トップ :: B 処理操作 運輸 :: B28 セメント,粘土,または石材の加工

【発明の名称】 表面外観に優れた軽量気泡コンクリートパネルの製造方法及び製造装置
【発明者】 【氏名】今澤 公一

【氏名】田中 克也

【氏名】常川 茂

【要約】 【課題】半可塑性体をピアノ線にて切断する際にパネル表面に発生する線状の傷の原因を特定すると共に、その原因を効率的に排除することで、線状の傷による外観品質を損なうことのない軽量気泡コンクリートパネルを提供する。

【構成】軽量気泡コンクリート原料の粉砕粉末に含まれる鉄片を、永久磁石を用いて選別除去する。例えば、外周部2が回転可能であり、且つ外周部2の内側に外周の略半分の領域に永久磁石3を配置固定したドラム1を用い、ドラム1の外周部2の回転に伴って、粉砕粉末に含まれる鉄片を永久磁石3の配置領域で外周部2に吸着させ、次に永久磁石3の非配置領域で外周部2から脱着させることにより、粉砕粉末から鉄片を選別除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリート原料の粉砕粉末から軽量気泡コンクリートパネルを製造する方法において、該粉砕粉末に含まれる鉄片を永久磁石を用いて選別除去することを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの製造方法。
【請求項2】
前記軽量気泡コンクリート原料の粉砕粉末が、軽量気泡コンクリートパネルの製造過程で発生するパネル端材及び/又は建築現場で発生するパネル端材を粉砕処理し、粒度分級した繰り返し原料の粉砕粉末であることを特徴とする、請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネルの製造方法。
【請求項3】
外周部が回転可能であり、且つ該外周部の内側に外周の略半分の領域に永久磁石を配置固定したドラムを用い、該ドラムの外周部の回転に伴って、粉砕粉末に含まれる鉄片を永久磁石の配置領域で外周部に吸着し、次に永久磁石の非配置領域で外周部から脱着させることにより、粉砕粉末から鉄片を選別除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載の軽量気泡コンクリートパネルの製造方法。
【請求項4】
前記鉄片を選別除去した後の粉砕粉末は、0.05mm以上の鉄片を含まず、且つ鉄片の混入量が0.04重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の軽量気泡コンクリートパネルの製造方法。
【請求項5】
軽量気泡コンクリート原料の粉砕粉末から軽量気泡コンクリートパネルを製造する際に、該粉砕粉末から鉄片を除去する装置であって、該粉砕粉末の流路に少なくとも1つの円筒状のドラムを備え、該ドラムの外周部が回転可能であると共に、該外周部の内側に外周の略半分の領域に永久磁石が配置固定されていて、前記ドラムの外周部の回転に伴って、粉砕粉末に含まれる鉄片が永久磁石の配置領域で外周部に吸着され、次に永久磁石の非配置領域で外周部から脱着されることにより、粉砕粉末から鉄片を選別除去することを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁、屋根、床などに使用される軽量気泡コンクリート(ALC)パネルの製造方法、及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ALCパネルは、珪酸質原料としての珪石と、石灰質原料としてのセメントや生石灰を主原料とし、更に石膏や不要となったALCパネルを粉砕処理した繰り返し原料を副原料とする。これらのALC原料は粉砕して水と混合し、更に発泡剤であるアルミニウム粉末や気泡安定剤等の添加物を加えて原料スラリーとする。この原料スラリーを補強鉄筋が配置された型枠内へ注入すると、アルミニウム粉末と水の反応により生成するガスの作用で発泡し、更にセメントの水和反応によって原料スラリーは半可塑性体となる。
【0003】
所定時間の経過後、この半可塑性体を所望形状にピアノ線で切断し、オートクレーブによる高温高圧水蒸気養生を行ってALC素材とする。ALC素材は製品仕様に応じて小口面や表面を加工することにより、ALCパネルとなる。こうして得られたALCパネルは、軽量で、耐火性、断熱性、施工性に優れているため、建築物の壁、屋根、床などとして広く使用されている。
