トップ :: B 処理操作 運輸 :: B28 セメント,粘土,または石材の加工

【発明の名称】 セラミックスの成形方法およびそれを用いたセラミックス部材
【発明者】 【氏名】中村 浩章

【氏名】小倉 知之

【要約】 【課題】成形体の密度ムラを無くし、セラミックス焼結体の反りや凹凸を低減することにより原料コストや研削加工コストを抑えたセラミックス部材を作製できるセラミックスの成形方法を提供する。

【解決手段】吸水性材料からなる底部を備える成形型にセラミックス粉末を分散させたスラリーを注型し、前記吸水性材料の吸水とともにセラミックス粉末を着肉させるセラミックスの成形方法であって、所定の着肉厚さが得られるまで、スラリー全体が流動するようにスラリーを攪拌しながらセラミックス粉末を着肉させ、しかる後に着肉層上のスラリーを排出することを特徴とするセラミックスの成形方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性材料からなる底部を備える成形型にセラミックス粉末を分散させたスラリーを注型し、前記吸水性材料の吸水とともにセラミックス粉末を着肉させるセラミックスの成形方法であって、所定の着肉厚さが得られるまで、スラリー全体が流動するようにスラリーを攪拌しながらセラミックス粉末を着肉させ、しかる後に着肉層上のスラリーを排出することを特徴とするセラミックスの成形方法
【請求項2】
前記成形型は、非吸水性材料からなる側壁部を備えることを特徴とする請求項1記載のセラミックスの成形方法
【請求項3】
前記底部の吸水性材料を真空吸引することを特徴とする請求項1または2記載のセラミックスの成形方法
【請求項4】
前記請求項1〜3記載のセラミックスの成形方法により成形したセラミックス成形体を焼結することにより得られることを特徴とするセラミックス部材
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスの成形方法に関するもので、特に、大型肉厚セラミックスに好適な成形方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックスの成形方法として、石こう等の多孔質体の成形型を用い、多孔質体の吸水作用により成形型表面にセラミックスを着肉させる鋳込み成形方法が採られている。その中でも、箱型の石こう成形型にスラリーを加圧して注入し、その圧力と成形型の毛管吸水作用を利用した加圧鋳込みが一般的であった。しかし、加圧鋳込み法では、成形型へのセラミックスの着肉が均一でなく、得られたセラミックス成形体に密度ムラが生じ、成形体を焼結すると反りやクラックが発生して、歩留まりが悪くなるという問題があった。
【0003】
このような反りやクラックは、着肉が進むにつれて着肉層の密度が低下すること、すなわち着肉層の厚み方向の密度ムラによるものである。密度ムラが大きくなれば、反りに止まらずクラックが生じてしまう。そこで、このような密度ムラの問題を無くすために、大気圧以上の高い圧力と真空吸引による減圧を併用して均一な着肉を図る成形方法が試みられている。例えば、鋳込み成形型の外枠と下面を石こうとし、成形型の下部よりホースで連通された真空ポンプとからなる鋳込み成形装置を使用し、スラリー上面には大気圧より高い圧力を作用させ、スラリー下面には真空吸引による低い圧力を作用させて、高い圧力と低い圧力の圧力差を調節しながら鋳込む方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平1−186303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような鋳込み成形装置を用いて行う方法によれば、小型肉薄形状であれば問題なく成形でき、反りやクラックの少ないセラミックス焼結体を得ることができる。しかしながら、大型肉厚形状となると、着肉の不均一による成形体の密度ムラが生じやすくなり、歩留まりが著しく低下するという問題があった。
【0005】
