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【発明の名称】 押出成形機、及びこれを用いて成形したセラミック成形体、並びにその製造方法
【発明者】 【氏名】山田 篤史

【氏名】藤田 昌克

【氏名】中江 誠

【氏名】宮崎 光俊

【要約】 【課題】セラミック成形体の表面の欠陥を発生し難くすることができる押出成形機、及びこれを用いて成形したセラミック成形体、並びにその製造方法を提供すること。

【構成】セラミック粒子と樹脂成分と溶媒との混合体からなるセラミック材料20を先端側へ押し出す押出機12と、該押出機12の先端側に配設されセラミック材料20を成形する成形型11とを有する押出成形機1。成形型11の型表面110には、セラミック材料20との表面自由エネルギーの差が10mJ/m2以上となるような表面処理が施されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粒子と樹脂成分と溶媒との混合体からなるセラミック材料を先端側へ押し出す押出機と、該押出機の先端側に配設され上記セラミック材料を成形する成形型とを有する押出成形機であって、
上記成形型の型表面には、上記セラミック材料との表面自由エネルギーの差が10mJ/m2以上となるような表面処理が施されていることを特徴とする押出成形機。
【請求項2】
請求項1において、上記成形型の型表面は、硬質クロムメッキが施されていることを特徴とする押出成形機。
【請求項3】
請求項2において、上記硬質クロムメッキは、2〜20μmの厚みを有することを特徴とする押出成形機。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の上記押出成形機を用いて上記セラミック材料を成形することを特徴とするセラミック成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3に記載の押出成形機を用いて上記セラミック材料を成形してなることを特徴とするセラミック成形体。
【請求項6】
請求項5において、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ素子の一部を構成することを特徴とするセラミック成形体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料を押出成形するための押出成形機、及びこれを用いて成形したセラミック成形体、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セラミック粒子と樹脂成分と溶媒との混合体からなるセラミック材料を押出成形してセラミック成形体を作製する押出成形機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
該押出成形機は、上記セラミック材料を先端側へ押し出す押出機と、該押出機の先端側に配設され上記セラミック材料を成形する成形型とを有する。
【0003】
ところが、上記押出成形機では、以下のような問題があった。
すなわち、上記成形型の型表面と上記セラミック材料との結合力が高いため、セラミック成形体を成形する際に、上記セラミック材料が上記成形型の型表面に付着してしまうおそれがあった。それ故、その後に押出成形されたセラミック成形体の表面に欠陥が生じてしまい、耐久性に優れたセラミック成形体を得ることが困難となるおそれがあった。
【0004】
また、この場合には、上記成形型の型表面に付着したセラミック材料の除去を頻繁に行うことが必要となる。そのため、セラミック成形体の生産効率を向上させることが困難となるおそれがある。
また、上記型表面へのセラミック材料の付着物の除去を頻繁に行うことにより、上記成形型の低寿命化が懸念される。
【0005】
【特許文献1】特開2002−79509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、セラミック成形体の表面の欠陥を発生し難くすることができる押出成形機、及びこれを用いて成形したセラミック成形体、並びにその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、セラミック粒子と樹脂成分と溶媒との混合体からなるセラミック材料を先端側へ押し出す押出機と、該押出機の先端側に配設され上記セラミック材料を成形する成形型とを有する押出成形機であって、
上記成形型の型表面には、上記セラミック材料との表面自由エネルギーの差が10mJ/m2以上となるような表面処理が施されていることを特徴とする押出成形機にある(請求項1)。
【0008】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記成形型の型表面には、上記セラミック材料との表面自由エネルギーの差が10mJ/m2以上となるような表面処理が施されている。すなわち、セラミック成形体を押出成形する際の上記成形型の型表面と上記セラミック材料との表面自由エネルギーの差が充分に大きくなるよう構成されている。それ故、上記成形型の型表面と上記セラミック材料との結合力を低下させることができ、上記成形型の型表面に上記セラミック材料が付着してしまうことを抑制することができる。その結果、押出成形時にセラミック成形体の表面に欠陥が生じてしまうことを防ぐことができる。
【0009】
また、上記成形型の型表面に上記セラミック材料が付着し難いため、上記成形型における付着物の除去頻度を低減することができる。その結果、セラミック成形体の生産効率の向上を図ることができると共に、押出成形機の低寿命化を防ぐことができる。
【0010】
以上のごとく、第1の発明によれば、セラミック成形体の表面の欠陥を発生し難くすることができる押出成形機を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明(請求項1)の上記押出成形機を用いて上記セラミック材料を成形することを特徴とするセラミック成形体の製造方法にある(請求項4)。
