかに、本来添加されるべき水の量から前記定量の水に相当する量を減じた量の水で練り混ぜられた新たな生コンクリートを生コン車内に積込み、前記洗浄液と混合して生コン車を再び作業現場に運搬してなる一連の工程を、1回又は2回以上含んでなる、前記生コンクリートの製造方法に関する。
また本発明は、定量の水が洗浄液中のセメントを、次の荷卸しが終了するまで間安定化し得る量の安定化剤を含有する、前記の生コンクリートの製造方法に関する。
さらに本発明は、新たな生コンクリートの積込みが、付着モルタル及び/又はコンクリート残留物に起因する生コンクリートが練混ぜを開始してから5時間以内である、前記の生コンクリートの製造方法にも関する。
【0013】
また本発明は、安定化剤が、前記洗浄液中のセメントに対して0.5重量%未満である、前記の生コンクリートの製造方法にも関する。
さらに本発明は、定量の水が、荷卸し後の生コン車を洗浄するに支障のない量の水であり、かつその量は、定量の水を減じて練り混ぜられた新たな生コンクリートが洗浄液との混合に支障のない量である、前記の生コンクリートの製造方法に関する。
また本発明は、定量の水が、生コン車1台当たり40〜60リットルである前記の生コンクリートの製造方法にも関する。
【0014】
さらに本発明は、連続的な生コンクリートの製造方法における最後に使用した生コン車及び/又は生コンプラントのクリート製造設備を、安定化剤を含む洗浄水で洗浄し、得られた洗浄廃水を、骨材分離装置に導いて骨材を分離して安定化スラリーとし、該安定化スラリーを当日又は翌日以降の生コンクリート製造の練混ぜ水に使用する、前記の生コンクリートの製造方法に関する。
また本発明は、最後に使用した生コン車が、戻りコンクリートが残存する生コン車である、前記の生コンクリートの製造方法にも関する。
さらに本発明は、洗浄水が、前記洗浄廃水中のセメントに対して0.2〜3重量%の安定化剤を含む、前記の生コンクリートの製造方法に関する。
また本発明は、連続的な生コンクリートの製造方法における最後に使用した生コン車を、セメントが翌日以降まで安定化し得る量の安定化剤を含有する定量の水で洗浄し、洗浄液を生コン車に貯留し、翌日以降に、本来添加されるべき水の量から前記定量の水に相当する量を減じた量の水で練り混ぜられた新たな生コンクリートを生コン車内に積込み、前記洗浄液と混合してなる工程をさらに含む、前記の生コンクリートの製造方法にも関する。
【0015】
さらに本発明は、定量の水が、洗浄液中のセメントに対して0.5〜5重量%の安定化剤を含有する、前記の生コンクリートの製造方法に関する。
また本発明は、連続的な生コンクリートの製造方法における最後に使用した生コン車が戻りコンクリートが残存する生コン車であって、該生コン車で戻りコンクリートが当日又は翌日以降の生コンクリートの製造のために、運搬され、荷卸しが終了するまでの間戻りコンクリート中のセメントを安定化し得る量の安定化剤及び/又は流動化剤を添加・混合し、戻りコンクリートを生コン車に貯留し、生コンクリート製造に再使用する際に、硬化促進剤及び/又は新たな生コンクリートを積込み工程をさらに含む、前記の生コンクリートの製造方法にも関する。
さらに本発明は、安定化剤の添加量が、戻りコンクリート中のセメントに対して5重量%以下であり、硬化促進剤が、戻りコンクリート中のセメントに対して5重量%以下である、前記の生コンクリートの製造方法に関する。
【0016】
また本発明は、前記の生コンクリートの製造方法に使用される安定化剤及び硬化促進剤にも関する。
さらに本発明は、前記の生コンクリートの製造方法に使用される安定化剤が、ホスホン酸誘導体、オキシカルボン酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、リグニンスルホン酸及びその塩、糖類、ケイ弗化物から選ばれた1種又は2種以上を含有する、前記の安定化剤に関する。
また本発明は、前記の生コンクリートの製造方法に使用される硬化促進剤が、亜硝酸塩、硝酸塩、チオシアン酸塩、塩化カルシウム、アルカノールアミン、アルミン酸アルカリ塩、珪酸塩、アルカリ炭酸塩、カルシウムアルミネート、石膏から選ばれた1種又は2種以上を含有する、前記の硬化促進剤にも関する。
【0017】