【0004】
上記ALCパネルについては、従来から建材用途として要求されていた強度、耐久性、寸法精度に加えて、最近では表面の平滑度や傷の有無など、外観上の特性も製品価値の重要な基準となっている。特に、ALCパネルの表面に発生する線状の傷が大きく深い場合には、建設現場での施工後の塗装面に傷跡が残るため補修が必要となり、製品価値を損なうことがある。
【0005】
この線状の傷は、ALCパネル製造過程において半可塑性体をピアノ線で切断する際に発生する。例えば、表面の平滑度を得るためにピアノ線を上下動させて切断した場合、ALCパネルの表面には上下方向に線状の傷が発生することになる。線状の傷の太さや深さは概ね0.2〜1.0mm程度であるが、建築現場での工程の効率化や低コスト化のため、ALCパネル表面の塗装を薄塗りすることが多くなり、線状の傷の発生を防止する要求は高まっている。
【0006】
こうした線状の傷の発生を防止するためには、原料品質や製造工程の管理を充分に行うことが必要である。同時に、線状の傷の発生時期が半可塑性体のピアノ線切断時点であることから、ピアノ線に原料スラリー中の夾雑物が付着することが主原因と考えられ、原料スラリーから夾雑物を除去する方法が提案された。
【0007】
例えば、特開平11−245215号公報には、線状の傷の発生原因となる夾雑物の種類は特定されていないが、原料スラリーを型枠内へ注入する際に、原料スラリーに混入した夾雑物を篩い分けにより除去する方法が記載されている。この方法によれば、原料スラリーから1.0mm以上の粗大な夾雑物を除去することができるが、パネル表面に発生する線状の傷の太さや深さがそれより小さい0.2〜1.0mmであるため、充分な解決策となりえていない。
【0008】
そこで、大きさが0.2〜1.0mm程度の夾雑物を除去するために、例えば目開き0.2mmの篩を設置すると、篩残分が大量に発生し、不必要に原料を損失してしまうという問題点があった。また、篩分けの効率を向上させるために、篩に振動を与える技術を用いることもできる。しかし、例えば目開き0.2mmの篩に振動を与えた場合、原料スラリー中のアルミニウム粉末が反応を始めるまでに型枠内への注入を完了とする時間的な制約と、不必要な原料損失の抑制という2つの要請を、共に満足することはできなかった。
【特許文献1】特開平11−245215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、半可塑性体を所望形状にピアノ線にて切断する際にパネル表面に発生する線状の傷の原因を特定すると共に、その原因を効率的に排除することで、線状の傷による外観品質を損なうことのない軽量気泡コンクリートパネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者らは、軽量気泡コンクリートの製造過程において、半可塑性体を所望形状にピアノ線にて切断する際に発生する線状の傷の発生原因について詳しく調査解析した。その結果、原料を粉砕処理する際に混入する鉄片がピアノ線に密接に付着して、線状の傷を発生させていることが判明した。
【0011】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、軽量気泡コンクリート原料の粉砕粉末から軽量気泡コンクリートパネルを製造する方法において、該粉砕粉末に含まれる鉄片を永久磁石を用いて選別除去することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明が提供する軽量気泡コンクリートパネルの製造装置は、軽量気泡コンクリート原料の粉砕粉末から軽量気泡コンクリートパネルを製造する際に、該粉砕粉末から鉄片を除去する装置であって、該粉砕粉末の流路に少なくとも1つの円筒状のドラムを備え、該ドラムの外周部が回転可能であると共に、該外周部の内側に外周の略半分の領域に永久磁石が配置固定されていて、前記ドラムの外周部の回転に伴って、粉砕粉末に含まれる鉄片が永久磁石の配置領域で外周部に吸着され、次に永久磁石の非配置領域で外周部から脱着されることにより、粉砕粉末から鉄片を選別除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量気泡コンクリートパネルの製造過程において半可塑性体を所望形状にピアノ線にて切断する際に、切断面に生じる線状の傷を抑制することができ、従って外観品質に優れた軽量気泡コンクリートパネルを提供することができ、製造歩留まりの改善や製品意匠性の更なる向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
