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【発明の名称】 ハニカム構造体成形用金型の製造方法
【発明者】 【氏名】上村 均

【要約】 【課題】耐久性・耐摩耗性に優れた金型を容易かつ確実に得ることができるハニカム構造体成形用金型の製造方法を提供すること。

【構成】材料を供給するための供給穴12と、供給穴12に連通して格子状に設けられ、材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝13とを有するハニカム構造体成形用金型1の製造方法において、スリット溝13を形成するに当たっては、金型素材11のスリット溝形成面130に硬化処理を施して硬化処理膜2を形成する硬化処理工程を行った後、スリット溝形成面130にスリット溝13を形成するスリット溝形成工程を行う。硬化処理膜2の硬度は、金型素材11の硬度の1.5倍以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を供給するための供給穴と、該供給穴に連通して格子状に設けられ、材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とを有するハニカム構造体成形用金型を製造する方法において、
上記スリット溝を形成するに当たっては、金型素材の少なくともスリット溝形成面に硬化処理を施して硬化処理膜を形成する硬化処理工程を行った後、上記スリット溝形成面に上記スリット溝を形成するスリット溝形成工程を行い、
上記硬化処理膜の硬度は、上記金型素材の硬度の1.5倍以上であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記硬化処理工程では、PVD、CVD、DLC、電気メッキ、又は無電解メッキのいずれかの方法を用いて硬化処理を行うことを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記金型素材の硬度は、Hv500以上であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、上記金型素材の硬度は、Hv500〜760であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記硬化処理膜の硬度は、Hv750以上であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記硬化処理膜の硬度は、Hv1500以上であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記硬化処理膜の厚みは、上記スリット溝の深さの1/10以下であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、上記硬化処理膜の厚みは、0.5mm以下であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の押出成形に用いられるハニカム構造体成形用金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の排ガス浄化フィルター等に用いられるセラミック製のハニカム構造体は、ハニカム構造体成形用金型(以下、適宜、単に金型という)を用いて、セラミックス原料を含む材料を押出成形することにより製造される。
【0003】
上記金型としては、金型の材料となる金型素材に、材料を供給するための供給穴と、その供給穴に連通して格子状に設けられ、材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とが形成されたものがある。このような金型を用いて材料を繰り返し押出成形すると、材料が金型に接触することによって摩耗が生じる。この金型の摩耗によって、成形するハニカム構造体の寸法精度が低下するという問題が生じる。
【0004】
上記の問題を解決する方法として、特許文献1では、金型の耐摩耗性を向上させるために、供給穴やスリット溝が形成された金型の表面全体に化学蒸着法(CVD)によって耐摩耗材をコーティングする方法が提案されている。しかしながら、供給穴やスリット溝が形成された複雑な形状の金型の表面全体に、耐摩耗材を均一に成膜することは非常に困難である。そのため、金型の耐摩耗性を充分に確保することができないと共に、成形するハニカム構造体の寸法精度が低下してしまうおそれもある。
【0005】
このようなことから、金型の耐久性・耐摩耗性の向上を容易かつ確実に図ることができるハニカム構造体成形用金型の製造方法が求められている。
【0006】
