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配向性セラミックスの製造方法 - 特開2008−37064 | j-tokkyo
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【発明の名称】 配向性セラミックスの製造方法
【発明者】 【氏名】木村 雅彦

【氏名】白露 幸祐

【氏名】鈴木 達

【氏名】目 義雄

【要約】 【課題】ペロブスカイト型構造を有する多結晶セラミック粉末を用いて製造可能であり、組成上の制約条件の少ない配向性セラミックスの製造方法を提供する。

【構成】多結晶セラミック粉末とを含むセラミックスラリーを得る工程と、前記セラミックスラリーを磁場中で成形してセラミック成形体を得る工程と、前記セラミック成形体を焼成する工程と、を有する配向性セラミックスの製造方法であって、前記多結晶セラミック粉末は、ペロブスカイト構造を有する主成分と前記主成分100molに対して5mol以下(ただし0molを除く)の割合で含有される副成分とを含み、前記副成分は磁気モーメントが0ではない3d遷移金属イオンまたは磁気モーメントが0ではない希土類遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶セラミック粉末を含むセラミックスラリーを得る工程と、
前記セラミックスラリーを磁場中で成形してセラミック成形体を得る工程と、
前記セラミック成形体を焼成する工程と、を有する配向性セラミックスの製造方法であって、
前記多結晶セラミック粉末は、ペロブスカイト構造を有する主成分と前記主成分100molに対して5mol以下(ただし0molを除く)の割合で含有される副成分とを含み、
前記副成分は磁気モーメントが0ではない3d遷移金属イオンまたは磁気モーメントが0ではない希土類遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする配向性セラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記副成分はMn2+,Fe3+,Ce3+,Nd3+,Sm3+およびDy3+からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の配向性セラミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト型構造を有する配向性セラミックスの製造方法および配向性セラミックスを利用したセラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、誘電体材料や圧電体材料としてBaTiO3やPb(Zr,Ti)O3などのペロブスカイト型構造を有するセラミックスが使用されている。そして、これらのペロブスカイト型構造セラミックスにおいては結晶を配向させることによって諸特性が向上することが知られている。
【0003】
特許文献1には、形状異方性を有するホスト材料と、少なくとも一つの結晶面が上記ホスト材料の少なくとも一つの結晶面と格子整合性を有し、かつ結晶異方性の小さいゲスト材料とを準備して混合し、上記ホスト材料を配向させてから加熱することにより、上記ゲスト材料と結晶系が等しい結晶配向材料を得ることが記載されている。そしてこの方法により、ペロブスカイト型構造を有するチタン酸ナトリウムビスマス(Bi0.5Na0.5TiO3)の配向性材料を得ることができることが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、セラミック原料としてビスマス層状化合物を含む粉末に溶媒を添加したスラリーを作製し、該スラリーに対して1T以上の磁場を印加して前記ビスマス層状化合物粉末をc面と垂直な結晶面に配向させつつ前記スラリーを固化した後、焼成するビスマス層状化合物焼結体の製造方法が記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、ペロブスカイト型構造を有するチタン酸ビスマス(BiTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)およびチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末の配向と磁場との関係について記載されている。
【特許文献1】特開平10−330184号公報
【特許文献2】特開2002−121069号公報
【非特許文献1】増本博、淡路智、後藤孝「強誘電体の配向性に及ぼす磁場の影響」東北大学材料研究所強磁場超伝導材料研究センター年次報告2002年度、210〜211ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法によれば、配向性の高いペロブスカイト型構造セラミックスを得ることができるが、形状異方性を有するホスト材料をあらかじめ用意する必要がある。このため、工程が複雑化して製造コストが上昇するという問題がある。
【0007】
