トップ :: B 処理操作 運輸 :: B28 セメント,粘土,または石材の加工

【発明の名称】 セメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法、並びに、セメント系組成物
【発明者】 【氏名】柴谷 啓一

【要約】 【課題】石炭灰をセメント系組成物の製造用として有効利用可能な状態とすることが可能なセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法、並びに、当該製造方法で製造された石炭灰を含むセメント系組成物の提供を目的とする。

【解決手段】火力発電所等で発生する原料石炭灰が、水と共にミキサー1の攪拌槽10に投入される。ミキサー1は、攪拌槽10の内部にスクリュー状の攪拌翼13,14や翼板15を有し、これらがモータ16の作動に伴って回転軸12と共に回転する構成とされている。攪拌槽10に原料石炭灰と水とを投入した状態で、ミキサー1を所定時間にわたって作動させると、水中に微粒化された石炭灰が分散した石炭灰スラリーが形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰、セメント、水及び骨材を含む原料からなるセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法であって、
通過率が90%の粒径が20μmよりも大きい粒度分布をもつ石炭灰を原料とし、当該石炭灰を通過率が90%の粒径が20μm以下の粒度分布となるまで液中で攪拌してスラリー化することを特徴とするセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項2】
石炭灰、セメント、水及び骨材を含む原料からなるセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法であって、
通過率が50%の粒径が10μmよりも大きい粒度分布をもつ石炭灰を原料とし、当該石炭灰を通過率が50%の粒径が10μm以下の粒度分布となるまで液中で攪拌してスラリー化することを特徴とするセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項3】
攪拌槽と、当該攪拌槽の内部で回転する攪拌手段とを備えた攪拌装置によって原料となる石炭灰と液体とが攪拌され、
石炭灰の攪拌に際して、攪拌手段が攪拌槽に対して毎分1000回転以上の回転数で相対回転することを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項4】
石炭灰、セメント、水及び骨材を含む原料からなるセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法であって、
攪拌槽と、当該攪拌槽の内部で回転する攪拌手段とを備えた攪拌装置によって原料となる石炭灰と液体とが攪拌され、
石炭灰の攪拌に際して、攪拌槽に対して攪拌手段を毎分1000回転以上の回転数で相対回転させることを特徴とするセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項5】
攪拌槽は、所定方向に延長した筒状のものであり、
攪拌手段は、前記攪拌槽の延長方向に沿って伸びる回転軸に螺旋状の攪拌翼が取り付けられたものであることを特徴とする請求項3又は4に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項6】
石炭灰が、攪拌槽の容量に対して30%〜40%の範囲で投入され、
液体が、攪拌槽の容量に対して30%〜40%の範囲で投入されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項7】
石炭灰と液体とが、重量比で1:1〜0.8:1.2の範囲内となるように投入されることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項8】
石炭灰の攪拌中に、空気又は二酸化炭素を石炭灰を含む液中に導入することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項9】
石炭灰が、界面活性剤を起泡させた液中において攪拌されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法で製造された石炭灰スラリーと、セメント、水及び骨材とを含む原料からなるセメント系組成物。
【請求項11】
骨材の一部又は全部として、コンクリート及び/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱することによりモルタル成分及び/又はアスファルト成分が剥離された再生骨材が使用されていることを特徴とする請求項10に記載のセメント系組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法、並びに、当該製造方法で製造された石炭灰を含むセメント系組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1等に開示されているように、火力発電所等において発生する石炭灰が、セメント系組成物の製造に利用されている。
【特許文献1】特開平7−242457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、火力発電所等で発生する石炭灰は、必ずしもセメント系組成物の製造に使用するのに適したものである訳ではなかった。すなわち、火力発電所等で発生する石炭灰の多くは、酸化カルシウム(CaO)等の膨張成分を比較的多量に含有しており、これを混合したセメント系組成物は、硬化時あるいは硬化後に膨張ひび割れ等が発生する懸念があった。
【0004】
上記したような懸念があるため、従来技術では、火力発電所等で発生する石炭灰は、一部の良質なものを除いて大半が産業廃棄物として廃棄されていた。さらに具体的には、従来技術では、火力発電所等で発生する石炭灰のうち、日本工業規格の規格番号:JIS A 6201(規格名称:「コンクリート用フライアッシュ」)に1種や2種として規定されているものについては、セメント系組成物の原料として利用されていた。しかし、火力発電所等で発生する石炭灰の大半は、前記した規格を外れたものであり、産業廃棄物として廃棄されていた。このため、資源の有効利用の観点から、現状において廃棄されている石炭灰をセメント系組成物の製造に有効利用することが望まれていた。
【0005】
そこで、かかる知見に基づき、本発明は、従来技術においてセメント系組成物の製造に利用できていないような品質の石炭灰をセメント系組成物の製造用として有効利用可能としたり、従来技術において利用されている石炭灰をより一層セメント系組成物の製造に適した状態とすることが可能なセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法、並びに、当該製造方法で製造された石炭灰を含むセメント系組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題に基づき、本発明者らが検討したところ、従来技術においてセメント系組成物の製造のために好適に使用されている石炭灰は、セメント系組成物の製造において不適切とされている石炭灰に比べてその粒径が大きい傾向にあることを見いだした。また、本発明者らは、石炭灰を水等の液中に投入して攪拌することにより、石炭灰の粒径を小さくすることができることを見いだした。さらに、本発明者らがさらに検討を重ねたところ、石炭灰を液中に投入して攪拌することにより、石炭灰中に含まれている酸化カルシウム(CaO)等の膨張成分を中和できることを見いだした。