また、上記従来の成形方法により得られた大型肉厚形状の焼結体には、着肉層の厚み方向の密度ムラによる焼結体全体におよぶ反りやクラックに加えて、局部的に焼結体表面が滑らかでなく凹凸が生じるというこれまでに見られなかった問題も生じていた。このような焼結体の反りや凹凸はセラミックス部材の製造で一般的に行われている生加工により形状を整えても生じるため、コストのかかる焼結体の加工を行わざるを得ない。したがって、製品形状のセラミックス部材を得るためには焼結体の研削加工しろを大きく設定しなければならず、特に大型肉厚形状では莫大な原料コストおよび研削加工コストがかかるという問題が招来していた。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、大型肉厚形状であっても反りや凹凸、クラックの生じないセラミックスの成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミックスの成形方法は、すなわち、吸水性材料からなる底部を備える成形型にセラミックス粉末を分散させたスラリーを注型し、前記吸水性材料への吸水とともにセラミックス粉末を着肉させるセラミックスの成形方法であって、所定の着肉厚さが得られるまで、スラリー全体が流動するようにスラリーを攪拌しながらセラミックス粉末を着肉させ、しかる後に着肉層上のスラリーを排出することを特徴とするものである。
【0008】
上述のように、小型肉薄形状であれば問題なく成形できる方法であっても、大型肉厚形状になると、着肉の不均一による成形体の密度ムラが生じやすくなり、着肉層の厚み方向の密度ムラによる焼結体全体におよぶ反りに加えて、局部的な凹凸が生じていた。この原因は、大型肉厚形状になると、成形が長時間化することから、圧力差の調節を加えたとしてもスラリー中のセラミックス粉末の沈降、凝集が起こるため、成形体着肉層の厚さ方向だけでなく、層方向にも密度差が生じ、焼結体に凹凸や反りが発生したためと考えられた。また、セラミックス粉末の沈降、凝集に加えて、バインダーの分離、凝集が起きている可能性も考えられた。
【0009】
本発明は上記考察に基づくものであり、本発明によれば、スラリー全体が流動するようにスラリーを攪拌しながらセラミックス粉末を着肉させるので、スラリー中のセラミックス粉末等の沈降、凝集を抑制し、均一に着肉させることができる。したがって、成形体着肉層の厚さ方向の密度ムラが解消されるだけでなく、層方向の密度ムラも無くなって、凹凸のない平滑な焼結体を得ることができる。
【0010】
また、所定の着肉が得られるまで、スラリー全体が流動するようにスラリーを攪拌しながらセラミックス粉末を着肉させ、しかる後に着肉層上のスラリーを排出する。したがって、着肉段階においては、着肉層上には常に余剰のスラリーがあり、余剰スラリーを攪拌することにより着肉が進行してもスラリー濃度は一定に保たれていることから、均一な着肉が可能となる。また、着肉厚さに対して十分な余剰スラリーを確保しているので、攪拌により着肉が阻害されることは無い。
【0011】
吸水性材料からなる底部を備える成形型を用いるのは、セラミックス粉末を略平面形状の底部に一方向で着肉させることで、未着肉部を無くすためである。底部に加えて側壁部にも着肉させた方法や、固形鋳込みによる方法では、対向する着肉層どうしが結合する際に、結合部へのスラリーの十分な供給が困難なため、未着肉部が生じてしまう。一方、本発明は一方向で着肉させるため未着肉部が生じることはなく、大型肉厚形状の成形に好適である。
【0012】
したがって、本発明における成形型は、非吸水性材料からなる側壁部を備える成形型とすることが望ましい。これは上述のような、一方向での着肉は側壁部を非吸水性材料とすることで容易になるからである。なお、底部に加えて側壁部にも着肉させる方法、すなわち側壁部が吸水性材料であっても、着肉層どうしの結合を伴わずに所望の形状の成形体が得られるのであれば、本発明を適用することができる。
【0013】
また、本発明は、底部の吸水性材料を真空吸引する構成を採用できる。底部の吸水性材料の裏面、すなわちセラミックス粉末が着肉する側の反対側、または吸水性材料内部に設けた真空吸引のためのトンネル状の空間より真空吸引を行うことにより、吸水を促進することができる。真空吸引効率を高めるために吸水性材料の裏面に溝を形成しても良い。
【発明の効果】
【0014】
上述のように本発明のセラミックス粉末の成形方法によれば、スラリー全体が流動するようにスラリーを攪拌しながらセラミックス粉末を着肉させるため、均一な着肉が可能となり、成形体の密度ムラを無くすことができる。その結果、セラミックス焼結体の反りや凹凸を低減できるので、原料コストや研削加工コストを抑えたセラミックス部材を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に本発明に係るセラミックスの成形方法の概略を示す模式断面図を示す。吸水性材料からなる底部1と非吸水性材料からなる側壁部4を備える成形型にセラミックス粉末を分散させたスラリーを注型し、攪拌羽根5によりスラリー3を攪拌しながら、底部1の着肉面1aにセラミックス粉末を着肉させることにより、均一な着肉層(成形体)2が得られる。攪拌羽根5は常に着肉層の上面2aよりも上側に位置し、攪拌が着肉を阻害することはない。所望の成形体2の着肉厚みが得られた後は、余剰スラリー3を排出する。