【特許文献1】特平5−269719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、耐久性・耐摩耗性に優れた金型を容易かつ確実に得ることができるハニカム構造体成形用金型の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、材料を供給するための供給穴と、該供給穴に連通して格子状に設けられ、材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とを有するハニカム構造体成形用金型を製造する方法において、
上記スリット溝を形成するに当たっては、金型素材の少なくともスリット溝形成面に硬化処理を施して硬化処理膜を形成する硬化処理工程を行った後、上記スリット溝形成面に上記スリット溝を形成するスリット溝形成工程を行い、
上記硬化処理膜の硬度は、上記金型素材の硬度の1.5倍以上であることを特徴とするハニカム構造体成形用金型の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
本発明のハニカム構造体成形用金型の製造方法において、上記スリット溝を形成するに当たっては、上記硬化処理工程を行った後、上記スリット溝形成工程を行う。すなわち、上記スリット溝を加工する前に、少なくとも上記スリット溝形成面に予め硬化処理を施しておき、その後、硬化処理を施した上記スリット溝形成面に上記スリット溝を形成する。そのため、従来のように上記スリット溝加工後の複雑な形状の上記スリット溝形成面に対して硬化処理を施すのではなく、上記スリット溝加工前の段階の平易な形状の上記スリット溝形成面に対して硬化処理を施すことになる。これにより、耐久性・耐摩耗性を向上させるための硬化処理を精度よく、容易に行うことができると共に、上記硬化処理膜を上記スリット溝形成面に均一に成膜することができる。
【0010】
また、上記硬化処理工程では、少なくとも上記スリット溝形成面に硬化処理を施し、上記硬化処理膜を形成する。上記スリット溝形成面は、ハニカム構造体成形時において、上記スリット溝から材料が押し出される面となる。つまり、上記スリット溝形成面は、成形するハニカム構造体の成形性・寸法精度を左右する重要な部分であり、材料との接触による摩耗が特に激しい部分である。このような部分に硬化処理を施し、均一な上記硬化処理膜を形成することにより、上記金型の耐久性・耐摩耗性を効果的に向上させることができる。また、成形するハニカム構造体の成形性・寸法精度を充分に確保することができる。
また、上記スリット溝形成面に形成する上記硬化処理膜の硬度は、上記金型素材の硬度の1.5倍以上である。これにより、上記硬化処理膜によって、上記金型の耐久性・耐摩耗性の向上を充分に図ることができる。
【0011】
このように、本発明の製造方法によれば、耐久性・耐摩耗性に優れたハニカム構造体成形用金型を容易かつ確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においては、上記硬化処理膜の硬度が上記金型素材の硬度の1.5倍未満の場合には、上記硬化処理膜によって上記金型の耐久性・耐摩耗性を向上させる効果を充分に発揮することができないおそれがある。
また、上記スリット溝形成工程における上記スリット溝の加工は、ダイヤモンド等を付着させた極薄のカッターを用いて加工するスライシング加工等の方法を用いることができる。
【0013】
また、上記金型素材としては、SKH(高速度工具鋼)、SKD(合金工具鋼)、ステンレス、アルミニウム合金、チタン、インコネル、ハステロイド、ステライト、超硬合金、サーメット等の金属又はそれに類する素材を用いることができる。これにより、上記金型素材に上記硬化処理膜を容易かつ確実に形成することができる。
【0014】
また、上記硬化処理工程では、PVD、CVD、DLC、電気メッキ、又は無電解メッキのいずれかの方法を用いて硬化処理を行うことが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記硬化処理膜を精度よく形成することができると共に、上記金型の耐久性・耐摩耗性の向上を確実に図ることができる。なお、硬化処理の方法としては、上記以外の方法を用いることもできる。また、PVD及びCVDの両方の処理を行う等、複数の硬化処理を組み合わせた複合処理を行うこともできる。
【0015】
また、上記硬化処理のうち、PVD処理は、非常に成膜精度が高い。そのため、上記硬化処理膜をより一層精度高く形成することができる。また、PVD処理は、厚膜形成が可能であることから、上記硬化処理膜を効率よく形成することができる。
また、CVD処理は、上記金型素材に対する上記硬化処理膜の密着性を高めることができる。そのため、上記硬化処理膜の耐久性をより一層優れたものにすることができる。
