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【発明の名称】 非強磁性物質成形体の製造方法、及び非強磁性物質成形体
【発明者】 【氏名】木村 雅彦

【氏名】安藤 陽

【氏名】白露 幸祐

【氏名】鈴木 達

【氏名】目 義雄

【要約】 【課題】磁化率の最も大きな結晶軸のみならず、その他の結晶軸にも配向性を付与することができるようにする。

【構成】スラリー作製工程1では、ビスマス層状化合物等の磁化率に異方性を有する非強磁性材料を主成分としたスラリーを作製し、第1の配向性付与工程2では、泥漿鋳込み装置内のスラリーに対し第1の方向に磁場を印加し、磁化率が実質的に最大であるa軸又はb軸に配向性を付与する。第2の配向性付与工程3では、a軸又はb軸の配向性を維持した状態で前記泥漿鋳込み装置を水平方向に90°回転させ、第1の方向に対し垂直な第2の方向に磁場を印加し、第1の配向性付与工程2で配向性付与に関与しなかった結晶軸、すなわちc軸に配向性を付与する。配向性固定工程4では、前記第1及び第2の配向性付与工程1、2で付与された各結晶軸の配向性を乾燥処理等で固定し、成形体を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化率に異方性を有する非強磁性材料を含むスラリーに磁場を印加しながら成形処理を施して成形体を形成する非強磁性物質成形体の製造方法であって、
前記非強磁性材料を主成分としたスラリーを作製するスラリー作製工程と、前記スラリーに対し第1の方向に磁場を印加し、磁場に対する結晶軸の磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸に配向性を付与する第1の配向性付与工程と、前記第1の結晶軸の配向性を維持した状態で前記第1の方向に対し略垂直な第2の方向に磁場を印加し、前記第1の結晶軸以外の結晶軸に配向性を付与する第2の配向性付与工程と、前記第1及び第2の配向性付与工程で付与された各結晶軸の配向性を固定する配向性固定工程とを含むことを特徴とする非強磁性物質成形体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の配向性付与工程と前記第2の配向性付与工程とを連続的に行うことを特徴とする請求項1記載の非強磁性物質成形体の製造方法。
【請求項3】
前記スラリー作製工程で作製されたスラリーの粘性率は、30〜200mPa・sであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の非強磁性物質成形体の製造方法。
【請求項4】
前記非強磁性材料は、ビスマス層状化合物を主成分とするセラミック材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非強磁性物質成形体の製造方法。
【請求項5】
磁化率に異方性を有する非強磁性材料を含むスラリーに、磁場を印加しながら成形処理を施して得られる非強磁性物質成形体であって、磁場に対する結晶軸の磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸以外の結晶軸に配向性が付与されていることを特徴とする非強磁性物質成形体。
【請求項6】
前記非強磁性材料は、ビスマス層状化合物を主成分とするセラミック材料であり、前記第1の結晶軸以外の結晶軸がc軸であることを特徴とする請求項5記載の非強磁性物質成形体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は非強磁性物質成形体の製造方法に関し、より詳しくは結晶軸方位の配向性が制御された磁化率に異方性を有する非強磁性物質成形体の製造方法、及び非強磁性物質成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の素材に広く使用されているセラミック材料は、結晶軸方位の配向性が電子部品の諸特性向上に寄与することが知られており、近年、結晶軸方位の配向性制御に関する研究・開発が盛んに行われている。特に、圧電部品の分野では、従来よりチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の鉛系圧電セラミック材料が使用されているが、環境面への配慮から鉛を含有しない非鉛系圧電セラミック材料の開発が求められており、結晶軸の配向性を制御することにより、電気機械結合係数等の圧電特性が改善できれば鉛系圧電セラミック材料の代替品として有望である。
【0003】