【0016】
本発明の成形方法は、一辺が500mm以上、または直径500mm以上の大型肉厚形状の成形に特に適しており、肉厚は50mm以上のものを成形することが可能である。成形形状は、角板や円板等の板状部材の他、柱状、棒状、中子を用いて減肉したリブ形状等、種々の形状に適用できる。従来の固形鋳込み成形や、圧力差を調節しながら鋳込む成形方法では、このような大型肉厚形状を成形した場合、焼結体の反りやクラックに加えて、表面の凹凸が生じていたが、本発明により得られた成形体を焼結しても、反りや凹凸は生じない。
【0017】
成形型の底部1を形成する吸水性材料としては、鋳込み成形で一般的に用いられている石こうが好適であるが、その他、エポキシやポリエステル等からなる樹脂、セラミックス、金属等の多孔体を用いることができる。側壁部4を構成する非吸水性材料としては、ステンレス鋼や硬質プラスチック等が好適であるが、必要に応じ、上記吸水性材料を成形型の側壁部4に採用しても良い。
【0018】
底部1の吸水性材料を真空吸引する場合には、底部1の吸水性材料の裏面1bの下側に真空ポンプと連結された気密空間を設ける方法が採用できる。この場合、図2に示したような、底部1に吸気のための溝6を設けたり、底部1の内部に気密空間に連結されたトンネル状の溝や穴を設けたりする構造としても良い。
【0019】
セラミックス粉末としては、アルミナ、炭化ケイ素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、イットリア等、種々のセラミックスが適用でき、溶媒は水、アルコール等、公知のものが使用できる。成形に用いられるバインダーも特に限定されず、ポリビニルアルコールやアクリルエマルジョン等公知のものが使用でき、分散剤についてもポリカルボン酸系等の一般的な材料を適用できる。これらの配合は、公知の鋳込み成形方法に用いられる配合を採用できる。
【0020】
攪拌は、スラリー全体が流動するように行われる。図1に示した攪拌羽根による攪拌の他、攪拌棒による攪拌でも良い。スラリーを流動させる手段としては、成形型を回転させる遠心成形や、スラリーに振動や超音波をかける方法も検討したが、遠心成形は円筒形状には適しているが本発明のような大型肉厚形状には不向きであり、また、振動や超音波をかける方法はスラリーの流動が不十分なため密度ムラは改善されず、反りや凹凸が生じるため適用できない。
【0021】
攪拌は、スラリー全体が流動し、かつスラリーの上面3aからスラリーが飛散したり、スラリー渦によりスラリー上面が凹型になり着肉層の上面2aが露出したりしない範囲で行うことが望ましい。攪拌が弱く、スラリーの流動が不十分では、着肉が不均一となり、逆に、攪拌が強すぎると着肉層内部への気泡の混入を招くので好ましくない。したがって、セラミックス鋳込み成形に通常用いられるようなスラリーにおいては、25〜250rpmの回転速度で攪拌することが好ましい。
【0022】
攪拌羽根の形状としては、切線流パターンの平羽根、軸流型の流れパターンを形成するプロペラ、放射流パターンを形成するタービン等種々のものを用いることができる。これらの流れパターンと羽根の大きさ、数、位置を調整することによってスラリー全体が流動するようにする。例えば、羽根長さDを成形型の内寸L(例えば、成形型水平断面上の内側内接円の直径)の20〜80%の範囲で適宜選択可能であり、上記範囲で複数の攪拌羽根を用いても良い。また、成形中に攪拌羽根が着肉の進行を阻害しないように、着肉厚みの増加に伴って羽根位置を調整しても良い。
【0023】
本発明のセラミックス部材は、本発明の方法により得られたセラミックス成形体を、所定温度で焼結することにより得られるものである。本発明の成形方法によれば、焼結体の反りや凹凸が無いので、研削加工しろを少なくすることができ、原料コストおよび加工コストを抑えたセラミックス部材を作製することができる。
【0024】
以下、本発明の実施例と比較例を具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