また、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理は、非常に高い硬度を有するDLC膜を形成するものである。そのため、上記硬化処理膜の耐摩耗性をより一層優れたものにすることができる。
【0016】
また、上記金型素材の硬度は、Hv500以上であることが好ましい(請求項3)。
上記金型素材の硬度がHv500未満の場合には、上記金型素材の硬度を充分に確保することができないため、上記金型素材に変形等が生じるおそれがある。また、これを起点にして、形成された上記硬化処理膜の損傷・剥離等の不具合が発生するおそれがある。
なお、硬度がHv500以上とは、およそ40HRC以上に相当する。
【0017】
そのため、上記金型素材の硬度は、Hv500〜760であることがより好ましい(請求項4)。
この場合には、上記金型素材の硬度を充分に確保することができる。これにより、上記金型素材の変形等を抑制することができると共に、上記供給穴及びスリット溝を問題なく加工することができる。
なお、硬度がHv500〜760とは、およそ40〜70HRCに相当する。
【0018】
また、上記硬化処理膜の硬度は、Hv750以上であることが好ましい(請求項5)。
上記硬化処理膜の硬度がHv750未満の場合には、上記硬化処理膜の硬度を充分に確保することができず、上記金型の耐久性・耐摩耗性の向上を充分に図ることができないおそれがある。
【0019】
そのため、上記硬化処理膜の硬度は、Hv1500以上であることがより好ましい(請求項6)。
この場合には、上記硬化処理膜の硬度を充分に確保することができ、上記金型の耐久性・耐摩耗性の向上をより一層図ることができる。
【0020】
また、上記硬化処理膜の厚みは、上記スリット溝の深さの1/10以下であることが好ましい(請求項7)。
上記硬化処理膜の厚みが上記スリット溝の深さの1/10を超える場合には、上記金型を用いて材料を成形する際に成形圧力が高くなり、成形速度が低下したり、上記金型が破損したりするおそれがある。
【0021】
また、上記硬化処理膜の厚みは、0.5mm以下であることが好ましい(請求項8)。
上記硬化処理膜の厚みが0.5mmを超える場合には、上記硬化処理膜の成膜精度が低下し、厚み変動が大きくなるおそれがある。また、上記硬化処理膜の結晶が異常に成長し、上記金型素材から剥離してしまうおそれがある。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるハニカム構造体成形用金型の製造方法について、図を用いて説明する。
本例の製造方法により製造するハニカム構造体成形用金型1(以下、適宜、単に金型1という)は、図5、図6に示すごとく、例えばセラミックス原料等を含む材料を押出成形して、ハニカム構造体を成形するためのものである。金型1は、材料を供給するための供給穴12と、供給穴12に連通して格子状に設けられ、材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝13とを有する。
【0023】
本例では、この金型1の製造方法において、スリット溝13を形成するに当たっては、金型素材11のスリット溝形成面130に硬化処理を施して硬化処理膜2を形成する硬化処理工程を行った後、スリット溝13を形成するスリット溝形成工程を行う。そして、硬化処理膜2の硬度は、金型素材11の硬度の1.5倍以上である。
以下、これを詳説する。
【0024】
<準備工程>
金型1を製造するに当たっては、図1に示すごとく、まず金型1の材料となる金型素材11を準備する準備工程を行う。金型素材11は、同図に示すごとく、供給穴12を形成する面である供給穴形成面120と、スリット溝13を形成する面であるスリット溝形成面130とを有している。なお、本例の金型素材11としては、SKD(合金工具鋼)材よりなる200×200×20mmの金属板を用いた。金型素材11の硬度は、Hv500である。
【0025】
<硬化処理工程>
次いで、図2、図3に示すごとく、この金型素材11のスリット溝形成面130に、硬化処理を施して硬化処理膜2を形成する硬化処理工程を行う。本例では、硬化処理としてCVD処理を行った。また、CVD処理は、CVD装置を用いて行った。
以下に、本工程について詳しく説明する。
【0026】
CVD処理に用いるCVD装置4は、図3に示すごとく、底部が開放された円筒形状の反応炉41を有している。反応炉41のサイズは、直径450mm、高さ700mmである。また、反応炉41内には、箱型の反応器42が設けられている。反応器42内には、複数の部屋に区画された、CVD処理を行う金型素材11を載置するための載置台43が設けられている。
【0027】