そして、従来より、セラミック原料粉末としてビスマス層状化合物を90重量%以上含む粉末に溶媒を添加したスラリーを作製し、該スラリーに対して一方向に1T(テスラ)以上の磁場を印加して前記ビスマス層状化合物粉末をc面と垂直な結晶面に配向させつつ前記スラリーを固化した後、焼成するようにしたビスマス層状化合物焼結体の製造方法が既に提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、ビスマス層状化合物が磁化率に異方性を有する非強磁性物質であることに着目し、一方向に磁場を印加しながらスラリーに成形処理を施すことによって磁化率の大きな結晶軸を磁場方向に配向させ、これにより煩雑な製造工程を要することなく容易に成形体を得ることが可能となる。
【0005】
特許文献1の製造方法は、従来の所謂シート工法に比べ、成形体の厚みの自由度も大きく、また、磁化率に異方性を有する非強磁性物質であれば結晶配向させることができるため、多くの物質にも応用できると考えられる。
【0006】
また、他の従来技術としては、非磁性セラミック粒子を含有したセラミックスラリーをベースフィルム上に塗工して所定厚さの未配向シートを作製し、この未配向シートをベースフィルム上で支持した状態のまま磁場印加装置に送り込んで所定方向の磁場を印加し未配向シート内の非磁性セラミック粒子を磁場の方向に配向させて配向処理シートを作製し、この配向処理シート内の少なくとも一部の非磁性セラミック粒子の配向を固定して配向固定シートを得るようにした圧電セラミック部品の製造方法が提案されている(特許文献2)。
【0007】
この特許文献2には、図7に示すように、未配向のセラミックグリーンシート101をベースフィルム102で支持された状態で矢印a方向に間欠走行させ、第1の磁場印加領域103で前記セラミックグリーンシート101に所定方向の磁場を印加すると共に、第1の磁場印加領域103の終端近傍で透光部104aが貫設されたマスク104を介して上方から紫外線を照射し、これによりマトリックス状の第1の配向固定部105を形成した後、第2の磁場印加領域106で前記第1の磁場印加領域103の印加方向とは異なる方向に磁場を印加し、さらに第2の磁場印加領域106の終端近傍107で上方から紫外線を照射して前記配向固定部105以外の部分の配向を固定し、第2の配向固定部108を得る方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−121069号公報
【特許文献2】特開2004−6704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、磁化率が最も大きな結晶軸方位を配向させることができるものの、その他の結晶軸方位を配向させることができず、例えばビスマス層状化合物のようにa軸とb軸との磁化率が略同等でc軸の磁化率はa軸及びb軸の磁化率よりも低い場合は、c軸に配向性を付与することができないため、c軸の配向が求められる用途には使用することができなかった。
【0010】
すなわち、特許文献1では、a軸又はb軸には配向性を付与することができるものの、c軸は任意の方向に向いて一定の方向に揃えることができず、したがって、特許文献1からは、このようにc軸の配向が求められる用途には使用することができなかった。
【0011】
また、特許文献2は、上述したようにセラミックグリーンシート101に対し第1及び第2の磁場印加領域103、106で互いに異なる方向から2回の磁場印加を行っているが、この方法では磁化率の大きな結晶軸(ビスマス層状化合物でいえばa軸及びb軸)について、第1の配向固定部105では例えば鉛直方向に配向し、第2の配向固定部108では例えば水平方向に配向させたものであり、a軸及びb軸よりも磁化率の小さいc軸を磁場方向に配向させておらず、c軸を一定方向に配向することは意図していない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、磁場に対する磁化率が実質的に最大の結晶軸のみならず、その他の結晶軸にも配向性を付与することができる非強磁性物質成形体の製造方法、及び非強磁性物質成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究したところ、セラミックスラリーに所定方向から磁場を印加して磁化率が最大の結晶軸に配向性を付与し、その配向性を維持した状態で前記所定方向に対し略垂直な方向から再度磁場を印加することにより、磁場に対する磁化率が実質的に最大である結晶軸以外の結晶軸にも配向性を付与することができるという知見を得た。
