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【発明の名称】 補強材入り押出成形セメント板の製造方法及び装置
【発明者】 【氏名】久野 昌彦

【要約】 【課題】形状が複雑な補強材であっても、補強材への水硬性材料の充填が確実に行われ、構造材として用いる場合も十分な強度を有する補強材入り押出成形セメント板の製造方法及びその製造装置を提供することである。

【構成】押出バレルの先端に絞管と金型を順次取り付けた押出成形機により、水硬性材料を押出して押出成形板を製造する押出成形板の製造方法において、該絞管と該金型部分を真空にして押出成形する押出成形板の製造方法、及びその装置。前記絞管は湾曲しており、該湾曲部の外周部から口金内部まで挿入された補強材導入管から補強材を導入し、前記補強材と共に水硬性材料を押出して補強材入り押出成形セメント板として成形することが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出バレルの先端に絞管と金型を順次取り付けた押出成形機により、水硬性材料を押出して押出成形板を製造する押出成形板の製造方法において、該絞管と該金型部分を真空にして押出成形することを特徴とする押出成形板の製造方法。
【請求項2】
前記絞管は湾曲しており、該湾曲部の外周部から口金内部まで挿入された補強材導入管から補強材を導入し、前記補強材と共に水硬性材料を押出して補強材入り押出成形セメント板として成形することを特徴とする請求項1記載の押出成形板の製造方法。
【請求項3】
押出バレルの先端に絞管と金型を順次取り付けた押出成形機により、水硬性材料を押出して押出成形板を製造する押出成形板の製造装置において、該絞管と該金型部分を真空としたことを特徴とする押出成形板の製造装置。
【請求項4】
前記絞管が湾曲しており、湾曲絞管の外周部側から口金内部まで挿入された補強材を導入する補強材導入管を有し、該補強材導入管の補強材導入部がパッキング材でシールされ気密性が保たれており、補強材入り押出成形セメント板として成形することを特徴とする請求項3記載の押出成形板の製造装置。
【請求項5】
前記絞管が湾曲しており、湾曲絞管の外周部側から口金内部まで挿入された補強材を導入する補強材導入管を有し、更に該補強材導入管の補強材導入部を含む真空室を設けたことを特徴とする請求項3記載の押出成形板の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントなどの水硬性材料を用いて押出成形により、外壁材、間仕切材、床材などの建築材料を連続的に製造する方法及び装置に関するものであり、特に、鉄筋、金網などの補強材を内蔵し、構造材として使用可能な補強材入り押出成形セメント板の製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、セメントなどの水硬性材料を用いて押出成形セメント板などの建築材料を製造することが行なわれている。押出成形セメント板は、セメント、骨材、補強繊維などを配合し、押出成形により中空形状又は中実形状に押出される。押出成形セメント板は、それ自体で壁材としての強度は十分に備えているが、床などの構造材として用いるには強度が不十分であった。
【0003】
前記の問題点を解決し、押出成形セメント板を構造材として用いるために、その強度を補強し確保するため、鉄筋や金網などの補強材を押出成形セメント板に内蔵することが行なわれている。しかしながら、従来の押出成形セメント板の製造装置では、押出成形機の延長上の金型より水硬性材料を押し、押し出された生板を受け取るラインとなっている。このため、押出成形セメント板が押し出される押出方向の軸線上の反対側には押出成形機があるため、補強材としては、自由に曲げることが出来るワイヤーを生板内に導入できるが、鉄筋、鋼管や溝型鋼は曲げることができないため、挿入することができなかった。
【0004】
「特許文献1」には、前記の問題点を解決するものとして、押出バレルの先端に絞管と金型を順次取り付けた押出成形機において、絞管は50°〜90°の範囲で湾曲し、湾曲した絞管の外径側に補強材を導入する導入管を有し、この導入管は、前記絞管の終了地点まで導入された補強材入り押出成形板の製造方法が記載されている。この製造装置では、導入管が絞管終了地点まで導入されているため、導入管部分で分断された原料が補強材を上下で挟み込むように押し出されるため、補強材の種類によっては十分に原料が充填されない恐れがあった。
【0005】
従って、前記従来例では、補強材が鉄骨などで形状が複雑の場合には、十分に原料が充填されない恐れがあるため、主に使用される補強材はワイヤー、鉄筋、ワイヤーメッシュや鉄筋メッシュなどのような補強材として厚みが薄いものに限られていた。
また、「特許文献2」には、押出バレルの先端に絞管と金型を順次取り付けた押出成形機において、絞管は50°〜90°の範囲で湾曲し、湾曲した絞管の外径側に管状補強材を導入する導入管を有し、この導入管は、前記絞管の終了地点まで導入された補強材入り押出成形板の製造方法が記載されている。この製造装置でも、前記「特許文献1」と同様に導入管が絞管終了地点まで導入されているため、導入管部分で分断された原料が補強材を上下で挟み込むように押し出されるため、管状補強材の周囲に十分に原料が充填されない恐れがあった。
【特許文献1】特開平8−207028号公報(特許第3434604号)
【特許文献2】特開平8−207029号公報(特許第3434605号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、H型鋼などのように形状が複雑な補強材であっても、補強材を挿入するときに、水硬性材料と補強材が口金内で隙間がない状態で互いに接触して緻密な状態で結合することができ、補強材への水硬性材料の充填が十分なものとなり、構造材として用いる場合も十分な強度を有する補強材入り押出成形セメント板を製造することである。また、その製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、前記の技術において、管状補強材などの補強材の周囲に十分に原料が充填されない原因を検討したところ、押出バレルの先端に絞管と金型を取り付けた押出成形機において、補強材入り押出成形材を押し出し成形する際に当って、押出バレルのみを真空にしていることによることが分かった。これは、従来水硬性材料を金型に通して所定の断面形状の押出成形セメント板を製造する際に、緻密な原料が金型の内面に密接するようにして押し出されるようにすることにより、金型の外形をよく保持した成形体が得られるようにするために、押出バレルの部分の内部を真空にしていることによるものである。
【0008】
ところで、この手段では補強材入り成形体の外形をよく整えることができるが、内部までは整えることができないことが分かった。そこで、原料と補強材とが合わされる絞管と口金部分についても真空にしたところ、押出時に挿入する補強材の形状に左右されることなく、水硬性材料が補強材の複雑な構造の部分にも入り込むことが確認され、それによってより強固で緻密な押出成形セメント板を得ることが分かった。