スラリーは、セラミックス粉末として市販のアルミナ粉末を用い、アルミナ粉末78wt%と、いずれも市販のバインダー4wt%、分散剤1wt%、およびイオン交換水17wt%を配合し、アルミナ粉末が分散されたスラリーを調整した。
【0026】
(試験例1)図2に示したような、箱型の成形型(内側寸法;幅500mm、奥行き500mm、深さ200mm)を用い、底部1の着肉面が水平になるように成形型を水平な場所に設置して成形を行った。成形型は石こうからなる吸水性材料の底部1と硬質プラスチックからなる非吸水性材料の側壁部4および底部の下面を支える底板4´とからなり、側壁部4と底板4´の連結部等はスラリーが漏れないように接着されている。真空吸引のための溝6が底部1に形成されており、溝6はそれぞれ連通し、真空源(図示しない)に連結されている。攪拌羽根5は、樹脂製の平羽根(羽根寸法:100mm×15mm×4mm)を用いた。
【0027】
スラリーを底部1の着肉面からの高さ150mmまで注型し、攪拌羽根は同高さ75mmの位置に設置した(羽根の数、水平方向の設置位置および攪拌速度は、図3および表1を参照)。真空吸引は、−0.09MPaの真空度(ゲージ圧)とし、着肉厚さが50mmに到達したところで着肉層上にある余剰スラリーを排出し、成形体を脱型した。得られた成形体を40℃にて乾燥した後、フライス盤等の公知の加工方法により480×480×45mmの形状とし、大気中1600℃の温度で焼成を行った。
【0028】
表1に結果を示す。攪拌状況については、スラリー上側より目視により確認し、スラリー全体が流動しているものを○、スラリー全体が流動していないものまたはスラリーが飛散しているものを×とした。焼結体の評価は、反りや表面の凹凸がないものを○、反りあるいは凹凸が生じたもの、または緻密化しなかったもの(相対密度95%未満)を×とした。
【0029】
【表1】


実施例1〜3は、いずれもスラリー全体が流動し攪拌状況が良好であった。得られた焼結体には、反りや凹凸は見られなかった。一方、攪拌羽根を用いなかった比較例1、攪拌羽根の位置が偏っていた比較例2、攪拌速度が小さすぎた比較例3は、いずれもスラリー全体を流動させることができなかったため、焼結体に反りや凹凸が生じ、比較例1ではクラックも併発した。また比較例4では攪拌速度が大きすぎたためにスラリーに気泡が入った結果、焼結体に気泡が生じ緻密化しなかった。
【0030】
(試験例2)図2に示したような、箱型の成形型(内側寸法;幅1000mm、奥行き1000mm、深さ300mm)を用い、底部の着肉面が水平になるように成形型を水平な場所に設置して成形を行った。スラリーを底部1の着肉面からの高さ250mmまで注型し、攪拌羽根(平羽根、寸法:200×20×5mm)は同高さ150mmの位置に設置し、4個の攪拌羽根を均等に配置し、攪拌速度100rpmで攪拌を行った。着肉厚さが80mmに到達したところで着肉層上にある余剰スラリーを排出し、成形体を脱型した。得られた成形体を40℃にて乾燥した後、フライス盤等の公知の加工方法により980×980×70mmの形状とし、大気中1600℃の温度で焼成を行った。その他の条件は試験例1と同様である。スラリーの攪拌は、全体がほぼ均等に流動しており、攪拌状況は良好であった。
【0031】
得られた焼結体に反りや凹凸は無く、クラックも生じなかった。この焼結体を研削加工し、液晶製造装置用のセラミックス部材とした。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のセラミックス成形方法の模式断面図の一例である。
【図2】本発明のセラミックス成形方法の模式断面図の他の例である。
【図3】試験例1の攪拌羽根の位置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1:吸水性材料からなる底部
1a:着肉面
2:着肉層(成形体)
2a:着肉層の上面
3:スラリー
3a:スラリーの上面
4:側壁部
4´:底板
5:攪拌羽根
6:溝
D:攪拌羽根の長さ
L:成形型の内寸
【出願人】 【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
【出願日】 平成18年9月28日(2006.9.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−80683(P2008−80683A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−264266(P2006−264266)