以上のとおり、本発明の主たる特徴は、生コン車を定量の水で洗浄して得られた洗浄液を、新たに積込む生コンクリートの単位水量の一部として使用することにある。本発明における新たな生コンクリートとは、本来添加されるべき水の量から前記定量の水に相当する量を減じた量の水と練り混ぜられたものであり、これを生コン車に積込んだ後に前記洗浄液と混合して生コンクリートを製造することにより、所望の品質を有するコンクリートを製造するものである。また、定量の水は、コンクリートの練混ぜ量と生コン車の積載量等の条件を勘案し、例えば、1.5mのコンクリートを3回練り混ぜ、生コン車に積込む場合には、3バッチのそれぞれのコンクリートの単位水量から均等に減ずるなど、適宜定めればよい。
【0018】
本発明において洗浄に用いられる定量の水は、荷卸し後の生コン車の洗浄に支障のない量であり、かつ、その量は、本来添加されるべき水の量から前記定量の水に相当する量を減じた量の水と練り混ぜられた新たに積込まれる生コンクリートが生コン車内で洗浄液との混合に支障のない柔らかさ(通常、スランプで5cm以上)が得られる量以下であることが好ましく、通常、大型生コン車の場合で20〜60リットル、好ましくは50リットル以下であり、小型生コン車の場合には20〜40リットル、好ましくは30リットル以下である。
【0019】
また、本発明における荷卸し後の生コン車を洗浄するために使用する定量の水は、洗浄液中のセメントを、生コン車がプラントに帰着し、新たな生コンクリートを積込み、運搬し、荷卸しが終了するまでの間安定化し得る量以下の安定化剤を含有することができる。
洗浄液中のセメントは、時間の経過に伴い水和反応が進行し、徐々にセメントとしての活性能力を失っていく。それ故に、長時間経過した洗浄液を生コンクリートの製造に使用すると、コンクリートの単位水量の増加に伴う圧縮強度の低下等、品質に悪影響を及ぼす場合があり、コンクリートの配合を修正しなければならない。特に暑中においては、生コン車ドラム内に貯留した洗浄液が40℃以上に上昇する場合も予想され、また、昼休みの介在により新たなコンクリートを積込むまでに約1時間以上保管されることを考慮しなければならない。したがって、安定化剤の添加量は、洗浄液中のセメントを、生コン車がプラントに帰着し、新たな生コンクリートを積込み、運搬し、荷卸しが終了するまでのあいだ安定化し得る量以下であればよい。この添加量は、洗浄液中のセメント量、温度及び新たなコンクリートを積込み、運搬し、荷卸しが終了するまでの時間を勘案して定めればよく、具体的には洗浄液中のセメントに対して固形分換算で0.5重量%未満、通常の場合には0.1重量%未満であればよい。
【0020】
本発明における新たな生コンクリートの積込みは、生コン車がプラントに帰着し次第、できるだけ速やかに行うのがよい。JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」には、コンクリートは、練混ぜを開始してから1.5時間以内に荷卸しができるように運搬しなければならない。ただし、購入者と協議のうえ、運搬時間の限度を変更することができると規定されている。また、日本建築学会 JASS 5 「鉄筋コンクリート工事」には、コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間の限度は、外気温が25℃未満の場合は120分、25℃以上の場合は90分を限度とすると規定している。
【0021】
すなわち、通常の場合、生コン車がプラントを出発し、帰着し、次のコンクリートが積み込まれるまでの時間は、約2時間以内であるが、プラントから工事現場までの距離、交通渋滞等を配慮して、生コンクリートの製造−積込み−運搬−荷卸し終了までの工程に120分(2時間)、荷卸し後の洗浄−プラントへ帰着する工程に1.5時間以上、併せて3.5時間以上を要することを考慮すればよい。したがって、本発明に於ける新たな生コンクリートの積込みは、昼休みの介在等を勘案し、付着モルタル及び/又はコンクリート残留物に起因する生コンクリートの練混ぜを開始してから5時間以内、好ましくは4.5時間以内、更に好ましくは4時間以内である。なお、凝結遅延剤が多量に使用され、凝結時間が5時間以上も延長されている生コンクリートの場合には、これらの時間に限定されるものではない。
【0022】
本発明における生コンクリートの製造は、プラント稼働中の一連の連続した「製造−運搬−荷卸し−洗浄−帰着−積込み」の工程を何度繰り返しても、その間洗浄廃水は全く発生しないので、該工程を2回以上繰り返すことにより、本発明の効果をより発揮することができる。
【0023】