また、そもそも所望の配向性セラミックスの組成に適した形状異方性ホスト材料が存在していなければならないという問題がある。すなわち、所望の最終生成物の構成元素の中から選択される元素で構成される形状異方性ホスト材料をあらかじめ用意する必要がある。これは、ホスト材料の構成元素が最終生成物の中に取り込まれるため、所望の最終生成物の構成元素以外の元素を含む材料をホスト材料として使用すると、所望の組成の最終生成物を得ることができなくなるからである。そして、そのような条件を満たす形状異方性ホスト材料が常に存在しているわけではない。
【0008】
これに対して、特許文献2に記載されたように磁場を印加して結晶を配向させる方法であれば、原理的には磁化率に異方性を有する非磁性物質であればいずれの物質にも適用可能であると考えられており、特許文献1に記載された技術のような組成上の制約条件はないはずである。
【0009】
しかしながら、実際にはペロブスカイト型構造を有するセラミックスを磁場によって配向させることは困難であった。非特許文献1には、多結晶チタン酸ビスマス粉末を用いて8Tの磁場を印加した場合に配向性材料を得ることができなかったことが記載されている。また、非特許文献1には、単結晶チタン酸バリウム粉末を用いた場合には配向度が磁場依存性を有することが記載されているが、単結晶粉末は多結晶粉末に比べてコストが高く、工業上実用的な方法ではない。
【0010】
よって本発明は、ペロブスカイト型構造を有する多結晶セラミック粉末を用いて製造可能であり、組成上の制約条件の少ない配向性セラミックスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために本発明に係る配向性セラミックスの製造方法は、多結晶セラミック粉末を含むセラミックスラリーを得る工程と、前記セラミックスラリーを磁場中で成形してセラミック成形体を得る工程と、前記セラミック成形体を焼成する工程と、を有する配向性セラミックスの製造方法であって、前記多結晶セラミック粉末は、ペロブスカイト構造を有する主成分と前記主成分100molに対して5mol以下(ただし0molを除く)の割合で含有される副成分とを含み、前記副成分は磁気モーメントが0ではない3d遷移金属イオンまたは磁気モーメントが0ではない希土類遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る配向性セラミックスの製造方法においては、前記副成分はMn2+,Fe3+,Ce3+,Nd3+,Sm3+およびDy3+からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらは比較的安価であり、入手が容易だからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配向性セラミックスの製造方法によれば、ペロブスカイト構造を有する主成分に対して、磁気モーメントが0ではない3d遷移金属イオンまたは磁気モーメントが0ではない希土類遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種からなる副成分を所定量含有させた多結晶セラミック粉末を用いることにより、多結晶セラミック粉末を用いていても磁場中での配向が可能となり、コストの比較的低廉な多結晶セラミック粉末を用いて配向性セラミックスを得ることが可能となる。また、形状異方性ホスト材料を用意する必要がないので本発明の適用に当たっての組成上の制約条件が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る配向性セラミックスは一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する複合金属酸化物を主成分とする。具体的には、BaTiO3(チタン酸バリウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、PbTiO3(チタン酸鉛)、Pb(Zr,Ti)O3(チタン酸ジルコン酸鉛)、(K,Na,Li)(Nb,Ta)O3、(Na1/2Bi1/2)TiO3およびこれらの固溶体などを用いることができる。
【0015】
そして、前記主成分100molに対して、磁気モーメントが0ではない遷移金属イオンおよび磁気モーメントが0ではない希土類遷移金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種を5mol以下(0molを除く)含有する。磁気モーメントが0ではない遷移金属イオンとしては、Ti3+,V3+,V4+,Cr2+,Cr3+,Mn2+,Mn3+,Fe2+,Fe3+,Co2+,Ni2+,Cu2+などがある。また、磁気モーメントが0ではない希土類遷移金属イオンとしては、Ce3+,Pr3+,Pr4+,Nd3+,Sm2+,Sm3+,Eu2+,Eu3+,Gd3+,Tb3+,Tb4+,Dy3+,Ho3+,Er3+,Tm2+,Tm3+,Yb3+などがある。以下、本明細書において便宜上これらを総称して磁性金属イオンという。
【0016】
これらの磁性金属イオンの少なくとも一部がペロブスカイト構造の結晶格子に取り込まれることによって結晶粒子の磁化率が向上し、磁場印加によって配向化するものと推定されるが、詳細なメカニズムは明らかではない。なお、結晶格子中に取り込まれた磁性金属イオンは価数やイオン半径によってAサイトまたはBサイトのいずれに配位するかが決定されると考えられ、AサイトおよびBサイトの両方に配位する磁性金属イオンも存在すると考えられる。しかし、結晶格子中のどの位置に配位しているかを実際に確認することは困難である。
