トップ :: B 処理操作 運輸 :: B28 セメント,粘土,または石材の加工

【発明の名称】 セラミック成形体の処理方法
【発明者】 【氏名】山崎 恒裕

【氏名】三浦 豊

【氏名】柴田 和弘

【氏名】小番 保

【氏名】高見澤 徹

【氏名】熊谷 嘉人

【氏名】村上 睦義

【氏名】渡辺 克

【要約】 【課題】焼成前の段階でセラミック成形体の強度を向上させることができるセラミック成形体の処理方法を提供すること。

【構成】ステップS3に示すように、水溶性のバインダを含む未焼成のセラミックス成形体を、加圧成形によって形成する。そして、ステップS5に示すように、セラミック成形体に水蒸気をあてる。その後、ステップS6に示すように、セラミック成形体を乾燥させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性のバインダを含む未焼成のセラミックス成形体を、加圧成形によって形成し、
前記セラミック成形体に水蒸気をあて、
その後、前記セラミック成形体を乾燥させる
セラミック成形体の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたセラミック成形体の処理方法であって、
前記セラミック成形体に、温度が60℃〜90℃の範囲の水蒸気をあてる
セラミック成形体の処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたセラミック成形体の処理方法であって、
前記セラミック成形体に水蒸気をあてる前に、前記セラミック成形体を予熱する
セラミック成形体の処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたセラミック成形体の処理方法であって、
前記セラミック成形体を、前記セラミック成形体の温度が60℃〜100℃の範囲となるように予熱する
セラミック成形体の処理方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック成形体の処理方法に関する。セラミック成形体の例としては、コイル装置のコアとして用いられるフェライト成形体が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
フェライト成形体は、特許文献1に開示されているように、一般に、次のような工程で製造される。まず、フェライト粉末に、PVA(ポリビニルアルコール)等のバインダを混練することにより、フェライト粉をバインダで凝集させた構造の顆粒を作製する。次に、これらの顆粒を所定の金型に入れて加圧成形し、フェライト成形体を得る。そして、フェライト成形体を乾燥させた後、焼成を行うことで必要な特性、例えば磁気特性を確保する。
【0003】
ところで、フェライト成形体をコイル装置のコアとして用いるためには、フェライト成形体を所望の形状に加工する必要がある。例えば、ドラム状のコアを得ようとする場合、円柱状のフェライト成形体を円盤状の砥石で削り、導線を巻き付けるための巻芯部を形成する必要がある。フェライト成形体は、焼成後の段階では極めて硬く、加工が難しくなるので、焼成前の段階で加工を行うことが望ましい。
【0004】
しかし、焼成前のフェライト成形体は、顆粒同士を押し固めただけの状態であるから、極めて脆く、強度が低い。このため、フェライト成形体を加工するとき、欠けや割れなどの破損を生じる恐れがある。また、フェライト成形体を焼成炉に搬送するなど、焼成前の段階での取り扱いの際に、誤って衝撃を与えたときも、破損を生じる恐れがある。
【0005】
特に、近年、コイル装置の小型化、薄型化に伴い、コイル装置のコアとして用いられるフェライト成形体の寸法は小さくなっている。例えば、フェライト成形体の厚みが薄くなっている。このため、焼成前の段階でフェライト成形体は破損を生じ易くなっており、破損を防ぐため強度を上げる必要性が高まっている。
【特許文献1】特開2003−282343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、焼成前の段階でセラミック成形体の強度を向上させることができるセラミック成形体の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係るセラミック成形体の処理方法では、水溶性のバインダを含む未焼成のセラミックス成形体を、加圧成形によって形成する。そして、前記セラミック成形体に水蒸気をあてる。その後、前記セラミック成形体を乾燥させる。
【0008】
発明者らは、加圧成形で形成されたセラミック成形体の強度が低い点について、その原因を究明すべく、鋭意研究した結果、セラミック成形体内部におけるバインダ膜の不具合が大きな要因となっていることを見い出した。即ち、セラミック成形体を加圧成形しても、セラミック成形体の内部ではバインダの膜が互いに押し付けられただけであり、充分には接合されていない状態となっている。このため、セラミック成形体の強度が低くなっている。
【0009】
そこで、本発明では、加圧成形によって形成されたセラミック成形体に、水蒸気をあてる。これにより、水蒸気を、セラミック成形体の表面から内部に浸透させ、水溶性バインダの膜を湿潤させ、膨張させることで、バインダの膜同士を接合することができる。
【0010】
その後、セラミック成形体を乾燥させる。これにより、接合したバインダ膜から不要な水分を飛ばし、固化させることができる。よって、セラミック成形体の全体としてみて、強度を向上させることになる。
【0011】
適切には、セラミック成形体に、温度が60℃〜90℃の範囲の水蒸気をあてる。
【0012】
また、適切には、セラミック成形体に水蒸気をあてる前に、セラミック成形体を予熱する。より適切には、セラミック成形体を、セラミック成形体の温度が60℃〜100℃の範囲となるように予熱する。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、焼成前の段階でセラミック成形体の強度を向上させることができるセラミック成形体の処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係るセラミック成形体の処理方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態では、セラミック成形体の一例として、コイル装置のコアに用いられるフェライト成形体を処理するものとする。
【0015】
まず、ステップS1に示すように、セラミック粉末を調製する。本実施形態の場合、フェライト成形体を処理しようとするので、セラミック粉末としては、フェライト粉末を用いる。フェライト粉末は、例えば、次のような方法によって得られる。まず、Fe、NiO、CuO及びZnOを主成分とする原料粉末を用意する。次に、原料粉末を十分に混合した後、仮焼きによって仮焼結させ、仮焼結体を得る。そして、仮焼結体をボールミルなどで粉砕することで、粉砕粉末でなるフェライト粉末を得る。フェライト粉の粒径は、例えば2μmである。
【0016】
次に、ステップS2に示すように、セラミック粉末及び水溶性のバインダから顆粒を作製する。詳しくは、セラミック粉末にバインダを加えて十分に混練した後、スプレードライヤーによって造粒することにより、セラミック粉をバインダで凝集させた構造の顆粒を得る。更に、金網によって顆粒の粒径を揃える。水溶性のバインダの例としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸ポリマーなどを挙げることができる。また、顆粒の粒径は、例えば100μmである。