また前記工程の最後に使用した生コン車並びにミキサやポッパーなどのコンクリート製造設備に対しては、安定化剤を含む洗浄水で洗浄して得られた洗浄廃水を、骨材分離装置に導いて骨材を分離して安定化スラリーとし、該安定化スラリーを当日又は翌日以降あるいは次の連続した生コンクリート製造における生コンクリートの練混ぜ水に使用することが好ましい。このようにすれば、翌日以降に持ち越される作業の場合でも完全にクローズドな循環システムが構築されるため、廃棄物ゼロが達成される。この場合、洗浄水中には、洗浄廃水中のセメントに対して固形分換算で0.2〜3重量%の安定化剤を添加すればよく、また、所定量の安定化剤を含有する洗浄水あるいは貯留された安定化スラリーを循環して用いて洗浄こともできる。
【0024】
ここで最後に使用した生コン車とは、通常当日の作業終了直前に使用した生コン車を意味するが、当日の作業途中の生コン車であっても、極端に長い中断時間の直前に使用した生コン車や、軽量コンクリート、水中コンクリート等の特殊コンクリートを運搬した生コン車、あるいは戻りコンクリートが残存する生コン車などは、連続した生コンクリートの製造を中断するという意味で最後に使用した生コン車の範疇に属し、これらの場合も、上記の手法を適用することが好ましい。
【0025】
安定化スラリーの固形分濃度は、通常、上記の方法によると20重量%以下のものが製造されるが、該スラリーの貯留設備、移送設備、製造設備の能力などに応じて定めればよく、特に限定されない。該スラリーの使用態様は、製造された該スラリーの使用に先立ち濃度を測定した後に、あるいは該スラリーを一定の濃度に調整した後に使用してもよい。
そして、安定化スラリーは、通常、コンクリートの練混ぜ水として使用されるが、該スラリー中の固形分を細骨材として、あるいはセメントとしての活性能力を確認した上で、セメントに代替可能な混和材料として使用することもできる。また、骨材分離槽で分離された骨材は、コンクリート材料として再利用することができる。
【0026】
あるいは、生コンクリート運搬の最後に使用した生コン車に対して、洗浄液中のセメントを翌日以降あるいは次の連続した生コンクリートの製造まで安定化し得るように、安定化剤を含有する定量の水で洗浄し、洗浄液を生コン車に貯留し、翌日以降あるいは次の連続した生コンクリート製造に定量の水を減じた新たな生コンクリートを積込み、生コンクリートを製造する工程を含むこともまた本発明の好適態様のひとつであり、この方法によっても完全なクローズドシステムは達成される。この場合、定量の水は、洗浄液中のセメントに対して固形分換算で0.2〜3重量%の安定化剤を添加すればよく、その量は、通常、大型生コン車の場合で20〜60リットル以下、好ましくは50リットル以下であり、小型生コン車の場合には20〜40リットル、好ましくは30リットル以下である。
【0027】
さらに、戻りコンクリートが残存する生コン車に対しても、戻りコンクリートが当日又は翌日以降あるいは次の連続した生コンクリートの製造に再使用され、運搬され、荷卸しが終了するまでの間戻りコンクリート中のセメントを安定化し得る量の安定化剤及び/又は流動化剤を添加・混合し、戻りコンクリートを生コン車に貯留し、当日又は翌日以降あるいは次の連続した生コンクリート製造に再使用する際に、硬化促進剤及び/又は新たな生コンクリートを積込んで生コンクリートを製造する工程を含むことが好ましい。
このように戻りコンクリートが残存する生コン車があった場合にも、本発明のこの態様により、完全な循環システムが中断されることなく連続的な実施が可能となる。なお、戻りコンクリートは、生コン車以外の容器に移して安定化処理を行ってもよく、生コン車で安定化された戻りコンクリートを生コン車以外の容器に移して貯留してもよく、その後、再利用の前に、安定化した戻りコンクリートを生コン車に戻して再利用することができる。
【0028】
また、安定化剤の添加量は、戻りコンクリートが当日に再利用されるか、翌日以降に再利用されるかによって異なる。戻りコンクリートが当日再利用される場合には、その添加量は少なくてよく、翌日以降に再利用する場合には比較的多量となるが、その添加量は、一般に戻りコンクリート中のセメントに対して固形分換算で5重量%以下である。また、安定化剤とともに、戻りコンクリートの低下した流動性を改善するため、又は再利用に供するまでのあいだ流動性を維持する目的で流動化剤を併用することができる。流動化剤は、目的に応じた使用量で市販品が使用でき、例えば、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリカルボン酸塩を主成分とするものを例示することができる。
【0029】
