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【発明の名称】 焼結体、発光管及びその製造方法
【発明者】 【氏名】吉岡 邦彦

【氏名】松本 万晃

【氏名】大橋 玄章

【氏名】井上 正勝

【氏名】伊神 俊市

【氏名】渡邊 敬一郎

【要約】 【課題】接合部における不具合を抑制又は回避できる無機粉末成形体の接合体及び焼結体を提供する。

【構成】2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体を、前記接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と、前記接合体における接合部に対応する第2の構成部分と、を備えるようにするとともに、以下の特徴(a)及び(b)のいずれかあるいは双方を有するようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体であって、
前記接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と、
前記接合体における接合部に対応する第2の構成部分と、
を備え、
以下の特徴(a)及び(b)のいずれかあるいは双方を有する、焼結体。
(a)前記第2の構成部分は前記第1の構成部分以下の表面粗さを有する。
(b)前記第2の構成部分は、その幅中心近傍において前記第1の構成部分以上の透光度を有する。
【請求項2】
前記第2の構成部分の表面粗さは0.01μm≦Ra≦2μmである、請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
前記第2の構成部分の幅中心近傍の透光度は80%以上である、請求項1又は2に記載の焼結体。
【請求項4】
2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体であって、
前記接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と、
前記接合体における接合部に対応する第2の構成部分と、
を備え、
前記第2の構成部分の表面粗さは0.01μm≦Ra≦2μmあるか及び/又は前記第2の構成部分の幅中心近傍での透光度が80%以上である、焼結体。
【請求項5】
前記第2の構成部分は、前記第1の構成部分を超えて前記焼結体表面に突出されない、請求項1〜4のいずれかに記載の焼結体。
【請求項6】
前記第2の構成部分の幅は10μm以上2000μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の焼結体。
【請求項7】
前記第1の構成部分の肉厚に対する前記第2の構成部分の幅の割合が1以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の焼結体。
【請求項8】
前記焼結体は中空部を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の焼結体。
【請求項9】
前記第1の構成部分の平均結晶粒径に対する前記第2の構成部分の平均結晶粒径の割合が1.0以上2.0以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の焼結体。
【請求項10】
前記第2の構成部分の幅方向の中心から前記第1の構成部分へ向かって前記第2の構成部分の平均結晶粒径が小さくなる傾向を示す、請求項9に記載の焼結体。
【請求項11】
無機粉末成形体の接合体の製造方法であって、
少なくとも第1の無機粉末成形体及び第2の無機粉末成形体の互いに接合しようとする接合面の間に、表面張力が作用する状態を維持して無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーによる接合スラリー層を形成する接合スラリー層形成工程と、
前記接合スラリー層を乾燥する乾燥工程と、
を備える、製造方法。
【請求項12】
前記接合スラリー層形成工程は、前記第1の無機粉末成形体及び前記第2の無機粉末成形体の接合面に略垂直方向の距離を調節しつつ接合スラリー層を形成する工程である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記接合スラリー層形成工程に先立って、第1の無機粉末成形体と第2の無機粉末成形体との互いに接合しようとする接合面の少なくとも一方に無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーを供給する工程を備える、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記非自己硬化性接合スラリーの供給工程は、前記非自己硬化性接合スラリーを印刷により前記接合面に供給する工程である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
焼結体の製造方法であって、
少なくとも第1の無機粉末成形体及び第2の無機粉末成形体の互いに接合しようとする接合面の間に、表面張力が作用する状態を維持して無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーによる接合スラリー層を形成する接合スラリー層形成工程と、
前記接合スラリー層を乾燥する乾燥工程と、
乾燥された前記接合スラリー層を介して接合された前記第1の無機粉末成形体と前記第2の無機粉末成形体との接合体を焼結する工程と、
を備える、製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって得られる、焼結体。
【請求項17】
請求項1〜10及び16のいずれかに記載の焼結体を用いる、発光管。
【請求項18】
メタルハライド用発光管である、請求項17に記載の発光管。
【請求項19】
高圧ナトリウムランプ用発光管である、請求項17に記載の発光管。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無機粉末成形体を一体化させた焼結体、発光管及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス、高融点金属、セラミックス/金属複合体は、通常、原料粉末を焼結して製造されるため、製品への形状付与は、主として成形時に行われる。しかし、形状付与のし易さは成形法に依存する。例えば、円板製品は、金型プレス法では成形しやすいが、複雑形状の製品は、CIP(Cold Isostatic Press)にて塊状成形体から一旦成形してから、機械加工により形状付与することが行われている。
【0003】
ゲルキャスト法は、無機粉末を含む液状スラリーを、スラリーに含まれる有機化合物相互の化学反応により固化して無機粉末成形体を得る方法である。成形型を高精度に転写することができるため、高精度の形状付与に優れている。しかしながら、閉構造を有する製品の場合、離型不可のため適用できないかあるいはロストワックス法のように別途中子を設けて内表面形状を付与する必要がある。
【0004】
特に、メタルハライドランプ用発光管、あるいは高圧ナトリウム用発光管のように、胴部の内径より端部の穴径が小さい製品においては、生産性を向上させることが難しい。発光管を構成する各要素を、単純形状となるように小部品に分割し、各小部品を、押出成形あるいはドライバックプレス成形、金型プレス成形により得ることは考えられる。この場合には、複数の部品の焼成収縮率差を利用し、焼結時に一体化させる方法がある。更に、中子を別途成形して中子と外型の間の隙間にスラリーを注型するゲルキャスト法にて、予め一体化した成形体を得る方法が採用されている(特許文献1、2)。
【0005】
複数の部品を別途成形し、これらを接合して一体化する方法としては、更に特許文献3記載の方法がある。この接合方法では、各セラミックスボディに有機バインダを含有させ、第1のセラミックスボディの接合面と第2のセラミックスボディの接合面とを同時に加熱することで有機バインダを局所的に溶融させる。そして、局所的にバインダを溶融させた状態で第1と第2の接合面を接触させ、二つの接合面の境界面領域に圧縮及び伸長を交互にもたらすことによって、接合部分を一体化させている。
【特許文献1】再公表特許WO2002-085590A1
【特許文献2】国際出願WO2005-028710A1
【特許文献3】特表2004-519820
