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【発明の名称】 セラミック成形体処理装置
【発明者】 【氏名】山崎 恒裕

【氏名】三浦 豊

【氏名】柴田 和弘

【氏名】小番 保

【氏名】高見澤 徹

【氏名】熊谷 嘉人

【氏名】村上 睦義

【氏名】渡辺 克

【要約】 【課題】焼成前の段階でセラミック成形体の強度を向上させるのに適したセラミック成形体処理装置を提供すること。

【構成】セラミック成形体処理装置は、水溶性のバインダを含む未焼成のセラミック成形体1に用いられる。セラミック成形体処理装置は、セラミック成形体1に水蒸気をあてるための水蒸気供給室2と、セラミック成形体1を乾燥させるための乾燥室3と、セラミック成形体1を水蒸気供給室2から乾燥室3に搬送するための搬送手段41とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性のバインダを含む未焼成のセラミック成形体に用いられるセラミック成形体処理装置であって、
セラミック成形体に水蒸気をあてるための水蒸気供給室と、
セラミック成形体を乾燥させるための乾燥室と、
セラミック成形体を前記水蒸気供給室から前記乾燥室に搬送するための搬送手段とを備える、
セラミック成形体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたセラミック成形体処理装置であって、
前記水蒸気供給室には、セラミック成形体を予熱するための予熱手段が備えられている、
セラミック成形体処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたセラミック成形体処理装置であって、バッチ処理方式でセラミック成形体を処理するセラミック成形体処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載されたセラミック成形体処理装置であって、連続処理方式でセラミック成形体を処理するセラミック成形体処理装置。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック成形体の強度を向上させるのに適したセラミック成形体処理装置に関する。セラミック成形体の例としては、コイル装置のコアとして用いられるフェライト成形体を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
フェライト成形体は、特許文献1に開示されているように、一般に、次のような工程で製造される。まず、フェライト粉末に、PVA(ポリビニルアルコール)等のバインダを混練することにより、フェライト粉をバインダで凝集させた構造の顆粒を作製する。次に、これらの顆粒を所定の金型に入れて加圧成形し、フェライト成形体を得る。そして、フェライト成形体を乾燥させた後、焼成を行うことで必要な特性、例えば磁気特性を確保する。
【0003】
ところで、フェライト成形体をコイル装置のコアとして用いるためには、フェライト成形体を所望の形状に加工する必要がある。例えば、ドラム状のコアを得ようとする場合、円柱状のフェライト成形体を円盤状の砥石で削り、導線を巻き付けるための巻芯部を形成する必要がある。フェライト成形体は、焼成後の段階では極めて硬く、加工が難しくなるので、焼成前の段階で加工を行うことが望ましい。
【0004】
しかし、焼成前のフェライト成形体は、顆粒同士を押し固めただけの状態であるから、極めて脆く、強度が低い。このため、フェライト成形体を加工するとき、欠けや割れなどの破損を生じる恐れがある。また、フェライト成形体を焼成炉に搬送するなど、焼成前の段階での取り扱いの際に、誤って衝撃を与えたときも、破損を生じる恐れがある。
【0005】
特に、近年、コイル装置の小型化、薄型化に伴い、コイル装置のコアとして用いられるフェライト成形体の寸法は小さくなっている。例えば、フェライト成形体の厚みが薄くなっている。このため、焼成前の段階でフェライト成形体は破損を生じ易くなっており、破損を防ぐため強度を上げる必要性が高まっている。