【0014】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る非強磁性物質成形体の製造方法は、磁化率に異方性を有する非強磁性材料を含むスラリーに磁場を印加しながら成形処理を施して成形体を形成する非強磁性物質成形体の製造方法であって、前記非強磁性材料を主成分としたスラリーを作製するスラリー作製工程と、前記スラリーに対し第1の方向に磁場を印加し、磁場に対する結晶軸の磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸に配向性を付与する第1の配向性付与工程と、前記第1の結晶軸の配向性を維持した状態で前記第1の方向に対し略垂直な第2の方向に磁場を印加し、前記第1の結晶軸以外の結晶軸に配向性を付与する第2の配向性付与工程と、前記第1及び第2の配向性付与工程で付与された各結晶軸の配向性を固定する配向性固定工程とを含むことを特徴としている。
【0015】
尚、「磁場に対する磁化率が実質的に最大の結晶軸」とは、例えば、真の磁化率が最大の結晶軸よりも、磁化率が低く、正確には磁化率が最大でないとしても、磁場に対する挙動においては、真の磁化率が最大の結晶軸と区別できないような結晶軸をいう。
【0016】
また、本発明者らが更に鋭意研究を行ったところ、上述した第1の配向性付与工程と前記第2の配向性付与工程とを時間的に間隔を設けることなく連続的に行った場合は、時間的に間隔を設けて行った場合に比べ、第1の結晶軸以外の結晶軸の配向性を向上させることのできることが分かった。
【0017】
すなわち、本発明の非強磁性物質成形体の製造方法は、前記第1の配向性付与工程と前記第2の配向性付与工程とを連続的に行うことを特徴としている。
【0018】
さらに、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、スラリーの粘性率を30〜200mPa・sに制御することにより、磁場に対する磁化率が実質的に最大となる結晶軸以外の結晶軸の配向性を効果的に向上させ得ることが分かった。
【0019】
そこで、本発明の非強磁性物質成形体の製造方法は、前記スラリー作製工程で作製されたスラリーの粘性率が、30〜200mPa・sであることを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、結晶軸のa軸及びb軸と、c軸との磁化率の差が大きいビスマス層状化合物において特に顕著な作用効果を奏することができる。
【0021】
そこで、本発明の非強磁性物質成形体の製造方法は、前記非強磁性材料が、ビスマス層状化合物を主成分としたセラミック材料であることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の非強磁性物質成形体の製造方法を用いることによって、本発明の非強磁性物質成形体が得られる。すなわち、本発明の非強磁性物質成形体は、磁化率に異方性を有する非強磁性材料を含むスラリーに、磁場を印加しながら成形処理を施して得られる非強磁性物質成形体であって、磁場に対する結晶軸の磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸以外の結晶軸に配向性が付与されていることを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、結晶軸のa軸及びb軸と、c軸との磁化率の差が大きいビスマス層状化合物において特に顕著な作用効果を奏することができる。そこで、本発明の非強磁性物質成形体は、非強磁性材料がビスマス層状化合物を主成分とするセラミック材料であり、第1の結晶軸以外の結晶軸がc軸であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の非強磁性物質成形体の製造方法によれば、磁化率に異方性を有する非強磁性材料を主成分としたスラリーを作製するスラリー作製工程と、前記スラリーに対し第1の方向に磁場を印加し、磁場に対する結晶軸の磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸に配向性を付与する第1の配向性付与工程と、前記第1の結晶軸の配向性を維持した状態で前記第1の方向に対し略垂直な第2の方向に磁場を印加し、前記第1の結晶軸以外の結晶軸に配向性を付与する第2の配向性付与工程と、前記第1及び第2の配向性付与工程で付与された各結晶軸の配向性を固定する配向性固定工程とを含むので、磁場に対する磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸のみならず、その他の結晶軸も配向固定することができ、したがって、第1の方向への配向状態を維持したまま更に高次の配向性が付与されることとなり、電気特性が良好で厚みの厚いブロック状の電子部品用成形体を容易に製造することができる。