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、複数の部品を別々に成形し、焼成収縮率の差を利用して異なる部品を嵌め合わせて一体焼結させる方法は、工程が煩雑であり、生産性向上が難しい。特許文献1、2記載のゲルキャスト法は、高い形状精度と生産性とを両立させることが難しい。
【0007】
また、特許文献3記載の方法は、溶融可能なバインダを用いるため、接合時、あるいは脱脂プロセスで成形体が変形しやすい。これは、接合部を加熱することによって接合する技術ではあるが、加熱により接合界面のみを緩衝地帯とすることは実質的には不可能であり、接合部近傍の数mmが変形して緩衝効果が発現する。結果として形状が変化し易く、変形した部分は著しく肉厚が増加するため透光度が低下することになる。また、二つの成形体の接合面を圧縮/伸長させるプロセスを要するため、生産コストが高い。特に、二つの成形体の各薄肉部を突き合わせ接合する場合には、接合面の圧縮/伸長プロセスの実施は極めて困難である。また、実質的にはワックス系射出成形により成形体を得、接合体としているため、脱脂に長時間を要し生産性が悪くなる。さらに、特許文献3の方法では、接合部が膨出ないし変形する傾向があるほか、圧縮/伸長プロセスでの繰り返しの応力により、接合時に材料の膨出とともに接合部表面が荒れることがあり、そのために接合部の表面粗さが増大したり接合部の透光性が低下するおそれがあった。また、透光性の低下を防ぐため、接合部の膨出や変形を小さくした場合などには、成形体同士の溶融一体化に不完全な部分が発生しやすくなり、接合体の強度が低くなってしまうことがあった。
【0008】
本発明は、接合部における不具合を抑制又は回避できる無機粉末成形体の接合体、焼結体及び発光管の製造方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、接合部の表面粗さ、透明性又は平坦性に優れた焼結体及び発光管を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について検討した結果、接合部の変形や表面粗さの増大を抑制又は回避しつつ、無機粉末成形体の接合体が得られることを見出した。また、こうした接合体を焼結することで接合部の表面粗さ、透光性及び平滑性に優れた焼結体が得られることを見出した。これらの知見によれば、以下の手段が提供される。
【0010】
本発明によれば、2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体であって、前記接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と、前記接合体における接合部に対応する第2の構成部分と、を備え、
以下の特徴(a)及び(b)のいずれかあるいは双方を有する、焼結体。
(a)前記第2の構成部分は前記第1の構成部分以下の表面粗さを有する。
(b)前記第2の構成部分は、その幅中心近傍において前記第1の構成部分以上の透光度を有する。
【0011】
本発明の焼結体においては、前記第2の構成部分の表面粗さは0.01μm≦Ra≦2μmとすることができる。また、前記第2の構成部分の幅中心近傍の透光度は80%以上であるとすることもできる。
【0012】
また、本発明によれば、2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体であって、前記接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と、前記接合体における接合部に対応する第2の構成部分と、を備え、前記第2の構成部分の表面粗さは0.01μm≦Ra≦2μmあるか及び/又は前記第2の構成部分の幅中心近傍での透光度が80%以上である、焼結体とすることができる。
【0013】
これらの焼結体においては、前記第2の構成部分は、前記第1の構成部分を超えて前記焼結体表面に突出されないものとしてもよいし、また、前記第2の構成部分の幅は10μm以上2000μm以下としてもよい。さらに、前記第1の構成部分の肉厚に対する前記第2の構成部分の幅の比(割合)が1以下であるとしてもよい。さらにまた、前記焼結体は中空部を有することができる。
【0014】
本発明の焼結体においては、前記第1の構成部分の平均結晶粒径に対する前記第2の構成部分の平均結晶粒径の割合が1.0以上2.0以下であるものとしてもよい。また、このとき、前記第2の構成部分の幅方向の中心から前記第1の構成部分へ向かって前記第2の構成部分の平均結晶粒径が小さくなる傾向を示すものとしてもよい。
【0015】
本発明によれば、無機粉末成形体の接合体の製造方法であって、少なくとも第1の無機粉末成形体及び第2の無機粉末成形体の互いに接合しようとする接合面の間に、表面張力が作用する状態を維持して無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーによる接合スラリー層を形成する接合スラリー層形成工程と、前記接合スラリー層を乾燥する乾燥工程と、を備える、製造方法が提供される。
【0016】
本発明の製造方法においては、前記接合スラリー層形成工程は、前記第1の無機粉末成形体及び前記第2の無機粉末成形体の接合面に略垂直方向の距離を調節しつつ接合スラリー層を形成する工程とすることもできる。また、前記接合スラリー層形成工程に先立って、第1の無機粉末成形体と第2の無機粉末成形体との互いに接合しようとする接合面の少なくとも一方に無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーを供給する工程を備えることもできる。
【0017】
本発明の製造方法においては、前記非自己硬化性接合スラリーの供給工程は、前記非自己硬化性接合スラリーを印刷により前記接合面に供給する工程とすることができる。
【0018】
本発明によれば、焼結体の製造方法であって、少なくとも第1の無機粉末成形体及び第2の無機粉末成形体の互いに接合しようとする接合面の間に、表面張力が作用する状態を維持して無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーによる接合スラリー層を形成する接合スラリー層形成工程と、前記接合スラリー層を乾燥する乾燥工程と、乾燥された前記接合スラリー層を介して接合された前記第1の無機粉末成形体と前記第2の無機粉末成形体との接合体を焼結する工程と、を備える、製造方法が提供される。
【0019】
本発明によれば、上記焼結体の製造方法によって得られる焼結体が提供される。
【0020】
本発明によれば、上記焼結体のいずれかを用いる発光管が提供される。また、前記発光管はメタルハライド用発光管とすることもできるし、高圧ナトリウム用発光管とすることもできる。さらに、本発明によれば、上記焼結体のいずれかを用いる反応管が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、焼結体及びその製造方法に関する。本発明の焼結体は、2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体であり、前記接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と、前記接合体における接合部に対応する第2の構成部分と、を備え、
以下の特徴(a)及び(b)のいずれかあるいは双方を有することができる。
(a)前記第2の構成部分は前記第1の構成部分以下の表面粗さを有する。
(b)前記第2の構成部分は、その幅中心近傍において前記第1の構成部分以上の透光度を有する。
【0022】
また、本発明の焼結体は、2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体であり、前記接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と、前記接合体における接合部に対応する第2の構成部分と、を備え、前記第2の構成部分の表面粗さは2μm以下であるか及び/又は前記第2の構成部分の幅中心近傍での透光度が80%以上あるとすることができる。
【0023】