戻りコンクリートを再利用する際には、硬化促進剤のみを添加し、又は新たな生コンクリートのみを積込み、あるいは硬化促進剤及び新たな生コンクリートを積込み生コンクリートを製造することができる。これらの選択は、戻りコンクリートの再利用時期、残存量などによって適宜定めればよい。また、硬化促進剤は、戻りコンクリート中の水和進行が抑制されたセメントを、活性化させる目的で使用する。従って、硬化促進剤の添加量は、戻りコンクリート中のセメントに対して固形分換算で5重量%以下の範囲で適宜定めればよい。
【0030】
以上のとおり、本発明によれば、通常の生コンクリートの連続的操業をセメント含有洗浄廃水を発生させることなく行うことができることはもちろん、翌日以降に持ち越される作業においても、あるいは特殊コンクリート、戻りコンクリートが途中で介在した場合にも、本発明の好適態様により、完全な循環システムが遮断されることなく実行できるので、いかなる場合にも廃棄物ゼロが可能となる。
【0031】
本発明における安定化剤は、生コン車の洗浄液又は安定化スラリー中に含まれるセメントの水和反応を抑制するものであればよく、ホスホン酸誘導体、オキシカルボン酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、リグニンスルホン酸及びその塩、糖類、ケイ弗化物などを例示することができる。具体的には、ホスホン酸誘導体としては、アミノジ(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)/五ナトリウム塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸/四ナトリウム塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)/カルシウムナトリウム塩、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)/カリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)/ナトリウム塩、その他として特開平5−221700号公報に記載されたポリメトキシポリホスホン酸塩などが、ポリカルボン酸及びその塩としては、比較的低分子量のポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレンスルホン酸−アクリル酸共重合体及びそれらの塩が、オキシカルボン酸及びその塩としては、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸及びそれらの塩としてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩が、糖類としては、グルコース、マルトース、サッカロース、フラクトース、ガラクトース、オリゴ糖、コーンシロップなどが、また、ケイ弗化物としては、ケイフッ化マグネシウムを例示することができる。
【0032】
また、本発明の安定化剤の使用量は、前述の如く、使用目的、被安定化物中のセメント量、温度、被安定化物が再利用されるまでの時間等の条件により適宜定めることができる。
【0033】
本発明における硬化促進剤は、亜硝酸塩、硝酸塩、チオシアン酸塩、塩化カルシウム、アルカノールアミンなどを含有する早強剤やアルミン酸アルカリ塩,珪酸塩,アルカリ炭酸塩,カルシウムアルミネート、石膏などを含有する急結剤等を例示することができる。また、本発明の硬化促進剤の使用量は、前述の如く、戻りコンクリートの使用時期、混合量、温度などの条件により適宜定めることができる。
【0034】
以下に、本発明の方法の具体例を示すが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
試験は、コンクリート平均出荷量1,000m3/日、生コン車数が56台の生コンプラントで行った。試験に使用したコンクリートの配合を表1に示す。配合No.1は、清水を使用した従来のコンクリート配合であり、配合No.2は、安定化スラリーの固形分で5%使用した配合であり、配合No.3は、配合No.2より定量の水(50リットル)を減じた配合である。なお、安定化剤は、ホスホン酸塩(アミノトリ(メチレンホスホン酸)ソーダ)及びオキシカルボン酸塩(グルコン酸ソーダ)を主成分とする(株)エヌエムビー社製「デルボクーン110(商品名)」を使用した。
【0036】
【表1】


【0037】
試験1(従来の方法)