上記第2の発明によれば、表面の欠陥が発生し難いセラミック成形体の製造方法を提供することができる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明(請求項1)の押出成形機を用いて上記セラミック材料を成形してなるセラミック成形体にある(請求項5)。
上記第3の発明によれば、表面の欠陥が発生し難いセラミック成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明(請求項1)、第2の発明(請求項4)、及び第3の発明(請求項5)において、上記セラミック粒子として、チタン酸アルミニウム、ムライト、チタン酸カリウム、リチウムアルミノシリケート、コージェライト、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、酸化チタン、酸化スズ、ガリウム砒素、炭化ケイ素、酸化クロム、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化繊維、ケイ酸カルシウム、FRC(繊維強化セラミックス)、結晶化ガラス、無定形炭素、炭化タングステン、炭化チタン、ケイ化鉄、黒鉛、チタニア、炭素繊維、シリカ、窒化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウム燐、酸化タングステン、硫化カドミニウム、ITO(インジウムスズ酸化物)等を用いることができる。この中でも特に、ビッカース硬さにおいて高硬度とされるセラミック粒子、すなわち、ジルコニア(12×103N/mm2)、窒化ケイ素(14×103N/mm2)、アルミナ(16×103N/mm2)、炭化ケイ素(20×103N/mm2)を用いることがより好ましい。なお、上記の括弧内は、ビッカース硬さにおける硬度を表す単位である。
【0014】
また、上記樹脂成分として、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド等を用いることができる。この中でも特に、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。
また、上記溶媒として、高い表面張力(73mN/m)をもつ水を用いることが好ましい。
【0015】
また、上記成形型の型表面は、硬質クロムメッキが施されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、セラミック成形体を押出成形する際の上記成形型の型表面と上記セラミック材料との表面自由エネルギーの差を充分に大きくすることができる。それ故、上記成形型の型表面に、上記セラミック材料を一層付着し難くすることができる。
【0016】
また、上記硬質クロムメッキは、2〜20μmの厚みを有することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記成形型の型表面に、上記セラミック材料をより一層付着し難くすることができる。
【0017】
一方、硬質クロムメッキの厚みが2μm未満である場合には、充分な強度を得ることが困難となり、硬質クロムメッキとしての機能が損なわれるおそれがある。そして、そのため、本発明の作用効果を充分に得ることが困難となるおそれがある。
また、硬質クロムメッキの厚みが20μmを超える場合には、材料コストが多大となり、本発明の押出成形機を低コストで得ることが困難となるおそれがある。
【0018】
第3の発明(請求項5)において、上記セラミック成形体は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ素子の一部を構成しても良い(請求項6)。
この場合には、耐久性に優れたセラミック成形体によりガスセンサ素子を形成することとなるため、耐久性に優れたガスセンサ素子を作製することができる。特にガスセンサ素子は、過酷な使用環境下において使用されるため熱衝撃による割れが懸念されるが、この割れの発生は、表面の欠陥が起点となることが多い。そこで、本発明のセラミック成形体によってガスセンサ素子を構成することにより、耐久性に優れたガスセンサを得ることができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる押出成形機、及びこれを用いて成形したセラミック成形体、並びにその製造方法につき、図1、図2を用いて説明する。
本例の押出成形機1は、同図に示すごとく、セラミック粒子と樹脂成分と溶媒との混合体からなるセラミック材料20を先端側へ押し出す押出機12と、該押出機12の先端側に配設され上記セラミック材料20を成形する成形型11とを有する。
【0020】
そして、該成形型11の型表面110には、上記セラミック材料20との表面自由エネルギーの差が10mJ/m2以上となるような表面処理が施されている。具体的には、型表面110には、2〜20μmの厚みを有する硬質クロムメッキが施されている。
なお、本例においては、上記表面処理は、図1に示すごとく、成形型11の先端部分を構成する口金111の型表面110にのみ施されている。
【0021】
また、成形型11には、図1に示すごとく、成形されるセラミック成形体2の厚みを変更することができるよう、口金111の開口厚みを変化させる調整ネジ部112が設けられている。
また、本例の成形型11は、同図に示すごとく、その先端に進むにつれて厚み方向の寸法が小さくなると共に、図2に示すごとく、幅方向の寸法が大きくなるように構成してある。
【0022】
また、本例の押出機12は、図1、図2に示すごとく、軸体121の周囲にリード部122を螺旋状に巻回してなる押出スクリュー120を有する。そして、セラミック材料20は、押出機12の内部で混練された後、押出スクリュー120により先端側に向かって押圧されて、その後、成形型11へと進入する。