本発明の焼結体によれば、2以上の無機粉末成形体の接合部に対応する第2の構成部分が、無機粉末成形体に対応する第1の構成部分と同等かあるいはそれよりも優れた表面粗さ及び/又は透光度を有することができる。このため、本発明の焼結体によれば接合に起因する焼結体の表面粗さや透光度への悪影響を抑制又は回避することができる。また、第2の構成部分が所定以下の表面粗さを有する及び/又は第2の構成部分がその幅中心近傍で所定以上の透光度を有することにより、接合に起因する焼結体の表面粗さが透光度への悪影響を抑制又は回避することができる。
【0024】
本発明の焼結体の製造方法は、少なくとも第1の無機粉末成形体及び第2の無機粉末成形体の互いに接合しようとする接合面の間に、表面張力が作用する状態を維持して無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーによる接合スラリー層を形成する接合スラリー層形成工程と、前記接合スラリー層を乾燥する乾燥工程と、乾燥された前記接合スラリー層を介して接合された前記第1の無機粉末成形体と前記第2の無機粉末成形体との接合体を焼結する工程と、を備えることができる。
【0025】
本発明の焼結体の製造方法によれば、無機粉末を含有する非自己硬化性接合スラリーに表面張力が作用する状態を維持しつつ接合スラリー層を前記接合面の間に形成し、この接合スラリー層を乾燥するため、乾燥して得られる接合部(乾燥後)は、表面張力により形成される表面粗さを備えることができる。こうした接合部(乾燥後)を備える接合体を焼結することにより、優れた表面粗さや透光度を有する接合部を備える焼結体を得ることができる。また、接合部において、無機粉末成形体を焼結した部分よりも表面粗さが小さいため当該焼結部分よりも優れた透光度の接合部を備える焼結体を得ることができる。また、表面張力が作用する状態で接合スラリー層を形成し、その後乾燥して得られる接合部の幅(接合面間距離に相当する長さ)や接合部の肉厚(成形体の肉厚に沿う長さ)や表面形状を制御することができる。このため、各種の態様の接合部(焼結後)を得ることができる。
【0026】
本発明は、さらに、接合体及びその製造方法にも関する。以下、本発明の焼結体及びその製造方法並びに接合体及びその製造方法について、図1〜図6を参照しながら説明する。なお、図1〜図6は、本発明の一実施態様である。
【0027】
(焼結体)
本発明の焼結体2は、中実体であってもよいし、少なくとも一部に中空部4を有するものであってもよい。本発明は、中子の利用を回避するのに有用であるため中空部4を有する焼結体2であることが好ましい。中空部4は外部に開放された形態であっても密閉状のものであってもよく、これらの双方を備えていてもよい。こうした焼結体2の形態としては、例えば、各種形状の管状体、容器状体、ドーム状体及びこれらを組み合わせた形態が挙げられる。例えば、反応用あるいは発光用の中空部を有する中空状体としては、図1に示す発光管や図2に示す反応管や流路部品が挙げられる。発光管、反応管及び流路部品等においては、異なる大きさ及び形状の中空部を備えて全体として管状構造を有する形態が典型的である。こうした部材においては、相対的に大きな中空部は、発光部、反応部、貯留部及び合流部等を構成することができ、相対的に小さくあるいは細い中空部は、流路や単なる管路を構成することができる。さらに、本発明の焼結体2は、耐熱衝撃性を有する熱サイクル機関における構造体や高温炉等の目視窓など各種の用途に利用可能である。
【0028】
本発明の焼結体2は、放電灯の発光管として用いるのが好ましい。高圧放電灯は、自動車用ヘッドランプ、OHP、液晶プロジェクターなどの各種の照明装置に適用可能である。また、この発光管は、メタルハライドランプ用発光管や高圧ナトリウムランプ発光管を含むものである。高圧ナトリウムランプ発光管としては、例えば、リセスト型、セミクローズド型、トップハット型、モノシリックトップハット型等が挙げられる。
【0029】
(焼結体の構成要素)
本発明の焼結体2は、図1に示すように、2以上の第1の構成部分10と、第2の構成部分20と、を備えることができる。第1の構成部分10と第2の構成部分20とはいずれも焼結された部分である。本発明の焼結体2は、2以上の無機粉末成形体の接合体の焼結体であり、第1の構成部分10は、接合体における2以上の前記無機粉末成形体に対応することができ、第2の構成部分20は、接合体における無機粉末成形体の接合部に対応することができる。
【0030】
(第1の構成部分)
第1の構成部分10は、無機粉末成形体の焼結部分である。複数の第1の構成部分10は、異なる組成とすることも可能であるが、一体の焼結体2を得るのにあたっては、通常、同一組成であることが好ましい。なお、第1の構成部分10の成分組成については、後段(焼結体の製造方法)にて詳細に説明する。
【0031】
第1の構成部分10は、図1にも示すように、中空部4を構成する一部とすることができ、その形状は特に限定されない。なお、第1の構成部分10は、その形状等は異なる場合もあるが、厚みに関してはほぼ同一厚みに設計されることが好ましい。第1の構成部分10の厚みは特に限定しないが、おおよそ300μm以上2000μm以下であることが好ましい。この範囲であると透光性を確保し、且つ、十分な強度をえるのに都合がよいからである。透光度が重要な場合、より好ましくは、300μm以上1000μm以下である。この範囲であると非常に高い透光度を得られるからである。強度が重要な場合、より好ましくは、1000μm以上2000μm以下である。この範囲であると十分な強度を得られるからである。
【0032】
第1の構成部分10の平均の表面粗さは、0.01μm≦Ra≦2μmであることが好ましい。この範囲であると光を用いた反応をさせるための反応管として用いることができるからである。より好ましくは、0.01μm≦Ra≦0.5μmである。この範囲であると発光管として十分な透光度を得られるからである。第1の構成部分10は、無機粉末成形体の焼結体であり、組成が同一かほぼ同一である場合には、その表面粗さなどの特性はほぼ均質となりやすい。なお、表面粗さの定義は、JIS B0601(2001)に記載のRaを用いるものとする。また、表面粗さは、接触式表面粗さ測定機、非接触式表面粗さ測定機及びレーザー顕微鏡等を測定対象あるいはその表面粗さの程度等に応じて適宜用いられるが、本発明においては、レーザー顕微鏡等により表面粗さを特定することが好ましい。
【0033】
第1の構成部分10の透光度(%)は、80%以上であることが好ましい。この範囲であると光を用いた反応をさせるための反応管として用いることができるからである。より好ましくは90%以上である。この範囲であるとランプ発光管として用いることができるからである。第1の構成部分10は、組成が同一である無機粉末成形体の焼結体であり厚みも均質である場合には、その表面粗さなどの特性はほぼ均質となる。なお、透光度は、以下のようにして測定することができる。すなわち、まず、平行光源、顕微鏡、受光部(CCD等)を光学的に同軸上に配置した光量測定装置を用意する。この光量測定装置では、受光部は顕微鏡に設置されており、微小領域の光量を測定できるようになっている。本装置において、光源と受光部の間に何も無いときの光量に対して、第1の構成部分10を透過する光を計測できるように配置したときの光量の割合を透光度とする。なお、第1の構成部分10の透過光量の測定に際しては、受光部の測定領域よりも十分に大きい第1の構成部分10の一部を焼結体2から切り出すなどして調製した試験片を用いるものとする。
【0034】
なお、第1の構成部分10は、図1に示すように2つであってもよいが、それ以上であってもよい。3つあるいはさらに多数個の第1の構成部分により焼結体2が形成されていてもよい。
【0035】
(第2の構成部分)
第2の構成部分20は、第1の構成部分10に対応する無機粉末成形体の接合部に対応している。後述するように、第2の構成部分20は、接合された無機粉末成形体の接合面間に形成された無機粉末を含有するスラリー層を乾燥し、焼結して得られた部分である。第2の構成部分20も焼結部分である。このため、その組成は第1の構成部分10と同一かほぼ同一であることが好ましい。なお、第2の構成部分20の成分組成については、後段(焼結体の製造方法)にて詳細に説明する。
【0036】
また、焼結体2における第2の構成部分20は、焼結体2において第1の構成部分10の接合部とすることが合理的である部分であるほか、形態的には、焼結体2の表面において線状の凹部、凸部又は凹凸の有無に拘わらず表面粗さ若しくは透光度等により無機粉末成形体に対応する第1の構成部分10と区別される部位として認識される部位である。
【0037】