本発明は、押出バレルの先端に絞管と金型を取り付けた押出成形機において、絞管と金型部分を真空とした補強材入り押出成形方法により、押出時に挿入する補強材の形状に左右されることなく、より強固で緻密な押出成形セメント板を得ることが可能となった。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の手段により前記課題を解決した。
(1)押出バレルの先端に絞管と金型を順次取り付けた押出成形機により、水硬性材料を押出して押出成形板を製造する押出成形板の製造方法において、該絞管と該金型部分を真空にして押出成形することを特徴とする押出成形板の製造方法。
(2)前記絞管は湾曲しており、該湾曲部の外周部から口金内部まで挿入された補強材導入管から補強材を導入し、前記補強材と共に水硬性材料を押出して補強材入り押出成形セメント板として成形することを特徴とする前記(1)記載の押出成形板の製造方法。
(3)押出バレルの先端に絞管と金型を順次取り付けた押出成形機により、水硬性材料を押出して押出成形板を製造する押出成形板の製造装置において、該絞管と該金型部分を真空としたことを特徴とする押出成形板の製造装置。
(4)前記絞管が湾曲しており、湾曲絞管の外周部側から口金内部まで挿入された補強材を導入する補強材導入管を有し、該補強材導入管の補強材導入部がパッキング材でシールされ気密性が保たれていることを特徴とする前記(3)記載の押出成形板の製造装置。
(5)前記絞管が湾曲しており、湾曲絞管の外周部側から口金内部まで挿入された補強材を導入する補強材導入管を有し、更に該補強材導入管の補強材導入部を含む真空室を設けたことを特徴とする前記(3)記載の押出成形板の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の押出成形セメント板の製造装置では、絞管と口金部分を含めて真空にすることにより、補強材を導入する導入管の形状が空気の影響を無視できる形状となり、抵抗が減少しスムーズな押出ができるようになる。また、口金付近においても材料がより緻密となり、補強材導入管で分断された原料が口金内で補強材及び上下左右から回り込んで緻密な状態で複合することができ、より強固な補強材入り押出成形板を得ることができる。また、補強材を挿入するときに、補強材導入部を含む口金部分が真空なので、補強材周辺への原料充填が確実に行なわれ、より緻密な押出成形板ができる。さらに、H型鋼材など形状が複雑な補強材であっても、補強材への材料の充填が十分なものとなり、より強固で緻密な押出成形板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態及び実施例を説明するための全図において、同一機能を有する構成要素は同一符号を付けて説明する。
通常のセメント系の押出成形機では、オーガバレルのみ真空となっている。本発明の補強材入り押出成形セメント板の製造装置では、オーガバレルより連続する絞管と口金部分を含め真空にすることに特徴がある。
【0012】
図1は、本発明で用いる製造装置の一例である。図1の(a)に示すように、押出成形機1の先には湾曲絞管2が取り付けられ、その先には口金3とトップダイ4が取り付けられている。押出成形機1、湾曲絞管2、口金3、トップダイ4の結合部は、パッキング材5によりシールされ気密性が保たれるようになっている。パッキン材として用いることのできる材料としては、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのような材料が挙げられる。
【0013】
湾曲絞管2の外周部側からは補強材導入管6が口金内部にまで挿入されている。押出成形機1、湾曲絞管2、口金3、トップダイ4、補強材導入管6は、真空となっている。補強材7(この例では「H型鋼材」)は、補強材挿入管6から挿入される。図1の(a)の補強材挿入管6を左方から見た側面図を図1の(b)と示すが、それに見るように、補強材挿入管6の補強材挿入部は、パッキング材5でシールされており、補強材導入時に補強材の周囲がパッキング材5によって気密性が保たれるようになっている。図1ではH型鋼材7を挿入する装置となっている。本発明の製造装置で押出成形する場合、セメントなどの水硬性材料が確実に補強材に充填されるのに好適な真空度は−86〜−100KPaの範囲である。
【0014】
H型鋼材7は、補強材挿入部から補強材導入管6に挿入され、口金3付近で流れてきた原料と合流する。口金内は真空が保たれており、原料と合流した補強材7は、緻密な原料により複合化され、トップダイ4より所定の形状に押し出される。H型鋼材7は連続して挿入することで、成形機1を停止することなく補強材入り押出成形板8を連続して製造することができる。
尚、押出機1から押し出された初期は、口金内の原料の充填が十分ではなく、真空の漏れもあるので、湾曲絞管2、口金3、トップダイ4、補強材導入管6が十分に真空状態になったことを確認してから補強材7の挿入を行なうことが好ましい。(補強材の挿入を行なわない押出成形セメント板8を数本押し出す。)
【0015】
また、本発明で用いる絞管は、湾曲絞管2とすることが好ましい。湾曲絞管2とすることで、補強材導入管6を絞管外周部から挿入することができる。これにより、H型鋼材7、鉄筋など曲げることができない補強材を成形機1が障害とならずに挿入することができる。
補強材としては、鉄筋、鉄筋メッシュ、H型鋼材、アングル、溝型鋼、ワイヤーメッシュ、鋼管など従来押出構造材の補強材として用いられているものを用いることができる。
ワイヤーメッシュ9の場合には、図3(側部断面説明図)のように下側から斜めに入れてもよい。ワイヤーメッシュ9の場合には、挿入部をシールすることができないので、ワイヤーメッシュ挿入部12を含めて真空室10とすることが望ましい。なお、図4は、図3の押出成形機の平面図であって、口金3の部分ではその内部が見える状態として示しており、その部分では中玉11が見えるように実線で図示しているが、中空部を成形するトップダイではその内の中玉11を点線で図示している。
【実施例】
【0016】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0017】
実施例1〜3及び比較例1〜3
絞管と口金部分を真空にする場合と真空にしない場合とで押し出される補強材入り押出成形板の補強材周辺への材料の充填の違いを確認した。使用した押出機は、押出成形セメント板の成形機で、スクリュー径650mm、口金の形状は図2に示すとおり、厚み60mm、巾400mmで、押出成形セメント板両端から1個目と2個目の中空の間にH型鋼材を挿入した補強材入り押出成形セメント板を製造した。H鋼は、中空部の形状に合うように巾40mm、高さ48mm、長さ5000mm、鋼材の厚さ3.2mmのものを使用した。成形した補強材入り押出成形板を、1mの長さに切断し、できた4箇所の切断面の原料の充填状況を確認した。実施例1〜3及び比較例1〜3の評価の結果を第1表に示す。
【0018】
【表1】