【0007】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項1に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材を含む原料からなるセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法であって、通過率が90%の粒径が20μmよりも大きい粒度分布をもつ石炭灰を原料とし、当該石炭灰を通過率が90%の粒径が20μm以下の粒度分布となるまで液中で攪拌してスラリー化することを特徴とするセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法である。
【0008】
かかる構成によれば、従来技術においてセメント系組成物の製造に不適切とされていた石炭灰を、従来技術においてセメント系組成物の製造に使用されているものと同様にセメント系組成物の製造用として好適に利用可能な石炭灰スラリーの製造方法を提供することができる。
【0009】
また、本発明の製造方法で製造されるセメント系組成物用石炭灰スラリーは、スラリー化されたものであるため、乾燥状態の石炭灰や、単に加水後静置した石炭灰を調合したセメント系組成物に比べて、著しく高い流動性を示す。そのため、本発明の製造方法によって製造された石炭灰スラリーを用いれば、化学混和剤(AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤)の使用量を増大させることなく、セメント系組成物を所望の流動性に調整することができる。
【0010】
ここで、一般的に、セメント系組成物の原料として上記したような化学混和剤を投入すると、セメント系組成物の製造コストの増大や、凍結時間の遅延、施工性の低下、強度低下等に代表されるような様々な問題の発生が懸念される。しかし、上記したように、本発明に係る製造方法によって製造された石炭灰スラリーをセメント系組成物の原料として用いれば、化学混和剤の投入量を抑制できる。そのため、本発明のセメント系組成物の製造方法によれば、化学混和剤を投入量を抑制し、化学混和剤の投入に伴って発生が懸念される種々の問題の発生を最小限に抑制可能な石炭灰スラリーを提供することができる。
【0011】
また、同様の知見に基づいて提供される請求項2に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材を含む原料からなるセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法であって、通過率が50%の粒径が10μmよりも大きい粒度分布をもつ石炭灰を原料とし、当該石炭灰を通過率が50%の粒径が10μm以下の粒度分布となるまで液中で攪拌してスラリー化することを特徴とするセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法である。
【0012】
かかる製造方法によれば、上記請求項1に記載の製造方法で製造したものと同様に、セメント系組成物用として利用する上で、より一層高品質な石炭灰スラリーを提供することができる。
【0013】
上記請求項1や請求項2に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法について、本発明者らは、攪拌槽と、当該攪拌槽の内部で回転する攪拌手段とを備えた攪拌装置に石炭灰と液体とを投入して攪拌する実験を繰り返し、攪拌条件について種々検討した。その結果、本発明者らは、石炭灰の攪拌時間を長期化するよりも、攪拌手段の回転速度を所定の回転数以上の高速とする方が、石炭灰を微粒化し、セメント系組成物用として最適な状態とするのに有益であることを見いだした。
【0014】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項3に記載の発明は、石炭灰の攪拌に際して、攪拌手段が攪拌槽に対して毎分1000回転以上の回転数で相対回転することを特徴とする請求項1に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法である。
【0015】
かかる製造方法によれば、粒径の大きなものを含む石炭灰をスムーズに微粒化することができ、セメント系組成物用として最適な状態とすることができる。
【0016】
また、同様の知見に基づいて提供される請求項4に記載の発明は、石炭灰、セメント、水及び骨材を含む原料からなるセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法であって、攪拌槽と、当該攪拌槽の内部で回転する攪拌手段とを備えた攪拌装置によって原料となる石炭灰と液体とが攪拌され、石炭灰の攪拌に際して、攪拌槽に対して攪拌手段を毎分1000回転以上の回転数で相対回転させることを特徴とするセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法である。
【0017】
かかるセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法によれば、粒径の大きなものを含む石炭灰をスムーズに微粒化することができ、セメント系組成物用として最適な状態とすることができる。
【0018】
また、本発明の製造方法によりセメント系組成物用石炭灰をスラリー化したものを用いたセメント系組成物は、乾燥状態の石炭灰や、単に加水後静置した石炭灰を調合したものに比べて流動性が著しく高い。そのため、セメント系組成物の作成にあたり、本発明の製造方法によって製造された石炭灰スラリーを採用すれば、AE剤や減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等のような化学混和剤の使用量を抑制しつつ、セメント系組成物を所望の流動性に調整することができる。
【0019】
上記請求項3や請求項4に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法において、攪拌槽は、所定方向に延長した筒状のものであり、攪拌手段は、前記攪拌槽の延長方向に沿って伸びる回転軸に螺旋状の攪拌翼が取り付けられたものであることが望ましい(請求項5)。
【0020】
また、上記請求項3〜5のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法は、石炭灰を、攪拌槽の容量に対して30%〜40%の範囲で投入し、液体を、攪拌槽の容量に対して30%〜40%の範囲で投入して実施されることが望ましい(請求項6)。