第2の構成部分20の最大肉厚は、特に限定しないが、第1の構成部分10の肉厚の50%以上140%以下であることが好ましい。この範囲であると透光性を確保するのに都合がよいからである。なお、ここでいう肉厚とは、第1の構成部分10の肉厚方向に沿った長さをいうものとする。高い透光度が必要な場合には、第1の構成部分10の肉厚との関係では、第2の構成部分20の最大肉厚が第1の構成部分10の肉厚を超えないことが好ましい。第2の構成部分20の肉厚が第1の構成部分10の肉厚を超えないことで、第2の構成部分20の透光度が低下するのを抑制できる。なお、第2の構成部分20の最大肉厚が第1の構成部分10の肉厚を超えることを排除するものではない。本発明によれば、第2の構成部分20の表面粗さが小さいため、肉厚があっても高い透光度を得ることができる。なお、第1の構成部分10の肉厚と比較するにあたっては、第2の構成部分20に最も近くで隣接する第1の構成部分10の平均肉厚と比較することが好ましい。なお、第2の構成部分20に隣接する第1の構成部分10の端部が厚肉化されている場合には(後述図3(e)参照)、この厚肉化された部分の平均肉厚を第1の構成部分の平均肉厚とすることが好ましい。
【0038】
第2の構成部分20は、第1の構成部分10を超えて焼結体2表面に突出されないことが好ましい。突出部があると当該部分において透光度が低下しやすいからである。なお、第2の構成部分20が第1の構成部分10を超えて突出することを排除するものではない。
【0039】
第2の構成部分20の幅(第1の構成部分10に対応して対向する無機粉末成形体の接合面間距離と同方向に沿う第2の構成部分20の最大寸法)は、特に限定しないが、10μm以上2000μm以下であることが好ましい。この範囲であると第2の構成部分20を、印刷法、ディッピング、ディスペンサ等の既存の方法により、容易に形成できるからである。第2の構成部分20の幅は、第2の構成部分20の形成方法等や形成パターンに応じて選択された印刷手法等に応じて適宜選択される。
【0040】
第1の構成部分10の肉厚に対する第2の構成部分20の幅の比(割合)(第2の構成部分20の幅/第1の構成部分10の肉厚)は、0を超えて1以下であることが好ましい。この範囲であると熱応力に対しておおよそ十分な強度を確保することができるからである。好ましくは、上記比(割合)は0を超えて0.5以下である。0.5以下であると第2の構成部分20の断面形状に拘わらず(例えば、後述するように、全体的に焼結体2の内側に凹状となるような断面形状であっても)、熱応力に対して十分な強度を確保することができる。なお、第1の構成部分10の肉厚に対する第2の構成部分20の幅の比(割合)を決定するのにあたっては、第2の構成部分20に最も近くで隣接する第1の構成部分10の平均肉厚と比較することが好ましい。
【0041】
第2の構成部分20は、第1の構成部分10の間において各種の断面形態を採ることができる。後述するように、第2の構成部分20は、表面張力が作用する状態で形成した接合スラリー層を乾燥固化して得られる接合部(乾燥後)を焼結して得られるからである。すなわち、第2の構成部分20の形態は、表面張力が作用した状態の接合スラリー層の形状に倣ったものとなっている。こうした第2の構成部分20では、表面粗さが第1の構成部分10よりも小さく、透光度は高くなっている。
【0042】
図3には、こうした第2の構成部分20の各種断面形状をいつくか例示する。図3(a)には、第1の構成部分10の肉厚よりも薄い最大の肉厚を有し、第1の構成部分10よりも外側には突出しない形状の第2の構成部分20を示す。この態様においては、第2の構成部分20の表面20aは、表面張力の作用により、内側に凹状となる表面形状を有している。図3(b)には、第1の構成部分10の肉厚と同程度の最大肉厚を有し、第2の構成部分20は第1の構成部分10の外側に突出しているか又は突出していない(第1の構成部分10と略同一面である場合を含む。)形状の第2の構成部分20を示す。この態様においては、第2の構成部分20の表面20aは、表面張力の作用により、中央近傍のみが外側に凸状となる表面形状を有している。図3(c)には、第1の構成部分10の肉厚と同程度の最大の肉厚を有するが、第1の構成部分10よりも外側には突出しない形状の第2の構成部分20を示す。この態様においては、第2の構成部分20の表面20aは、表面張力の作用により、そのほぼ全体が外側に凸状となる表面形状を有している。さらに、図3(d)には、第1の構成部分10の肉厚よりも大きい最大の肉厚を有し、第1の構成部分10よりも外側に突出した形状の第2の構成部分20を示す。この態様においては、第2の構成部分20の表面20aは、表面張力の作用により、そのほぼ全体が外側に凸状となる表面形状を有している。なお、すでに説明した3つの態様では第2の構成部分20の接合面で規定される空間に収まるものであったのに対し、この態様では、第2の構成部分20の一部は、第1の構成部分10の接合面で規定される空間を越えて第1の構成部分10の外表面にまで及んだ形状を有している。図3(e)には、第2の構成部分20と隣接する端部が厚肉化されている第1の構成部分10を接合した第2の構成部分20を示す。この第1の構成部分10は、第2の構成部分20と隣接する第1の構成部分10の端部が厚肉化された拡張部10aが形成されると共に、第2の構成部分20と接合する第1の構成部分10の接合面に突出した凸部10bが形成されている。この第2の構成部分20は、図3(d)と同様に、第1の構成部分10の肉厚よりも大きい最大の肉厚を有し、第1の構成部分10よりも外側に突出した形状のものを示している。なお、拡張部10aや凸部10bが形成された第1の構成部分10において、第2の構成部分20の形状はこの限りではなく、上記図3(a)〜(c)に示したものと同様の第2の構成部分20を設けることが好ましい。このように、本発明によれば、接合スラリーの供給幅や供給厚さ、接合時の成形体間の距離、表面張力、成形体表面の濡れ性により、図3(a)〜(e)にある、第2の構成部分20の形状を任意に制御できる。
【0043】
第2の構成部分20は、焼結体2の前駆体である接合体における無機粉末成形体の接合部である。このため、第2の構成部分20は、2以上の第1の構成部分10の間に介在される継ぎ目状の形態を採ることができる。第2の構成部分20は、接合部であるから2つの第1の構成部分10に対してはただ一つ存在しているが、焼結体2が、さらに多数個の第1の構成部分10が接合された接合体の焼結体であるときには、2以上の第2の構成部分20を備えることになる。
【0044】
第2の構成部分20は、こうした継ぎ目として存在されるため、線状模様を有することができる。第2の構成部分20の線状模様は、特に限定されないが、直線状、曲線状、ジグザグ状、波線状等とすることができる。
【0045】
このような第2の構成部分20の線状模様の態様を図4〜図5に例示することができる。図4に示すように、反応管様の焼結体2の中央の中空部4の中央近傍で焼結体2を軸線方向に2分割するような環状の線状模様A、軸線方向に沿って焼結体2を2分割するような線状模様B、焼結体2を軸線方向に沿うとともに線状模様Bに直交するように焼結体2を2分割するような線状模様Cを例示することができ、これらの線状模様のいずれかあるいは2種類以上を組み合わせることにより、焼結体2を2あるいは3以上の第1の構成部分10から構成することができるようになる。また、図5に示すように、反応管や流路管においては、流路方向に2分割する形態や流路方向に沿って2分割するような線状模様が挙げられる。
【0046】
第2の構成部分20の平均の表面粗さは、第1の構成部分10の平均の表面粗さ以下であることが好ましい。第2の構成部分の20の表面粗さが第1の構成部分10と同等以下であることで、第2の構成部分20の透光度や強度を第1の構成部分10に対して向上させることができる。また、第2の構成部分20の平均の表面粗さは、0.01μm≦Ra≦2μmの範囲であることが好ましい。この範囲であると透光度と強度とをある程度以上確保することができる。また1μm<Ra≦2μmであると、第1の構成部分10と同程度あるいはそれ以下の粗さとなるため、第1の構成部分10と同程度あるいはそれ以上の透光性と強度を備えることができる。また、0.5μm<Ra≦1μmであると、第1の構成部分10よりも小さい表面粗さとなるため、透光性にも優れ、熱応力に対しても強くなっている。さらに、0.01μm≦Ra≦0.5μmであると、透光度が非常に良好であり、しかも第2の構成部分20の肉厚が薄くても十分な強度を得ることができる。なお、表面粗さについては、第1の構成部分10における表面粗さの測定法と同様に適用することができる。