【0023】
本例においては、セラミック粒子としてアルミナを、樹脂成分としてメチルセルロースを、溶媒として水を用いた。
アルミナは、セラミック材料20全体に対して75〜95%配合することが好ましく、85〜90%とすることがより好ましい。本例では、アルミナは87%配合した。
また、メチルセルロースは、セラミック材料20全体に対して0.5〜10%配合することが好ましく、0,5〜5%であることがより好ましい。本例では、メチルセルロースは3%配合した。
また、水は、セラミック材料20全体に対して1〜20%配合することが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。本例では、水は10%配合した。
【0024】
本例のセラミック成形体2を成形するに当たっては、まず、押出成形機1の材料導入部(図示略)に上記セラミック材料20であるアルミナ、メチルセルロース、及び水を導入する。その後、図1に示すごとく、セラミック材料20が押出機12に導入され、最終的に成形型11の口金111からセラミック材料20が押し出されてシート状に成形される。
【0025】
押出成形する際の圧力は、例えば、5〜50MPaとすることが好ましく、5〜15MPaとすることがより好ましい。本例においては、10MPaとした。
また、得られるセラミック成形体2の厚みは、例えば、0.1〜4mmとすることが好ましく、0.1〜2mmとすることがより好ましい。本例においては、0.2mmとした。
【0026】
本例のセラミック成形体2を複数枚積層してガスセンサ素子を作製した場合には、表面欠陥が少ないセラミック成形体2を積層することとなるので耐久性に優れたガスセンサ素子、ひいては、ガスセンサを作製することができる。
なお、上記ガスセンサ素子は、上記セラミック成形体2を複数枚積層して未焼積層体とした後、該未焼積層体を焼成することにより得ることができる。
【0027】
次に、本例の作用効果につき説明する。
成形型11の型表面110には、セラミック材料20との表面自由エネルギーの差が10mJ/m2以上となるような表面処理が施されている。すなわち、セラミック成形体2を押出成形する際の成形型11の型表面110とセラミック材料20との表面自由エネルギーの差が充分に大きくなるよう構成されている。それ故、成形型11の型表面110とセラミック材料20との結合力を低下させることができ、成形型11の型表面110にセラミック材料20が付着してしまうことを抑制することができる。その結果、押出成形時にセラミック成形体2の表面に欠陥が生じてしまうことを防ぐことができる。
【0028】
また、成形型11の型表面110にセラミック材料20が付着し難いため、成形型11における付着物の除去頻度を低減することができる。その結果、セラミック成形体2の生産効率の向上を図ることができると共に、押出成形機1の低寿命化を防ぐことができる。
【0029】
また、成形型11の型表面110は、2〜20μmの厚みを有する硬質クロムメッキが施されているため、セラミック成形体2を押出成形する際の成形型11の型表面110とセラミック材料20との表面自由エネルギーの差を充分に大きくすることができる。それ故、成形型11の型表面110に、セラミック材料20をより一層付着し難くすることができる。
【0030】
以上のごとく、本例によれば、セラミック成形体の表面の欠陥が発生し難い押出成形機、これを用いて成形したセラミック成形体、及びその製造方法を提供することができる。
【0031】
(実施例2)
本例は、図3、図4に示すごとく、成形型11の型表面110に施す表面処理方法を検討した例である。
なお、本例において使用した符号は、図1における符号に準ずる。
【0032】
まず、表面処理方法を検討するに当たって、型表面110を超硬合金にて作製し表面処理を施していない成形型11と、型表面110に硬質クロムメッキを施した成形型11と、型表面110に炭素加工を施した成形型11と、型表面110にテフロン(登録商標)加工を施した成形型11とを作製した。
【0033】
そして、上記成形型11をそれぞれ備え付けた押出成形機1を用いて、セラミック成形体2を成形した。セラミック成形体2を構成するセラミック材料20として、アルミナ87%とメチルセルロース3%と水10%との混合体からなるものを用いた。
【0034】
セラミック材料20及び型表面110における表面自由エネルギーを図3に示す。
なお、同図に示される表面自由エネルギーは、セラミック材料20及び型表面110それぞれにおける分散力成分と、双極子力成分と、水素結合力成分とを合計したものである。
【0035】
図3からわかるように、セラミック材料20と上記4種類の成形型11とにおける表面自由エネルギーの差は以下のように測定された。
まず、表面処理を施していない型表面110との表面自由エネルギー差は約4mJ/m2であり、炭素加工を施した型表面11との表面自由エネルギー差は約8mJ/m2である。すなわち、これらの表面処理方法については、セラミック材料20との表面自由エネルギー差が10mJ/m2を下回り、小さいものであることがわかる。
【0036】
これに対して、硬質クロムメッキを施した型表面11との表面自由エネルギー差は約14mJ/m2であり、テフロン(登録商標)加工を施した型表面11との表面自由エネルギー差は約26mJ/m2である。すなわち、これらの表面処理方法については、セラミック材料20との表面自由エネルギー差が10mJ/m2を充分に上回り、大きいものであることがわかる。
【0037】
また、上記成形型11を備えた押出成形機を用いてセラミック成形体2を押出成形した後、それぞれの成形型11の型表面110におけるセラミック材料20の最大付着厚さを面粗度計を用いて測定した。
【0038】
測定結果を図4に示す。