【0021】
上記請求項3〜6のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法は、石炭灰と液体とを、重量比で1:1〜0.8:1.2の範囲内となるように投入して実施されることが望ましい(請求項7)。
【0022】
ここで、本発明者らが検討を重ねたところ、石炭灰を液中で攪拌する際に石炭灰を含む液中に空気や二酸化炭素を導入することにより、石炭灰に含まれている酸化カルシウム(CaO)等の膨張成分をより一層迅速に中和できることを見いだした。
【0023】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項8に記載の発明は、石炭灰の攪拌中に、空気又は二酸化炭素を石炭灰を含む液中に導入することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法である。
【0024】
かかる製造方法によれば、二酸化炭素により酸化カルシウム(CaO)等の膨張成分となるものを迅速に中和することができる。従って、本発明によれば、膨張成分となるものの含有量が少なく、セメント系組成物の製造用として適切な品質の石炭灰スラリーを迅速に製造することができる。
【0025】
また、本発明のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法において、空気を導入したり、空気由来の二酸化炭素を利用する場合は、空気中に存在する二酸化炭素を有効利用することができる。
【0026】
ここで、火力発電所等において副産物として発生する石炭灰の多くは、未燃状態の石炭(未燃カーボン)を含んでいる。未燃カーボンを多く含む石炭灰をAE減水剤等の化学混和剤と一緒にセメント系組成物の原料として用いると、化学混和剤が未燃カーボンに吸着されてしまい、その分だけ化学混和剤の使用量が増加することとなる。また上記したように、化学混和剤の使用量が増加すると、セメント系組成物の製造コストが増大するばかりか、セメント系組成物の凍結時間の遅延や、施工性の低下、強度低下等の種々の問題が発生する懸念がある。従って、セメント系組成物の原料として石炭灰を使用する場合は、未燃カーボンの含有量を可能な限り低下させることが望ましい。
【0027】
そこで、かかる課題を解決すべく提供される請求項9に記載の発明は、石炭灰が、界面活性剤を起泡させた液中において攪拌されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法である。
【0028】
かかる製造方法によれば、石炭灰中に含まれている未燃カーボンを起泡状態にある界面活性剤によって捕捉し、回収することができる。従って、本発明の製造方法によれば、未燃カーボンの含有量が少ない、セメント系組成物用として用いる上で高品質な石炭灰スラリーを提供することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法で製造された石炭灰スラリーと、セメント、水及び骨材とを含む原料からなるセメント系組成物である。
【0030】
本発明のセメント系組成物は、上記各請求項に記載の製造方法によりスラリー化された状態の石炭灰スラリーを原料としている。そのため、本発明のセメント系組成物は、流動性が高く、施工性に優れている。
【0031】
また、本発明のセメント系組成物は、上記した石炭灰スラリーを原料としているため、仮にAE減水剤等の化学混和剤を使用するような場合であっても、その使用量を最小限に抑制することができる。そのため、本発明によれば、製造コストが低く、化学混和剤を使用することにより懸念される凍結時間の遅延や強度低下等の問題が起こりにくいセメント系組成物を提供することができる。
【0032】
ここで、上記したセメント系組成物は、骨材として、採石場等から採取した、いわゆるバージンの骨材を使用することも可能である。しかし、資源の有効利用の観点からすると、ビル等のようなコンクリート構造物の解体に伴って発生するコンクリート廃材を破砕する等して製造された、いわゆる再生骨材を利用することが望ましい。
【0033】
一方、セメント系組成物を構成する骨材中に含まれているシリカ鉱物等は、セメント系組成物に含まれているアルカリ成分と、いわゆるアルカリ骨材反応を起こすことがある。アルカリ骨材反応の有無や反応速度は、セメント系組成物を構成する骨材や、セメント系組成物の原料として投入される化学混和剤の特性や量に大きく依存しているものと想定される。そのため、セメント系組成物において、アルカリ骨材反応を抑制するためには、原料として使用される骨材の特性を十分把握するか、化学混和剤の使用量を抑制する必要がある。
【0034】
しかし、再生骨材は、様々な現場で発生したコンクリート廃材を原料として製造されたものである。そのため、再生骨材中に含まれている、アルカリ骨材反応の原因の一翼を担う反応性物質を特定することは困難である。従って、セメント系組成物の組成物として化学混和剤を使用する場合は、化学混和剤の使用量を極力抑制することが望ましい。
【0035】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項11に記載の発明は、骨材の一部又は全部として、コンクリート及び/又はアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱することによりモルタル成分及び/又はアスファルト成分が剥離された再生骨材が使用されていることを特徴とする請求項10に記載のセメント系組成物である。
【0036】
本発明のセメント系組成物は、原料として上記各請求項のいずれかに記載した製造方法で製造した石炭灰スラリーを使用しているため、仮に化学混和剤を使用するとしても、その使用量が極めて少ない。そのため、本発明によれば、全部あるいは一部の骨材として再生骨材を使用したとしても、アルカリ骨材反応が起こりにくいセメント系組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、セメント系組成物の製造に利用できていないような品質の石炭灰をセメント系組成物の製造用として有効利用可能な状態とすることが可能なセメント系組成物用石炭灰スラリーの製造方法、並びに、当該製造方法で製造された石炭灰スラリーを含むセメント系組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
続いて、本発明の一実施形態であるセメント系組成物用石炭灰スラリー(以下、単に石炭灰スラリーと称する)、並びに、当該石炭灰スラリーを利用したセメント系組成物の製造方法について順を追って説明する。
【0039】
(石炭灰スラリーの製造方法)
本実施形態で原料として使用される石炭灰(以下、必要に応じて原料石炭灰と称す)は、石炭火力発電所の微粉炭燃焼ボイラ等から副産物として多量に発生したものであり、日本工業規格(規格名称:「コンクリート用フライアッシュ」 ・ 規格番号:JIS A 6201)に1種や2種として規定されているものから外れた規格外のものである。また、原料石炭灰は、粒径が20μmよりも大きなものを含んでいる。さらに詳細には、原料石炭灰は、通過率が90%の粒径が20μmよりも大きく、通過率が50%の粒径が10μmよりも大きい粒度分布をもつ石炭灰である。