【0047】
第2の構成部分20の透光度は、第1の構成部分10の透光度と同等以上であることが好ましい。第2の構成部分20の透光度が第1の構成部分10の透光度と同等以上であることで、接合部で透光度が低下することによる不具合を抑制又は回避できる。なお、第2の構成部分20の透光度は、第2の構成部分20の幅中心近傍で測定することが好ましい。第2の構成部分20は各種断面形状を有しているからである。
【0048】
第2の構成部分20の透光度(%)は、80%以上であることが好ましい。この範囲であると成形体部と同等の透光度であり、接合による透光度への悪影響が無いからである。より好ましくは90%以上である。90%以上であると成形体部以上の透光度であり、接合しない工程で製作された焼結体よりも高い透光度を得られるからである。なお、透光度は、第2の構成部分20を透過する光を計測する以外は、第1の構成部分10の透光度と同様にして測定することができる。また、第2の構成部分20の透過光量の測定に際しては、受光部の測定領域よりも十分に大きい第2の構成部分20の一部を焼結体2から切り出すなどして調製した試験片を用いるものとする。
【0049】
第1の構成部分の平均結晶粒径に対する第2の構成部分の平均結晶粒径の割合(第2構成部分の平均結晶粒径/第1の構成部分の平均結晶粒径)が1.0以上2.0以下であることが好ましい。こうすれば、第2の構成部分の平均結晶粒径を比較的大きくすることにより、応力が集中しやすい第2の構成部分での機械的強度を高めることができ、ひいては焼結体の耐久性や信頼性が向上する。また、第2の構成部分の平均結晶粒径を比較的大きくすることにより、粒界での光の散乱を抑制可能であるため、第2の構成部分での透光性を高めることができる。特に、熱や機械的な応力が第2の構成部分に集中しやすいランプ発光管や反応管などの用途に用いる場合に好ましい。この第2の構成部分の平均結晶粒径は、20μm以上100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。平均結晶粒径が過度に大きくなると結晶粒界への集中応力が大きくなり結晶構造全体の強度が低下してしまうことがあるためである。この平均結晶粒径は、以下の方法により求めるものとする。まず、レーザ顕微鏡を用いて結晶粒子が20〜200個程度含まれる視野において焼結体の表面を撮影し、この撮影した写真に含まれている結晶粒子の総数を数える。その際、視野の外周部にある結晶粒子は0.5個として数える。次に、視野の面積をその視野に含まれる結晶粒子の総数で除算した値を平均結晶粒子断面積とし、結晶粒子断面を円形と仮定して平均結晶粒子断面積からその直径を求め、この値を平均結晶粒子径とする。このとき、第2の構成部分の幅方向の中心付近での平均結晶粒径がより大きいことが好ましい。こうすれば、接合部である第2の構成部分の幅方向の中心に比較的大きな結晶粒子が存在するため、この幅方向の中心での結晶粒界の存在を低減することにより機械的強度をより高めることができる。また、第2の構成部分の幅方向の中心から第1の構成部分へ向かうと、平均結晶粒径が小さくなる傾向を有するのがより好ましい。即ち、比較的大きな結晶粒子の領域と比較的小さな結晶粒子の領域とに分かれる境界がある場合には、その境界に応力が集中することになるが、傾斜的に結晶粒子の大きさが変わることにより、このような境界に加わるミクロな応力集中を抑制可能であり、より第2の構成部分での強度を高めることができる。なお、第2の構成部分の平均結晶粒径が第1の構成部分の平均結晶粒径よりも大きくなるメカニズムは定かではないが、その理由としては以下に示すことが考えられる。例えば、第1の構成部分に対応する焼結前の成形体と、第2の構成部分に対応する焼結前の接合スラリーとを用いて本発明の焼結体を作製する場合には、接合スラリーと成形体との粉末充填率の差や、接合スラリー中の溶剤を成形体が吸収することによる第2の構成部分の粉末充填率の増加、第2の構成部分と第1の構成部分との焼成収縮率の差、焼成収縮時に発生する応力の影響、接合スラリーと成形体との添加元素の種類の違い、などが第1の構成部分及び第2の構成部分の平均結晶粒径の相違に影響するものと考えられる。
【0050】
(焼結体の製造方法)
次に、本発明の焼結体を製造するのに好ましい方法について説明する。本発明の焼結体の製造方法においては、まず、焼結体の前駆体である接合体を準備する必要がある。以下、まず、接合体及びその製造方法について説明する。
【0051】
(無機粉末成形体の準備)
本発明の接合体の製造方法では、まず、接合体40を接合により構成する2以上の無機粉末成形体を準備する。こうした無機粉末成形体の製法は従来各種の方法が公知であり、こうした方法を用いて容易に取得することができる。例えば、本発明方法に用いる無機粉末成形体の製法としては、成形型に無機粉末と有機化合物とを含む成形スラリーを鋳込み、有機化合物相互の化学反応、例えば分散媒とゲル化剤若しくはゲル化剤相互の化学反応により固化させた後、離型するゲルキャスト法により準備することができる。このような成形スラリーは、原料粉末のほか、分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のため分散剤、触媒を含んでいてもよい。このような成形方法は、特許文献1、2等にも記載されている。以下、これらの各種成分について説明する。
【0052】
(原料粉末)
無機粉末成形体に含まれる無機粉末に含まれる粉末成分は、特に限定されずセラミックス粉末、金属粉末、ガラス粉末及びこれらから選択される2種以上であってもよい。例えば、セラミックス粉末としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、YAG及びこれらの2種以上の混合物を例示することができる。各粉末成分は、いずれも純度99%以上であることが好ましい。焼結性や特性改善のための成分を原料粉末に含めることができ、例えば、Mg、Y、Zr、Sc、La、Si、Na、Cu、Fe又はCa若しくはこれらの酸化物が挙げられる。なかでも、焼結助剤としては、酸化マグネシウムが挙げられるが、ZrO2、Y23、La23及びSc23が好ましいものとして挙げられる。また、金属粉末としては、モリブデンやタングステンあるいはこれらの合金が挙げられる。
【0053】
(分散媒)
分散媒としては、反応性の分散媒を用いることが好ましい。例えば、反応性官能基を有する有機分散媒を用いることが好ましい。反応性官能基を有する有機分散媒は、後述するゲル化剤と化学結合し、すなわち、スラリーを固化可能な液状物質であること、及び注型が容易な高流動性のスラリーを形成できる液状いずれかの物質であること、の2つの条件を満たすことが好ましい。ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが好ましい。
【0054】
有機分散媒は、反応性官能基を1又は2以上を備えることができ、2以上の反応性官能基を備える場合には、より十分な固化状態を得ることができる。2以上の反応性官能基を備える有機分散媒としては、多価アルコール(エチレングリコールのようなジオール類、グリセリンのようなトリオール類等)、多塩基酸(ジカルボン酸等)が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基を備えていてもよい。また、反応性官能基は、ポリエチレングリコールのように多数個あってもよい。
【0055】
一方、注型が容易な高流動性スラリーを形成するには、可能な限り粘性の低い有機分散媒を用いることが好ましく、特に20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0056】
既述の多価アルコールや多塩基酸は、水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリーを糊化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。したがって、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン等)などの2以上のエステル基を有するエステル類を有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸もスラリーを大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0057】