【特許文献1】特開2003−282343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、焼成前の段階でセラミック成形体の強度を向上させるのに適したセラミック成形体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、水溶性のバインダを含む未焼成のセラミック成形体に用いられるセラミック成形体処理装置であって、セラミック成形体に水蒸気をあてるための水蒸気供給室と、セラミック成形体を乾燥させるための乾燥室と、セラミック成形体を前記水蒸気供給室から前記乾燥室に搬送するための搬送手段とを備える、セラミック成形体処理装置を提供する。
【0008】
発明者らは、焼成前の段階でのセラミック成形体の強度が低い点について、その原因を究明すべく、鋭意研究した結果、セラミック成形体内部におけるバインダ膜の不具合が大きな要因となっていることを見い出した。即ち、バインダを含む未焼成のセラミック成形体を、加圧成形により作製しても、セラミック成形体の内部ではバインダの膜が互いに押し付けられているだけであり、充分には接合されていない状態となっている。このため、セラミック成形体の強度が低くなっている。
【0009】
セラミック成形体のバインダとして水溶性のバインダを採用した上で、本発明のセラミック成形体処理装置を適用すれば、セラミック成形体の強度を向上させることができる。以下、具体的に説明すると、まず、処理装置に備えられた水蒸気供給室で、セラミック成形体に水蒸気をあてる。これにより、水蒸気を、セラミック成形体の表面から内部に浸透させ、水溶性バインダの膜を湿潤させ、膨張させることで、バインダの膜同士を接合することができる。
【0010】
次に、水蒸気をあてたセラミック成形体を、搬送手段によって水蒸気供給室から乾燥室に搬送する。
【0011】
次に、乾燥室でセラミック成形体を乾燥させる。これにより、接合したバインダ膜から不要な水分を飛ばし、固化させることができる。よって、セラミック成形体の全体としてみて、強度を向上させることができる。
【0012】
水蒸気供給室には、セラミック成形体を予熱するための予熱手段が備えられていることが好ましい。
【0013】
また、セラミック成形体処理装置は、バッチ処理方式でセラミック成形体を処理してもよいし、連続処理方式でセラミック成形体を処理してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、焼成前の段階でセラミック成形体の強度を向上させるのに適したセラミック成形体処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るセラミック成形体処理装置をより理解できるよう、セラミック成形体の製造プロセスと併せて説明する。
【0016】
図1は、セラミック成形体の製造プロセスの一例を示すフローチャートである。ここでは、セラミック成形体の一例として、コイル装置のコアに用いられるフェライト成形体を処理するものとする。
【0017】
まず、ステップS1に示すように、セラミック粉末を調製する。ここでは、フェライト成形体を処理しようとするので、セラミック粉末としては、フェライト粉末を用いる。フェライト粉末は、例えば、次のような方法によって得られる。まず、Fe、NiO、CuO及びZnOを主成分とする原料粉末を用意する。次に、原料粉末を十分に混合した後、仮焼きによって仮焼結させ、仮焼結体を得る。そして、仮焼結体をボールミルなどで粉砕することで、粉砕粉末でなるフェライト粉末を得る。フェライト粉の粒径は、例えば2μmである。
【0018】
次に、ステップS2に示すように、セラミック粉末及び水溶性のバインダから顆粒を作製する。詳しくは、セラミック粉末にバインダを加えて十分に混練した後、スプレードライヤーによって造粒することにより、セラミック粉をバインダで凝集させた構造の顆粒を得る。更に、金網によって顆粒の粒径を揃える。水溶性のバインダの例としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸ポリマーなどを挙げることができる。また、顆粒の粒径は、例えば100μmである。