【0025】
また、前記第1の配向性付与工程と前記第2の配向性付与工程とを連続的に行うので、特に第1の結晶軸以外の結晶軸の配向性をより一層向上させることが可能となる。
【0026】
また、前記スラリー作製工程で作製されたスラリーの粘性率が、30〜200mPa・sであるので、磁場に対する磁化率が実質的に最大となる結晶軸のみならず、その他の結晶軸の配向性をも良好なものとすることができる。
【0027】
本発明の製造方法は、前記非強磁性材料がビスマス層状化合物を主成分とするセラミック材料であるので、磁化率が略同等のa軸及びb軸だけではなく結晶軸の最も小さいc軸にまで結晶軸に配向性が付与することができ、圧電セラミック材料に鉛を含んでいなくとも、圧電特性に優れた各種圧電部品の実現が可能となる。
【0028】
また、本発明の非強磁性物質成形体は、磁化率に異方性を有する非強磁性材料を含むスラリーに、磁場を印加しながら成形処理を施して得られる非強磁性物質成形体であっても、磁場に対する結晶軸の磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸に配向性が付与されるだけでなく、第1の結晶軸以外の結晶軸にも配向性が付与されているため、第1の結晶軸以外の結晶軸での配向性が必要となる用途において有用に用いることができる。
【0029】
また、本発明の非強磁性物質成形体は、前記非強磁性材料がビスマス層状化合物を主成分とするセラミック材料であって、磁化率が略同等のa軸及びb軸だけではなく、磁化率が最も小さいc軸にまで配向性を付与されている。ビスマス層状化合物の結晶軸中で最も長軸であるc軸の配向性が高い非強磁性物質成形体が得られ、電界印加時の圧電特性に優れた各種圧電部品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0031】
図1は本発明に係る非強磁性物質の製造方法を示す製造工程図である。
【0032】
スラリー作製工程1では、磁化率に異方性を有する非強磁性材料を主成分としたスラリーを作製する。
【0033】
「磁化率に異方性を有する非強磁性材料」としては、具体的には、CaBiTi15、BaBiTi15、BaBiTa、BaBiNb等のビスマス層状化合物、Sr1.9Ca0.1NaNb15、SrNb、BaNb等のタングステンブロンズ型化合物、HoTi、DyTi等のパイクロア化合物、ZnO等のセラミック材料が電子部品向け用途としては実用的ではあり、特に、結晶の異方性が極めて大きいビスマス層状化合物が好適に使用されるが、金属間化合物、高分子材料も使用することができる。
【0034】
次に、非強磁性材料のスラリー作製方法を具体的に説明する。
【0035】
まず、出発原料として、CaCO、BaCO、Bi、Nb、Ta、TiO等の素原料を用意する。
【0036】
次に、これら出発原料を所定量秤量し、さらに必要に応じて所望の添加物を秤量し、該秤量物を部分安定化ジルコニア(PSZ)等の粉砕媒体が内有されたボールミルに投入して十分に湿式で混合粉砕し、次いで乾燥処理を施した後、所定時間仮焼処理を施し、得られた仮焼物を解砕して仮焼粉末を作製する。
【0037】
次いで、この仮焼粉末を再度ボールミルに投入して十分に湿式粉砕し、非強磁性物質を主成分とする原料粉末を作製する。そして、この原料粉末に適量の分散剤、水、及び有機バインダを混合してスラリーを作製する。
【0038】
ここで、スラリーの粘性率は、上記原料粉末と水との配合比率を調整することにより、30〜200mPa・sに制御される。
【0039】
すなわち、スラリーの粘性率が30mPa・s未満になると、スラリーの流動性が増加し、後述する第1の配向性付与工程で付与された配向性を維持することが困難となり、配向性の低下を招くおそれがある。一方、スラリーの粘性率が200mPa・sを超えた場合は、スラリーの粘性が高くなるため、磁化率の大小に関わらず結晶軸を配向させることが困難となり、この場合も配向性の低下を招くおそれがある。
【0040】
そこで、本実施の形態では、スラリーの粘性率が、30〜200mPa・s、好ましくは60〜110mPa・sとなるように制御されている。
【0041】
次に、第1の配向性付与工程2では、泥漿鋳込み装置(成形装置)内に収容された前記スラリーに対し水平方向に第1回目の磁場を印加し、磁場に対する磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸を前記磁場の印加方向に配向させる。
【0042】
すなわち、まず、図2に示すような超伝導磁石を用意する。