また、エステル類は比較的安定ではあるもの、反応性の高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘度が低いため上記した2条件を満たすことができる。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0058】
こうした反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、マレイン酸系化合物を例示できる。他には、国際公開パンフレットWO2002-085590A1の22頁10行目〜25行目に記載されたものが挙げられる。また、このほか分散媒としては、非反応性分散媒も用いることができる。非反応性分散媒としては、キシレン、キシレンなどの炭化水素、エーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、2−エチルヘキサノール、イソプロパノール、アセトン等を例示することができる。
【0059】
(ゲル化剤)
ゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、例えばWO2002-085590A1の21頁 −22頁9行目に記載されているが、以下を例示するものも用いることができる。
【0060】
ゲル化剤は、20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリーを固化することが好ましい。
【0061】
より具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリーを固化可能な物質である。従って、前記ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0062】
但し、前記反応性ゲル化剤は、スラリーの流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0063】
一般に平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本発明では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。尚、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0064】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0065】
イソシアナート類はジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリーが固化してしまう場合がある。
【0066】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリーを大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0067】
イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0068】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0069】
尚、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0070】
無機粉末含有成形体の製造するための成形スラリーは、例えば、以下のようにして調製することができる。まず、分散媒に原料粉末を分散させてスラリーとした後、ゲル化剤を添加するか、あるいは分散媒に原料粉末とゲル化剤とを同時に添加して分散してスラリーとすることができる。注型時等における作業性を考慮すると、20℃におけるスラリーの粘度は、30000cps以下であることが好ましく、より好ましくは20000cps以下である。スラリーの粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度のほか、粉末の種類、分散剤の量、スラリー濃度(スラリー全体の体積に対する粉末体積%)によっても調整することができる。ただし、スラリー濃度は、通常、25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。
【0071】
なお、こうした無機粉末成形スラリーを用いて成形体を製造するのにあたっては、得ようとする焼結体2に対応する形状を備える接合体を得るのが容易な分割体形状とすることが好ましい。例えば、図1に示すような発光管を得るために用いることのできる各種の分割体形状の成形体12を図6に示すことができる。また、図5に示すように、反応管や流路管においては、流路方向に2分割する形態(1/2分割体その1)や流路方向に沿って2分割するような形態(1/2分割体その2)などの分割体形状の成形体が挙げられる。
【0072】
(接合スラリーの準備)
接合体を得るには、無機粉末成形体同士を接合するための接合スラリーを準備する。接合スラリーは、化学反応により固化しない非自己硬化性スラリーであることが好ましい。非自己硬化性スラリーであることにより、表面張力が作用した状態を容易に維持することができ、これにより表面張力の作用により表面粗さが小さい接合部(乾燥後及び焼結後)を得ることができる。また、表面張力が作用した状態で接合スラリー層を形成するため、容易に接合スラリー層の形状を制御して、最終的に得られる接合部(焼結後)の断面形状を制御できるようになる。
【0073】
接合スラリーには、既に説明した成形体用スラリーに用いることのできる原料粉末、非反応性分散媒のほか、ポリビニルアセタール樹脂(例えば、商品名BM−2、商品名BM−S、商品名BL−S、いずれも積水化学株式会社製)及びエチルセルロース(例えば、商品名エトセル)などの各種バインダを用いることができる。また、適宜DOP(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル))などの分散剤や、混合時の粘性調節のためのアセトンやイソプロパノールなどの有機溶剤も用いることができる。
【0074】
接合スラリーは、原料粉末、溶媒、バインダをトリロールミル、ポットミル等を用いる通常のセラミックスペーストやスラリーの製造方法を用いて混合することにより得ることができる。分散剤や有機溶剤は適宜混合することができる。具体的には、ブチルカルビトール、酢酸ブチルカルビトール及びテルピネオールなどを用いることができる。20℃における接合スラリーの粘度は、500000cps以下であることが好ましい。この範囲であると、接合スラリー層を形成するのに都合がよい表面張力を維持しながら、同時に接合スラリー供給厚さを厚くできるからである。より好ましくは300000cps以下である。この範囲であると接合スラリー供給形状を鮮明にできるからである。スラリーの粘度は、既述した分散媒や分散剤や有機溶剤の量、スラリー濃度(スラリー全体の体積に対する粉末の重量%である。以下、当該濃度については重量%で示す。)によっても調整することができる。ただし、スラリー濃度は、通常、25〜90重量%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜90重量%のものがさらに好ましい。
【0075】
(接合体の作製)
次に、準備した2以上の無機粉末成形体を接合スラリーを用いて接合し接合体を作製する。
【0076】
(接合スラリー層形成工程)
接合体を得るには、まず、接合しようとする2つの無機粉末成形体及び第2の無機粉末成形体の互いに接合しようとする接合面の間に、表面張力が作用する状態を維持して接合スラリーによる接合スラリー層を形成する。接合スラリーは、2つの無機粉末含有成形体の接合しようとする面(接合面)を対向させた状態でこれらの接合面間に供給してもよいし、一方又は双方の無機粉末成形体の接合面に供給してもよい。
【0077】
無機粉末成形体の接合面間に接合スラリーを供給するには、ディスペンサー等など公知の手法を利用できる。無機粉末成形体の接合面に成形スラリーを供給するには、ディスペンサー、ディッピング、スプレーなどの公知の液状体供給手法のほか、スクリーン印刷、メタルマスク印刷などの印刷手法を用いることができる。供給された接合スラリーは、接合工程にて成形体間で押しつぶされ、接合体の接合部を形成する。スクリーン印刷によれば厚みやパターンを高精度に制御して接合スラリーを接合面に供給できるため、結果として精度の高い接合スラリー層及び接合部を得ることができる。また、メタルマスク印刷によれば、厚みを持って接合スラリーを接合面に供給しやすく、このため、成形スラリー層及び接合部の形状制御が容易になる。