【0019】
評価の区分は、図5の(a)に示すように、原料が充填され、中空部も成形されている場合の切断面は○印をつけた。(b)に示すように、鉄骨と原料の間に空間が生じている場合の場合の切断面は△印をつけ、(c)に示すように、鉄骨が露出している場合の切断面は×印をつけて表示した。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、セメントなどの水硬性材料とH型鋼などのように形状が複雑な補強材との組み合わせでも、水硬性材料の充填が十分に行われるため、構造材として用いる場合も十分な強度を有する補強材入り押出成形セメント板が得られる。そのため、建築物の外壁・間仕切り壁、床材、鉄道、道路あるいは工場などの防音壁等の資材として幅広い利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の押出部の平面図である。
【図2】本発明の実施例で使用した口金形状を表す図である。
【図3】補強材がワイヤーメッシュである場合の本発明の押出部の側面断面説明図である。
【図4】図3の押出成形機の平面図である。
【図5】実施例及び比較例で押出成形したセメント板の切断面において、水硬性材料の充填状態を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 押出成形機
2 湾曲絞管、絞管
3 口金
4 トップダイ
5 パッキング材
6 補強材導入管
7 補強材(H型鋼材)
8 押出成形板
9 ワイヤーメッシュ
10 真空室
11 中玉
12 ワイヤーメッシュ巻
【出願人】 【識別番号】000135335
【氏名又は名称】株式会社ノザワ
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平

【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳

【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光

【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛

【識別番号】100093573
【弁理士】
【氏名又は名称】添田 全一


【公開番号】 特開2008−6759(P2008−6759A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−181469(P2006−181469)