【0019】
次に、ステップS3に示すように、加圧成形によって顆粒からセラミック成形体を作製する。詳しくは、所定形状の金型に顆粒を入れた後、金型を閉じて圧力を加えることでセラミック成形体を得る。セラミック成形体の形状の例としては、円柱形状、角柱形状等が挙げられる。
【0020】
次に、加圧成形で作製されたセラミック成形体に、セラミック成形体処理装置を適用することで、セラミック成形体を予熱するステップ(ステップS4)、セラミック成形体に水蒸気をあてるステップ(ステップS5)及びセラミック成形体を乾燥させるステップ(ステップS6)を行う。
【0021】
図2は、本発明に係るセラミック成形体処理装置の一実施形態を示す図である。図2に示されたセラミック成形体処理装置は、水蒸気供給室2と、乾燥室3と、搬送手段41とを含む。水蒸気供給室2及び乾燥室3には、それぞれ、扉51及び53が設けられている。扉51、53は、それぞれ、セラミック成形体の搬入口及び搬出口として機能すると共に、外部からの外気の流入を防ぐ役割を担う。
【0022】
更に、水蒸気供給室2と乾燥室3との間も、扉52によって仕切られている。扉52は、水蒸気供給室2と乾燥室3との間で、水蒸気及び熱を遮断するために設けられる。
【0023】
水蒸気供給室2には、セラミック成形体1を予熱するための予熱手段21と、セラミック成形体1に水蒸気をあてるための水蒸気供給手段22と、排気手段23とが備えられている。予熱手段21の例としては、水蒸気供給室2の天面に配置され、熱を放射するヒーターが挙げられる。
【0024】
水蒸気供給手段22の例としては、水蒸気供給室2の天面に配置され、水蒸気を噴射する噴射ノズル(以下参照符号22を付す)が挙げられる。噴射ノズル22は、水蒸気発生装置61に接続されている。水蒸気発生装置61は、予め設定された温度の水蒸気を発生する。
【0025】
排気手段23は、水蒸気供給室2で、余剰の水蒸気を滞留させない役割、及び、余分な熱を回収して再利用する役割を担う。排気手段23の例としては、水蒸気供給室2内部の、水蒸気を含めた空気を排気する排気ダクトが挙げられる。
【0026】
次に、乾燥室3には、セラミック成形体1を乾燥させるための乾燥手段31と、排気手段33とが備えられている。乾燥手段31の例としては、乾燥室3の天面に配置され、熱を放射するヒーターが挙げられる。
【0027】
排気手段33は、乾燥室3で、セラミック成形体1から放出された蒸気を滞留させない役割、及び、余分な熱を回収して再利用する役割を担う。排気手段33の例としては、水蒸気供給室2の排気手段23と同様、水蒸気を含めた空気を排気する排気ダクトが挙げられる。
【0028】
最後に、搬送手段41は、外部から水蒸気供給室2、乾燥室3、更には再び外部へと、セラミック成形体1を搬送する役割を担う。搬送手段41は、セラミック成形体1に、時間経過でみて間欠的に送りを加えるのに適した構成となっている。具体的には、搬送手段41は、複数のトレイ411と、プッシャー412とを含んで構成されている。トレイ411は、長さ寸法X1が同一の値に揃えられており、それぞれ、一定数量のセラミック成形体1を載せることができる。プッシャー412は、矢印A4で示されるように、一回の動作ごとに、トレイ411をトレイの長さ寸法X1だけ押し出す機能を有する。
【0029】
次に、このようなセラミック成形体処理装置の使用方法について説明する。セラミック成形体処理装置は、初期状態では、扉51〜53の何れも閉じている。まず、扉51を開き、セラミック成形体1を載せたトレイ411を、プッシャー412により水蒸気供給室2に押し出す。
【0030】
次に、扉51を閉じて、水蒸気供給室2の内部でセラミック成形体1を予熱し、セラミック成形体1の温度を上昇させる。図示実施形態では、セラミック成形体1を予熱するための手法として、ヒータでなる予熱手段21から熱を放射し、セラミック成形体1を直接に加熱する手法を採用しているが、このほか、マイクロ波などで間接加熱する手法を採用することもできる。