【0078】
例えば、無機粉末成形体の接合面上に供給される接合スラリー層の厚みが200μm以下(好ましくは10μm以上)であるときには、スクリーン印刷によって接合スラリーを供給することが好ましい。スクリーン印刷によれば接合スラリーを高精度にかつ均一厚さに供給することができ、このために、均一な幅や肉厚の接合スラリー層ひいては精度のよい接合部(第2の構成部分20)を得ることができる。また、無機粉末成形体の接合面上に供給される接合スラリー層の厚みが500μm以下(好ましくは200μm超)であるときには、メタルマスク印刷を用いることで精度のよい接合スラリーパターンを接合面に形成することができる。この結果、良好な接合部(第2の構成部分20)を得ることができる。また、無機粉末成形体の接合面上に供給される接合スラリー層の厚みが2000μm以下(好ましくは500μm超)であるときには、メタルマスク印刷を用いることが好ましい。メタルマスク印刷によれば容易に厚みのあるスラリー層を形成でき、無機粉末成形体間の距離を制御することで厚みのバラツキも緩衝することができる。
【0079】
なお、公知の液状体供給手法やスクリーン印刷やメタルマスク印刷など印刷手法を用いる場合、付与しようとする接合スラリーの粘度や供給厚み等に応じて適宜条件を設定すればよい。
【0080】
接合スラリーにおいて表面張力が作用する状態を維持して接合スラリーによるスラリー層を形成するには、無機粉末成形体の接合面間あるいは接合面に接合スラリーを供給した後、乾燥することなく無機粉末成形体の接合面間を意図した距離に保持すればよい。接合スラリーは非自己硬化性である場合には、接合面等に接合スラリーを供給後乾燥前にあっては、一定期間表面張力が作用可能な状態が維持されやすいからである。
【0081】
このようにして接合スラリーに表面張力が作用する状態を維持しつつ無機粉末成形体の接合面間距離を調節したり変化させたり、振動を与えたり、自転させたり、あるいは接合面にほぼ水平方向に無機粉末成形体を相対移動させたりすることで接合スラリー層の形状を調整することができる。接合スラリー層が形成可能な各種形態は、図3に示した形態が挙げられる。特に、接合面に直交する方向に負荷する荷重の程度及び/又は接合面間に距離を確保することで、容易に接合スラリー層の形状を制御でき表面張力を利用して表面粗さの低減された接合スラリー層を形成し、ひいては表面粗さが小さく透光度が良好な焼結体を得ることができる。
【0082】
(乾燥工程)
接合スラリー層を対向配置した無機粉末成形体の接合面間に形成したら、この接合スラリー層を乾燥する。乾燥工程は、接合スラリーの形成工程に付随して行ってもよい。すなわち、接合面間距離などを調節したりして接合スラリー層を形成しつつ、同時に接合スラリー層を乾燥させてもよいし、接合スラリー層を形成した後に乾燥工程を実施してもよい。乾燥工程は、接合スラリーの組成や供給量等に応じて適宜設定することができる。通常、40℃以上200℃以下で5〜120分程度行うことができる。また、送風などで強制的な換気を伴う乾燥の場合は、40℃以上200℃以下で1〜120分程度行うことができる。
【0083】
こうして得られた接合体は、少なくとも2つの無機粉末成形体が接合スラリー層が乾燥した接合部(乾燥後)によって接合された状態となっている。なお、以上説明した接合体の作製においては、2つの無機粉末成形体を接合する場合について説明したが、これに限定するものではなく、3以上の無機粉末成形体を同時にあるいは逐次接合スラリー層を形成して接合して接合体を得ることもできる。
【0084】
(焼結体の作製)
次に、接合体を焼成して無機粉末成形体及び接合部(乾燥後)中の焼結性成分を焼結させて焼結体を得る。焼結工程に先立って、接合体を脱脂又は仮焼することができる。脱脂工程及び仮焼工程は、還元性雰囲気下で行うことが好ましい。また、焼結工程も還元性雰囲気下で行うことが好ましい。還元性雰囲気は典型的には水素を用い不活性ガスを含んでいてもよい。
【0085】
なお、焼結工程における焼成温度は、材料によって決定されるが、好ましくは焼結時の最高温度を1750℃以下とすることができる。また、焼成温度の下限も特に限定されないが、1350℃以上とすることができ、好ましくは1450℃以上とすることもできる。また、焼成体の色調(例えば黒化)に応じて適宜加湿してもよい(露点−10℃〜+10℃)。
【0086】
好ましい実施態様として、接合体を1000℃以上1200℃以下で脱脂し、次いで焼結する態様が挙げられる。脱脂は大気雰囲気中で行うことが好ましい。この際、炉内が酸欠状態にならないように適宜大気若しくは酸素を供給してもよい。特に、ゲルキャスト成形体中の有機成分は、通常成形(粉末プレス用バインダや押出加工)法によって得られた成形体の有機成分に比較して分解しにくいため、こうした脱脂工程は有機成分の分解促進に有効であり、焼結体の黒化抑制に効果的である。なお、脱脂時間も特に限定されないが、30時間以上とすることが好ましく、60時間以上とすることがさらに好ましい。
【0087】
また、焼成体の色調に応じて1000℃以上1500℃以下で大気中アニールを行ってもよい。この際、炉内が酸素欠乏状態にならないように適宜大気若しくは酸素を供給してもよい。
【0088】
以上説明した本発明の焼結体の製造方法によれば、本発明の焼結体を得ることができる。さらに、本発明の方法によれば、焼結体において接合体の接合部に対応する第2の構成部分の表面粗さ、透光度及び強度等並びに形状を容易に制御することができる。このため、接合部の特性ひいては焼結体の特性を容易に改善又は向上させることができる。
【実施例1】
【0089】
本実施例では、焼結体として発光管を作製した。焼結体を構成する成形体は、以下のようにして作製した。すなわち、原料粉末としてアルミナ粉末(商品名アルミナAES-11C、住友化学工業株式会社製)100重量部、及びマグネシア0.025重量部、分散媒としてマロン酸ジメチル24重量部、ゲル化剤として、バイヒジュール3100(商品名、住友バイエルウレタン株式会社製)2重量部、分散剤としてマリアリムAKM0351(商品名、日本油脂株式会社製)1重量部及び触媒としてトリエチルアミン0.2重量部を混合したものを用いた。このスラリーをアルミニウム合金製の型に室温で注型後、室温で1時間放置した。次いで、40℃で30分間放置し、固化を進めてから離型した。さらに、室温、次いで90℃のそれぞれの温度にて2時間放置して、メタルハライドランプ用発光管形状を軸方向に2分割した形状の粉末成形体を得た。
【0090】
接合スラリーは次のようにして作製した。すなわち、原料粉末としてアルミナ粉末(100重量部)、マグネシア粉末(0.025重量部)、アセトン(100重量部)、ブチルカルビトール30重量部、ポリビニルアセタール樹脂(BM−2、積水化学株式会社製)(8.5重量部)を混合して接合スラリーとした。
【0091】
スクリーン製版として、乳剤厚さ100μm、#290メッシュ、リング形状パターン(内径12.8mm、外径13.7mm)のものを用い、スクリーン製版が成形体の接合面(内径12.5mm、外径14.0mm)に平行になるようにスクリーン印刷機ステージに固定し、製版との位置合わせをした。次いで、調製した接合スラリーを、製版を用いてスクリーン印刷機にて成形体の接合面に供給した。
【0092】
供給した接合スラリーの厚さを測定するために、接合スラリーを乾燥させた。乾燥した接合スラリー層の厚さは、100±20μmの厚さとなっており、均一な厚みに接合スラリーが供給されたことがわかった。
【0093】
図7に示すように、上記と同様にしてそれぞれの接合面11に接合スラリー22を供給した一対の成形体14,14と、一方の面にのみ接合スラリー22を供給した一対の成形体16、16とを準備した。さらに、図8に示すように、2つの成形体をそれぞれの管部を貫通するようなピンに挿通させ、接合面を対向可能にした後、各接合面に供給した接合スラリーに表面張力が作用する状態で接触させて接合スラリー層を形成した。その後、80℃のオーブンで10分間乾燥させて、2種類の接合体A、Bを得た。
【0094】