【0017】
磁性金属イオンの含有率を主成分100molに対して5mol以下に限定したのは以下の理由による。すなわち、主成分100molに対して副成分である磁性金属イオンが10molを超えると配向度が低下するためである。これは、副成分が多すぎると主成分がペロブスカイト型構造の単相を得ることが困難になるためである。
【0018】
また、より高い配高度を得る観点からは、副成分の含有量は主成分100molに対して0.1mol以上1.0mol以下とすることが好ましい。
【0019】
本発明では、上記主成分と上記磁性金属イオンとを含むセラミックスラリーを成形する際に磁場を印加することによって配向性セラミックスを得るが、印加する磁場は1T(テスラ)以上とすることが好ましい。
【0020】
本発明に係る配向性セラミックスの製造方法は例えば以下の手順で実行される。
【0021】
まず、素原料として主成分の構成元素および磁性金属イオンを含む酸化物、水酸化物または炭酸塩等を用意し、これらを所定の比率となるように秤量して混合する。得られた混合物をピーク温度1200℃から1400℃程度の適当な条件で仮焼し、セラミック仮焼粉(多結晶セラミック粉末)を得る。
【0022】
セラミック仮焼粉を粉砕した後、適当な量の水と分散剤を加えて分散し、セラミックスラリーを得る。得られたセラミックスラリーを多孔質の型に流し込み、型に水分を吸収させて成形する。成形中、セラミックスラリーに対して磁場を印加する。これにより、セラミック成形体を得る。
【0023】
得られたセラミック成形体を十分に乾燥させた後に500℃程度に加熱して有機成分を除去する処理を行い、その後、1200℃から1400℃程度の適当な条件で焼成することにより、本発明の配向性セラミックスを得ることができる。
【0024】
本発明によれば、磁気モーメントが0ではない3d遷移金属イオンまたは磁気モーメントが0ではない希土類遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種を副成分として含有しているので、成形中の磁場印加によって結晶が配向し、配向性セラミックスを得ることができる。かかる配向性セラミックスは、高い電気的特性が期待される。
【実施例1】
【0025】
本発明の第1の実施例について説明する。第1の実施例は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする配向性セラミックスの製造方法に係るものである。
【0026】
主成分の出発原料としてBaCO3,TiO2を、副成分の素原料としてMnCO3,Fe23,Nd23,Ce2(CO33,Sm23およびDy23用意し、これらを以下の一般式(A)を満足するような比率で秤量した。
【0027】
100BaTiO3+aM …(A)
(式中、Mは副成分であるMn2+,Fe3+,Nd3+,Ce3+,Sm3+およびDy3+のうち少なくとも一種を示す。)
秤量物をボールミルに投入し、水を加えて16時間湿式混合を行うことにより混合物を得た。得られた混合物を乾燥させた後、1250℃〜1350℃で2時間仮焼し、セラミック仮焼粉(多結晶セラミック粉末)を得た。このセラミック仮焼粉をカッター刃による回転式粉砕機に投入して60秒間粉砕し、さらにボールミルを用いて100時間の湿式粉砕を行った。
【0028】
粉砕後のセラミック仮焼粉100重量部に対して25重量部の水と1重量部の分散剤を加えて混合することにより、セラミックスラリーを得た。セラミックスラリーの粘性率を測定したところ、100mPa・sだった。さらに分散性を向上させるため、スターラで分散しながら5分間の超音波攪拌を行った。
【0029】
セラミックスラリーを多孔質の型に流し込み、型に水分を吸収させて成形した。成形中、セラミックスラリーに対して所定の磁場を印加した。これにより、30mm×30mm×5mmのセラミック成形体を得た。
【0030】
このセラミック成形体を十分に乾燥させた後、500℃で2時間の熱処理を行って有機成分を除去した。次いで、1300℃〜1400℃で2時間の焼成を大気中で行うことにより、焼結体(配向性セラミックス)を得た。
【0031】
この焼結体の表面をX線回折法(線源CuKα、40kV、200mA)によって分析し、各結晶面のピーク強度を測定した。さらに比較用に各試料を粉砕して粉末試料を作製し、該粉末試料についてもX線回折法によって各結晶面のピーク強度を測定した。そして、比較用の粉末試料を基準として、ロットゲーリング(Lotgering)法によって配向度を測定した。
【0032】
ここで、一般式(A)を満たす配向性セラミックスは室温で正方晶を示すが、擬立方晶としてみた場合の{100}面、すなわち正方晶における{100}面および{001}面の配向度を求めた。擬立方晶とは、立方晶よりもわずかに歪んだ結晶格子を示している。
【0033】
各試料の組成、印加磁界および配向度を表1に示す。なお、表1において試料番号に*が付されているものは本発明の範囲外の比較例である。
【0034】
【表1】