【0043】
この超伝導磁石5は空洞部6を有する円筒形状に形成されており、コイル7が螺旋状に埋設されている。そして、該超伝導磁石5に電圧を印加して通電すると矢印X方向(長手方向)に磁場が発生するようになっている。尚、本実施の形態では超伝導磁石5を使用したが通常の電磁石を使用することもできる。
【0044】
次に、泥漿鋳込み装置を空洞部6内に配し、磁場中で成形処理を行う。
【0045】
図3は泥漿鋳込み装置の模式図であって、図中、8は鋳型、9は多孔質吸収板である。
【0046】
すなわち、泥漿鋳込み装置を超伝導磁石5の空洞部6に配し、該超伝導磁石5に通電して矢印X方向に磁場を発生させ、この状態で鋳型8の上方に設けられた孔(不図示)からスラリー10を流し込み、該スラリー10を多孔質吸収板9に吸収させて成形処理を施す。
【0047】
このとき、スラリー10には矢印X方向に磁場が印加されているため、スラリーの結晶粒子は、磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸が磁場の印加方向に配向し、その他の結晶軸はランダムに任意の方向に向く。
【0048】
例えば、結晶軸の磁化率がa軸>b軸>c軸である場合、矢印X方向に磁場が印加され磁場が発生すると、a軸の磁化率がb軸やc軸の磁化率に比べて大きいため、a軸が第1の結晶軸となって磁場の印加方向である矢印X方向に配向する。このときb軸とc軸は矢印X方向に対し垂直な面内でランダムに任意の方向を向く。
【0049】
次に、第2の配向性付与工程3では、まず、スラリー10に振動を与えないようにして泥漿鋳込み装置を水平方向に90°回転させる。そして、この状態で再度超伝導磁石5に通電して第2回目の磁場印加を行い、矢印X方向に磁場を発生させる。これによりスラリー10は第1の配向性付与工程2における印加方向とは垂直な方向に印加されることとなり、しかも第1回目の配向性が維持されているので磁化率が最大である第1の結晶軸以外の結晶軸が配向する。
【0050】
すなわち、先の例でいえば、第1の配向性付与工程2で配向性が付与されたa軸(第1の結晶軸)は、第2回目の磁場の印加方向とは垂直な方向を向いた状態で配向性が維持されると共に、b軸はc軸よりも磁化率が大きいためb軸が矢印X方向に配向する。そしてその結果、c軸は第1回目及び第2回目の印加方向に垂直な第3の方向に配向される。
【0051】
次いで、配向性固定工程4ではスラリーを所定時間乾燥させ、これにより非強磁性成形体が製造される。
【0052】
このようにスラリー作製工程1で作製されたスラリーを印加方向が互いに垂直となるように2回の磁場を発生させ、磁場中で成形処理を行なうことにより、磁化率が最大である第1の結晶軸以外の結晶軸に対しても配向性を付与することができ、これにより磁場に対する磁化率が実質的に最大である結晶軸以外の結晶軸にも配向性が付与された非強磁性物質成形体を製造することができる。
【0053】
尚、本実施の形態では第2の配向性付与工程3と配向性固定工程4とを別々に行なっているが、第2の配向性付与工程3において、第2回目の磁場を印加しながら、乾燥を開始してもよく、第2の配向性付与工程3と配向性固定工程4とを同時に行ってもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、泥漿鋳込み装置を回転させるだけで、スラリー10に対して互いに垂直方向となるように磁場を印加しており、したがって1個の超伝導磁石5で異なる方向から2回の磁場を印加することができる。
【0055】
そして、各結晶軸が配向制御されたセラミック成形体を使用して圧電部品を形成することができ、したがってシート工法に依らなくとも厚みの厚いブロック状のセラミック成形体を容易に製造することができ、鉛を含まない非鉛系であっても圧電特性の良好な圧電部品を得ることが可能となる。
【0056】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、また、良好な配向性を得るためには印加される磁場の大きさは1T以上が好ましい。
【0057】
また、上記実施の形態では、結晶軸の磁化率がa軸>b軸>c軸の場合を例に述べたが、ビスマス層状化合物などの場合、磁化率がa軸≒b軸>c軸のような関係が成り立つ。この場合、第1の配向性付与工程2では、磁化率の最小の結晶軸(c軸)を除く結晶軸のうち、一方の結晶軸(a軸又はb軸)に配向性が付与される。次いで、第2の配向性付与工程3では、第1の配向性付与工程2においてa軸が配向されたものに対してはb軸、b軸が配向されたものに対してはa軸がそれぞれ配向される。すなわち、a軸又はb軸が第1及び第2配向性付与工程2、3でいづれかの磁場印加方向に配向される結果、磁化率が最小であるc軸も必然的に配向することになる。