【0031】
次に、セラミック成形体1の温度が十分に上昇した状態で、セラミック成形体1に水蒸気をあてる。図示実施形態では、セラミック成形体1に水蒸気をあてるための手法として、噴射ノズル22によって水蒸気をセラミック成形体1の表面に噴射する手法を採用しているが、このほか、水蒸気を満たした室内に一定時間放置する手法を採用することもできる。水蒸気の温度は、好ましくは60℃〜90℃の範囲に設定し、より好ましくは70℃〜80℃の範囲に設定する。また、水蒸気をあてる時間は、セラミック成形体の寸法または形状にもよるが、例えば15分〜480分の範囲に設定する。
【0032】
次に、扉52を開き、セラミック成形体1を載せたトレイ411を、プッシャー412により水蒸気供給室2から乾燥室3に押し出す。
【0033】
次に、扉52を閉じて、乾燥室3の内部でセラミック成形体1を乾燥させる。図示実施形態では、セラミック成形体1を乾燥させるための手法として、ヒータでなる乾燥手段31により、セラミック成形体1の温度を所定の乾燥温度まで上昇させ、セラミック成形体1から水蒸気を放出させる手法を採用しているが、このほか、マイクロ波などで加熱する手法を採用することもできる。乾燥温度及び乾燥時間は、セラミック成形体の寸法または形状にもよるが、例えば120℃及び1時間に設定する。
【0034】
最後に、扉53を開き、セラミック成形体1を載せたトレイ411を、プッシャー412により乾燥室3から外部に押し出す。
【0035】
加圧成形で作製されたセラミック成形体について、セラミック成形体内部におけるバインダ膜の不具合が、強度を低下させる大きな要因となっていることは、前述した通りである。図3(a)は、加圧成形した段階でのバインダの状態を模式的に示している。図2(a)を参照すると、セラミック粉7の周囲にはバインダ8の膜が形成されている。しかし、加圧成形によっても、バインダ8の膜同士は単に押し付けられているだけであり、十分には接合されていない。このため、セラミック成形体の全体としてみた強度が低くなってしまう。
【0036】
加圧成形の際にバインダ8の膜同士を接合するための手法としては、あらかじめ、バインダの水分含有量を多めに調整し、バインダを柔らかくしておくという手法が考えられる。しかし、バインダの水分含有量を多めにした状態で加圧成形を行うと、顆粒が金型に付着してしまい、加圧成形を円滑に行うことができなくなる。
【0037】
そこで、図2に示したセラミック成形体処理装置では、水蒸気供給室2でセラミック成形体1に水蒸気をあてる。これにより、水蒸気を、セラミック成形体1の表面から内部に浸透させ、バインダの膜を一旦、柔らかくすることで、図3(b)に示すように、バインダ8の膜同士を接合することができる。
【0038】
その後、セラミック成形体1を水蒸気供給室2から乾燥室3に搬送し、乾燥室3でセラミック成形体1を乾燥させる。これにより、セラミック成形体1内部のバインダから不要な水分を飛ばすことができるので、図3(c)に示すように、バインダ8の膜を、接合した状態で収縮固化させることができる。よって、セラミック成形体の全体としてみた強度が向上することになる。
【0039】
更に、セラミック成形体の構造全体としての観点から、強度向上のメカニズムを説明する。まず、加圧成形された段階では、図4(a)に示すように、セラミック成形体1の内部でセラミック粉7がバインダ8と加圧により接している。
【0040】
次に、セラミック成形体1に水蒸気をあてると、図4(b)に示すように、セラミック成形体1に含まれるバインダ8が水蒸気を取り込んで膨張する。そのとき、セラミック粉7はバインダ8の膨張による圧縮応力を受けるが、セラミック成形体7の組織構造が緩むため、セラミック成形体1が破壊することはない。
【0041】
その後、セラミック成形体1を乾燥させると、図4(c)に示すように、バインダ8が乾燥して収縮し、セラミック成形体1の全体に引っ張り応力A2が発生する。この引っ張り応力A2によっても、セラミック成形体1の強度を向上させることができる。
【0042】