【0035】
試料番号1および2は副成分であるMを含有していないため、配向度が低く実質的に無配向である。なお、試料番号2の配向度が4.1%であるため若干配向しているかのように見えるが、ロットゲーリング法では特に配向度が低い場合に精度が低下することが知られており、この程度では実質的に無配向であるとみなしてかまわない。
【0036】
副成分MとしてMn2+を含有する試料番号3,5,6,7,8では、それぞれ配向度が10.4〜60.1%の範囲にあり、副成分Mを添加することによって磁場配向が可能になったことがわかる。特に、主成分100molに対する副成分Mのモル比率aが0.1〜1.0の範囲にある試料番号3,5,6で49.6%以上の高い配向度が得られた。
【0037】
試料番号9は副成分MとしてMn2+を含むものの、その含有比率aが15.0と本発明の範囲を超えているため、配向度が1.8%となり、実質的に無配向となった。これは、副成分Mを過剰に含むことによって主成分がペロブスカイト構造の単相を得にくくなったためと考えられる。
【0038】
副成分MとしてFe3+,Nd3+,Ce3+,Sm3+またはDy3+を含有する試料番号10〜16においても10.8〜85.4%の配向度を得ることができた。特に、副成分MとしてDy3+を主成分100molに対して1.0mol含有する試料番号16では85.4%の高い配向度を得ることができた。
【実施例2】
【0039】
次に本発明の第2の実施例に係る配向性セラミックスの製造方法について説明する。本実施例に係る配向性セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3を主成分とするものである。
【0040】
主成分の出発原料としてPb34,ZrO2およびTiO2を、副成分の素原料としてMnCO3を用意し、これらを以下の一般式(B)を満足するような比率で秤量した。
【0041】
100Pb(Zr0.5Ti0.5)O3+aM …(B)
(式中、Mは副成分であるMn2+を示す。)
この秤量物を用いて、実施例1と同様の製造方法によって焼結体(配向性セラミックス)を製造した。そして実施例1と同様の方法によって配向度を求めた。各試料の組成、印加磁界および配向度を表1に示す。なお、表2において試料番号に*が付されているものは本発明の範囲外の比較例である。
【0042】
【表2】


【0043】
副成分Mを含まない試料番号17では12Tの磁場を印加しても実質的に無配向となったが、副成分Mを主成分100molに対してそれぞれ0.5molおよび1.0mol含有する試料番号18,19では15.4〜32.0%の配向度を得ることができた。
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【出願日】 平成18年8月10日(2006.8.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−37064(P2008−37064A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−217995(P2006−217995)