また、同図に示すごとく、反応器42の底部422には、反応器42内に反応ガスを供給するためのガス供給口441が設けられている。ガス供給口441は、ガス供給管442を介して、外部に設けられたガス供給装置46に接続されている。そして、CVD装置4は、ガス供給装置46から反応ガスを反応器42内に供給することができるように構成されている。なお、本例では、ガス供給装置46から供給する反応ガスとしては、TiCl4、H2、Ar、CH4、N2を用いる。
【0028】
また、同図に示すごとく、反応器42の底部422には、反応器42内のガスを外部に排気するための排気口451が設けられている。また、排気口451は、反応器42の天井部423付近から底部422にかけて設けられた排気管452に接続されている。そして、CVD装置4は、反応器42内のガスを排気管452の吸気口453から吸気し、排気口451から外部に排気することができるように構成されている。
【0029】
そして、上述のCVD装置4を用いてCVD処理を行う硬化処理工程では、まず金型素材11の供給穴形成面120にマスキングを行う。具体的には、図2に示すごとく、供給穴形成面120にグラファイトよりなるマスキングプレート31を被せる。そして、金型素材11とマスキングプレート31をCVD用治具321によって締結し、固定する。これにより、金型素材11の供給穴形成面120側をマスキングする。
【0030】
次いで、図3に示すごとく、金型素材11を固定したCVD用治具322を載置台43の上にセットする。このとき、金型素材11のスリット溝形成面130に反応ガスが接触しやすいように、金型素材11のスリット溝形成面130と反応器42の天井部423とが対向する向きとなるようにセットする。そして、反応器42内を900〜1000℃に加熱する。そして、ガス供給装置46から、反応ガスとしてのTiCl4、H2、Ar、CH4、N2を反応器42内に供給する。
【0031】
次いで、同図に示すごとく、高温に加熱された金型素材11と反応器42内を循環する反応ガスとが接触し、金型素材11のスリット溝形成面130上で化学反応が生じる。そして、合成された成膜材料(本例では、TiC、TiCN、TiN)は、スリット溝形成面130上に成膜される。
【0032】
次いで、反応器42内を冷却し、反応器42内からCVD用治具321を取り出した後、CVD用治具321の締結を解除する。
これにより、図4に示すごとく、スリット溝形成面130の表面に硬化処理膜2が形成された金型素材11を得る。本例の硬化処理膜2は、TiC層、TiCN層、及びTiN層の3層で構成されている。
【0033】
<供給穴形成工程>
次いで、図6に示すごとく、金型素材11の供給穴形成面120に、所定深さの供給穴2を形成する供給穴形成工程を行う。本例では、超硬ドリルを用いて供給穴12を加工した。
【0034】
<スリット溝形成工程>
次いで、図5、図6に示すごとく、金型素材11のスリット溝形成面130に、供給穴12に連通するようにスリット溝13を形成するスリット溝形成工程を行う。本例では、周囲よりも突出するように円形状に加工したスリット溝形成面130に、四角形格子状のスリット溝13をスライシング加工(ダイヤモンド等を付着させた極薄のカッターを用いて加工する方法)により形成した。このとき、硬化処理膜2部分の加工は、カッターの送り速度を金型素材11部分の加工時の1/2にして行った。
以上により、ハニカム構造体成形用金型1を得る。
【0035】
金型1は、図5、図6に示すごとく、供給穴形成面120に形成された供給穴12と、スリット溝形成面130に形成されたスリット溝13とを有する。そして、スリット溝形成面130には、硬化処理膜2が形成されている。
また、図7に示すごとく、本例のスリット溝13の溝深さDは5mm、溝幅Wは140μmである。また、硬化処理膜2の硬度はHv2000であり、金型素材11の硬度の約4倍である。また、硬化処理膜2の膜厚Sは3μmであり、スリット溝13の溝深さDの1/10以下である。
【0036】
また、図8は、本例の金型1における距離L(mm)と膜厚S(μm)との関係を示したものである。ここで、距離Lは、図7に示すごとく、スリット溝13の内側面131からの距離であり、膜厚Sは、同図に示すごとく、スリット溝形成面130に成膜した硬化処理膜2の膜厚である。
図8から知られるように、スリット溝形成面130には、膜厚3μmの均一な硬化処理膜2が形成されている。
【0037】
次に、本例の製造方法における作用効果について説明する。
本例のハニカム構造体成形用金型1の製造方法において、スリット溝13を形成するに当たっては、硬化処理工程を行った後、スリット溝形成工程を行う。すなわち、スリット溝13を加工する前に、スリット溝形成面130に予め硬化処理を施しておき、その後、硬化処理を施したスリット溝形成面130にスリット溝13を形成する。そのため、従来のようにスリット溝13加工後の複雑な形状のスリット溝形成面130に対して硬化処理を施すのではなく、スリット溝13加工前の段階の平易な形状のスリット溝形成面130に対して硬化処理を施すことになる。これにより、耐久性・耐摩耗性を向上させるための硬化処理を容易に、精度高く行うことができると共に、硬化処理膜2をスリット溝形成面130に均一に成膜することができる。