【0040】
本実施形態で調整されるセメント系組成物用石炭灰(以下、必要に応じて石炭灰スラリーと称する)は、前記した原料石炭灰を水中に投入して攪拌し、スラリー化したものである。さらに具体的には、本実施形態の製造方法で調整される石炭灰スラリーは、図1に示すようなミキサー1(攪拌装置)に原料石炭灰と水(液体)とを投入して攪拌することにより調整される。
【0041】
図1に示すように、ミキサー1は、筒状の攪拌槽10を有し、この内部に攪拌手段11を備えた構成とされている。攪拌槽10は、図示状態のように水平に配されるものであり、両端部分が封鎖されている。
【0042】
攪拌槽10の内部には、攪拌手段11が配設されている。攪拌手段11は、いわゆるスクリューと類似した構成とされている。すなわち、攪拌手段11は、攪拌槽10の長手方向(軸方向)に沿って配された回転軸12と、この回転軸12に取り付けられた螺旋状の攪拌翼13,14と、翼板15とから構成されている。回転軸12は、攪拌槽10の外部に配されたモータ16に接続されている。
【0043】
攪拌手段11は、モータ16の作動に伴って回転軸12が回転すると、これに連動して攪拌翼13,14や翼板15も回転する。図1に矢印で示すように、攪拌翼13,14は、回転に伴って、攪拌槽10の内部に、攪拌槽10の長手方向両端部から中央側に向かう方向への推力を発生させることができる構成とされている。すなわち、図1において攪拌槽10の左方側に配された攪拌翼13は、回転に伴って、攪拌槽10の内部に、攪拌槽10の左方側から中央側に向かう方向への推力を発生させることができる。また逆に、攪拌槽10の右方側に配された攪拌翼14は、回転に伴って、攪拌槽10の右方側から中央側に向かう方向への推力を発生させることができる。
【0044】
翼板15は、回転軸12の長手方向略中央部に取り付けられている。攪拌手段11は、翼板15を回転させることにより、図1に矢印で示すように攪拌槽10の内側から上方に向かう方向への推力を発生させることができる。
【0045】
攪拌槽10は、図示状態において上方側となる位置に開口20〜22を有する。開口20,21は、それぞれ攪拌槽10の長手方向両端側に位置しており、開口22は、攪拌槽10の長手方向略中央部、すなわち回転軸12に取り付けられた翼板15に相当する位置に存在している。
【0046】
図1に示す状態において、攪拌槽10の上方側には、環流部25が設けられている。環流部25は、攪拌槽10の長手方向略中央部に設けられており、攪拌槽10に設けられた開口20〜22を介して環流部25と連通している。
【0047】
環流部25は、環流流路26,27と、狭窄流路28と、反発部29とを有する。環流流路26,27は、それぞれ攪拌槽10に設けられた開口20,21と連通している。また、狭窄流路28は、攪拌槽10の開口22と連通している。また、環流流路26,27は、環流部25内において狭窄流路28と連通している。
【0048】
反発部29は、狭窄流路28に繋がる開口22に対向する位置に設けられている。そのため、攪拌槽10内で攪拌されている攪拌物が開口22を介して狭窄流路28に流れ込むと、攪拌物が反発部29に衝突してその流れの向きを変え、環流流路26,27に流入する。
【0049】
原料石炭灰は、上記したような構成のミキサー1の攪拌槽10に水と共に投入され攪拌される。ここで、原料石炭灰は、攪拌槽10の容量に対して30%〜40%の範囲で投入される。また、水についても、攪拌槽10の容量に対して30%〜40%の範囲で投入される。また、攪拌槽10に投入される原料石炭灰および水は、重量比(原料石炭灰重量:水重量)で1:1〜0.8:1.2の範囲内で投入される。
【0050】
本実施形態の製造方法では、原料石炭灰をミキサー1で攪拌するのにあたって、コンクリートを構成する他の混和剤や骨材は添加又は投入されない。すなわち、本実施形態の製造方法では、石炭灰をスラリー化する段階では、石炭灰と水のみが混練され、混和材等の他の原料は一緒に混練されない。また、本実施形態の製造方法では、ミキサー1に原料石炭灰と共に投入される水として、上水道水、地下水、工業用水等のような一般的に練混ぜ水として使用されるものが採用される。
【0051】
上記したような条件で原料石炭灰および水が攪拌槽10に投入されると、ミキサー1のモータ16が作動し、攪拌手段11を構成する回転軸12や攪拌翼13,14、翼板15が回転する。この際、回転軸12や攪拌翼13,14、翼板15は、高速で回転する。回転軸12等の回転速度は、適宜調整することが可能であるが、毎分1000回転以上の高速で回転することが望ましく、毎分1200回転以上であることが望ましく、毎分1400回転以上であることが最も望ましい。本実施形態では、回転軸12等は、毎分1400回転以上の高速で回転する。
【0052】
上記したようにして回転軸12や攪拌翼13,14、翼板15が高速で回転し始めると、攪拌槽10内には、図1に矢印で示す方向に推力が発生し、原料石炭灰と水とが攪拌される。さらに詳細に説明すると、攪拌翼13,14が回転すると、攪拌槽10内に、攪拌槽10の長手方向(軸方向)両端側から中央側に向かう方向に推力が発生する。また、翼板15が回転すると、図1に示す状態において上方側、すなわち環流部25側に向かう方向への推力が発生する。攪拌槽10内に投入された原料石炭灰や水は、攪拌翼13,14の回転に伴う推力の影響を受けて攪拌槽10の両端側から中央側に向けて流れ、中央部近傍において衝突する。また、攪拌槽10の中央部近傍に集まった原料石炭灰と水の混合物は、翼板15の回転に伴って発生する推力の影響を受けて、図示状態において上方に向けて流れ、攪拌槽10の長手方向略中央部に設けられた開口22を通って環流部25の狭窄流路28に流れ込む。
【0053】
狭窄流路28に流れ込んだ原料石炭灰と水との混合物は、さらに上方(下流側)に向けて流れ、反発部29に衝突する。反発部29で衝突した前記混合物は、環流流路26,27側に跳ね返り、これらの流路26,27および開口20,21を通って攪拌槽10の両端側に戻される。
【0054】
攪拌槽10に投入された原料石炭灰や水は、攪拌手段11が作動する間、上記したようにして攪拌槽10や環流部25の内部を流れて循環し、攪拌されていく。このようにして、ミキサー1における原料石炭灰と水との攪拌が開始されてから所定の時間が経過すると、攪拌槽10内に原料石炭灰が均等に分散した石炭灰スラリーが生成する。
【0055】
上記したようにして原料石炭灰と水とを混練してスラリー化された石炭灰スラリーは、そのままコンクリートの原料として使用することもできるが、半日以上の時間にわたって混合攪拌機内等に静置しておくことが望ましい。
【0056】
本実施形態の石炭灰スラリーの製造方法において、ミキサー1による原料石炭灰と水との攪拌時間(攪拌設定時間T)は、原料石炭灰をスラリー化した際に、水中に分散している石炭灰を通過率が90%の粒径が20μm以下であり、通過率が50%の粒径が10μm以下の粒度分布となるように調整するのに必要な時間(攪拌所要時間t)以上となるように設定される。また、攪拌所要時間tについては、実験等によって導出することができる。本実施形態のように、上記したミキサー1を用いて攪拌する場合は、攪拌設定時間Tが約2〜5分程度の間で調整される。