更に発明者が検討したところ、セラミック成形体に水蒸気をあてて、セラミック成形体の表面に結露を生じさせてしまうと、セラミック成形体の表面が崩れて、セラミック成形体の形状を保持できなくなる可能性がある。
【0043】
このような問題に関し、図2に示したセラミック成形体処理装置では、予熱手段21によってセラミック成形体1を予熱した状態で、セラミック成形体1に水蒸気をあてるから、水蒸気をあてる際に結露が生じることを抑制できる。
【0044】
好ましくは、セラミック成形体を、セラミック成形体の温度が60℃〜100℃の範囲となるように予熱する。セラミック成形体の温度が60℃よりも低いと、水蒸気をあてたとき結露が生じる可能性がある。また、セラミック成形体の温度が100℃よりも高いと、セラミック成形体が乾燥し過ぎてしまい、その後に水蒸気をあてても、セラミック成形体内部のバインダに水蒸気が取り込まれない可能性がある。
【0045】
更に、図2に示したセラミック成形体処理装置では、水蒸気供給室2と乾燥室3とが別個に形成されているから、水蒸気供給室2及び乾燥室3ごとに、噴射ノズル、ヒーターなどの適した設備を付与することができる。仮に、水蒸気供給室と、乾燥室とを一体的に形成しようとすると、一つの室でセラミック成形体に水蒸気をあてた後、その同じ室でセラミック成形体を乾燥させることになるから、共用のための設備が必要となる。
【0046】
また、図2に示したセラミック成形体処理装置では、水蒸気供給室2と乾燥室3とが互いに隣接した配置となっているから、セラミック成形体1を、外気に触れさせることなく水蒸気供給室2から乾燥室3に搬送するのに適している。水蒸気供給室2から乾燥室3に搬送する途中で、仮に、セラミック成形体1を外気に触れさせてしまうと、外気の温度または湿度によってはセラミック成形体1の表面に結露が生じる可能性がある。特に、水蒸気供給室2で水蒸気をあてたセラミック成形体1は、膨潤し、表面が崩れ易い状態となっているため、水蒸気供給室2から乾燥室3までの搬送の際に結露を防止することは重要である。
【0047】
再び、図1に戻る。セラミック成形体処理装置によってステップS4〜S6を行った後、ステップS7に示すように、セラミック成形体を所望の形状に加工する。例えば、コイル装置に用いられるドラム状コアを得ようとする場合、円柱状の成形体を円盤状の砥石で削り、導線を巻き付けるための巻芯部を形成する。
【0048】
最後に、セラミック成形体を焼成炉に搬送し、ステップS8に示すようにセラミック成形体を焼成する。これにより、セラミック成形体に含まれるセラミック粉を焼結させ、必要な特性、例えば、電気的または磁気的特性を確保する。
【0049】
ステップS7でセラミック成形体を加工する際の破損、または、ステップS8でセラミック成形体を焼成炉に搬送する際の破損については、セラミック成形体処理装置でセラミック成形体の強度を向上させてあるので、これを防止することができる。
【0050】
次に、セラミック成形体の強度を向上させる点に関するセラミック成形体処理装置の実験データを説明する。実験では、水溶性バインダとしてPVAを用い、加圧成形により円柱状のフェライト成形体を7つ作製した。これらをサンプル1〜7としてセラミック成形体処理装置で処理した。サンプル1については、水蒸気をあてず、セラミック成形体処理装置の乾燥室で乾燥処理(120℃−1時間)のみを行った。
【0051】
また、サンプル3、4、5、6については、水蒸気供給室で予熱を施した後、それぞれ、温度60℃、70℃、80℃、90℃の水蒸気を10分間あてた。その後、サンプル1と同じ乾燥処理を行った。
【0052】
残りのサンプル2、7については、水蒸気供給室で予熱を施した後、それぞれ、温度45℃、100℃の水蒸気を15分間あてた。その後、サンプル1と同じ乾燥処理を行った。
【0053】
このようにして得られた各サンプル1〜7について、焼成せずに破壊強度を測定した。破壊強度の測定は、平板の上にフェライト成形体を、その外周面が平板に接する態様で載せ、上方からフェライト成形体の外周面に力を印加することによって行った。実験結果を下記の表1に示す。
【0054】
【表1】