【0038】
また、硬化処理工程では、スリット溝形成面130に硬化処理を施し、硬化処理膜2を形成する。スリット溝形成面130は、ハニカム構造体成形時において、スリット溝13から材料が押し出される面となる。つまり、スリット溝形成面130は、成形するハニカム構造体の成形性・寸法精度を左右する重要な部分であり、材料との接触による摩耗が特に激しい部分である。このような部分に硬化処理を施し、均一な硬化処理膜2を形成することにより、金型1の耐久性・耐摩耗性を効果的に向上させることができる。また、成形するハニカム構造体の成形性・寸法精度を充分に確保することができる。
また、スリット溝形成面130に形成する硬化処理膜2の硬度は、金型素材11の硬度の1.5倍以上である。これにより、硬化処理膜2によって、金型1の耐久性・耐摩耗性の向上を充分に図ることができる。
【0039】
また、本例では、硬化処理工程における硬化処理としてCVD処理を行った。CVD処理は、硬化処理膜2の金型素材11に対する密着性を高めることができる。そのため、硬化処理膜2の耐久性をより一層優れたものにすることができる。
また、硬化処理膜2の硬度は、Hv1500以上である。そのため、硬化処理膜2の硬度を充分に確保することができ、金型1の耐久性・耐摩耗性の向上をより一層図ることができる。
【0040】
このように、本例の製造方法によれば、ハニカム構造体成形用金型1の耐久性・耐摩耗性を向上させるための硬化処理を容易に、精度高く行うことができる。また、得られるハニカム構造体成形用金型1は、耐久性・耐摩耗性に優れたものとなる。
【0041】
なお、本例では、硬化処理工程において、図2に示すごとく、金型素材11の供給穴形成面120側をマスキングプレート31によってマスキングしてからCVD処理を行ったが、図9に示すごとく、マスキングをせずにCVD処理を行うこともできる。
この場合には、硬化処理工程後、供給穴形成面120及びスリット溝形成面130の両面に硬化処理膜2が形成される。そのため、供給穴形成工程では、供給穴形成面120に形成された硬化処理膜2部分を加工する際に、超硬ドリルの送り速度を金型素材11加工時よりも遅くすることによって、供給穴12の加工を問題なく行うことができる。また、供給穴形成面120に形成された硬化処理膜2を平面研削等によって除去した後、供給穴12を加工することもできる。
【0042】
また、本例では、硬化処理工程を行った後に供給穴12を形成したが、硬化処理工程前に、予め供給穴12を形成しておくこともできる。すなわち、本例の製造方法は、準備工程、供給穴形成工程を行った後、硬化処理工程、スリット溝形成工程を行う構成とすることもできる。この場合には、本例と同様に、優れた耐久性・耐摩耗性を有する金型1を得ることができる。また、硬化処理工程において、供給穴形成面120にマスキングをしない場合には、供給穴12が形成された供給穴形成面120に硬化処理膜2が形成されるが、金型1の耐久性・耐摩耗性に問題はない。また、成形するハニカム構造体の成形性・寸法精度についても影響はない。
【0043】
(実施例2)
本例は、本発明のハニカム構造体成形用金型1の製造方法において、硬化処理工程における硬化処理としてPVD処理を行った例である。
本例では、硬化処理工程において、金型素材11のスリット溝形成面130に、PVD処理を行う。また、PVD処理は、PVD装置を用いて行う。以下に詳しく説明する。
【0044】
PVD処理に用いるPVD装置5は、図11に示すごとく、円筒形状の反応器51を有している。反応器51の内側面511には、複数の金属ターゲット52が設けられている。また、金属ターゲット52の表面521に隣接する位置には、一対の陽極プレート53が設けられている。陽極プレート53はアーク電源のプラス(+)側に、金属ターゲット52はアーク電源のマイナス(−)側に、それぞれ接続されている。なお、本例では、金属ターゲット52を構成する材料としては、Cr及びTiを用いた。
【0045】
また、同図に示すごとく、反応器51の底部512には、水平方向に回転可能な回転台54が設けられている。この回転台54は、バイアス電源に接続されている。また、反応器51の天井部513には、反応器51内に反応ガスを供給するためのガス供給口551と、反応器51内のガスを排気する排気口552とが設けられている。また、反応器51には、真空ポンプが配設されている(図示略)。
【0046】
そして、上述のPVD装置5を用いてPVD処理を行う硬化処理工程では、まず金型素材11の供給穴形成面120にマスキングを行う。具体的には、図10に示すごとく、供給穴形成面120にグラファイトよりなるマスキングプレート31を被せる。そして、金型素材11とマスキングプレート31をPVD用治具322によって締結し、固定する。これにより、金型素材11の供給穴形成面120側をマスキングする。