【0058】
また、上記実施の形態では、第1の配向性付与工程1と第2の配向性付与工程2とを時間的間隔を設けずに連続的に行っているが、第2の配向性付与工程2との間に一定の時間的間隔を設けるようにしてもよい。すなわち、第1の配向性付与工程1と第2の配向性付与工程2との間に時間的間隔を設けた場合は、第1の配向性付与工程1と第2の配向性付与工程2とを連続的に行った場合に比べ、配向性は若干低下するものの、各結晶軸の配向性を確保することが可能である。
【0059】
ただし、第1の配向性付与工程2と第2の配向性付与工程3との間で配向が固定されてしまうと磁化率の高い結晶軸以外の配向も、ランダムなまま固定されてしまうため、配向性が固定されてしまうようなことは極力行わないことが望ましい。
【0060】
また、上記実施の形態では、磁場印加は第1回目と第2回目とはXY平面上で互いに垂直となる方向に印加したが、XZ面上での互いに垂直となる方向に印加してもよく、また真に垂直でなくとも略垂直な方向に磁場が発生するように印加すればよい。
【0061】
また、結晶軸の配向固定の方法としては上述した乾燥処理に限定されるものではなく、紫外線照射等で配向固定するようにしてもよい。
【0062】
上記のような非強磁性物質成形体の製造方法を用いることによって、磁化率に異方性を有する非強磁性材料を含むスラリーに、磁場を印加しながら成形処理を施して得られる非強磁性物質成形体であっても、磁場に対する結晶軸の磁化率が実質的に最大である第1の結晶軸以外の結晶軸に配向性が付与されている非強磁性物質成形体を得ることができる。特に、非強磁性材料がビスマス層状化合物を主成分とする場合には、磁化率が最も小さいc軸へも配向性を付与された非強磁性物質成形体が得られる。ビスマス層状化合物において、c軸は結晶軸中で最も長軸であるため、用途によっては電界印加時の圧電特性及び変位量の大きな圧電部品を提供することができる。
【0063】
尚、上記において非強磁性物質材料としてセラミック材料を用い、本発明の非強磁性物質成形体を圧電部品等の部品本体に使用する場合には、上記配向性固定工程を経て固化されたセラミック成形体を焼成し、セラミック焼結体を得てから、圧電部品本体として用いることが一般的であるが、例えば高分子材料などを用いる場合には、非強磁性物質成形体のままで利用することも可能である。
【0064】
このような非強磁性物質成形体を電子部品用途として用いる場合には、例えば、半導体保護膜、プリント基板、及び電磁遮蔽材等として用いることが有用であるが、これに限るものではない。
【0065】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例】
【0066】
磁化率に異方性を有する非強磁性物質としてa軸及びb軸の磁化率が同等に高く、c軸の磁化率がa軸及びb軸の磁化率に比べて低いビスマス層状化合物を使用し、結晶の配向性効果を確認した。
【0067】
すなわち、まず、出発原料としてCaCO、Bi、TiO、及びMnCOを用意し、0.5重量%のMnCOを含有した組成式CaBiTi15で表されるビスマス層状化合物が得られるように、前記出発原料を秤量した。
【0068】
次いで、この秤量物をPSZが内有されたボールミルに投入して約16時間湿式で混合し、得られた混合物を乾燥させた後、1200℃の温度で2時間仮焼処理を施し、さらに回転式粉砕機を使用し、乾式で1分間解砕処理を施し、仮焼粉末を得た。
【0069】
次に、この仮焼粉末を再度上記ボールミルに投入して約100時間湿式粉砕処理を施して原料粉末を得、さらに表1に示すような配合量となるように原料粉末に水及び有機バインダ(酢酸ビニル樹脂)を混合し、6種類のセラミックスラリーを作製した(スラリーA〜F)。
【0070】
次に、各スラリーA〜Fの粘性率を振動式粘度測定器で測定した。
【0071】
表1は原料粉末、水、有機バインダの各スラリー中の含有量と粘性率を示している。
【表1】


この表1に示すように、本実施例では原料粉末と水との配合比率を異ならせることにより、粘性率が15〜240mPa・sの範囲に調製された6種類のスラリーA〜Fを得た。
【0072】
次に、これらスラリーA〜Fに0.5重量%の分散剤としてのアクリル酸塩を添加し、さらに原料粉末を十分に分散させるため撹拌棒で分散させながら5分間超音波振動を付与し、撹拌した。
【0073】
そして、このようにして得られたスラリーA〜Fを図3に示す泥漿鋳込み装置の鋳型に流し込み、上述した図2に示す超伝導磁石5の空洞部6に前記泥漿鋳込み装置を配し、下記(1)〜(5)に示す磁場印加方法で磁場を印加しながら、成形処理を行なった。