【0055】
表1を参照すると、フェライト成形体に水蒸気をあてず、乾燥処理のみを行った場合(サンプル1)、破壊強度は、3.7kgfと低い値となった。これに対し、フェライト成形体に水蒸気をあて、更に乾燥処理を行った場合(サンプル3〜6)、破壊強度は、大幅に向上し、6.3kgf〜7.8kgfと高い値となった。
【0056】
水蒸気の温度が低すぎると、フェライト成形体内部の水溶性バインダに僅かな量の水蒸気しか取り込ませることができず、結果として破壊強度を向上させることができない可能性がある(サンプル2)。
【0057】
かといって、水蒸気の温度が高すぎると、フェライト成形体が乾燥することで、フェライト成形体内部の水溶性バインダも逆に乾燥してしまい、破壊強度を向上させることができない可能性がある(サンプル7)。
【0058】
発明者らは、水蒸気の温度が60℃〜90℃の範囲のとき、フェライト成形体内部の水溶性バインダに十分な量の水蒸気を取り込ませ、破壊強度を大幅に向上させることができることを確認した(サンプル3〜6)。
【0059】
再び、図2に戻る。図2に示したセラミック成形体処理装置は、セラミック成形体に対する処理を、セラミック成形体に送りを加えず止めた状態で行うバッチ処理方式を採用している。詳しくは、水蒸気供給室2で予熱を施す処理及び水蒸気をあてる処理を、セラミック成形体1に送りを加えず止めた状態で行う。その後、セラミック成形体1を乾燥室に搬送した後、乾燥室3でセラミック成形体を乾燥させる処理も、セラミック成形体1に送りを加えず止めた状態で行う。このようなバッチ処理方式によれば、安定した強度のセラミック成形体を得ることができる。また、セラミック成形体の形状の違いによる処理条件の変更もより容易に行うことができる。
【0060】
図5は、本発明に係るセラミック成形体処理装置の別の実施形態を示す図である。図示において、図2に現れた構成部分と同一性有る構成部分には、同一の参照符号を付し、説明を省略する。図2に示したセラミック成形体処理装置との対比において、図5に示したセラミック成形体処理装置は、セラミック成形体に対する処理を、セラミック成形体に送りを加えながら行う連続処理方式を採用している。以下、具体的構成を説明する。
【0061】
搬送手段42は、搬送路に沿ってセラミック成形体に連続的に送りを加えるのに適した構成となっている。図示実施形態の場合、搬送手段42は、ベルトコンベア(以下、参照符号42を付す)から構成されている。ベルトコンベア42は、外部から水蒸気供給室2、乾燥室3、更には再び外部へと連続して形成されている。
【0062】
水蒸気供給室2及び乾燥室3には、それぞれ、エアカーテンとして機能する気流を作り出すエアカーテン装置56、58が設けられている。エアカーテン装置56、58は、ベルトコンベア42によるセラミック成形体1の搬送動作を妨げることなく、外部からの外気の流入を防ぐ役割を担う。
【0063】
更に、水蒸気供給室2と乾燥室3との間も、エアカーテン装置57によって仕切られている。エアカーテン装置57は、ベルトコンベア42によるセラミック成形体1の搬送動作を妨げることなく、水蒸気供給室2と乾燥室3との間で水蒸気及び熱を遮断する役割を担う。
【0064】
次に、図5に示したセラミック成形体処理装置の使用方法について説明する。セラミック成形体1を載せたベルトコンベア42に、時間経過でみて連続的に送りを加える。これによって、セラミック成形体1に送りを加えながら、水蒸気供給室2でセラミック成形体1に予熱を施し、水蒸気をあて、乾燥室3でセラミック成形体1を乾燥させる。このような連続処理方式によれば、予熱処理、水蒸気処理及び乾燥処理をより安価に提供することができる。また、バッチ処理方式と比較して、セラミック成形体処理装置の寸法の制約が少ない。
【0065】
本発明が適用されるセラミック成形体の例として、コイル装置のコアに用いられるフェライト成形体を挙げたが、これに限定されることはない。
【0066】
また、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々の変形、変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】セラミック成形体の製造プロセスの一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るセラミック成形体処理装置の一実施形態を示す図である。
【図3】セラミック成形体の内部におけるバインダの状態を模式的に示す図である。
【図4】セラミック成形体の構造を模式的に示す図である。
【図5】本発明に係るセラミック成形体処理装置の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 セラミック成形体
2 水蒸気供給室
3 乾燥室
41、42 搬送手段

【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100081606
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 美次郎

【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一


【公開番号】 特開2008−62551(P2008−62551A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−244048(P2006−244048)