同図は、縦軸に、上記のように面粗度計によって測定した型表面110におけるセラミック材料20の付着厚さをとり、横軸に、上記4種類の成形型11における型表面110とセラミック材料20との表面自由エネルギーの差をとったものである。そして、各成形型11におけるセラミック材料20の付着厚さの測定値をプロットした。すなわち、図中のD1、D2、D3、D4は、表面処理を施していない成形型11における付着厚さ、炭素加工を施した成形型11における付着厚さ、硬質クロムメッキを施した成形型11における付着厚さ、テフロン(登録商標)加工を施した成形型11における付着厚さを、それぞれの表面自由エネルギー差の値に対応させてプロットしたものである。
【0039】
なお、図4に示すセラミック材料20の付着厚さの値は、型表面110に表面処理を施していない成形型11におけるセラミック材料20の最大付着厚さに対する、表面処理を施した成形型11におけるセラミック材料20の最大付着厚さの割合として表したものである。
また、上記許容最大付着厚さTは、ガスセンサを使用するに当たって支障がないとされるガスセンサ素子の欠陥の寸法から算出した。
【0040】
図4からわかるように、硬質クロムメッキを施した成形型11(符号D3参照)、及びテフロン(登録商標)加工を施した成形型11(符号D4参照)については、付着厚さが略0%であり、許容最大付着厚さTを充分に下回っている。一方、炭素加工を施した成形型11(符号D2参照)については、許容最大付着厚さTを上回り、付着厚さが80%を超えている。
以上からわかるように、成形型11の型表面110に硬質クロムメッキやテフロン(登録商標)加工を施すことにより、セラミック材料20が成形型11の型表面110に付着することを充分に抑制することができる。
【0041】
(実施例3)
本例は、図5〜図7に示すごとく、型表面11に表面処理が施されていない押出成形機、又は本発明の押出成形機を用いて成形されたセラミック成形体2のそれぞれについて、その表面に生じている欠陥の数を調べた例である。
なお、本例において使用した符号は、図1における符号に準ずる。
【0042】
本発明の押出成形機を作製するに当たっては、成形型11の型表面110に硬質クロムメッキを施した。
セラミック材料20を押出成形する際には、押出成形の圧力を10MPaとした。また、セラミック成形体2の厚みを0.2mmとした。
【0043】
そして、上記2種類の押出成形機を用いて成形されたセラミック成形体2及び上記2種類の型表面110について、SEM(走査電子顕微鏡)を用いてそれぞれの表面状態を調べた。
型表面110に表面処理が施されていない成形型11を有する押出成形機を用いてセラミック成形体2を成形した場合において、型表面110及び該型表面110に付着したセラミック材料20の状態をSEMにより撮像したところ、成形型11の型表面110には、スジ状のセラミック材料20が多く付着していた。
このとき、セラミック材料20は、比較的大きい凝集体として型表面110に付着していた。
【0044】
次に、押出成形されたセラミック成形体2の表面状態をSEMにより撮像したところ、本発明の押出成形機を用いて作製したセラミック成形体2においては、その表面には欠陥が殆ど発生していなかった。
これに対して、型表面110に表面処理が施されていない成形型11を有する押出成形機を用いて作製したセラミック成形体2においては、その表面に幾数ものスジ状の欠陥が発生していた。
【0045】
次いで、上記2種類の押出成形機を用いて成形されたセラミック成形体2につき面粗度計(MITSUTOYO社製)を用いてそれぞれの表面状態を調べた。
なお、上記面粗度計による計測は、JIS1994の規格に従い、送り速度0.2mm/秒、基準区間0.8mm、区間数11にて行った。
【0046】
上記面粗度計を用いて作製されたセラミック成形体2の表面粗度を調べた結果を図5〜図7に示す。
なお、図5、図6中の上限値S1及び下限値S2は、型表面110に付着したセラミック材料20によって形成された、セラミック成形体2の表面における凹部又は凸部からなる欠陥の許容上限値及び許容下限値である。そして、上記面粗度計による測定値がこの上限値S1と下限値S2との間の範囲に全て含まれているときには、セラミック成形体2の表面の粗度が小さいため有害とはいえず、セラミック成形体2の表面の欠陥が少ないといえる。
【0047】
図6、図7からわかるように、本発明の押出成形機を用いて成形したセラミック成形体2においては、測定値が全て上限値S1と下限値S2との間に含まれており、有害であると考えられるような欠陥はなかった。
これに対して、図5、図7からわかるように、型表面110に表面処理が施されていない成形型11を有する押出成形機1を用いて成形したセラミック成形体2においては、上限値S1と下限値S2との間に含まれない部分が10箇所確認された。具体的には、図7に示すごとく、セラミック成形体2において有害であると考えられる大きさの欠陥が、単位長さ(mm)につき10個確認された。
【0048】
(実施例4)
本例は、表1に示すごとく、本発明の押出成形機を用いて成形したセラミック成形体2と、型表面110に表面処理が施されていない成形型11を有する押出成形機を用いて成形したセラミック成形体2とからなるガスセンサ素子の耐久性を調べた例である。
なお、本例において使用した符号は、図1において用いた符号に準ずる。
【0049】
まず、上記セラミック成形体2を複数枚積層すると共にセラミックヒータを積層してガスセンサ素子を得た。該ガスセンサ素子は、2種類の押出成形機ごとに、それぞれ20個ずつ作製した。
そして、それぞれのガスセンサ素子に対して、セラミックヒータに14V、15V、16Vの電圧を順に印加してガスセンサ素子を加熱することにより、該ガスセンサ素子に熱応力を与えた。そして、これにより、14V、15V、16Vの電圧をそれぞれかけたときにガスセンサ素子に発生したクラックの数を調べた。
なお、15Vの電圧印加によりクラックが発生したサンプルについては、16Vの電圧印加試験の対象としていない。
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