【0017】
次に、ステップS3に示すように、加圧成形によって顆粒からセラミック成形体を作製する。詳しくは、所定形状の金型に顆粒を入れた後、金型を閉じて圧力を加えることでセラミック成形体を得る。セラミック成形体の形状の例としては、円柱形状、角柱形状等が挙げられる。
【0018】
次に、ステップS4に示すように、セラミック成形体を予熱し、セラミック成形体の温度を上昇させておく。セラミック成形体を予熱するための方法としては、一定の温度に維持された予熱室にセラミック成形体を入れる方法や、セラミック成形体を直接に加熱する方法等を採用することができる。
【0019】
次に、ステップS5に示すように、セラミック成形体に水蒸気をあてる。セラミック成形体に水蒸気をあてるための方法としては、ノズルによって水蒸気をセラミック成形体の表面に噴射する方法や、水蒸気で満たされた雰囲気内にセラミック成形体を入れる方法等を採用することができる。水蒸気の温度は、好ましくは60℃〜90℃の範囲に設定し、より好ましくは70℃〜80℃の範囲に設定する。また、水蒸気をあてる時間は、セラミック成形体の寸法または形状にもよるが、例えば15分〜480分の範囲に設定する。
【0020】
次に、ステップS6に示すように、セラミック成形体を乾燥させる。セラミック成形体を乾燥させるための方法としては、バッチオーブンを使用する方法や、直接に加熱する方法等を採用することができる。乾燥温度及び乾燥時間は、セラミック成形体の寸法または形状にもよるが、例えば120℃及び1時間に設定する。
【0021】
加圧成形で作製されたセラミック成形体について、セラミック成形体内部におけるバインダ膜の不具合が、強度を低下させる大きな要因となっていることは、前述した通りである。図2(a)は、加圧成形した段階でのバインダの状態を模式的に示している。図2(a)を参照すると、セラミック粉1の周囲にはバインダ2の膜が形成されている。しかし、加圧成形によっても、バインダ2の膜同士は単に押し付けられているだけであり、十分には接合されていない。このため、セラミック成形体の全体としてみた強度が低くなってしまう。
【0022】
加圧成形の際にバインダ2の膜同士を接合するための手法としては、あらかじめ、バインダの水分含有量を多めに調整し、バインダを柔らかくしておくという手法が考えられる。しかし、バインダの水分含有量を多めにした状態で加圧成形を行うと、顆粒が金型に付着してしまい、加圧成形を円滑に行うことができなくなる。
【0023】
そこで、本実施形態では、加圧成形を行った後、ステップS5に示すように、加圧成形で得られたセラミック成形体に水蒸気をあてる。これにより、水蒸気を、セラミック成形体の表面から内部に浸透させ、バインダの膜を一旦、柔らかくすることで、図2(b)に示すように、バインダ2の膜同士を接合することができる。
【0024】
その後、ステップS6に示すように、セラミック成形体を乾燥させる。これにより、セラミック成形体内部のバインダから不要な水分を飛ばすことで、図2(c)に示すように、バインダ2の膜を、接合した状態で収縮固化させることができる。よって、セラミック成形体の全体としてみた強度が向上することになる。
【0025】
発明者らが検討したところ、ステップS5でセラミック成形体に蒸気をあてる代わりに、仮に、セラミック成形体を水に浸漬(ジャブ漬け)したとすると、セラミック成形体の表面が崩れてしまい、セラミック成形体の形状を保持できなくなる。
【0026】
更に、セラミック成形体の構造全体としての観点から、強度向上のメカニズムを説明する。まず、図3(a)に示すように、加圧成形された段階(ステップS3)では、セラミック成形体3の内部でセラミック粉1がバインダ1と加圧により接している。
【0027】
次に、ステップS5においてセラミック成形体に水蒸気をあてると、図3(b)に示すように、セラミック成形体3に含まれるバインダ2が水蒸気を取り込んで膨張する。そのとき、セラミック粉1はバインダ2の膨張による圧縮応力を受けるが、セラミック成形体3の組織構造が緩むため、セラミック成形体3が破壊することはない。
【0028】
その後、ステップS6においてセラミック成形体を乾燥させると、図3(c)に示すように、バインダ2が乾燥して収縮し、セラミック成形体3の全体に引っ張り応力A2が発生する。この引っ張り応力A2によっても、セラミック成形体3の強度を向上させることができる。
【0029】
更に発明者が検討したところ、セラミック成形体に水蒸気をあてて、セラミック成形体の表面に結露を生じさせてしまうと、セラミック成形体の表面が崩れて、セラミック成形体の形状を保持できなくなる可能性がある。
【0030】
そこで、本実施形態では、結露が発生し易い形状のセラミック成形体に本方法を適用する場合、水蒸気をあてる前に、ステップS4に示すように、セラミック成形体を予熱する。セラミック成形体を予熱することにより、その後、水蒸気をあてる際に結露が生じることを抑制できる。
【0031】
好ましくは、セラミック成形体を、セラミック成形体の温度が60℃〜100℃の範囲となるように予熱する。セラミック成形体の温度が60℃よりも低いと、水蒸気をあてたとき結露が生じる可能性がある。また、セラミック成形体の温度が100℃よりも高いと、セラミック成形体が乾燥し過ぎてしまい、その後に水蒸気をあてても、セラミック成形体内部のバインダに水蒸気が取り込まれない可能性がある。
【0032】
上述したステップS1〜S6の後、ステップS7に示すように、セラミック成形体を所望の形状に加工する。例えば、コイル装置に用いられるドラム状コアを得ようとする場合、円柱状の成形体を円盤状の砥石で削り、導線を巻き付けるための巻芯部を形成する。
【0033】
最後に、セラミック成形体を焼成炉に搬送し、ステップS8に示すようにセラミック成形体を焼成する。これにより、セラミック成形体に含まれるセラミック粉を焼結させ、必要な特性、例えば、電気的または磁気的特性を確保する。
【0034】
ステップS7でセラミック成形体を加工する際の破損、または、ステップS8でセラミック成形体を焼成炉に搬送する際の破損については、先のステップS5、S6でセラミック成形体の強度を向上させてあるので、これを防止することができる。
【0035】
次に、セラミック成形体の強度を向上させる点に関する実験データについて説明する。実験では、水溶性バインダとしてPVAを用い、加圧成形により円柱状のフェライト成形体を7つ作製した。これらをサンプル1〜7とする。サンプル1については、水蒸気をあてず、乾燥処理(120℃−1時間)のみを行った。
【0036】
また、サンプル3、4、5、6については、予熱を施した後、それぞれ、温度60℃、70℃、80℃、90℃の水蒸気を10分間あてた。その後、サンプル1と同じ乾燥処理を行った。
【0037】
残りのサンプル2、7については、予熱を施した後、それぞれ、温度45℃、100℃の水蒸気を15分間あてた。その後、サンプル1と同じ乾燥処理を行った。
【0038】
更に、各サンプル1〜7について、焼成せずに破壊強度を測定した。破壊強度の測定は、平板の上にフェライト成形体を、その外周面が平板に接する態様で載せ、上方からフェライト成形体の外周面に力を印加することによって行った。実験結果を下記の表1に示す。
【0039】
【表1】