【0047】
次いで、図11に示すごとく、金型素材11を固定したPVD用治具322を、回転台54の上にセットする。このとき、金型素材11のスリット溝形成面130と金属ターゲット52とが対向する向きとなるようにセットする。そして、反応器51内を真空状態にした後、加熱する。なお、反応器51内の真空度は1×10-6Torrであり、加熱温度は500℃である。そして、ガス供給口551から、反応ガスとしてのN2を反応器51内に供給する。
【0048】
次いで、同図に示すごとく、金属ターゲット52を陰極として、金属ターゲット52の表面521にアーク放電を発生させる。このとき発生したアーク電流(70〜200A)のエネルギーにより、金属ターゲット52を構成する材料は、瞬時に蒸発すると同時に金属イオン529となり、反応器51内に飛び出す。
【0049】
一方、バイアス電源から回転台54を介してPVD用治具321にバイアス電圧を印加することにより、飛び出した金属イオン529は加速する。そして、反応ガス(N2)粒子と共に、成膜材料(本例では、CrN、TiN)となって金型素材11のスリット溝形成面130に衝突し、堆積成膜する。なお、本例では、回転台54を回転させながらPVD処理を行うため、均一に成膜することができる。
【0050】
次いで、反応器51内を冷却後、大気状態に戻す。そして、反応器51内からPVD用治具322を取り出し、PVD用治具322の締結を解除する。
本例では、金属ターゲット52にCrを用いてPVD処理を行った後、金属ターゲット52をTiに変更して、再びPVD処理を行った。これにより、スリット溝形成面130の表面に硬化処理膜2が形成された金型素材11を得る。本例の硬化処理膜2は、CrN層及びTiN層の2層で構成されている。
その他は、実施例1と同様の工程を行い、ハニカム構造体成形用金型1を得る。
【0051】
本例のハニカム構造体成形用金型1は、実施例1と同様に、スリット溝形成面130に硬化処理膜2が形成されている(図5〜図7参照)。
なお、硬化処理膜2の硬度はHv2000であり、金型素材11の硬度の約4倍である。また、硬化処理膜2の膜厚Sは1.8μmであり、スリット溝13の溝深さD(=5mm)の1/10以下である。
【0052】
また、図12は、本例の金型1における距離L(mm)と膜厚S(μm)との関係を示したものである。同図から知られるように、スリット溝形成面130には、膜厚1.8μmの均一な硬化処理膜2が形成されている。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0053】
本例の製造方法では、実施例1と同様に、耐久性・耐摩耗性に優れたハニカム構造体成形用金型1を得ることができる。
また、本例では、硬化処理工程における硬化処理としてPVD処理を行った。PVD処理は、非常に成膜精度が高い。そのため、硬化処理膜2をより一層精度高く形成することができる。また、PVD処理は、厚膜形成が可能であることから、硬化処理膜2を効率よく形成することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0054】
なお、本例では、硬化処理工程において、図10に示すごとく、金型素材11の供給穴形成面120側をマスキングプレート31によってマスキングしてからPVD処理を行ったが、図13に示すごとく、マスキングをせずにPVD処理を行うこともできる。
この場合には、硬化処理工程後、供給穴形成面120及びスリット溝形成面130の両面に硬化処理膜2が形成されるが、実施例1と同様に、供給穴12を問題なく加工することができる。
【0055】
また、本例では、硬化処理工程を行った後に供給穴12を形成したが、硬化処理工程前に、予め供給穴12を形成しておくこともできる。すなわち、本例の製造方法は、準備工程、供給穴形成工程を行った後、硬化処理工程、スリット溝形成工程を行う構成とすることもできる。
【0056】
(実施例3)
本例は、本発明のハニカム構造体成形用金型1の製造方法において、硬化処理工程における硬化処理としてCVD処理及びPVD処理の両方を行った例である。
本例では、硬化処理工程において、金型素材11のスリット溝形成面130に、CVD処理を行い、さらにその上にPVD処理を行う。CVD処理は、実施例1と同様の手順で行う。また、PVD処理は、実施例2と同様の手順で行う。
その他は、実施例1と同様の工程を行い、ハニカム構造体成形用金型1を得る。
【0057】
本例のハニカム構造体成形用金型1は、図14に示すごとく、スリット溝形成面130に硬化処理膜2が形成されており、硬化処理膜2は、CVD処理により成膜されたCVD膜21とPVD処理により成膜されたPVD膜との2層で構成されている。