生コンプラントにおいて、従来の生コンクリートの製造方法により、配合No.1のコンクリートを5m3、大型生コン車4台(A,B,C,D車)に積込みA工事現場まで運搬し、生コンクリートの全量を荷卸しした後、生コン車の排出口、シュートなどを生コン車に搭載された200リットル洗浄タンクの水を用いて洗浄した。シュートの洗浄に際しては、20リットル容器に洗浄廃水を一旦受けた後、これを生コン車に戻し、生コンプラントに帰着した。
【0038】
次いで、帰着した後、直ちに生コン車内の洗浄廃水を廃水処理施設に排出し、更に清水を用いて生コン車内部を洗浄し、この廃水を排水処理施設に排出した後、生コン車内に残水が残っていないことを確認した。その後、直ちに配合1のコンクリートを5m3、大型生コン車に積込み、前記と同様の作業を終日まで繰り返した。なお、生コン車の洗浄廃水及び戻りコンクリートは全て清水で洗浄して、洗浄廃水処理装置に排出・処理し、骨材を分離して得られたスラッジ水は、全量を翌日に脱水装置にて脱水ケーキとし、産業廃棄物として処理した。
【0039】
試験2(本発明の方法)
次に、本発明の生コンクリートの製造方法により、まず、最初に積込むコンクリートのみ配合No.2のコンクリートを5m3、大型生コン車(A,B,C,D車)に積込みA工事現場まで運搬し、生コンクリートの全量を荷卸しした後、生コン車の排出口、シュートなどを生コン車に搭載された50リットル洗浄タンクの全量の水(50リットル)を用いて洗浄した。シュートの洗浄に際しては、20リットル容器に洗浄液を一旦受けた後、これを生コン車に戻し、生コンプラントに帰着した。
【0040】
次いで、帰着した後、2回目の積込み以降は、直ちに配合No.3の洗浄液50リットルの量を単位水量から減じたコンクリートを5m3、大型生コン車に積込み工事現場まで運搬し、前記と同様の作業を終日まで繰り返した。但し、前日の生コンクリート運搬の最後に使用した生コン車、戻りコンクリート及びミキサ・ホッパーなどの製造設備は、洗浄液中のセメントに対して固形換算で0.5重量%の安定化剤(デルボクリーン110)を含む洗浄水で洗浄した。この洗浄で得られた洗浄廃水を、骨材分離装置に導いて骨材を分離して安定化スラリーとし、該安定化スラリーを当日の生コンクリートの練混ぜ水に全量を使用した。なお、当日の生コンクリート運搬の最後に使用した生コン車及び戻りコンクリートは、前記と同様に安定化スラリーとし、該安定化スラリーを翌日の生コンクリートの練混ぜ水に全量を使用した。
【0041】
従来及び本発明の生コンクリートの製造方法による、積込みから次の積込み迄の時間、残水排出に要した時間及び生コン車の洗浄に用いられた水の量を表2に示す。また、従来及び本発明の生コンクリートの製造方法によるコンクリートのスランプ、空気量及び圧縮強度を表3に示す。
表4は、生コンプラントの1日当たりの残水排出回数、残水排出時間、洗浄水発生量、及び月当たりの戻りコンクリート発生台数、戻りコンクリート発生量及び廃棄物(脱水ケーキ)発生量を従来の方法と本発明の方法を比較した結果である。
【0042】
表4から明らかなように、本発明の方法は、残水排出作業を省略することにより、作業時間が大幅に短縮された結果、生産性が向上し、かつ、洗浄廃水の発生を激減させた、これに起因する廃棄物の発生も激減することができた。
【0043】
【表2】


【0044】
【表3】


【0045】
【表4】


【0046】
本発明の効果を下記に示す。
1)セメント含有不要物の発生を大幅に低減し、やむなく発生するセメント含有不要物を再利用して産業廃棄物の発生を完全に防止する。
2)セメント含有不要物を再利用して資源を有効利用し、産業廃棄物の発生を防止することで、汚染を防止して地球環境の保全に貢献する。
3)残水排出作業を省略して、生産性を向上し、かつ、廃棄物の発生を防止する。
4)セメント含有洗浄廃水の発生を最小限に止めることができ、大規模な廃水処理設備を必要としない。
5)所要の品質を有するコンクリートの製造を可能にする。
【出願人】 【識別番号】398012786
【氏名又は名称】BASFポゾリス株式会社
【出願日】 平成20年4月25日(2008.4.25)
【代理人】 【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司


【公開番号】 特開2008−188999(P2008−188999A)
【公開日】 平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願番号】 特願2008−114997(P2008−114997)