【0057】
本実施形態のセメント系組成物の製造方法では、上記したようにして製造された石炭灰スラリーをセメントや水、化学混和剤、骨材と所定の割合で混合することにより調合される。ここで、本実施形態で示すセメント系組成物の製造方法では、骨材として、採石場等において採取された、いわゆるバージンの骨材(粗骨材、細骨材)を利用するだけでなく、骨材の一部又は全部として、建築物の解体現場等において発生したコンクリート廃材の塊を処理して得られる、いわゆる再生骨材を利用することができる。以下、本実施形態で利用する再生骨材の製造方法について説明する。
【0058】
(再生骨材の製造方法)
続いて、本実施形態において採用される再生骨材の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。図2は、本実施形態のコンクリートの製造方法において原料として採用される再生骨材の製造方法を模式的に示した概念図である。図2に示す再生骨材の製造方法は、大別して前処理フロー、粗骨材回収フロー、細骨材回収フローの3つのフローにより構成されている。前処理フロー、粗骨材回収フローおよび細骨材回収フローは、いずれも複数の工程により構成されている。以下、図面を参照しながら再生骨材の製造方法について順を追って説明する。
【0059】
本実施形態で実施される再生骨材の製造方法は、図2に示すような骨材再生プラント50によって建築物の解体現場等において発生したコンクリート廃材の塊(以下、必要に応じてコンクリート塊Bと称す)が処理される。さらに具体的には、骨材再生プラント50でコンクリート塊Bを処理する場合は、先ず前処理フローの第1段階(破砕工程)としてトラック等で搬送されてきたコンクリート塊Bがホッパー51内に投入される。
【0060】
ホッパー51に投入されたコンクリート塊Bは、往復動しているレシプロフィーダ52によって移送され、ジョークラッシャー53(破砕機)に投入される。ここで、ジョークラッシャー53は、固定板55と、回転体57の回転に伴い固定板55に対して近接離反する方向に往復動する可動板56とを有する。そのため、ジョークラッシャー53の固定板55と可動板56との間にコンクリート塊Bが投入されると、これが破砕されコンクリート破砕物Vとなる。コンクリート塊Bを破砕する破砕工程が完了すると、コンクリート破砕物Vが磨鉱機60に投入され、製造工程が磨鉱工程に移行する。
【0061】
磨鉱工程では、磨鉱機60によってコンクリート破砕物Vが磨鉱される。ここで使用される磨鉱機60は、図3のように中空体状の本体65(攪拌室)内に複数本のロッド棒68(磨鉱処理部材)を配したロッドミル状のものであり、本体65が回転する構成となっている。磨鉱機60は、円筒形の本体65の一端側にコンクリート破砕物Vを投入するための投入口66が設けられており、他方側に排出口67を設けた構成となっている。
【0062】
排出口67には、開口径を変化させるように移動可能な自在調整板70が設けられている。排出口67は、この自在調整板70の固定位置を調整することにより排出する砂利砕石の直径を選択可能にしている。また、排出口67の外側には、金網状の篩71でなるトロンメル式分級機72を設けている。なお、本実施形態では、磨鉱処理部材としてロッド棒68を使用しているが、これを鉄製等の球状態に代えてもよく、また、上記ロッド棒68や球状態等の磨鉱処理部材を使用せずに、砂利砕石分同士を磨鉱させるようにしてもよい。
【0063】
磨鉱機60の投入口66にコンクリート破砕物Vが水と共に投入され、本体65が所定の回転数で回転を開始するとコンクリート破砕物Vの磨鉱が開始される。磨鉱工程では、本体65内でコンクリート破砕物Vとロッド棒68とがぶつかりあって粉砕され、コンクリート破砕物Vの表面に付着しているモルタル分が剥離され磨鉱される。本体65の回転時間が所定時間に達すると、本体65の回転が停止し、排出口67からコンクリート破砕物Vとこれに付着していたモルタル分の混合物が排出され磨鉱工程が完了する。
【0064】
図2に示すように、磨鉱工程において磨鉱機60の排出口67から排出されたコンクリート破砕物Vは、振動篩58に供給され、処理工程が分離工程に移行する。分離工程では、コンクリート破砕物Vが振動篩58において直径が30mm以上である砂利砕石分(以下、過大砕石分Uと称す)と、直径が5mm〜30mm程度である大径の砂利砕石分(以下、粗砂利砕石分Sと称す)と、直径が5mmよりも小さい砂礫分Gとに分類される。即ち、粗砂利砕石分Sは、コンクリート破砕物Vのうち粗骨材に相当する大きさに粉砕されたものであり、砂礫分Gは、細骨材に相当する大きさに粉砕されたものである。過大砕石分Uは、ジョークラッシャー53に供給されるコンクリート破砕物Vと同等あるいはこれより僅かに小さい程度であり、コンクリート破砕物Vが磨鉱機60において十分に破砕されずに排出されたものである。そのため、過大砕石分Uは、図2に矢印で示すように磨鉱機60の投入口66に戻され、再度破砕される。
【0065】
また、粗砂利砕石分Sは、粗骨材として利用可能な粗骨材成分を主成分とし、これらの表面に付着するなどしたモルタル分や夾雑物を含むものである。また、砂礫分Gは、細骨材として利用可能な細骨材成分を主成分とするものであり、これらの表面に付着するなどしたモルタル分や夾雑物を含んでいる。コンクリート破砕物Vが振動篩58において粒径に応じて3種類に分離する分離工程が終了すると、処理フローが前処理フローから細骨材回収フローおよび粗骨材回収フローに移行する。
【0066】
処理フローが細骨材回収フローに進行すると、上記した分離工程において振動篩58によって選別された砂礫分Gの混合物(混合破砕物P)が磨鉱機61に投入され、磨鉱される。磨鉱機61は、上記した磨鉱機60と同一の構造である。混合破砕物Pは、磨鉱機61において磨鉱されることにより、モルタル分Mの付着量が少ない再生細骨材Nとなる。磨鉱機61から取り出される再生細骨材Nには、混合破砕物Pから剥離され、微粒化されたモルタル分Mや木屑等の夾雑物が混在している。そのため、磨鉱機61から取り出された再生細骨材Nやモルタル分M等の混合物は、スパイラル分級機75に投入され、再生細骨材N(砂)とモルタル分Mや夾雑物を含む廃棄物とに分離される。モルタルM等の廃棄物は、シックナー76によって水と分離され、廃棄される。
【0067】
一方、処理フローが粗骨材回収フローに進行すると、図2に示すように、上記した分離工程において振動篩58によって選別された粗砂利砕石分Sは、比重選別装置80に投入され、処理工程が粗砂利分離工程に進行する。
【0068】
ここで、粗砂利砕石分Sは、磨鉱機60による破砕および磨鉱により表面に付着していたモルタル分Mが除去された再生粗骨材Rを主成分とすると共に、振動篩58において除去しきれなかった幾分の微粉状のモルタル分Mや夾雑物等が混在している。また、粗砂利砕石分Sには、再生粗骨材Rと同様の粒径に固まり、磨鉱機60では破砕しきれなかった粗骨材状のモルタル分Mも含まれている。そこで、これらを選別して再生粗骨材Rを回収すべく、粗砂利砕石分Sは、比重選別装置80に投入される。