【0051】
表1からわかるように、本発明の押出成形機によって成形したセラミック成形体2を用いて形成したガスセンサ素子においては、14〜16Vの範囲で電圧を印加してもクラックは発生しなかった。これに対して、型表面110に表面処理が施されていない成形型11を有する押出成形機によって成形したセラミック成形体2からなるガスセンサ素子においては、電圧が14Vではクラックが発生しなかったが、電圧が15Vでは5%のガスセンサ素子においてクラックが発生した。また、電圧を16V印加した場合、16%のガスセンサ素子においてクラックが発生した。
【0052】
これは、型表面110に表面処理が施されていない押出成形機によって成形されたセラミック成形体2の方が、本発明の押出成形機によって成形されたセラミック成形体2よりも表面の欠陥が多く、かかる欠陥を起点としてガスセンサ素子にクラックが発生し易くなるためであると考えられる。
以上からわかるように、本発明の押出成形機によって成形したセラミック成形体を用いれば、耐久性に優れたガスセンサ素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1における、押出成形機の厚み方向の断面説明図。
【図2】実施例1における、押出成形機の幅方向の断面説明図。
【図3】実施例2における、表面処理を施した型表面及びセラミック材料の表面自由エネルギーの値を示した説明図。
【図4】実施例2における、表面処理が施された型表面とセラミック材料との表面自由エネルギー差と、型表面に付着したセラミック材料の付着厚さとの関係を示した説明図。
【図5】実施例3における、型表面に表面処理を施していない押出成形機により形成されたセラミック成形体の表面における付着厚さを示す説明図。
【図6】実施例3における、型表面に硬質クロムメッキを施した押出成形機により形成されたセラミック成形体の表面における付着厚さを示す説明図。
【図7】実施例3における、型表面に表面処理を施した押出成形機と、表面処理が施されていない押出成形機とを用いて作製したセラミック成形体を用いて形成されたガスセンサの欠陥数を調べた説明図。
【符号の説明】
【0054】
1 押出成形機
11 成形型
110 型表面
12 押出機
2 セラミック成形体
20 セラミック材料
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年9月13日(2006.9.13)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰

【識別番号】100110700
【弁理士】
【氏名又は名称】岩倉 民芳

【識別番号】100130155
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥起


【公開番号】 特開2008−68495(P2008−68495A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−248354(P2006−248354)