原料スラリー中への混入が考えられる鉄片としては、珪石粉砕に用いるボールミルの鉄球や、ALCパネル補強用の鉄筋に由来するものが挙げられる。特に、繰返し原料は、軽量気泡コンクリート(ALC)パネルの製造過程で発生するパネル端材や建築現場で発生するパネル端材を粉砕処理し、粒度分級したものであるため、これらのパネル端材に含まれる補強鉄筋が粉砕の際に鉄片となって粉砕粉末中に混入することが多い。繰返し原料の粉砕粉末に含まれる鉄片を調査したところ、その混入量は概ね0.07〜0.20重量%であり、補強鉄筋の総延長が長い薄型パネルを集中的に粉砕すると混入量は更に増加する。
【0015】
そこで、本発明によるALCパネルの製造方法においては、ALCコンクリート原料の粉砕粉末に含まれる鉄片を、その粉砕粉末を原料スラリーとする前の粉末の段階で、永久磁石を用いて選別除去する。即ち、粉砕粉末に含まれている鉄片を、永久磁石に吸着させることによって選択的に除去する。使用する永久磁石は特に限定されるものではなく、その形状も任意であるが、磁束密度が4000G以上の磁石を使用することが望ましい。
【0016】
具体的な方法としては、図1に示すように、外周部2が中心軸の周りに回転可能に設けてあり、その外周部2の内側に外周の略半分の領域に永久磁石3(斜線部分)を配置固定した円筒状のドラム1を用いることが好ましい。即ち、永久磁石3の配置領域側に粉砕粉末を投入すると、粉砕粉末に含まれている鉄片は永久磁石3によって外周部2に吸着されるが、粉砕粉末そのものは吸着されずに落下する。次に、吸着された鉄片は、ドラム1の外周部2の回転に伴って永久磁石3の非配置領域に至ると外周部2から脱着される。その際、外周部2に設けた複数の突起部2aは、外周部2に吸着された粉砕粉末が永久磁石3の非配置領域でドラム1の回転方向へ確実に脱着させる機能を有する。このように永久磁石を用いることで、粉砕粉末から鉄片を選別して除去することができる。
【0017】
一般に、建材としてのALCパネルの場合、仕上工程でパネル表面に施す塗装は、効率化や低コスト化のため薄塗りされることが多い。そこで、薄塗りの仕上げ塗装の場合について、パネル表面に発生した線状の傷の太さと、塗装後に残る傷跡の関係について詳細に解析した。その結果、線状の傷の太さが0.4mm以上になると、傷はパネル表面の全長にわたり、且つ塗装後にも傷跡が認められた。しかし、傷の太さが0.3mm以上0.4mm未満の場合には、傷はパネル表面の一部に発生し、必ずしも表面全長にわたって発生せず、且つ塗装後の傷跡も認められ難くなった。
【0018】
この結果に基づいて、ALCパネル端材を粉砕した繰り返し原料に含まれる鉄片と、パネル表面の線状の傷の発生形態について調査検討した結果、0.05mm以上の鉄片を除去し、且つ粉砕粉末中の鉄片混入量を0.04重量%以下とすることで、太さ0.3mm以上の線状の傷が発生するのを抑制できることが分った。このように線状の傷の太さを0.3mm未満に抑えることによって、目視による傷の発見は難しくなり、塗装後の傷跡もほとんど認められないことが判明した。
【0019】
また、本発明によるALCパネルの製造装置は、上記した図1に示すドラム1を備え、ALC原料の粉砕粉末から鉄片を選別除去する装置である。例えば、図2に示す装置では、内部に外周の略半分の領域に永久磁石3が設置固定され且つ外周部2のみが回転するドラム1を3段に配置し、粉砕粉末から鉄片を繰返し選別して除去するようになっている。尚、図2における6は、各ドラム1の外周部2を回転駆動するためのモータである。
【0020】
即ち、頂部の粉末投入口4から供給された粉砕粉末は、上部ダンパー5aで1段目の投入量を制御されてドラム1aに達し、粉砕粉末中の鉄片が磁石配置領域でドラム1aの外周部2に吸着された後、外周部の2の回転に伴って磁石非配置領域で脱着されることにより、鉄片が除去された粉砕粉末の経路(図の右側)と、鉄片の経路(図の左側)とに分離される。そして、図示した幾つかの仕切板に誘導されて、ドラム1aで鉄片が除去された粉砕粉末は2段目のドラム1bに、及び分離された鉄片は3段目のドラム1cにそれぞれ供給される。