【0069】
粗砂利砕石分Sが比重選別装置80に投入されると、処理工程が粗砂利分離工程に移行する。比重選別装置80は、図4に示すように、分離用水が貯留された水槽81を備えている。水槽81には、多数の通孔82を有する網目状のスクリーンプレート83が分離用水に浸されるようにほぼ水平に設置されている。スクリーンプレート83の上方は、粗砂利砕石分Sを分離するための分離室84として機能する。また、スクリーンプレート83の下方は、3つの区画に分割され、第1槽86a、第2槽86b及び第3槽86cが形成されている。各槽の下端部は開口されており、スクリーンプレート83の通孔82から落下する比重の重い骨材を排出可能な構成とされている。
【0070】
第1,2,3槽86a,86b,86cのそれぞれには、下方に向けて開口した気室87a,87b,87cが設けられている。気室87a,87b,87cは、それぞれ独立的に外部から空気を強制的に導入するとともに、この内部にある空気を吸引して排出可能な構成とされている。比重選別装置80は、気室87a,87b,87cへの空気の給排気が所定の周期で繰り返される構成となっている。また、各気室87a,87b,87cにおける空気の給排気のタイミングは、上流側(第1槽86a側)から下流側(第3槽86c側)に向けて徐々にずらされている。そのため、比重選別装置80が作動すると、水槽81内の水位は、気室87a,87b,87cにおける空気の給排気に伴って上下動し、上流側から下流側に向けて水槽81の分離用水が波打つ。
【0071】
水槽81の下流端、即ち第3槽86cよりも下流側には、シューター91が設けられており、シューター91の上端には、分離室84に向けて開口した入口93(取り入れ部)が設けられている。入口93の内部には、モータによって回転するロータリゲート95が設けられている。シューター91の入口93は、スクリーンプレート83の上面から所定の高さにわたって開口されており、その開口上端は、水槽81内の分離用水の水位よりも低い位置となされている。また、シューター91の入口93には、上下方向に移動し、入口93の開度を調整するためのカットゲート96が配設されている。
【0072】
シューター91の入口93の上方には、分離室84内に蓄積された粗砂利砕石分Sのうち、上部側に蓄積された比重の軽いものを排出するための取り出し部97が設けられている。この取り出し部97と入口93とは隔壁98(境界部)により仕切られている。隔壁98は、水槽81からオーバーフローした比重の小さい骨材原料を水槽81外へ円滑に自然流下させるために、外方へしたがって下方に傾斜されている。
【0073】
水槽81内に投入された粗砂利砕石分Sは、比重選別装置80の作動に伴い水槽81内に発生する分離用水の脈動に乗って水槽81内を浮遊、沈降しながら徐々に下流側に流れる。粗砂利砕石分S中のモルタルや夾雑物は、再生粗骨材Rに比べて水流発生時の浮遊力が大きく、水流停止時の沈降量が少ない。そのため、粗砂利砕石分Sの投入後、比重選別装置80が動作を継続させると、水中での浮遊力および沈降量の差に基づいて下方に再生粗骨材Rが層状に沈降し、その上方に粗骨材状に固まったモルタル分Mが積もる。また、砂礫分Gや微粒状のモルタル分Mのような軽重量なものは、一部が上方に積もり残部が分離用水中の上方を漂う。実際は、再生粗骨材Rについても、磨鉱機60における破砕、磨鉱の程度により表面に付着しているモルタル分の量は均一ではない。そのため、再生粗骨材Rの層についても、モルタル分の付着量が多いものが上方に移動し、モルタル分の付着が少ないものが下方に潜ることとなる。
【0074】
水槽81の下流側に層状に蓄積された粗砂利砕石分Sのうち、比重の大きな再生粗骨材Rは、カットゲート96を通過し、ロータリーゲート95によってシューター91内に強制的に取り入れられる。シューター91に取り入れられた再生粗骨材Rは、シューター91の下方の開口100から排出され回収される。
【0075】
一方、水槽81の上方側に蓄積された層は、モルタル分Mの付着量が多い軽比重の骨材や微粒状のモルタル分M、木屑等の夾雑物等の混合物である。これらの混合物は、利用価値の低い廃棄物であるため、シックナー76において水分を取り去った後に廃棄される。
【0076】
上記したようにして回収された再生粗骨材Rや再生細骨材Nは、再生粗骨材Rや再生細骨材Nの全重量中におけるモルタル成分の割合が20%以下、アスファルト成分の割合が5%以下であり、本実施形態のセメント系組成物の製造方法において原料として投入される粗骨材の一部又は全部として好適に使用可能な品質である。
【0077】
(セメント系組成物の製造方法)
本実施形態のコンクリートの製造方法では、上記した石炭灰スラリーの製造方法で製造された石炭灰スラリーや、セメント、水、化学混和剤、骨材と所定の割合で混合することによりセメントモルタル又はコンクリートが調合される。ここで添加される化学混和剤には、従来公知のAE剤や減水剤、AE減水剤及び/又は高性能AE減水剤等、所望の化学混和剤を任意に選択して採用することができる。また、ここで添加されるセメントには、普通ポルトランドセメント(JIS R 5210)を好適に使用し得るが、他の種類のセメント、例えば、早強セメント等を使用することも可能である。
【0078】
本実施形態では、骨材として一般的に使用される粗骨材及び細骨材の一部あるいは全部として、いわゆる再生骨材が採用される。ここで使用される再生骨材としては、上記した製造方法によりコンクリートやアスファルトの廃材を破砕した破砕物を磨鉱してモルタル成分やアスファルト成分を剥離したものを採用することができる。本実施形態で使用される再生骨材は、吸水率が5%以下であることが望ましい。
【0079】
本実施形態のセメント系組成物の製造方法において採用される再生骨材は、再生骨材の全重量中におけるモルタル成分の割合が20%以下のものであることが望ましい。再生骨材は、製造時にモルタルを完全除去するのが困難であるが、モルタルの残留量が再生骨材の全重量に対して3%以上20%以下の範囲内となるまでモルタル分が剥離できていれば、コンクリートの製造に好適に使用することができる。また、本実施形態において採用される再生骨材は、全重量中におけるアスファルト成分の割合が、再生骨材の全重量に対して5%以下であることが望ましい。アスファルトを含む廃材から再生骨材を作製する場合についてもアスファルト成分を完全除去するのが困難であるが、アスファルト成分が再生骨材の全重量に対して1%以上5%以下の範囲内となるまで除去できていれば、セメント系組成物の製造に好適に使用することができる。
【0080】
上記したようにして原料石炭灰をスラリー化した石炭灰(石炭灰スラリー)を骨材等の他の原料に対して添加すると、乾燥状態の石炭灰を添加する場合に比べて流動性が向上する。そのため、本実施形態の製造方法によってコンクリートなどのセメント系組成物を製造すれば、高性能AE減水剤に代表される化学混和剤の添加量あるいは添加率を最小限に抑制できる。さらに具体的には、本実施形態のセメント系組成物の製造方法によれば、化学混和剤の添加量を従来の調合の1/2以下に調合設計することができる。さらに詳細には、本実施形態の製造方法によれば、例えば化学混和剤の添加量を2kg/m3を下回る程度まで減量することが可能である。また、本実施形態の製造方法によれば、例えば化学混和剤の添加量を、重量比で0.5% 以下程度まで減量することができる。