なお、本例のCVD膜21の膜厚は1.8μm、PVD膜22の膜厚は1.8μmである。また、硬化処理膜2全体としての膜厚Sは3.6μmであり、スリット溝13の溝深さD(=5mm)の1/10以下である。
【0058】
また、図15は、本例の金型1における距離L(mm)と膜厚S(μm)との関係を示したものである。同図から知られるように、スリット溝形成面130には、膜厚3.6μmの均一な硬化処理膜2が形成されている。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0059】
本例の製造方法では、下地としてCVD処理によるCVD膜21を形成することにより、PVD処理のみを行って硬化処理膜2を形成した場合に比べて、硬化処理膜2の密着性を向上させることができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0060】
(実施例4)
本例では、実施例1〜3において得られたハニカム構造体成形用金型1を用いてハニカム構造体を繰り返し成形し、金型の寿命を評価した。
本発明品としては、CVD処理を施した実施例1の金型1(本発明品E1)、PVD処理を施した実施例2の金型1(本発明品E2)、CVD処理及びPVD処理の両方を施した実施例3の金型1(本発明品E3)の3種類を準備した。また、何の処理も施していない金型を比較品Cとして準備した。いずれの金型も、スリット溝13の初期の溝幅は140μmである。
【0061】
次に、金型の寿命の評価方法を説明する。
本発明品E1〜E3のハニカム構造体成形用金型1を用いて、コージェライト用セラミックス原料を含む材料を押出成形し、直径100mm、長さ90mmの円筒形状のハニカム構造体を成形する。この作業を繰り返し行い、スリット溝13の溝幅が150μm以上となった時点で金型の寿命とする。比較品Cについても同様に行う。そして、金型の寿命となるまでのハニカム構造体の生産数を測定する。なお、本例では、比較品Cの生産数を生産比率1として、本発明品E1〜E3の生産比率を算出した。
【0062】
次に、金型の寿命の評価結果を図16に示す。
同図から知られるように、CVD処理を施した本発明品E1は、未処理の比較品Cに比べて生産比率が3倍となった。また、PVD処理を施した本発明品E2は、同じく生産比率が2倍となった。また、CVD処理及びPVD処理の両方を施した本発明品E3は、硬化処理を組み合わせることにより、同じく生産比率が3倍となった。すなわち、本発明品E1〜E3は、非常に優れた耐久性・耐摩耗性を有しており、金型の寿命が向上したことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1における、金型素材を示す説明図。
【図2】実施例1における、金型素材をCVD用治具に固定した状態を示す説明図。
【図3】実施例1における、CVD装置の構成を示す説明図。
【図4】実施例1における、硬化処理を施した金型素材を示す説明図。
【図5】実施例1における、ハニカム構造体成形用金型の構造を示す平面図。
【図6】実施例1における、ハニカム構造体成形用金型の構造を示す断面図。
【図7】実施例1における、スリット溝形成面周辺を示す断面拡大図。
【図8】実施例1における、距離Lと膜厚Sとの関係を示す説明図。
【図9】実施例1における、金型素材をCVD用治具に固定した状態を示す説明図。
【図10】実施例2における、金型素材をPVD用治具に固定した状態を示す説明図。
【図11】実施例2における、PVD装置の構成を示す説明図。
【図12】実施例2における、距離Lと膜厚Sとの関係を示す説明図。
【図13】実施例2における、金型素材をPVD用治具に固定した状態を示す説明図。
【図14】実施例3における、スリット溝形成面周辺を示す断面拡大図。
【図15】実施例3における、距離Lと膜厚Sとの関係を示す説明図。
【図16】実施例4における、金型の寿命の評価結果を示す説明図。
【符号の説明】
【0064】
1 ハニカム構造体成形用金型
11 金型素材
12 供給穴
13 スリット溝
130 スリット溝形成面
2 硬化処理膜
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰

【識別番号】100110700
【弁理士】
【氏名又は名称】岩倉 民芳

【識別番号】100130155
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥起


【公開番号】 特開2008−12820(P2008−12820A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187048(P2006−187048)