【0021】
上記ドラム1aで鉄片が除去された粉砕粉末は、2段目のドラム1bで更に鉄片が除去され、この鉄片が除去された粉砕粉末は右側の経路を通って非金属受部7に回収される。また、2段目のドラム1bで分離された鉄片は、1段目のドラム1aで分離された鉄片と合流して、3段目のドラム1cに供給される。3段目のドラム1cでも上記と同様に鉄片の分離除去が行われ、最終的に鉄片は下部ダンパー5bで分離量を調整されながら金属受部8に回収され、鉄片が除去された粉砕粉末は非金属受部7に回収される。
【0022】
上記ドラムを配置した装置によれば、例えばALCパネル端材を粉砕処理した繰り返し原料の粉砕粉末について、非金属受部に回収される粉砕粉末中に混入した鉄片量を0.04重量%以下、好ましくはドラムを複数配置することで0.03重量%以下とすることができ、また金属受部に回収される鉄片中に混入しているALC等の非金属は20重量%以下となる。このように、パネル端材等のALC原料を粉末状態のまま処理して、粉砕粉末中に含まれる鉄片を効率よく選別除去することができ、特に多段ドラム方式装置によれば鉄片の除去効率を一層高めることが可能となる。
【実施例】
【0023】
ALCパネル端材を粉砕処理した後、その粉砕粉末を図2に示す装置に供給して鉄片の除去を行った。次に、得られた粉砕粉末の繰り返し原料20重量%、珪石45重量%、生石灰5重量%、セメント30重量%を混合し、これらの固体原料合計100重量%に対し、水70重量%と少量のアルミニウム粉末及び界面活性剤を加えて、混練して原料スラリーを作製した。原料スラリーが水和により硬化した後、180℃。10気圧のオートクレーブにおいて6時間の高温高圧水蒸気養生を施し、ALCパネルを得た。
【0024】
上記製造過程により、装置の稼働開始から1週間経過後の試料1、2週間経過後の試料2、及び3週間経過後の試料3の各ALCパネルを製造した。また、比較例として、上記と同じALCパネル端材の粉砕粉末で、鉄片の除去を実施していない繰り返し原料を用いた以外は上記と同様にして、上記試料1〜3と同じ装置稼動後の経過時点で、試料4〜6の各ALCパネルを製造した。
【0025】
得られた試料1〜6の各ALCパネルについて、表面に線状の傷が有るパネル枚数と発生率、及び傷の太さを調査して、下記表1に示した。また、各試料の製造に用いた粉砕粉末について、上記図2の装置で処理後の粉末(比較例では処理なしの粉末)中に含まれている鉄片量を測定し、その結果を下記表1に併せて示した。尚、線状の傷及びその太さは、ALCパネル表面を目視観察して計測した。また、鉄片量は、繰り返し原料の粉砕粉末3kgを採取し、鉄片を磁選して混入量を求めた。
【0026】
【表1】


【0027】
上記表1の結果から、比較例の試料4〜6に較べて、本発明例の試料1〜3では、線状の傷の発生率が装置の稼動による鉄片量の減少と共に大きく低下していることが分る。また、線状の傷の発生形態についても、本発明例の試料1〜3では0.4mm以上の太さの傷が大幅に減少したことが分る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】粉砕粉末から鉄片を除去するために用いるドラムを示す概略の断面図である。
【図2】図1のドラムを備えた装置の一具体例を示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ドラム
2 外周部
2a 突起部
3 永久磁石
4 粉末投入口
5a 上部ダンパー
5b 下部ダンパー
6 モータ
7 非金属受部
8 金属受部
【出願人】 【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
【出願日】 平成18年9月15日(2006.9.15)
【代理人】 【識別番号】100083910
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 正緒


【公開番号】 特開2008−68579(P2008−68579A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−251094(P2006−251094)