【0081】
上記したように、本実施形態のセメント系組成物の製造方法によれば、化学混和剤の使用量を最小限に抑制できるため、セメント系組成物の製造コストを最小限に抑制することができる。また、上記した製造方法によれば、化学混和剤の添加に伴って起こると想定されるセメント系組成物の凍結時間の遅延や、施工性の低下、いわゆるアルカリ骨材反応に伴う強度低下等の不具合の発生を最小限に抑制することができる。
【0082】
本実施形態のセメント系組成物の製造方法では、アルカリ骨材反応の原因となる化学混和剤の使用量が少ない。そのため、本実施形態のセメント系組成物の製造方法によれば、再生骨材のようにアルカリ骨材反応の原因となるシリカ鉱物等の含有量が不明であったり不安定な骨材を原料として使用してもアルカリ骨材反応が起こりにくいセメント系組成物を提供することができる。
【0083】
また、上記した石炭灰スラリーの製造方法のように、原料石炭灰を水中で攪拌すれば、原料石炭灰中に含まれている酸化カルシウム(CaO)等の膨張成分の大部分を中和することができる。そのため、本実施形態のように上記したようにして製造された石炭灰スラリーをセメント系組成物の製造において原料として用いれば、硬化時や硬化後においても膨張ひび割れ等の不具合を起こしにくいセメント系組成物を提供することができる。
【0084】
また、石炭灰の混水攪拌時間は、セメント系組成物のフレッシュ性状、或いは、硬化時又は硬化後の物性を考慮して適宜調整することが可能である。すなわち、本実施形態のコンクリートの製造方法では、原料石炭灰の粒度分布を考慮しつつ、原料石炭灰を混水攪拌する時間や、原料石炭灰や水の投入量等の条件を適宜調整することにより、セメント系組成物のフレッシュ性状や、硬化時又は硬化後の物性(フロー値、コンクリートの膨張性、強度等)を適宜調整することができる。
【0085】
ここで、上記実施形態では、ミキサー1によって原料石炭灰を混水攪拌してスラリー化したものをそのままセメント系組成物の原料とする例を例示した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、原料石炭灰をスラリー化する際、あるいは、石炭灰スラリーとした後にさらに別途の処理を施したものをセメント系組成物の原料とすることも可能である。
【0086】
さらに具体的に説明すると、原料石炭灰となる石炭灰の多くは、火力発電所等において発生するが、火力発電所等で使用されている石炭の品質次第では、石炭灰中に未燃カーボン量が多く含まれていることがある。未燃カーボンを多く含む石炭灰がコンクリートの原料として使用されると、コンクリートへの空気連行性が阻害されたり、石炭灰に含まれている酸化カルシウムに起因してコンクリートの水素イオン濃度(pH)が高くなり、コンクリートの膨張ひび割れ等の不具合が起こる可能性がある。そこで、かかる懸念がある場合は、例えば上記したような製造方法で原料石炭灰を処理して石炭灰スラリーとする際に、下記のような安定化処理を施すことも可能である。以下、石炭灰スラリーの安定化処理について詳細に説明する。
【0087】
(石炭灰スラリーの安定化処理)
石炭灰スラリーの安定化処理は、石炭灰スラリーを製造する際、あるいは、石炭灰スラリーを製造した後に、界面活性剤を添加して起泡させることにより行われる。
【0088】
石炭灰スラリーを製造する際に界面活性剤を投入する場合は、上記した石炭灰スラリーの製造工程において、ミキサー1の攪拌槽10に原料石炭灰や水と一緒に界面活性剤が投入される。その後、ミキサー1が作動すると、攪拌槽10内において界面活性剤が起泡し、泡中に原料石炭灰中に含まれる未燃成分の大部分が取り込まれる。
【0089】
上記したようにしてミキサー1が作動し始めてから所定の作動時間が経過すると、ミキサー1が停止される。ここで、ミキサー1の作動時間(攪拌設定時間T)は、上記した石炭灰スラリーの製造方法と同様に、原料石炭灰をスラリー化した際に、水中に分散している石炭灰の通過率を、90%の粒径が20μm以下であり、通過率が50%の粒径が10μm以下の粒度分布となるように調整するのに必要な時間(攪拌所要時間t)以上となるように設定される。
【0090】
上記したようにしてミキサー1が作動し始めてから攪拌設定時間Tが経過すると、ミキサー1による攪拌が停止される。その後、ミキサー1の攪拌槽10内に存在する泡成分が図示しないポンプ等を用いて排出される。これにより、攪拌槽10内に、未燃成分をほとんど含まない石炭灰がスラリー化した状態で残る。
【0091】
一方、石炭灰スラリーを製造した後に界面活性剤を添加する場合は、先に詳述した石炭灰スラリーの製造方法によって原料石炭灰をミキサー1でスラリー化した後、ミキサー1の攪拌槽10内に界面活性剤を投入したり、攪拌槽10から別途用意した攪拌装置(図示せず)に石炭灰スラリーを移し替えると共に、これに界面活性剤を投入して攪拌される。
【0092】
上記したようにして石炭灰スラリー中に界面活性剤を投入した後、ミキサー1や別途用意された攪拌装置を作動させると、界面活性剤が起泡し、この泡中に石炭灰スラリー中に分散している未燃成分である石炭灰が捕捉される。ミキサー1や前記攪拌装置の作動開始後、所定時間が経過するとミキサー1や前記攪拌装置が停止状態とされ、泡成分がポンプ等を用いて排出される。これにより、未燃成分をほとんど含まない石炭灰スラリーが形成される。
【0093】
ここで、上記実施形態に示す石炭灰スラリーの製造方法によって原料石炭灰をスラリー化する場合は、攪拌に伴って水中に幾ばくかの空気が取り込まれる。そのため、上記したような製造方法によって石炭灰スラリーを製造すれば、水中に取り込まれた空気中に含まれている二酸化炭素(CO2)により、石炭灰スラリー中に含まれている高アルカリ成分をある程度中和できる。
【0094】
上記実施形態で示した石炭灰スラリーの製造方法では、攪拌時に自然に取り込まれる空気によって石炭灰スラリーをある程度中和できるものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、ミキサー1の攪拌槽10等に空気や二酸化炭素を導入する気体導入手段を設け、原料石炭灰の攪拌中や、原料石炭灰をスラリー化した後等、適宜のタイミングで空気や二酸化炭素を吹き込んで中和する構成としてもよい。かかる構成とすれば、ミキサー1等で攪拌する際に自然に取り込まれる空気等だけでは中和しきれない程度の量の高アルカリ成分が原料石炭灰や石炭灰スラリー中に含まれている場合であっても、これらを確実に中和することができる。
【0095】
また、上記したように空気や二酸化炭素を攪拌槽10等に導入する構成とすれば、空気中に含まれている二酸化炭素(CO2)についても有効利用でき、いわゆるCO2対策に資することができる。
【0096】