【0074】
〔磁場印加方法〕
(1)第1回目の磁場印加として12Tの磁場を水平方向に15分間印加した後、試料(スラリー)に振動を与えないようにして泥漿鋳込み装置を水平方向に90°回転させ、第2回目の磁場印加として12Tの磁場を水平方向に4時間印加した。尚、第2回目の磁場は、第1回目の磁場の印加方向に対し垂直な方向に印加されることとなる。
【0075】
(2)第1回目の磁場印加として12Tの磁場を水平方向に15分間印加した後、泥漿鋳込み装置を超伝導磁石5より取り出して1分間放置し、その後、第1回目の磁場印加時と水平方向に90°回転させた状態となるように泥漿鋳込み装置を超伝導磁石5の空洞部6に配し、第2回目の磁場印加として12Tの磁場を水平方向に4時間印加した。尚、この場合も、上記(1)と同様、第2回目の磁場は、第1回目の磁場の印加方向に対し垂直な方向に印加されることとなる。
【0076】
(3)第1回目の磁場印加として12Tの磁場を水平方向に4時間印加した後、泥漿鋳込み装置を超伝導磁石5より取り出し、5分間超音波振動を付与して試料を撹拌し、その後、第1回目の磁場印加時と水平方向に90°回転させた状態となるように泥漿鋳込み装置を超伝導磁石5の空洞部6に配し、第2回目の磁場印加として12Tの磁場を水平方向に4時間印加した。尚、この場合も、上記(1)と同様、第2回目の磁場は、第1回目の磁場の印加方向に対し垂直な方向に印加されることとなる。
【0077】
(4)12Tの磁場を水平方向に4時間印加したのみで、第2回目の磁場印加は行わなかった。
【0078】
(5)磁場印加を行うことなく泥漿鋳込み成形を行った。
【0079】
次に、上記(1)〜(5)の成形処理を行なったスラリーを150℃で12時間乾燥させて型抜きし、幅Wが40mm、長さHが35mm、厚みTが5mmの外形寸法を有する試料番号1〜18のセラミック成形体を作製した。
【0080】
次に、このようにして得られたセラミック成形体を500℃の温度で2時間熱処理して有機バインダを除去し、次いで、1200℃の温度で2時間、大気中で焼成処理を施し、幅Wが34mm、長さHが29mm、厚みTが4.2mmの外形寸法を有する試料番号1〜18のセラミック焼結体を得た。
【0081】
図4はセラミック焼結体の外観を示しており、Pは第1回目の磁場印加方向、Qは第2回目の磁場印加方向を示している。
【0082】
次に、面A(W×Hの面)、面B(W×Tの面)、面C(H×Tの面)について、X線回折法(線源CuKα、40kV、200mA)を使用して回折角20°〜80°のX線ピーク強度を測定した。比較のためセラミック成形体を粉砕して得た比較用粉末試料の各結晶面のX線ピーク強度も測定した。
【0083】
次に、Lotgering法により数式(1)に基づいてa軸とb軸の配向を示す(l00)面と(0l0)面の配向度F1とc軸の配向を示す(00l)面の配向度F2を面A〜Cのそれぞれについて算出した。
【数1】


ここで、ΣI(HKL)はセラミック焼結体における特定の結晶面(HKL)のX線ピーク強度の総和であり、ΣI(hkl)はセラミック焼結体の全結晶面(hkl)のX線ピーク強度の総和である。また、ΣIo(HKL)は上記比較用粉末試料の特定の結晶面(HKL)のX線ピーク強度の総和であり、ΣIo(hkl)は上記比較用粉末試料の全結晶面(hkl)のX線ピーク強度の総和である。
【0084】
次に、試料番号1〜18の各試料について、図5に示すように、両主面が面Bに平行で、かつ長さ方向が面Cと直交する幅T′が1mm、長さW′が5mm、厚みH′が0.25mmの矩形板状の圧電セラミック素体20を切り出した。
【0085】
次いで、この圧電セラミック素体20の両端面(H′×T′)に銀ペーストを塗布、焼付けして導電部を形成し、150℃の絶縁オイル中で5kV/mmの直流電圧を10分間印加して分極処理を施した。次に、導電部の所定領域を除去し、図6に示すように圧電セラミック素体20の幅方向(T′)の一端からの距離Lが4mmとなるように電極21a、21bを形成した。尚、電極21a、21bは、長さ方向の中央部の3mmの範囲で対向している。
【0086】
次に、インピーダンスアナライザ(ヒューレット・パッカード社製HP4194A)を使用し、ANSI/IEEEスタンダードに基づき、厚みすべり振動の電気機械結合係数k15を測定した。
【0087】
表2は試料番号1〜18のスラリーNo.、磁場印加方法、面A〜面Cの結晶面(l00)及び(0l0)、(00l)におけるそれぞれの配向度F1、F2及び電気機械結合係数k15を示している。
【0088】