次いで、作製した接合体A、Bを大気中1100℃で仮焼した後、水素:酸素=3:1の雰囲気中1800℃で焼成し、緻密化及び透光化させた。この結果、接合体A、Bから、胴部外径14mm、キャピラリ長17mmの焼結体(発光管)A、Bを得ることができた。水中急冷法で耐熱衝撃性を評価したところ、焼結体A、Bは、150℃でもクラックが発生せず、一体成形法による同形状の発光管と同じレベルであった。さらに、これらの焼結体A,Bにつき、耐熱衝撃性評価のあと、Heリーク測定機にて胴部リーク量を測定したところ、いずれも1×10-8atm・cc/秒以下であった。
【0095】
さらに、各焼結体A、Bの接合部に対応する焼結部分(接合部焼結部分とも称する)及び成形体に対応する焼結部分(成形体焼結部分とも称する)の表面をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製OLS1100)にて観察、測定した。いずれの焼結体A、Bにおいても、接合部に対応する焼結部分には非常に平滑な表面が形成されていた。これに対して成形体に対応する焼結部分においては部分的に凹部を有するとともに、凹部以外の部分も接合部焼結部分よりも凹凸が観察された。各焼結体A、Bにつき、任意の断面3箇所において表面粗さを計測した(カットオフ値85.4μm)。得られた表面粗さRaは、焼結体Aの接合部焼結部分で0.17μmであり、成形体焼結部分では1.23μmであり、焼結体Bの接合部焼結部分で0.19μmであり、成形体焼結部分では1.27μmであった。また、いずれの焼結体A,Bにおいても、接合部焼結部分は、成形体焼結部分よりも明らかに透光度が高いことが目視により確認できた。焼結体Aについての観察結果を図9に示す。また、成形体焼結部分の平均結晶粒径は、21.3μmであり、接合部焼結部分の幅方向の中心付近の平均結晶粒径は、29.2μmであった。また、接合部焼結部分の幅方向の中心から成形体焼結部分側に150μmの位置付近では、平均結晶粒径は、23.6μmであった。即ち、平均結晶粒径は、接合部焼結部分の中心の平均結晶粒径から成形体焼結部分の接合面に向かって傾斜的に小さくなる傾向を示した。この平均結晶粒径は、以下の方法により求めた。まず、上述したレーザ顕微鏡を用いて結晶粒子が20〜200個程度含まれる視野において焼結体の表面を撮影し、この撮影した写真に含まれている結晶粒子の総数を数えた。その際、視野の外周部にある結晶粒子は0.5個として数えた。次に、視野の面積をその視野に含まれる結晶粒子の総数で除算した値を平均結晶粒子断面積とし、結晶粒子断面を円形と仮定して平均結晶粒子断面積からその直径を求め、この値を平均結晶粒子径とした。
【実施例2】
【0096】
実施例2では、焼結体として発光管を作製した。焼結体を構成する成形体は、以下のようにして作製した。すなわち、原料粉末としてアルミナ粉末(商品名アルミナAKP-20、住友化学工業株式会社製)100重量部、及びマグネシア0.025重量部、分散媒としてケムレツ6080(商品名、保土ヶ谷アシュランド化学工業株式会社)を27重量部、エチレングリコールを0.3重量部、ゲル化剤として、SBUイソシアナート0775(商品名、住友バイエルウレタン株式会社製)を4重量部、分散剤としてマリアリムAKM0351(商品名、日本油脂株式会社製)を3重量部及び触媒としてカオライザーNo25(商品名、花王株式会社)を0.1重量部を混合したものを用いた。このスラリーを実施例1と同じ成形型に室温で注型後、室温で1時間放置した。次いで、40℃で30分間放置し、固化を進めてから離型した。さらに、室温、次いで90℃のそれぞれの温度にて2時間放置して、メタルハライドランプ用発光管形状を軸方向に2分割した形状の粉末成形体を得た。この成形体の粉末充填率を測定したところ、44.0体積%であった。なお、この粉末充填率は、この成形体と同等の成形体を、接合せず焼成した際に得られる焼成収縮率から算出した。
【0097】
接合スラリーは次のようにして作製した。すなわち、原料粉末としてアルミナ粉末を100重量部、マグネシア粉末を0.025重量部、テルピネオールを35重量部、バインダー(BL−S、積水化学株式会社製)を8.5重量部を混合して接合スラリーとした。上記各々の成分の重量部数と密度から算出した、この接合スラリーの塗布時の粉末充填率は35.5体積%であったが、乾燥後には有機成分などの揮発、拡散による重量減があるため、この充填率は大幅に増加することが考えられる。
【0098】
実施例1と同様のスクリーン製版により成形体の接合面に接合スラリーを供給したものを複数作製し、実施例1と同様の方法でこれらを接合し、実施例1と同様の接合体A(図7参照)を得た。なお、この実施例2の接合体Aを複数作製し、接合スラリーの乾燥状態を確認した。2つの成形体を接合して5分経過したときにこの接合した成形体を引き剥がしたところ、接合スラリーは、成形体へ供給直後には液状であったが、この実施例2ではオーブン(80℃10分)で乾燥させなくてもほぼ乾燥状態であった。この接合体Aを実施例1と同様の工程で焼成し、実施例2の焼結体Aを得た。
【0099】
得られた実施例2の焼結体Aを、水中急冷法で耐熱衝撃性を評価したところ、実施例2の焼結体Aは、150℃でもクラックが発生しなかった。さらに、この焼結体Aにつき、耐熱衝撃性評価のあと、Heリーク測定機にて胴部リーク量を測定したところ、1×10-8atm・cc/秒以下であった。また、この実施例2の成形体焼結部分の平均結晶粒径は、22.5μmであり、接合部焼結部分の幅方向の中心付近の平均結晶粒径は、28.7μmであった。また、接合部焼結部分の幅方向の中心から成形体焼結部分側に150μmの位置付近では、平均結晶粒径は、24.7μmであった。
【実施例3】
【0100】
上述した接合スラリーのマグネシアを0.020重量部とした以外は、実施例2と同様の工程を経て、実施例3の焼結体Aを得た。この実施例3の焼結体Aを、水中急冷法で耐熱衝撃性を評価したところ、実施例3の焼結体Aは、150℃でもクラックが発生しなかった。さらに、この焼結体Aにつき、耐熱衝撃性評価のあと、Heリーク測定機にて胴部リーク量を測定したところ、1×10-8atm・cc/秒以下であった。また、この実施例3の成形体焼結部分の平均結晶粒径は、24.3μmであり、接合部焼結部分の幅方向の中心付近の平均結晶粒径は、47.5μmであった。また、接合部焼結部分の幅方向の中心から成形体焼結部分側に150μmの位置付近では、平均結晶粒径は、34.1μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、セラミックスの接合体及び焼結体の製造分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】焼結体の一例を示す図。上段は平面図であり、下段は断面図である。
【図2】焼結体の他の一例を示す図。
【図3】第2の構成部分についての各種の断面形状を示す図。
【図4】第2の構成部分の各種態様を示す図。図4(a)は、反応管を軸線方向に2分割する態様の線状模様Aを示し、図4(b)は、反応管を軸線方向に沿って2分割する態様の線状模様Bを示し、図4(c)は、線状模様Bと直交するように軸線方向に沿って反応管を2分割する線状模様Cを示し、図4(d)は、線状模様Bと線状模様Cとが直交する状態を示す。
【図5】第2の構成部分の線状模様の他の態様を示す図。
【図6】接合体を構成する成形体における各種分割体形状を示す図。
【図7】実施例における成形体への接合スラリーの供給形態及び接合方法を示す図。
【図8】貫通ピンによる接合方法を示す図。
【図9】実施例において得られた焼結体の接合部相当部分及び成形体相当部分のレーザー顕微鏡による観察結果を示す図。
【符号の説明】
【0103】
2 焼結体、4 中空部、10 第1の構成部分、10a 拡張部、10b 凸部、11 接合面、12,14,16 成形体、20 第2の構成部分、20a 第2の構成部分の表面、22 接合スラリー。
【出願人】 【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
【出願日】 平成19年3月19日(2007.3.19)
【代理人】 【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−44344(P2008−44344A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2007−70277(P2007−70277)