上記実施形態では、本発明の一実施形態としてミキサー1の攪拌手段12が攪拌槽10の内部で高速で回転する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、攪拌槽10側が攪拌手段12に対して高速回転する構成としたり、攪拌槽10および攪拌手段12の双方が回転する構成としてもよい。すなわち、ミキサー1は、攪拌手段12が攪拌槽10に対して相対回転するものであればよい。
【0097】
上記実施形態では、原料石炭灰と共に攪拌される液体の一例として水や、水に界面活性剤を投入したものを採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、水等以外の液体を採用してもよい。また、上記実施形態では、原料石炭灰と一緒に攪拌するものとして水や界面活性剤を投入する例を例示したが、例えば従来公知の分散剤等のように水や界面活性剤以外のものを原料石炭灰と共に投入する構成としてもよい。
【0098】
上記実施形態では、骨材の一部又は全部として再生骨材を採用する例を例示したが、骨材の全てが、採石場等から採取した、いわゆるバージンの骨材によって構成されていてもよい。また、上記実施形態において記載した再生骨材の製造方法は一例に過ぎず、再生乙材は、他の製造方法で製造されたものであってもよい。
【0099】
上記実施形態で示した石炭灰スラリーの製造方法は、ミキサー1の攪拌槽10において原料石炭灰を攪拌してスラリー化し、水中に分散している石炭灰の通過率が90%の粒径が20μm以下であり、通過率が50%の粒径が10μm以下の粒度分布となるように調整するものであったが、水中に分散している石炭灰の粒度分布の条件は、いずれか一方だけを満たすものであってもよい。すなわち、水中に分散している石炭灰の通過率が90%の粒径が20μm以下になる条件のみに基づいて攪拌設定時間Tをはじめとする攪拌条件を設定してもよい。また同様に、水中に分散している石炭灰の通過率が50%の粒径が10μm以下になる条件のみに基づいて攪拌設定時間Tをはじめとする攪拌条件を設定してもよい。
【0100】
また、上記実施形態で示した石炭灰スラリーの製造方法で使用した原料石炭灰は、通過率が90%の粒径が20μmよりも大きく、通過率が50%の粒径が10μmよりも大きい粒度分布をもつ石炭灰であったが、原料石炭灰の粒度分布の条件は、前記いずれか一方の条件のみを満足するものであってもよい。すなわち、上記実施形態で示した石炭灰スラリーの製造方法によれば、通過率が90%の粒径が20μmよりも大きく、通過率が50%の粒径が10μmよりも小さい粒度分布をもつ石炭灰や、通過率が90%の粒径が20μmよりも小さく、通過率が50%の粒径が10μmよりも大きい粒度分布の石炭灰につても、これを原料石炭灰とし、セメント系組成物の原料として適切な性状をもつ石炭灰スラリーを提供することができる。
【実施例】
【0101】
続いて、本発明の実施例について説明する。上記実施形態で示したようにミキサー1で攪拌して作成した石炭灰スラリーを用いて作成したコンクリート(セメント系組成物 以下、試験サンプルとも称す)並びに、ミキサー1でスラリー化することなく、石炭灰をそのままの状態で直練りして作成したコンクリート(以下、標準サンプルとも称す)についての性質を比較する試験を行った。
【0102】
試験サンプルおよび標準サンプルは、表1に記載の混合比で各原料を混合し、ミキサー1を毎分1400回転で回転させることにより調製された。具体的には、試験サンプルおよび標準サンプルは、重量比で水:セメント:石炭灰:細骨材:粗骨材=178:270:178:576:977となるように各原料を混合して調製された。試験サンプルおよび標準サンプルの水セメント比[W/C]は、約65%であった。試験サンプルおよび標準サンプルの単位粗骨材かさ容積は、650[リットル/m3]であり、粗骨材の実績率は59%であった。試験サンプルおよび標準サンプルの調製にあたり、コンクリートに対して重量比で1%に相当する分のAE剤が配合され、コンクリートに対して重量比で10%のAE助剤が配合された。
【表1】


【0103】
試験サンプルおよび標準サンプルの調製には、日本工業規格の規格番号:JIS A 6201(規格名称:「コンクリート用フライアッシュ」)に2種として規定されている石炭灰を用いた。
【0104】
上記したようにして作成した試験サンプルおよび標準サンプルは、表2〜表4に示すような性状を示した。具体的には、表2に示すように、試験サンプルは、スランプが22.5[cm]であり、標準サンプルのスランプ(22.0[cm])に比べて大きな値を示した。ここで、上記したように、試験サンプルと標準サンプルとで水セメント比、並びに、AE剤やAE助剤の配合比が同一である。そのため、試験サンプルは、標準サンプルよりも流動性が高かった。また、標準サンプルの空気量が3.4[%]であるのに対し、試験サンプルの空気量は2.4[%]であった。そのため、試験サンプルの圧縮強度は、標準サンプルの圧縮強度よりも高かった(表3,4参照)。
【0105】
【表2】


【表3】


【表4】


【0106】
さらに詳細に説明すると、標準サンプルおよび試験サンプルの1,4週強度をそれぞれ3つずつ測定した。その結果、標準サンプルの1週強度は、19.9[N/mm2]〜20.3[N/mm2]の範囲であったのに対し、試験サンプルの1週強度は、23.6[N/mm2]〜24.1[N/mm2]であり、平均値で約3.7[N/mm2]だけ試験サンプルの圧縮強度の方が高かった。また、標準サンプルの4週強度は、33.1[N/mm2]〜34.0[N/mm2]の範囲であったのに対し、試験サンプルの1週強度は、23.6[N/mm2]〜24.1[N/mm2]あり、平均値で約3.5[N/mm2]だけ試験サンプルの圧縮強度の方が高かった。
【0107】
上記したように、本実施例で作成した石炭灰スラリーを用いた試験サンプルは、石炭灰をそのまま配合した標準サンプルよりも流動性に優れると共に圧縮強度も高かった。そのため、石炭灰をスラリー化したものを用いてコンクリート(セメント系組成物)を調製すれば、施工性に優れ、高強度なコンクリートを提供できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ミキサーを示す断面図である。
【図2】再生骨材の製造方法を模式的に示した概念図である。
【図3】磨鉱機を示す断面図である。
【図4】比重選別装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0109】
1 ミキサー(攪拌装置)
10 攪拌槽
11 攪拌手段
13,14 攪拌翼
【出願人】 【識別番号】505073406
【氏名又は名称】EACLE有限会社
【出願日】 平成19年8月27日(2007.8.27)
【代理人】 【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆


【公開番号】 特開2008−87468(P2008−87468A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2007−219803(P2007−219803)