尚、配向度は、無配向の場合を0%、全ての結晶粒子が配向している場合を100%として規格化した値を示している。
【表2】


表2に示すように試料番号1、2は、磁場を印加していないため、結晶粒子はランダムに配向しており、面A〜面Cの、(l00)面及び(0l0)面、(00l)面における各配向度F1、F2は6〜12%と低く、電気機械結合係数k15も13.4〜13.5%と低かった。
【0089】
また、試料番号3、4は、面Bに対し水平方向(矢印P方向)から磁場を印加しているため、面Bでは磁化率の大きなa軸及びb軸の配向度、すなわち(l00)面、(0l0)面の配向度F1は71〜78%と高く、配向性が付与されているが、面A及び面Cでは各結晶軸の配向度は6〜16%と低く結晶軸はランダムに任意の方向を向いており、電気機械結合係数k15も12.1〜12.4%と低かった。
【0090】
また、試料番号17、18は、面Cの(l00)面、(0l0)面での配向度F1のみが67〜76%と高く、面Cでのa軸配向は認められたものの、面A、面Bでは結晶軸はランダムに任意の方向に向いているため、これらに面A、面Bでの配向度は7〜14%と低く、このため電気機械結合係数k15も14.9〜15.3%と低かった。これは試料番号17、18では、2回の磁場印加は行っているものの、第1回目の磁場印加を行った後、超音波振動を付与してスラリーを撹拌したため、第1回目の磁場印加による配向効果が取り除かれ、しかも面Cに対して水平方向(矢印Q方向)に第2回目の磁場印加を行っているため、面Cに対しては磁化率の高いa軸及びb軸、すなわち(l00)面及び(0l0)面のみが配向したためと考えられる。
【0091】
これに対し試料番号5〜16は、矢印P方向に磁場印加した後、矢印P方向とは垂直な矢印Q方向に磁場を印加しているので、面B及び面Cでは(l00)面及び(0l0)面の配向度F1が35〜71%と高くa軸に配向性が付与され、さらに面Aでは(00l)面の配向度F2が50〜67%となってc軸に配向性が付与され、したがっていずれの結晶軸にも配向性が付与され、電気機械結合係数k15も20.0〜23.0%と向上することが分かった。
【0092】
尚、試料番号11〜15のように第1回目の磁場印加と第2回目の磁場印加との間に1分間の時間的間隔を設けた場合は面Aにおけるc軸の配向度が50〜55%であったのに対し、試料番号5〜10のように第1回目の磁場印加と第2回目の磁場印加とを時間的間隔を設けずに連続的に行った場合は面Aにおけるc軸の配向度が57〜63%と高く、これらの結果から、第1回目の磁場印加と第2回目の磁場印加とを時間的間隔を設けずに連続的に行った方が場合に比べ、面Aにおける(00l)面の配向度F2を高くすることができ、より良好な電気機械結合係数k15を得ることのできることが分かった。
【0093】
また、試料番号5〜10、及び試料番号11〜16との比較からわかるように磁場印加方法が同一の場合は、セラミックスラリーの粘性率が30〜200mPa・sで面Aのc軸の配向度が高くなっており、特に60〜110mPa・sでc軸の配向度はより高くなることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る非強磁性物質成形体の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図である。
【図2】上記実施の形態で使用される超伝導磁石の概略を示す斜視図である。
【図3】上記実施の形態で使用される泥漿鋳込み装置の概略を示す図である。
【図4】本実施例で製造されたセラミック焼結体の斜視図である。
【図5】図4のセラミック焼結体を切り出して得られた圧電セラミック素体の斜視図である。
【図6】実施例で得られた圧電部品の外観を示す斜視図である。
【図7】特許文献2で開示された圧電セラミック部品の製造方法を説明するためのセラミックグリーンシートの平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 スラリー作製工程
2 第1の配向性付与工程
3 第2の配向性付与工程
4 配向性固定工程
10 スラリー
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【出願日】 平成16年10月21日(2004.10.21)
【代理人】 【識別番号】100117477
【弁理士】
【氏名又は名称】國弘 安俊


【公開番号】 特開2008−36816(P2008−36816A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2004−306404(P2004−306404)