【0040】
表1を参照すると、フェライト成形体に水蒸気をあてず、乾燥処理のみを行った場合(サンプル1)、破壊強度は、3.7kgfと低い値となった。これに対し、フェライト成形体に水蒸気をあて、更に乾燥処理を行った場合(サンプル3〜6)、破壊強度は、大幅に向上し、6.3kgf〜7.8kgfと高い値となった。
【0041】
水蒸気の温度が低すぎると、フェライト成形体内部の水溶性バインダに僅かな量の水蒸気しか取り込ませることができず、結果として破壊強度を向上させることができない可能性がある(サンプル2)。
【0042】
かといって、水蒸気の温度が高すぎると、フェライト成形体が乾燥することで、フェライト成形体内部の水溶性バインダも逆に乾燥してしまい、破壊強度を向上させることができない可能性がある(サンプル7)。
【0043】
発明者らは、水蒸気の温度が60℃〜90℃の範囲のとき、フェライト成形体内部の水溶性バインダに十分な量の水蒸気を取り込ませ、破壊強度を大幅に向上させることができることを確認した(サンプル3〜6)。
【0044】
本発明が適用されるセラミック成形体の例として、コイル装置のコアに用いられるフェライト成形体を挙げたが、これに限定されることはない。
【0045】
また、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々の変形、変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るセラミック成形体の処理方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】セラミック成形体の内部におけるバインダの状態を模式的に示す図である。
【図3】セラミック成形体の構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 セラミック粉
2 バインダ
3 セラミック成形体

【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100081606
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 美次郎

【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一


【公開番号】 特開2008−62550(P2008−62550A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−244047(P2006−244047)